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今年は、なんといってもこの本でした。「平家物語」まだ、終わってないし・・・・・。そして、野呂邦暢さん「諫早菖蒲日記」いや、ほんとに読めなかった年でした・・・・・。それはともかく、みなさん、良いお年を!
2012年12月31日
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レーモン・クノー・コレクション12「青い花」を買書つんどく。永らく幻だった、「青い花」です。「聖王に会い、ジャンヌ・ダルクとともに戦い、馬と話し、錬金術を見出す・・・・・。数世紀をまたにかけ、数々の冒険を繰り広げる破天荒な騎士、オージュ公。一方、20世紀、動かない川船で、暗い過去を抱えながらも平凡な生活を送るシドロラン。互いを夢見あう二人が700年の時を超えて出会う!?SF? 歴史小説? クノー版胡蝶の夢!」(水声社の紹介)
2012年12月31日
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マコン卿が顔をしかめた。「いや、シドヒークから見たらおそらく――」そう言いかけたとき、大好きな人たちのなかに見知らぬ人がいると気づいたプルーデンスがシドヒークめがけて駆け出した。プルーデンスは自分の目の前に現われる人は、みな自分をかわいがってくれると思いこんでいる。「あっ、まずい、待って!」ティジーが叫んだ。だが、遅すぎた。とっさにアレクシアが娘をつかまえようと床にダイブした。し かしプルーデンスは大人たちの脚のあいだをすり抜け、シドヒークの片脚――ビロードマントの下から突き出た剥き出しの脚――にしがみつくや、モスリン地の ドレスをずたずたに引き裂いて小さな狼の子に変身した。幼児よりはるかに俊足のチビ狼は狂ったようにしっぽを振りながら屋敷の前の通りを猛然と駆けだし た。「つまり、これが皮はぎ屋ってこと?」シドヒークは唇を引き結び、眉を吊り上げた。異界族らしい肌の青白さが消え、顔のしわがさらに深くなっている――人間に戻ったせいだ。すかさずマコン卿が最近の練習成果を思わせる手際のよさで夜の正装をそっくり脱ぎ捨て、アレクシアは顔を赤らめた。「いやはや、大都会ロンドンへようこそ!」アケルダマ卿は歓声を上げて大きな羽根扇子を取り出し、顔の前でばたばたとあおぎはじめた。「まあ、コナルったら、みんなが見ている前で!」アレクシアはなじったが、すでにマコン卿は人間から狼に変身しかけていた。しかも公衆の面前ながら、実にみごとな変身ぶりだ。(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る」P45)
2012年12月30日
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吉成真由美さんのインタビュー集「知の逆転」を買書つんどく。この書評を見て買ってみました。「「二重らせん」構造を解明したワトソン、「普遍文法」を提唱し言語学に革命をもたらしたチョムスキー…限りなく真実を追い求め、学問の常識を逆転させた叡智6人。彼らはいま、人類の未来をどう予見しているのか。「科学に何ができる?」「人工知能の可能性は?」「情報社会のゆくえは?」-現代最高の知性が最も知りたいテーマについて語る興奮の書。文明の崩壊(ジャレド・ダイアモンド)/帝国主義の終わり(ノーム・チョムスキー)/柔らかな脳(オリバー・ サックス)/なぜ福島にロボットを送れなかったか(マービン・ミンスキー)/サイバー戦線異状あり(トム・レイトン)/人間はロジックより感情に支配される(ジェームズ・ワトソン)」(「BOOK」データベースより)
2012年12月30日
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アレクシアはいかにも不愉快そうにフェリシティを見た。「ワゴンから降りなさい、フェリシティ、いますぐ。若い娘がなんてところに座っているの?自分がなにをしでかしたのか、少しは考えたらどう?」フェリシティは鼻を鳴らした「お母様みたいな口ぶりね」「そうよ、あなたの行動はますますお母様に似てきたわ!」フェリシティは息をのんだ。(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P354)というわけで、ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」を読みました。ゴースト連中が、「女王の暗殺をねらうものがいる」と、騒ぎ始めるところから、この巻は幕を開け、それを阻止しようと妊婦アレクシアが奮闘する、例のごとくのドタバタの末、「あたくしたちはいったい何を授かったのかしら?」とアレクシアがつぶやくとおり、ついに、「謎の子ども」が誕生します。この「子ども」はいったい何者か?なにをもたらすのか?ということで、最終巻へと流れ込みます。
2012年12月29日
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綿矢りささんの「しょうがの味は熱い」を買書つんどく。一時の沈黙から一転、この頃、ほんとに良く書かれるようになりましたが、綿矢さんの方向は、こういう方向なんだっけ?「仕事は別に苦じゃないけど、一生を捧げたいってわけではなし。そろそろ結婚もしたいけど、彼氏が運命の人って感じもしない。『勝手にふるえてろ』『かわいそうだね?』に続き、微妙な年頃の女性の行き場のない感情を独特の文体と飄々とした可笑しみで描き出す連作集。「しょうがの味は熱い」「自然に、とてもスムーズに」の二篇を収録。「草食系」だけではくくれない、煮え切らない男と煮詰まった女の、現代の同棲物語。とほほと笑いつつ何かが吹っ切れる、未婚/既婚すべての女性、そしてすべての迷える男性に贈る一冊です。」(文藝春秋の紹介)
2012年12月28日
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まだアレクシアが眠っていると思いこんだコナルがあわててベッドに駆け寄り、赤ん坊を抱え上げた。そのとたん、泣き声はくんくんと鼻を鳴らすような声になり、マコン卿の腕には赤ん坊ではなく、生まれたての狼の仔が抱かれていた。マコン卿はもう少しで娘を落すところだった。「こいつぁいったい!」アレクシアは目の前の出来事がよく理解できず、半身を起こした。「コナル、赤ちゃんはどこ?」マコン卿はショックで口もきけず、狼の仔をアレクシアに差し出した。「あなた、この子に何をしたの?」「わたしが?何もしていない。抱え上げただけだ。それまではまったくふつうだった。そしたら次の瞬間、パッとこんなふうに」「あら、でも、どう見てもこっちのほうがかわいいわね」アレクシアはあくまで現実的だ。「ほら、見てみろ」マコン卿は毛皮におおわれた、泣きわめく狼の仔を妻の腕にあずけた。そのとたん狼の仔はもとの赤ん坊に戻った。アレクシアは産着の下で骨と肉が動くのを感じた。だが、泣き声が激しくならないところを見ると、それほど痛みはないようだ。「あら、まあ」と、アレクシア。こんな状況にしてはわれながら落着いている。「あたくしたちはいったい何を授かったのかしら?」ライオールは畏敬に満ちた声で言った。「一生のうちに本物の「皮追い人」の誕生をこの目で見るとは思いませんでした、驚きです」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P428)
2012年12月28日
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レイモンド・チャンドラー/村上春樹「大いなる眠り」を買書つんどく。村上版チャンドラーは、どこまでいくのだろうか?「十月半ばのある日、ほどなく雨の降り出しそうな正午前、マーロウはスターンウッド将軍の邸宅を訪れた。将軍は、娘のカーメンが非合法の賭場で作った借金をネタに、ガイガーなる男に金を要求されていたのだ。マーロウは話をつけると約束して、早速ガイガーの経営する書店を調べはじめる。「稀覯書や特装本」販売との看板とは裏腹に、何やらいかがわしいビジネスが行われている様子だ。やがて、姿を現したガイガーを尾行し、その自宅を突き止めたものの、マーロウが周囲を調べている間に、屋敷の中に三発の銃声が轟いたーアメリカ『タイム』誌「百冊の最も優れた小説(1923~2005)」、仏「ル・モンド」紙「20世紀の名著百冊」に選出の傑作小説。待望の新訳版。」(「BOOK」データベースより)
2012年12月27日
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アレクシアがすばやく身ぶりをすると、ウールジー団でもっとも大柄な二人のクラヴィジャーが両脇から支え、アレクシアはよたよたと城の玄関からなかに入った。それでも吸血鬼たちは玄関の階段から動かない――まるで「捨てられた小犬たち」の不気味な吸血鬼版だ。悲しげな目をした、哀れなほどみすぼらしい、恐ろしげな牙を持つ、不死のみなしご小犬たち。アレクシアがいかにも大儀そうに振り向いた。「なんなの?」「わたくしたちをご招待ください、この屋敷の女主人であるウールジー伯爵夫人ことアレクシア・マコンどの」ナダスディ伯爵夫人が一本調子の賛美歌のような口調で言った。目を大きく見開き、泣きじゃくるケネルをしっかりと胸に抱いたまま。いまやケネルにわんぱく小僧の面影はない。ただのおびえる少年だ。「ああ、もう長ったらしい挨拶はいいから、さあ、入って、入って」アレクシアは眉を寄せて考えた。部屋はたくさんあるけど、吸血鬼を丸ごと収容するもはどこがいいかしら?しばらく考え、唇を引き結んで宣言した。「あなたがたには地下牢が最適ね。あそこなら窓がひとつもないし、まさに太陽が昇りかけているわ」ランペットが近づいた。「レディ・マコン、何をなさったのです?」吸血鬼たちは神妙な顔でおずおずとなかに入り、アレクシアが地下牢に通じる階段を指さすと、一列になって無言で下りていった。「吸血鬼女王を招待なさったのですか?」いつもは血色のいいランペットの顔が青ざめた。「そうよ」ヘマトル公爵が脇を通りすぎながら牙を見せ――執事がおののくのも無理はないと言うように――アレクシアに疲れた笑みを向けた。「これでわれわれは二度ともとの場所へは戻れない。いいのだな、レディ・マコン?女王がスウォームして群を移動させたら。そこが永住の地となる」ようやくアレクシアはアケルダマ卿の笑みの意味と、吸血鬼をお茶に招待しなかった理由がわかった。(中略)そしてあたしは人狼城の地下に吸血群を住み着かせてしまった。「ちくしょう、まんまとしてやられたわ」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P404)
2012年12月26日
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天童荒太さんの「歓喜の仔」を買書つんどく。こんな、特設ページがありました。「愛も夢も奪われた。残されたものは、生きのびる意志だけだった。『永遠の仔』『悼む人』を経て、天童文学はここまで進化を遂げた。日本の現実を抉り、混迷する世界と繋がり、私たちの魂を源から震憾させる金字塔、ここに。」「運命を切り拓く勇気がある者の胸に高らかに鳴り響け、“歓びの歌”。いじめ、差別、テロ、裏切りー。この残酷な世界で、なぜ人類は滅びないのか?生き抜くための“道標”、世界文学の誕生。」(「BOOK」データベースより)
2012年12月26日
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「ああ。あの子らしくもない、あんな野蛮なものを造るなんて。でも女ってものは、ときにやぶれかぶれになるものだ」悲鳴がますます大きくなってきた。「正しい質問をするんだ、「ソウルレス」。あんたはあたしに正しい質問をしていない。もう時間がない」そう言うなり、もう片方の手も分離して、ふわふわと近づいてきた。「「ソウルレス」?あんたは何者?どうしてここにいるの?あたしの姪っ子はどこ?」「ゴーストの情報伝達網を作動させたのはあなたね?あなたがあたしに使者を送ったんでしょう、「かつてのルフォー」?女王殺害のことを知らせるために?」「そうぅぅ」ゴーストがささやいた。「でも、なぜジュヌビエーヴが女王を――」アレクシアが言いかけた瞬間、「かつてのルフォー」がはじけた。腐ったトマトを木に投げつけたかのように、音もなく爆発した。ゴーストの断片が一気に四方八方に飛び散り、白い霧が装置のまわりやあいだを抜けて発明室全体にふわふわと広がった。そして、すべての断片がこぞってアレクシアに向かってきた――目、眉、髪、手足。アレクシアは思わずぎゃっと悲鳴を上げた。もうもとへは戻れない。「かつてのベアトリス・ルフォー」は完全にポルターガイストになってしまった。いよいよアレクシア・マコンが女王陛下と国家のために除霊という任務をとりおこなうときだ。(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P307)
2012年12月25日
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恒川光太郎さんの「私はフーイー 沖縄怪談短篇集」を買書つんどく。恒川さん、久しぶりじゃないかな・・・・・。「日本ホラー小説大賞受賞のデビュー作『夜市』が直木賞候補になり、その後も山本周五郎賞や吉川英治文学新人賞にノミネートされる注目作家である著者が、デビュー前から長らく住んでいる沖縄を題材にした短篇集。在住の作家ならではの、沖縄文化の描写と息遣いにあふれている。怖さと不思議な心地よさが同居する、沖縄幻想譚全7篇。」(メディアファクトリーの紹介)
2012年12月25日
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久しぶりに、天神さんのネコが天神さんにいました。ところで、今夜はイブでんなあ~。
2012年12月24日
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ミス・デアは一瞬、思案し、「お望みなら」と身をかがめてヤマアラシを持ち上げ、アレクシアが好きなだけ観察できるよう、二人が座る座席のあいだに置いた。顔を近づけると、すぐにわかった。たしかにどう見ても生き物ではない。内部構造の上に皮膚をかぶせ、本物そっくりの針毛を表面に埋めこんだ人工物だ。「機械動物は禁止されたと思っていたけど」「これはメカアニマルではありませんわ」「鉄は使われていないの?まあ、驚いた」アレクシアは素直に感心した。(中略)「すばらしい技術だわ」アレクシアは小型ヤマアラシの観察を続けた。両耳の後ろに小さな留め金がついており、押すとパカッと開いて脳みそ部分の内部構造が現われた。「これが本物のアフリカのゾンビだったら、はるかに危険だったでしょうね」アレクシアは人造の骨を軽く叩いた。「驚いたわ。ウェストミンスター群のことだから必要な使用許可証はすべて特許庁に申請したんでしょう?この技術が王立協会の小冊子に発表されていないところをみると、製作者はおそらく伯爵夫人のお抱え科学者ね。これは磁場破壊フィールドに対抗するために設計されたの?」よく見ると、陶器と木でできた稼動部分は紐と腱で固定され、すべりをよくするために黒いロウ状の液体が使われている。最初に襲われたときはこれを血と勘違いしたが、こうして見ると「ヒポクラス・クラブ」製の自動人形(オートマトン)に使われていたものとまったく同じだ。(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P288)
2012年12月24日
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さる程に六代御前は、三位禅師とて、高雄におこなひすましておはしけるを、「さる人(維盛)の子なり、さる人(文覚)の弟子なり。かしらをばそッたりとも、心をばよもそらじ」とて、鎌倉殿より頻に申されければ、安判官資兼の仰て、召捕ッて関東へぞ下されける。駿河国住人岡辺権守泰綱に仰て、田越川にて切られてンげり。十二の歳より、卅にあまるまでたもちけるは、ひとへに長谷の観音の御利生とぞ聞えし。それよりしてこそ、平家の子孫はながくたえにけれ。(「平家物語(四)巻第十二」P374)これにて、「平家」巻第十二を終わり、「灌頂巻」に入ります。
2012年12月23日
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本の雑誌社の「おすすめ文庫王国」に載っていた、円城塔さんの文庫オールタイムベスト10のリストです。オールタイムとしては異色な感じで、興味深く思いましたので紹介してみました。1 「麗しのオルタンス」ジャック・ルーボー2 「20世紀の幽霊たち」ジョー・ヒル3 「不滅」ミラン・クンデラ4 「スチール・ビーチ」ジョン・ヴァーリイ5 「あなたの人生の物語」テッド・チャン6 「マジック・フォー・ビギナーズ」ケリー・リンク7 「許されざる者」辻原登8 「姦の忍法帖」山田風太郎9 「ユニヴァーサル野球協会」ロバート・クーヴァー10 「伝奇集」ホルヘ・ルイス・ボルヘス
2012年12月23日
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さる程に建久元年十一月七日、鎌倉殿上洛して、同九日正弐位大納言になり給ふ。同十一日大納言右大将を兼じ給へり。やがて両職を辞て、十二月四日関東へ下向。建久三年三月十三日、法皇崩御なりにけり。御歳六十六、偸伽振鈴の響は、其夜をかぎり、一乗案誦の御声は、其暁にをはりぬ。(「平家物語(四)巻第十二」P364)なんともあっけない。いや、そっけない。
2012年12月22日
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「わたしがなにを知っていると?」とチャニング。答えはわかっていると言いたげだ。アレクシアがライオールを見た。チャニングは首をかしげた。「昔の事件のことですか?過去をほじくり返してもろくなことはないと申し上げたはずです」ライオールが頭を上げ、においを嗅いだ。そしてチャニングを見た。そのとき初めてアレクシアは、二人が古い友人であることに気づいた。ときに対立しても、そこには長年――おそらく何世紀ものあいだ――付き合ってきた者どおしの流儀がある。この二人は、マコン卿を知るはるか昔からたがいを知るあいだがらに違いない。「知っているのか?」ライオールがたずねた。チャニングがうなずいた――ライオールの計算しつくされた中流階級の謙虚さとは対照的な、見るからに名門貴族出身者らしい優越感に満ちたしぐさで。ライオールは両手を見おろした。「昔から知っていたのか?」チャニングはため息をつき、上品な顔がほんの一瞬、苦しげにぴくりと動いた。アレクシアが目の錯覚かと思うほど、ほんの一瞬だ。「きみはわたしをどんなガンマだと思っている?」ライオールが小さく苦笑した。「いつも不在のガンマだ」この言葉は皮肉ではなく、事実だ。たしかにチャニングはヴィクトリア女王のための戦いでどこかしら戦地にいることが多い。「気づいていたとは知らなかった」「何に気づいていたと思う?それが起っていたことか?それともわれわれに危害が及ばないよう、きみが一人であの仕打ちに耐えていたことか?何が起っているのかをほかの団員に知られないようにしていたのは誰だと思う?・・・・・」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P260)
2012年12月22日
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スコット・トゥロー「無罪」を買書つんどく。「推定無罪」は大好きな小説です。そして、「推定無罪」から「無罪」というわけで・・・・・。「かつて検事補殺しの裁判で無罪を勝ち取り、今や判事の座に昇りつめたラスティ・サビッチ。彼の妻バーバラが変死した、遺体の発見から通報までに空白の一日があったことに疑惑を抱いた検事局の調べで、サビッチに愛人がいたという事実が浮かび上がった。次々に状況証拠が積みあがる中、かつてサビッチの裁判で屈辱的な敗北を喫した地方検事トミー・モルトは、ついにサビッチを妻殺しで訴追することを決意した。そして因縁の法廷が幕を開ける。サビッチは妻を殺したのか、遺体発見後の空白の時間は何を意味するのか、彼は何を隠しているのか?嘘と真実と駆け引きが白熱する。そして衝撃の真実はすべてが終わったあとに明かされる。それはあまりに悲しく痛ましく、人間の愛と憎悪を描き出すー歴史的名作『推定無罪』続編の名に恥じぬ重厚なる傑作。」(「BOOK」データベースより)
2012年12月21日
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鎌倉殿常はおぼつかなげにおぼして、高雄の聖のもとへ便宜ごとに、「さても維盛卿の子息は何と候やらむ。昔頼朝を相し給ひしやうに、朝の怨敵をもほろぼし、会稽の恥をも雪むべき仁にて候か」と、尋ね申されければ、聖の御返事には、「是は底もなき不覚仁にて候ぞ。御心やすうおぼしめし候へ」と申されけれ共、鎌倉殿猶も御心ゆかずげにて、「謀反おこさば、やがてかたうどせうずる聖の御房也。但頼朝一期の程は、誰か傾べき。子孫のすゑぞ知らぬ」との給ひけるこそおそろしけれ。母うえ是を聞きたまひて、「いかにも叶まじ。はやはや出家し給へ」と仰ければ、六代御前十六と申し文治五年の春の比、うつくしげなる髪をかたのまはりにはさみおろし、かきの衣、袴に笈なンどこしらへ、聖にいとまこうて修行に出でられけり。(「平 家物語(四)巻第十二」P356)
2012年12月21日
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マコン卿はアケルダマ卿を見た。捕食者と捕食者のにらみ合いだ。それからビフィに視線を戻した。「あれからもう六カ月が過ぎ、なんども満月がやってきた。なのにおまえはまだ抵抗している。これがおまえの望む人生でなかったことは知っている。だが、これがおまえにあたえられた人生だ。われわれは最善の道を見つけなければならん」誰もが、われわれという言葉を聞き逃さなかった。このときばかりはアレクシアも夫を大いに誇らしく思った。やればできるじゃない!マコン卿が深く息を吸った。「どうしたら楽になれる?わたしに何ができる?」アルファからそんな質問をされてビフィはひどく驚いたが、勇気を振りしぼって答えた。「できれば・・・・・できればずっとここに、街に住まわせてもらえませんか?」マコン卿は眉をひそめ、アケルダマ卿を見やった。「それは賢明か?」アケルダマ卿は立ち上がると、会話にはまったく興味が ないかのように部屋の奥に歩み寄り、こなごなになった水彩画を見つめた。ライオールが難局を打開すべく一石を投じた。「ビフィには気をまぎらわせ るものが有効かもしれません。たとえば、仕事のような?」ビフィは驚いた。ビフィは生まれも育ちもジェントルマンだ――本当の意味での仕事など考えたこともない。「やってみます。これまで正式な職業についたことは一度もありませんが」まだ食べたことのない珍しい料理のことを話すような口調だ。(ゲ イル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P253)
2012年12月20日
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北条四郎策に、「平家の子孫と言はん人の尋出したらむ輩においては、所望こふによるべし」と披露せらる。京中のもの共、案内は知ッたり、勧賞蒙らんとて、尋もとむるぞうたてき。かゝりければ、いくらも尋出したりけり。下郎の子なれ共、色しろう見めよきをば召し出いて、「是はなんの中将殿の若君」、「彼少将殿の君達」と申せば、父母なきかなしめども、「あれは介惜が申候」、「あれはめのとが申」なんどと言ふ間、無下にをさなきをば水に入、土にうづみ、少おとなしきをばおし殺し、さし殺す。母がかなしみ、めのとがなげき、たとへんかたぞなかりける。北条も子孫さすが多ければ、是をいみじとは思はねど、世にしたがふならひなれば力及ばず。中にも小松三位中将殿若君、六代御前とておはすなり。平家の嫡々なるうへ、年もおとなしうましますなり。(「平家物語(四)巻第十二」P318)
2012年12月20日
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スコット・ウエスターフェルド「ゴリアテ ロリスと電磁兵器」を買書つんどく。ローカス賞、オーロラ賞受賞の「リヴァイアサン・シリーズ」の完結編です。「オ スマン帝国のイスタンブールで、ドイツの野望を打ち砕いた公子アレックと男装の士官候補生デリン。英国海軍の飛行獣リヴァイアサンで東京へ向かっていた彼 らは、ロシアのツングースカで驚異の光景を目にする。その状況を引き起こしたという天才科学者ニコラ・テスラは、戦争終結の可能性を秘めた電磁兵器ゴリア テをニューヨークに建設しているという。なんとしても戦争を終結させたいアレックは、ゴリアテの真価を判断すべくテスラに接近するが・・・・・。はたして アレックの願いはかなうのか。そしてデリンの、アレックへの密かな想いの行方は?スチームパンク冒険譚三部作、完結。」(「BOOK」データベースより)
2012年12月19日
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アレクシア学術的興味から――カエルの解剖を楽しむ人がいるように――人狼の変身を見るのが好きだが、若い人狼の変身だけ は別だ。マコン卿やライオール教授、そしてあのチャニング少佐でさえ変身にともなう痛みをほとんど見せずに姿を変えられる。だが、ビフィには望むべくもな い。二人の接触が切れたとたん、ビフィは叫びはじめた。この数ヶ月のあいだにアレクシアは、世のなかに気高く心やさしい若者が苦しむ声ほど悲惨なものはな いことを学んだ。骨と器官が壊れ、再構築するにつれて、叫びは絶叫に変わった。ああ、耳栓がほしい。アレクシアはこみあげる胃液を飲みこみながらクラヴィジャーの腕につかまって階段をのぼり、人狼団たちのほっとするような喧噪のなかに戻った――クラヴィジャーを一人、狂気にのもこまれた男の見張りに残して。「本当にあんなふうになりたいの?」アレクシアは付き添い役のクラヴィジャーにたずねた。クラヴィジャーは正直に答えた。レディ・マコンが歯に衣着せぬ女性で、あいまいな答えでは満足しない性格であることはみな知っている。「不死というものは、マイ・レディ、軽々しくあつかうべきではありません。多大な代償や犠牲をともなうものなのです」「あれほどの代償でも?」「そのつもりです、マイ・レディ。でも、彼は選ぶことができませんでした」「吸血鬼を選ぼうとは思わない?」「生きるために他人の血を吸い、二度と太陽を拝めない運命をですか?いいえ、マイ・レディ。わたしは痛みと呪いを選びます――幸運にもわたしには選択権がありますから」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P189)
2012年12月19日
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中島京子さんの「小さいおうち」を買書つんどく。文庫化されてましたので・・・・・。「昭和初期、女中奉公にでた少女タキは赤い屋根のモダンな家と若く美しい奥様を心から慕う。だが平穏な日々にやがて密かに“恋愛事件”の気配が漂いだす一方、戦争の影もまた刻々と迫りきてー。晩年のタキが記憶を綴ったノートが意外な形で現代へと継がれてゆく最終章が深い余韻を残す傑作。著者と船曳由美の対談を巻末収録。」(「BOOK」データベースより)
2012年12月18日
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さる程に鎌倉殿、日本国の惣追補使を給はッて、反別に兵粮米を宛行べきよし、公家へ申されけり。朝の怨敵をほろぼしたるも のは、半国を給はるといふ事、無量義経に見えたり。され共我朝にはいまだその例なし。「是は過分の申状なり」と、法皇仰なりけれ共、公卿僉儀あッて、「頼 朝卿の申さるる所、道理なかばなり」とて、御ゆるされありけるとかや。諸国に守護をおき、庄園に地頭を補せらる。一毛ばかりもかくるべきやうなかりけり。(「平家物語(四)巻第十二」P316)1185年、守護・地頭制ですね。
2012年12月18日
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アレクシアは深く息を吸い、出し抜けに言った。「あたくしは反異界族なの」アイヴィが茶色い目を大きく見開いた。「まあ、なんてこと!それってうつるの?」アレクシアは目をぱちくりさせた。アイヴィは気の毒そうな表情を浮かべている。「ひどく苦しい の?」アレクシアはまだ目をぱちくりさせている。アイヴィは片手を喉に当てた。「赤ちゃんがそうなの?母子ともに治るの?大麦湯を持ってこさせましょうか?」アレクシアはようやく声を取り戻した。「はいえんじゃなくて、はんいかいぞくよ。「ソウルレス」と言えばわかる?またの名を「呪い破り」。あたくしには魂がないの。まったく。その名のとおり、わずかでもチャンスがあれば異界族の力を消すことができるのよ」アイヴィは見るからにほっとして言った。「あら、そんなこと。ええ、知ってたわ。心配しないで、アレクシア。誰も気にしてないわ」「ええ、でも・・・・・待って、あなた知ってたの?」アイヴィはチッチッと舌を鳴らし、おどけて茶色い巻き髪を揺らした。「もちろん知ってたわ――ずっと前から」「でも、そんなこと、これまで一度も言わなかったじゃないの」アレクシアはめずらしくうろたえた。慣れない感覚だけど、アイヴィはしょっちゅうこんな気分を味わっているに違いない。でも、親友の言葉にアレクシアは自信を持った。これなら大丈夫かもしれない。見た目は軽薄だが、案外アイヴィは口が堅そうだ。しかも思ったより観察力があることはすでに証明されている。「あのね、アレクシア、わたしはあなたがそのことに負い目を感じていると思っていたの。人に知られたくない生まれつきの欠陥を話題にしたくはなかったのよ。いくらわたしでも、それくらいの気づかいと思いやりはあるわ!」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P153)
2012年12月17日
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同十一月二日、九郎大夫判官、院御所へ参ッて、大蔵卿泰経朝臣をもッて奏聞しけるは、「義経、君の御為に奉公の忠を致事、 ことあたらしう初て申上に及び候はず。しかるを頼朝、郎等共が讒言によッて、義経を討たんと仕候間、しばらく鎮西の方へ罷下らばやと存候。哀院庁の御下文 を一通下預候ばや」と申されければ、法皇、「此条頼朝がかへり聞かん事いかゞあるべからん」とて、諸卿に仰合られければ、「義経都に候て、関東の大勢みだ れ入候ば、京都の狼藉たえ候べからず。遠国へ下候なば、暫其恐あらじ」と、おのおの一同に申されければ、緒方三郎をはじめて、臼杵・戸次・松浦党、惣じて 鎮西のもの、義経を大将として、其下知にしたがふべきよし、庁の御下文を給はッてンげれば、其勢五百余騎、あくる三日卯剋に京都に、いさゝかのわづらひも なさず、浪風もたてずして下りにけり。(「平家物語(四)巻第十二」P312)
2012年12月16日
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アンブローズ卿は片手を上げ、アケルダマ卿のしぐさを真似るように小さく左右にひらひらさせた。「あの、アケルダマ卿?」アレクシアは重ねてうなずいた。アンブローズ卿は、自慢の吸血鬼らしい厳粛さをいくぶん取り戻した。「自分の子を吸血鬼に養育させるというのか?」拳銃を持ったアレクシアの手は微動だにしなかった。吸血鬼は変わり身の早い、一筋縄ではいかない相手だ。警戒をゆるねたように見えるからといって油断はできない。その証拠にアンブローズ卿はいまも片手に絞殺具を握っている。「しかも「宰相」よ」アレクシアはアケルダマ卿の新しい政治的地位を言い添えた。そしてアンブローズ卿をじっと見つめた。アレクシアは逃げ道をあたえたつもりだ。アンブローズ卿はそれを欲している。ウェストミンスター群のナダスディ伯爵夫人もそうに違いない。すべての吸血鬼が今の状況に及び腰になっている。こうして何度もぶざまな暗殺未遂を繰り返すのが何よりの証拠だ。つまり彼らのノミの心臓はレディ・マコン暗殺計画をよしとしていない。といっても、殺人という行為に臆しているのではない。吸血鬼にとって殺人は、新しい靴を注文するより少し手間のかかる程度の行為にすぎない。そうではなく、彼らは「人狼アルファの妻を殺さなければならない」という状況を避けたいのだ。レディ・マコンが吸血鬼の手にかかったとなれば――それが立証されようとされまいと――あらゆる厄介ごとが吸血群に降りかかるのは目に見えている。すなわち、でかくて毛深い、怒れる種族による報復だ。(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」P40)
2012年12月15日
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同廿三日、大臣殿父子のかうべ都へ入る。検非違使ども、三条河原出で向ッて、これをうけとり、大路をわたして、左の獄門の樗の木にぞかけたりける。昔より三位以上の人の頸、大路をわたして獄門にかけらるゝ事、異国には、其の例もあるやらん、吾朝にはいまだ先蹤を聞かず。されば平治に信頼は、さばかりの悪行人たりしかば、かうべをはねられたりしかども、獄門にはかけられず、平家にとッてぞかけられる。西国よりのぼッては、いきて六条を東へわたされ、東国よりかへっては、死んで三条を西へわたされ給ふ。いきての恥、死んでの恥、いづれもおとらざりけり。(「平家物語(四)巻第十一」P272)
2012年12月15日
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吉村武彦さんの「女帝の古代日本」を買書つんどく。これは、前から気になっていたところです。「「天皇」という称号がつくられた飛鳥・奈良時代、六人・八代もの女帝が続けて誕生した。なぜこの時期に集中しているのか。「女系天皇」に開かれていた可能性 は?女王卑弥呼から推古、そして持統へ。古代人の視点に寄り添い、即位の背景を徹底的に読み込むところから、「女帝の世紀」の謎をとく。今後の議論の基本となる必読の一書。」(「BOOK」データベースより)
2012年12月14日
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「遅かっただと!ああ、遅くて悪かったな。いいか、妻よ、わたしはきみを探してイタリアじゅうを走ってまわったんだ。見つけるのにどれだけ苦労したことか」「そんな探しかたで見つかるはずないわ。だってわたくしはイタリアじゅうにいたわけじゃないもの。フィレンツェにじっとしていたの。それどころかぞっとするようなローマのカタコンベに閉じこめられていたのよ、あなたのせいで」「わたしのせい?どうしてわたしのせいなんだ?」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」P401)というわけで、ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」を読みました。今回は、身ごもるはずのない人狼の子どもを身ごもったアレクシアが、その秘密を探るためイタリアへ旅立つのですが、そこへ、その出産を阻むためアレクシアとお腹の子の命をねらう吸血鬼族と、異界族を忌み嫌うテンプル騎士団がからむお話です。ドタバタのあげく、こられきれずイタリアへと行ったマコン卿とアレクシアが、めでたく仲直りをするところで、次のお話へと続きます。
2012年12月14日
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鎌倉殿うちうなづいて、「けふ九郎が鎌倉へ入るなるに、おのおの用意し給へ」と仰られければ、大名・小名はせかつまッて、ほどなく数千騎になりにけり。金洗沢に関すゑて、大臣殿父子うけとりたてまッて、判官をば腰越へ追ッかへさる。鎌倉殿は、随兵七重八重にすゑおいて、我身はそのなかにおはしましながら、「九郎は進疾(すすどき)男なれば、このたゝみにしたよりもはひ出でんずるもの也。たゞし頼朝はせらるまじ」とぞの給ひける。判官思はれけるは、「こぞの正月、木曾義仲を追討せしよりこのかた、一の谷、壇の浦にいたるまで、命を捨てて、平家を攻め落し、内侍所、しるしの御箱、事ゑえなくかへし入れたてまつり、大将軍父子いけどりにして、具してこれまでくだりたらんには、たとひいかなる不思議ありとも、一度などか対面 なかるべき。凡は九国の惣追補使にもなされ、山陰・山陽・南海道、いづれにてもあづけ、一方のかかめともなされんずるとこそ思ひつるに、わづかに伊与国ばかりを知行すべきよし仰られて、鎌倉へだにも入られぬこそ本意なけれ。されば、こは何事ぞ。日本国をしづむる事、義仲・義経がしわざにあらずや。たとへば おなじ父が子で、先にむまるゝを兄とし、後にむまるゝを弟とするばかり也。誰が天下をしらんにしらざるべき。あまッさへ、今度見参をだにもとげずして、追ひのぼせらるゝこそ遺恨の次第なれ。謝するところを知らず」とつぶやかれけれどもちからなし。(「平家物語(四)巻第十一」P256)
2012年12月13日
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ライオールは立ち上がり、メガネごしに二人を見下ろした。一晩にこれ以上の謎は、もういらない。「話していただけませんか?」「公文書管理官がわれわれに警戒をうながす「魂盗人」のことかね。今回の吸血鬼による一連の騒ぎの理由を知りたいとな?よかろう。彼女の名前はアル=ザッパー――いわば親戚のようなものだ」アケルダマ卿はさりげなく左右に首をかたむけた。ライオールは息をのんだ、まさか、こんな答えが返ってくるとは思ってもみなかった。「アケルダマ卿の親戚?」「「ゼノビア」の名のほうが有名かもしれん」ゼ ノビアの名は、ローマ帝国について学んだ者ならみな知っている。シリアの古代都市でのちにローマ帝国に滅ぼされたパルミラ王国の女王だ。しかし、東方の女 傑と呼ばれたゼノビアの魂の量が人とは違ったという話しは、一度も聞いたことがない。ライオールに次なる疑問が沸き起こった。「「魂盗人」という性質は、はたから見てどの程度わかるのです?」「それはわたしにもわからぬ」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」P384)
2012年12月13日
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平家ほろびて、いつしか国々しづまり、人のかよふ煩なし。都もおだしかりければ、「たゞ、九郎判官ほどの人はなし。鎌倉の 源二位は何事をかし出したる。世は一向判官のまゝにてあらばや」なンどと言ふことを、源二位もれ聞いて、「こはいかに、頼朝がよくはからひて、つはものを さしのぼすればこそ、平家はたやすうほろびたれ。九郎ばかりしては、争か世をしづむべき。人のかく言ふにおごッて、いつしか世を我まゝにしたるにこそ。人 こそおほけれ、平大納言の聟になッて、大納言もてあつかふなるもうけられず。又世にもはゞからず、大納言の聟どり、いはれなし。くだッても、定て過分のふ るまひせんずらん」とぞのたまひける」(「平家物語(四)巻第十一」P244)
2012年12月12日
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三津田信三さんの「のぞきめ」を買書つんどく。小野不由美さんの「残穢」のよう な、実話系怪談なのかな・・・・・。「辺鄙な貸別荘地にバイトに来た若者たち。彼らは禁じられた廃村に紛れ込み恐怖の体験をしたあげく、 次々怪異に襲われる。そこは「弔い村」の異名をもち「のぞきめ」という化物の伝承が残る、曰くつきの村だったのだ・・・・・。昭 和も残り少なくなった、ある夏。辺鄙な貸別荘地にバイトに来た成留たちは、禁じられた廃村に紛れ込み、恐怖の体験をする…(『覗き屋敷の怪』)。昭和の初 期。四十澤は、学友の鞘落から、自分の家には“のぞきめ”という化物が取り憑いていると打ち明けられる。やがて四十澤は、鞘落家を訪ねるのだが…(『終い 屋敷の凶』)。」(「BOOK」データベースより)
2012年12月12日
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凡そ能登守教経の矢さきにまはる物こそなかりけれ。矢だねの有程射尽して、けふを最後とや思はれけむ、赤地の直垂に、唐綾をどしの鎧着て、いかものづくりの大太刀抜き、しら柄の大長刀のさやをはづし、左右に持ッてなぎまはり給ふに、おもてをあはする物ぞなき。おほくの物ども討たれにけり。新中納言使者を立てて、「能登殿、いたう罪なつくり給ひそ。さりとてよきかたきか」との給ひければ、さては大将軍にくめござんなれと心えて、うちものくみじかにとッて源氏の舟に乗り移り、乗り移り、をめきさけんで攻めたゝたかふ。判官を見知り給はねば、物の具のよき武者をば判官かと目をかけて、はせまはる。判官もさきに心えて、おもてに立つ様にはしけれども、とかくちがひて能登殿にはくまれず。されどもいかゞしたりけむ、判官の舟に乗りあたッて、あはやと目をかけてとんでかゝるに、判官かなはじとや思はれけん、長刀脇にかいはさみ、みかたの舟の二丈ばかりのいたりけるに、ゆらりととび乗り給ひぬ。能登殿は、はやわざやおとられたりけん、やがてつゞいてもとび給はず。いまはかうと思はれければ、太刀・長刀海へなげ入れ、甲も脱いで捨てられけり。鎧の草ずりかなぐり捨て、胴ばかり着て、おほ童になり、おほ手をひろげて立たれたり。凡あたりをはらッてぞ見えたりける。おそろしなンどもおろか也。(中略)つゞいてよる安芸太郎を弓手の脇にとってはさみ、弟の次郎をば馬手のわきにかいはさみ、ひとしめしめて、「いざうれ、さらばおのれら、死途の山のともせよ」とて、生年廿六にて海へつッとぞ入り給ふ。(「平家物語(四)巻第十一」P209)新中納言、「見るべき程の事は見つ。いまは自害せん」とて、めのと子の伊賀平内左衛門家長を召して、「いかに、約束はたがふまじきか」との給へば、「子細にや及候」と、中納言鎧二領着させたてまつり、我身も鎧二領着て、手をとりくンで海へぞ入にける。是を見て、侍共廿余人おくれたてまつらじと、手に手をとりくんで、一所に沈みけり。(「平家物語(四)巻第十一」P212)ちょっと戻っちゃった感ありますが、能登殿、新中納言知盛最後です。「平家」メモ再開します。
2012年12月11日
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「では、マコン卿は妻を捜しに行ったのですね?」女王の問にライオールがうなずいた。「たいへん結構。もちろん、不在のあいだに彼女を「議長」に再任します。レディ・マコンを解任したのは、「宰相」の助言にしたがったまでです。いま思うと、あれは自分の極秘任務を実行させるためだったようね。何世紀ものあいだワルシンガムは王室に的確な助言をしてきました。彼ほどの人物を、いったい何がここまで狂わせたのでしょう ね?」王女のまわりに沈黙が下りた。「いまのは、みなさん、修辞疑問文ではありませんよ」ライオールが咳払いした。「レディ・マコンのお腹の子が関係していると思われます」「それで?」ライオールは振り向き、アケルダマ卿をじっと見た。つられてヴィクトリア女王もアケルダマ卿を見つめた。もじもじするアケルダマ卿を見た者はいまだかつていないが、女王に見つめられて、さすがのアケルダマ卿もかすかに取り乱したようだ。「さあ、アケルダマ卿?何か知っているのでしょう?理由もなく、このようなことが起こるはずがありません」「僭越ながら、陛下、吸血鬼の記録はローマ時代にさかのぼり、しかも似たような子どもの例がひとつあるだけです」と、アケルダマ卿。「続けて」「記録にあるのは「魂吸い(ソウル・サッカー)」と吸血鬼のあいだに生まれた子で――人狼ではありません」ライオールは唇を噛んだ。どうして語り部(ハウラー)はこのことを知らなかったのだろう?歴史の記録者として、彼らはすべてを知っているのではないのか?「続けて!」「その生き物に対するもっとも穏やかな言葉は「魂盗人(ソウル・スティーラー)」です」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」P372)
2012年12月11日
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早野透さんの「田中角栄 戦後日本の悲しき自画像」を買書つんどく。われながら、こういうたぐいの本を買書するとは思わなんだ。「「コ ンピュータ付きブルドーザー」と呼ばれた頭脳と行動力で、高等小学校卒から五四歳で首相の座に就いた田中角栄。「新潟三区」という雪深い地盤に“利益誘 導”を行い、「日本列島改造」を掲げた角栄は、戦後政治の象徴だった。だが彼の金権政治は強い批判を浴び、政権は二年半で終わる。その後も巨大な「田中 派」を背景に力を持ったが、ロッキード事件では有罪判決が下った。角栄を最期まで追い続けた番記者が語る真実。」(「BOOK」データベースより)
2012年12月10日
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ルフォーが口をはさんだ。「反異界族を悪魔の申し子と呼びながら、なぜあなたがたは人狼や吸血鬼ばかりを毛嫌いなさるの?」「彼らが生まれつきの悪魔ではないからだ。「ソウルレス」が永遠の罪を背負って生まれるのは、原罪を背負って生まれるようなものだ。「ソウルレス」は、われわれと同じように、いわば十字架を背負って生まれてきた。われわれと「ソウルレス」の違いは、救済の道があるかないかだけだ。ところが吸血鬼や人狼はみずからの道をみずから選ぶ。これは意志の問題だ。彼らははるかに不埒な方法で救済に背を向けた。余分の魂を持っていたからだ。悪魔の誘惑に抵抗することさえできれば、彼らも天国に行けたかもしれない。しかし彼らは魂の大半を悪魔に売り渡し、怪物になった。彼らは神の敵だ――不死が許されるのは本来、神と天使たちだけなのだから」管区長はなんの感情もない、淡々とした口調で言った。アレクシアはぞっとした。「だからすべての異界族を殺そうと?」「それがわれわれの終わりなき聖戦だ」アレクシアは頭の中で計算した。「たいしたものね――それを四百年以上にもわたって続けるなんて」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」P327)
2012年12月10日
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アレクシアはガラスの扉ごしに目を細めた。小さな正方形に区切った振い鉛枠はゆがみ、たわんでいる。そのせいで、扉ごしに 見える室内もゆがみ、うねって見えた。アレクシアはあっちをのぞいたり、こっちをのぞいたりしたが、壷のなかみはわからない。ようやくよく見える角度を見 つけたとたん、胃がぎゅっとねじれるような感覚に襲われた。壷のなかには切断された人間の手が入っていた。液体のなか――おそらくホルマリン――に浮んでいる。(中略)アレクシアはフルーテの助言にしたがった。いずれにせよ、あの手のほかに見るべきものはなさそうだ。「イタリアでは、手を入れた壷を無造作に置いておくのがふつうなの?」「テンプル騎士団にとってはそうです、奥様」「あら、なぜ?」「聖遺物だからです、奥様。まんいち修道院が異界族による重大な脅威にさらされた場合、管区長はあの壷を割り、兄弟を守るために聖遺物を使うのです」アレクシアはなんとなくわかったような気がした。どこかのカトリック信仰集団の話を聞いたときも、たしか聖遺物のことが出てきたわ。「あれは聖人の身体の一部ってこと?」「もちろんその場合もございますが、さっきのは神聖でない遺物――すなわち武器です。あれは反異界族の人体の一部です」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」P291)
2012年12月09日
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「残念ながらこれだけは避けられない。たとえテンプル騎士団による反異界族繁殖プログラムが無意味だったとしても、「反異界族はつねに純血種である」という事実だけは証明した。そして反異界族はほかの反異界族と同じ場所の空気を共有できないことも証明された。つまり「雌標本」どのよ、あなたは自分の子どもに対しても拒否反応が出るということだ」アレクシアは反異界族のミイラと同じ部屋にいたときのことを思い出した。あのときアレクシアは、いつか自分以外の異界族に会ったら、こんな居心地の悪さと反発を感じる運命なのだと知らされた。でも、お腹のなかの胎児からは、そんな拒否反応は一度も感じたことがない。「あたくしと子どもは同じ空気を吸っているわけじゃないわ」アレクシアが反論した。「反異界族の能力が肉体的接触によって発揮されることは誰もが知っている。この点についてはテンプル騎士団の記録が明記しているし、わたしの記憶もたしかだ。何世紀にもおよぶ統計結果を見ても、不妊症もしくは途中で流産しなかった「雌標本」は一人もいない。問題は胎児を失うかどうかではなく、いつ失うかなのだ」アレクシアは息をのんだ。そして意外にも胸が痛んだ。子どもを失うのがつらいのではない。コナルがあたしを拒絶し、ひどい言葉を浴びせて追い出したことが、まったく無意味になるからだ。なんてバカらしくて、救いようがなくて、そして・・・・・。(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」P200)
2012年12月08日
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高村薫さんの「冷血」を買書つんどく。この本は、もちろんカポーティの「冷血」と関係があるのでしょう。「2002年クリスマス前夜。東京郊外で発生した「医師一家殺人事件」。衝動のままATMを破壊し、通りすがりのコンビニを襲い、目についた住宅に侵入、一家殺害という凶行におよんだ犯人たち。彼らはいったいどういう人間か?何のために一家を殺害したのか?ひとつの事件をめぐり、幾層にも重なっていく事実。都市の外れに広がる<荒野>を前に、合田刑事は立ちすくむ― 人間存在の根源を問う、高村文学の金字塔!」(毎日新聞の紹介)
2012年12月07日
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自認している以上に高齢で経験のあるライオールには、変身にともなう痛みを相手に見せない制御力があった。だからといって 気持ちいいわけではない。そもそも変身とはどんなときも痛いものだ。人間から狼に変わるときは骨が折れ、筋肉が裂け、肉の溶ける音がする。そしてその音ど おりの感覚がともなう。人狼は彼ら特有の不死の烙印を呪いと呼ぶ。だが、変身のたびにライオールは、これは呪いではなく選択の問題だと思わずにはいられな かった。吸血鬼の選択は正しかった。たしかに彼らは日光を浴びれば焼け死に、生き血を求めて走りまわらなければならない。だが、焼け死ぬときも血を吸うと きも、そこには優雅さと品がある。だが、人狼は裸と、月が呼び覚ます暴虐のせいで、どうあがいても品格は望めない。そしてライオールは品格を愛する男だ。(ゲ イル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」P137)
2012年12月07日
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今野真二さんの「百年前の日本語 書きことばが揺れた時代」を買書つんどく。今から「百年前」というと、ちょうど「大正」が始まった年です。ちなみに、「明治」が始まる前年に誕生した漱石は、大正5年に49歳で没します。「漱石が自筆原稿で用いた字体や言葉の中には、すでに日本語から「消えて」しまったものがある?――百年前の書きことばが備えていた、現代では思いもつかない豊かな選択肢。活字印刷が急速に発達した時代の、私たちが知らない“揺れる”日本語の姿を克明に描き、言葉の変化の有り様を問う、画期的な日本語論。」(「BOOK」 データベースより)
2012年12月06日
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「そう言えば。ミスター・タラボッティがよくこんなことをおっしゃっておられました」そこでフルーテが初めて口を開いた。 「「フルーテよ」――よくこう言われたものです――「運命というものはない――人狼がいるだけだ。そして偶然というものはない――吸血鬼がいるだけだ。そ れ以外のことはすべて自由な解釈にゆだねられている」アレクシアが鋭くフルーテを見た。「あなたが父のことを話すなんて・・・・・」フルーテは首を振り、ライオールをちらりと見てから言った。「いまのは極秘情報です、奥様。つい口がすべりました」「あなたがスパイだったとは知らなかったわ、ミスター・フルーテ」ルフォーが興味をひかれた口調でたずねた。フルーテは目をそらした。「そんな大それたものではありません、マダム」(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」P83)
2012年12月06日
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ライオールが同じように出て行こうとしたとき、ふと広いベッドから「ランドルフ」とささやく声が聞こえた。羽毛入り大型マットレスに沿って近づくと、マコン卿が茶褐色の目をうつろに開けていた。「なんでしょう、マコン卿?」「もし」――マコン卿はごくりと唾をのみこみ――「もしわたしが間違っていたら、いや、そんなはずはないが、もしそうだとしたら、その、もういちど腹ばいになるべきだろうか?」ライオールはアレクシアが部屋に戻って服を詰め、ウールジー城を出て行ったときの顔を思い出した。レディ・マコンは大声で泣きわめくタイプではない。どんなにつらいときも、多くの反異界族と同様、現実的で、タフで、冷静だ。だからといって、夫に拒絶されてまったく平気なはずはない。ライオールはこれまでの人生で「二度と見たくない」と思うものをいくつも見てきた。アレクシアの茶色の目に浮かんでいた絶望は、文句なくそのひとつだ。「本件の場合、腹ばいごときではまったく不十分かと思われます、マコン卿」ライオールは容赦なく言った。「ああ。そうか、くそったれ」マコン卿はよどみなく毒づいた。(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」P42)
2012年12月05日
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中世に存在した騎士修道会のひとつ。その本拠地がエルサレムの神殿跡地だったことからこう呼ばれる。神殿騎士団と表記されることも。十字軍によって設立されたエルサレム王国は、軍事的に弱体であり、特に巡礼者は、イスラム教徒の襲撃に対抗しうる術がなかった。1118年、ふたりの騎士が、巡礼へのパトロールを始めたのがテンプル騎士団発祥の起源とされる。この無償の挺身行為に感銘を受けた人々によって援助を受け、やがて彼らはカトリック教会によって修道会として認可される。このとき、「修道士であると同時に騎士」という新しい身分が誕生した(このため騎士団より騎士修道会と表記するほうがより正確)。認可を受けたテンプル騎士団には西欧からの寄進が集まり、やがて富と軍事力を持ち、政治的に独立した巨大組織に成長する。やがてイスラム国家の反撃によって、1291年騎士団はエルサレムから放逐されるが、その後はむしろ銀行業に精を出すようになり、莫大な富と権力を持つテンプル騎士団は、人々から疎まれ、恐れられるようになる。最終的に、1307年、その富に目をつけたフランス王フィリップ4世により、悪魔崇拝者としての冤罪を着せられ、解散させられる。(はてなキーワード)
2012年12月05日
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「最後の質問をそんなことに使うなんて、もったいないことを、マイ・レディ。誰もみな、教わったよ―になるだけです。あなたはご自分が思っているほどしたたかじゃありません。だんな様が知ったら、なんと言うでしょ―ね?」「知るって、何を?」「あら、本当に気づいてないですか?てっきり知らないふりをしているものとばかり思ってました」ゴーストが笑い声を上げた。アレクシアのとまどいと来るべき悲劇をあざ笑うような、しゃがれた、本物の笑い声だ。「なんのこと?あたくしが何を知らないというの?」「もう終わりです。約束、果しました。十の質問、ちゃんと答えました」そのとおりだ。アレクシアはため息をつき、しぶしぶながら人生で初めての除霊を行なうべく手を伸ばした。(ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う」P392)というわけで、ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う」を読みました。広範囲で、吸血鬼や人狼など異界族が人間化する現象が発生しますが、それがどうもマコン卿がかつてアルファであった人狼族と関係があるらしい。そこで、アレクシアは飛行船で、その人狼族が暮らすスコットランドへ飛ぶことになりますが、同行者のなかに吸血族のスパイがいて・・・・・、というお話です。最後は、人狼族にはできるはずのない子供を身ごもったため、激怒したマコン卿にアレクシアが追い出されてしまうところで次巻へ、となります。続けて読まなしゃ~ないな、てなわけで、第3巻「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」へと進みます。
2012年12月04日
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上野千鶴子さんの「生き延びるための思想」を買書つんどく。最後に収録された、いわゆる「最終講義」は、この Ustreamで見ることができます。「大義のために生きること、それはしばしば反転して「死ぬための思想」として機能してきた。女性も兵士となる権利をえるのが「平等」か、自爆テロや連合赤軍事件にかかわった女たちはどんな力学の中にいたのかー。「逃げよ、生き延びよ」と、弱者が弱者のままに生きられる社会のためのメッセージをこめた論考群。東日本大震災後の東京大学最終講義等も収録した新版。」(「BOOK」データベースより)
2012年12月03日
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