“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2013.08.01
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『第三春美鮨』の大将長山一夫さんは「江戸前寿司の技を再考し、産地を巡り、江戸前寿司を後世に伝える」という価値観をお持ちです。

 通うようになって“おいしさ”という価値観について多くの気づきがあります。
人間が「おいしい」と感じるのは今ある状況が非常に重要であり、多くの人のおいしいと感じる価値はあまり多様性がありません。だからこそ満腹中枢を科学する“餌性”という概念が存在するわけです。
 “餌”を求めるお客様を見て、多くの料理人は卑下したり、失望したりします。
しかし、私に言わせれば、それはせっかく出会ったお客様に何もしないでいる食に携わるものとしてはあるまじき無作為に過ぎないと思うのです。
お客様に多様な価値を提案して、食の楽しさを提供して、奥深い食に興味をもっていただく、そんなことをして欲しいわけです。
 おいしさには落としどころがあります。その落としどころに気づいていただくこと。
これがまず大切です。

一般的に横に並べた経験との対比は、違う店と対比から始まります。
この比べかたは親の他人の子どもとの対比と似ています。違う個性を比べることでわかったようになれるのかもしれません。横並びの対比をするはなんらかの価値を比べるための、スケールを設けることです。
ただ、このレベルは食の探求からすると“初級編”だと言えます。
お店では同時に二種類の“類似物”を提供して微差を比べてもらえるからです。
『第三春美鮨』今年の20回あまりの訪問の中でこのようなことを数回してくれました。
マダカアワビとアフリカのクロアワビの対比と写真にあります新子と小肌の対比です。
新子と小肌を対しして、長山さんに小肌と新子のおいしさの落としどころを聞きたくなりました。「小肌には脂ののったうまさがあり、新子には季節をおっかける瞬間のうまさがある」と答えが返ってきました。その答えを聞いて、同じ日に対比できたことを幸せに感じざるを得ませんでした。
 今までの講義ではお話ししませんでしたが、過去の類似物の対比という次元の高い対比があります。これが店に通う醍醐味であり、この楽しさを提供できないとお客様はいずれ飽きます。親父さんが出してくれる間違いないものでも、お客様自身が違う楽しさを見出さねば、飽きてしまうのです。
 その肝が『第三春美鮨』が毎日作るお品書きにあるように思います。
画像のお品書きをご覧ください。このお品書きには、魚のアイデンティティが書いてあります。長山さんが選んでいるんで基本的に品質だけ考えると安定したものがありますが、何度も通うとこの違いを明確に認識します。
 つまり、このお品書きが、お客様を微差の対比に誘い、食材は一期一会であることに気づかせてくれるからです。そして、過去の自身の記憶との微差の認知という食の探求が生まれるのです。

あまりにも来店間隔が空きすぎると微差はまったくわからないのです。
しかし、微差に気づくことがわかっている人は以外と多いのにはおどきます。ディズニーランドの隠れミッキーが代表です。
崎陽軒の醤油入れの柄もいろいろあり、レアな限定バージョンもあるとか。
凄いですね。






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Last updated  2013.09.22 08:28:32


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