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VAMPIREEYE第五話「奥寺舞子」「え?あ、ああ…」「傘ノ島駅商店街にあるマスドバーガーでいい?」「うん」いきなり二人で話がしたいとは何か裏があるのかと二郎は思った。しかしそれは違った。「友達も一緒だけど構わないよね?」奥寺舞子の後ろには黒田アイ、中嶋花音がいた。二人共派手目グループである。「ああ、もちろん…」電車に乗り込む4人、二郎は携帯でゲームをして気まずい時間をやり過ごした。昼で下校になったため車内は空いていた。傘ノ島駅で降りた4人は商店街を進む。中程のところにマスドバーガーがあった。このマスドバーガーは30年前京都ではじめ出て出店されたハンバーガーチェーン店で、増田と宍戸という二人の男が立ち上げたためにマスドバーガーという名になった。今では全国展開をしていて知らないものはほとんどいない。安くてメニューが豊富、少し値段が高めの本格的なディナースタイルの品もあり老若男女に利用されている。店は和と洋をうまく取り入れた落ち着くデザインであった。「私はぜんざいと焼きモナカチョコと抹茶オレ」「私は大福アイスとスパイシーポテトとミルクティー」「私はレッドチキンと八つ橋とオレンジジュース」次々と注文する奥寺たち、二郎は空腹でもないのでコーラだけ注文した。席に着く四人、二郎は遠慮がちに座る。「それで…俺になんの話?」「あーちょっと待って」そう言うと女性三人は注文したメニューを食べながら二郎のついていけない女子トークを始めた。「(なんなんだ一体…)」10分程経ち店内に客はいなくなっていた。カウンターにも誰ひとりいない。外を見ると体格のいいスーツの男たちが車から降りてくるのが見えた。そしてマスドバーガーに入ってきた。「ん、じゃあ話を始めましょう。…木城君、このメールの画像見覚えがあるわよね?」奥寺は携帯の画像を二郎に見せる。それは昨日送られてきたメールの画像だった。「そ、それは…」「知ってるんだ…ということはちゃんと届いてたのに木城君はなんともなかったのね」「え?奥寺さんはこれなんだか知ってるの?」「よーく知ってる。だってコレ私が送ってるんだもの」「なんだって…」奥寺の目が輝く。二郎は思わず立ち上がった。「あの女…白峰って言ったわね。教会のヤツね、明日殺すわ。その前に木城君、私の使徒になりなさい。映画の主人公みたいな超人的な力が手に入るわよ?あ、でもその代わりに私の言うことには逆らえないし時々体借りるけど…それとも私の雄になる?私との交尾はこの世のものとは思えないほど気持ちいいわよ?その代わりあなたの体も魂も残らず食べさせてもらうけどね」「奥寺さん君が土蜘蛛…そんな元の奥寺さんは…」「ふふふ…この子が生まれたときに取り付いてずっと人間として生きてきたんだけどね。ちょっとあってね、もうコソコソするのはやめることにしたの。人間として転生するのは10回目だけど今が一番楽しいかな」「そんな…(逃げるしかないか?今親父や白峰さんに連絡しても…)」「ホント、この時代は便利よね。人間が色々作ってくれたおかげでこっちも住みやすいし狩りしやすいわ。京都市北区の上品蓮台寺にある源頼光朝臣塚知ってる?あそこ私のお気に入りの場所として有名なの。インターネットで調べてみてもわかるわ。何が言いたいかっていうと今は明命館学園がお気に入りの巣ね。一通りなんでも揃ってるし学校って閉鎖的で一般人に知られにくいし。逃げようとしても無駄よ、この店には私の使徒しか残ってないし」「くっ…」汗が吹き出す二郎、奥寺に睨まれ動くことができない。「おや?私の目を直接見てもまだ使徒にならないとは。ひょっとして何かすごいアイテム持ってる?私の力を防ぐほどの」二郎はポケットのキーホルダーを握り締めた。「それなの?じゃあそれを取り上げるわ」奥寺が手を上げるとスーツの大男二人が二郎を押さえ込んだ。ポケットを探る奥寺、キーホルダーに触れたとたんに手を離した。「…なるほど…魔除けのアイテムってわけ。でもそんな貧弱なものじゃ土蜘蛛の私には通用しない」もう一度手をつっこみキーホルダーを手に取る奥寺、電流のようなものがキーホルダーから発せられていた。「低級の奴らじゃ触れることもできない程強力なものね。これをどこで手に入れたの?」「教えるものか」「まぁいいわ、これさえなければ木城君は使徒になることを避けれない。さぁ私の目を見なさい」顔を近づける奥寺、普通なら女子に顔を近づけられて嬉しい状況だが今は違った。二郎は目を閉じ顔を背ける。奥寺は女性とは思えない力で二郎の頭をつかみ前を向かせる。「さぁ、受け入れなさい木城君」指を瞼にかける奥寺、二郎の眼が開かれていく。「(くそう…ここまでか)」「アアアアアッ!」奥寺が悲鳴を上げた、彼女の手に白木の針が突き刺さっている。「そこまでよ土蜘蛛」マスドバーガーの入口には釣り道具の竿を入れるようなカバンを持った吹雪が立っていた。「白峰吹雪…来たわね。ちょうどいいわ始末してあげる」「白峰さんどうしてここに!?」吹雪はカバンから太刀を取り出す。「木城くんは狙われると確信していた。悪いけど囮になってもらったの」それを聞いた奥寺は椅子から飛び上がり空中で回転し着地した。「ずる賢い女ね」「木城くんを助けるわ」「真昼間の店内で刀を振り回す気の触れた女を見て周囲の人間はどう思うかしら?もう少し頭を使った行動ができないものかしらね」「大丈夫、既に人払いの結界は貼ってある…後は貴女を始末するだけ」右上段に太刀を構える吹雪、奥寺は白木の針を抜いて地面に叩きつける。「何?『頼光』の真似?その刀は『膝丸』のつもり?この店内でそんなものを振り回す気?銃を使ったほうが手っ取り早くて強いんでは?」挑発する奥寺、店内にいる使徒が吹雪を取り囲む。「言っとくけどいつまでも古臭い化物どもと一緒にしないことね。車を見て鉄の塊が走ってるだのテレビを見て箱の中に人がいるだのというのとは私は違うのよ」「…だから何?」吹雪は奥寺を睨みつける。「戦い方も現代のやり方ってわけよ。死ね白峰吹雪!」奥寺の指から白い弾が発射される。察知した吹雪はそれを避けた。白い弾は後ろに壁に当たり破裂した。吹雪が間合いを詰める、腕をコンパクトに天井に当たらないように降る。奥寺は一歩後ろに飛び太刀を避けた。「次はこれよ!」5本の指を突き出す奥寺、各指から白い弾が連射される。前転で躱す吹雪、下から太刀で斬り上げを放つ。半身で避けるも奥寺のスカートの端は切り裂かれた。奥寺の蹴りが吹雪を襲う、立ち上がりかけの体制の悪いとこへの一撃。回避することはできず腕で頭部を咄嗟に庇う。「はっ!」束ねたロープのような糸を放つ奥寺、吹雪の足に絡みつく。そして一気に引っ張る。「ぶっとべ!!」そのまま力任せに投げつける、吹雪の体はテーブルに突っ込んだ。「あはははっ!無様ね。たかが人間一人、叶うとでも?…まぁ昔頼光に負けたけどね」「……」立ち上がる吹雪、口には血が滲んでいた。「この店内は私の巣、狩りの場。蜘蛛は自分の巣で狩りをすることくらい知ってるでしょう?そして…自分の巣では負けない」「…」「白峰吹雪、お前は私と木城君がこの店に入る前に来るべきだった」「やぁー!」突進する吹雪、太刀の刺突で奥寺に攻撃を仕掛ける。「狭い建物の中での剣術は突きが有効、でもそれは人間相手でしょう?」連続で繰り出す刺突を蜘蛛糸で作ったバスケットボール状のもので受け止めていく。速度を上げる吹雪、高速の刺突を難なく受け止める奥寺。刀身は蜘蛛糸で隠れていく。「これでもうその刀は使い物にならないわ。で、その次にお前の取る行動は」余裕を見せる奥寺、吹雪は太刀を下ろしてブレザーの内ポケットを探る。「霊樹を削り出した針での攻撃よね?店を燃やすわけにはいかないから火術は使えない」だが吹雪が取り出したのは小さな瓶だった。何かを感じた奥寺は間合いを取る。「やっぱり…これを使うしか」瓶を開けて中身を口にする吹雪、黒い髪がみるみるうちに銀色に変わっていく。犬歯は伸び、目は血に濡れたような赤い色を放っている。「それがお前の本当の姿か。ふん、お前も闇の住人じゃないの」「…覚悟」吹雪はさっと太刀を撫でる。強力な粘性で付いていた蜘蛛糸がいともたやすく外れた。「こっちも本気で行くよ。シャアアアアアアッ!!」両手から大量の蜘蛛糸網を放つ奥寺、吹雪はそれを円を描く動作の太刀で払った。そして片手突きを放つ。奥寺の肩をかすめた。「くっ速い…!」奥寺の肩から血は出なかった。焼けるような痛みを感じたが傷口からは何も出ていない。「シャシャシャ!」掌からソフトボール大の蜘蛛糸玉を連続で撃つ奥寺、吹雪はそれをすべて切り裂いた。「馬鹿な!どんな接着剤よりも強力な私の糸がこんな簡単に!」奥寺は宙返りでテーブルを越え押さえつけられてる二郎の前まで行く。「白峰吹雪、お前の力が解らない以上今日はここまでにさせてもらうわ」「逃すとでも?」「木城君がどうなってもいいのなら来るといいわ」「木城くんに何かしたらその瞬間あなたの首を撥ねる。それだけよ」「じゃあこうしない?ここで私は退散するわ、決着は別の機会ということで」「ナイトストーカーと取引はしない。今ここであなたは滅する」「あ、そう。じゃあ勝手に逃げさせてもらうわ」店内にいる使徒数十人が一斉に吹雪に襲いかかる。その隙に奥寺は出て行った。吹雪は容赦なく使徒を斬り捨てていく。その全てが血を流すことなく倒れていった。店内には吹雪と二郎だけが立っていた。「木城くん大丈夫?」徐々に吹雪の髪の色が戻っていく。犬歯は戻り目の色は黒になっていた。「聞きたいことは一杯あるだろうけどそれは家に戻ってから」「そ、そうだね」「後の事は後始末人に任せればいいわ、木城くんの家に行きましょう」二郎は斬り捨てられた黒田アイ、中嶋花音や黒スーツの男の死体を見て吐きそうになったがなんとかこらえた。「さぁ木城くん早く」「う、うん(白峰さんやっぱりこういうの慣れてるんだなぁ…)」マスドバーガーの外に出ると驚くくらい普通の日常風景だった。あれほどの事が店内で起こっているのに何故?と二郎は思った。「白峰さん…奥寺はどうするの?この後あいつの家まで行って始末するの?」「それはできないわ。だから監視をつけて機会を伺うしかない。明日も土蜘蛛は平然と学校に来るでしょうね」「あいつのメール攻撃をなんとかしないと…あいつどんどん使徒を増やすつもりだよ」「餌の確保もかねてるようね。メールの対処は教会の人間に頼んであるからきっと大丈夫」二郎は吹雪のクロスバイクの後ろに乗ることになった。今回はゆっくりと通常の速度で走る。二郎は目の前から香る髪の匂いと女子と二人乗りしてる恥ずかしさで顔が真っ赤になった。続く
Dec 31, 2012
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VAMPIRE-EYE第四話「強襲」「皆さん、今日から新しいクラスメイトが加わります。自己紹介をどうぞ」教壇に上がる女生徒、黒板に名前を書いていく。「白峰 吹雪と言います。よろしくお願いします」10度程の角度で礼をする吹雪。その様子を二郎は眺めていた。「白峰、席は一番窓側の木城の横の席です」「はい」「それでは出席をとります。赤司、阿部、今井…」はいはいはいと次々返事をしていく生徒たち。出席確認の後、担任は来週からの試験期間は部活は中止という連絡だけをして出て行った。「あ、あの白峰さん」「何?」二郎が声をかけると吹雪は無表情で答えた。「メールの事なんだけど…」「後で聞くわ、すぐに授業が始まるから」「解った」その言葉通りすぐに数学教師が入ってきた。一時間目が終わり、5分休憩に入ると吹雪はクラスメイトに囲まれていた。「その制服、『星香女子』の制服だよね?」「木城君と知り合いなの?」「なんで転校してきたの?」次々と浴びせられる質問に淡々と答えていく吹雪。「制服は新学期から着ることになりそう。木城くんとは彼のお父さんと知り合いだから。転校の理由は仕事の都合で」二郎は今井と西山に囲まれていた。「おい、あんな可愛い子と知り合いだなんて…どういう関係なんだ?」「ミステリアスな雰囲気が堪らないね。サイバネ部に誘うかな?」「あ~まぁ親父の知り合いでさ、俺は昨日顔合わせたばっかりであんまり知らないんだ…」吹雪と二郎の質問タイムで5分休憩は終わり二時限目の現代国語が始まった。―昼休み二郎は担任から吹雪の案内を頼まれた。「じゃあまず食堂を案内するよ。ご飯食べてから色々案内する」「大丈夫、昨日見取り図を覚えたから。食事のあとどこか静かに話せる場所はない?」「ん~じゃあサイバネ部の部室かな。部員なら鍵いつでも使えるし。購買部でパンでも買って部室で食べながら話そうか?」「じゃあそれで」二郎はカツサンドとジャムパン、コーヒー牛乳を買い、吹雪はクリームパンと牛乳を買った。二人は3階にある部室に入る。「うわ、暑いね…窓を開けるよ」「ええ」部室には義手や人口骨格、機械部品にパソコン、工具で溢れていた。「適当に掛けてよ、ちょっとごちゃごちゃしてるけど」席に着いた二人は袋からパンを取り出し食べ始める。無言で食べ始めたがしばらくして二郎が話しかけた。「あの白峰さん…メールの事なんだけど」「…続けて」「友達の西山の姉ちゃんがさ、例のメール見たらしいんだ」「そう…それでそのメールはいつの話?その子はこの学校に居るの?」「えっと…今日届いたんじゃないかな?西山のねえちゃんはこの学校の3年だよ」「様子を見に行きましょう」立ちあがる吹雪、二郎はジャムパンをコーヒー牛乳で流し込んで慌ててゴミに捨てる。「三年生はとなりのB棟の4階だね。クラスはC」「わかったわ」教室のドアを開けると目の前に背の高いショートカットの女性が立っていた。西山の姉である。「西山の姉ちゃん!」「この子が…」「フフフフフフフフフ」笑みを浮かべる西山姉、次の瞬間吹雪を突き飛ばした。そして後ろ手に鍵を締め、スカートのポケットからナイフを取り出した。「フフフフフフフフフフ…フシュー!」ナイフで襲いかかる西山姉、吹雪は軽く躱しすれ違いざまに足をかける。だが西山姉は転ばずに片手をついて体を支えそのまま倒立する。「白峰さん!これって…」「ええ、操られているわ。昨日の咏川城に集められた人のように」「フシュァァァァッ!」倒立状態からハイキックで吹雪に攻撃を仕掛ける。これもまた躱し、吹雪は蹴りを入れる。「シャシャア!」地面を転がった西山姉は片手から糸を出し天井にぶら下がる。「白峰さん…どうするの?」「完全に取り憑かれていないのなら救う方法はあるわ」吹雪はブレザーのポケットから札を取り出す。「これで魔力を封じ込めばとりあえずおとなしくなる」「フッシャー!」振り子の要領で勢いをつけた西山姉はナイフで飛びかかってくる。ナイフをギリギリのところで避けながら西山姉の額に札を張る。西山姉は力なく倒れる。「これでしばらくは大人しいはず、だけど操っている者を探さなくては元には戻らない」「操っている者は解るのかい?」「この学校にいる全ての者が容疑者よ」「そんな…」二郎は倒れた西山姉をそっと部室のソファに寝かせる。カーテンを締めようと窓際に行くと下にある中庭から悲鳴が上がった。「キャー!」「なんだ、なんなんだ!」逃げ惑う生徒、中庭には学校の制服を着ていない男たちが数名立っていた。「ヘイヘイヘイ!」「ギャハハハハ!」「オラオラァ!」腕や足、顔などを改造したサイバネ者であった。本来医療用のサイボーグ技術を悪用し違法改造を加え暴力に使う連中である。こうしたサイバネ者は社会問題になっている。「アイツ等…学校にまで…」「木城くん、あのサイバネ者も操られているわ」逃げる生徒を追うサイバネ者、鋼鉄の義手を持つ男が男子生徒を殴りつけた。「ヘイヤー!」「があっ!」血飛沫と歯が飛び男子生徒は窓ガラスに突っ込んだ。「ギャッハー!」」「ぐえっ」鋼鉄の足を持つサイバネ者の蹴りが太った男子生徒の腹に命中。吐瀉物をまき散らしながら地面に伏す。「オララッ!」「キャー!」女生徒の髪を掴む片目が赤いレンズのサイバネ者、女生徒のシャツを引きちぎり目から赤い光線を発し背中を焼いた。「け、警察を呼ばないと!」「そうね、それと今すぐあの者を止めなくては」吹雪は窓から飛び出す。二郎が「あっ」という言葉を発す。吹雪は3階の高さから静かに着地した。「ええ~…」二郎は吹雪の行動に驚いたがすぐに思い直し警察に電話をする。「もしもし、俺は明命館の生徒の木城二郎っていうんですけど、学校で暴れてるサイバネ者がいます、怪我人も出てますすぐ来てください!」中庭では吹雪がサイバネ者に囲まれていた。「ヘヘイヘーイ!お前か!」「ギャハハ!昨日のようには行かぬぞ?」「今日は使徒三人を相手にしてもらうぞオラ!」白木の針と札を構える吹雪。「もう完全に乗っ取られてる…」「そういう事、こいつらはもはや元の人格など消え失せてるぞギャハハ!」「土蜘蛛…使徒ばかりで本体は姿を表さないのね」「昔とは違うんだよ。馬鹿でかい虎のような図体で暴れるのはもうしない。時代に合わせた狩りをしなくてはなぁ~。こいつらが死のうが痛くも痒くもねぇ、騒ぎになろうが狂った人間同士の喧嘩で終わりだ。狩りは止まらねぇ!」一斉に飛びかかるサイバネ者、吹雪はバク転で避け白木の針を投げつける。「がっ!」鋼鉄腕のサイバネ者の喉に突き刺さる。「ぐあああああああ!」片目レンズと鋼鉄足のサイバネ者が距離を詰める。吹雪はレンズ男の顎を肘で打ち、後ろから突進してくる鋼鉄足を月面宙返りで躱し首筋に白木の針を突き立てる。残ったレンズ男は首を振って立ち上がる。「流石にやるな…」「大人しくしてもらうわ」「オラア!」レンズから赤い光線が発せられる。跳躍する吹雪の髪をかすめた。「はぁ!」飛び回し蹴りがレンズ男のこめかみに命中、地面に叩きつけられレンズが割れる。吹雪はすかさず白木の針を首に突き刺す。「グアアア…この使徒はこれで使い物にならなくなったがこれで終わったと思うなよ?」「本体を突き止めて滅して終わりにしてあげる」「ククク…舐めるなよ…」「白峰さーん…」二郎が降りてきた。モップの柄を持っていた。「こいつら死んだの?」「いいえ、気絶してるだけ。でももう人ではなくなってるから教会に引き取られて浄化される」「そうなんだ…」「警察にも教会の人間がいるの、後始末専門の」「へぇ…」警察と救急が来た。生徒らは窓から中庭を見ている。教師たちは教室に戻って席に着くように叫んでいる。救急隊員が気絶したサイバネ者と襲われた生徒、西山姉を連れて行く。一人の警官が吹雪に話しかけてきた。「あー君、見たことを話してくれないか?」「わたしはこういう者です」ブレザーの内ポケットから手帳のようなものを取り出して警官に見せる。すると警官はため息をつきそのまま戻っていった。「(やっぱり教会って国家公安の関係者だって伝わってるんだな…)」二郎は走り去っていくパトカーと救急車を眺めていた。「あれ?」二郎は一階の廊下に今朝電車の中で見た帽子と黒スーツの男の姿を見た。「白峰さん、あそこ…」「?」黒スーツ男は帽子をつばを抑え廊下の奥に歩いていく。「あの男…電車でも見たんだ何か怪しいよ」「そう?」吹雪は気にも止めなかった。二郎はもう少し気にしてくれてもいいのにと思った。教室に戻ると吹雪の立ち回りを見た生徒が集まってきた。「あんな動き初めて見た!」「なにかやってるの?」サイバネ者が襲ってきた恐怖よりも興奮が好奇心が上回っていた。「いえ別に大したことでは…小さい頃から色んな習い事をしてたので」当たり障りのないことを言って切り抜ける吹雪、二郎はモップの柄を掃除用具入れに戻し大きくため息をついて席に着いた。事件があったため学校は午後から授業中止となった。「白峰さんは自転車?」「ええ」電動クロスバイクに跨る吹雪、健全な男子の二郎の視線は彼女の足に向けられていた。「……下に体操服着てるから」「え!?(しまった)」そりゃそうかと二郎は思った。「(あんなに飛んだり跳ねたりするんだもの当たり前か)」「それじゃまた明日」吹雪は猛スピードで去っていった。「はぁ…しまったなぁ」健全な男子高校生には無理もなかった。好みの女性となればなおさらである。部活も無いので次郎はそのまま校門を出た。今井と西山は二郎と吹雪に気を使って先に帰ってしまっていた。「アイツ等変なところで気を使うなよな~」一人駅に向かう二郎、指定された通学路を通り踏切を渡って駅にたどり着く。ベンチに腰を下ろして携帯を取り出した。国盗りシミュレーションゲームをする為だ。二郎は暇なときはこうやって時間を潰している。「(結局メールをばら撒いている『土蜘蛛』とやらは突き止められなかった。白峰さんは確実に見つけられる方法はあるけれどそれは最後の手段と言ってた…親父が東京に行く前に相談するかな)」ゲームをしながら考えていると目の前に女生徒が立っていた。「こんにちは木城君」小柄でパーマをかけた黒髪、色白でつけまつげをつけていてスカートはかなり短く折られている。彼女の名前は『奥寺舞子』二郎のクラスメイトで派手目なグループに所属している。二郎はこれまでそれほど話したことはなかった。「ちょっといい?話したいことがあるんだけど」
Dec 31, 2012
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VAMPIRE-EYE 第三話「火の神流」木城二郎は居間で正座をし、真っ直ぐと父・紫蓮を見据え『教会』の話を聞いていた。衝撃的だったのは知らなかったのは自分だけどいうことだった。兄の蓮也も従姉妹の沙夜も知っていたということだった。二郎は歯を食いしばり悔しさで畳を殴った。「なんで俺には教えてくれなったんだよ!」「それはすまなかったと思ってる。蓮也は教会に入る事になっているし、沙夜は彼女の母が教会の人間だった。俺はな二郎、お前には普通の人生を歩んで欲しかったんだ」「知ったからって普通の人生歩めるだろ?」何を言ってるんだと二郎は父に食ってかかる。「知らなくていい事を知って興味を持って欲しくなかったんだ。お前は将来サイバネ技術者になりたいんだろ?だから部活もサイバネ部にはいってるじゃないか」「じゃあなんで剣術なんて教えるんだよ!真剣の斬りまで教えて!!サイバネ技術者には必要ないじゃないか」「そういうな、火の神流は息子二人共に伝えたかったんだ。俺の我が儘だな」紫蓮は湯呑の茶をすすり立ち上がる。「おい親父、話はまだ…」「二郎、道場に来い」「は?」「見せてやるよ、火の神流の技を」「お、おう」静まり返った道場、中央には台座に立てられた水に浸した畳表を巻いたものが設置されてあった。太さは人間の首くらいで真剣斬りを練習するものは多くの場合これを使う。紫蓮は先ほ土蜘蛛の使徒と戦った時に使用した仕込み刀を持っている。神棚に一礼する紫蓮と二郎。紫蓮は仕込み刀を左手に持ったまま畳表に近づく。「セヤーッ!!」右足を前に踏み込み抜き打ちで斬りつける。試練の剣先はそのまま返しでもう一度畳表を斬りつけた。一瞬での二連撃、二郎は初めてその動きを見た。「…」刀を構え残心の姿勢をとる紫蓮、斬られた畳表が二つ地面に落ちた。紫蓮は素早く無駄のない動きで刀を鞘に収める。「見たか二郎、これが火の神流「疾風連撃」。火の神流は二種類の剣技によって構成されている。一つは風の技、もう一つは火の技だ」「…」二郎は口を開けたままだ。「風の技は速さ。抜き打ちに連撃、歩法。火の技は力。身体が強くなくては十分な威力が発揮出来ない必殺の剣だ。次は火の技を見せる」紫蓮は再び畳表を設置し今度は鞘から刀を抜いた状態で構える。「デヤーッ!」左足から一歩進み右足と同時に刀を出す。刀身は地面すれすれを走り跳ね上がる。畳表は台座ごと下から真っ二つに斬られた。「すげぇ…」二郎が声を上げる中紫蓮は残心、そして納刀を流れるような動作で行う。「今のは火の神流「天昇炎撃」」紫蓮は道場の隅にあった新たな台座を設置、畳表を立てる。「火の神流は風と火を使いこなるようになって一人前」紫蓮は左手で鞘を持ち、右手は柄に添えている。「セイヤアアッ!!」抜き打ちの二連撃から体全体を使った斬り上げ。最初の二連撃で斬られた畳表が落ちる前に斬り上げで更に切断した。「実際はこのまま使うわけではないが、型を習得しておくと応用が効く。二郎、お前は蓮也と違いまだ体ができていない、まずは風の技を覚えろ」「え?…ああ」「まずは疾風連撃を会得しろ。それから次の風の技を教えてやる」「ああ」二郎はまだ上の空だ。紫蓮は仕込み刀を懐紙で拭き道場を出ていく。「二郎、後片付けよろしくな」「ちょっと…なんだよそれ」二郎はなにがなんだが解らないうちに技を覚える事になった。今日一日で色々なことが起こりすぎて整理がついていなかった。呆然としたまま後片付けを終えた二郎は居間に戻った。そこにはあぐらをかいて昨日の残り物の焼き魚を食べる紫蓮、正座をして手帳を広げている白峰吹雪の姿があった。「あれ?白峰さん帰ったんじゃなかったの?」「蔵に寄っていただけ。貴方にはまだ言う事がある」「え?」二郎は少し動揺した。思わず白峰吹雪の黒い瞳から目をそらした。「明日から明命館学園に通うから。理由はナイトストーカーの殲滅。クラスはあなたと同じ1年B組」「え、そうなの…でも蜘蛛の化物やっつけたじゃないか」「あれはあくまで使徒。操っている本体はまだメールを出して獲物をおびき寄せてるはず。10代の揺れやすい心は奴らに狙われやすい。実際、咏川城に集められたのは10代の人間ばかり」手帳を閉じた吹雪は二郎の目を見る。「ナイトストーカーに関わった人間はその後も巻き込まれやすい、気をつけて。できる限りわたしも警戒するから」「あ、うん…」「じゃあ明日学校で。…紫蓮さんそれでは失礼します」立ち上がった吹雪は二郎に会釈をした後、魚を食べる紫蓮に深々と頭を下げる。紫蓮は片手を上げて「おう」と言っただけで何の愛想もなかった。「おい二郎、今日あった事、俺のこと吹雪の事ペラペラしゃべるんじゃねえぞ?」「い、言わねーよ!こんな話どうせ誰も信じないしな!!」「そういうんじゃねえんだ。ナイトストーカー側の人間もどこに潜んでるかわからないから情報を漏らすなって事だ」「ナイトストーカーって人間の敵じゃないのかよ?」「ん~まぁ…人間だけの敵って訳じゃないが。とにかく教会の事は言うなよ?」「ああ…」「剣の修行も続けるからな?何の力もないお前でもやらないよりはずっとマシだからな」「……」「シケたツラすんな。明日からスタイル抜群のクール美人とクラスメイトなんだからな!吹雪ってお前の好みのドストライクだろう?」「ななな、何言ってんだよ!別に俺は!!」「隠すな隠すなー俺も若い頃あんな子好きだったからなー。かあさんは全然違うタイプだが」「そういや親父、お袋はいつ帰ってくるか知ってる?」「さぁな~原稿が終われば帰ってくるだろ。人気作家様は忙しいようだからな」「お袋の友達から連絡が取れないって何度も電話あってさ…まぁ煮詰まってる時はいつもそうなんだけど」「へー…何日帰ってないんだ?」「三日だな」「ん?じゃあこの魚お前が焼いたのか?」「違うよ、従姉妹の沙夜だよ。俺も兄貴も料理苦手なの知ってるだろ?」「ほう…沙夜のやつ腕を上げたな」「で、親父はいつまでも家に居るんだ?」「明日また出る。今度は東京だ。もう隠さないで言うが教会の東京の支部にな」「じゃあしばらくは帰ってこない?」「そういうことだな。まぁ沙夜もほぼ毎日来るから飯は大丈夫だろ?」「ああ」二郎が自分の部屋に戻ろうとした時、玄関の引き戸が開いた。「ただいま」「おかえり兄貴」兄の蓮也だった。ファストフード店でのバイトの帰りであった。「兄貴は知ってたんだよな…親父の仕事や教会の事」「ああ…親父からメールが届いたから大体の事情は掴めてる。悪かったな」「…風呂沸かしてくる」「二郎、俺な、大学卒業したら教会に入るつもりなんだ。ま、その前に受験だけど」靴を脱ぎながら少し嬉しそうに言う蓮也。弟に隠し事をしてたつっかえが無くなったのか口調が軽い。「そうなんだ」「大学は卒業する必要はないんだけどやっぱり大学生活ってのを経験したいからな」「そうか…あ、そういえばさ、白峰さんっていつから教会にいるか知ってる?」「白峰さん?ああ、白峰吹雪さん。あの子は推薦されたって親父から聞いた。なんでも中学生の時から教会の執行人として活躍してるんだと」「中学生から?…普通の子に見えるのに」普通の子と言って二郎は頭の中に浮かんだ光景があった。二郎がまるで追いつけないほどの駆け足。電動自転車とはいえ車でなければ追いつけないほどの速度を出していた事。大の男でなければ振れそうに無い太刀を軽々と扱っていた事。「俺もあまり話したことないし良くは知らないんだけどな」そう言うと紫蓮は台所に向かった。二郎は階段を上がって自室に入る。ベッドに体を投げ出し天井を見つめながら今日あった出来事を整理していた。―次の日の朝結局一睡もできなかった二郎、台所を見ると食事のあとがあった。父と兄は既に出たらしい。二郎はパンを一枚かじりコーヒーで流し込み家を出た。よく晴れていた。先週梅雨が明けたばかりだった。あと二週間で夏休みが始まる。携帯をいじりながら駅に向かう二郎。昨夜の事件をニュースのサイトで調べるも何一つ出てこなかった。「やっぱり何も出ないか…」改札を通り抜け、ホームに並ぶ人々を眺める二郎。昨日あれだけの事があったのに皆は知らないんだなと考えていた。急行列車が通りすぎ、10分後にようやく各駅停車の電車が来た。咏川駅は各駅停車しか利用できない。電車に乗り反対側の扉の前に立つ二郎。乗車率は80%というところだった。ポケットから携帯電話を取り出しクラスメイトの今井にメールを送る。『題名:おはよう 本文:昨日変なメール来なかったか?』しばらくすると返事が来た。『Re:おはよう 本文:変なメールって何?チェーンメールとか詐欺メール?』二郎は再びメールを送る。『Re:Re:おはよう 本文:違う、奇妙な模様が写ってるやつなんだけど今井は知らない?』またしばらくすると返事が来る。『Re:Re:Re:おはよう 本文:知らない。学校で詳しいこと教えてくれ』二郎は携帯をポケットにしまった。「傘ノ島~傘ノ島~宇治方面をご利用の方は向かいのホーム3番にお乗り換えを。伏見稲荷、三条、出町柳方面をご利用の方は4番、枚方市、守口市、淀屋橋方面をご利用の方は5番にお乗り換えください」 傘ノ島駅に着いた。次の明命館前駅で二郎や明命館の生徒は降りることになる。傘ノ島駅は他の路線を走る電車と連絡しているためここで降りる人とここから乗る人が多い。あっという間に乗車率は100%になった。二郎が反対側の扉にいるのは明命館前駅はこちら側が開くからだ。「暑い…」人が増えて途端に暑くなった。弱冷房車に乗ったのは失敗だと二郎は思った。「ん?」窓に映った男から視線を感じた。この暑いのに帽子と黒のスーツを着ている。振り返ると男の姿はなかった。窓に目を戻すと男の姿は消えていた。「気のせいか」明命館前駅で下車し少し汗ばみながら教室にたどり着いた。「よう二郎、さっきのメールなんなんだ?」小柄だがガッチリとした今井が話しかけてきた。彼は野球部の為丸刈りである。「おー今井、あれな。昨日俺変なメールが来たんだよ。自動的に消えるみたいで残ってないけど…野球部は誰も見てない?」「そんなメールしらねぇな~サイバネ部のやつらには聞いたのか?西山とか」「来たら聞いてみるか」ホームルームが始まるギリギリになって西山は現れた。「ふーあぶねぇあぶねぇ…よう二郎、今井!」「またギリギリかよ」「なぁ西山、変なメール来なかったか?妙な模様が写ってる…」「ん?メール??…そういやねえちゃんがそんなこと言ってたな。消えたみたいだけど」西山は背の高いメガネのやせ型である。二郎と同じサイバネ部だ。「西山のねえちゃんが!?何か変わった様子は?」「さぁ…別にいつもどおりだったけど?そのメールって何なんだ?流行ってんのか?」「詳しいことは休み時間な…」二郎は前を向く。教師が近づいてくるのが見えたからだ。教室の扉が開き教師が入ってくる。「起立、礼…おはようございます」教師の横に女生徒が立っていた。制服は明命館の物ではない。二郎は見覚えがあった。
Dec 30, 2012
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オルガ:ジャンクフードや肉だけじゃなく野菜も好き。FalloutNewVegas 第10話 「植物の力」廃墟群をライフルのスコープで眺めるロロ、あたしはPIP-BOYで索敵を続ける。「5人てところですねぇ~どうします?問答無用で狙撃します~?」「うーん、流石に無差別攻撃はどうかなぁ…気づかれないようにもう少し近づいて判断しようよ」「わかりました~」あたしとロロは大きく迂回して瓦礫沿いに進む。そこでNCR兵の姿が見えた。「止まれ、この先はNCRの作戦領域だ。お前たちは何者だ?」サービスライフルを構えるNCR兵、他にも3人居た。「あたしはアポカリプスの使徒です!こっちは知り合いの植物学者です」「アポカリプスの使徒だと?…ふん、まぁいい。この先は危険だ、凶暴なレイダーの住処になっている。ドライバー・ネフィーってクソ野郎が何人もNCR兵を殺してるんだ」忌々しげに言うNCR兵。なるほど、凶暴なレイダーの討伐に彼らは来たわけだ。「第一偵察隊が出張ってこようとしたが仲間の敵は同じチームの俺たちが取ると決めたんだ。さぁお前たちは引き返せ、流れ弾が当たっても知らんぞ?」「手伝ってあげましょうかね?人数は多いほうがいいでしょ?」「民間人の力を借りるほどNCRは枯れちゃいないさ。おい、行くぞ!」隊長らしき男が3人の部下に声をかける。頭を低くした体勢のままNCR兵たちは瓦礫をす進んでいった。「どうしようかロロ?他の所行く?」「NCRについて行きませんかぁ?」「手伝うって事?」「違いますよ~?後ろから様子を見てるだけです。どっちが死んでも戦利品いただけるじゃないですか~?」「…え?」ニコニコとしながらサラッと言い放ったロロ。あたしは少しびっくりした。「ロロはNCR嫌いなの?」「嫌いです~」「何か恨みがあるとか?」「父が亡くなった原因がNCRにあるのですぅ…」「そっかぁ…」「さっきの人たちに恨みはないですけどぉ、死んでも全然構わないとロロは思ってます。だからこの先にいるレイダーと潰しあって共倒れになればいいな~とオルガさんはNCR好きなんですかぁ?」「う~ん…別に嫌いじゃないかな。特別好きでもないけど。一応NCRのおかげでベガス周辺は守られてるし、リージョンをダムから追い払ったしね。あたしはリージョンが嫌いだな~奴隷制度とかそういうのが気に食わないのよ。まぁだからと言ってリージョン皆殺しにされろとは思わないけどね。無理やり力づくで吸収された部族もあるし…」「そうですか~…あ、オルガさんNCRの後をつけましょう~」ちょっと不安を感じたけどロロはむちゃくちゃしないと信じよう。フリーサイドで育ったあたしは沢山の胡散臭い連中や異常者を目にしてきた。良い人の仮面をかぶった悪い奴も知ってる。ロロは、あたしの勘では多分大丈夫。発言からちょっと残酷さを感じたけど。『ぎゃあああああああああああああっ!』『があああああああああああっ!』『がはあああああああああっ!』『ぐはあああああああっ!』四人の悲鳴が聞こえた。先に進んだNCR兵のものだと思われる。あたしとロロは頭を低くしながら瓦礫に沿って進む。そっと隙間から見ると、血まみれのゴルフクラブを持ったレイダーが立っていた。後ろにはニヤケ面をしたレイダーの仲間がいる。「NCRやられちゃいましたね~」「そうだね…うーん、あの装備のNCRを圧倒するなんてあいつら結構強いかも」「オルガさん、どうします~?ロロはあの人たちやっつけてお花の肥料にしたいですぅ。汚い物を始末して綺麗なお花を育てる。モハビの為にもなりますよ~?」「あ、ロロ!飛び出したらあいつらに撃たれるよ!」白衣とシャツ、ロングスカートという軽装のロロは撃たれたらひとたまりもない。あたしはレザーアーマーの下に更に鉄板を入れてるけど。「死んでくださ~い」ロロは飛び出してライフルを撃つ。一番遠くのレイダーの喉に命中した。「んだコラー!」ゴルフクラブを持ったレイダーが声を上げる。後ろにいた連中も銃を構える。「もう!何やってんの!!」あたしは飛び出してロロの肩を押し、ゴルフクラブのレイダーの攻撃を回避させる。「このドライバー・ネフィー様に挑むバカがまた現れるとはな!このクラブの餌食になりなぁ!」「そんなクラブであたしのパワーフィストが負けるか!」右ストレートを打つ、空気圧でフィスト部分が可動しドライバー・ネフィーのクラブに命中した。細いクラブであたしの攻撃を防げるものか!「おっとっとっとー!中々のパワーだな!!だが折れないぜ?バラモンの突進ですら受け止める特性のクラブはよ!」「ちっ」クラブをフルスイングしてあたしの頭を狙ってくる。あたしは一旦距離を取りドライバー・ネフィーの様子を伺う。横ではロロが……倒れていた。撃たれた!?倒れていたロロがゆっくりと体を起こした。ロロの顔色が変だった、色だけじゃない皮膚全体ががおかしなことになっていた。まるで木の皮のようだ。「ロロ大丈夫なの!?それどうなってるの?」「バークスキンですぅ!ちょっとやそっとの弾なんてロロには効かないのですよ~」ロロはライフルのレバーを引いて排莢し狙いを定めてレイダーを撃つ。またひとり倒れた。「テメェコラァッ!」ドライバー・ネフィーがロロに襲いかかる。クラブがうなりをあげロロの頭部を狙う!「ホラホラホラ!この距離ではライフルは使えまい!NCR共のように頭砕かられて死ね!」のらりくらりと攻撃を回避するも反撃できない様子のロロ。「ロロ!…ってあっちからはもう一人来てるし!!」弾が切れたのかリッパーを振りかざし残ったレイダーが突進してきた。「切り刻んでやんぜメガネ女!」「メガネで何が悪い!オルガ・ドランゴンフィッシュブロー!」あたしは体を前傾させながら大きく腕を後ろから振り弧を描いてレイダーの顔面に叩きつける。「ぐわばっ!」鼻血と歯をまき散らしながらレイダーは後方にブッ飛んだ。残るはドライバー・ネフィーひとり!ロロは!?「…手も足も出ないと思いました~?水は出るんですぅ」「がああ…」ドライバー・ネフィーは首を抑えている。おびただしい血が流れている。「もう一発サービスであげます~」と言うとロロの目頭から何かが飛び出しドライバー・ネフィーの顔面に命中した。「ぎゃあああっ!くそおおおおっ!」「植物の力です~それではさよーなら~」ロロは笑顔を浮かべてライフルの引き金を引く。ドライバー・ネフィーの眉間を弾丸が貫いた。結局ロロがほとんど片付けてしまった。「終わりましたね~オルガさん」「うん…それにしてもロロって何者なの?あたしみたいに体改造しまくってるとか?」皮膚が木みたいになったり目から水?を飛び出させたり…普通の人間ではない事は確か。「ロロは植物の力を使えるんですよ~マザーから頂いた素晴らしい力なんですぅ~」「え?マザー?お母さんがロロを改造したの?」「違いますよぉ、ロロが生まれる時に与えてくださったのです~」「ふ、ふ~ん…良くわかんないけどロロは特殊な力を持ってるんだね」「そーです~!植物の力でまだまだいっぱい色んなことできますよ~!あ、ソーラーパワーで傷ももう治りました~」「ソーラーパワーってウエストサイドでも言ってたよね?日の光浴びたら傷治るの?」「そーです~!」「いいなぁ…羨ましい」「オルガさん、汚い人たちの死体みてください~そろそろ芽が出てくるはずです~」「え?」ロロに言われてレイダーの死体を見ると、ロロのライフルで開けられた穴から植物の芽が出てきていた。「ロロのライフルの弾には~お花の種がくっつけてあるです~!栄養満点の死体を肥料にしてグングン育ちますよ~」「あ、そういえば弾にカビみたいなのついてた!あれがそうなの?」「はい~ロロはモハビを緑いっぱいの土地にしたいですぅ!」「へぇ~凄い…」どこから来た何者かは良くわかんないけどロロは凄い!ただの天然植物学者だと思ってたけど全然違った。改造人間ってやつ?あたしはウサナギにちょくちょく改造してもらっててインプラントがいくつか体入ってる。あたしが機械系ならロロはバイオ系の改造人間だろうか。ともかくはあたしはロロに凄く興味が湧いてきた、もっと知りたい。アポカリプスの使徒に勧誘するのもいいかもしれない。ロロの力はきっと役に立つはず!続く
Dec 12, 2012
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VAMPIRE-EYE 第二話「木城紫蓮」白峰吹雪は刀を鞘から抜いた。彼女の体格に不釣合いな長さの刀は反りが大きく平安時代末期から室町初期に作られた所謂『太刀』に分類される物であった。「真剣…しかも見事な太刀だ。」真剣を見慣れてる木城二郎はすぐに本物だと解った。「そう、真剣。特殊な製法で鍛えられた対ナイトストーカーの刀。田口さんが作った」「わっはっは!そいつは自信作だよ。スッパリ奴らも切れるだろう?」「いやいや、おやっさんも白峰さんも訳わかんないよ…なんだよナイトストーカーって!おやっさんが刀作れたなんて初めて知ったし!」「すまんすまん、まず…ナイトストーカーってのはな、ずううっと昔から存在している化物どものことさ。ほれ、物語に出てくる妖怪やモンスター、ああいう連中さ」「はあ!?漫画や映画じゃあるまいし!!そんなもの…」「二郎、冗談は抜きだって言ったはずだぜ?」電子タバコをふかしながら田口が言った。「……マジか…でもそんな奴らの事TVでもネットでも聞いたことないよ」「そりゃそうさ、この社会に紛れ込んでるやつがバレないように色々やってるからな。でも二郎、ここ数年奇妙な事件が多いのには気づいているか?ほれ五日前、伏見稲荷の近くで起きたの事件とか」「伏見稲荷の近くで起きた奇妙な事件…死後3日経ってるはずの死体が殺人をしたとか言われてたあれか!でもあれはたまたま犯人の死体の腐敗が早かっただけってネットでは…」「うむ、それは奴らの仕業だ。その昔は奴らもその名のとおり闇に隠れておった。だがここ数年表に出つつある。世間の人々に存在が露呈するのも時間の問題だろうな」「化物が現実にウヨウヨいて潜伏しているって事?今までは隠れてただけで!?」「ああ、原因不明の事故や神隠し、ありえない殺人事件なんかは大体ナイトストーカー絡みだな」「親父が関係してるってのは?それに教会って?」木城二郎の質問に背筋を伸ばした正座の白峰吹雪が答える。「木城紫蓮さんは日本の『教会』の幹部。教会は日本では国家公安員会の下に置かれ、世間からは隠れて活動しているの。時には公安警察と協力することもある」「公安ってTVドラマとかでよく出てくるあれか・・・」「二郎、解りやすく言えば映画でよくある化物と戦う国の組織ってやつだ。まぁ戦闘するだけじゃなく事件解決のために色々な根回しや情報操作などもするがね」「…大体そんな感じ」「ははっ…笑うしかないよ…」木城二郎はまるで夢でも見ているかのようだった。よく妄想する『もしこの世界に化物がいてそれと戦うヒーローがいたら?』が現実にあったのだ。自分の父親がまさにヒーローであって自分はその息子。今思えば自分が高校に入って突然親父が剣術の稽古を始めたのは『教会』とやらに入れる為なのかもしれないと木城二郎は考えた。「メールはコレどういう意味なの?」「そのメールは奴らが人間を誘う手段よ。昔は人間に化けて誘ったり、使い魔を使用してたけど現代の奴らはこういった人間の文明を利用してくる。他には違法サイバネ医師に化けた奴らが部品に自分の分身を取り付けて手術したり、路上で販売されているアクセサリー屋なんかも利用したりする」「俺がこのメールに反応しなかったのは?」「貴方の心が闇に傾いていないか、紫蓮さんが貴方を守るために結界を張る物をもたせているか」「親父から持たされている物って…蔵の鍵かな?変わった石のキーホルダーが付いている…」「見せて」木城二郎は白峰吹雪に紫の石がついたキーホルダーを渡す。白い手に指先が触れ心拍数が上がった。「法力を感じる…この石なら低級の亡霊なんて近寄ることもできない」「へぇ…」返されたキーホルダーの石を眺める。「もしメールで反応してたら…って俺以外にもこのメール受け取った人いるんじゃない?ヤバイいんじゃないか!?」「大丈夫、把握している」白峰吹雪は携帯電話を取り出しタッチパネルを操作して確認する。「紫蓮さんも居るし執行人は私一人じゃない。田口さんのような協力者も京都には沢山いるから…情報によるとメールに反応した人達は咏川城跡に集まっている」「俺の家の近くだ!」「田口さん、頼んでおいた物を」「はいよ!」田口は革製のガンベルトのようなものと白い串のようなものが沢山入った筒を白峰吹雪に渡した。「咏川城跡に行きます、それでは」「あ、俺も行くよ!帰り道だし」白峰吹雪はローファーを履くと陸上部顔負けのスピードで走り出した。木城二郎は慌てて追う。日は傾いていた、西の空が赤く染まっている。日没まで後一時間もないだろう。白峰吹雪は細い路地を通り抜け、停めてあった電動アシスト自転車に乗る。「待って!俺も!!」「二人乗りは警察に注意を受けてしまうから、駄目」「そんな!」猛スピードで走り去る白峰吹雪、木城二郎は慌ててタクシーを捕まえる。「あの、ものすごいスピードで走っていった女の子を追ってください!」「はぁ…」タクシーの運転手は変な客だなと思ったがそれ以上は詮索しなかった。白峰吹雪の電動アシスト自転車は改造されており、見た目は街乗り用のクロスバイクだが電動アシストのパワーが違った。やや前傾姿勢で、立ち漕ぎせずともサドルに腰を下ろした状態で力が伝わる設計になっていた。木城二郎がタクシーのスピードメーターを見ると時速50キロを超えていた。咏川城跡に白峰吹雪と木城二郎はたどり着いた。石畳の通路を進み石段を駆け上がる。咏川城跡は建物は一切なく、公園と申し訳程度の祠があるだけである。「あれ?今なにか変な感じが…」「結界を通り抜けたの。この結界はおそらく紫蓮さん張ったもの、この先で何が起きようと結界の外の人は気がつかないし近寄れない。意識が中に向かなくなる。あなたはそのキーホルダーがあるから通れた」天守閣のあった石垣まで登るとそこにはサイバネ手術によって機械を取り付けた人間と明命館の学生が数十人倒れていた。その真ん中に全身黒ずくめの男と紺のコートを来た木城紫蓮の姿があった。「親父!!」「なに!?…二郎!なぜここに!?そっか、あの石のせいか」「紫蓮さん!」「吹雪も一緒か、なら二郎は色々知ってしまったんだな?」「加勢します」太刀を取り出し紫蓮に駆け寄る白峰吹雪。「二郎は隠れてろ」「親父、後でじっくり話聞かせてもらうからな!」木城二郎の眺める中戦闘が始まった。初めに仕掛けたのは白峰吹雪、黒ずくめの男に上段から斬り込む。「やぁー!」「シャァッ!」人間とは思えない跳躍で後ろに飛ぶ男、大きく息を吸うと白い糸状のものを大量に吐き出した。紫蓮と吹雪は左右に分かれて飛び回避する。「紫蓮さん、まさかターゲットは…土蜘蛛ですか?」「いや、そんな大物じゃない。土蜘蛛の使徒といったところだろうな」紫蓮は持っていた傘をひねる。柄の部分を引くと刀身が現れた。「(親父の奴、いっつも傘なんて持っていってるからなんだと思ってたけどそういうことだったのか)」糸を吐いた男の背中から蜘蛛の足が飛び出す。口から吐いた糸を器用に足で絡め取りロープ状に編む。「シャアアアアッ!!」蜘蛛ロープが吹雪に襲いかかる。ロープはそのまま石垣に命中する。「シャラァァァッ!」ロープを引く勢いで突進する蜘蛛男、石垣に取り付き再びロープを投げつける。「はっ!」「シャラァァッ!」「シャアッ!」「ほっ!」「シャラァァッ!」ロープを投げる蜘蛛男、そして突進する。蜘蛛男は吹雪と紫蓮にその攻撃を繰り返していく。「吹雪気をつけろ!これは奴の罠だ!!」「!?」気がつくと紫蓮と吹雪、石垣のあいだには数十本の蜘蛛ロープが張られていた。「シャアアアア!ウゴケマイ!!」ロープの上を滑るように走る蜘蛛男、紫蓮は跳躍し器用にロープの隙間に着地した。「コレナラドウダ!」網状の糸を吐く蜘蛛男、紫蓮に覆いかぶさる。「親父!」「オレの糸は鋼鉄よりもカタイ!ニゲラレンゾ!!」「なんのこれしき…」コートで頭部を覆い蜘蛛の網を受ける紫蓮、次の瞬間コートが燃え上がり蜘蛛の網を焼き払った。「ナニ!?」「このコートは法力を抜群に伝える布で作られててな、火の術を使わせてもらったって訳さ」コートを払うと中から燃え尽きた札のようなものが落ちた。「今度はこっちの番だ。吹雪、援護しろ」「はい!」田口堂で受け取った白い串のようなものを投げつける吹雪、蜘蛛男に突き刺さる。「グアアアアアッ!」「霊樹から削り出した白木の針は効くでしょう?」連続で投げつける吹雪、蜘蛛男は堪らず動きを止めた。「よし、今だ!」懐から取り出した札を傘の刀に突き刺す紫蓮。法力を込めると刀身が燃え上がる。「これで、終わりだ!」一足飛びで一気に間合いを詰め、蜘蛛のロープの隙間に着地しながら蜘蛛男に二連の斬撃を入れる。「ギャアアアアアアア・・・」蜘蛛男は炎上し灰となった。「(今のは…道場で教えてる火ノ神流の動き!)」「さて、ここから先は後始末係に任せよう。行くぞ二郎、吹雪」携帯電話にメッセージを送り、倒れているサイバネ者と学生に目をやる紫蓮。「大方の蜘蛛男はここでサイバネ者と学生の喧嘩に見せかけて何人か食事しようと思ったんだろうな。大事に至る前に俺が駆けつけたから全員無事だ」「任務完了…ですね」「すっげぇ…親父すげぇ!!」日はすっかり暮れていた。木城二郎、紫蓮、吹雪は咏川城を後にした。続く
Dec 6, 2012
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オリジナル小説始めました!VAMPIRE‐EYE 第一話「白峰吹雪」木城二郎(きしろじろう)は京都にある高等学校『明命館学園』に通う一年生だ。気の重い月曜日授業を終え、週に2度ほど顔を出すサイバネ技術部の部活に寄り、17時のチャイムが鳴ったを聞いて下校する。校門の警備ロボの前を通りすぎたあと、木城二郎は携帯電話を取り出した。「ん?メールが2件。親父からと…もう一つは知らないアドレスだな」木城二郎の父からのメールは『椿油を田口堂で買ってこい』であった。もう一件は…「なんだこれは?」奇妙な模様が書かれた画像のみ。件名は「白か黒か」「白か黒かって?こんなにいろんな色を混ぜたキモイ画像に白も黒もないよな」木城二郎はしばらく画像を眺めていたがイタズラか何かと考え携帯電話をポケットにしまった。そのまま徒歩5分ほどの駅に向かい電車に乗る。「親父の忘れないようにしないとな」いつも降りる駅の一つ前で降りる。傘ノ島駅は商店街に隣接しており、バス、ほかの電車やタクシー乗り場などかなり賑やかで、木城二郎の最寄りの駅である咏川(よみかわ)駅とは比べ物にならなかった。もちろん咏川駅周辺もそれなりに商店はあるが各駅停車しか電車止まらず、バスも1時間に1本、通勤時で3本程度で京都市内の中ではかなり静かなところであった。専門の物やネットで買えないもの、大きな買い物をする場合は傘ノ島駅周辺で探すというのが咏川駅周辺の住民の常識とも言えた。「この時間ならまだ田口堂は開いてるな」木城二郎が椿油を買いに来た理由は刀の為である。木城二郎の家は剣術道場を営んでいた。代々続く剣術道場らしいが、実際は何代も前に道場を閉めており(道場のあった場所は倉庫になっている)、木城二郎の父の思いつきである日突然復活した。本業は公務員ということだがふらっと出て行っては何日も帰ってこない為、どういった仕事で何をしてるのかは解らなかった。「道場生も三人しかいないのに張り切って…大体今の世の中で真剣の扱い方を覚えても仕方ないじゃないか」道場では型だけでなく、組太刀稽古、真剣を使っての試し切りや手入れまでを教えていた。道場生は三人。二郎、兄の蓮也、従姉妹の沙夜だけである。はっきり言って寂れていた。「まぁ趣味でやってるんだし流行らなくても関係ないけどな。親父も楽しそうだし…」商店街は仕事帰りのサラリーマン、部活帰りの学生、買い物帰りの主婦などで賑わっていた。木城二郎はいくつかの角を曲がり狭い裏道の奥にある小さな商店にたどり着く。かすれた木の看板には『田口堂』と書かれていた。「田口のおやっさーん」「…おお、二郎か。紫蓮さんのおつかいかね?」メガネをかけた白髪の男性が椅子から腰を上げる。紫蓮とは二郎の父の名である。「まぁね。椿油欲しいんだけど」「はいよ」「しかしおやっさん…この店よく潰れないね」木城二郎は店内を見渡す。骨董品で溢れているがいつ来ても同じものが置いてある。「これでも充分食っていけるほどは稼いでんだぞ?」「へぇ…ネット注文もしてないのに珍しい」「ああ~ネットね。何十年も昔はやってた時期もあったが年をとると面倒になってな。一人でやってくには今の形が一番なんだ。常連はネット注文なんてしないで直接買いにくるからな。時々妙なサイバネ野郎が来やがるが礼儀がなってないんで追い返してやってる」電子タバコの蒸気を吹きながら店主は鍵の掛かった戸棚から椿油を取り出す。「おやっさん、サイバネ野郎とか言わない方がいいよ。今の時代サイボーグ化なんて当たり前なんだし」「俺はよ、事故かなんかで失ってしまったのを何とかする為にサイボーグ化してる奴は別になんとも思っちゃいないんだ。ファッション感覚で自分の体をいじくりまわす奴が気に入らないんだ。他人を威嚇したり傷つけるためにサイバネ手術受ける根性が気に食わない」「言ってることは解るよ…校則でも許可のないサイボーグ手術は禁止だからね」「二郎、紫蓮さんによろしくな」会計を済ませ椿油をカバンに押し込む木城二郎。扉から出たところに人が立っていた。「…」学生服の少女だった。歳は同じくらい、色白で髪はざっくりと切ったロング、大きな長いカバンを背負っていた。「?」少女は木城二郎を見ている。「あの…何か?」「…メール」「え?」「…メール見た?」「メール?」木城二郎は携帯電話を取り出す。そこで妙なメールのことを思い出した。「メールってこの変な画像送ったのは君?」「違うわ。…そのメールを見て何も感じない?」「え?…別に何も。ちょっと気味悪いかなーって思うくらいかな」「そう、それなら大丈夫」少女は木城二郎の横を通り田口堂へ入っていく。「ちょっと待ってよ。君、このメールのこと何か知ってんだよね?」「知ってるけど教えられない。なにもないなら教える必要もない、だから忘れて」「そんな…そんな言い方されたら気になるじゃないか。これが何なのか聞いたらそれで終わりにするよ。それ以上は詮索しない」「……」木城二郎を見つめる少女。店から閉店作業のために田口堂の店主が出てきた。「おや、白峰(しらみね)のお嬢さん。いつもご贔屓に、今日はこんな時間に珍しいですな。ん?二郎まだ帰ってなかったのか」「おやっさん、この子の事知ってるの?」「ああ、白峰さんのところとは長い付き合いだからね。二郎は紫蓮さんに聞いてないかね?」「知らないよ…」「まぁ帰ったら紫蓮さんに聞いときな」そう言いながら外に出ていた小さな看板を取り込む。「田口さん、中に」「ああそうだな」白峰と呼ばれた少女にうながされ田口は扉を開ける。「ちょっと待って、メールの事教えてよ!」木城二郎はメールの事が気になってはいたが目の前の女性の方が気になっていた。何故なら彼の好みの容姿と声をしていたからだ。これが一目ぼれというならそうなのかもしれないと木城二郎は思った。「そのメールは『奴らからの招待状』よ。貴方に何も変化がなければそれで終わり、日常生活に戻れる」「え?どういう事?奴らって?」「メールの質問には答えたわ。これ以上は深入りしない方が貴方の為」「このメールを見て何か変化を感じてたらどうなるのさ!?」「その時はわたしが貴方を助けることになる。奴らと戦って…」「全然意味が解らないよ、君みたいな女の子が俺を助けるって…」「解らなくていい、その方が幸せだし解ってしまえばその身を常に危険にさらすことになるわ」「君は色んな事情を知ってて、それで危険に身を晒しているのかい?」「ええ、そうよ」白峰は怒るわけでもなく淡々とそう言い放った。「あー…ちょっといいかな白峰のお嬢さん。こいつね、二郎。あの紫蓮さんのところの次男坊なんだよ」田口が口を挟んできた。「木城紫蓮さんの…そう、それなら少しくらいは教えても大丈夫かも」「まぁ…しかし紫蓮さんはどう思うだろうね。あの人は二郎に何も教えてないみたいだし」「なんだよ、なんなんだよおやっさんまで!それに親父がどうしたって!?」「まぁまぁ落ち着け二郎、ここじゃなんだから店の中に入って話そうじゃないか」田口は木城二郎と白峰を店の中にいれ施錠する。骨董品のならんだ狭っ苦しい店内を進み、奥の自宅スペースに招き入れる。「おやっさんの家ってこうなってたんだ…」今時珍しい純和風の佇まいであった。京都の古い町屋を意識して作られていて、右側は石畳の土足で歩く廊下の土間、左側には50cmほど高いところに居室がある。幅は狭いが奥に続く長さは相当なもので20mはあるように見えた。「さあ上がってくれ」二人は田口に勧められ靴を脱いで居室に上がる。「二郎、これから話すことは信じられないかもしれないが冗談ではなく全て真実だ」「あ、うん…」「そこのお嬢さんは『白峰 吹雪(しらみねふぶき)』白峰家の次女で教会の執行人。役職はザブディーコン。この田口堂は教会の執行人の武具の修理屋作成も引き受けてるのさ」「……は?」木城二郎は田口の言ってることが全く理解できてなかった。「闇の住人(ナイトストーカー)を狩る執行人…」白峰吹雪は長いカバンから刀を取り出した。続く
Dec 5, 2012
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オルガ:18歳恋人なし歴18年FalloutNewVegas 第9話「ローズ・ローザ」フリーサイドの西にある集落ウエストサイドに到着した。エミリーの探してる核分裂バッテリーやコンダクターは少しアテがあった。ミゲルの店だ。フリーサイドよりも狭く廃墟が目立つけれど、ここは観光客が少ない。たまにザ・ソーンのバトルを見に来る人がいるだけでほとんどは地元住民なのだ。「オ、オルガ…ゲンキか?」話しかけてきたのはスーパーミュータントのミーン・サノファビッチだ。NCRにひどい目に合わされて言葉が不自由になったらしい。「元気さ!ミーンも元気そうだね!何も変わったことはない?」「ナニも…おきてナイ…今日は…風がヤサシイナ」「だねー、お陰で砂埃も少なくて助かるよ」ミーンは穏やかな性格で住民の評判も悪くない。スーパーミュータントって事で嫌う人も中にはいるけど彼のお陰である程度の治安は保たれてるのは事実で、本気で追い出そうとはしていない。ミーンは言葉が不自由なだけで物事はちゃんと理解している。自分が何を求められてどうすればいいのか解っているのだ。ミーンと別れあたしはミゲルの店に入る。「ハーイ!」「ん?なんだオルガか、何のようだ?」無愛想な顔で出迎えてくれたミゲル。暇なのかNCRの発行している新聞を読んでいる。ちなみに拾ってきたものであろうことはすぐに解った。日付が二日前だ。「客として来たのに~…」「お前の欲しがりそうな本は入荷してないぞ?」「なんだ残念…じゃなくて!核分裂バッテリー5つとコンダクター3つある?」「またすごい量買い込むんだな?ロボットでも作る気か?それともお使いか?」「アポカリプスの仕事だよ。で、いくらになる?」「そうだな…」あたしはミゲルの提示した値段を見てメガネが割れそうになった。「無理無理!そんなに払えない!!」「核分裂バッテリーはこれ一個で掘っ立て小屋の照明や冷蔵庫の電源として使える代物だからなぁ安くはねぇよ。発電機の方が電気は多く作れるが音がうるさいからな」「じゃあコンダクター3つだけにしとこかな…」「次来た時まで核分裂バッテリーあるとは限らないぜ?」「ええー…じゃあ一つだけでも買っておこうかな」結局あたしは核分裂バッテリー1つとコンダクター3つを買った。「あれ?見かけない人がいる?」見かけない人というのは『ウエストサイドで初めて見た人』という意味ではなくて、こういう場所に来ないであろうという人を見つけたからだ。汚れていない真っ白な白衣に綺麗に結い上げられた茶色の髪、赤い目。黒いスラックスにはキッチリと折り目が入っている。あたしは気になって彼女のそばに行く。ウエストサイドの畑に飢えられた植物を眺めてブツブツ言っている。「自然の黄金比最高ですねぇ~ふふ…ふふふふ」「こんにちは」「こんにちわぁ~」女性に満面の笑みで挨拶された。すぐにまた植物相手にブツブツ言い出してしまった。「おお、オルガか、その子は…」トウモロコシのそばの雑草を引いていたジュダさんがあたしに気づいた。ジュダさんは結構年をとってるけど元気でウエストサイドの農園で作業をしている。人をまとめるのがうまくて農作業者のリーダー的存在なのだ。「ジュダさんこんにちは!この人は誰です?」「ローズ・ローザというそうだ。なんでも植物学者らしい…朝方ふらっとやってきて急に作業を手伝いだしてな」ジュダさんがローズ・ローザの顔を見て何か考え事をしている。「うーむ…」「どうしたの?」「いや…この子の顔何処かで見たしてならないのだが…思い出せん」「ふ~ん…」ジュダさんと一緒にローズ・ローザを眺めていると彼女は立ち上がってこちらを向く。「えっと~、これでこの畑のトウモロコシさんはモリモリ育ちます~。暑すぎるのと乾燥はトウモロコシさん嫌がるから注意してくださいね~」独特の言い回しで喋った後ローズ・ローザはフラフラと歩き出した。「変わった人…」「お、おい!ローズ・ローザさん。ちょっと休憩していかないかね?」「じゃあお言葉に甘えて~」日陰の木箱に腰を下ろすあたしとジュダさん。ローズ・ローザは日向に立っている。「ほれ、サンセット・サルサパリラだ」「ありがとうジュダさん」「ありがとうございます~」あたしは指でキャップを外し裏側を見る。…幸運の星マークはついていなかった。「ねぇ、日陰に入らないの?暑くないの?」「光合成です~」「え?」「ロロはこうやって回復できるんですー『ソーラー・パワー』ですよー」「え?なに?ロロ?ソーラー・パワー??」「ローズ・ローザは長いじゃないですか?だからロロでいいですよー。ソーラー・パワーはロロの能力の一つなんです」「……じゃあロロって呼ぶね」「はい~」う~ん…ロロはあざといわけでもなく天然なのだと思った。「あたしはオルガ。このウエストサイドには時々来てるんだ」「そーなんですか~よろしくです~オルガさん。ロロはこの場所初めてですね~人を探してたらいつの間にかここに来てました~」「人を探してるの?誰?どんな人?」「灰色の頭巾を被ってる女の人ですよー包帯ぐるぐるですー」「包帯ぐるぐる…名前は?」あたしがそう聞くとロロはもじもじしだした。「えっとえっと~…むやみに名前を出しちゃいけないって皆に言われてるので~…」「えー…それじゃ探すの難しくない?」「あの…ホントはあんまり見せちゃダメなんですけど~」そう言ってロロはお腹のバッグからPDAを取り出し画像を表示させる。「この人です~」「どれどれ?」そこに写っていたのはフードを被った包帯をした人物だった。目と口元、金髪としかこの画像からは解らない。「声とかは?」「あるんですけど…ちょっとプライベートな事を話されてるので~聞かせられません~…えっとこの人の声はロロの声に似てます~」「そっかぁ…ねぇロロ、この人見た感じロロみたいに科学者っぽいけど…そういう人ならアポカリプスの使徒と接触してるかも知れないね」「アポカリプスさんですか~?なるほど~…」「ここから東のフリーサイドにあるオールドモルモンフォートって場所にアポカリプスのキャンプがあるから行ってみたら?」「そうしてみます~」ロロは飲んでいたサルサパリラの瓶をジュダさんに渡し、フラフラと歩いてタマサボテンの前の前で停止、ブツブツ言っている。「個性的な子だ…オルガも変わってるがあの子はそれ以上だな」ジュダさんがサルサパリラを飲みながら笑っている。「モルモンフォートはあれに近い人で溢れかえってますよ!」「ハッハッハ…アルケイド坊やも大変だろうな」「アルケイド先生は皆に振り回されてますよ!あはは!!」休憩もそこそこにあたしはジュダさんと別れてウエストサイドを出る。ロロはまだフラフラとウエストサイドを歩いていた。「さて…次はどこ行こうかな。核分裂バッテリー後4つか…地道に廃墟を巡るかな?」PIP-BOYを見ていると後ろで声がした。「オルガさ~ん…ロロもついて行きます~」ロロがニコニコしながら走ってくる。「え?なんで?」「ジュダさんに聞いたら~オルガさんアポカリプスの使徒の手伝いしてると言われて~。ロロはすぐ迷子になるので連れて行って欲しいのです~」「えー…そんなんでよく人探しなんてしようと思ったね…まぁいいや、だけどすぐにはモルモンフォートに帰らないよ?これから危ない所に行くかもしれないしウエストサイドで待ってれば寄ってあげるのに」「大丈夫ですよ~?こう見えてもロロは修羅場をくぐってきてるのです」白衣から筒と銃を取り出しあっという間に組み立ててライフルを完成させるロロ。「この弾を使えばヤオ・グアイさんでもイチコロなんです~」カビのような物がついた弾丸をライフルに装填していくロロ。「あ、手馴れてる!ただの植物学者じゃないんだ!」「ですよ~」あたしは目が良くないし射撃手と行動するのは助かる。ロロと一緒にウエストサイドから南にある廃墟群を目指すことにした。続く
Dec 4, 2012
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オルガ:酒は強い。タバコは吸わない。Fallout:NewVegas 第8話「エミリー・オータル」あたしはオールド・モルモンフォートに帰る。レンガで囲まれた高い塀が特徴的だ。「ただいまー」「おかえりオルガ」ベアトリクスが迎えてくれた。彼女はグールの護衛兵、銃の手入れをしている。モルモンフォートのテントの中に入るとため息をついている医師がいる。「ただいまアルケイド先生」「ああ…」「相変わらずテンション低いね~先生」「お前は相変わらずだな」メガネを上げる先生。チラリとあたし顔を見ただけですぐにパソコンの画面に視線を戻す。「何の研究してるの?」「大して意味のない研究だよ。タマサボテンからスティムパックを作るとか常識外れのアイデアのな。実績が出ずに時間が無駄になってはいるが、目的は立派だよ。多少退屈で無意味な事だと感じているが」「ふ~ん…アルケイド先生は腕も悪くないのにめったに患者を治療をしないよね?」「俺が社交的じゃないってのは知ってるよな?それにアポカリプスには研究をする人間も必要だ。ジュリーにはここに缶詰にされてるが、不満はないよ。去る者は日々に疎し。最悪の仕事って訳じゃない。ま、俺は俺にできることをやってるだけさ」「缶詰って…閉じ込めてるわけでもないのに」「そうだな『良い結果を期待している』としか言われてない。それでも期待されれば応えたくなるものだろう?」「アルケイド先生って面白いよね。フリーサイドの状態を見てなんとかしなきゃ!って思ってアポカリプスに入ったのに必死で頑張ってやるわけじゃなくでも手を抜く訳でなく」「俺はこういう人間なんだ。退屈な男だよ。フリーサイドのイカれ野郎の方がまだ面白い話ができるんじゃないか?」「あ、そうそう、そのイカれ野郎ブチのめしてきたよ!」「やれやれ…」そう言うとため息を付いて水を飲むアルケイド先生。長身でメガネで知的でモテそうなんだけど実は全然ダメ。本人は退屈な男だからと言ってるけどそれはきっと嘘だ。だってアルケイド先生からは『ホモ』臭がするんだもの!実際にアルケイド先生が男の人とイチャイチャしてるところを見たり抱き合ったり裸であんなコトやこんなことをしてるのを見たわけじゃないけど、あたしの目はごまかせないね!長年コミックスや小説、その他もろもろの知識を蓄えこんだあたしの直感は確かだと自信がある!「オルガ…そんなニタニタした表情で鼻血を垂らされて立たれても困るんだが」「はっ!えええと!!先生の恋人はどんな男の人だったのかなって!!」あわてて鼻を押さえるあたし。「は?なんだって?なんで俺の恋人が男だったと思うんだ?」「え?だって先生ホモじゃん!」「…またお前の妄想か。仕事の邪魔だ、あっちに行ってくれ」アルケイド先生に追い払われたあたしは自分のベッドがあるテントに入る。ベッドに寝転んでノートを取り出す。趣味の小説を書くためだ。「ふーむ…やっぱりここは三角関係を超えた四角関係にするかな!愛憎渦巻く感じで…同性愛者ということを隠して生活たんだけどひょんなことでバレて迫られるみたいな?うへへへへ…」戦いの後で高ぶってるのもあるけど今日はペンが進む!アルケイド先生のあのはっきりと否定しない態度もあたしの妄想に火を注いだ。今はアルケイド先生をモデルにした医者(名前はそのまんまアルケイド・ギャノン)の物語を書いている。いつか完成したらアトミック・ラングラーに頼んで印刷してもらって多くの人に見てもらうつもり。モルモンフォートに訪れる患者の中にはあたしと趣味の合う人もいた。いつか合作もしてみたい。「ふふふ…ここで恋人のオデュッセウスが乱入してきて修羅場になるのよ。で、アルケイド先生は恋人の目の前でお姫様抱っこで連れ去られる…連れ去った男はちょっと野獣系でテクは凄くて……!」今日はペンが止まらない!絶好調だ!「オルガ、オルガ」「うへへへへ……ん?あ、ジュリー」モヒカンの女医ジュリーが立っていた。彼女はこのモルモンフォートの代表でフリーサイドだけでなくいろんな人物と繋がっている。怒ったところは見たことがない。「オルガ、もうちょっと声のトーンを下げてくれないかしら?安静にしなきゃいけない患者がいるから…あと鼻血でてるわよ」「あ、ゴメンねジュリー。気をつけるね」危ない危ない、今日はこのくらいにしておこう、血を流しすぎたからね!次の日の朝、ジュリーに起こされて目を覚ました。「おはようオルガ、今日はいつもの仕事のついでにエミリーの頼みも聞いて欲しいの」「おはよージュリー。エミリーがあたしに?なんだろう」エミリーはアポカリプスの一員で機械系に詳しい。アロヨの村ってところの出身らしい。あたしは激甘のスナックケーキを口に放り込んでメガネを装着しエミリーに会いに行く。「おはよー、エミリー」「あ、オルガおはよう。実はお願いしたいことがあって…医療品と医療器具を探すついでに核分裂バッテリーを5つ、コンダクターを3つ探してきて欲しいの。ミック&ラルフにも相談したんだけど数が足りなくて…」「ふーん…いいけどそんなに沢山何に使うの?」「ちょっと友人のメンテナンス…いや友人の為にしてあげたいことがあって」「へぇ~…例のストリップ地区の友人?」「それとはまた別の友人ね。ストリップ地区の友人は最近忙しいらしくて会ってくれないし…連絡も取れないのよ。イエスマンの調子も見たいのに…」「イエスマン?」「ストリップ地区の友人に頼まれて作ったロボットのAIよ。あれでMr.ハウスの秘密に迫れると思ったんだけどね…うまくいかないものね」「そうなんだ~」あたしは機械のことは全然詳しくないからエミリーの凄さは解んないけどアポカリプスの皆が認めるほどの天才だっての解る。話しやすいし同じメガネ仲間だしあたしは好き。Mr.ハウスはベガスを支配してる大物だってことくらいしか知らない。Mr.ハウスはラッキー38から出てこないし見たものは誰もいない。警備ロボのセキュリトロンを通じてしか彼は話をしないし謎の多い人物だ。「じゃあよろしくねオルガ、急いで欲しいって訳じゃないけどできるだけ早くお願いね」「うん解った、エミリーの友人を待たせすぎるのも悪いし」あたしはPIP-BOYにエミリーからの依頼を入力する。こうすれば忘れない。このPIP-BOYはフリーサイドに来てた商人からギャンブルで勝って手に入れた物。気に入ってる。モルモンフォートを出てフリーサイド地区の北ゲートを目指す。「ん?あれは…」前から黒いコンバットアーマーを着た連中が歩いてくる。エナジーウェポン専門店シルバーラッシュの店主ヴァン・グラフの用心棒達だ。「へへへ…久しぶりにやりごたえのある仕事だったな」「ああ、思う存分エナジーウェポンを撃ちまくれてスッキリしたぜ!しかしブツをそのままにしとくのはもったいなかったな」「俺もそう思ったが足がついちゃいけねぇってことでボスから注意されてたしなぁ」一瞬目があったけどそのまま奴らは去って行った。ヴァン・グラフは黒い噂の絶えない人物だ。シルバーラッシュの品揃えはすごいと評判だけどあたしは使わないので行ったことは無い。だからシルバーラッシュの人間とも特別親しくない。いやまぁ…それ以前にああいうタイプの用心棒と同種の人間が集まってるのならあたしとは合わないだろう。「ようオルガ!今日もフリーサイドの平和は俺達が守るぜ!」「NCRの連中なんかに任せておけないぜ」髪をバシッと決めた男たちに話しかけられた。彼らはフリーサイドを事実上支配しているギャング集団のキングスの一員だ。治安最悪のフリーサイドも彼らのお陰でなんとか無法地帯にならずにすんでいる。あたしは彼らとは仲良くやってる。キングスのボスであるザ・キングはフリーサイドのみんなの評判も良い。あたしは直接しゃべったことはないけど姿は見たことがある。ただのギャングではない雰囲気があった。「がんばるね~あたしも頑張ってお仕事行ってくるよ!」北ゲートを出たあたしは西に向かうことにした。西は最近レイダーの集団フィーンドが活動を広げていると聞くし奴らは結構いい物を持っている。スティムパックとかの医療品もかなり所持している。アジトにも溜め込んでいるに違いない。もし持ってなくってもフィーンドの装備はかなりいいものだから西のレッドマウンテンにいるグレート・カーンズの商人と取引すればいいかな。うーん…悪名高いとはいえフィーンドを襲って所持品を奪うってやっぱり強盗と同じなのかなぁ~フィーンドとやってること一緒なのかな~?……いやいや、あたしは普通に生活してる人をぶっ飛ばさないし盗まない!「NCRに目をつけられないようにしとけばとりあえずは大丈夫だよね」あたしは自分にそう言い聞かせて砂埃の舞う瓦礫の道を進む。続く
Dec 1, 2012
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