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「命の遺伝子」(高嶋哲夫、講談社文庫)を読む。天才遺伝子学者トオルが何者かに拉致されるところから話は始まる。トオルがそこで見せられたものは、爆破事件で吹き飛ばされた男の手首。トオルは、この手首の遺伝子の解析を頼まれる。トオルを攫った集団は何なのか?目的は?そして話は世界を飛び回る。ブラジル、バチカン、アメリカ。浮かび上がってくるキーワードは、ナチス、ユダヤ、不死の遺伝子、第四帝国…そしてそれがら結びつくとき…。文字通り「命」と「遺伝子」を通奏低音にしたSFであり、また冒険譚である。次々に新しい事件が起き、そしてその謎は解かれ、ストーリーは驀進していく。しかし、肝心かなめのところは最後まで判らない。もちろん小説の結末は最後まで読まないと判らないのは当たり前なのだが、この話に関しては登場人物と世界観の設定が巧みな故、ますます先が判らない。だからどんどん作品世界に引き込まれ、息もつかずに読み切ってしまった。さて、高嶋作品についての私の評価でいつも辛口気味になってしまうのはヒューマン系の部分なのだが、本作は登場人物の設定上、描くのが難しい。しかし、その制約の中でキッチリと描けているのではないだろうか。久しぶりにホントに面白くて楽しめる小説だった。十点満点!命の遺伝子/高嶋哲夫
2012.11.24
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「ミザリー」(スティーヴン・キング、文春文庫)を読む。「シャイニング」に続いて懐かしいキングの作品を再読。作家のポール・シェルダンは、雪道の自動車事故で大けがを負う。そこを偶々通りかかった元看護婦のアニー・ウィルクスに助けられる。アニーはポールの大ファン。ポールは命拾いしたかと思ったがそれは大きな間違い。アニーはポールを自分の家に監禁し、「自分のためだけに」小説を書くように強要する。底本は1987年刊。「シャイニング」の10年後。そしてこの頃既にキングお得意の「自分の作品へのインプリケーション」が見られる。「シャイニング」の舞台であるホテル「オーバールック」の名前がちょっと登場する。まぁそれはさておき、この作品の主要登場人物はポールとアニーのふたりだけ。しかもポールは大けがで自分では動けず部屋に監禁状態。そしてアニーは狂人。さて、ポールはどうやってアニーの魔の手から逃れるか…。こんなシチュエーションを描けるのもキングのすごいところ。そしていつも思うのだが、人間の正気と狂気の境目を描くのがキングの真骨頂。この作品でも狂人アニーだけでなく、ポールまでもが(監禁という特異状態に起因して)狂人へなりかかって何とかその淵で踏みとどまって戻ってくる、という心理描写が巧みである。主人公の名前「ポール・シェルダン」は、当時日本でもブームになっていた作家「シドニー・シェルダン」を多分に意識したものであるところも面白い。スーパーナチュラルの要素をほとんど排した密室ホラー小説。怖いが面白い1冊。ミザリー/スティ-ヴン・キング
2012.11.18
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「天の科学史」(中山茂、講談社学術文庫)を読む。天文学の歴史についての本。世界で一番古い学問といわれる天文学、昔は占星術で政に使われたり、測量に使われたり、暦の作成に使われたりという時代から、ケプラー・ニュートン・ガリレオの時代を経てコペルニクスの地動説、さらに近年の天文学の進歩について、編年体で書かれている。天文学史というのは今まで読んだことがなかったので、面白い発見やエピソードがいろいろあった。例えば以下のような感じ。・現在でもイスラム圏では太陰暦に基づいており、ラマダンの時期を知るために飛行機を飛ばして新月の観測をしている。・第二次大戦時に飛行機で爆撃に行く時に、天体観測による位置決定ができず、同盟国(枢軸国)のドイツから潜水艦で天体位置表を輸入していた。・天智天皇が漏刻(水時計)を初めて設置した日が「日本書紀」に記されており、それが今の暦で6月1日なので、この日が時の記念日になった。・アメリカが巨大天体望遠鏡を作成できたウラには、ロックフェラーやカーネギーなどの財閥の力があり、天文学という俗世間離れした学問にも、社会の動きが反映されている。ただし、本書の底本は1984年刊ということと、筆者の考えによって、最新の天文学・惑星科学の知見は反映されていない。例えば以下のような感じ。・P.119では、宇宙進化論がほとんど出来あがっていないという記述があるが、これは古い話で、今はビッグバン宇宙論やインフレーション宇宙、宇宙の晴れ上がり(順番がごっちゃになっているが…)など、いろいろな説が定説となっている。・P.217では、天文学は精密科学と書かれているが、今でも決してそんなことはない。少なくとも私が学部時代に惑星科学の授業を受けた頃でも、宇宙科学は定量的にはかなりいい加減なものであった。・P.226では、アポロが持ち帰った月の石の分析を過小評価しすぎである。地球と大変違っているので、月の「捕獲説」を採用しているが、これは今の定説に反する。今は「巨大衝突説」といって、地球に巨大な隕石か小惑星が衝突し、地球の一部がはぎとられたものが月になった、という考えがほぼ定説である。・P.258では、太陽系生成論についていまだ未決着としているが、これも今では原始惑星系円盤から惑星が形成されたという惑星形成論でほぼ決着している。先にも述べたし、筆者も述べている通り、この辺の最近の知見はこの本には反映されていないので、一般読者が読むときには注意を要する。最近の知見は別の本に譲り、この本では古い時代の話を楽しむのがいいと思う。最新の知見がないからといって、この本の価値を落とすものでは決してない。天の科学史/中山茂
2012.11.12
試験からだいぶ経ってしまったが、今回の試験で出題された用語のうち、知らなかったものを今後のために復習しておく。SMP(Symmetric Multiple Processor)複数のCPUが同等な立場で処理を分担するマルチプロセッサ技法。「対話型マルチプロセッサ」とも訳される。VLIW(Very Long Instruction Word)マイクロプロセッサの高速化技術の一つ。依存関係にない複数の命令を一つの命令としてまとめて同時に実行する。同時実行される命令の数は常に保たれ、既定の数に達しない場合は、「何もしない」命令で埋められる。1命令の長さが従来のプロセッサに比べて極めて長いため、このような名前で呼ばれる。ETL(Extract/Transform/Load)企業の基幹系システムなどに蓄積されたデータを「抽出」、DWHなどで利用しやすいように「加工」、対象となるDBに「書き出す」こと。また、これら一連の処理を支援するソフトウェア。GoFのデザインパターンオブジェクト指向開発のためのパターンとして、23種類のパターンがあり、生成・構造・振る舞いの3つのカテゴリに分類される。コアデザイン(組み込みシステムにおける)上流工程段階で、ハードとソフトの機能分担を協調シミュレーションによって十分に検証する方法。ソフトシステムズ方法論(Soft Systems Methodology;SSM)かかわる人々の立場によって見方や考え方が違うような状況において、何が問題か、何を目標にすべきかを明らかにして、今後の活動計画を検討する。7つのステージで構成されているが、決められた順番どおりに進めるものではなく、行ったり戻ったりしながら検討を進めていく。BRM(Business Reference Model)業務分類に従った業務・システム体系と各種業務モデルからなる、組織全体で業務やシステムの共通化の対象領域を洗い出すモデルを提供する。シン・プロビジョニング(Thin Provisioning)ストレージを仮想化して管理することにより、必要に応じて装置を追加して対応できるようにすること。システム導入の初期に需要を予測して備える作業(プロビジョニング)がほとんど必要ないことからこのように呼ばれる。RPO(Recovery Point Objective)バックアップ/リストア作業やディザスタリカバリにおける指標で、バックアップデータを取得するタイミングないし頻度のこと。災害や事故、障害の発生によるシステム停止時に、どの時点まで遡ってデータを回復させるのかを示す。組み込みの問題が午前で出題されるとは…。それだけでなく、勉強したが知らなかった用語がけっこう多く出て予想外だった。
2012.11.04
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「シャイニング(上・下)」(スティーヴン・キング、文春文庫)を再読。この作品を初めて読んだのは私がキングにハマりはじめた高校生の頃だから、かれこれ17年ぶりくらいの再読である。17年って凄い。はじめに驚いたのは、冒頭の献辞で本書が息子のジョー・ヒルにささげられていることである。ヒルといえばいまやキングと肩を並べて小説を書いている作家である。おまけにこの作品がアメリカ本国で書かれたのが1977年。ちょうど私が生まれた年。これまた凄い。で、本書は最近文春文庫でリバイバル版が出ているのだが、さすがに同じ小説を2セット持っていてもしょうがないので、今回読んだのも17年前の古いバージョンのほうである。既に日焼けして古本みたいになっていた。さて作品であるが、コロラドの山中にある名門ホテル「オーバールック」の冬季管理人となった父とその妻、子供が主人公である。主人公といってもこのホテルは冬場は雪で外界から途絶されているので、彼ら以外のメインの登場人物は数えるほどである。そして、父親がひょんなことからホテルの歴史に足を突っ込んでしまい、ホテルの不思議な魅力に引き込まれていく。一方で、不思議な能力を持ったまだ幼い息子は…そしてそこで起きる事件。さて、3人の運命は…という感じ。キング作品と言えば、私は常々「人間の狂気を書かせたら右に出るものなし」と評価しているのだが、それはこの初期の作品にも既に表れている。しかも、幽霊屋敷モノ・超能力モノといったホラーの王道を外さずにそれを描いているのが凄い。やはり「栴檀は双葉より芳し」なのかと再認識した。シャイニング(上)/スティーヴン・キングシャイニング(下)/スティーヴン・キング
2012.11.03
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