江戸へ行きぁ
雪が降り積もった山道で馬に乗った次郎吉達は、山道を登って来た二挺の駕篭とすれ違います。すると。駕篭が急に止まり、女が次郎吉の乗った馬の前にふさがり、「ちょいと、ちょいと次郎さん、ふん、いい気なもんだね」と言ってきたのは、文字春でした。
次郎吉「おめえは・・・」
次郎吉は、 まさか・・と狼狽して後ろを振り向く
とデッチリの権が「 すまねえ、これには訳が
・・・」というと、次郎吉は馬から降りてデッチリの権をつかまえ、
次郎吉「おれがあれほど言っといたのに、おめえは、 ばかやろ
」
権は申し訳ないと、しかし、「次郎さんとしたことが、師匠にだけは・・・」と言っているところに、文字春が割り込んできます。「 ここで会ったが百年目だよ
」言いたいことがいっぱいある、と・・・。いうことで、文字春と権と一緒の行動になりました。
その晩の夕食時、気まずい雰囲気が流れていました。次郎吉が吉五郎とお風呂にたったあと、文字春はおたかに強い言葉を浴びせます。「はっきりと言っとくけどね、次郎さんには私って女がちゃんとついてるんだからね。お前さんなんか一時の浮気だよ。・・いいかい、浮気。しかも、大名の奥のね・・・」
権がそこで止めますが、嫉妬に燃えている文字春は権を振り切って、私はこの子のためにはっきり言ってやるんだといい、「大名屋敷の奥に御鎮座の御中老様と申し上げる高嶺の花、その高嶺の花に次郎さんポーッと来ちゃったんだよ。その御中老様が、お前さんにそっくりだったというだけの話、ふん、どうだい、夢は覚めたか」
おたえには、あまりにも残酷な言葉が投げかけられたのでした。誰もいなくなった部屋、おたえは『らはじゃまもの、きっちゃんだけはたのみます たか』と書置きを残し、旅籠を出ていきます。魂を失ったように泣きながらあてもなく夜道を歩いていたおたえの肩を叩いたのは、女衒の久蔵でした。
書置きを見て次郎吉達が おたかを探しています
。必死におたかを探すが見つからず、おたえがいなくなったことで 泣き止まない吉五郎を抱きしめる
のです。
次郎吉「あんねは何処も行きゃしねえよ。・・・泣くなぃ」
何処にいるのと吉五郎に言われた次郎吉は、こう言ってしまうのです。
次郎吉「そりゃ、 おめえ
、 それ
・・・・ (
ふとよぎったことが )
それって
、 江
戸
・・・そうだい 江戸だ
。・・・おい、吉坊、 江戸へ行きぁあんねに会え
るんだぞ
、・・・江戸へ行こう」
江戸に戻って来た次郎吉は、御中老のところに再び忍び込み吉五郎のためにお願いをします。
次郎吉「 いかがでございましょう
。・・・もしも、吉五郎の奴に、御中老様のお顔
を一目見せてやっていただけるようなことができましたら、姉はあの通り
御奉公の身の上と、 一時得心させることが出来る
、そのうえで何とかおた
かを探して・・・・そりゃ、もう無理な、勝手なお願えと 重々承知はして
おりますが
・・・」
御中老は次郎吉が必死にお願いをする様子を見ていて、
御中老「そなた、必ず堅気の暮らしをたて、姉弟を幸せにすると約束できますか」
次郎吉「へえ、出来ます、必ず」
御中老「では、こうなさい。初午の日に、あたくしは奥方様の御代参で烏森のお稲
荷様に参ります。・・・そこで見せてあげなさい」
次郎吉「えぇーっ、ほんとですかい、・・・ありがとう存じます・・・」
次郎吉は深々と頭を下げるのです。
続きます
。
炎の城・・・(11) 2024年08月05日
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