●作品6 ヤン・ファン・ホイエン 《夏》
1623年 個人蔵
夏の情景が描写されています。左手の大きな木には葉が豊かに茂っており、木陰に農家が建っています。前景では、3人の農夫がひとりの女性と話しており、その他の人々は川を渡る小船に乗っています。画面全体に、田園らしい喜びが満ちています。
●作品7 ヤン・ファン・ホイエン 《冬》
1623年 個人蔵
冬の情景が描写された作品。画面左手の木には葉がなく、運河は凍っています。屋外には沢山の人が描かれており、氷上での遊びに興じています。後景では、人々がコルフ(当時流行していたパターゲーム)で遊んでおり、背の高い橋の背後には、都市の塔や家々が見て取れます。
【ヤン・ファン・ホイエン】
《夏》と《冬》の頃の彼の様式は、師匠エサイアス・ファン・デ・フェルデを彷彿とさせるものでした。しかし、ファン・ホイエンはやがて、自分の様式を見出していきます。素早く幅広い筆づかいが次第に明確なものとなり、彼自身の特徴となりました。ファン・デ・フェルデと並び、まるで自然を前にして直接描いたかのような写実的な印象を生み出す風景画を制作した最初の画家でした。
●作品8 サロモン・ファン・ライスダール 《水飲み場》
1660年 アムステルダム国立美術館
けだるい日の差す静かな午後の光のなかに、喉の渇きをいやす牛や、紋章付きの馬車で旅行する高貴な人々が描かれています。視点を低く設定し大きく広がる木々や空に湧き上がる雲を描くことで、日常的な情景にある種の威厳を与えています。
【サロモン・ファン・ライスダール 】
ファン・ホイエンとほぼ同時期に活動したサロモンは、1630年代初期にはすでに川の景色を多く描いていました。彼が好んだ主題は、フェリーが横切る川景色や、旅行者たちが停泊したであろう水場や宿屋です。ところで、同時代の画家の多くがそうであったように、彼は絵画制作だけで生計を立てていたわけではありません。1651年の記録では、ハールレムの有名な漂白場の藍染を扱う商人とされています。
●作品9 ピーテル・デ・ブロート 《旅行者のいる村の景色》
1625–30年頃 個人蔵
この作品の注目ポイントは、強烈な陽光が左から差しているなか、手前(右側)にいるふたりの人物のいるところに陰が落ちている表現です。作者のデ・ブロートはあまり有名ではありませんが、この作品を見ると、光と影の扱いに長けた画家といえるでしょう。
《旅行者のいる村の景色》を描いたデ・ブロートは、農民の暮らしをはじめとした日常生活の光景や、静かな室内と風景を描いた画家です。彼は画家であるとともに不動産業も営んでいました。また、タイル職人でもあったといいます。多才な人だったのかもしれません。私生活では3度結婚しました。
(続きます)
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