文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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Sep 8, 2010
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(トート) の組合せで観た。最高でした。

瀬奈じゅんさんは、平成20年5~7月の宝塚月組公演の「ミー&マイガール」のビル役が ふてぶてしくもみごとだった。

今回のエリザベート役も、第1幕のソロ 「私だけに」 に電気が走った。

瀬奈じゅんさんを評して 「安心して観ていられるエリザベート」 とコメントせずにはいられないのも、ダブルキャストのもうひとりのエリザベート役の女優さんが、ルックスはすばらしいけれど半音階をしばしば外すひとだからなのです。



エリザベートの夫、フランツ・ヨーゼフ皇帝を演じる石川 禅さんが、特筆に値 (あたい) する。

第1幕前半のフランツ・ヨーゼフは個性を押し殺したマザコン男なのだが、皇帝はそれに終わるわけではない。

エリザベートへの愛を自分の支えにしなければ生きていけないことを悟り、おののき悩む男、生きるとはどういうことか内省する人間としての存在感は深い。

第1幕前半のフランツ・ヨーゼフが透明人間のような存在だけに、よほど切り替えのうまい俳優でないと役の深みを演じられない。

石川 禅さんは、扉の向こうに閉じこもるエリザベートへ呼びかける絶唱は高らかで、ふるえる人間像の演じ方は繊細。期待どおりの好演だった。

ルドルフ役の伊礼彼方 (いれい・かなた) さんは、初めて見た。
プログラム写真のうつりが弱々しいが、舞台の上の風格はベテランの趣が漂うほど。今後も期待しています。



このブログを書く前に、あらためてドイツ語版ウィーン公演のDVDを観た。

帝劇公演を観ていて、山口祐一郎さんの後ろで思いおもいに始終からだを動かし続ける男性バックダンサーたちが目障りで仕方なかった。
ウィーン公演には、こういうバックダンサーは出てこない。
帝劇流は、小池修一郎さんの過剰演出なのだろう。

帝劇客席のわたしがせっかく死神トートと差しで対面したいと思っているのに、お呼びでない青年らに背後でちょろちょろ動かれて ― しかも狭いスペースに8人も! ― まったく迷惑だった。

そもそも、死神というのは孤独な存在でなければならない。
それが8人も子分を連れてお出ましとはね! 笑えるぜ。
演出家の哲学を根本から疑いたい。

たとえば 「マリー・アントワネット」 で怪人カリオストロの後ろでバックダンサーがうろちょろしていたとしたら、ぞっとする。

そのほか、ウィーン版の遊び心たっぷりの印象的な仕掛けが消えたのも残念だ。
登場人物がチェスの駒になって舞台をぎこちなく右往左往するシーンとか、反政府運動家がゴーカートに乗ってカフェに集合するシーンとか。

平成20年秋の帝劇公演を観たときは、チェスのシーンもゴーカートのシーンもあった。今年の公演から演出を変えたのである。

ウィーン版に比べると、たしかに帝劇版は舞台美術が充実している。分かりやすくなってもいる。
舞台につねに多彩な動きが盛り込まれているから、退屈な瞬間はない。こういう演出が好きなひとも多いのだろう。

しかしわたしは、もっとシンプルな演出がいい。エリザベートやトートに じかに向き合う時間を大切にしたい。


また、今回の 「エリザベート」 公演は音響にも不満がある。
1階P列18番の席だったが、左右のスピーカーから時々しゃかしゃかとリズムをとる乾いた音が流れてきて、耳障りだった。

帝劇にはこれまで30回ほども来たろうか、とにかくこんな不愉快な音響演出は初めてだった。
余計なことをせず、すなおな音響で楽しませてほしい。



次に帝劇に行くのは11月の 「モーツァルト!」 だ。いい公演でありますように。
「エリザベート」 は10月30日が千穐楽。





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最終更新日  Sep 8, 2010 11:25:20 PM
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