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【送料無料】ブレイズメス1990海堂尊講談社 四六上製☆☆☆☆☆ 時系列的にいくと、ブラックペアンの後の話。国際的な学会が南仏で行われたり、モンテカルロでバカ勝ちする人間が天才心臓外科医だったりと、時代にあわせたとてもバブリーな内容。 ことの発端は、東城医大病院の院長が心臓手術を専門に、金持ちの患者を集めようとして、ハートセンターなるものをつくり、そこのトップに上記カジノでひたすら一人がちする天才心臓外科医天城雪彦を招聘し、そのメッセンジャーをインターンから医局の下っ端に出世した世良が勤めることになることだ。 しかし、これ医療物の小説というよりは、なんか別の小説のような気がする。天城の設定がどこかのITベンチャーの社長でも違和感ないかも。天城の病院経営に関するマキャベリズムはかなり正直すぎて極端だが、この頃、まだ後の高階ゴンタ病院長は講師であり、まだ清濁併せ呑むような豪快さというか老獪さはない。 しっかし、「アリアドネの弾丸」に出てくる天城はもっと印象が薄かったがこんなに強烈なキャラだったのか……。この人とぐっちー先生の対決なんてあるんだろうか?
May 30, 2011
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【送料無料】深泥丘奇談(続)綾辻行人 装丁:祖父江慎メディアファクトリー 四六上製☆☆☆☆☆◎ 連作短編集。「幽」という雑誌に掲載したものと他誌に掲載したものとをあわせたものだというが、いよいよ虚構と現実が曖昧模糊としてきた。とにかく、著者とほぼ等身大という職業ミステリ作家の主人公の健忘っぷりが、一層この中で語られていることが本の世界の中でのリアルなのか、主人公の幻想・妄想なのか、それとも他の事象なのかがはっきりせず、それが物凄い効果をあげている。また登場する場所は、誰が見ても京都がモデルなのだが、この街はパラレル。ここがこれ、と推測はかなりつくものの、全く別物のパラレルなので、これも現実と虚構の間を曖昧にしている。どこを読んでいても、主人公の視点である限り、地に足がついている感じがしない。日常のようでいてそうではないこの非現実な感じとこの地に足が着いていないような不安定感が私は特に気に入っている。 また、祖父江慎さんの手になる装丁も好きだ。特に本文中の挿画が雰囲気があって好き。前巻でページ数の計算ミスだと思っていた、奥付が見返しに印刷されていることについては、今回もそうなので、これもきっとブックデザインのうちなのだろう。何でなのかはよく分からないが。折角キレイなイラストがあるのに、そこに文字があるのは少々興ざめような気もするし、映画のエンディングのようでもある。 とにかく、この作品、もう少し続くようなので、次の本を楽しみに待ちたい。主人公の健忘ぶりに答えは出るのだろうか? あと、どーでもいいけど、この主人公の健忘っぷり、著者の実体験がもとになってるワケじゃないよね?
May 24, 2011
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【送料無料】トロイメライ価格:1,575円(税込、送料別)池上永一角川書店 四六上製☆☆☆☆☆◎ テンペストのスピンオフ短編集。筑佐事の武太、黒マンサージ、イベガマの祈り、盛島開鐘の行方、ナンジャジーファー、唄の浜の6篇。各篇ごとにテンペストの登場人物達もゲスト出演している。それを楽しみに読んでいた。ちなみに出演者は出演順で、多嘉良、朝薫、大女の大勢頭部の思徳金(うみとくがね)、嗣勇、真美那(と朝薫)、そしてトリが寧温だ。テンペストでは王宮と首里が舞台だったが、この本では那覇が舞台。琉球王朝人情時代劇のような感じだ。 私が特に好きなのは、楽士を選ぶというワガママだが、音色は素晴らしい三線、盛島開鐘(もりしまけーじょー)の話。魂というか自分の意思を持った楽器の話というのはかなりツボなのだ。主人公武太は三線の名手でもある。彼は「楽器にはそれぞれクセがあるので、それを理解して弾いているだけだ」と言っているが、お陰で彼の弾いている安普請の三線が王宮脱走中の盛島開鐘ではという疑いが持たれてしまうのだ。盛島開鐘の仮の姿らしき人物が作中出てくるが、この姿の開鐘に武太がストーカーされるのも面白そうとか思ってしまう。 テンペストのシリーズでは、この著者の作品によく出てくる逞しいおばぁが出てこないので寂しかったが、ナンジャジーファーではキョーレツな個性の美女が出てくる。それが朝薫の親戚とくる。彼の寧温への理解は身内の女性に振り回された反動のような気がする。 また、全編を通じて、おなり屋という料理の美味しい、アンマー(お母さん)と部分美人の娘三人が切り盛りする料理屋が出てくる。ここに出てくる料理の数々も美味しそうだ。 トロイメライとテンペストを読んでいると、この本のカバー絵がとても面白い。人物の一人一人があ、この人だろうな、と見当がつけられる。そして、まもなくこの本の続編がでるらしい。そこでは正体が謎の義賊黒マンサージの正体が読者にだけでも分かるように仄めかして書いてあったらいいのに。また、ゲスト出演するテンペストの登場人物も、真鶴、明、浅倉雅博、真牛(ムリかな?)、多嘉良の呑み友儀間親雲上、麻先生あたりが出てきてくれないかな。
May 12, 2011
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【送料無料】テンペスト 上(若夏(うりずん)の巻)価格:1,680円(税込、送料別)【送料無料】テンペスト 下(花風の巻)価格:1,680円(税込、送料別)池上永一角川書店 四六上製☆☆☆☆☆◎ 上下巻とも本文二段組、ページ数420ページあまりの大作。でも、一度読み始めてしまうと、一日で300ページは読んでいた。明治維新直前の琉球王朝が舞台。男装の麗人、孫寧温(男名)真鶴(女名)が周囲の本当のジェンダーを隠して宦官と己を偽ったまま、琉球の科挙にあたり、超難問の科試をパスして年若くして高級官吏となるものの、薩摩の役人に一目ぼれしたり、流刑になったり、琉球王の側室になったりと、これでもかこれでもかと波乱の生涯を送る。とにかく展開が速いジェットコースタードラマのようだ。琉球王朝版ベルサイユのばら(プラスとりかへばや風味少々)といえなくもないが、少女漫画よりはるかに込み入った内容になっている。そして何にもまして、著者の琉球への愛情と誇りが溢れている。薩摩と清国の狭間で小国の琉球が生き延びるには武器を捨て、頭脳と芸術で強かに生きていくしかなかった。それが洗練された外交術(だから科試が恐ろしく難しい)と芸術を生み出したのだ。この琉球の国情は現在の日本やシンガポールを連想させる。 当時の世界は産業革命を成し遂げたイギリスに斜陽の清国は敗北し、アメリカが日本の開国を狙って琉球にも現れる。やがて浦賀に現れた黒船が一足先に沖縄に現れていたのだ。このときのアメリカとの交渉もアメリカの要求を巧みに日本に誘導した見事なものだと思うが、それを行ったのが寧温という設定だ。また、絢爛たる王宮文化も時に大奥ばりの女同士のドロドロの人間模様を織り交ぜて読んでいて飽きない。女性禁制の王宮では美少年が女官のような役割を果たしたとか、聞得大君の権力などなど。一年ほど前に旅行した首里城の様子を思い出しながら読んだ。ドロドロの人間模様にはふさわしい強烈な登場人物も多く、二重のジェンダーを持つ寧温がかなりおとなしく感じた。妖怪としか書きようのない清国の本物の宦官徐丁垓、逞しい大勢頭部二人、少女漫画のヒーローのような薩摩の侍で示現流の達人、浅倉雅博。強いていえば、この著者の小説には付物だった逞しいおばぁの登場がないのが少々物足りなくはあったが。 しかし、結末は日本に併合されて、琉球王朝は解体され王が東京に向うところで終わり、民はそれでも逞しく生きていき、主人公も晴れて積年の想いが叶って希望が見えるように感じる。それでも琉球賛美でハッピーエンドの小説ではないと思う。作中、「日本に併合されたことを五十年後、百年後の民が心から喜べるように琉球を愛します」「日本は琉球を解体した以上幸せにする義務がある」という最後の方に出てくる文に頷くことはできない。ただ、こんなに華やかな文化が栄えたバックボーンがあるからこそ、今、沖縄出身の芸能人が多いのかもしれない。この小説の登場人物も美男美女と個性的な人物が多い。お芝居という三次元で見てみたいような気もする。まだ上演してるのかな? 恥ずかしいことに、沖縄本島と八重山諸島との位置関係も私はよく分かっていない。けれど、この本によると、沖縄本島と八重山諸島でまた少し文化や言葉がこの時代は違ったのだそうだ。もう少し沖縄や島に関した本を読んでみたい。そういえば、この本にはいたるところに琉歌が出てくる。日本語の五七調とはかなり違うようだが、これ、節をつけて三線と一緒に唄ったら素敵だろうなぁ。また近いうちに沖縄や石垣島に行きたいな。
May 9, 2011
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【送料無料】武家屋敷の殺人小島正樹講談社ノベルス 新書判並製☆☆☆☆◎ 東京郊外の広壮な武家屋敷に起こったという奇怪な事件。それを精神に以上をきたした人物の日記から類推していくことからストーリーが始まる。たかだか20年ほどだが歴史を遡る調査は面白かった。そして、そこからさらに混沌とした謎また謎が起こっていく。 探偵役は社会派弁護士川路と彼とはリバーカヤック仲間の邦彦。最初の依頼者は孤児院で育ったという若く美しい女性瑞希だ。彼女の実家を探すことから小説は始まるが、そこに二体のミイラなどなどと盛りだくさんの謎が起こって、まるでそれをもぐらたたきのように解決していくような印象だ。私が一番面白いと思ったのは最初の日記から家を推定していく過程。あとは、ちょっと盛り込みすぎで、ご都合主義かなぁというところもなきにしもあらず。ここまで盛り込んであると、一つ一つの謎に解決がついた時、その疑問部分にあたる伏線を覚えていなくて、なるほどという感覚が薄れてしまった。それに、邦彦の事情がもう少し詳しく書かれたほうがよかったなぁ。いかにも新本格のストーリー展開だが、もう少しエピソードを整理してくれたほうが読みやすい。ただ、読後感は結構いい。
May 3, 2011
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