明日の朝でいいんだ
わけがわからないまま政吉の巧みな芝居に乗せられてしまった六助。政吉は「ちょいと用をたしてくるからな」と言い出て行きます。おすきは六助に、あの男を本当に知っているのかとつめよると、六助は思い出せないが、六、六というのだから・・・と、おすきが腹を立てていると、「へい、お待ちどうさまです」と酒屋が一升樽を、すると次に鰻が、続いて天ぷら届いたのです。呆気に取られていると、「ああ、ご苦労」と政吉が帰って来ました。「兄貴のおごりや」と喜ぶ六助に、
政吉「なに、そう言ってくれるない、恥ずかしいぜ。思いがけなく お前に会えてよ
う
、そのお前がこうやって立派な家を構えてるのに、 手土産一つ
持って来ね
えもんだからなあ、 ほら・・・ほっ
、 ほっ
、 ほっ
(
酒樽、うなぎ、天ぷらを
指す )
なっ」
六助に、兄貴はいいとこあるだろうといわれ、おすきが「すいません」と言うと、
政吉「 おっ
、・・・ 礼をいわれちゃ困るなあ
、ああ、おっ・・・ さあこっちへ来ね
え
、 こっちへ来ねえ
」
あがりこみ厚かましい政吉です。
こうなると、政吉の思い通りにことは運んでいきます。
着ている着物をみて
、
政吉「おう、六、おめえ、俺んちでくすぶっていた頃、 よく俺の着物を着たっ
けな
」
六助「そやったかいな」
政吉「そうじゃねえか」
六助「ああ、そうそう」
政吉「へえっへえっへっ」
政吉の着物を見て、「そういえば、 だいぶ汚れているな
」と六助がいうと、政吉は「 うん
」と返事・・・・・政吉は料理をおかもちから出しながら、自分のペースに運んでいきます。
すると、六助に、「なんぞ、おれの着物を出して兄貴に着せてやってくれ」といわれたおすきは、「なんぞって、あんたの着物は今着ているのと、私が こしらえたばかりの仕立て下ろししかないんです
」
政吉が話に割り込みます。
政吉「 そう
、 そっ
。思い出すぜえ、・・・おめえ、あの頃、よく 俺の仕立て下ろし
を着たなあ
」
六助は、おすぎがこしらえた仕立て下ろしの着物を 政吉に着てもらってくれという始末
に止めようとするおすぎ。そのとき、「ああ、いいんだ、いいんだよ」
その言葉を聞いて安堵し笑顔を見せるおすきでしたが、次に政吉から出た言葉に、すぐ消されました。「 明日の朝でいいんだ
」
「 明日の朝で
」と違和感を覚えない六助、「 うん
」と答える政吉。
おすきにいわれ
六助「 なら
、 兄貴
、・・・ 今夜は
・・・」
政吉「 うん
・・・あの頃もよく、おめえ、俺んちの二階でごろごろ居候していた
な」
ここで、六助が「俺、居候していたかいな」と考え込むと、政吉が「おい」と。
政吉「てめえ、 また忘れたのかい
」
六助「いや、そんなもん忘れてへんで」
政吉「 うん
・・・ えれえ
」
六助「おおきに」
政吉「 だいぶ長かったなあ
」
六助「そやったかなあ」
政吉「 どのくらいいたかなあ
・・・ 30
」
六助「 30
年」
政吉「うん」
それを聞いたおすきは六助に向かって指 3
本を見せ、
おすき「ちょっとお前さん、 30
年よ」
そういわれた六助が、
六助「あっ、そりゃ兄貴あかんわ」
政吉「えぇっ」
六助「わしまだ 26
やで」
政吉「 26
か、あっは、それじゃあなにかい、おめえでも、年は順々に取るのかい」
ぬけ六でも年は順々に取るというと、
政吉「あっはっは、なーに、 お前のこったからな
、 貧乏で越せねえ年がかなりあっ
たろう
と
思ってよ」
というと、六助はどうしようもないですねえ、政吉に乗せられ、「そういわれてみると、そういう年がおおかった、してみると、わしは 40
かいなあ」と。
聞いていたおすきは六助の馬鹿さ加減に呆れて、「阿保」と突き飛ばし怒って奥へ行ってしまいます。その様子を面白そうに笑っている政吉です。
続きます
。
炎の城・・・(11) 2024年08月05日
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