2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
全30件 (30件中 1-30件目)
1
"A PERFECT MURDER" 監督・・・アンドリュー・デイヴィス 出演・・・マイケル・ダグラス、グウィネス・パルトロー、ヴィゴ・モーテンセン、デヴィッド・スーシェ、コンスタンス・タワーズ、サリタ・チョウドリー、他。・物語序盤・実業家のスティーブンと資産家のエミリーは、何不自由ない生活を送る上流階級の夫婦。しかし一見幸せそうな夫婦だが、内実は表面とは裏腹だった。エミリーにはデイヴィッドという画家の愛人が居たのである。エミリーは愛人の存在は夫に知られていないと思い込んでいたが、スティーブンは全てを知っていた。ある日スティーブンは、デイヴィッドの元を訪れ、彼等の関係を知っている事を告げる。更にデイヴィッドが偽名を使っている事、過去に同様に資産家の女性に近付いて詐欺行為を働いていた事を暴露する。そしてスティーブンは驚いた事に、50万ドルでデイヴィッドに妻殺しを依頼してきた。 ヒッチコックの名作「ダイヤルMを廻せ」のリメイクです。オリジナルは遠い昔に観たのですが、詳細はすっかり忘れております。という事で、比較は全然できません。ただ邦題に残っている「ダイヤルM」は、この映画に関しては全く意味を持たない存在になっていました。(原題からは削除されていますね。)大体の荒筋は知っていたものの、それでも楽しめるよく出来たサスペンスでした。マイケル・ダグラス、グウィネス・パルトロー、ヴィゴ・モーテンセンと、主要三人がメジャーな俳優だけに、豪華な感じがしますね。モーテンセンは「ロード・オブ・ザ・リング」の印象が強いですが、元々結構悪人顔ですよね。今回の狡猾な悪役も似合っていました。この映画、観ていてヒロインがちっとも可哀想に思えないのですよ。夫と愛人から命を狙われるというダブルパンチなのですが、それでも全然同情心が湧いてきません。男運が悪いというよりも、自分の心構えが悪いんだろうと思ってしまうからです。夫の横暴さや独善的な態度が描写できていなかったので、単に浮気をしているだけの、しかも相手は自分を利用しているだけの小悪党に引っ掛かっている、マヌケな奥様としか映りません。グウィネス、気の毒に…笑。刑事役のデヴィッド・スーシェも、活躍するのかと思いきや、殆ど目立ちませんでしたね。ラストもかなり呆気なくて、物足りない気分が残りました。オリジナルではヒロインはもっと切羽詰った状況に追いやられて、それを刑事が名推理で救出するという流れがあったと思います。あの刑事の洞察力の深さの片鱗は、オリジナルの名残という事なのでしょう。何しろ名探偵ポアロですから、スーシェは。(笑)捻りの無いラストには拍子抜けでしたが、殺人計画が実行に移されてからの流れは、入り組んだ人間関係に展開の危うさが重なり、なかなか見応えがありました。面白かったです。
Jan 31, 2005
"THE DANCER" 監督・・・フレッド・ギャルソン脚本・・・リュック・ベッソン、ジェシカ・キャプラン 出演・・・ミア・フライア、ガーランド・ウィット、ロドニー・イーストマン、ジョシュ・ルーカス、フェオドール・アトキン、カット・キラー、他。 ・物語序盤・ニューヨーク。土曜の夜。クラブは最高潮の盛り上がりを見せていた。中央ステージで、繰り広げられているのは、天才的女性ダンサー・インディアと、彼女を倒そうとする挑戦者のDJとの熱いダンス・バトルだった。客席では自称マネージャーの兄ジャスパーが彼女を応援していた。バトルに勝ち、意気揚々とクラブのオーナーの所へ行く、ジャスパー達。しかし尊大なオーナーは、ほんの小銭を報酬として彼等に渡しただけだった。言葉が話せないインディアと、お喋りで陽気なジャスパーは、とても仲の良い兄妹。ジャスパーは職場の相棒ブルーノから、ブロードウェイの劇場でダンサーのオーディションがある事を教えてもらう。大きな舞台で踊り、ダンサーとして成功するのが、インディアとジャスパーの悲願。インディアは、オーディションに参加する事を決めるが…。 映画館で観て以来、二度目の鑑賞となりました。この映画、マイナーですが、結構好きなんですよね。でもあのダンスシーンは、大きなスクリーンで観ないとダメだと実感しました。映画館で観た時は、凄まじいパワーを持ったミア・フライアのダンスに圧倒されましたが、自宅のテレビではかつての感動が味わえませんでしたね。ちょっと寂しく感じました。ミア・フライアは一流のダンサーですから、ダンスが素晴らしいのは当然ですが、インディアというキャラクターにも魅力がありました。言葉を発する事ができない天才ダンサー。三度の飯より踊るのが好きという女性です(笑)。街角でも自宅でも、ノリのいいダンスミュージックが流れてくると、すぐに踊り出してしまいます。そんなインディアですが、障害者としての苦悩も沢山あります。日常生活の些細な事でも、ダンスのオーディションにおいても…。子供達と抱き合うシーンは、切なくて悔しくて涙がぽろり。また愛情の描き方がとても温かくて好感が持てます。先ずインディアとジャスパーの兄妹愛。とことんお調子者の兄貴なのですが、妹への愛情は人一倍深いです。こんな兄貴が欲しいなと思うくらい可愛い。次にジャスパーと同僚のブルーノの友情。インディアが売れっ子で、引く手数多だと大法螺を吹くジャスパーの嘘を知りつつ、さり気なく受け流して、兄妹を見守ってくれる良友です。そして科学者のアイザックとインディアの関係。研究オタクで研究室に篭りきりだったアイザックを、友人が気遣ってクラブに連れ出した事から、劇的な出会いが始まるのですが、劇的な出会いでありつつも、二人の関係がチープな恋愛関係にならなかった点が良かったです。恋愛の予感を感じさせる温かい雰囲気なのですよね。気になったのは、ラストのダンスシーンのインパクトが今ひとつだった点です。そこまでで数々のダンスを披露してしまったので、出尽くした感がありましたが、もう一花派手に咲かせてほしかった。
Jan 30, 2005
"GOMEZ & TAVARES""PAYOFF" 監督・・・ジル・パケ=ブランネール出演・・・ストーミー・バグジー、ティトフ、エロディー・ナヴァール、ジャン・ヤンヌ、ノエミ・ルノワール、フィリップ・ルメール、エチエンヌ・シコ、ダニエル・デュヴァル、他。・物語序盤・ 南フランスの港町マルセイユ。マックスはヒーロー気取りの警官。しかしその実態は、元々少年院に入っていた悪ガキで、市民から小金を巻き上げる女好きの汚職警官。町の顔役である叔父の自宅の庭先に、トレーラーハウスを置いて居候中で、怠惰でお気楽な毎日を送っている男である。 そんなある日、彼の相棒として、黒人刑事カルロスが赴任してくる。武道家でもある彼は、融通の利かないタイプで、市民に袖の下を要求するマックスの行動に激怒。全く正反対の二人の相性は最悪。そんな時、首吊り自殺を装った殺人事件が起こる。遺体の口には、四葉のクローバーが入っていた。どうやら会計士であった被害者は、闇組織の金を管理していたらしい。更に一人娘であるポーリーナは、身の危険を感じて行方を晦ましていた。 本日は、超マイナー映画を一発。邦題はお分かりかと思いますが、「マイアミ・ヴァイス」からのパクりです。映画の予告編でも、「マイアミ・ヴァイス」の吹き替えの声優さんが登場していました。原題の"GOMEZ & TAVARES"にあるように、これは所謂刑事モノのバディ・ムービーです。バディ・ムービーは、ボケとツッコミ役が分かれていて、デコボココンビでバカ騒ぎしながら、事件を解決してゆくというのが定石です。この映画も基本的にはその流れに沿っています。全然違うタイプの二人がコンビを組まされて、お互い反発しながらも、事件を解決してゆきます。唯一異なっているのは、二人の刑事が善人ではない事です。この辺の発想は、やはりフランス的と言うべきなのでしょうかね?ハリウッドだったら、この手の映画で、主役の警官を決して悪人にはしません。ガラは悪くても、根は善良な正義の味方というのが、バディ・ムービーの鉄則です。しかしこの映画の場合、主役の二人は悪徳警官。片方は平気で市民にたかり、袖の下を要求する。現場に行けば、捜査そっちのけで金品の物色。そしてもう片方は、一見堅物の熱血漢かと思いきや、裏社会に顔が利く怪しい男。家は警官にそぐわない大豪邸で、悪党と思われた相棒の上手を行く大悪党だった、という具合です。斬新さを狙ったのかもしれませんが、主役の二人が汚れた人間というのは、観ていてあまり心地良いものではありませんでしたね。結局、出てくる人殆ど全員が悪者で、世の中汚れきっていると不愉快な気分に…。この手の映画で、爽快感が全く無かったのは痛いですね。展開がスローなのも気になりました。ジャンルとしては、刑事者サスペンス・アクションの筈なのに、高揚感がまるで無いです。BGMが殆ど無いというのも一つの原因かと思いました。とにかく終始静かなんですよね。それがだらだらとした雰囲気に拍車を掛けてしまったように感じました。いかにも低予算という感じの映画でしたね。ラストの追跡劇は、ツッコミ所満載でした。見所と言っても、殆ど無いのですが、黒人刑事カルロスの妹役のノエミ・ルノワールが綺麗でした。モデルさんらしいですが。因みに、カルロス役のストーミー・バグジーはラッパー、マックス役のティトフはコメディアンだそうです。
Jan 29, 2005
現在、公開中です。"OCEAN'S TWELVE" 監督・・・スティーヴン・ソダーバーグ 出演・・・ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、アンディ・ガルシア、マット・デイモン、バーニー・マック、ヴァンサン・カッセル、ドン・チードル、カール・ライナー、ブルース・ウィリス、アルバート・フィニー、他。・物語序盤・オーシャン達がラスベガスのカジノから1億6000万ドルを強奪してから三年の月日が流れた。かつてのメンバー達は、今は世界各地で気儘に暮らしていた。オーシャンは名前を代え、テスと再び夫婦になって、堅気の人間になると約束していた。しかし考えるのは、金庫破りの事ばかり。ラスティはホテル業を営んでいたが、業績不振に陥っている。そんな彼等の前に、大金を盗まれたカジノのオーナー、ベネディクトが現れる。彼は一味の居所を突き止め、一人一人の前に現れて、盗んだ金に利子を付けて返却するよう脅迫する。二週間以内に金を渡さなければ、全員が殺されると慌てたメンバー達は、再び一堂に会して対策を練る。結局、盗みを働いて、返すしかないと結論に達する11人。アメリカ国内では指名手配されて大仕事はできないので、彼等はアムステルダムへ飛ぶ事になるが。 鑑賞後の一言。「なんじゃあ、こりゃあ?!」(松田優作風に)何がしたいの?何が言いたいの?近くに座っていたお喋りオバサンの影響もあってか、観ていて腹が立ってきました(笑)。「あれがジョージ・クルーニー、あれがジュリア・ロバーツ」って、一々煩いんだよ、オバちゃん!映画は黙って、観ろよ!だぁぁっ~!!それはさておき、真面目に映画の感想をば。序盤から設定で気分が盛り下がりました。ベネディクトに見付かって、金を返さないと殺されるから、ヨーロッパに渡って、盗みを働くですと?ドリーム・チームと呼ばれた窃盗団が、借金返済の為に、他人のお遣い泥棒ですか。何故、こんな設定にしてしまったのか、脚本家出てきなさいって感じです。しかも悪い事に、前作で観られた、盗みのスリルやテクニックが全く披露されません。クライム・ムービーなのに、全く犯罪の醍醐味が感じられないなんて、何を観て楽しめば良いのでしょうか。前作はそれなりに筋の通ったドラマがあったのに、今回は小ネタのおふざけばかりが目に付いて、物語がさっぱりありません。豪華キャストは相変わらずで、更にキャサリン・ゼタ・ジョーンズやヴァンサン・カッセル。エンドロールにクレジット無しで、ブルース・ウィルスと、これでもかと人材を投入していますが、どのキャラクターにも大した魅力は無し…。出演者や制作スタッフ達が、内輪で盛り上がって楽しんでいるだけの映画に見えました。どのネタも喜んでいるのは自分達だけでしょ、と言いたくなってしまいます。細かいネタの数々については、詳細は書きませんが、私は小ネタの積み重ねより、確りとしたストーリーが観たいんですってば。役者に関しては、ジュリア・ロバーツの老け方がひどく感じられました。もう少しふっくらすれば若く見えるのに、頬がこけていてともすれば老婆のようにも見えました…。ギャラランク最高の女優と言われているのに、華が無さ過ぎます。女優陣で言うなら、キャサリン・ゼタ・ジョーンズの圧勝ですね。特に短い髪の時の彼女はとてもキュートです。男優もパッとした人は居ませんでしたね。これだけメジャーな男優達を並べているのに、どのキャラも光っていないとは情けない。ヴァンサン・カッセルもお貴族の怪盗役は微妙だったし…。個人的に強いて言えば、アンディ・ガルシアが好みだったかな。あと、ワンシーンの登場かと思わせておいて、しつこく登場したブルース・ウィルスに一票か。他は勝手にして下さいという感じでした。泥棒の映画なのに、盗みのシーンは、後から実はこうでした~という描き方は、はっきり言って詐欺ですよ。ひどい映画を観てしまいました。はぁ…。
Jan 28, 2005
"THE DEVIL'S OWN" 監督・・・アラン・J・パクラ 出演・・・ハリソン・フォード、ブラッド・ピット、マーガレット・コリン、ルーベン・ブラデズ、トリート・ウィリアムズ、ナターシャ・マケルホーン、ジョージ・ハーン、ポール・ローナン、ミッチ・ライアン、ジュリア・スタイルズ、他。 ・物語序盤・8歳の時にIRAシンパだった父を眼前で殺されたフランシス・マグワイヤーは、アイルランド独立運動に身を投じ、冷徹なテロリストに成長した。SI5(英国秘密調査局)に襲撃され、仲間の大半を失った彼はローリー・ディヴァニーという偽名でNYに潜伏する。ローリーは、IRAシンパであるフィッツシモンズ判事の手引きで、NY市警察官トム・オミーラの家に下宿する。トムは勤続24年、正義感に厚く真面目一筋に生きてきた男で、妻シェイラと3人の娘に囲まれ、幸せな生活を送っていた。トムはローリーを祖国から来た純朴な青年として、家族同様に歓迎するが…。 確か、巷では悪評が多かったと思います。どんな駄作なのかと身構えていたら、普通に良い映画でしたよ。最初こそ、売れっ子スターのブラッド・ピットが、社会派の映画でIRAの工作員役を演じるのは、ピンと来ないなぁと思いましたが、観ている内に気にならなくなりました。パンチが効いていないと批判されていますが、そもそもそういうタイプの映画ではないと思います。アクション・メインのドンパチ映画では。これは飽く迄、アイルランド人の置かれた現状の一端を描いた社会派ドラマでしょう。子供の頃から殺伐とした環境で育ち、戦いに身を投じる他無かった青年と、アメリカで警官として、比較的平穏に正義を信じて公務に励んでいた男との対比が良かったと思います。パートナーが丸腰の車上荒しを射殺した事で動揺し、彼を庇う為に嘘の証言をしてしまった自分が許せずに苦悩する警官。テロリストの青年はそんな彼を、銃を持っていれば、何れ人を撃つ事になる、それが常識だと切り捨てる。自分は肉親を目の前で殺され、銃を取って戦うしかない世界で暮らしてきたのに、目の前にいるこの男は、己の信念という狭く平和な問題で真剣に悩んでいる。車の中で隣同士に腰掛けている二人の世界は、その物理的距離に比べて、あまりにも遠く隔たっている…。相手を利用するだけの駒と、何処かで見下していた青年ローリーは、我知らず、幸せで温かい家庭生活を営む一家に心惹かれてゆく。「俺達はごく普通の人間なんだ。」そう訴えるローリーの言葉が切なかったですね。ラストもあまり救いのあるものではありません。展開上、そう収めるしかなかったという感じでしたが、警官の台詞と同じく、「こうなるしかなかったのか?」と思わず問い掛けてしまいます。全体的にわりと静かなドラマ展開です。二大スター競演の娯楽大作などと思い込んで観るのはNG。これは根深い社会問題をテーマにした切ない物語です。アイルランド問題については、「マイケル・コリンズ」などを鑑賞されるとより理解が深まると思います。虐げられた弱者達が武器を持って立ち上がると"テロリスト"とレッテルを貼られる。テロリストの犯行は卑劣で許されない行為だと言う。では国家による虐殺や蛮行は許されるのだろうか?いつも考える問題です。
Jan 27, 2005
"GERONIMO: AN AMERICAN LEGEND" 監督、製作・・・ウォルター・ヒル出演・・・ジェイソン・パトリック、ジーン・ハックマン、ロバート・デュヴァル、ウェス・ステューディ、マット・デイモン、ロドニー・A・グラント、ケヴィン・タイ、リノ・サンダー、スティーヴ・リーヴィス、他。 ・物語序盤・合衆国軍騎兵隊と闘い続けてきたアパッチ族最強の戦士ジェロニモが、ついに投降する事になった。士官学校を出たばかりのブリットン・デイヴィス少尉は、上官であるゲイトウッド中尉と二人で、彼等を指揮官クルック准将が統括する、サンカルロスの基地へと護送する任務を受ける。ゲイトウッド中尉は、先住民族にも理解が深く、合衆国軍とアパッチの双方から一目置かれる存在だった。護送の途中で、地元の保安官一味がジェロニモを逮捕しにきたが、中尉とジェロニモは撃退に成功する。その後、アパッチ族は合衆国の方針によって、居留区に押し込められ、農耕民族となる事を義務付けられる。しかし土地は狭く痩せており、多くの原住民は苦しい生活を強いられていた。そんな中で、再度合衆国に反旗を翻そうという動きが盛んになってくる。そしてある祈祷師が殺害されたのを契機に、彼等は暴動を起こし、ジェロニモも逃亡した。 物語はマット・デイモン演じるデイヴィス少尉の語りで進行します。先ず最初に思った事・・・マット・デイモン、若っ!十年以上前の作品なので当然なのですが、初々しい青年マット君に思わず「可愛い~!」とテレビの前で声を上げてしまいました(笑)。それはさておき、映画の方は非常に真面目に作られたアメリカ近代史モノです。インディアンの中でも、最後まで徹底抗戦した部族アパッチ族のリーダー・通称ジェロニモと、彼や先住民族達に理解を示し、彼等と友情を培うゲイトウッド中尉との物語が主軸です。ただ当然ながら、二人は互いに敵対する立場にあり、互いを理解すればするほど、背負う痛みも大きくなります。アメリカ軍は、インディアン達を保護すると言いつつ、現実には貧しい生活を強い、彼等のアイデンティティーを黙殺します。命だけは一応保証された飼い殺しの生活を選ぶか、自分達のアイデンティティーを守る為に断固として戦い続けるか。アメリカ政府が、もう少し本来の居住者であるインディアン達の立場を配慮していれば、あんな悲しい戦いや虐殺は起こらなかったのに…。ジェロニモの言葉にもあるように、何故こんなに広い土地に、我々の住める場所が無いのか?何故、白人達は全てを欲するのか?その歯がゆい問い掛けが、切なく響きました。逃亡したジェロニモに投降を促しに行く、ゲイトウッド中尉の胸中が悲しかったですね。軍が自ら提示した条件を守らない事を百も承知で、それでも軍人として、彼等を説得するという任務を果たさねばならない中尉。一方でアメリカ軍のあくどいやり方を骨身に沁みて理解しているジェロニモも、投降すればどうなるかは薄々勘付いていた筈です。観ていて、とてもやりきれない気分になりました。全体を通じて、淡々と歴史を追い続けているので、激しい戦闘シーンなどはありません。それだけに先住民族達の長い一時代が消え去ってゆく、その過程を歴史の目撃者のように観られる作品となっています。あまりメジャーではありませんが、非常に重厚な秀作だと思いました。
Jan 26, 2005
"ONCE UPON A TIME IN MEXICO" 監督、製作、脚本ロバート・ロドリゲス 出演・・・アントニオ・バンデラス(エル・マリアッチ)、サルマ・ハエック(カロリーナ)、ジョニー・デップ(サンズ)、ミッキー・ローク(ビリー)、ウィレム・デフォー(バリーリョ)、エヴァ・メンデス、ダニー・トレホ、エンリケ・イグレシアス、マルコ・レオナルディ、チーチ・マリン、ルーベン・ブラデズ、他。 ・物語序盤・ ギターを抱えた伝説のガンマン、エル・マリアッチ。彼は今、愛する女性カロリーナを失い、失意と過去の追憶の中に居た。カロリーナはかつては非情なマルケス将軍の情婦だったが、二人は彼を殺害し、愛し合うようになっていた。しかしマルケス将軍は息絶えてはいなかった…。そしてカロリーナは彼によって、命を奪われたのだった。メキシコにやってきたCIA捜査官のサンズは、マリアッチにマルケス将軍と麻薬王バリーリョの抹殺を依頼する。彼等は大統領を暗殺を企て、軍事クーデターを画策していたのである。サンズの依頼は飽く迄、彼等の計画を成功させた後に、二人を始末させる事だった。彼はその計画によって、大金をせしめようと目論んでいた。 実は前作も、その前のオリジナルも未見のまま鑑賞という暴挙に出てしまいました。という事で、序盤に出てくるナイフ使いの美女カロリーナが、前作の登場人物で、既に死亡しているという事実に気付くまで暫く掛かりました。そしてちょっとガッカリ。セクシーで、カッコ良かったのに。でもその分、マリアッチのアントニオ・バンデラスが頑張ってくれていたのでOKですが。で、またまた実は…ですが、私、アントニオ・バンデラスって苦手なのですよ~。顔が濃くて、暑苦しいオジサマだなぁと、常々思っております。ラテン系で、あまり美男子とも思えないし。しかしこの映画では、妙にカッコいいです。髪型は絶対に変!なのですが、何故か似合っている…笑。映画のノリ自体が思い切りB級路線なので、変さ加減が良いのでしょう。ギター抱えたガンマンて…、その設定からオバカB級まっしぐらです。しかし一方で、かなり残酷な表現も随所に出てきます。正直観ていて、うげげ…となってしまうシーンも。一番ショッキングだったのは、ジョニーのお目々が~…の所でした。美しいジョニーのお顔に何をするんですか、全く。でもジョニーって、根本的にこういう変な役の方がハマりますよね。意味不明な義手も変だけど可笑しい。とにかく強烈にクセのある悪役でした。悪役と言えば、ウィレム・デフォーやミッキー・ロークが出演していて、個人的に嬉しかったです。デフォーはあの顔だけで、オーラを発する俳優ですね。対するミッキー・ロークは、昔のセクシー男優の面影すら残していないような崩れぶりで、少し切ないのですが。メキシコだけに、チワワを小脇に抱えているのが面白かったです。あんまり可愛くないチワワだったな…。全体的に監督のB級好きが頻著に現れている作品ですが、娯楽として気軽に楽しむには良い映画ではないでしょうか。アクション・シーンもガン捌きを派手に決めてくれていて、有り得ないポーズなのですが、見た目には映えています。結構、面白かったですよ。
Jan 25, 2005
"MASTER AND COMMANDER: THE FAR SIDE OF THE WORLD" 監督・・・ピーター・ウィアー原作・・・パトリック・オブライアン『南太平洋、波瀾の追撃戦 英国海軍の雄ジャック・オーブリー』(ハヤカワ文庫刊) 出演・・・ラッセル・クロウ、ポール・ベタニー、ビリー・ボイド、ジェームズ・ダーシー、マックス・パーキス、マックス・ベニッツ、リー・イングルビー、他。・物語序盤・時は19世紀初頭。ナポレオンがヨーロッパで勢力を拡大していた頃。公海上でもフランス軍は優勢を誇っていた。対するイギリス軍は、多くの兵士を失い、年端も行かない少年まで兵士に徴用しなければならない有様だった。部下達から"ラッキー・ジャック"と呼ばれ、絶大な信頼を得ているカリスマ的艦長ジャック・オーブリーを頭とする軍艦サプライズ号にも、未熟な士官・士官候補生達が多く乗艦していた。ある時、航行中のサプライズ号は、フランスの私掠船アケロン号によって攻撃を受ける。相手は新型の軍艦で、火力、スピード共に勝っており、サプライズ号は防戦するのがやっとだった。オーブリー艦長の機転で濃霧の中に逃げ込み、漸く難を逃れたが、多くの負傷者を出してしまう。 パトリック・オブライアンのベストセラー海洋歴史冒険小説、"オーブリー&マチュリン"シリーズの、第10作目『南太平洋、波瀾の追撃戦』を中心に映画化した作品です。私、帆船が好きなんですよ~。フォルムが美しくして、見ているだけで、古き良き時代にタイムスリップしたみたいでワクワクしてきます。19世紀の軍艦が、忠実に再現されている所が良いですね。映像も品格があって、時代物にぴったりです。帆船の軍艦同士が大砲で撃ち合うシーンなど、海洋冒険小説ファンには鳥肌モノです。という事で、序盤の戦闘シーンは、これぞ海の男の闘いだぜ、という感じでとても興奮してしまいました。そしてこのまま、このノリで、宿敵のフランス私掠船と、壮絶な追撃戦が展開するのかと期待していたら、突然失速です。因みに、私掠船というのは、政府が公認した海賊船のようなものです。敵国の軍艦や民間船を襲撃して、物資を略奪する武装船で、民間の船を利用して、敵国の戦力を削ごうとした政府の政策の下に認可されたものです。序盤の緊迫感のある戦闘シーンから一転して、中盤はサプライズ号の中の人間関係やら、ガラパゴス諸島に停泊するやら、のんびりした船旅になってしまいます。血湧き肉踊る活劇の連続を期待していただけに、完全に肩透かしを食らってしまい、展開のだるさを感じました。オーブリーとマチュリン医師との、立場を超えた友情は、見ていてほのぼのしますが。正に海軍一筋、頭にあるのは敵を倒す事だけというオーブリーに対して、船医で学者でもあるマチュリンは、学術的な研究に夢中になっています。そんな二人の共通の趣味は、夜の静かな一時を、バイオリンとチェロの演奏をして過ごす事。オープリー&マチュリン・シリーズなので、この二人の人間関係は確り描写したかったのでしょうね。それにしても、自分で自分のお腹を手術するマチュリン、アンタはブラックジャックか(笑)激しい戦闘シーンは終盤に復活します。戦力的に圧倒的に劣るサプライズ号は、宿敵アケロン号にどのように立ち向かうのか?海戦モノとして、戦闘シーンのサンドイッチ的な構成には、少々疑問も残りましたが、映像は終始綺麗だったので、そこそこの出来栄えと評価すべきでしょうか。でも正直、期待はずれといった所でしたが…。ごめん。だって活劇を期待していたんだもの…。
Jan 24, 2005
1/29(土)より全国ロードショー。 "AGENTS SECRETS""SECRET AGENTS" 監督・・・フレデリック・シェンデルフェール出演・・・モニカ・ベルッチ、ヴァンサン・カッセル、アンドレ・デュソリエ、シャルル・ベルリング、ブルーノ・トデシーニ、ナイワ・ニムリ、リュドヴィック・シェンデルフェール、エリック・サヴァン、他。・物語序盤・ フランスの情報機関DGSE(対外治安総局)のグラセ大佐は、コードネーム“ヤヌス”計画を発令した。旧東欧諸国から入手した武器を密輸する武器商人イゴール・リポヴスキーの貨物船アニタ・ハンス号を爆破する作戦である。作戦を指揮するジョルジュは、女スパイ・リザと共に夫婦を装い、密輸船の入港先であるモロッコへ渡る。リザは最近、非人間的なスパイの生活に疲弊して、この任務を最後に引退したいと考えていた。ジョルジュにも胸中を話し、本部にも既に辞職を申し出たと言う。爆破の工作員である二人とも合流し、任務はCIAからの妨害があったものの、無事に成功した。 1985年に実際に起きた“虹の戦士号爆破事件”の実行犯である女スパイ、ドミニク・プリウールの証言をベースに、舞台設定を現代にアレンジして作られた作品。“虹の戦士号爆破事件”とは?1985年。フランス領ムルロア環礁における核実験の抗議活動のため、ニュージーランドに寄航していた世界的な環境保護団体「グリーンピース」の船舶「虹の戦士号」が、フランス情報機関DGSEの秘密工作部隊により爆破され、死亡者一人を含む、多数の負傷者を出した事件。直後にこの工作を支援していた工作員が逮捕され、フランスとニュージーランドの間で国際問題に発展。その責任をとって当時の仏国防相が辞任する事態となった。 先ず最初に強く述べたい事は、この映画はスパイ映画ですが、決して007シリーズや近日公開される「ボーン・スプレマシー」のような派手な娯楽作品ではないと言う事です。ハラハラ・ドキドキの手に汗握る、スパイ物だと勘違いして出掛けた日には、お怒りになる方が続出しそうなので、この点だけは押えておいて下さい。この映画は、非常にリアルなスパイ映画です。本物のスパイというのは、ジェームズ・ボンドのように目立ってはいけません。集団の中でも、個性を最大限に打ち消し、人々の記憶に残らないように振舞わなければなりません。それだけに映画自体も、派手な展開も無く、ともすれば地味な印象すら残します。今回の映画は実際に起きた事件と、実在の女性スパイがモデルになっていますが、舞台設定は現代的に変え、更に爆破される船も武器を輸送しているという事で、爆破任務の正当化も図っているようです。構成上、この事件はプロローグに過ぎません。メインはこの任務の成功後、女スパイであるリザが、組織から脱退したいと望んだ事により、罠に嵌められ、抹殺の危機に晒されるといった流れです。このように書くと、陰謀渦巻くサスペンスという感じですが、前述したように、表現は飽く迄リアルで地味。追いつ追われつなどというアクションは、殆ど皆無です。ただスパイという仕事が、如何に過酷で非人間的なものであるかが伝わってくるだけです。目立ってはいけないという理由で、誰とも深い付き合いも出来ず、信頼できる友人も居ない。家族にすら真実は告げられない。何所までも孤独な職業ですね。更に組織の方針に疑問を抱いたり、反抗すれば、容赦なく抹殺される。考えてみると、わりに合わない仕事ですよね。報酬はかなり貰えそうですが、精神的ストレスが大きすぎます。モニカ・ベルッチは今回、お色気シーンの無い役どころという事で、二つ返事でオファーを受けたとか。刑務所に収監される時、全裸になるシーンはありましたが、全体的に化粧っ気もなく素顔に近いメークで臨んでいました。ヴァンサン・カッセルも渋い演技を見せていました。個性的な顔立ちなので、普段は二枚目には見えないのですが、今作では渋さも加わってハンサムに見えました。ただ彼のパートナー、リザへの執着心は、リアリティーという面では少し疑問が残りました。でも彼の存在が無かったら、この映画、本当に救いが無いのですよね。個々に独立した、任務の時だけ行動を共にする孤独なスパイの間にも、友情や絆は生まれるのだと、そういう切ない願いを感じました。ラストは唐突に訪れます。後の事は、観客が個々に想像してほしいという意図なのでしょう。ところでモニカ・ベルッチって、イタリア人ですよね?この映画はフランス語です。彼女は英語の映画にも出演しています。という事は、トリリンガル?美貌を兼ね備えた才媛なのですね。羨ましい~(#^.^#)
Jan 23, 2005
"EXPLOSIVE CITY" 監督・・・サム・レオン 出演・・・アレックス・フォン、サイモン・ヤム、しらたひさこ、千葉真一、エドウィン・シュウ、サミュエル・パン、クリスタル・クォック、ラム・シュー、エディ・コー、他。 ・物語序盤・香港国際空港で行政庁長官が、女テロリストに狙撃、負傷する事件が発生した。激しい追撃の末、容疑者の女は逮捕される。だが逃亡の際、頭部を負傷した彼女は、過去の記憶を失っていた。取調べに当たっていたミン刑事は、彼女が“オトウサン”と呼ばれている国際テロ組織のリーダーの部下・ジェイドこと北条真理である事を突き止めた。ミン刑事はチョン管理官と共に、ジェイドを囮として、テロ組織の壊滅を図る。しかしそんな矢先、ミン刑事の自宅に、組織の者が押し入り、彼の妻を射殺、一人息子を拉致してしまった。息子を人質に取られたミン刑事は、その事を誰にも打ち明けられぬまま、組織の命令に従って、移送中のジェイドを銃撃する。警察とテロ組織の双方から追われる立場になったミン刑事は、ジェイドと共に、事件の真相を追ってゆく…。 またまたとんでもなくマイナーな映画を観てしまいました。なんでこんなの観てるんだろうと、自分でも苦笑い。千葉真一さんも、「キル・ビル」といい、胡散臭い映画の胡散臭い役が多いですね(笑)。今回は国際的テロ組織のリーダーですよ。その名も"オトウサン"。由来はそのまんま。世界各国から子供達を拉致してきては、自分の手駒にすべく、洗脳教育してゆく人物で、テロリスト達にとっては、幼い頃から育ててくれた父親的存在なのです。香港映画だからショボいという先入観がありますが、ストーリー自体は、然程悪くありません。あまり無茶な展開も無く、そこそこ普通に楽しめるサスペンス・アクションでした。ただ特筆すべき何かも無い作品で、観た直後に大半を忘れてしまいそうな映画でした。実は既に記憶が朦朧としてます…。印象に残ったのは、出てくる人物が、殆ど全員母国語で喋っているという点。例えば千葉さんは日本語、西洋系の部下は英語と、会話しているにも関わらず、別々の言語で通していました。お互いに相手の言語を聞き分ける能力があると考えれば、納得できない訳でもないのですが。中国語・日本語・英語が入り乱れて、とてもインターナショナルな雰囲気でした(笑)。準主役のしらたひさこさんは、流石に絡む相手が中国人なので、殆ど中国語で会話していましたが。台詞を覚えるのだけでも大変だったと思うのに、更にアクションもあったりして、苦労しただろうなぁ。役作りの為に、随分トレーニングをした模様です。冒頭からハードなアクションを見せてくれました。変装用にロングヘアーのカツラを被っているのですが、とても綺麗でしたね。事件の黒幕は、なんとなく想像が付くのですが、サスペンスとしても最後まで結構楽しめました。でももう少し予算が掛けられれば、派手なアクションが出来たのに惜しいですね。爆裂都市というわりには、爆裂してなかったです…笑。
Jan 22, 2005
1/22(土)より全国ロードショーです。監督・・・井筒和幸 原案・・・松山猛『少年Mのイムジン河』(木楽舎刊) 出演・・・塩谷瞬(松山康介)、高岡蒼佑(リ・アンソン)、沢尻エリカ(リ・キョンジャ)、楊原京子(桃子)、尾上寛之(チェドキ)、真木よう子(チョン・ガンジャ)、小出恵介(吉田紀男)、波岡一喜(モトキ・バンホー)、オダギリジョー(坂崎)、光石研(布川先生)、余貴美子、ケンドー小林、前田吟、笑福亭松之助、ぼんちおさむ、他。 ・物語序盤・ 1968年の京都。東高校の2年の生徒達は、近くにある朝鮮高校の生徒達と諍いを起こして、新聞沙汰になる。日本人と在日朝鮮人の若者達の間では、以前から争いが絶えなかった。渦中のクラスの担任布川は、戦争は戦争によってしか解消できないと、朝鮮高校へサッカーの親善試合を申し込んでくるように、康介と紀夫に命ずる。恐る恐る朝鮮高校にやって来た二人だったが、そこで康介は、吹奏楽部でフルートを吹く可憐な少女キョンジャを見掛け、一目で惹かれてしまう。しかし彼女は、朝鮮高校の番長とも言える、凶暴なアンソンの妹…。キョンジャ等が演奏していた曲「イムジン河」は、最近フォーク・グループがレコード化する予定だったが、問題が起きて中止になっていた。楽器店で知り合った若者・坂崎から、ギターを教わった康介は、キョンジャと二人で「キムジン河」を演奏したいと夢見る。 『イムジン河』は朝鮮半島の中央に流れる河で、歌は祖国の分断の悲しみを歌った歌。当時ザ・フォーク・クルセダーズのカバー曲が、訳詩の問題などの事情で発売中止になった。彼等の曲「悲しくてやりきれない」は「イムジン河」のメロディーを逆回転させて作ったそうです。因みにタイトルの「パッチギ」とは、ハングル語で“突き破る、乗り越える”という意味で、スラングとして“頭突き”の意味もある単語。井筒監督作品、実は初めて観ました。テレビに頻繁に出て喋っているので、監督というより、私の中ではタレントさんというイメージが強いです。いつも偉そうに他人を批判していますが、本人の映画は大した事がないだろうと(笑)パーソナリティーは決して嫌いじゃないですが。さて本題です。実は、単にオダギリ・ジョー目当てで出掛けてきました。映画紹介などを読んでも、全く食指が動かなかったのですが、オダギリ・ジョーが出ている…、たったそれだけの動機で行ってしまいました。結論。映画は不純な(?)動機で観に行くものではありませんね。いやぁ、久し振りに途中退席したくなりましたよ(笑)これ、本当に全国ロードショーするつもりなんですかね?テレビ番組に例えて表現するなら、普通の邦画が全国ネットの番組なら、この映画は京都放送の番組みたいです(笑)。泥臭い、土臭い、しみったれたローカル映画…というのが、私の印象でした。勿論、京都放送の番組にも味わいはあります。その土地ならではの、ローカル故の田舎臭い味わいが。この映画にも、そういう点での味わいはありました。如何にも井筒監督が撮りそうな映画ではあったので、彼のファンには支持されると思います。でも私には、合わない波長でしたね…。細かく言ってゆくと、先ず何が一番に言いたいのか、伝わってこない脚本に難アリ。舞台は1968年の京都で、在日朝鮮人達と日本人高校生との交流を描いています。チラシには、日本版ウェストサイド・ストーリーという文句が書かれていますが、互いに敵対するグループに属する男女の悲恋とか、そういう映画ではありません。二人の恋愛は、作品の一部に過ぎませんでした。群像劇と言ってしまえば、焦点の定まらない脚本も一応可なのかもしれませんが、どのエピソードにも心に響くものが無かったのは痛いですね。在日の問題も、取り上げ方が薄っぺらで、社会派でもないですし…。この時期に在日というテーマ選択も、韓流ブームに便乗しているようで興醒めです。加えて言えば、在日朝鮮人=可哀想な被害者という短絡的で押し付けがましい思考が鬱陶しいです。観終わって残ったのは、妙にリアルな殴り合いのシーンだけでした。何所でも喧嘩して、その度に血塗れになっていました。その割りに、次に出てくると、全員無傷なのですよね(苦笑)単に殴り合いの喧嘩を賛美しているようにしか見えず、少し不愉快ですらありました。クライマックスでは、メインテーマ曲である「イムジン河」を効果的に使って、そこそこ上手く纏めていましたが。演技面ではメインの若手達が、とても頑張っていたと思います。演技しているという感覚ではなくて、本当にそういう高校生が居るという印象でした。全員日本人ですが、韓国語の台詞も板に付いていたと思いますね。個人的には、アンソン役の高岡蒼佑が魅力的でした。ついでに私のお目当てのオダギリ・ジョーは、一風変わった役でした。ザ・フォーク・クルセダーズのメンバーの坂崎氏なのですが、お調子者のヒッピーみたいな人で、可笑しなカツラを被って登場します。新しい芸風を観た感じでした(笑)。これはこれで良いか。
Jan 21, 2005
"OCEAN'S ELEVEN" 監督・・・スティーヴン・ソダーバーグ出演・・・ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、マット・デイモン、アンディ・ガルシア、ドン・チードル、エリオット・グールド、カール・ライナー、ケイシー・アフレック、スコット・カーン、エディ・ジェイミソン、バーニー・マック、シャオボー・クィン、他。・物語序盤・窃盗罪で服役していたダニー・オーシャンは、四年の刑務所暮らしの末に、仮保釈の身分となる。だが反省する所か、彼が考えていたのは、前代未聞の犯罪計画。狙いは、大富豪ベネディクトが管理する、ラスベガスの三大ガジノの収益金を保管している巨大金庫だった。オーシャンは、旧友のラスティーに計画を持ち掛け、計画の実行に必要なそれぞれの道のエキスパートをピックアップする。かくして、バシャ、イエン、ライナス等、総勢11人の窃盗団が結成された。しかしオーシャンがこのカジノを狙った理由は、大金以外にもう一つあった。それはオーシャンの元妻で美術館の館長をしているテスの存在だった。彼女は現在、ベネディクトと交際していて、オーシャンは彼女を取り戻したいと密かに考えていたのだった。 シナトラ・ファミリー総出演の「オーシャンと十一人の仲間」(1960)のリメイクです。今回で二度目の鑑賞です。一度目は劇場公開時でした。豪華キャストが売りなだけの、凄い駄作だったという印象だけが残っていたのですが(笑)。今回改めてじっくりと観直したら、意外や意外、面白いじゃないですか。これほど感想が180度変わる映画も珍しいです。自分なりにその理由を検証してみました。この映画、「オーシャンズ11」とタイトルに冠するだけあって、出てくる人数が多いです。初見の時に強く感じたのが、人数が多すぎて複雑になり、それぞれのキャラクターを使いきれていないといった感想でした。端的に言うと、誰が誰で、どの役割を分担しているのか、覚えきれないのですよね。そして各キャラクターを頭に叩き込めない内に、物語だけがどんどんと進行して、結果的に物語もよく理解できずに終わってしまうという悪循環だったと思います。二度目の鑑賞では、一度目の予備知識があったお蔭で、登場人物達への理解度が深まり、筋書きに集中する事ができたので、クライム・アクションとして、純粋に楽しめたのではないでしょうか。結論として、この映画は2回観るべしですね。しかし2回観ても、マット・デイモンの役柄の必要性は、あまり感じられませんでした。各分野のエキスパートである他のメンバーと比較しても、スリという特技が、あの強奪計画に必要だったでしょうか?お話の流れでは、金庫破りもできるような感じでしたが、一人マヌケで、彼を大きな山の仲間に引き入れた根拠が分かりませんでした。わりと贔屓の俳優なので、彼そのものにケチを付けるつもりはありませんが…。ちなみにジョージ・クルーニーは「ウェルカム・トゥー・コリンウッド」で、今回の役のセルフパロディーらしき役柄を演じていましたね。ところでラスベガスのカジノのお金って、本当にどんな風に管理されているのでしょうね。想像も付かないくらいの大金が毎日動いている訳ですから、管理は相当厳重でしょう。本当にあんな大金庫が地下にあるのでしょうか?ちょっと覗いて見たい気分になりました。もうすぐ「オーシャンズ12」も公開されますが、楽しめるかどうか期待半分不安半分です。予習はしたので、その分有利かとは思いますが。
Jan 20, 2005
2/5(土)より全国ロードショーです。監督・・・塚本連平 原作・・・秋元康 出演・・・ミムラ、吉沢悠、瀬戸朝香、石橋蓮司、鰐淵晴子、ピーター・ホー、他。 ・物語序盤・保育士の杏子には、中華料理店でバイトをしながら、カメラマンを目指す恋人尚人が居た。保育士の同僚に誘われて、尚人が働く店にやってきた杏子。その頃、店では店長の娘メイフォンの携帯が鳴っていた。店長は娘が付き合いだした男からだと思って、勝手に電話を取り、不機嫌に応対する。しかし聞こえてきたのは娘の悲鳴だった。驚く店長だが、当のメイフォンは何食わぬ顔で帰宅した。その晩、尚人が厨房を覗くと、店長が油に顔を突っ込んで死んでいた。そして杏子の同僚の携帯にも、店長の娘に掛かってきたのと同じ着信音で電話が掛かる。それは一年前、死の予告電話として世間を騒がせた、恐ろしい着信メロディだったのである。 前作の「着信アリ」を未見で臨んだら、純粋な続編で、ちょっと失敗したなと後悔しました。純粋な続編と言っても、前作からの続投は刑事役の石橋蓮司氏のみで、後は新メンバーで、新たな展開を見せている訳ですが。ただ前作で被害者の口の中にあった赤い飴が、印象的な場面で使われているので、この意味が実感できなかったのが残念でした。やはりご覧になる予定の方は、一作目を鑑賞してからの方がベターなようです。今作では冒頭から中華料理店で中国人親子が出てきたり、舞台のメインが台湾に移ったりと、日本のみならず、広くアジアを意識させる設定になっていました。ホラーとしての怖さは、然程強くありませんでした。お馴染みのびっくり箱的な、突然現れる手や通り過ぎる人影といった手法が用いられていますが、見慣れたせいもあってか、どきっとさせる程のインパクトはありませんでした。被害者も少なく抑えていて、全体的に謎解きを重視したサスペンスの様相を呈していました。主演はミムラさんとなっていますが、観た印象では、瀬戸朝香さんの方が主役といった感じでした。ミムラさんは常に受身の被害者というタイプで、物語を引っ張ってゆくのは、ジャーナリスト役の瀬戸さんでしたね。ついでに演技面についてですが、ミムラさんの演技力に疑問を持ちました。演技経験もまだまだ不足で、とても映画で主役を張る女優の格ではないと思いましたが。泣きのシーンが痛かったですね。泣き顔を無理矢理作っているだけで、涙の一粒も出ていません。即興で涙を出す実力が無いのなら、目薬でも使えばいいのに…。お蔭で悲しみが全く実感できませんでした。作品としては、可も無く不可も無くといったレベルでしょうか。ホラーファンにとっては、今ひとつパンチに欠けるというのが正直な感想です。蛇足ですが、「リング」の井戸のような場面が出てきます。ここで不気味な少女が現れるのですが、この人が誰なのか、よく分かりませんでした。鍵を握る少女よりは、明らかに体格が大きかったように見えましたが。
Jan 19, 2005
"TEA WITH MUSSOLINI" 監督・・・フランコ・ゼフィレッリ出演・・・シェール、ジュディ・デンチ、ジョーン・プロウライト、マギー・スミス、リリー・トムリン、チャーリー・ルーカス、ベアード・ウォレス、マッシモ・ギーニ、チャーリー・ルーカス、クラウディオ・スパダロ、他。 ・物語序盤・1935年、イタリア・フィレンツェ。イギリス大使の未亡人レディ・ヘスターをリーダーとする、英国人婦人のグループは、口煩いのが有名で、周囲からサソリ会と呼ばれていた。一方、派手で奔放なアメリカ人女性のエルサは、へスターとは犬猿の仲。英国人婦人の一人で、服地商パオロの秘書を務めているメアリーは、彼の私生児ルカの世話役を依頼される。当惑しながらも、ルカの身の上に同情したメアリーは、他の婦人アラベラ等の協力を仰ぎながら、彼の面倒を見る事に。また生前ルカの母親と面識のあったエルサは、ルカの将来の為に教育費をメアリーに援助する。英国婦人達は異国でも自分達の生活スタイルを貫いていたが、世界は徐々に暗雲漂う時代に突入しようとしていた。ファシスト達による外国人排斥の暴動が起きた時、へスターは新聞記者を伴って、ムッソリーニの元を訪れる。ムッソリーニは英国人を護ると明言し、へスターは彼の言葉を信頼するが…。 第二次世界大戦を扱った映画としては、異色の明るさです。敵対国となってしまった外国で暮らす人々のお話ですから、強制収容されたりして、当然苦労する筈なのですが、皆さん見事にオバサマ・パワーで逆境にもたじろぎません。イギリス婦人の中心人物レディ・ヘスターは、大戦下にあってもムッソリーニが自分達を特別扱いしてくれる紳士だと信じて疑いません。収容所からホテルに移れたのも、ムッソリーニの計らいだと信じ込んでいます。大抵の映画だと、上流階級の無邪気さも厳しい現実に打ちのめされるのですが、この映画では天然パワーが現実をも打ち破ります。戦争物で、ここまで楽天的だと、逆に新鮮ですね。戦争物=重苦しいという固定概念を、気持ちよく打破してくれました。オバサマ達のキャラクターがそれぞれ味わいがありますね。へスターは如何にもイギリスの気位の高い貴婦人という感じで、メアリーは世話焼きの人情味溢れるおばさん。犬好きで少し変わり者のアラベラは、ドイツ軍が街にやってきても、自分の愛するフレスコ画を守ろうと一生懸命。またシェール演ずる、自由奔放で快活なアメリカ人女性も、典型的なキャラクターなのですが、実は優しい面も弱い面も持ち合わせているという役柄です。いつも作業着のような男物の服を着ている考古学者ジョージーも居ました。この五人のオバサマ達が完全に仕切っている映画でしたね。彼女等を敵に回しては、ドイツ軍も連合軍もたじたじです。その他、見所と言えば、フィレンチェの風景が美しいですね。イタリアの街並みには、時代を感じさせる趣があって素敵ですよね。婦人達が連行された、沢山立ち並ぶ塔で有名なサンジミニャーノも、個人的に懐かしかったです。これと言って、凄いエピソードはありませんが、温かみと味わいのに満ちた作品でした。
Jan 18, 2005
"SLIDING DOORS" 監督・・・ピーター・ハウイット出演・・・グウィネス・パルトロー、ジョン・ハナー、ジョン・キャロル・リンチ、ジーン・トリプルホーン、ザーラ・ターナ、ダグラス・マクフェラン、他。 ・物語序盤・ヘレンはPR関係の企業で働く女性。作家志望で無職の男ジェリーと同棲しており、経済的にも彼を養っている。ところがジェリーは、ヘレンの外出中に、昔の彼女を部屋に連れ込み、浮気をしていた。ある朝、会社に遅刻してきたヘレンは、突然会社をクビになってしまった。ショックを受けつつ、帰宅しようとするヘレンは、地下鉄の駅に向かう。そして発車寸前の電車に飛び乗ろうとした。しかしドアは彼女の目の前で閉まり、結局タクシーで家に帰る羽目に。更に不運にも、タクシーを拾う直前に、引ったくりに遭い、抵抗した際に額に怪我をしてしまった。それと、同時に…。パラレルワールドでは、ヘレンはギリギリ電車に間に合っていた。そこで、たまたま隣に座った男ジェイムズはお喋りで、見知らぬヘレンにも遠慮なく話し掛けてきた。困惑するヘレンだが、ともかくもお愛想程度に言葉を交わす。 公開当時、わりと評判が良かったラヴストーリーと記憶しております。一番のセールスポイントは、ある時点を境に、ヒロインが二通りの人生を進んでゆく、同時進行型の構成でした。もしもあの時、こうしていたら…。誰にでもあるスチュエイションですよね。特に不運な出来事に遭遇した時など、あの時ああしてさえいれば…、とよく思ったりします。そういうありがちな状況をヒントにして作られた作品です。ロマンス物にしては、そこそこ楽しめました。(管理人、ラブ・コメ、ロマンス物が大の苦手。(^_^;))同じ登場人物達が二通りの物語を演ずる訳ですから、交互に出てくる場面がどちらのものなのか、観客は戸惑ってしまいそうですが、そこはグウィネス・パルトローの髪型を変える事でフォローしてあります。グウィネスの顔立ちは、個人的にあまり好みではないのですが、短くカットした金髪は似合っていて、キュートに思えました。どちらの選択肢を選んでも、ヒロインにとっては受難の日々となって、気の毒なのですよね。ラスト近くでは、不幸な出来事が起こり、ちょっとビックリしました。比較的ハッピーに思えた筋道の方が、実は結果的には悲劇的だというのも、運命の皮肉を表しているのでしょうね。納得ゆかないのは、ヒロインが関わる男達に魅力が無さ過ぎる点。一人は作家志望という肩書きの、単なるぐうたら寄生虫男。もう一人は軽佻浮薄なお喋りナンパ男。ヒロインや作家志望男の浮気相手は、少なからず頭脳明晰な独立精神旺盛な女性なのに、何が悲しくて、あんなダメ男に執着しているのでしょうか?ジゴロというには、情けない顔立ちですし…。お喋り男(ジョン・ハナー)も、単に調子が良いだけで、ルックスも冴えないし、ヒロインが心乱される気持ちに説得力がありませんでした。だってジョン・ハナーって、「ハムナプトラ」でマヌケなお兄さん役だった人ですよ。どう転んでもハンサムじゃないですよね。男性のキャスティングを変えてくれたら、自然に受け流せたと思うので、少し残念でした。ちなみにスライディング・ドアとは、地下鉄のドアの事です。天井まで続く丸みを帯びたドアのデザインは、なかなかお洒落ですね。日本の地下鉄でも採用してくれたらいいのにと思いました。
Jan 17, 2005
"KUNG FU HUSTLE" 監督、制作、脚本・・・チャウ・シンチー出演・・・チャウ・シンチー、ユン・チウ、ユン・ワー、ドン・ジーホワ、 シン・ユー、ブルース・リャン、チウ・チーリン、チャン・クオックワン、ホアン・シェンイー、他。 ・物語序盤・ 荒んだ時代、都会には悪が蔓延っていた…。今、街を牛耳っているのは、"斧頭会"という非情な組織だった。しかし貧民窟である"豚小屋砦"と呼ばれる古ぼけたアパートには、"斧頭会"も未だ踏み込んでおらず、貧しいながらも平和な日常があった。そんなある日、シンが相棒と共に、この"豚小屋砦"に現れた。連れの男を"斧頭会"のボスだと威勢を張るが、実は二人ともただのチンピラ。シンは少年の頃は正義の味方に憧れたが、悪ガキ達から手痛い目に遭わされたのを切っ掛けに、悪こそ勝者だという結論に辿り着き、栄華を誇る"斧頭会"のメンバーになろうと目論んでいたのだった。シンは住民達とトラブルを起こし、結果的に"斧頭会"を平和な貧民窟に呼び込んでしまう。しかし住民達の中には、世間から隠れ住むカンフーの達人達が混じっており、群れをなす強面の男達を易々と撃退するのだった。面子を潰された"斧頭会"のボス・サムは、殺し屋を雇って報復に出るが…。 公式サイトの記事を読む前に、それぞれのゲームをクリアしなければいけません。これが結構難しいので大変です。連続クリックで、手がつりそうになりました。ありえね~!(爆)映画は期待通り楽しませてくれました。チャウ・シンチー監督のコメディーセンスが好きですね。冒頭から、統一された黒服の斧頭会ダンサーズが、意味も無く踊り続けてくれます。この時点で、私は笑いが込み上げてきて、既にノックアウト寸前でした(笑)。全編に、香港映画らしい胡散臭さとナンセンスさを漂わせつつ、最新の技術と並々ならぬ拘りによって、隙の無いエンターティメントを確立させている所がお見事でした。今回、監督・制作・脚本・主演と4役をこなしたチャウ・シンチー氏ですが、何よりその若さに驚きました。世界に打って出られる映画監督と言えば、それなりに年寄りに違いないという私の思い込みは、根底から覆されました(笑)才能と実力のある若手監督が育つ土壌があるというのは羨ましいですね。幼少の頃からカンフーをこよなく愛していて、今回初めて念願のカンフー映画を撮影できたという事ですが、その熱い思いが画面に溢れていました。序盤、主人公シンが貧民窟の集合住宅に現れる場面から、自身の出世作である「少林サッカー」を呆気なく一蹴(笑)。カンフーをやるぜ!という気合の表れでしょう。起用した俳優やスタッフ達が、それぞれの道でキャリアを積んだ大御所揃いというのも、思い入れの強さを感じました。それだけ拘れる予算を得る事が出来たというのも、監督にとって幸運でしたね。ついでに、俳優としてのシンチー氏は、へたれ具合がとても良いです。まさに虚勢を張るだけの負け犬という感じが滲み出ていて上手い。でもカンフーマニアというだけあって、脱ぐとかなり引き締まったボディで素敵です。顔も何気に男前で、個人的に好みかも(笑)。豚小屋砦に住まう、傍目には凡庸だけれど実はカンフーの達人という人々と、ギャングが差し向ける凶悪な殺し屋との死闘は、CGとワイヤーアクションで見応え充分です。勿論、その映像の随所にも、笑いのエッセンスは散りばめられています。黒服集団と達人との戦いは、完全に「マトリックス」のパロディー。でも遥か上空に、ぴょんぴょん飛ばされてゆく黒服のお兄ちゃん達がなんとも可笑しくて…。その他、細かいお笑いシーンは、是非ご覧になって確かめて下さい。筋書きも最後まで停滞する事なく楽しめ、最後は確り心温まるものにしてあったりと、一見おバカ映画でありつつも、なかなか確りとした構成になっていました。カンフーやカンフー映画に詳しい方が観れば、より深く楽しめると思います。でも何の知識も持たず、頭を空っぽにして観るのが一番かもしれませんね。ところで、扉の向こうから大量の血が噴出するという、「シャイニング」の印象的なシーンがパロディとして使われていましたが、監督はホラーもお好きなのでしょうかね?
Jan 16, 2005
"WINDSTRUCK" 監督、脚本・・・クァク・ジェヨン出演・・・チョン・ジヒョン、チャン・ヒョク、キム・テウク、チャ・テヒョン、他。 ・物語序盤・ヨ・ギョンジュン巡査は、正義感溢れる若き婦警。 ある時、非番で街を歩いていると、ひったくり事件に遭遇する。彼女は犯人にタックルを掛けて見事逮捕と思ったが、実はそれはひったくり犯を追い掛けている善意の一般市民だった。彼の名はコ・ミョンウ、女子高で教師をしている、真面目で少し気弱な青年だった。彼の協力のお蔭で、ひったくり犯は無事に逮捕されたが、意地っ張りなギョンジンは、彼に謝罪しようとしなかった。その後、青少年の非行見回りの為に、警察を訪れたミョンウは、偶然居合わせたギョンジンと、夜間パトロールに出向く羽目に。ギョンジンは、不良達を容赦なくぶっ飛ばしたり、挙句の果てには、管轄外の麻薬取引現場にまで踏み込む。ギョンジンに振り回され、散々な目にあったミョンウだったが、その夜の事が切っ掛けで、二人は親密になってゆくのだった。 一体全体、この彼女をどう紹介したら良いでしょうかねぇ(笑)。取り敢えず、第一声として出たのは、「訳わからん…。」でした。制作者サイドが狙った作品の方向性が、全く見えませんでした。コメディなのか、シリアスなのか、アクションなのか、ロマンスなのか、はたまたファンタジーなのか。答えは、その全てである、なのですが…。「こういうエピソードを入れてみたいんだよね♪」という監督の思い付きで、面白そうな要素を手当たり次第に集めて、それ等を適当に繋ぎ合わせたような作品でした。作品のトーンが一定しない為、観ている側は右往左往してしまい、結果的にドラマから弾き出され、感情移入できずに終わってしまいます。色んな要素を詰め込む事だけに専念した為、ドラマ作りはかなり大雑把です。例えば、二人が恋愛関係に至るまでの過程も、観客を納得させるだけの流れはありません。いきなり恋人という事になり、唐突に旅行に出掛ける二人。そしてこれまた唐突に、車ごと河に転落して死にかける男。本当に、何が言いたいのですか?と真剣に問い質したくなりました…。無節操さは、音楽にも当て嵌まります。オープニングの"Knocking on the heavens door"のカバーから始まり、アメリカのオールディーズ、クラシック、韓国のポップ、そして盛り上げるシーンではX JAPANの"tears"が延々と掛かります。恐らく監督の好きな歌の、統一感の無い寄せ集めとしか思えない選曲には、開いた口が塞がりませんでした。これだけ鬱陶しくヴォーカルの入ったBGMも珍しいですね。だらだらと続く旅の途中で、ヒロインが話して聞かせる妙な御伽噺は、後の物語に繋がってきます。まさかそういう展開になるとは思ってもみなかったので、正直驚きました。でもそもそも、何でもありの映画なので、何が起きても不思議ではないのですが…笑。「ゴースト ニューヨークの幻」の下手なパクリみたいな部分は、変にハリウッド映画を真似ようとする韓国映画の悪い一面が露呈していましたね。ラストには前作の「猟奇的な彼女」に繋がるようなオマケシーンが用意されています。見所は、チョン・ジヒョンそのものなのかなぁ、という感じの映画でした。従って、彼女に関心の無い人には、何の魅力も無い映画でしょう。
Jan 15, 2005
1/22(土)より全国ロードショーです。監督・・・青山真治 原作・・・東野圭吾『レイクサイド』(実業之日本社刊) 出演・・・役所広司(並木俊介)、薬師丸ひろ子(並木美菜子)、柄本明(藤間智晴)、鶴見辰吾(関谷孝史)、杉田かおる(関谷靖子)、黒田福美(藤間一枝)、眞野裕子(高階英里子)、豊川悦司(津久見勝)、他。 ・物語序盤・名門の私立中学の受験を控えた子供を持つ3家族が、湖畔にある別荘に塾の講師・津久見を招いて、お受験合宿をしていた。並木俊介は現在、妻の美菜子とは別居中だったが、彼女の連れ子で義理の娘の受験という事で、気乗りしないながらも、合宿に合流する。妻の強い要望もあって、夫婦関係が破綻している事は内密である。しかし俊介には、カメラマンをしている愛人・英里子が居た。娘の名門校の受験に対して懐疑的な俊介を他所に、他の参加者である藤間夫妻と関谷夫妻は、大切な我が子の受験の為と、真剣な面持ちで模擬面接を受けていた。そんな時、仕事の用件という名目で、英里子が別荘に現れた。俊介は困惑するが、英里子は別荘に留まって、夕食まで共にし、その晩は近くのホテルに泊まるという事だった。夜、英里子にホテルに来るよう呼び出された俊介が別荘に戻ると、そこには英里子の死体が横たわっていた…。 最近個人的に、邦画に対する審美眼が甘くなっている気がします。昔は邦画なんてクズ、と端からそっぽを向いていたのですが、沢山観ている内に、邦画に対する心構えが出来てきたのでしょう。全体的に低予算だし、ヘボいのは当たり前と割り切れ、少々変な所があっても素直に感動できたりと。私も人間ができてきたなぁと(笑)。ウソ。この前の「北の零年」もツッコミ所は沢山あったのに、じーんとしたりして、私もすっかり丸くなりました。前置きはさておき、この映画についでですが。まずまず楽しめました。お受験合宿に、参加者がたった3家族ですかい、と序盤から違和感はありましたが、よくよく考えると、これ以上の人間が居ると、人員を使い切れないのですよね。その点で潔い切り方だったと思いました。序盤で薬師丸ひろ子が、夫の愛人を殺してしまった!と告白するシーンでは、「Wの悲劇」を思い出しました。あの時殺したのは、お祖父様でしたが(笑)。薬師丸ひろ子も年をとりましたね。でも相変わらず、年齢不詳の可愛らしさはありました。別荘に集まった家族達は、子供の受験、引いては将来に関わると、死体を隠して、何事も無かったかのように振舞う事で合意します。柄本明演ずるリーダー格の医師の平然とした態度が、小気味良かったですね。やっている事は、とても残酷なのですが、至って自然体です。他の人達も主人公を除いては妙に冷静で、この飄々とした空気が、如何にも日本の現代映画っぽい感じでした。お受験合宿などという題材も、まさに日本ならではですよね。これは絶対に日本でしか作れない映画だと思いました。ツッコミ所も結構あります。現実的ではない部分も、説明の行かない妙な行動も…。それでもサスペンスとして、なかなか上手く作ってあったと思います。ともかくも最後まで飽きる事はありませんでした。演技面では実力派の俳優が揃っていたので、杉田かおるの下手さが浮いてしまったのが残念でしたね。如何にも台詞を読んでいますというような調子で。周りが周りだけに、彼女レベルの女優には厳しい環境だったみたいです。
Jan 14, 2005
2/11(金)より全国ロードショーです。"THE BOURNE SUPREMACY" 監督・・・ポール・グリーングラス原作・・・ロバート・ラドラム「殺戮のオデッセイ」 出演・・・マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、ジョーン・アレン、ブライアン・コックス、カール・アーバン、ジュリア・スタイルズ、他。 ・物語序盤・記憶喪失になった元CIAエージェント、ジェイソン・ボーンは、今では恋人マリーと、インドのゴアで平穏な日々を送っていた。悪夢にはうなされるものの、マリーは優しく彼を包んでくれていた。しかし幸せな生活は長くは続かなかった。ジェイソンは再び、かつてのように命を狙われたのである。そして車で逃亡中に、遠方からの銃撃によって、同乗していたマリーが命を落としてしまった。その頃、ベルリンでは、CIAの女性諜報員パメラ・ランディらが、内部で起きた公金横領事件を調べていた。しかし捜査中に、何者かの襲撃を受け、二人の捜査員が殺害された上、関係ファイルを奪われてしまった。事件現場で採取された指紋を照合した結果、それは失踪中のジェイソン・ボーンのものであった…。 「ボーン・アイデンティティー」の続編。原作小説3部作の2作目『殺戮のオデッセイ』を映画化したものです。私、以前、前作も鑑賞したのですが、実はほぼ完全に忘却しております…。純粋な続編なので、これからご覧になる方は、「ボーン・アイデンティティー」で予習される事をお勧め致します。これはこれで独立した物語になっているので、全く知らなくても楽しめる作りにはなっていますが。素直にとても面白かったです。スパイ・サスペンスの秀作だと思いました。インドやイタリアやロシアなど、世界各地を股に掛けたストーリーですが、破綻せずに纏めた脚本が見事でしたね。一番私好みだったのは、恋愛要素を排除していた点でした。前作では、偶然巡り会ったヒロインと恋仲になって、如何にもお約束の展開になった部分が残念だったのですが、今回は終始ジェイソン・ボーンがハードに決めています。その当然の帰結として、前作のヒロイン・マリーを演じていたフランカ・ポテンテは、序盤で早々に姿を消してしまうのですが…。彼女のファンにとっては、寂しい展開かもしれませんね。個人的には、チョイ役でも前作から続投してくれた彼女の心意気に感謝しております。今回のキーポイントは、ボーンの過去の記憶です。前作でも記憶喪失は重要な要素でしたが、今作では更に詳細な記憶の断片が、フラッシュバック的に蘇り、ボーンを苦しませます。前作では判らなかった、CIA工作員としてのボーンの過去が明るみになり、漸く彼の人格が形成されたという印象が残りました。小説も三部作なので、スパイとして完成したボーンが活躍しそうな次回作が楽しみです。作る気はありますよね、勿論?全般に渡って、ボーンを巡る追い駆けっこは、スリル満点なのですが、特に終盤のカーチェイスのシーンは、インパクトがありました。一応舞台はロシアとなっていますが、撮影はポツダムだったそうです。何れにせよ、よくもあんな危険なカーチェイスを撮影できたものだと驚きました。混雑したトンネル内での暴走には、度肝を抜かれましたね。撮影中に事故は起きなかったのかと心配になりました。少し残念だった点は、近接撮影の時、カメラの切り替わりが激しすぎた所ですね。細切れのシーンを、更に観づらくさせる手振れ映像の数々。これが終始続くので、スクリーン近くで鑑賞していると、目がチカチカしてしまいます。固定カメラの長回しでも充分迫力のあるアクションであるにも拘らず、敢えてこの撮影方法を用いた点は、逆に勿体無いと思いましたね。鑑賞する時は、少し遠い座席の方が良いかもしれません。それだと迫力が減ってしまいますが…。でも全体的には、かなり評価の高い作品でした。ちなみに司会者のお姉さまによると、マット・デイモンはカメラ映りが悪くて、実物はとても美男子だそうです。本当なのでしょうか(笑)?
Jan 13, 2005
2/5(土)より全国ロードショーです。"THE NOTEBOOK" 監督・・・ニック・カサヴェテス原作・・・ニコラス・スパークス『きみに読む物語』 出演・・・ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス、ジーナ・ローランズ、ジェームズ・ガーナー、ジョーン・アレン、ジェームズ・マースデン、サム・シェパード、他。 ・物語序盤・ 療護施設で暮らしている一人の老女が居た。彼女はアルツハイマー症で過去の記憶を失っていた。そんな彼女の元へ、同じ年恰好の男が毎日訪れ、彼女にある物語を読んで聞かせる…。それは1940年、ノース・カロライナ州シーブルックでの物語。材木工場で働く青年ノアは、17歳の美しいアリーと出会う。二人は惹かれ合い恋に落ちるが、アリーは裕福な上流階級の娘で、彼女の家族は娘とノアの付き合いを好ましく思っていなかった。ある日両親から交際を反対されたアリーは、ノアと口論して、喧嘩別れをしてしまう。そのまま夏の休暇は終わり、アリーはノアと仲違いしたまま、故郷へ帰ってしまうのだった。 「メッセージ・イン・ア・ボトル」の著者ニコラス・スパークスの長編デビュー小説を映画化した作品です。老女役のジーナ・ローランズは、カサヴェテス監督の実母だそうです。作品自体は、純粋なラヴ・ストーリーですね。もう少し年老いた二人のドラマがあるのかと期待していたのですが、映画の殆どの時間は、若い恋人達のお話に費やされていました。アルツハイマーでパートナーが過去の記憶を忘れてゆくという切ない要素を、もっと効果的に使ってくれれば、感動も大きかったと思えただけに、単なる回想の恋愛物にしてしまった、この構成には残念としか言いようが無いです。恋愛自体も、私にはあまり魅力的には映りませんでした。ヒロインのアリーに、飛び抜けて人を惹き付ける魅力が無かったせいでしょうか。彼女に限らずですが、無条件に複数の人から愛されるキャラクター自体が退屈な存在なのですよね。何の苦労も無く、悲しみも無く、そこに居るだけで愛されてしまう事のつまらなさとでも言いましょうか。切ないからこそ、痛々しいからこそ、愛は輝くのに、その一番大切な部分を持っていないヒロインなんて。「貧しいけれど直向な青年と、リッチでハンサムな青年二人に求婚されて、私、迷っちゃうわ~♪」という設定からして既に、私には関係ないので勝手にして下さいという感じになりました。アリーの母親役のジョーン・アレンが渋い演技を見せていました。実はかつて娘と同じような経験をしていた彼女。母親の選択の方が、余程現実的で賢明だと思いますが、余計なお世話でしょうか(笑)色恋の感情なんて、もって数年ですものねぇ。いずれ消えてなくなるものより、大事なのはお金だと思いますよ~。まあ、恋に夢中になっている間は、冷静な判断ができないものですけど…。原作が恋愛小説なので、夢は夢として綺麗に纏めてあります。しかしこんな捻りも何も無い、ベタベタの恋愛小説が、何故ベストセラーになるんだろう?アメリカって分からないなぁ(笑)同原作者の「メッセージ・イン・ア・ボトル」も大概、かったるいお話でしたしね。私には向いていないのでしょう。私は元々ロマンス映画は苦手なので、感想が辛めになってしまいましたが、それにしてもストーリーに捻りが無さ過ぎます。単調と言われても仕方のない展開でした。
Jan 12, 2005
"GODZILLA: FINAL WARS" 監督・・・北村龍平 出演・・・松岡昌宏(尾崎真一)、菊川怜(音無美雪)、宝田明(醍醐直太郎)、ケイン・コスギ(風間勝範)、水野真紀(音無杏奈)、北村一輝(X星人幹部)、ドン・フライ(ゴードン大佐)、船木誠勝(熊坂教官)、水野久美(波川玲子)、泉谷しげる(田口左門)、伊武雅刀(X星人司令官)、他。 ・物語序盤・核汚染によって、地球には巨大怪獣達が出没するようになっていた。これに対抗する為に、人類は地球防衛軍を組織する。ゴジラは地球防衛軍によって、南極の海底深くに沈められた。また数年前から、特殊能力を持った人類・ミュータントが確認されるようになり、地球防衛軍は彼等を訓練して、特殊部隊“M機関”を設立する。ある時、北海道沖で巨大怪獣のミイラが引き上げられた。ミュータント兵士である尾崎は、国連から派遣された科学者・音無と共に、怪獣の調査に向かう。分析の結果、その怪獣の体には、地球の生物には存在しない分子が含まれていた。そしてその分子は、ミュータント達にも含まれていた。丁度その頃、地球各地で巨大怪獣が同時に出没し、都市を破壊するという事件が勃発する。 第1作は1954年制作。通算28作目にして最終作となったゴジラです。実はハリウッド版「ゴジラ」を除いて、劇場で観るのは(と言うよりテレビでも殆ど観ない)、初めての状態でした。従って、過去に出てきた怪獣や設定などは、殆ど知りません。今回、最後のゴジラ作品という事で、なんとなく観てみたくて行って参りました。正直、ハリウッド映画と比較すると、全てに於いてショボいです。でもハリウッド産映画とは比較にならない位の低予算ですから、これでも健闘したというべきでしょうね。最後のゴジラという事で、これまでに登場した怪獣達がわんさか出てきます。ガイガン、クモンガ、カマキラス、エビラ、ヘドラ、キングシーサー、そして、モスラにミニラ。モスラは流石に知っているのですが、(ミニラも観た事はある…)他の怪獣はよく分かりません(笑)。キングギドラは出ませんでしたね。何故だ?ともかく、敵の敵は味方という事で、我等がゴジラ君が、これらの怪獣とガチンコ勝負を繰り広げてくれます。モスラは援軍ですが。ミニラも味方です、一応。戦力外だけど。北村監督作品という事で、怪獣映画にどう人間のアクションを絡めてゆくつもりかと、その点に興味がありました。序盤では巨大怪獣相手に、生身で戦っていましたね。あの程度の武器でやられる怪獣もなんだかなぁ、という感じでしたが(笑)。それ以降は、X星人という宇宙生命体が現れて、彼等との戦いがメインになっていましたね。松岡君も頑張っていましたが、大佐役のドン・フライが目立っていました。前もって玄田氏が吹き替えをしていたので、少し違和感があったのですが…。多分インターナショナル版では、生声が聞けたのでしょうね。字幕版にすれば良かったな…。失敗。敵方では北村一輝さんの存在感が大きかったです。時々コントのような寒い演技があるのですが、その辺は脚本も悪いので、彼は非難できませんが。でも完璧にナルシストな悪役になりきれていなかったという気がしました。ミニラは愛嬌があって可愛いです。でもミニラって、どういう存在なのですか?ゴジラの子供ですか?全然、知識が無いもので。ラストは大団円のハッピー・エンドという事なのですよね。しかし怪獣達によって破壊された都市を考えると、とても楽観的な気持ちにはなれませんよ(笑)難癖を付ければキリが無いですが、結構面白かったので良しとしましょう。さらば、ゴジラ!カムバックは無いのかな?ちょっと寂しいです。
Jan 11, 2005
"BLACK JACK" 監督・・・出崎統 原作・・・手塚治虫出演(声)共通・・・大塚明夫(ブラック・ジャック)、水谷優子(ピノコ)■第一話「流氷、キマイラの男」出演(声)・・・大塚周夫、井上喜久子、大滝進矢、亀井芳子、冬馬由美、他。・物語序盤・孤島の岬に立てた巨大な城に住む大富豪クロスワード。彼は七年前から、ある奇病に冒され壮絶な苦痛と戦っていた。全身を襲う激痛を緩和する為、膨大な量の水の摂取と排出を繰り返す原因不明の難病である。治療に呼ばれたブラックジャックは、島民にも同じ症状を起こしている者達が居ることを知る。 ■第二話「葬列遊戯」出演(声)・・・林原めぐみ、関俊彦、筈見純、荒木香恵、岡村明美、松本梨香、羽佐達夫、他。・物語序盤・日本のS市で偶然に怪我の治療を施した少女・里枝に、ブラックジャックは2ヶ月後に再会する。里枝はこの2ヶ月間、彼と初めて会った公園で、偶然の再会を願い続けて待っていたのだった。彼女は短期間の間に親友を二人も失い、更にもう一人の親友も事故で植物状態となっていた。 ブラックジャックに、親友の手術を懇願する里枝。■第三話「マリア達の勲章」 出演(声)・・・玄田哲章、勝生真沙子、渡部猛、大塚芳忠、塚田正昭、西村知道、他。・物語序盤・ユナイツ連邦は、オルデガ共和国に軍事侵攻し、指導者クルーズ将軍を、組織的麻薬密売の容疑で逮捕した。その頃ブラックジャックは、マリアという謎の女から、オペの依頼を受けていた。クランケは、現在囚われの身であるクルーズ将軍、その人であった部下達は護送途中の将軍を奪還し、末期癌に冒された将軍を、生きて故国に辿り着かせようとしていたのである。・参考、シリーズタイトル・ 第四話「拒食、ふたりの黒い医者」 第五話「サンメリーダの鶚」 第六話「雪の夜ばなし、恋姫」 第七話「白い正義」 第八話「緑の想い」 第九話「人面瘡」 第十話「しずむ女」 映画ではなくて、OVAのシリーズです。全部で十話まであったのは、調べて初めて知りました。今回観たのは、三話までです。放映中のTVシリーズと、メインの声優さんは同じなのですね。こちらのシリーズは、良くも悪くも出崎節が前面に押し出されていますね。観ていて、ブラックジャックが矢吹ジョーに見えました(笑)あと、ゴルゴ13とか…。古くは、「エースをねらえ!」でも監督を務めていらっしゃいましたね。どの作品を観ても、悉く作画や演出が同じです。頻繁に挿入される劇画タッチの静止画、鬱陶しい位のシーンのリピート。飽く迄ハードボイルドで、微妙にエロティック。如何にも出崎監督らしいのですが、はっきり言って、時代遅れなんですよね…。何十年も作風に変化が見られないというのは、ちょっと見苦しいものがあります。人間持って生まれた性質というのはあるのですが、少しは時代の波に乗る事も覚えて頂きたいものです。各作品は堅実に作られてはいるのですがねぇ。大真面目に作れば作るほど、滑稽に映ってしまうのが悲しい所。せめて静止画の技法をやめてくれたらなぁ…。全作品を観ていないので、酷評する立場にはないのですが…。でも手塚作品には、ハードなタッチを好む出崎監督や杉野昭夫氏(作画)は、ちょっと不似合いですね。人選ミスという気がします。
Jan 10, 2005
"RIDERS""STEAL" 監督・・・ジェラール・ピレス 出演・・・スティーヴン・ドーフ、ナターシャ・ヘンストリッジ、ブルース・ペイン、スティーヴン・バーコフ、カレン・クリシェ、クレ・ベネット、スティーヴン・マッカーシー、他。 ・物語序盤・スリム、オーティス、フランク、アレックスの四人組は、腕利きの銀行強盗団。綿密な計画と大胆な行動力で、大仕事を難なくこなすプロである。彼等は銀行強盗と現金輸送車の強奪に、続けざまに成功し、大金を手に入れる。更に奪った鞄の中に、高額の無記名債権が混じっている事を発見した彼等は、知人のブローカーに現金化を依頼する。しかしその債権は、闇組織絡みの危険な代物だった。更に4人の行動を監視していた者が現れ、彼等を脅迫して、現金輸送車を襲撃するよう命じる。一気に窮地に追い込まれるスリム達だが…。 冒頭からインラインスケートとパトカーとの追跡劇で沸かせます。蛇足ですが、こういうスポーツをXスポーツというそうですね。Extremeに由来した呼称で、過激で挑戦的な競技方法を意味するそうです。ただ人間対車の対戦は序盤のみで、それ以降はカーチェイスがメインになります。強盗・強奪のプロ集団が、緻密に立てられた計画によって、鮮やかに大金を奪ってゆくタイプの映画です。カーチェイスもスピード感があって、なかなか迫力がありました。大型トラックの片輪走行などという曲芸的なシーンもあるので面白いです。クライム・アクションとしては、及第点の出来栄えではないかと思いました。敵対する女刑事を目立たせる為に、紅一点だった仲間を都合よく消してしまう脚本は安易でしたね。仲間の憤りも感じられなくて、お前らに友情は無いのかと少しツッコミ(笑)。でも強盗集団と彼等を脅迫する人物、そして闇組織のメンバーという、三竦みの構図は入り組んでいて良かったと思います。ラストの捻りは予想できる範囲でしたが、最後まで退屈はしませんでした。これと言って目新しい部分はありませんが、娯楽作品としては楽しめる部類の作品でしょう。
Jan 9, 2005
"THE THIRD MIRACLE" 監督・・・アニエスカ・ホランド原作・・・リチャード・ヴェテレ出演・・・エド・ハリス、アン・ヘッシュ、アーミン・ミューラー=スタール、マイケル・リスポリ、チャールズ・ヘイド、ケイ・ホートリー、バルバラ・スコヴァ、ドン・カーモディ、他。・物語序盤・フランク・ショア神父は、自分の仕事に懐疑的になり、8ヵ月間もの間、無料給食所で施しを受けながら、世捨て人のような生活を送っていた。彼の仕事は列聖調査といい、対象となる人物を聖人に列してよいか吟味する役割だった。以前行った調査で、フランクは調査対象者だった神父が自殺した事を突き止めてしまった。自殺という大罪を犯した者を列聖する事など、当然不可能である。騙されたと知って憤慨するフランクに、その神父の同僚は彼を"ミラクル・キラー(奇跡を台無しにする奴)"と罵った。傷付き隠遁生活を送っていたフランクは、司教から新たな列聖調査を命じられる。シカゴにある聖スタニラフ教会にあるマリア像が、血の涙を流しているという事だった。そしてそれは、7年前、教会で働いていた敬虔な移民の婦人ヘレン・オレガンが亡くなってからだという。渋々調査を始めたフランクは、ヘレンの娘ロクサーヌに会い、彼女の話を聞くが、ロクサーヌは母親が聖人であるという見解に否定的だった。 エド・ハリス目当てで観ました(笑)。でも随分借りるまで迷ったんですよ。説教臭い宗教映画だったら厭だなぁと思って。実際鑑賞してみると、宗教映画でありながら、客観的な視点を失っておらず、とても観やすい作品でしたね。つまり神様万歳でも、キリスト教全面肯定映画でもありませんでした。主人公の神父は、神の存在や自分の職務に対して迷いを持っているし、加えて、彼の周りの聖職者達が如何にも俗物なのが良いです。パーティーでは、高級なワインや贅沢な料理を当然のように食べ、芝居の批評で盛り上がり、外出時はリムジンを乗り回して平然としている。上等の服装に、大きな指輪や装飾品をじゃらじゃら…笑。これでもかという程、カトリックの上層部を俗物的に描いています。またエド・ハリス演ずる神父はと言えば、若い女性に恋心を抱いて、いい仲になりかけるし(笑)。おいおい、ちょっと軽薄すぎよ、神父様。聖職者=清廉で高潔な人ではなく、煩悩多き人間とした点が共感できました。こんな煩悩と欲望に塗れた人々が開く列聖協議会って、何なんでしょうね?聖人に列せられたからと言って、どんな価値があるのでしょう?滑稽ですらあります。信じたいという気持ちを裏切られ、信仰に疑問を抱く神父。神の存在を心とは裏腹に臆面も無く肯定できる程、純粋さを失ってしまった大司教。この二人を結び付ける、ある遠い過去の奇蹟とは…。心の汚れを肯定した上で、一筋の光のような奇蹟を見せた所が良かったですね。三番目の奇蹟は起るのでしょうか?起ってほしいな、という気分にさせてくれる物語でした。ところで何故、愛の宗教と呼ばれるキリスト教(カトリック)が、聖職者の結婚を否定しているのか、漠然と疑問に思っていました。人を愛する心は尊いのではないかと。特定の個人を愛する事によって、魂が穢れ、神との結び付きが弱まるという意味があったのですね。他にも色々と勉強になりました。宗教を扱っていますが、堅苦しくなく、静かなドラマの中に穏やかな感動があります。いい映画だと思いました。
Jan 8, 2005
"THE HURRICANE" 監督・・・ノーマン・ジュイソン出演・・・デンゼル・ワシントン、ヴィセラス・レオン・シャノン、デボラ・カーラ・アンガー、リーヴ・シュレイバー、ジョン・ハナー、デビ・モーガン、クランシー・ブラウン、他。・物語序盤・1966年、ニュージャージー州パターソン。黒人のウェルター級チャンピオン・ボクサー、ルービン“ハリケーン”カーターは、ボクサーとしての絶頂期に、突然謂れの無い殺人の罪を着せられ、終身刑を言い渡された。彼は無実を訴え続け、獄中で手記を書いて、自伝『The 16th Round』を出版する。著名人が釈放活動に乗り出したが、二度の審理で破れ、彼の存在は次第に忘れ去られていった…。それから数年の月日が流れた。ある時、何気なく古本市でハリケーンの自伝を買った、一人の黒人少年レズラは、その本に夢中になる。彼の逮捕投獄の背後に、根深い人種差別がある事を知り、レズラは彼に手紙を書く。その後レズラは、カナダ人の友人達と共に、ハリケーンの釈放運動に立ち上がる。 実話を基に作られた作品です。子供時代から少年院に入れられ、漸く外の世界に出て、人並の幸福を手に入れ、ボクサーとしても成功したというのに、また突然無関係な殺人事件の犯人として、刑務所に投獄される主人公。理由はただ一つ。彼が黒人であったからです。幼少時代から彼に目の敵にしていた白人刑事が、執拗に彼の人生を破滅させようとします。何故あそこまで、あの刑事は粘着質だったのでしょうか?隠蔽や捏造をしてでも、絶対に陥れてやるという、どす黒い執念が不気味でしたね。ある日突然、身に覚えの無い罪状で終身刑を言い渡され、刑務所に入れられたら、どんな気分でしょうか。これを観ていて、オーストラリアで麻薬を持ち込んだとして逮捕され、十数年投獄されていた日本人達を思い出しました。全てに絶望し、獄中で自殺を図った事もあると聞きます。審理中の恐怖と、判決後の絶望は計り知れません。裁判とは人の一生を左右するという一大事でありながら、現実には好い加減なものですね。事件は毎日山ほど起き、一つ一つの案件をじっくり吟味する時間は、実質的には殆ど無いに等しいのでしょう。その現実が改めて恐ろしくなりました。ハリケーンの事件は、過去の資料を細かく調べてくれる協力者が現れた事で、漸く隠蔽工作が明らかになった訳ですが、こういう熱心な支援者が現れないまま、冤罪で投獄されている人々は、世界中に一体どのくらいいるのでしょうか?考えると、ぞっとします。誰にとっても、他人事ではない話ですから。映画はとても堅実な作りでした。人間性を綺麗に描きすぎているという印象はありましたが。特に刑務所の内部の人間関係など。主人公の言葉とは裏腹に、かなり人間味のある場所として描写されていました。その辺がもっと現実的だったら、ハリケーンの絶望感が際立ったと思うのですが。「告発」くらいに(笑)。でも充分観る価値のある作品だと思います。
Jan 7, 2005
"DARK CITY" 監督・・・アレックス・プロヤス出演・・・ルーファス・シーウェル、キーファー・サザーランド、ジェニファー・コネリー、ウィリアム・ハート、リチャード・オブライエン、イアン・リチャードソン、他。・物語序盤・地球は宇宙から到来した謎の生命体によって、静かに支配されようとしていた。真夜中の十二時、世界は停止した。その静寂の世界の中で、独り目覚める男。彼には自分が誰で何処に居るのか全く記憶が無かった。安ホテルの部屋の中らしいが、寝室には女の死体が転がっていた。その時、動転する男の部屋に、ドクター・シュレイバーという見知らぬ男から電話が掛かってくる。奴等が来るから逃げろと言われた彼は、エレベーターを上がってくる男達を見て、咄嗟に階段から逃亡した。その直後、世界は元通りに動き始めた。何事も無かったかのように再び活動し始める人々。彼はホテルのフロントから呼び止められ、レストランに財布を忘れただろうと告げられる。取り戻した財布の中身から、自分がジョン・マードックという人物らしいと分かった彼は、自分の正体を探し求めて、暗闇の街を彷徨する…。 独自の世界が展開していて、ジャンル分けが難しい所ですね。SFというには、科学的ではないですし、敢えてジャンルを限定するのなら、ダーク・ファンタジーでしょうか。私が最初に連想したのは、「ロスト・チルドレン」のアメリカ版という表現でした。それに「マトリックス」や「リベリオン」の要素を足したような不思議な世界です。ダーク・シティというだけあって、その街には夜しかありません。必然的に画面の配色は暗いトーンになっています。チューニングと呼ばれる、意志で物質を動かしたり、変化させたりする能力によって、自由自在に形を変える建造物たち。ダークで不可思議な映像美が素晴らしいですね。決してホラーではないのですが、画面から得体の知れない雰囲気と、異様な不気味さが迫ってきます。午前零時で一斉に混沌とした眠りに落ちる人々。蠢くのは、同じ格好をした男達。そして彼等に服従している唯一の人間である精神科医。彼は人々から記憶を抜き取り、それらを混合して、再度脳に注入するという実験を行っている。街が動き始めた時、人々は自分達の生活が変化した事に全く気付かず、普通に生活を再開する。しかし誰も過去の事を明確に思い出せない。街の外にあるシェルビーチへの行き方すらも分からない。誰一人、その街から出る事は叶わない…。とにかく、独特の世界観と漂うダークな雰囲気に惹かれました。マイナーかもしれませんが、個人的には、かなりツボな作品でした。風変わりな世界がお好きな方にお勧めします。舞台で歌うジェニファー・コネリーが妖艶でしたね。こんな所に出ていたとは知りませんでした。
Jan 6, 2005
"8 FEMMES""8 WOMEN" 監督・・・フランソワ・オゾン原作・・・ロベール・トーマ出演・・・ダニエル・ダリュー、カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユペール、エマニュエル・ベアール、ファニー・アルダン、ヴィルジニー・ルドワイヤン、リュディヴィーヌ・サニエ、フィルミーヌ・リシャール、他。・物語序盤・1950年代のフランス。クリスマス休暇に、久し振りに自宅に戻ってきたスゾン。雪に閉ざされた大邸宅には、祖母のマミー、母ギャビー、妹カトリーヌ、母の妹オーギュスティーヌ、更に二人のメイド、シャネルとルイーズ、そして一家の主で唯一の男性であるマルセルが暮らしている。スゾンが帰宅した朝、マルセルはなかなか起床してこなかった。様子を見に行ったルイーズは、寝室で背中をナイフで刺されて死んでいる当家の主を発見する。驚愕し慌てふためいた一家の者達が、警察を呼ぼうと電話を掛けるものの、何者かによって電話線は切断されていた。更に車にも走れないように細工がしてあり、邸宅は完全に陸の孤島となってしまった。外部から何者かが侵入した形跡はない。屋敷の中の女達は、内部に犯人がいるのではないかと疑心暗鬼を募らせ、互いを詮索し始める。 コメディでミュージカルっぽいと聞いていたので、今迄敬遠していましたが、実際観てみると、とても楽しい映画でした。 映画というより、舞台劇のようですね。コスチュームも全員カラフルで、別々の色にしていて、見た目にも華やかです。序盤から歌が唐突に出てくるので、この調子で頻繁に歌うのかな…と心配していたら、然程登場回数は多くなかったですね。適度な量で、私と同様にミュージカル映画の苦手な方でも、許容範囲ではないでしょうか。放映前にテロップで、不適切な表現がありますが、オリジナリティーを尊重して云々というお断りの文章が出ました。どんな凄い不適切な表現が出てくるのかと期待していましたが、別に普通でしたよ(笑)シニカルな台詞やブラック・ユーモア的な感覚はありましたが、それでも仰天するようなブラックさはありませんでした。逆に個人的には可愛らしい映画だなぁと思いました。一応ミステリー仕立てですが、本格推理劇ではなく、飽く迄、女達のデフォルメされたキャラクターと遣り取りが面白い作品です。それでも私は謎解きして頂くまで、真相が分かっていませんでしたが…。レズや近親相姦や親族殺人など、普通は重苦しい筈のネタが、冗談のように普通に飛び出してくる所が楽しいですね。こういうネタをギャグとして使える所が、性に奔放なフランス的と言えるかもしれません。それでもラストは、ちょっとしんみりして悲しいお話なのですが。女達のどぎつく際どい遣り取りが好きなら、楽しめる作品だと思います。「愛人を持ったくらいで夫を殺していたら、夫なんて人種はこの世から居なくなるわよ。」とか、軽妙な台詞の応戦が楽しい方ならば。
Jan 5, 2005
1/15(土)より、全国ロードショーです。"YEAR ONE IN THE NORTH" 監督・・・行定勲 出演・・・吉永小百合(小松原志乃)、渡辺謙(小松原英明)、豊川悦司(アシリカ)、柳葉敏郎(馬宮伝蔵)、石田ゆり子(馬宮加代)、香川照之(持田倉蔵)、石原さとみ(小松原多恵)、鶴田真由(おつる)、石橋蓮司(堀部賀兵衛)、他。 ・物語序盤・ 明治維新で新政府が樹立してから間もない明治4年。淡路に居を構える稲田家は、他藩との折り合いが悪く、明治政府から、蝦夷の静内への移住を命じられた。長い船旅の末に、北の地へ辿り着いた移民団。その中には、移民団の中心的存在で、先遣隊として静内に渡っていた小松原英明の妻・志乃と一人娘・多恵もいた。再会を喜び合う人々。しかしそこは、温暖な淡路とは全く異なった極寒の荒地。稲田家の家臣達は、刀を慣れない斧や鍬に持ち替えて、木々の生い茂る土地を開拓していた。武家の妻である志乃達も、初めての畑仕事に精を出す。だが気候の異なる土地で、農作物は思うように育たず、収穫は乏しかった。備蓄の食糧も底をついてきた頃、英明は酷寒の地でも育つ稲を求めて、一人札幌へと旅立つ事に。しかし半月で戻ると約束した英明は、それきり戻らず消息を絶ってしまうのだった…。 邦画にしては巨額の15億円という制作費を費やして作られた近代史の大作です。大作という形容に相応しい、安定感のある均整の取れた重厚な作品に仕上がっていました。俳優一人一人の演技が心に響く力作だと思います。物語は史実を元に作られています。ドラマは完全なフィクションですが、実際に当時はまだ未開の大地であった北海道に、淡路の人々が移民として渡ったのです。開墾と言っても、現代のようにパワーショベルやユンボーなどない時代です。まさに人間の力だけで、大木の生い茂る未開の地を切り開くのです。しかも気候も本州とは全く異なり、厳寒の北国です。自然のままの土地というのは、人間には冷酷なもので、小さな穴一つ掘るのも、岩や木の根が邪魔をして一苦労ですよね。先人の苦労を想像しただけで、気が遠くなりそうでした。彼等の血の滲む努力があってこそ、現代の開発された北海道がある訳ですが、その努力には頭が下がる思いでした。物語は感動的な作りなのですが、結構切なく悲しいものです。冷静に考えると、救いがないとすら思える内容でした。しかし人はたとえ裏切られ踏み躙られても、大切に守ってきた僅かな希望を奪われたとしても、生きて行く生き物なのですね。生きてゆかねばならないという方が正しいのかもしれませんが…。非力でちっぽけだけれど、確かに人間一人一人が持っている逞しさを感じさせてくれる映画でした。俳優陣それぞれの寸評をしておきます。吉永小百合さん。いつまでもお若いですね。どう考えても、年齢的に無理がある筈なのですが、違和感を感じさせませんでした。スクリーンでは初めてという、乗馬シーンも披露してくれています。姿勢も良く、堂々としていましたよ。小百合ストの方、お楽しみに。香川照之さんは、カメレオン俳優ですね。毎回、与えられた役にぴったりと自分を合わせてゆきます。今回は小憎らしい悪役。厭らしい男を見事に演じきっています。でも卑劣な面はありながらも、理想や奇麗事を並べるしか能の無い武士達よりも、街づくりには実質的に貢献したという人物です。渡辺謙さんと豊川悦司さん。立場は違えど、お互いに男の渋さが光っていましたね。石田ゆり子さん、いつもながら透明感のある美しさです。過酷な環境の下で、我が身一つを武器として、逞しく生き抜く女性を力強く演じていました。他の俳優さんも、皆それぞれがきっちりと自分の配役をこなしていたと思います。そういう小さな積み重ねが、安定感のある映画を作り上げた要因でしょう。
Jan 4, 2005
"BEYOND BORDERS" 監督・・・マーティン・キャンベル出演・・・アンジェリーナ・ジョリー、クライヴ・オーウェン、ライナス・ローチ、テリー・ポロ、ノア・エメリッヒ、 ティモシー・ウェスト、他。 ・物語序盤・ アメリカ人のサラは、裕福なイギリス人男性と結婚し、優雅な生活を送るレディ。ある日、難民救済の為の慈善パーティーに出席していたサラは、そこに突然現れた男と彼の連れの痩せこけた黒人の子供に衝撃を受けた。男はニックという名の医師で、エチオピアの難民キャンプで活動していた。虚飾に満ちたパーティー客を前にして、エチオピアの現状を熱弁するニック。しかし彼は取り押さえられ、警察に連行された。保護された少年は一人街へ逃げ出し、その晩の内に凍死する。そのニュースを見たサラは、難民救済の為に私財を投じて、自らもエチオピアに赴くと決心する。妻の無謀を心配する夫を振り切り、エチオピアへと向かうサラだが…。 先ず予想していたような内容と、随分違ったので戸惑いました。もっと硬派な社会的メッセージ性の強い映画だと予想していたので。大抵のこの手の邦題は、内容にそぐわない事が多いのですが、この映画だけは別。原題より邦題の方が、ぴったりと嵌まっています。正に、全ては愛の為なのです。これは、重い社会問題を単なる背景として使った、純然たるメロドラマです。その点は、最近観た「ハウルと動く城」と同じかも…笑。最初は、エチオピアの飢餓問題に取り組む活動家と、社会性に目覚めたリッチな女性が、家庭を持ちながらも彼に惹かれてゆくというドラマを下地にした、エチオピア問題中心の映画と思わせます。ところがその後、次々に舞台が変わる変わる…。エチオピアからカンボジア、最後はチェチェンと、ヒロインの住むイギリスまで合わせると、世界を股に掛けた壮大(?)なお話なのです。まるで「トゥームレイダー」…。じっくりと一国の抱える難問を掘り下げて観せる映画かと思いきや、社会問題なんて二の次という、薄っぺらな姿勢には唖然としました。だからと言って、悪い映画という訳ではないのですが。だって、これはメロドラマなのですから(笑)。世界の中心は、愛し合う恋人同士。自分の頭の中でジャンルさえ訂正すれば、難民問題・内戦などという深刻な問題の上っ面を撫でただけのような脚本も許せます。そう、すべては愛のため!なのです。愛の為なら、家族であろうと、況してや他人など、どうでもいいのです。そういう映画でした。しかしヒロインが、己の不道徳な行動にも全く悪びれないので、逆に然して不快感は感じませんでしたね。ここまで堂々と自分の欲望に忠実だと、非難する隙を与えません(笑)。好きに生きて好きに死んで下さい、としか言いようがありませんわ。ラストは驚きましたが、勝手気儘な振る舞いをしたヒロインに対する制裁という意味なのでしょうか?不倫するような女には、天罰を与えねばならないという意図ですか?ショッキングで良かったのですが、深読みすると、ちょっとつまらないですね。しかしあの後、残された彼女の家族と医師は、どう折り合いを付けたのか…。他人事ながら、そちらの方がとても気になりました。泥沼ですよね。
Jan 3, 2005
旧年中は大変お世話になりました。本年も何卒宜しくご贔屓の程、お願い申し上げます。管理人は映画も観ないでゲームで遊んでいます。夜中までやってたら、とっても眠いです。買ったソフトが十数本溜まっているので…自爆。少しでも消化しようかと思いまして。今更ですが、放置してあったPS2「攻殻機動隊SAC」を再開しました。以前、ほんの少し味見した程度での放置だったので、再びトレーニング・モードからやり直しです。ボタン配置が複雑…。左右スティックの使い方が難しい…。第一ステージをクリアするのに、何十回もゲームオーバーになりました。敵に照準が合わせ辛くて、一方的に撃たれてばかりです。かなりトホホな腕前なので、前途多難です。でも少しずつ面白くなってきたので、頑張るぞ~。
Jan 1, 2005
全30件 (30件中 1-30件目)
1