雨傘勘次最後の望み、聞いてくだせいやすか
無事、勝べえと権太が笹川一家に戻って来て、佐吉が勝べえに親分の用事だと呼び出されます。部屋へ入るなり、用意されていた紋付きに着替えろといわれ、佐吉は怒ります。「紋付きってのはな、婚礼とかお弔いとか、いわば一生のでいじなときにきるもんでい、訳も分からんでこんなものきられるけい」・・・佐吉がそういったとき、 襖がすっと開き現われたのは岩松です
。
佐吉「 おっ、岩松さん
」
岩松「 佐吉っさん、しばらくだったね
」
佐吉「どうしてここへ・・」
岩松「旅の途中、安孫子の宿で、ふとした縁で 娘義太夫を救ったんだ
」
佐吉「娘義太夫 ?
」
岩松「 あっはは
、 (
佐吉を見ながら
」
・・・ 名前
はお静さん
」繁蔵たちが仕組んだ佐吉とお静の祝言の場だったのです。「不足だろうが、俺達夫婦が仲人役をつとめさせてもらうぜ」という繁蔵の言葉をうけた佐吉、そして繁蔵が岩松の方を見ますと、 岩松も「よかったな」というように
頷き祝います。
繁蔵の歌う「高砂や」で三々九度が、 祝言の席には、岩松も平手造酒も
出席しています。
その時、突然乱入して来たのは助五郎でした。
飯岡「 雪崩の岩松こと雨傘の勘次、神妙にしろ
」
富五郎、佐吉、平手らが動きます
。
十手を振りかざし岩松をこの場から引っ括ってゆくと言います。
繁蔵「飯岡の、ご覧の通りのめでてい席だ、やぼな十手などは遠慮してくれねえ
か」
と頼む繁蔵に、お上のご用は待ったなしだ、と助五郎は耳を傾けません。
繁蔵「やかましい、こぎたねえ十手をかさに、なんてえことをぬかしやがるんだ。
せめて式の終わるのを待って、 表でこっそり捕えるぐらいの思いやりがどう
して出来ねえんだ
。あくまでこの席を荒そうってきなら、笹川の繁蔵、男に
かけて岩松を守ってみせるぜ」
繁蔵のその言葉を聞くやいなや、岩松は立ち上がり助五郎に向かおうとする繁蔵を止めます。
岩松「 親分さん、それはいけねえ
。こんな野郎でも、十手を持ちゃ守役人 、 逆らわ
ねえでおくんなせい
。それに、あっしも、 とうから覚悟を決めておりまし
た
」
佐吉「岩松っさん」
岩松「 なあに、いいんだ
。・・・俺は三尺たけえ木の上から、 おめえさん方の幸せ
を祈っているぜ
」
そして、岩松はお祝いを続けるよう皆に言うと、 羽織を脱ぎ棄て、自らお縄を受けにいきます
。岩松に縄をかけようとしたとき、平手が「待て」といい、助五郎に言います。
平手「逃げも隠れもしないと言っている者に、何をしようというんだ。このような
めでたい席は、貴様たち不浄役人の来る場所ではない。たってお望みとあら
ば、北辰一刀流、お目にかけようか」
と 平手が助五郎に向かったとき、岩松が繁蔵のところに行きます
。
岩松「親分、 雨傘勘次最後の望み、聞いてくだせいやすか
」
繁蔵が頷きます。
岩松「どうか、祝言を続けなすって。・・・あのめでてい高砂の謡いで、 あっしを
送ってくだせいやし
」
繁蔵「いいとも。・・・おらぁ、勘次という人は知らねえが、岩松さんの望みとあ
りゃ喜んで精一杯、謡わせてもらうよ」
皆が席に着き、岩松はお縄を受け、 繁蔵が涙ながらに謡う ”
高砂や ”
を聞きながら、部屋を後にします
。
続きます。
水戸黄門・・・(6) 2023年11月28日
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