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Dec 7, 2008

かぶりもの劇団、ギンギラ太陽's（福岡）の新幹線物語 BORN TO RUN

テーマ：【演劇】何か見に行きますか？　行きましたか？(3320)

カテゴリ：映画・演劇（とりわけミュージカル）評

今年もたくさん、いい劇を見ましたが、その中でも最もすがすがしい気持ちで、来てよかったァとうきうきしながら劇場を出たのが、このわずか１時間20分の一幕もの。

地元福岡で絶大な集客力を誇る劇団ギンギラ太陽's が池袋まで地方公演に来てくれた。

その出し物というのが、先月商業運転からついに引退した初代０（ゼロ）系新幹線たちの東京憧憬ものがたり。

Born to run は「走るべく生まれて」。
「走らん哉（かな) 」と訳そうか。

あのなつかしい丸っこい鼻先、ちょっと泣きそうな形の運転席窓の０系は、東京駅に久しく縁がない。
（歴史的事実として、平成11年９月を最後に０系は東海道区間から姿を消した。）

心の拠り所の東京駅を再び拝むことなく引退してなるものか！

そこである夜、５両の０系新幹線車輌が福岡を脱走して東京めがけて疾走しはじめる……

……というのを５人の役者さんがそれぞれ新幹線車輌の形のデカい帽子（かぶりもの）をつけて演じるんですねェ。

♪ 青い光の　ちょうとっきゅう～
って歌いながらね。

脱走した０系を追いかける700系ひかりレールスターを演じるのは赤いベベ着た４人の女優さんで、大阪で追いつかれた０系が全滅しそうになったところで、「太陽の塔」が登場して助けてくれるんです。

で、辛くも１輌が包囲網を脱出して一路東海道を東へ！

……
と書くと、なんとも荒唐無稽に聞こえるのでありますが、どうしてどうして、薀蓄（うんちく）が散りばめられ、歴史を支えた「モノ」たちへの愛情が脚本に沁（し）みとおっている。

大学生のころ、昭和53年12月に駒場小劇場で見た野田秀樹さん率いる夢の遊民社の「走れメルス～少女の唇からはダイナマイト！」がコラム子（し）の演劇好きの原点なのだけど、そのときの新鮮な驚きに似た心の震えが走った。

脚本・演出・かぶりもの作成・出演をこなす座長の大塚ムネトさんが舞台に立つと、そこでたちまち観客となごみのコミュニケーションが始まる。

こんなに笑顔がすがすがしいひとを、久しぶりに見た。

戦前・戦後の雑誌を集めて、これ！という雑学を拾い上げるのが大好きな人。

人物がひとりも出て来ず、登場するのは新幹線車輌だったり、デパートのビルだったり。
でも、それらは全て歴史を背負った存在で、生身の人間と同じようにドラマに満ちていて、だから「モノ」でありながら台詞（せりふ）が生まれる。

この演劇の大発明に、ノーベル賞を差し上げたいくらいだ。

＊

今回の公演は、０系車輌諸君の活劇の合間に、チョー福岡ネタの地元デパート盛衰記が劇中劇ふうに挟みこまれた。

「川端商店街」や「玉屋」や「岩田屋本館」、「マダム大丸」さらに「スーパーブランドシティ」、「エルガーラ」の盛衰を、ビルを模したかぶりものをつけた役者さんたちが丁々発止。

これが福岡公演だったら、一挙手一投足で笑いを取っていることだろうに、あまりに福岡地元ネタすぎて観客席はなかなか火が点かなかった。

役者さんたち、さぞやりにくかったろうなァと申し訳なく思いました。

白けて見てたわけではなくて、乗れない自分をはがゆく感じながら見てたのですよ。

劇中劇の最後、暗転するところでやんやの喝采があるべきところ、タイミングを逃して誰も拍手できなかったのが残念でした。

その分、カーテンコールでは大喝采でした。
途中で拍手できなかったところを、みんなで心一つに拍手で讃（たた）えた、そんなカテコでした。

きょう12月７日が千穐楽。今ごろ劇団の皆さんは池袋の某所で打ち上げの３次会くらいでしょうか。

次の東京地方公演も、必ず行きますよ！

（12月７日まで、東池袋の「あうるすぽっと」で公演でした。コラム子の観劇は12月４日でした。）

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