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「地名に隠された『東京津波』」(谷川彰英、講談社α新書)を読む。「東京に高さ10メートルの津波が来たら?」という想定を、東京の地名を鍵に読み解く、という1冊。私はもともと耳学問で、地名などを「人文地理学」的観点から分析することで、その場所の地形がどういう経緯で形成され、災害への強弱がどうなっているのかを知ることが重要だとは知っていた。しかし、ちゃんとまとまった本として読んだのは本書が初めて。東京という町はもともと江戸時代に東京湾を埋め立て、船を陸内に曳航するために堀を割り、更に飲料水を確保するために「○○上水」なるものをあちこちに作成して出来た街で、元来洪水には弱い町である。それが、台風や高潮の時期と重なって津波まで発生したら…そりゃまぁ水没する地域だらけなワケだ。それを地名の観点、地名の歴史などから紐解いているのが本書。素人にも思いつくのは「渋谷」「溜池」「砂町」「舞浜」「駒沢」など、海・川・砂などに関連した地名が付いている場所は基本的に危険。江東の海抜ゼロメートル地帯も、地名を具に見てやれば、それがより明らかになる。では、どこが安全かということももちろん気になるわけで…この答えも示されている。もちろん台地上にあるところ(例えば武蔵野台地上の吉祥寺など)なのだが、中山道・甲州街道などの旧くからある街道は谷ではなく尾根の上に作られているので、標高が高く安全なのだそうだ。その他にも、何故地下鉄銀座線の渋谷駅がいきなり空の上に出てくるのか(渋谷が谷であることの何よりの証拠)、舞浜は何故「舞浜」なのか(「マイアミ」に似せてつけた人工的な地名)、等という豆知識も随所に見られる。東京23区に大体の土地勘がある人なら、東京の昔と今を比較しつつ読めるので(実際、本書は古地図を元に書かれている)、余計に楽しめると思う。楽しんだ後にはもちろん、自分が住んでいる場所が安全なのかを振り返って欲しい。ただ、2点残念なところがある。1つは「京都・奈良に大地震が起きていない」という記述。これは私に言わせれば嘘である。京都は歴史も長く、文献記録に多くの地震があったことが記されているのは常識である。もうひとつは「芋洗坂」のくだりで「一口」と書いて「いもあらい」と読む由来の説明がいまいち曖昧に誤魔化されている点である。でも、「一口」で「いもあらい」なんて面白いと思いませんか?地名に隠された「東京津波」/谷川彰英
2012.09.20
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「ツナグ」(辻村深月、新潮文庫)を読む。いよいよ新潮文庫に辻村登場、である。死んだ人間と生きている人間を会わせる窓口である「使者(ツナグ)」が、幾人からの依頼を受けて、それぞれの希望にしたがって死者との対面の場を設けていく。そんな短篇が連作の形でひとつの長篇小説になっていく。そして最後には「使者」自身の過去であったり、謎であったりが解けてゆく、という短篇で締めくくられている。「死者」というのが幽霊とかではなく、死者の言葉を「使者」が単に伝言形式で生者に伝えるという形式でもないという、新たな設定が面白い。これまで読んだ辻村作品とは明らかに一線を画する感じがした。それにしても、である。作中で「真逆」という言葉が2回も使われている(P.180とP.248)。私も常々気になっていたこの「真逆」という言葉、先日あるニュースサイトで「広辞苑にも大辞林にも載っていない」言葉であり、もし書くなら「正反対」と書けと指摘されていたた、「正しくない日本語」である。それから、「今の私たちを差す」(P.182)は、「指す」の間違いであることは明らかだろう。辻村は仮にも国立の千葉大学教育学部卒である。そんな教育を受けた人間が、しかも「作家として」使う言葉が正確でない、というのは、ストーリーそのものが面白くても、作品の価値を下げてしまうと、これも私が常々思っていることである(まぁ辻村は私より年下だから仕方ないかと上から目線で見て半ば許しているが…)。最近特に、漢字が「変換」で出てくるせいと、編集・校正の技術の低下のせいで、この手のミスがある本が大量に出版されているのは気になってならない。でもまぁ、ストーリー的にはかなり面白かった。最後に登場人物のセリフから一節を引用。「世の中が不公平なんて当たり前だよ。みんなに平等に不公平。フェアなんて誰にとっても存在しない」特に、「みんなに平等に不公平」ってあたりに、うーん、と唸らされてしまった私である。ツナグ /辻村深月
2012.09.08
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