医療用医薬品 0
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厚生労働省は2020年10月2日「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第1版)」を公開しました。<背景>国立感染症研究所、国立国際医療研究センターなどの9団体が合同で作成した指針です。9月25日の厚生科学審議会感染症部会で検討が行われたのち10月2日の公開となった。この指針の発表により6月16日に最終改訂された「SARS-CoV-2抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」は廃止となります。<概要>各種検査の種類と行き、状況に応じた各検査の使い分け、献体摂取に応じた感染防護について記載しています。検査の使い分け「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針(第1版)より引用無症状で検査を行う場合はPCR検査などの核酸検出検査あるいは抗原検査(定量)が勧められています。濃厚接触者の検査としてはこの二つのどちらかを選べばいいことになります。検査結果の出る速度を考えると抗原検査(定量)が第一選択になることになります。COVID-19の確定診断としてはPCR検査が推奨されています。「発症10日目以降の有症状者に対する抗原定性検査で陰性となった場合、確定診断のためには改めて核酸検出検査を行う必要がある。」とされています。これは感染が確認されて14日間隔離が終了時にウイルスがないとなくなったということを明らかにするためには抗原検査が陰性になったときにPCR検査で陰性でなければ隔離期間の延長が必要になります。現在の隔離期間は14日と決まっていますが、ウイルス消滅までの平均あるいは中央値が予測値として採用されているだけだと思います。どこかの施設で無症状の場合は連日の抗原検査(定量)を行い、陰性になったら、PCR検査で確定して隔離終了とするべき日数を確実な証拠のあるものになる必要があります。早く研究を行わないと対象がいなくなってしまう。このガイドラインが出たことで、濃厚接触者の検査や隔離期間を一律14日に定めて、検査も終わらず検査を終了とする今後のなんの役にも立たない保健所の業務が後に検証できる業務になることを願います。これから流行季節が始まるインフルエンザに関してもCOVID-19の抗原定量検査も同時に検査する方がいいと思います。これに関しては厚生労働省から指導があっても良いと思います。【久しぶりに読み直した本】COVID-19感染はここまで怖くはなかったパンデミックの初期にはここまで考えた人もいたのでは?ステロイドが反応してよかった。復活の日【電子書籍】[ 小松 左京 ]価格:836円 (2020/10/14時点)楽天で購入
2020年10月14日
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九州大学は眼内水晶体の混濁度や分光特性を数秒で測定できるシステムに成功したと発表しました。プレスリリース文献T Eto et al. A Purkinje image-based system for an assessment of the density and transmittance spectra of the human crystalline lens in vivoScientific Reports volume 10, Article number: 16445 (2020)この研究はSingapore Eye Research Instituteとの共同研究で特許は出願済になっています。システムは光を目に入射したときに現われる第4プルキンエ像(水晶体の後面からの反射像)を利用して、安全に簡便かつ短時間(現状約4秒)で水晶体の混濁度や分光透過率を測定可能なシステムで、JSPS研究費の助成を受けたものです。現在普及している水晶体混濁度の測定機器は、大型で高価なものが多いのが現状です。本システムは、簡便かつ迅速に混濁度の測定可能であるのに加え、小型で安価な装置を実現できます。なので、白内障のスクリーニングに用いることができるかもしれません。白内障は老化に伴う目の病気です。「目の中にある水晶体が濁る病気」といわれます。症状としては暗いところで文字が読みにくくなったり、物がぼやけて見えにくくなったり。目が疲れやすくてショボショボするなどですが、これは単に老眼として100均で老眼鏡を買って自分で対症療法をしても問題は無いのですが、白内障が原因であると問題になります。そのためにセルフチェックなどが眼科学会などで推奨されていますが、今回の発明を使えば健康診断で視力の検査だけではなく、眼内水晶体の混濁度や分光特性を測定することになれば白内障の早期発見につながるかもしれません。そのためには、ある程度の規模の前向の研究を行う必要があります。評価項目は検査によって白内障が早期に発見できるかどうかです。この裏付け研究がないと健康診断の項目に入れることが必要といいきれません。水晶体の懸濁を白内障の発現とすると50台でも50%の人に白内障があると推定されています。治療的には早期の場合には薬物治療で経過観察、悪くなれば手術です。手術することが少なくなれば、医療費を抑えることができれば医療経済的にも役に立つことになります。私も60を超えたのでそろそろ「白内障」年齢になったので購入した本「白内障手術」で絶対に後悔しないための本【電子書籍】[ 藤本雅彦 ]価格:704円 (2020/10/12時点)楽天で購入
2020年10月12日
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2020年5月20日キャプピリンが薬価が決まり、即日発売となりました。1錠中にアスピリン100mg及びボノプラザン10mgの合剤です。ボノプラサンは武田のプロトンポンプ阻害剤でタケキャブという商品名で既に販売されています。審査の段階で問題になったのはアスピリン100mgとボノプラザン10mg併用とキャプピリンの同等性試験でアスピリンの濃度が同等性試験の範囲に入らなかったことです。最終的にはアスピリンの血中濃度は幅が広く、併用も合剤もその血中濃度は薬効濃度内に入っているという判断で厚生労働省は認可を行いました。(審査報告書参照)薬価はタケキャブと同じで130.3円です。新医薬品配合剤の薬価を決める特例として自社薬の薬価×0.8+配合剤の相手の最低薬価(後発医薬品も含む)で決まります。アスピリン100mgの最低薬価は5.7円なので、単純に計算するとタケキャブの薬価を下回ってしまいます。その結果タケキャブの薬価になったということです。薬価算定の審議会においても議論はありませんでした。適応は狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作[TIA]、脳梗塞)、冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA) 施行後における血栓・塞栓形成の抑制で、いずれも胃潰瘍または十二指腸潰瘍の既往がある患者に限られる。ということです。臨床的有効性に関する試験は行われていません。生物学的同等性試験だけです。武田薬品工業は2014年にタケルダを発売しています。(ランソプラゾールとアスピリンの合剤)それとの比較などには審査報告書では触れられていませんでした。薬価はタケルダが57.6円です。キャプピリンは有効性が上回る資料なしに2倍強の薬価を取ったことになります。新規合剤の特例といえば相ですが、今までの新規合剤に関しては薬剤の合剤のメリットは患者のアドヒーランスが上昇する事以外に併用することによって各々の薬価を合わせた場合よりも安くなると言う患者のメリットもありました。プロトンポンプ阻害剤本来の価値は胃壁細胞への集積性が高いことと持続的な胃酸抑制作用を示すことからランソプラゾールよりも高いのでしょうがアスピリンの副作用の予防作用に対して師有意に高いかどうかは臨床試験によって示されてはいません。従って、薬価はタケルダと同等にするべきだと思います。単純に新配合剤の特例を利用してはいけないと思います。製薬会社はより高い薬価を求めるのは当然ですが、審査当局は保険財政も背負っているのですから、なるべく安くすることを求めるのが当然です。しかし、全例主義に陥りすぎだと考えます。プロトンポンプ阻害剤はアスピリンの副作用阻害剤としては不適であるという内容でブログを書くつもりでタケキャブを前説に持ってきましたが、前説だけで一つ結論が出てしまいました。(2)として、副作用は減っても他の病気で死んだら意味がないのではを次回書きます。今日読んだ本 22巻で終わりじゃないんだ。鬼滅の刃 22【電子書籍】[ 吾峠呼世晴 ]価格:460円 (2020/10/8時点)楽天で購入
2020年10月08日
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9月初旬は残暑が厳しい日が続きましたが、「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り涼しくなってきました。健康に関するニュースに「季節性感情障害」という言葉が出てくる季節です。季節性感情障害とは症状が季節性のパターンを示し,典型的には秋または冬に出現する;この疾患は冬が長いまたは厳しい地域において発生しやすい傾向がある。とMSDマニュアルに記載されています。Seasonal Affective Disorderの略でSADともよばれますが、季節性感情障害の略号にSADを注釈なしに使うことは誤解を招く場合があります。精神病の世界ではSADはSocial Anxiety Disorder(社会不安障害)の方が症状を示す人が多いので、SADは社会不安障害の略だと思われる可能性があります。季節性感情障害の症状がつよくなると冬季うつ病と診断される可能性があります。冬季うつ病が診断名として独立しているのは1.秋から冬に発病することが多い2.原因は体内時計の乱れと考えられている。3.体内時計の乱れが原因のため不眠、過食が症状としては全面にでることから不定型うつ病の一つと考えられている。この冬季うつ病の定義がどの程度仮説検証しているのかは分かりませんが、秋はメランコリックになるというのは、急に日光の当たる量が減って、体内時計の調節が間に合わないことによる可能性はあります。ブログの記事などを読んで私は「季節性感情障害」ではないかと思って、すぐ精神科に行く必要はあまり高くはありません。まず、朝10分ほど日光を浴びてみてください。スマートフォンやPCのブルーライトも(副作用は色々でますが、季節性感情障害には有用な可能性が高いです。)ビタミンDを飲むのもいいかもしれません。春になっても変わらなければ精神科を受診するのもありかもしれません。今日読んだ本13巻がもう販売していますが、やっと12巻にたどり着きました。7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT(12)【電子書籍】[ ハロルド作石 ]価格:693円 (2020/10/1時点)楽天で購入
2020年10月01日
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本日、国立研究開発法人日本医療研究開発機構は「ウイルス遺伝子の新しい解読法の開発に成功―新規ウイルス蛋白質を発見し、ウイルス性脳炎の発症の仕組みを解明―」というプレスリリースを出しました。東京大学医科学研究所と産業技術総合研究所の共同研究です。従来法では解読が困難であった特別なウイルス遺伝子を効率的かつ包括的に同定可能な「ウイルス遺伝子の新しい解読法」を開発し、単純ヘルペスウイルス(HSV)がコードする9つの新規ウイルス遺伝子とそれらがコードするHSV蛋白質の同定に成功しました。ということです。ウイルスの遺伝子解析などとうの昔に終わっていると思っていたので、あれ?と思いました。遺伝子解析はその産物が具体的になにをするのかが分かるまでは薬剤開発には参考にならないと思っている人ですから、今回の研究はコードするタンパク質まで同定しているので立派な研究と思いました。遺伝子がコードするタンパク質を同定するのは、コードとタンパク質が一対一対応していればすぐにでもできるような気がしますが、現実にはそうではありません。その遺伝子がタンパク質を作るように動き出すのは色々な条件があるからです。また、できたタンパク質は何らかの効果を示すためにはタンパク質が特手の部分で分断される必要がある場合が有るからです。遺伝子も常に働いているわけではなくて、メチル化など停止状態になることがあることが分かっているので、遺伝子がコードしたタンパク質の同定は難しいものがあるのでしょう。今はたくさんの病人の遺伝子から共通する遺伝子を「数学的に」浮かび上がらせて、このあたりの遺伝子の変異が怪しいという研究がたくさん行われています。薬物が合成品である場合には、一つに絞ってもらわなくてはその情報から薬を作るのはとても難しという風に思っています。今回の研究はウイルス脳炎を引き起こすウイルス産生タンパクを同定しているので、薬を作る筋道としては分かりやすいものです。(簡単なものではないですァ)そのタンパク質の活性を抑える化合物のスクリーニング系ができればウイルス脳炎の死亡率(無治療で70%、抗ウイルス剤でも30%で後遺症が残る)を下げることが期待できると思います。今日読んだ本ノー・ガンズ・ライフ 11【電子書籍】[ カラスマタスク ]価格:627円 (2020/9/30時点)楽天で購入
2020年09月30日
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「新型コロナ流行下で露呈するインフルワクチンの問題点」として谷口 恭士先生が記事を書いて言います。 厚生労働省はインフルエンザとコロナの判別が症状だけではわかりにくいことから、コロナが重症化するリスクが高い高齢者や免疫の低下している人に優先的にインフルエンザワクチンを優先的まわすということを事務連絡しています。それに関する問題を指摘されています。以下に列挙します。 1回接種と2回接種で抗体価が同じように上昇したとしても、その期間についての詳説がなければ説得力はない。不活化ワクチンを1回接種しただけではその抗体価が減少していくのは自明だ。実際、ワクチンの添付文書には、「(インフルエンザワクチンの効果は)接種後3カ月で有効予防水準が78.8%であるが、5カ月では 50.8%と減少する」と書かれている。例年なら「流行の状況をみて接種時期を考える」という選択肢が出てくるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が続いている今シーズンは、同じような症状を呈するインフルエンザのリスクを少しでも下げたいと考える人が多いに違いない。厚労省のサイトには「13歳以上の基礎疾患(慢性疾患)のある方で、著しく免疫が抑制されている状態にあると考えられる方等は、医師の判断で2回接種となる場合があります」と書かれている。「著しく免疫が抑制されている状態」という表現はかなりハードルが高く、よほどのことがない限りは2回接種の対象にならないと読める。この基準を変更し、例えば、中等度の喘息、肥満、比較的安定しているHIV陽性者なども2回接種の対象とすべきでないかというのが僕の考えだ。本当は供給量が不足していることに厚労省は気付いているはずだ。同省のサイトには(インフルエンザワクチンの)安定供給を推進するため、今後の対応として、「13歳以上の者が接種を受ける場合には医師が特に必要と認める場合を除き、『1回接種』であることを周知徹底する」と書かれている。これは、うがった見方をすれば「2回接種を求める声を阻止せよ」ということではないのか。インフルエンザワクチンの効果は不活性化ワクチンであるがゆえに翌年には効果がなくなる(半分になる)ということだと思います。インフルエンザに関しては私は、罹患したら、抗ウイルス剤を飲まずに家の中で1週間自己隔離をしていた方がいいという考えです。今年に関してはインフルエンザワクチンを接種していないとCOVID-19感染の恐れがあるのでリスクの高い人には接種するのは仕方がないかと思います。(私は打ちませんが)その理由でインフルエンザワクチンを接種するのであれば現在の生産量では追っつかないかというのが先生の主張です。今日読んだ本切り裂きウォルター(1)【電子書籍】[ 中原開平 ]価格:550円 (2020/9/29時点)楽天で購入
2020年09月29日
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富士フイルム富山化学株式会社のプレスリリースによれば「アビガン」の第3相試験において主要評価項目を達成したそうです。(2020年9月23日)主要評価項目は「症状(体温、酸素飽和度、胸部画像)の軽快かつウイルスの陰性化までの時間」担当医にはどちらの薬物が投与されたかがわかるランダム化プラセボ対照単盲検比較試験で行われました。3月から開始して156例が解析対象となりました。主要評価項目の中央値は「アビガン」投与群で11.9日、プラセボ投与群では14.7日調整後ハザード比は1.593(95%CI:1.024-2.479)と言う結果です。これは抗インフルエンザ薬でもいえることですが、非重篤な肺炎を有するCOVID-19の患者は14.7日で改善するのを11.9日に縮めるだけとも言えます。これから導かれることは1)無症状性COVID-19の感染者が2週間で検査なしに隔離期間が終了することは問題がある。→プラセボ投与群の主要評価項目の中央値が14.7日であることから、半数はまだウイルスが陰性化していない時期で隔離を終了している。ウイルスが陰性化していることを確認してからでないと隔離している意味がない。2)非重篤な肺炎を有するCOVID-19の患者は2週間たてば半数は無治療で回復すると言うことです。(詳細なデータが公開されれば、ほっておいても治る時期が明らかになるかもしれません。)3)アビガンを使用した患者の体験談がマスコミやSNSで公開されています。投与によって体調が良くなったというコメントがたくさんありますが、これに関しては発症日から何日目かを考慮に入れないとプラセボ効果を全く無視したものになります。(まあ、それだから今回のようなプラセボとの比較試験を行う必要があるわけですが)本試験では重篤化や死亡率は評価項目に入っていません。ステロイドが使えるようになってからは重篤化率や死亡率が低下しています。しかし、軽症から重症に移行する割合をプラセボに比べて低下させなければ「抗インフルエンザ」薬と同じく、2週間寝ている方がいいとなる可能性があります。インフルエンザは5日~7日間であるのに対し、COVID-19の場合は15日と長くなっています。COVID-19に関してはまだ未知の部分が多いですが、明らかになっている点もたくさんあります。特にヨーロッパでの第2次感染(第3次感染?)での感染例の増加に対して重症例、死亡例は増加していないという事実に関してはその理由の解明が明らかになることを望みます。私の仮説1)ステロイド使用が死亡率を下げている2)ウイルスの型が変わったです。2)はあまりなさそうですが、ステロイド使用は重症になってからの使用ということも考えるとデータに基づく分析が必要です。COVID-19の治療に関してはステロイドと抗ウイルス剤の比較試験が興味あります。今回の症例では非重篤な肺炎を有していることから、2週間ぐらいのステロイド投与は使えると思います。
2020年09月28日
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3月7日の中医協で薬価が決まったゾフルーザ錠が本日付で薬価収載されます。新規作用機序をもつ抗インフルエンザ剤で、1回投与で効果があるとされています。先駆け審査指定の第Ⅰ号でもあります。最初の抗インフルエンザ薬として世に出たリレンザの時も思ったのですが、抗インフルエンザ薬の薬効は発症期間の短縮です。リレンザの最初のデータでは3日の発病期間が2日になるということで承認されています。悪化するかどうかを指標にした臨床データは非常に少なく、本当のところ3日が2日になるのに臨床的意味があるのかと思いました。ゾフルーザ錠の場合にはプラセボに3日に対して1日で有意に勝っていました。イナビル吸入薬に対しては数値的には短くなっていました。学童、社会人の場合にはインフルエンザに感染した場合には他の人に移さないように休みが与えられます。社会復帰という点では結核と同じように排菌期間の減少が指標になっても良いのですが、これは実際に試験することが難しいので行っていません。故に社会的な貢献に対しても不明です。予防効果の試験(ヨーグルトみたいな疫学的な試験ではなく、実際にインフルエンザ菌が浮遊する部屋に薬剤を飲んでから入る試験)は行われていません。タミフルでは実際に予防効果がある事が示されているので、臨床試験を行えば可能かもしれませんが、倫理的には少し問題のある試験です。べたな言い方をすると、インフルエンザで寝込む期間が3日から1日になる、しかし、身体が動くようになってもくしゃみでインフルエンザ菌をまき散らす可能性に関しては分からない薬です。もう一つこの薬の特徴としてはアジア人(臨床試験はほとんど日本人)の方が効果がありそうということです。体表面積(実用的に体重)でアジア人でも80kgを域値として効果が下がるので、そちらが効いているのかもしれませんが、臨床試験データでは寝込む期間がプラセボで3~4日程度だったのが非アジア人では7日間と元々インフルエンザに弱いのかもしれません。薬代の負担は1200円(3割負担)、検査や初診料を加えて3000円ぐらいでしょうか。それでインフルエンザで寝込むのは1日か2日少なくなりますが、学校や会社にすぐ行ってもいいかどうかは分かりません。薬剤としては新規作用機序を有することから塩野義製薬の開発陣に対して尊敬をします。しかし、この薬が今すぐ必要かどうかは疑問があります。ピーク時の投与予想患者は331万人です。4789×332万=160億円の医療費増加(実際には今の抗インフルエンザ薬の市場が減るのでその分は差し引かれます)の臨床的意味に関して(3日ぐらい寝ててもいいじゃないと言う意味で)疑問があります。データは審査報告書を参照しました。
2018年03月14日
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わかさ生活はブルベリーの基礎研究を熱心に行っています。1月11日も「【研究発表】ビルベリーの眼精疲労に対する働き方のしくみの一部が明らかになりました。 」というプレスリリースが発表されています。内容はマウスでのアントシアニンの分布を調べたもので、外眼筋に移行していることを近畿大学共同して明らかにしたものです。薬剤で言えば発売前にやっておく実験です。作用機序というほどの内容ではありません。しかも眼精疲労に対して効果があると言い切っています。これはサプリメントの表現としては行きすぎのような気がします。病者用特定保健用食品の表現です。実際に効果があると思いますが、検証されたものではありません。特定機能食品のコマーシャルで小さな文字で「消費者庁が効果を確認したものではありません」とでていますが、これは特定機能食品の性質から考えて、薬のコマーシャルと同じくピンポンと注意喚起の音を鳴らしてちゃんと読めるような大きさの文字で表記すべきと思います。妊娠前の葉酸などの不足を補うためのサプリメントは必要と思いますが、それを飲んだからといってあなたの赤ちゃんが健康で生まれてくる保証はありません。薬剤でも同じですが、100人集めて1人異常が出るのを1000人に1人にしている程度です。(数字は概算です)糖尿病の薬や高脂血症の薬に関しては大きく言えば少し長生きする可能性が高くなる程度であって、真剣に調べると他の病気にかかる可能性が増えるものも存在します。生活習慣病という言葉は成人病という言葉よりもいいのかもしれませんが、薬でも生活習慣をかえなければ長生きするという効果は現れないかもしれません。生活習慣病の薬剤治療は代替指標に基づいて治療が行われています。高血圧なら血圧、糖尿病なら血糖値あるいはHbA1c、脂質異常症ならLDLコレステロール量、HDLコレステロール量、トリグリセライド量で治療効果があるかどうかを見定めて薬として世の中に出てきます。しかし、本来の将来の心臓や脳における血管障害が本当に減るかどうかは、発売時点では明らかになっていません。エビデンスレベルでいうとデータはない状態です。糖尿病の薬は新しい作用機序のものが最近続々とでてきていますが、本当に長生きできるかは分かりません。特に血糖を下げると低血糖による突然死があるので、厳密に薬剤で血糖値をコントロールすると帰って寿命が短くなるという報告もあります。話がそれすぎましたが、サプリメントは健康補助食品であるべきであって、何かの効果を訴求する場合には病者用特定保健用食品の承認を受ける必要があると思います。漢方薬の単味のものが盛んにサプリメント扱いで世に出ていますが、これも怖いものがあります。
2018年01月14日
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この年末から年始にかけて糖尿病に関していろいろな記事を読みました。「GLP-1 release and vagal afferent activation mediate the beneficial metabolic and chronotherapeutic effects of D-allulose」https://www.nature.com/articles/s41467-017-02488-yアルロースがGLP-1受容体作動薬として経口投与でマウスに働くという論文です。アルロースは低カロリー甘味料として最近注目されている希少糖です。天然には微量しか存在しませんが、工業的に生産可能です。既に糖尿病や動脈硬化に動物実験レベルで効果が示されています。砂糖の代わりに使うには熱によって変性するのであまりおすすめではありません、人間での臨床試験をうけて、特定保健用食品としてアルロースが認可されることが期待されます。「【特集】変わる糖尿病患者の食事法 Part1 筋肉を作る蛋白質から食べてインスリンの分泌を促す」http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/sped/1712cvm/201712/554054.html食べる順番を変えることによって糖尿病の血糖の急激な上昇を抑えることは有用である事の解説記事です。野菜から食べるだけでなく、肉や魚から食べろということを人間のデータによって示されています。非観血的に血糖値を連続して計ることがFreeStyleリブレによって可能になってきたので、こういった順番を変えるだけで効果があるなどの臨床試験は容易になってきたと思います。「【特集】変わる糖尿病患者の食事法 Part2 「時間生物学」という切り口から生まれた時計遺伝子を有効に利用する食事のタイミング」http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/sped/1712cvm/201712/554058.htmlこちらははやりの時計遺伝子BMAL1でのマウスでの実験からの推奨です。これはまだ少し眉唾です。というのはマウスとヒトでは時間遺伝子の発現は異なることが知られているからです。ですから、マウスでの最適解はもしかするとヒトでは最適解ではない可能性があるからです。日内変動に関する文献ではマウスを用いた実験では必ず考察でマウスは夜行性でヒトは(原則として)昼行性であることから、マウスから得られた至適時間をそのままヒトに応用するのではなく、12時間ずらす等の検討が必要で、そこから、もう一度人間で試さないと分からないといわれています。この観点からする人間に対する応用はもう少し待った方がいいかと思います。リポート◎糖尿病の新管理指標「血糖トレンド」に注目集まる 血糖管理はHbA1cを見るだけでは不十分http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201801/554321.html測定方法が進化することによって、病気の評価方法が変わっていくという典型例でしょう。持続血糖測定値が簡単にえら得ることによってHbAcの価値が落ちてきたというお話しです。HbA1cがでてきた頃には空腹時血糖という点ではなく、数カ月間の血糖値の平均値が出るので大変優れた検査値と言われたのを思い出します。測定方法の進化が病態を明らかにしていくというお話しなので、私の好きな分野です。糖尿病と並ぶ生活習慣病に高血圧があります。これもカフを使わないで連続的に血圧を測ることができれば、またお話しが変わってくると思います。特に血圧に関しては家庭血圧の概念(毎日測定可能)が入って診断基準に変化がありました。ウエアラブルなカフが入らない血圧測定が可能になれば、今はやりの高血圧サージの発生時にアラームを鳴らせるので、大変有用だと思います。使用可能になって、お風呂での事故などを減らせれば非常に有用では無いかと思います。
2018年01月14日
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東京工業大学のプレスリリース「体を外敵から守る化学感覚細胞のマスター因子を同定」によると、味細胞(化学感覚細胞)は、舌だけでなく体のさまざまな器官に存在し、産生に必要な転写因子を発見したとのことです。ヒトの味覚は口腔内の味細胞によって情報を受け取っています。(昔は味細胞の種類によって味覚を感じる種類が違うので、舌の先は甘みを、付け根は苦みを感じると言われていましたが、それは否定されています。)味細胞はあらゆる器官で見つかっていますが、今回の研究ではSkn-1aが味細胞のマスター因子であることを明らかに、Skn-1aノックアウトマウスの作成に成功しました。味細胞は食事による快楽を得るだけではなく、有害物質を排除することに働いていると言われています。毒物は苦く(このあたり、ふぐの肝がおいしい(毒を含んでる可能性があって苦い)とちょっと矛盾しますが)、そのような情報は気管、小腸、尿道でも働いていると考えられます。気管では有害物質や細菌の進入を知らせる、小腸では寄生虫の存在を知らせる、尿道では最近の進入を知らせるということです。ノックアウトマウスができたことにより、他にも味細胞が確認されている耳管、胸腺、胃、膵管、大腸などで何のシグナルをだしているのが分かるツールが手に入ったとのことです。口腔内では味覚によって、脳がおいしいと感じる快楽物質がでています。他の部位では免疫が働き出すための第一報を脳に届ける役割を担っているのかもしれません。いろいろ仮説が広がる研究です。
2017年12月12日
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重篤な副作用は発生率は低いものの、薬効から推定される癌化学療法の血液毒性は下がったときに、増殖因子を投与することによって、その先にある感染症による敗血症を予防することは可能です。最近の抗体医薬品(増殖因子阻害剤)では間質性肺炎問題となります。これは非小細胞肺癌の場合には、腫瘍が縮小、壊死することによる肺の空間を埋めるためにおこる可能性もあります。しかし、その他のがんに対する抗体医薬品でも発症する可能性が報告されており、何が原因となっているのかを検討する必要があります。間質性肺炎の治療法がまだ完全なものではないので、起こってしまってからでは患者さんのQOLの低下が大きいからです。理化学研究所と北海道大学のプレスリリース「糖尿病の薬で皮膚の難病を発症するリスク因子を発見」では、糖尿病治療薬のDPP-4阻害剤における水疱性類天疱瘡という皮膚の難病の発症が特定の白血球型(HLA遺伝子)を有していることを明らかにしました。データはこの白血球型が一般的な日本人で18%であるのに対して、DDP-4阻害剤を服用している2型糖尿病患者では31%、非炎症性水疱性類天疱瘡を併発した患者は86%と高率であることを示しています。また薬剤とは関係のない水疱性類天疱瘡患者ではこの白血球型を持っているヒトは26%でした。2型糖尿病や水疱性類天疱瘡そのものは白血球型には関係がありませんが、DPP-2阻害薬で糖尿病を治療したときに水疱性類天疱瘡が発現する可能性が高くなるということです。これは研究としては疫学レベルのお話しです。2型糖尿病で水疱性類天疱瘡が生じる理由の解明を行うか、この白血球型を持つヒトにおけるHLA遺伝子が何をしているのかを、動物実験等で検討する必要があります。そして、他の何かの因子があって水疱性類天疱瘡がでるのか、DPP-2阻害剤と白血球型の関係が明らかになれば、ある条件のヒトではDPP-2阻害剤を糖尿病の治療に使わないということになるのかもしれません。この次の研究が非常に大事になります。水疱性類天疱瘡は自己免疫疾患とも言われているので、免疫チェックポイント阻害剤でも同様の副作用がでていることから、そちらも検討していく必要があると思います。
2017年12月11日
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2017年11月20日発京都大学のプレスリリース「過剰発現した野生型SOD1はiPS細胞由来脊髄運動神経細胞においてALS関連ミスフォールド構造を呈する」によると、変異型SOD1遺伝子を発現しなくとも、野生型SOD1遺伝子を過剰に発現したマウスでも、筋萎縮性側索硬化症を起こすことをマウスを用いて明らかにしました。野生型SOD1遺伝子を過剰に発現したマウスでは、遺伝子異常のSOD1遺伝子を持つものと同様にALSを発現しました。しかし、異常を検出する抗体2種類のうち、野生型では1種類しか結合しなかったとのことです。ALSは家族性(SOD1遺伝子異常)が20%で残りの孤発性ALSに関しては病院が不明でした。今回の研究により、SOD1遺伝子そのものが正常であっても、過剰に発現した場合には何らかの理由で立体構造が変化することにより、異常遺伝子と同じように毒性を示すこと=ALSを発病する可能性があることが判明しました。立体構造に問題があって毒性を示す場合には治療が難しいと思われます。倫理的な問題を考慮しなければ異常遺伝子を遺伝子治療すれば治せる可能性は示されていますが、正常な遺伝子から算出されるタンパク質が量の問題で毒性を示す場合には、単純に生成阻害をすれば治るような気がしますが、既に神経に影響を与えている場合にはそれでいいのかという話しになります。(アルツハイマー型認知症のβアミロイドの生成に似ています)。しかし、一つの手がかりを手に入れたことは間違いがなく、蛋白性性までの詳細な仕組みが明らかになれば、ALSに対する薬物治療の可能性が出てくるかもしれません。
2017年11月26日
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CiRAのプレスリリース「アルツハイマー病病因物質を低減させる既存薬カクテルの同定―患者由来iPS細胞を用いた化合物スクリーニングとin vitroトライアル―」がいろいろなメディアで取り上げられています。複数のAD患者さんから細胞を集めてin vitroトライアルで有効性が示されたとのことです。その薬剤とはブロモクリプチン、クロモリン、トピラマートの組み合わせです。ブロモクリプチンはプロラクチン分泌抑制作用から産褥性乳汁分泌抑制、乳汁漏出症、高プロラクチン血性排卵障害、高プロラクチン血性下垂体腺腫の適応を持っており、ドパミン受容体刺激作用からパーキンソン病の適応を持っており、成長ホルモン分泌抑制作用(健常人では成長ホルモン分泌促進)から末端肥大症、下垂体性巨人症に適応をもつというマルチな作用をもつ薬剤です。クロモリンは抗アレルギー薬でマスト細胞からの炎症物質の放出を防ぎます。トピラマートは脳神経の興奮を抑えるとともに、AMPA/カイニン酸型グルタミン酸受容体の機能抑制作用によりてんかんのきっかけを防ぐ、抗てんかん薬です。現在のアルツハイマー型認知症の治療薬はコリン阻害剤3種類とグルタ ミ ン 酸 NMDA(N-methyl Daspartate)受容体阻害薬1種類でいずれも進行を遅くする効果しかないと言われています。今回のプレスリリースのようにβアミロイドを減らす薬は、二つの抗体が臨床試験でプラセボに対する優位性を示せず、一時はアミロイドカスケード仮説が疑問視されていました。しかし、今回のプレスリリースにも図が載っていますが、発病寸前に用いる事によって、予防的な効果は大きなものであるという可能性が臨床試験で示されつつあります。しかし、抗体を用いる事から高薬価になる可能性があり、予防のために使えるかどうかは、アルツハイマー病のリスクをどうやって示すかということになってきています。脳ドックなどでβアミロイドが蓄積しつつあるが、症状がでていない人が対象になるかと思います。カクテルに関しては、疫学的な調査ができれば非常に役に立つと思います。日本ではデータの蓄積は始まったばかりですが、デンマークではすべての国民の医薬品処方と病気の発病のデータベースがあったと記憶しています。三つの薬を同時に飲んでいる人は非常に少ないと思いますが、クロモリンだけであればかなりのデータが集まると思います。一つにはこのカクテルの臨床試験を行うという手がありますが、対象患者の選択がとても難しいと思います。最近の抗体医薬の臨床が行われているので、そのプロトコールを参考にするのも一つの手です。もう一つはこのカクテルの作用機序を明らかにすることです。承認を受けているとはいえ、ブロモクリプチンやトピラマートは予防的に使うには少し危険な薬だと思います。
2017年11月25日
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「Genetic variation in glia–neuron signalling modulates ageing rate」Nature 551, 198–203 (09 November 2017)でば老化速度を調節する因子を発見したと報告しています。(ただし、回虫ですが)rgba-1(regulatory-gene-for-behavioural-ageing-1:新発見のペプチドをコーディングする遺伝子)と神経ペプチド受容体遺伝子npr-28がその正体です。また、Glia由来のRGBA-1は、セロトニン作動性およびドーパミン作動性ニューロンで行動の悪化を促進するNPR-28シグナル伝達を活性化する。NPR-28の一塩基多型が(回虫の)老化に対する個体差の原因であるとのことですセロトニンやドーパミンの量を増やす薬剤としては抗うつ薬や抗総合失調薬(最近、抗総合失調症薬の中に、大うつ病や双極性障害に対する効能・効果をもつ薬剤がでてきたので、こういった分類は意味がないのかもしれません。)個体差に関しては一塩基多型が原因になっているかもしれませんが、老化に関してはすべての人にやがてやってくるものです。皮膚に関してこのあたりの仕組みがどうなっているのかが分かれば成分補給による皮膚の老化に対する化粧品の考え方が変わるかもしれません。あとは、向精神薬を飲んでいる人は、この一塩基多型はどうなっているのでしょうか。また、服薬して胃脾とは老けないあるいは老けるなどという疫学調査をどこかの会社が行わないかな?アメリカでは抗うつ剤をのむ幼年期から青年期の人が増えています。そのあたりにも長期投与による影響はどうなんでしょう。
2017年11月12日
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2017年10月25日発表の東北大学のプレスリリース「世界初:哺乳類における「硫黄呼吸」を発見 - 酸素に依存しないエネルギー代謝のメカニズムを解明 - 」はとても興味深いものです。今までは哺乳類のエネルギー産生は酸素が用いられており、酸素がなければ生きていけないとされてきました。今回の発見では、酸素の代わりにシステインパースルフィドがエネルギ産生に関与していることを発見しました。システインパースルフィドは哺乳類の生体内で多量に存在することが明らかになっており、ミトコンドリアでエネルギー産生に携わっていることを明らかにし、これを「硫黄呼吸」と名付けました。この硫黄呼吸ができないマウスを作成したところ、正常マウスに比べて成長が著しく悪くなることが判明し、生命維持に酸素以外にシステインパースルフィドも必須である可能性を見いだしました。システインパースルフィドはシステインから体内で生産されることから、システインの重要性がさらに見直される可能性があります。システインは既に癌化学療法の副作用の防止効果、シミに対する効果(美白効果)、飲酒時に発生するアセトアルデヒドの増加を抑える、発毛を抑制するなどの効果が報告されています。外因性のシステインとシステインパースルフィドの関連性を検討することによって、上記の効果をさらに効果的に発揮させることができるかもしれません。
2017年10月31日
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2017年10月26日に理化学研究所が発表したプレスリリース「急性骨髄性白血病を克服する治療法 ー発症と治療抵抗性の2遺伝子を標的に悪性白血病細胞を根絶- 」によると、急性骨髄性白血病にはいろいろな遺伝子異常があるが、その根本は「FLT3」の以上である事を突き止めたとのことです。この遺伝子は造血幹細胞から前駆細胞の段階で白血病細胞に変化させる遺伝子で、この遺伝子の異常シグナルをとめる「RK-20449」という低分子化合物を投与することによって白血病の治療可能性がある事をヒト化マウスを用いて明らかにしました。この低分子薬物は白血病細胞をアポトーシスに向かわせますが、BCL2によって一部の白血病細胞は生き残ることを明らかにしています。そのため、BCL2阻害剤を併用することによって、高率にヒト化マウスの白血病を治療できることを示しました。RK-20449で19例中5例の根治、残りの14例中12例でBCL2が治療抵抗性に働いていたことから、8割近くの根治率が見込める可能性があります。BLC2阻害剤はVenetoclaxが既にFDAで承認されています。RK-20449のヒトでの応用が期待できます。その際にはBCL2阻害剤で最初から開発することになるのが早いのか、単独で効果を確かめて、併用もコミで申請するのが早いのかはRK-20499の特許を持つ会社がBCL2阻害剤を有しているかどうかできまると思います。
2017年10月29日
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岡山大学の2017年10月27日のプレスリリース「遺伝子を操作する“人工転写因子”でがんの増殖を阻害~がんの増殖を担う遺伝情報を読めないようにする革新的技術を開発~」によれいば「がん増殖遺伝子」を読めなくする、テーラーメイドの人工タンパク質『人工転写因子』の開発に成功したそうです。ヌードマウスの実験では、移植前にこの人工転写因子と一緒に培養したがん細胞は増殖しなかったそうです。これはヌードマウスで増殖したがんに注射してがんがなくなるかどうかを実験しないと実際に効果があるかどうかは分からないと思います。がん細胞に直接作用させれば効果があるというのは明らかですが、がん細胞をメチオニンを抜いた培地で培養することによっても同様の作用が発現することは分かっています(A review of methionine dependency and the role of methionine restriction in cancer growth control and life-span extension. cancer Treat Rev. 2012 Oct;38(6):726-36. doi: 10.1016/j.ctrv.2012.01.004. Epub 2012 Feb 17. 実際にメチオレスという医薬品を申請した会社がありましたが、最終的には申請を取り下げています。)医薬品として考えた場合には、がん細胞と人工転写因子を接触させるかが問題です。また、思わぬ副作用が出る可能性もあります。そんなのはもうクリアしているよと言う続報を期待します。
2017年10月28日
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慶應義塾大、理化学研究所、早稲田大学、日本医療研究開発機構のグループは2017年10月20日「口腔常在菌の中には、異所性に腸管に定着すると免疫を活性化するものがいる」という表題のプレスリリースを行いました。概要は以下の図の通りです。プレスリリースより健康人の口腔内にもTH1細胞を誘導するクレブシエラ・ニューモニエ属が存在することから、クレブシエラ・ニューモニエ属は引き金になる可能性はあります。しかし、炎症性の大腸炎の原因は遺伝的な素因、免疫系の異常、腸内細菌叢の乱れ、乱れた食生活、ストレスなどが絡み合って発症して、活動期と寛解期を繰り返すと考えられています。実際にはどの因子が重要であるのかは明らかになっていません。(全部必要なのかもしれませんし、発症には全部は必要がないかもしれませんし、寛解期から活動期にうつる理由も多くはストレスと言われていますが、今回の研究の機序も考えられます。)ピロリ菌のようにTH1細胞を誘導するクレブシエラ・ニューモニエ属を迅速に検出できるキットができるとこの発見は臨床でも確認することができると思います。口腔内のクレブシエラ・ニューモニエ属が強酸の胃を通して腸管まで届くかどうかはマウスでは確認されましたが、人ではどうでしょうか。新しい測定法と、新しい薬剤(クレブシエラ・ニューモニエ属のみに働くもの)、リスクのある被験者での口腔内クレブシエラ・ニューモニエ属の口腔内清浄にによる排除の有効性の確認、腸内細菌叢でのクレブシエラ・ニューモニエ属の動向などいろいろ試したいことがでてきます。
2017年10月22日
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少し古くて申し訳ないですが、「福島第一原発事故後の森林内の放射性セシウムの動態を解明 ―5年間で樹木の葉や幹から土壌表層へ移動―」というプレスリリースがでています。いままで、チェルノブイリにおいても樹木に付着した放射性セシウムがどのようになるかは観察されていませんでした。今回の 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所の研究では5年間にわたる測定の結果、福島第一原発の 事故による放射性セシウムを浴びた樹木は、葉、枝は経年的に放射性セシウムの量は減っているのに、樹皮ではほぼ一定、美貴では増加しているということが分かりました。さらに樹木ののセシウム蓄積量は5年間でほぼなくなりましたが、それは落葉層の下部の土壌(0~5cm)に移行していることが分かりました。早期に樹木がある土地を除染した場合でも、樹木が浴びた放射線セシウムが土壌に戻ることから、除染の意味がなくなっている可能性があるということです。現在復興のために税金に上乗せが行われています。なくせとはいいません。しかし、国会議員の給料からの復興のための天引きはいつのまにか終わっています。つまり、国会議員はもう福島第一原発の事故による被害に対して原状回復しているからお金は出さなくていいと考えたということでしょう。原発はゼロにするべきです。現在世界で一番厳しいといわれる規制も、事故の際の避難方法、避難場所の確保に関しては、地方自治体の長(しかも原発存在する地方自治体のみ)の合意で行われています。原発周囲30km全員の避難場所と避難方法を記載した文書と、その説明を受けて理解したという住民の合意書がなければ十分な地方との合意がなされているということにはならないと思います。そんな費用や廃炉費用を内部積み立てをしておかなければならないという、経済的な縛りがなければ、それこそ想定外の津波や地震が起こったときの被害の最小化は不可能です。少なくとも福島第一原発の廃炉が終わるまでは、東京電力内の原発の再稼働を止めるべきです。実際に5年間(原油安があったとはいえ)で東京電力はつぶれるような赤字は出していないのですから。そんな眼で希望の党には一瞬期待したのですが、小泉元首相に逃げられるようでは、原発ゼロはお題目で(小さな字で再稼働は認めるって書いてある)、維新ぐらいでしょ。本気なのは。だって、近畿地方の場合には、原発所在地は福井県ですが、30km範囲に京都や滋賀が入っていますが、その地域の避難方法や避難場所に関しては何もないのに再稼働が決まり、実際再稼働しています。北朝鮮に備えるならば、同じぐらいの意識で原発事故に備える必要があります。
2017年10月19日
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九州大学のグループは造血幹細胞の機能維持に働く分子を同定し、幹細胞の若返りの可能性を示したと10月12日にプレスリリースしました。この分子はPot1aというタンパク質でマウスの造血幹細胞にこのタンパク質を導入することにより、機能低下した(老化した)造血幹細胞の機能が回復することを見いだしました。ヒトの造血幹細胞でも同様の作用が確認できています。万能幹細胞ではどうなるかは分かりませんが、万能幹細胞は老化することが皮膚のシートを作る中で明らかになっており、テロメアが関与する可能性を示唆した報告があります。今回のPort1aは染色体末端のテロメアDNA保護に働くシェルタリンというタンパク複合体を構成するタンパク質の成分です。このPort1aというタンパク質をさまざまな細胞に導入できる技術もウイルスを用いたものではないので、安全と考えられます。幹細胞制御系の確立に応用できるとグループは期待していますが、万能細胞から各種器官の幹細胞に導入することができれば、ES細胞の場合は問題ないかもしれませんが、iPS細胞の場合には細胞を取り出したヒトの年齢によって器官幹細胞に分化した後の器官幹細胞の分化能が低下してる場合があるので、今後のiPS細胞の品質管理に重要な役割を果たす可能性があると思います。
2017年10月15日
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2016年に「現代における健康、食の安全、そして発展にとって最大脅威のひとつ」とWHOは抗菌剤のへの耐性を位置付けました。日本でも薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが作成され、第一陣として抗微生物薬適正使用の手引き 第一版(2017年6月1日) が発行され、かぜ薬での微生物薬を使うことをなるべき避けるようにとのお達しを今更ながらですが、公にしました。で耐性に対するプレスリリースですが、沖縄科学技術大学院大学の「「細菌を食べる細菌」で新たな抗生物質開発をめざす」と北海道大学の「ミツバチ由来抗菌ペプチドの標的分子は「翻訳終結因子」だった! ~生体内で抗生剤耐性メカニズムを検証できる新手法,ARGO 法がカギ~ 」が2017年10月11日に公開されました。沖縄科学技術大学院大学の研究は細菌を食べる細菌である「デロビブリオ・バクテリオヴォルス」に対する研究です。デロビブリオ・バクテリオヴォルスの捕食特性に重要な遺伝子にテオフィリンで活性化するリボスイッチを挿入することに成功しました。まだまだ研究は必要ですが、「食中毒を防ぐために、これらの捕食性細菌を新鮮な食品にスプレーして使える」ことや植物病害や、水処理にも応用が利く可能性があります。再び牛の生レバーを食べることができる日が来るかもしれません。北海道大学の研究はミツバチ由来の抗菌物質の「アピデシン」の作用点を明らかにしました。また耐性の仕組みを検討するために、ARGO(Acquired Resistance induced by Gene Overproduction)法(候補となる遺伝子を個別に過剰発現させることで,擬似的に抗菌物質に対する抵抗性を上昇させることにより耐性に関与しているタンパク質を同定する方法)を開発し、その方法によりアピデシンが「翻訳終結因子というタンパク質」を標的としていることを明らかにしました。前者はそこまでデロビブリオ・バクテリオヴォルスを制御する必要があるかどうかは不明で、培養条件さえ整えばすぐにでも水処理は、植物病害には利用できるような気がします。後者はアピデシンそのものが新たな抗菌薬として使用できる可能性と抗生物質のスクリーニングに使用できる系の開発にARGO法が関与できることを示していると思います。
2017年10月12日
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ほんとかいなと思う記事をVeepa社がプレスリリースしまプレスリリースした。現在はEDCがほとんどになっているので、施設側の入力がネックになっているかと思いましたが、そうではなくて、EDCのデータベース構築とリリースの時期が大きな影響を与えているとの事です。EDCのデータベース構築に関しては、CDISCの発展により、データベース用件の定義が簡単にできるようになり、時間が節約できていると思っていました。プレスリリースによると試験実施計画書の変更がデータベース構築に影響を与えているそうです。データベースのリリースの遅れも問題になっているそうで、FPFVより後にデータベースをリリースするとデータベースのロックが3週間以上遅くなっているという実態があるそうです。これは入力時期の問題が影響しているようですが、他にも原因があるのかもしれません。EDCはDMが入力作業から解放されて、本来のデータを管理するという仕事に重点をおけるようになって、患者のエントリー状況を別とすれば、その他の時間は一定化できるのではないかと期待していたのですが、思わぬところに問題があったようです。検討が必要と思われる内容としてはRAVEとORACLEの二大プラットフォーム(市場の約6割をしめる)ではデータベース構築に時間がかかっているということです。プレスリリースとは関係ありませんが、製造販売後調査はまだまだ紙で行われていることが多いので、連絡遅れやまとめの遅れで、企業が厚生労働省に時折怒られているのかとも思いましたが、EDCにしていて、重篤な副作用が起こっても入力しないからかもしれません。MRはもっと動かないとという気がします。
2017年10月12日
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富山大学などのグループが新規のアルケド還元酵素阻害剤の合成に成功し、動物実験と細胞実験でで非小細胞肺癌細胞の増殖能と転移能に加えて、シスプラチン耐性を解除する事を明らかにしました。非小細胞肺癌の治療薬は抗体医薬品ばかりで治療費の高騰を招いていますが、やっと化学物質の薬物候補が出てきました。(これから先は長いですが)2005年にアルケド還元酵素が非小細胞癌で高発現が報告されています。今回の研究ではその酵素を阻害するだけでなく、類似構造をもつアルドース還元酵素の阻害活性は弱いことが明らかになっています。(キネダックはアルドース還元酵素の阻害剤で、糖尿病の神経性合併症の進行を抑える効果で承認されています)。動物実験は肺がん細胞と一緒に阻害剤をマウスに静脈注射して、蛍光で癌の面積を求めています。水溶性が高そうですが、この実験系ではあまり動物を使う意味はないような気がします。培地を動物に替えただけ。実際の臨床に近いモデルでやるならば、肺がん細胞を静注した後、ある程度の大きさになってから、薬物を静注しなければ分からない。単細胞の腫瘍細胞に効果があるかもしれませんが、固まりとなった腫瘍細胞に効果がないと臨床ではなかなか(といいながらこの系で効果を示す薬剤は、市販されている化学療法剤でもほとんどありません。)これから毒性試験に入ると思いますが、動物実験で体重変化が会ったかどうかを(論文読めば分かるかもしれませんが)みておけば、無駄な動物実験をしなくて済むかもしれません。プレスリリース 「アルドケト還元酵素 1B10 (AKR1B10)阻害に基づく新規非小細胞肺がん治療薬開発」
2017年10月10日
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大阪大学は従来のγセレクターゼ阻害薬はが臨床的に効果がなかった理由に関する細胞学的な研究を「 Cell Reports 」に2017年10月4日に発表しました。大阪大学の研究によると本来のγセクレターゼの役割はアミロイドの産生と細胞外への放出を行っていることが判明しました。セマガセスタットは第Ⅲ相試験で認知機能悪化が見られたことから中止になった薬剤です。この薬剤の作用をiPS細胞由来の神経細胞やアミロイドβを過剰に産生するマウスの脳を対象に実験を行うと、産生よりも排出機構の阻害が多きく阻害していることから、結果としてアミロイドβが細胞内に蓄積していることが分かりました。従って、セマガセスタットが認知機能悪化につながった可能性が高いとしています。今後は、γセクレターゼの働きのうち産生のみを抑え、細胞からのアミロイドβの排泄を抑えない薬物がアルツハイマー型認知症の治療薬になる可能性があります。γセクレターゼはNotchを切断すること、その細胞内領域が転写分子としてシグナル伝達を行っていることから阻害剤の副作用、特に免疫対するものが不安視され、γセクレターゼの阻害剤の開発は難しくなっていますが、今回の発表から選択的にβアミロイドの産生を抑える可能性と選択的にβアミロイドの細胞外排出の促進の可能性が示されたと思います。頭皮乾癬の新剤型(シャンプ)薬剤のレビューを以下に作成しました。興味のある方は御覧になってください。 コムクロシャンプー0.05%(頭部乾癬治療薬)について
2017年10月09日
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第53回欧州糖尿病学会学術集会で2型糖尿病患者を対象としたJ-DOIT3(Japan Diabetes Optimal Integrated Treatment study for 3 major risk factors of cardiovascular diseases)の結果が発表されました。対象は、高血圧または脂質代謝異常があるHbA1c 6.9%以上の日本人2型糖尿病患者2542例。従来治療群(HbA1c 6.9%未満)と強化治療群(HbA1c 6.2%未満)主要評価項目:総死亡、脳卒中、心筋梗塞、冠動脈血行再建術の施行、脳血管血行再建術の施行の複合エンドポイント2016年3月に終了し、平均介入期間は平均8.5年 結果:強化治療群では平均HbA1c 6.8% 従来治療群では平均HbA1c 7.2% 両群とも目標のHbA1cには達していないが、有意な差はあり。複合心血管イベントの発生は、強化治療群109例、従来治療群133例で、強化治療群で19%のリスク減少 ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[95%CI]:0.63-1.04、P=0.094ベースラインの喫煙習慣などの危険因子で補正すると、HRは0.76(0.59-0.99、P=0.042)となり有意差を認めた。結果の感想発表者は「従来治療群のコントロールが良好で、想定よりもイベントの発生が少なかった。加えて、強化治療群で管理目標値に到達しなかった」のが原因でどちらがいいのか分からなかったとの発言でした。後から危険因子で補正するならば、割付時に条件付き割付をしておかないと分からないですし、何を危険因子にしたのかによって結果が変わると思うので、論文を待たないとこの部分は感想を述べられません。単純に結果だけだと、従来治療では最終的に悪化、強化治療で前値を維持レベルなので、治療法に問題があったのかもしれません。しかし、この評価を行う場合には差も見ておく必要があると考えます。結構税金使って、高い薬を使わなくてもよいことを証明したことになったのでは。いいことです。以下の記事を参考にしました。学会トピック◎欧州糖尿病学会(EASD2017) 強化治療で心血管リスク19%減、J-DOIT3試験(日経メディカル)
2017年10月08日
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「鬱患者、肥満で認知低下」というタイトルの記事が産経ニュースに2017.10.4 10:16に掲載されました。これは2017年9月27日に国立精神・神経医療センターが出したプレスリリースを元に書かれたものと思われます。プレスリリースのタイトルは「肥満と認知機能障害の関連が大うつ病性障害で明らかに 肥満は、脳の皮質体積の減少や神経ネットワークの低下と関連する-」というものです。対象は年齢、性、人種(日本人) および利き手(右利き)をマッチさせた大うつ病性障害患者307名と健常者294名でした。大うつ病性障害では、正常体重の人の割合が健常者と比べて有意に少なかったことです。その分、肥満、過体重、体重不足の割合が高くなっていました。BMI分類によって認知機能を比較ところ、大うつ病性障害で、作業記憶、巧緻運動速度、実行機能およびBACS総合スコアが、肥満患者17名において非肥満患者290名と比べて有意に低下していました。一方、健常者ではBMIが30以上の肥満だけが認知機能の低下を示すというより、BMIが体重不足→正常体重→過体重→肥満と高くなるにつれて認知機能が低下する傾向がみられました。MRI画像解析では、大うつ病性障害患者の肥満群7名と非肥満群107名の比較を行いました。肥満患者において、非肥満患者と比べて灰白質の体積、白質の神経結合が有意に低下していた脳領域がみられました。健常者のデータだけ見ると肥満が認知機能に影響を与えていると考えるのが普通と思われます。大うつ病患者の過体重(7名対107名)で画像も脳領域に影響が出ていたのは、薬の影響ではないでしょうか。一般的に大うつ病患者では食事も取る気にならないので、体重が減るはずです。体重が増えるような大うつ病は非定型に分類されます。そういった目でこのデータをみると、肥満は認知に影響を与え、それは大うつ病に限らず、健常人でも見られる。大うつ病患者で肥満になっている人は脳の異常が画像で観察できるが、これは健常者の対象がないので大うつ病の非定型を検出しているか、健常者でも同様のことが起こっているか、抗うつ剤により症状が安定していることから、食欲が出て肥満になっているので、多分抗うつ剤を長期間飲んでいるので、その影響が出ているなど、いろいろ仮説が立てられます。それに対してはもう少し、研究が必要と考えます。
2017年10月05日
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最近の科学発表で驚いたもの遺伝子の塩基1個を改変 中国、人の受精卵で実験医療ニュース貧血を起こす遺伝性の血液病の遺伝子を一塩基だけ組み換えることに人の受精卵で成功。48個の受精卵の内11個で成功。この確率は実用には低いレベルだと思います。置き換えた受精卵は戻していないので、その後成長するかは未確認。一塩基多型は薬物動態でよく出てきます。受精の段階で将来の薬物動態を改善するなんてことは少なくとも私の生きている内には実現しないでしょう。体内時計が血液脳関門の維持に重要である事を発見岡山大プレスリリース体内時計システムの構成因子の欠失によって、脳血管周囲に存在するペリサイトの機能破綻を起こすことで血液脳関門の恒常性維持機能を減弱させる。マウスの実験ですが、構成因子をうまく操ることができれば血液脳関門を必要なときに開いて薬剤を脳に到達させるなんて考えるのは無謀?マウス卵母細胞の形成機構を解明 -多能性幹細胞から卵母細胞を液性因子のみで誘導することに成功- 京都大学プレスリリースマウス卵母細胞(胎児期に始原生殖細胞から分化する雌性の生殖細胞)の形成機構を解析し、始原生殖細胞から卵母細胞への分化を誘導する因子として、骨形成因子(bone morphogenetic protein: BMP)とレチノイン酸(ビタミンA)を同定しました。本研究グループは、ES細胞から始原生殖細胞様細胞を誘導し、これまでに開発した方法を用いて始原生殖細胞様細胞を増殖させ、BMPとレチノイン酸を加え、始原生殖細胞様細胞をほぼ全て卵母細胞に分化させることに成功しました。誘導された卵母細胞はその最も際立った特徴である減数分裂を開始し、またその遺伝子発現は生体内の胎児卵母細胞に酷似していました。マウスでの成功ですが、人iPS細胞から生体材料なしで卵子をせんさんできるようになれば、不妊治療に役に立つ可能性が出てきます。特に、若いときの卵子を保存して置くよりも、皮膚でも何でもよい可能性があるので、年齢が関与する不妊治療に応用が利くのでは。
2017年10月02日
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ちょっと古い話ですが、アメリカの統計学会の声明が変に使われているのが気になったので、ご紹介。AMERICAN STATISTICAL ASSOCIATION RELEASES STATEMENT ON STATISTICAL SIGNIFICANCE AND P-VALUESProvides Principles to Improve the Conduct and Interpretation of Quantitative Sciencehttps://www.amstat.org/newsroom/pressreleases/P-ValueStatement.pdfThe ASA's statement on p-values: context, process, and purposehttp://amstat.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/00031305.2016.1154108P-values can indicate how incompatible the data are with a specified statistical model.P-values do not measure the probability that the studied hypothesis is true, or the probability that the data were produced by random chance alone.Scientific conclusions and business or policy decisions should not be based only on whether a p-value passes a specific threshold.Proper inference requires full reporting and transparency.A p-value, or statistical significance, does not measure the size of an effect or the importance of a result.By itself, a p-value does not provide a good measure of evidence regarding a model or hypothesis.医学統計学の学会に数理統計の専門家が入ってくるとモデルの問題でよくもめます。少なくとも日本の医療統計学者で「第Ⅲ相試験で統計学的な有意差が取れないと厚生労働省に承認されない」と思っている人はほとんどないと思います。第Ⅲ相試験で有効性・安全性を含めて、薬剤として有用性が認められるためにどのようなデータを収集して、どれぐらい自分たちの立てた仮説が正しく、それに対する医療上の有用性があるかどうかを確認するために統計学を用いているので、道具としては参考とするが、最終的に申請資料として適した臨床試験であるかは結果の統計処理だけで行うものではありません。例えば、Aという薬剤は20%程度の副作用がでて、これが患者さんの治療に大きく影響する事が分かったとします。ではその副作用を抑える薬を開発するとして、どれぐらい副作用を抑制すれば臨床的に意味があるのかという仮説をたてて、その仮説を証明するためにはどれぐらいの規模の臨床試験を行う必要があるかを考える事になります。副作用を抑えることを統計学的に証明して薬にすることに本当に意義があるかという薬剤は確かにあります。有効性・安全性の臨床試験をすることで、効果がないことがばれるのを恐れて、高額な自費治療で治った人だけを宣伝しているお医者さんもいます。その人たちにアメリカ統計学会が「Scientific conclusions and business or policy decisions should not be based only on whether a p-value passes a specific threshold.」と言っているので、自分たちの方針は正しいとは言われたくない気分です。因果関係に関しては統計学はその因果関係を精査するためのとっかかりにすぎないと思っています。生データを自分で確かめた上、統計の先生の出してきた結果をレビューして、別の見方ができるのでは内科と考えるのが創薬のPMの仕事の一つと私は思っています。
2017年09月28日
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今回の臨時国会は加計問題の追求のために開催を要求したものです。要求は6月、要求から開催までの規定がないことをいいことに今まで先延ばしにして来たのです。それを臨時国会の冒頭で解散するということは「加計問題」に対して、やましいことがある事であると判断されてもしかたがない。安倍さんが関係していなくても、10年以上も拒否していたのに今更許可することに関して、どのような理由があるかは明らかになっていません。この一点だけでも明らかにすべきです。これからどんどん獣医学部を作るとの発言もありました。単に、地方公務員である獣医師の給料が少ないだけでしょう。都会で獣医を開業したところで設備投資もかかり、必ずしも儲かっているわけではありません。特別公務員としての手当を厚くすれば問題は解決するかもしれません。財源には、国税、地方税ではまだ東北大震災のための資金が徴収されていますが、国会議員の歳費はずっと前に払うのを止めています。それを復活させて、地方公務員の獣医の特別手当にあてれば済みます。本当に臨時国会の冒頭で解散したら、孫さんや三木谷さんや堀江さんあたりが資金を出して、理系のポスドクあたりを立候補させ、受け皿を作ればいい。
2017年09月19日
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人はものを食べると脂肪細胞からレプチンが出て、摂食中枢にあるレプチン受容体に結合すると、接触抑制作用が働き、食べるのを止めます。しかし、肥満の人は脂肪細胞からレプチンが放出されるのは増えるのに食べるのを止めることができません。この機構に関して基礎生物学研究所の研究グループはマウスモデルを使って明らかにしました。http://www.nibb.ac.jp/press/2017/09/14.htmlより引用肥満により、レプチンの放出が増えると、(私見:摂食抑制がかかりすぎることから)それを抑制するためにPTPRJという酵素分子がレプチンの受容体の活性化を抑制していることを発見しました。このPTTPJはインスリン受容体のインスリン受容体を脱リン酸化することでインスリンの作用を弱めることをこの研究グループは明らかにしていましたが、さらに今回摂食中枢の働きも弱めることを見いだしました。屋としては、PRPRJの阻害剤を見つけたいところです。インスリン受容体活性化作用で糖尿病治療薬二対しても期待できます。摂食中枢の場合には脳血液関門の問題があるので、末梢のインスリン受容体の活性化による抗糖尿病剤に期待です。糖尿病、特にII型糖尿病はインスリン受容体が痛むことが原因と考えられ、肥満がその発病因子の可能性が示唆されています。従って、今回の研究が人でも同じような機構が働いているならば、阻害系のスクリーニング系を作って、現在の抗糖尿病薬を調べること(この論文読んだメーカーの研究員は実験するでしょうね)か、今までの栄養食品の成分をランダムスクリーニングすることで(これもサプリメント会社の研究員がやっているかも)、動物実験を比較的少なく、すぐに臨床試験に持って行けるような化合物が発見されることを期待します。発表論文 Takafumi Shintani, Satoru Higashi, Ryoko Suzuki, Yasushi Takeuchi, Reina Ikaga, Tomomi Yamazaki, Kenta Kobayashi, and Masaharu Noda. PTPRJ Inhibits Leptin Signaling, and Induction of PTPRJ in the Hypothalamus Is a Cause of the Development of Leptin ResistanceScientific Reports7,Article number: DOI:10.1038/s41598-017-12070-7
2017年09月15日
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遺伝子学会が用語集をまとめ、優性遺伝を顕性遺伝、劣性遺伝を潜性遺伝に変更すると新聞に載っています。他のはどうかと確認しようとすると「遺伝単」という本を買わなくてはならない。この本は以下のような構成になっています。 基本用語の解説セクション1 キホンのキホン生命多様性の単位―遺伝子セクション2 表現型から見た遺伝現象遺伝子間相互作用の結果セクション3 遺伝情報とその継承および変化分子メカニズムから進化までセクション4 細胞と染色体遺伝メカニズムの巨大パッケージセクション5 ゲノム科学セクション6 ヒトの遺伝―医療への関わり遺伝学用語対訳集英和編和英編(引用:http://www.nts-book.co.jp/item/detail/summary/bio/20170929_182.html)2,800円します。遺伝学を学ぶ人や教える人には必須の出費でしょうが、新聞記事をみてどんなものかなって思った私は買う気はありません。せめて、遺伝学用語対訳集ぐらいは遺伝子学会のホームページに載せて欲しい。まあ、病気のガイドラインはほとんどが学会のホームページで公開されていますが、本として発売されている場合もあります。厚生労働省が病気に関する情報発信をしていますが、標準治療の有無とその効果、エビデンスレベルを知りたいと思った時には無料で公開して欲しいと思います。
2017年09月07日
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このタイトルを「 【化学】ウイスキーを水で希釈すると味わいが増す仕組み」と訳すネイチャー日本の人はすごいとは思います。でも、水割りがなぜおいしいかを検討した論文の紹介記事と思いませんか?紹介記事の本文はこちら内容はウイスキーは、瓶詰めされる前に水が添加されてアルコール含有量が約40%になるまで希釈されるが、この希釈によってウイスキーの味わいは著しく変化する。ことを化学的 (実際には グアイアコールを含む水-エタノール混合物のコンピューターシミュレーションを行って明らかにしています。)この結果から、45%(90度)のウイスキーではグラスに入れたときに水による希釈が聞いているが59%を超えると(そんなウイスキーは寡聞にして知りません。)、香りの原因であるグアイアコールが分散されてしまうということだそうです。水割りは作り手によって味が変わるといわれていますが、そのことに関して研究した論文ではありません。オリジナル論文はこちら
2017年08月31日
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読売新聞の東海村が行った子供の甲状腺検査の結果の記事を引用します。 検査は2016年7~12月に18回に分けて実施。対象は6~19歳の約5800人で、うち希望者約3100人が受けた。 結果は「異常なし」が45%で、「経過観察」が54・1%。5・1ミリ以上のしこりや20・1ミリ以上の嚢胞が見つかり「要精密検査」とされたのは0・9%にあたる28人で、全員が専門医療機関で精密検査を受けたが、がんなどの重大な疾患は見つからなかった。読売新聞の見出しは「東海村の子どもに甲状腺の重篤疾患なし」でもこの内容ならば「東海村の子供甲状腺検査 異常なしは45%」「東海村の子供甲状腺検査 しこりや嚢胞が25人にみつかる」「東海村の子供甲状腺検査 経過観察必要な子供は半数以上」でもウソを言っているわけではありません。 経過観察と判定された人は1年に1回は検査が必要とされています。この中から将来甲状腺機能低下症や甲状腺癌が見つかる可能性が「異常なし」よりも高いということなので、少なくとも経過観察及び要精密検査と判定された人は毎年検診を行うべきだと思います。 読売新聞の記事は見出しだけを読む人に対しては今後は検査が必要ないという間違った印象を与えると思います。 解説記事などをつけて、一般的な子供の甲状腺検査との比較や「経過観察」の意味を記載すべきであり要精密検査の28人にがんなどの重大な疾患は見つからなかったが、今後発症する可能性は否定できないので、検査を続けていくべきだと述べて欲しいと感じました。
2017年08月30日
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慢性的なストレスでも急性的なストレスでも、脳の微小炎症が抑うつを起こしていることを別々の研究で明らかにしました。(動物実験)鳥取大学医学部附属病院の研究によると、慢性的なストレスにより微小炎症ができ、その炎症は「βヒドロキシ酪酸(BHB)」で抑制可能であることをラットで示しました。急性ストレスによりインターロイキン1βの増加とBHBの事前投与によりこの減少を抑え得ることができることを発見しました。(SCIENTIFIC REPORTS | 7: 7677|DOI:10.1038/s41598-017-08055-1:Beta-hydroxybutyrate, an endogenic NLRP3 infammasome inhibitor, attenuates stress-induced behavioral and infammatory responses )北海道大学の研究によると、ストレスを与えたマウスはautoreactive-pathogenic CD4+ T cellsが増え、脳内に微小炎症が生じて、それが内臓にも影響することを明らかにしました。(Arima et al. eLife 2017;6:e25517. DOI: 10.7554/eLife.25517)どちらも、ストレスによる微小炎症が臓器に影響を与えること、鳥取大学ではBHBがそれを抑えることを明らかにしました。BHBは日本ではダイエットサプリメントの商品名で βヒドロキシ酪酸とは全く関係ありません。しかし、欧米では βヒドロキシ酪酸がダイエットサプリメントとして取り上げられつつあります。BHBはブドウ糖不足状態(飢餓状態)の際に脂肪から合成して、エネルギー源として働くものですから、それがふえると脳はどう感じるのでしょうか?BHBを外因性に増やして、何が起こるのかは、ちょっと興味があるところです。めざといサプリメント会社が発売を計画している可能性があるかもしれません。
2017年08月27日
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日本版ニューズウィークに面白い記事が載っていました。特集 がん治療レボリューションで4つの記事が掲載されています。・宇宙研究者が挑む癌のミステリー・自力で探し出す最適な臨床試験・若い患者ゆえのニーズや苦しみを理解し支えたい・白血病のわが子を大麻で救った母の決断私が興味を持ったのが宇宙研究者が挑む癌のミステリーです。癌の研究が袋小路に入っているのではないかと考えたNCI(米国国立衛生研究所)が12の異分野からの癌研究に助成したことから表記の研究が始まりました。理論物理学者がその助成金によって立てた仮説が「癌は多細胞生物の一部が単細胞生物への先祖がえりが原因である」です。この仮説は2014年にヒドラ(単細胞生物から多細胞生物に進化を遂げた初期生物)にも癌が発生すること、(キール大学(ドイツ)進化生物学)がん細胞が単細胞生物に似ていることから提出されたものです。DNA複製の際のエラーが癌の原因との仮説はいろいろな証拠が出そろいつつあります。理論物理学者はDNA複製の際のエラーが起こったときに自己防衛のために単細胞化するという、初期の多細胞生物が持っていた防衛システムが、複雑な多細胞生物では癌につながっているとの仮説です。この仮説を確かめるのが先か、この仮説に従って薬剤を作成するのが先かの選択は当然後者です。低酸素でも細胞分裂が衰えないあたりが切り口かもしれません。閑話休題他の11施設からはなにも出なかったのでしょうか。
2017年08月02日
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イェシーバー大学のアインシュタイン医学校(ニューヨーク)のYalin Zhangらは視床下部に存在する幹細胞を他の中年ラットに移植すると長生きするという論文を発表しました。人間で果たして同様のことが生じるかどうかはこれからの研究によるとのことです。彼らの研究からこの長生きをさせる要素は性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)をコントロールしているマイクロRNA(彼らはhtNSCsと呼んでいます。)ドラキュラが若い理由に関す総説(人の若者の血中成分を老齢マウスに投与する実験に関する総説)がでたり結構若返りに関して突拍子もない研究が行われています。ケンブリッジ大学の Leonard Guarenteは “Living longer isn’t important if you’re not healthy,”「健康でなければ生きる価値はない・・・意訳しすぎですね)と述べています。健康であることが条件であるということです。今回の実験では運動能力があがり、長期生存が認められることから、この条件は満たしている可能性があります。しかし、誰の視床下部の幹細胞を取ってくるかの問題があります。動物のものを採取し、増やして移植して同じ効果が発現すれば人への応用は可能かもしれません。また、視床下部のマイクロRNAが主たる役割を果たしているのであれば、そのマイクロRNAが薬剤になる可能性があります。
2017年08月01日
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アストラゼネカは2017年7月27日、 MYSTIC試験(ヂュルバルマブ<免疫チェックポイント阻害剤>とトレメリムマブ<CTLA-4活性化剤>の併用とヂュルバルマブ単独と標準化学療法<プラチナ製剤中心>を肺がんに対する多施設共同無作為化非盲検国際試験)において標準治療に比べて併用群、単独群とも無増悪生存期間の延長を認めなかったことを報告しました。 試験は全生存期間を評価するために続行するとのことです。 肺がんの未治療患者を対象にしています。また、PD-L1が幹細胞の25%以上に発現していることを受け入れ基準にしています。 肺がんの免疫チェックポイント阻害剤が第一選択になり得るかに関してはPD-L1発現率が問題である可能性が高い可能性が示されていました。今回の試験はその条件を入れても第一選択にはなり得ないという結果です。 癌における標準治療はほとんどが併用療法です。標準治療よりも新薬の方が効くような感じがしますが、決してそのようなことはない可能性が高いことが示された試験の一つにMUSTIC試験はなってしまいました。 新薬は単剤で効果を確認することが普通です。ティーエスワンのように効果増強剤を配合したものはありますが、癌の世界では最初から併用を前提にしているものはありません。 高血圧などでは併用の利点が示されたときに合剤が発売されていますが、がん治療の場合にはそのまで進んだものはありません。 この結果を見る限りでは、薬価を取っていない免疫療法にさらに免疫チェックポイント阻害剤を併用することに関しては、少なくとも最初の治療では行うべきではないと考えるべきだと思います。現在、未認可の免疫治療に免疫チェックポイント阻害剤を併用するすれば素晴らしい効果があるかのような宣伝をしている医院も見かけますが、疑ってかかった方がいいようです。 大腸がんという適応外ですが、標準化学療法がしびれの副作用で、1剤減らしたところ再発、本人が他の化学療法を拒否したため、漢方薬を使用したところさらに悪化、放射線療法を行ったところ、症状は安定した、しかし患者の希望で免疫チェックポイント阻害剤を低用量投与したところ重症筋無力症を発病したという報告もあることから、自己免疫疾患の副作用は投与量に関係しない可能性も示唆されています。(ニボルマブ投与後に筋炎合併重症筋無力症を発症した 1 例、臨床神経 2017;57:373-377) 免疫チェックポイント阻害剤を最初に使うことと適応外の癌に使うことは避けた方がいいようです。標準治療によって、免疫機構が破壊されているから最初に使った方がいいのではという意見もありますが、現在のところ、それを支持するデータはありません。免疫チェックポイント阻害剤の最初の試験は、他剤無効あるいは再発の患者を対象としているので、そのような患者さんには有効である事は、無作為化比較試験で証明されています。(ただし、その試験は一つか二つであり、メタアナリシスや併合解析ではまだ証明されていないので、エビデンスレベルはIIです。) 標準治療に関しては欧米では複数の無作為化比較試験がたくさん行われ、エビデンスレベルがIとなっています。(日本ではスポンサーの問題で無作為化試験が一つ行われてればましレベルです)。 高薬価を問題にするのであれば、標準治療の素晴らしさを税金で日本人を対象に明らかにすることが結局、安く上がるような気がします。(小さな声でそのためには、治験の経験が多くて。4倫理性の高いお医者さんがもっと必要です)。
2017年07月31日
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岡山大学のプレスリリースによると、リバビリンが脂質生合成を抑制するという新しい機能を発見し、さらにその分子機序について解明したとのことです。文献はこちら。動物実験の結果ですので、人間で効果があるかどうかはまだ分かりません。2014年にカルニチンが脂肪肝炎のビタミンEと同じ程度の効果を示し、肝発現に関してはアルファトコフェロールよりも効果が高いという文献発表が行われていますが、いまだ臨床試験に入ったという話は聞きません。(プレスリリース、文献)人間での効果を試すためには動物での毒性試験、健康成人での第1相試験が必要です。しかし、リバビリンもカルニチンも既に製造販売承認を受けているので、安全性に関する動物実験と健康成人での第1相試験は省略できる可能性があります。(動物実験から推定される効果用量が、製造承認を受けている効果用量よりも高い場合には、第1相試験を行う必要があります)動物実験で最もコストがかかるのが毒性試験である事を考えると、既存薬剤の他の効果があった場合に開発にGoがかかりやすいと思いますが、実際に追加効能として認められた薬剤はほとんどありません。これは一つには効能追加によって、薬剤の薬価が上積みされる可能性が低いことから、長期使われていて、後発医薬品があるような場合には新薬開発費を回収できるような薬価が果たして算定されるかどうかはかなり望み薄です。従って、大学で旧来の医薬品の新効能が見つかっても、動物実験で終わってしまうケースが多い、スポンサーとしての製薬会社が手を出したがらないというのが実情でしょうか?
2017年07月30日
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塩野義製薬は2017年7月25日にS-033188という抗インフルエンザ薬の第Ⅲ相試験の成功をプレスリリースしました。対照薬はプラセボとオセルタミビル(タミフル)です。エンドポイントはインフルエンザ症状の罹病期間。プラセボに対して有意な罹病期間の短縮を示し、オセルタミビルとは有意差はありませんでした。(オセルタミビルと同等性試験になぜしなかったのかは現在のところ不明)。忍容性はプラセボと同等で、オセルタミビルよりも副作用の発現率は有意に低かった。さて、ここで考えるのは、耐性ウイルスの発現を防ぐためにS-033188は製造販売承認はとれるが、タミフル耐性ウイルスのパンデミック(世界的大流行)に備えて、発売は政府から抑えられるのではないか党いう想像です。現在、タミフルは政府としてパンデミックに備えて、備蓄が行われています。ここで、S-033188の耐性ウイルスの発現を抑えるために、タミフルなどが効果を示している間は備蓄のみにするという政策もありではないでしょうか。リスクを持たない人にタミフルを使ったためにタミフル耐性ウイルスを発現させたことから、新しい作用機序をもつS-033188は日本では発売しない方がいいという考え方です。日本では抗生物質の新薬がすぐに使用が広まり、現在、耐性菌の問題が大きくなっています。手順通りに使えば耐性菌が減るということが明らかになりつつあるので、インフルエンザで新薬の使用を広げることは得策ではないと考えます。インフルエンザの場合には罹病期間は3~4日程度で、タミフルを使うとそれが1日短縮するだけです。リスクのない大人に使うことは耐性菌を増やすだけと私は思っています。企業にとっては大きな収益を望めないことになるので、問題かもしれませんが、備蓄ということで薬価で政府が買うのならば、値引き交渉など必要ないのである意味初期投資が抑えられます。問題は市販直後調査が実施できないことです。第Ⅲ相試験のプレスリリースではタミフルよりも安全性が高いようですが、一桁違う人々に使用したときに重篤な副作用の発生を否定することはできません。それでも私は売るのは備蓄だけか、リスクの高い人に限るということにすべきだと考えます。(リスクの高い人での安全性はプレスリリースによればロシュとの提携下で、グローバル試験が実施中です)
2017年07月28日
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2017年7月14日の朝日新聞に「がん治療に使う免疫細胞を無許可で加工していたとして、厚生労働省は14日、再生医療安全性確保法に基づき、生命科学研究所(東京都千代田区)に、加工を停止する緊急命令を出したと発表した。命令は12日付。(中略) 加工物はアベを経由して各施設に提供されていた。厚労省は患者に健康被害が起きていないか、各施設に報告を求めている。さて、健康被害はどの程度まで疲労のでしょうか。過剰免疫による1型糖尿病の発生?そんなことよりも、病状の悪化も健康被害としてしっかりとひろう必要があると思います。厚生労働省のプレスリリースこの治療は他の治療に比べて、意味のあるものであるかに関しては全くデータがないに等しく、プラセボと比較試験を行うことが人道上問題があるのならば、PD-1抗体の併用と非併用群で比較を行うべきです。
2017年07月17日
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「高い抗がん剤使いません 効果同じなら安い薬を 日赤医療センター決定」という記事がありました。https://www.m3.com/news/general/543081?portalId=mailmag&mmp=MD170703&mc.l=232336859なんで類似薬効比較方式(I)で加算が全くない薬剤が高くなるのか不思議なので少し調べてみました。中医協新医薬品一覧表(平成29年5月24日)でのザルトラップの薬価算定方式が掲載されていました。薬価算定の基準となったのはアバスチン点滴静注用400mgでした。アバスチンの薬価は158,942円です。この価格から、外国価格の平均値(105,581円)で調整を受けてザルトラップ点滴静注200mgは153,409円と決定されています。どちらも4mg/kgで2週間に1回点滴静注なのに規格単位で算定したためにに実際の薬価は2倍近くになっています。がん患者さんの体重を50kgとするとアバスチン400mgは多すぎるので、100mgを2本使うことになります。そうすると薬価は41,738×2となり、ザルトラップは200m1本で153,409円となってしまいます。最高用量の規格を比較したことによる薬価算定の盲点でこんなに高くなってしまったわけです。アメリカは異常に薬価が高いので比較できませんが英国の85,739円が適正な薬価と思います。体重別の薬剤投与量がしっかり決まっているので、1本いくらの薬価算定はいかにも雑です。がん患者の場合には体重は50kg前後と考えられますが、無駄な薬剤を使わないために40mg単位で規格を作るべきではないでしょうか。再利用することはできないことから、必要量以上は捨てている場合が多いと思われます。以外とこのあたりを訂正することによって、少しはがんの治療費は減るのではないでしょうか。
2017年07月04日
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後ろ向き疫学調査かつ対照群の適切性が問題と発表内容に記載されているにもかかわらず「75歳以上のがんのがん治療はむだ」であるかのようなニュースになっています。75歳以上のがん治療の目的は何でしょうか?今回の疫学調査では延命効果となっています。このエンドポイントに関して疑問があります。腫瘍縮小効果があれば患者の生活の質は向上する場合があることは周知の事実です。当然既に栄養状態が悪ければ廃用症候群になる可能性があります、しかし前向き試験を行わないとこの結論はでません。一人一人のデータは残念ながらエビデンスレベルとしては最も低いレベルです。健康寿命が求められているのならば生活の質を指標にした前向きの調査あるいは比較試験を行う必要があると思います。
2017年06月02日
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毎日新聞の記事に「全隊員1割にPTSD、うつ 防衛省調査」があります。(http://mainichi.jp/articles/20170311/k00/00e/040/284000c)データをみると全自衛隊員のうつ傾向は海外派遣・国内災害派遣経験者に比べて多い数字になっています。例えば2015年度では回答数19.3万に対してうつ傾向があるとアンケートに答えた人は1.3684万人(7.1%)、海外派遣・国内災害派遣経験者は回答数7万3755に対して3820人(5.2%)となっています。これは海外派遣・国内災害派遣を行っていない人は12万人に対して1万人(8.3%)となります。海外派遣・国内災害派遣を命じられる人はもともとメンタルが強い人が派遣されると考えると、この数字も納得できます。軍隊の精神的ケアに詳しい福浦厚子・滋賀大教授(文化人類学)は「自衛隊は心身の強さに最大の価値を置く特殊な世界。心の悩みを隠さず書くことで不利益を心配する隊員もいるだろう。ケア充実には本当のことを話せる仕組みが必要だ」と発言されていると記事には記載されていますが、防衛白書にもメンタルヘルスの重要性は記載されていますし、その仕組みも(完全とは言えませんが)記載されています。この記事を書いた町田徳丈記者はそれぐらいは調べていると思いますが、一方の意見を代表する専門家の意見(しかも聞き取りだけで、それに基づく専門家の文献を読んだこともないでしょう、で結論めいた印象の文章で終わると専門家の意見に従って、決断したどこかの知事を批判できないと思います。
2017年03月12日
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2月14日にギリアド社が発売したB型慢性肝炎治療薬「ベムリディ錠25mg」は「テノゼット錠300mg」と有効成分は同じで、塩を変えることによって有効成分を1分子中に2個含み、有効成分量としては1/6で国際共同試験425例の無作為比較試験で非劣性を示し、同じ薬価で発売となりました。1分子中に2個有効成分を含み、プロドラッグとしての評価を受けています。有効成分が再審査期間中である事から、新医薬品としてでしか審査されることはありません。しかし、もし審査期間が終了して後発医薬品が発売できるようになっている場合にはどのようなことが考えられるでしょうか。有効成分が同一ですので、後発医薬品で用量を減らしているので、スーパージェネリックとして申請すべきでしょうか。あるいは有効成分の量が極端に減っているので、新医薬品として発売すべきなのでしょうか。医療費の保険財政を考えると、後発品で有効性加算を考えるという方法も考えられます。(今はそんな仕組みはありませんが)剤型変更は後発医薬品と同様の扱いを受けています。吸入剤に関してはデバイスによって吸入のしやすさが異なるので、使いやすくなれば元の薬剤のシェアを奪うことが可能です(供給体制が整っていることが大前提です)
2017年02月19日
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忘れたいことが多すぎているものまで忘れてしまうから なんてことはないでしょう。霜降り肉 考でも触れましたが、加齢によって筋肉内の脂肪が増えることが臨床的に明らかになっています。千葉大学のショウジョウバエを用いた試験ではインスリンのレセプター活性が脂肪によって低下することによって記憶力が低下することを示しました。インスリン受容体に関してはインスリンの効果がさまざまなところに影響を与えていることが最近明らかになっています。細胞に糖を取り込まないことが原因のような気がしますが、そのあたりはあまり検討されていません。各細胞内の糖の取り込み、代謝などが非侵襲的に見ることができるような検査機器が開発されなくては無理かもしれません。腸内細菌叢の研究やゲノム解析は新しい検査機器が開発されることによって、爆発的にデータが集まるようになっています。それと同じことが起こることを期待しています。遺伝子の生体に関する研究方法は、すべての遺伝子の働きが解明されればブレークスルーがくるかもしれません。けっこうゴミと思っていたマイクロRNAがいろいろな事象に関与しているのが分かってきていることと、環境によって(複写時のノイズも含めて)遺伝子は変化するのですから、SF的なことが現実になってくるかもしれません。
2017年02月16日
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PD-1陽性という縛りが効能についています。測定キットが同時に発売されます。薬価算定基準はオブジーボと類似薬効比較方式(Ⅰ)で有効性加算は行われていません。MSDは海外でおこなわれた試験でオプジーボが肺がんのファーストラインに既存薬との有意性を示すことができなかったが、キイトルーダは有意性を示したことから有用性加算(Ⅱ)に相当すると主張しましたが、当局は上記の試験は直接比較でないこと、オプジーボが腎細胞癌に効能を有していることから必ずしも有用とは言えないという見解から主張は受け入れられませんでした。PD-1が測定できるキットがある場合にはオプジーボにも縛りをつけるべきだと思います。肺がんでファーストラインで両者の差は、オプジーボがPD-1を測定しなかったのに対してキイトルーダはPD-1陽性患者に限ったからだと思います。オブジーボの審査報告書にはPD-1陽性率の問題を明らかにするようにとの指示があります。類薬は陰性では効果が低い可能性を明らかにしたのですから、早急に縛りをつけるべきだと思います。見解として腎癌はお門違いだと思います。抗生物質の場合には9割前後の有効率があるので、抗菌スペクトラムが効果の指標になりますが、どちらも完治が望めないのですから、単に臨床試験の優先順位の違いだけだと思います。
2017年02月09日
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各社のニュースでは、任意提出された尿からは覚醒剤が検出されたが、本人の尿と認めるための手続きが不十分で(まるでASKAさんは覚醒剤をやっていたが、裁判を維持することができないので)釈放されたとの報道が垂れ流されています。裁判中であっても、判決がでるまでは無罪が原則というのは間違っているのでしょうか。今回は無罪で釈放されましたでいいのではないのでしょうか。覚醒剤の場合には依存症になっていると、長い期間薬物を摂取しないことによる幻視や幻想が見られる場合があります。日本ではダルクが主体となって行動認知療法による治療が行われていますが、欧米では経口薬を使うなどをして薬物療法が行われている場合があります。戦後すぐでは覚醒剤は仕事を頑張るために経口剤として大手メーカーから販売されており、大層な売り上げを上げていました。その後、注射や鼻腔吸収など一気にカラダに入れる方法が広く伝わるようになり、依存症が問題となり、経口剤もそれに伴い中止になりました。歴史はさておき、テレビ報道は判決が確定するまでは無罪(現行犯は例外として)として扱うべきではないでしょうか。その代わり、有罪となった時点ですべての犯罪者とはいいませんが、殺人や殺人にいたる可能性のあるもの、現在の治療では直すことのできない病気が原因の犯罪については顔邪心を明らかにすべきだと思います。被害者の氏名、年齢は事故を除いて公表すべきでは無いと思います。外国における飛行機事故やテロ事件の場合には生存者、被害者ともに氏名、年齢を公表して、日本における家族に情報を伝えることは日本政府の義務だと思います。
2016年12月19日
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議員立法で、民進党の人も参加しているし、これから何をすればいいかのタイムスケジュール法案ぐらいで何をおたおたしているのか。今回のかけつけに関しても、前回デモにしっぽを振らずに、真剣に議論していた場合には、法律的に無理である事も定義できたはずですが。そこまで言って委員会でも内部の意見を統一すると党が割れるなどと揶揄されている状態をなんとかして欲しいものです。原発停止は党首が反対の知事を応援した限りは、原発停止、再稼働は認めないということでなぜ党内が統一できないのでしょうかね。再度の党首討論を要求しているようですが、幹事長にやってもらった方がいいかもしれません。
2016年12月11日
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テレビのニュースでも、大新聞の社説でもこの法案が通ればカジノが解禁されるかのような報道がなされてい明日。第二条 この法律において「特定複合観光施設」とは、カジノ施設(別に法律で定めるところにより第十一条のカジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者により特定複合観光施設区域において設置され、及び運営されるものに限る。以下同じ。)及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設であって、民間事業者が設置及び運営をするものをいう。第九条 カジノ施設の設置及び運営をしようとする者(当該カジノ施設の設置及び運営に係る事業に従事しようとする者を含む。)、カジノ関連機器の製造、輸入又は販売をしようとする者並びにカジノ施設において入場者に対する役務の提供を行おうとする者(以下「カジノ施設関係者」という。)は、別に法律で定めるところにより、第十一条のカジノ管理委員会の行う規制に従わなければならない。第十条 政府は、カジノ施設の設置及び運営に関し、カジノ施設における不正行為の防止並びにカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行う観点から、次に掲げる事項について必要な措置を講ずるものとする。 一 カジノ施設において行われるゲームの公正性の確保のために必要な基準に関する事項 二 カジノ施設において用いられるチップその他の金銭の代替物の適正な利用に関する事項 三 カジノ施設関係者及びカジノ施設の入場者から暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者を排除するために必要な規制に関する事項 四 犯罪の発生の予防及び通報のためのカジノ施設の設置及び運営をする者による監視及び防犯に係る設備、組織その他の体制の整備に関する事項 五 風俗環境の保持等のために必要な規制に関する事項 六 広告及び宣伝の規制に関する事項 七 青少年の保護のために必要な知識の普及その他の青少年の健全育成のために必要な措置に関する事項 八 カジノ施設の入場者がカジノ施設を利用したことに伴い悪影響を受けることを防止するために必要な措置に関する事項で、依存症は八に相当するわけです。その法案を作らなければIRなど許可しませんよということです。わが国でギャンブル依存症の率がずば抜けて高いのは子どもたちの目につくところにもギャンブル場(パチンコ)があるからです。また大人も入るためのハードルは非常に低い。ですから、パチンコもカジノ施設で行うことにすることによって、簡単には入れ無くすることが必要です。この法案をさっさと通して、野党は第十条に関する宿題を解消する案を、作り始めることが大事だと思います。依存症に関しての議論は、この法律が成立して初めて議論が可能となり、日本人は依存症に体質的になりやすいので、日本人は入場制限をするとか、日本人の依存症は、町中にパチンコがあるからなので、これを機にパチンコはカジノに限ることにするとか、スロットも同様。これならば応援しますけど。やり方が卑怯というなら、台湾国籍もあったことを、サポーター投票が終わってから明らかにするような党首の方がよっぽど汚い。
2016年12月09日
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