2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
全6件 (6件中 1-6件目)
1
![]()
【送料無料】文福茶釜黒川博行文春文庫 関西の古道具の世界を舞台にした、小悪党たちが狂奔する小説。短編集。面白かったのは、贋作や裏金を作ったりする手口の巧妙な描写、軽妙な関西弁のやりとり、関西の地理も勿論のこと、慾に目がくらんで翻弄される男たちと淡々とした女たちとのやりとりもよかった。特に笑ったのは、地震でブロンズ像の中には倒れて粉々になったものもあったのに、なんで石膏が無事だったのという、金を手に入れようと悪知恵を絞った男の娘のセリフだった。最初の作品だけはそうでもないのだが、あとの作品は最後の一文で、本当に「オチ」がつくので、そこも短編集らしく面白い。ただ、うっかりこれを読んだ直後に某テレビの鑑定番組を見てしまうと、あの鑑定が空々しく思えてしまうことだ。(この番組らしき番組についても作中ではチクリと刺している)古美術への愛着よりも慾に目がくらんだ連中を勧善懲悪の如く退けているような、北森鴻の冬狐のシリーズも好きだが、こちらもピカレスク小説、、、という程もない小悪党ばかりの良い意味で卑近で現実味のあるストーリーも楽しい。
September 28, 2011
コメント(0)
![]()
【送料無料】廃院のミカエル篠田節子集英社 四六上製☆☆☆☆☆ 男問題で勤めていた貿易会社から紛争地域に飛ばされ、そこから身一つでギリシャに逃れてきた主人公の美貴は、ここで、非常に高価で希少価値の高い蜂蜜(多分硬蜜というもの)を供される。これを日本に輸入して挽回してやろうと焦る美貴は、現地で結婚している通訳の女性、綾子を強引に説得してその蜂蜜を探しに出掛ける。彼女たちに修道院の有名画家の壁画を探す日本人の男、吉園が加わるが、彼らが行く先では過疎の進んだ村と高齢化した修道院の荒廃した様子が現れる。 ギリシャが舞台でアトスの修道院などの名前があったので、単純にエキゾチズムを楽しもうと読み始めた。しかも読んでいて女二人はあまり仲良くしたいタイプではない。最初は動物の変死がいたるところで見られ、綾子の様子までおかしくなって、不気味さが漂う。オカルト的な雰囲気でストーリーが進行していくのだが、それにもきちんと合理的な説明がついていく。主人公の美貴がオカルトにおびえつつ、そのうち開き直って?頭を使って考え始めるのだが、その間の揺れ動き具合は結構面白かった。もちろん、アトス山の説明や、山中に転々とある修道院、不気味な動物の死の光景や、荒廃した修道院から聞こえるオカルティックな聖歌や人の気配を含めて、楽しく読んでいた。最後になって全ての謎や不気味な現象に説明がついた時は、ずいぶん前にテレビでこうした謎の急病人が出て、それに医学的な説明が着くまでのプロセスを再現ドラマをやっていたが、それを思い出した。余りマニアックで難解な病気の説明や宗教的な説明も出てこないので、とても読みやすい。この本で硬蜜の存在を知ったが、一度くらい食べてみたい。また、硬蜜を作る蜂と普通の蜂蜜を作る蜂は違うという。養蜂の本もいつか読んでみようかな。 この謎が解き明かされるまでが、サスペンス色もあるので、広義のミステリということでカテゴリーを分けた。
September 28, 2011
コメント(0)
【送料無料】切手に見る世界の楽器江波戸昭音楽之友社 A5上製☆☆☆☆◎ 初版昭和62年。ってことは、1987年。まさに世はバブルの頃……だったせいか、カラーと白黒の見開きが交互に来る頁デザイン。実はこれ、印刷的には表面4色裏面1色の5色で印刷できないので、表面4色裏面4色で印刷しなければならない。印刷代が8色分かかるとっても不経済な印刷なのだ。全部4色にしたっていいだろうに……。更に中身にも時代色がうかがえる。表記には「ソ連」の文字があるし、古い切手も紹介しているせいで、アメリカ統治下の沖縄で発行された三線の切手も紹介されているのだ。 楽器に関係のないことを書くのはこのくらいにして、やはり色々な民族楽器が切手になっていて楽しい。個人的にはヨーロッパの民族楽器や古楽器の切手がいい。あと楽弓欲しいかも、とか思ってしまった。また、弦楽器の紹介は比較的手薄だし、鍵盤楽器の紹介の仕方がフリーリードの頁にクラヴィコードがあって、実際の先祖の打弦楽器のサントゥールやツィンバロンなどは別頁になっていた。これ、打弦楽器の頁に入れたほうがよかったような気がするけどなぁ。今更ここでこんなこと書いても無意味だけど。他にもおなじみの楽器分類の仕方とは少々違うまとめられかたがされている。ヴァイオリン属とハーディガーディを一緒にするとかも斬新だ。これは面白いけど。 また、各国の楽器を通じて、インド洋をはさんで、マダガスカルとマレーシアには民族に共通性があるだけでなく、楽器でもガムランに似た音楽がマダガスカルに存在しているというので興味深いし、リラやキタラといったヨーロッパの古楽器とアフリカの弦楽器の共通性なども指摘されているのも面白かった。 ただ、少々寂しかったのは、日本の楽器があまり紹介されていないことだ。確かに楽器が切手になっているのは聞いたことがないもんなぁ。螺鈿紫檀五弦琵琶くらい切手になっていても不思議じゃないのに。
September 26, 2011
コメント(0)
![]()
《音楽之友社》岩永文夫土の中のメロディ …music gallery12 【中古】afb岩永文夫音楽之友社 A5上製☆☆☆☆☆ "Music Gallery"と銘打っているシリーズの本なので、写真メイン説明コンパクトで読みやすい。以前このシリーズの「正倉院の楽器」も読んだことがある。この本は詩的なタイトルだが、考古学と古楽器や古い音楽の世界を結び付けようとしたものといえるだろう。発掘された楽器、土笛の?(けん)や登呂遺跡から発掘された琴の断片、鈴、銅鐸、鈴つき鏡など用途が比較的はっきりしているものの他に、口の部分に孔があけられた有孔鍔付土器にぎざぎざの刻みの入れられた骨など実は楽器として使われていたのではないかという。鈴の中には天川神社の三環鈴とそっくりなものもあった。 発掘される地層によって楽器にも特徴があるそうで、一番古い地層からはやはり打楽器を主としたまだ原始的な楽器が出てくるし、時代が新しくなるにつれ、色々な種類が増えるようだ。また、楽器が男女に割り当てられたという記述もおもしろい。主に男性・女性の形状からの連想らしいが、男性は笛など、女性はスリットドラムや太鼓などだったようだ。そういえば、今でもディジリドゥは男性用の楽器だと聞いた事がある。そして男性が女性用の楽器を見たり、その逆があったりすると結構重罪だったらしい。 かなり時代は下るが記紀でも大王が船を作った残骸で琴を作ったとか、琴を神おろしに使ったとかいう記述がある。原始・古代は楽器は祭祀に深く結びついていたんだろうなと思うと今自分が使っている楽器も何となくお守りのような気分になるのは、やっぱり迷信深いだろうか。 私はあまり学術的なことはよく分からないから、こういった本を読んでいると、かつてこの楽器はどんな音を出していて、どんな人がどんな風に奏でていたのかつい想像を膨らませてしまう。最近になって出版された本もあるから読んでみよう。
September 17, 2011
コメント(0)
![]()
【送料無料】インターセックス帚木蓬生集英社 四六上製☆☆☆☆○ 表題の「インターセックス」とは、早い話が両性具有者のこと。観た事はないがテレビドラマでISと表記してあり、この言葉を知った。以前何かで意外と人口に占めるこういった人々の割合が多いということは聞いた事があったが、あまり詳しいことは知らなかった。そして、こういった人々にも色々な程度とタイプの人がいて、染色体はXYないしXXなのに染色体通りの見かけではない人もいるのだというのは、この本で初めて知った。ちなみに性同一性障害の場合は本人の頭の中と実際の体の性別が一致していないということで、頭の中の性別も体の性別もどちらかだと思っていいらしいけれど、ISの人々はジェンダーの境目自体が肉体的にも頭の中もグレーゾーンらしい。でも、頭の中に関して言えば、よく分からないというのが個人的な感想。そして、ISの人々の場合、幼い頃から体の性別をどちらかに近づけようとして何度も手術されている人がいるというのもやはりこの本で初めて知った。どんな風にそうした手術を受けてきたのかも本の中に書いてあったが、こんな風に病院にいくのは子供には酷だと思う。大人でも結構ツライぞ。 小説の前四分の三はこうしたインターセックスの人々や性同一性障害の人々の治療の描写が主で、専門的に携わるヒロイン、翔子の活躍が描かれる。この部分は初めて知ることも多く、とても興味深かった。そして最後の約四分の一くらいから彼女が移ってきたサンビーチ病院とその院長岸川の秘密に彼女が迫っていく。この最後四分の一の展開はちょっとご都合主義というかなんと言うか……別になくても良かったんじゃないかという気と、ここのサスペンス・ミステリ的要素をきっちり描いていたら、本が上下巻かそれ以上になったのではないかという気が両方している。両方きっちり書き込んであるほうが読むのにも時間がかかったろうけど、面白かったろうなぁ。でもやっぱり最後の最後で明かされる翔子の秘密はちょっと興ざめというかなんと言うか……もっと上手い方法があったんじゃないかと思う。面白いことは面白かったが、ちょっと物足りなさが残る内容だった。 それに巻末の広告を見るまで知らなかったのだが、この小説は「エンブリオ」という小説の続編にあたるらしい。こちらも読んでみよう。
September 17, 2011
コメント(0)
![]()
転生 (講談社文庫) (文庫) / 篠田節子/〔著〕篠田節子講談社ノベルス☆☆☆☆ 商品リンクは文庫だが、私が読んだのはノベルス版。中国政府の厳しい弾圧下に置かれているチベットで十数年前に暗殺(?)されたチベットの高僧、パンチェンラマが本人のミイラの中に蘇った、という奇天烈な設定。このラマ、蘇った直後は食べ物の意地汚いわ、女とみれば言い寄っていくわ……と生前の徳の高さはどこへやら。このラマの世話係を命じられた10歳のロプサンもあきれ返るのだが、やがて、かつての高僧だったころの信条も元に戻り、チベット各地でクチコミでそれが広まっていく。ロプサンはこのラマと行動を共にするが、そこで描かれるのは、中国政府に弾圧され、虐げられる人々の姿。核実験場のそばで暮す遊牧民は重篤な放射線障害に苦しんでいるが、定住しない彼らの統計は存在せず、捨て置かれている。作中でも砂漠緑化をしようとしてとんでもない計画をぶち上げている。そして、ラマはロプサンや身の回りにいる協力者の力を借りてそれを阻止し、また、元の眠りに戻るのだ。 著者には確か中国によるチベット弾圧を書いた別の小説があったと思ったが、この小説を読んでいても弾圧の苛烈さは、目を覆うばかりだ。作中出てくる日本人観光客のKYっぷりや日本のテレビの取材クルーの平和ボケっぷりが滑稽に見える。多分、現地の人にもそう見えているんだろうなぁ。でも、その弾圧の中でも強かに生きていくチベットの人々の「狡さ」も庶民からすれば小気味いいくらいだ。ま、この人々に日本人観光客も手玉に取られるんだろうけど。カバー折り返しの著者の言葉によると、この小説が著者の最後のノベルズだったとか。そこにチベットを舞台にした小説を書いたのも意味があるんだろうな。
September 9, 2011
コメント(0)
全6件 (6件中 1-6件目)
1
![]()

