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当ブログ20日の欄に引用した「女性自身」、姜尚中・吉永小百合対談について、8月14日の東京新聞コラムは、次のように述べている; NHK朝の連続ドラマ「とと姉ちゃん」を毎日楽しみに見ている。人々の暮らしを大切にしよう、それが戦争を二度と起こさない道だという雑誌『暮しの手帖』(ドラマでは『あなたの暮し』)の理念は、戦後日本社会の出発点でもあった。 戦後70年を越え、日本は再びきな臭くなりつつあるが、まだその出発点が人々の脳裏に受け継がれているためだろう。連ドラでその時代を描くと視聴率が高いという。「とと姉ちゃん」も『サンデー毎日』8月14・21日号によると、平均視聴率22・8%と好調だ。 このところ、主役の姉妹が週刊誌の表紙やグラビアを飾ったり、「『とと姉ちゃん』高畑充希をビビらせる唐沢寿明の怒声」(週刊文春)など毎週のように話題になっている。 その主役の高畑充希さんが表紙を飾った『女性自身』8月23・30日号で、もうひとつ印象深かったのは「みんな、声をあげて!命が押し潰(つぶ)される前に」という姜尚中さんとの対談記事での吉永小百合さんだ。 吉永さんが脱原発や戦争反対の声をあげているのは知られているが、最近、発言のたびに内容が先鋭化し、ある種の覚悟さえ感じられる。 この対談でも「さようなら原発」の集会に一市民として何度か参加しているというエピソードを披露したほか、こんな発言もしている。「私が若いころに出演した映画『愛と死の記録』と、昨年公開の『母と暮せば』の2本をこの夏に都内の映画館で上映していただいたのです。その際、劇場の支配人が、新聞の取材に『反核や反戦という言葉を口にするのが、ためらわれるような時代になってしまった』と、答えていらして。そんな時代になったのか、とあらためてショックでした」 『女性自身』の記事では、前の週8月16日号の「金メダリストが堕(お)ちた”パチンコ蟻(あり)地獄”!」も面白かった。Qちゃんこと高橋尚子さんが11時間も連続でパチンコにふけっていたのを、記者が同じ店に張り込んで記事にしたものだ。 見出しはおどろおどろしいが、記者の直撃に「これ記事になるんですか!? やだ、もう(笑)」と応えたQちゃんが庶民感覚満載。改めて好感が持てた。(月刊『創』編集長・篠田博之)2016年8月14日 東京新聞朝刊 11版 27ページ「週刊誌を読む-覚悟を感じる戦争反対」から引用 雑誌『暮しの手帖』が創刊された頃は、世の中は悲惨な戦争を体験した人々が必死で生活を立て直す時代で、だれもが「もう戦争はこりごりだ」と考えていた時代でした。その戦争体験者の数が次第に減ってきて、今や戦争の「せ」の字も知らない人物が首相になり、自衛隊や警察官を賞賛する演説をすると与党議員が総立ちで熱狂的な拍手をする、反核や反戦という言葉を口にするのはためらわれる時代になってしまいました。この先、世の中が戦前に回帰するのか、もっと賢明な道を選択できるか、先人の戦争体験を正しく引き継いだ人々がどれくらいいるかにかかっていると思います。
2016年09月30日
きのうの欄に引用した11日付け「しんぶん赤旗」は、今回の和解交渉に尽力した弁護士で、中国人強制連行・強制労働事件全国弁護団幹事長の松岡肇氏と、和解に応じなかった団体に所属する中国人被害者のコメントを、次のように掲載しています;◆中国人強制連行・強制労働事件全国弁護団幹事長 松岡肇さん 三菱マテリアルは人権侵害を明確に認め、謝罪しました。過去3例の和解がありますが、人権侵害に踏み込んで責任を認めたのは初めてです。 与党の国会議員のなかにさえ、日中両国の関係改善のため「和解を生かし、解決していくべきだ」という意見があります。今回の和解の成立は、日本と中国に真の歴史和解を実現させる貴重な道筋です。 そもそも中国人の強制連行・強制労働事件は、外務省自らが作成した報告書があり、全く争えない事実です。 1995年から日本各地で15の賠償請求訴訟がたたかわれました。最高裁判所は2007年、西松建設事件に閲し日中共同声明(72年)で原告側が裁判上の請求権を失ったとして、被害者側の賠償請求を退けました。 しかしそのなかでは、国を含む関係者による「被害者救済に向けた努力が期待される」と付言しました。事実はすべての裁判所が認定しています。 政府は日中共同声明で「解決済み」とする姿勢をいまだに崩していません。しかし今回の和解を機に、政府の主導と責任で加害企業はもちろん、経済団体などの参加も得て、被害労工約4万人を対象とする全面解決にのりだすべきです。 ナチスが東欧の人たちを強制労働させたドイツでは、政府と企業が拠出する「記憶・責任・未来基金」を設立し(00年)、被害者に補償金を支払ってきました。 私たち弁護団はこの基金に学び、全面解決構想を提言(04年)しています。提言は日本政府と企業が責任を認めて謝罪し、その証しとして基金を設立し、その基金を生存労工または遺族に対する謝罪金のほか、事件の調査・研究・教育などにあてるとしています。◆1日中殴られ同胞は死んだ-裁判を通じて解決を求める 劉仕礼さん(90) 44年8月に河北省唐山市の礫(らん)県で日本軍に捕まり、北海道の三菱美唄炭鉱に連れてこられました。中国人300人が宿舎に入れられ、100人ずつ3班に分けられました。私は第3班に所属し、「73番」と番号で呼ばれました。 炭鉱での仕事はきつく、毎日12時間、1日の休みもなく働かされました。1日3回の食事はトウモロコシとジャガイモ、カボチャを混ぜて作ったマントウ2つ。皆やせて骨と皮だけになりました。 冬でも薄い服しかありません。300人のうち30人以上が栄養失調や過労で死にました。 中国人は「苦力(クーリー)」、奴隷のようなもので、日本人の監督官の態度は横柄で「将校」のようでした。冬のある日、逃げようとして捕まった楊さんが、裸で縛られて、みせしめとして皆の前で棒で殴られました。殴り疲れると中国人に殴らせました。一日中殴られた楊さんは痛さで苦しみながら翌日亡くなりました。 「将校」のような態度での和解は受け入れることはできません。金額が問題なのではなく、日本政府と加害企業による誠意ある謝罪と賠償が必要です。裁判を通じて、正義を取り戻したい。(河北省・唐山)2016年9月11日 「しんぶん赤旗」日曜版 18ページ「政府の責任で全面解決を」から引用 大企業を優遇することによって日本経済の景気浮揚を企図する安倍政権は、単に税制で優遇するだけではなく、これらの企業が中国市場で仕事をしやすくなるように環境を整備することに尽力するべきです。したがって、上の記事で松岡弁護士が提案するように、過去の負の遺産を安倍政権によって一気に解決することができれば、日本企業のイメージチェンジができて、安倍さんが大事にする大企業もますます発展し、わが国の経済繁栄に大きく貢献することになり、永くわが国の歴史に名を残すことになると思います。安倍首相の英断に期待したいと思います。
2016年09月29日
戦争中に日本政府が中国人労働者を強制連行して重労働をさせた事例について、今年、加害企業である三菱マテリアルが被害者団体と和解したことを、11日の「しんぶん赤旗」は次のように報道しています; アジア・太平洋戦争中、日本政府は労働力不足を補うために中国人や朝鮮人を強制的に連れてきて、日本企業の炭鉱や建設現場などで過酷な労働を強いました。その数は中国人だけでも約4万人。今年6月、中国人を強制的に働かせた加害企業の一つ、三菱マテリアルが中国人被害者と和解しました。被害者の思いは-。<本吉真希記者><中国で小林拓也記者>◆1団体は拒否 大手金属メーカー・三菱マテリアル(本社・東京)は6月1日、中国の元労働者(労工)らと北京で和解しました。三菱側が被害者1人あたり10万元(約170万円)を支払います。(骨子別項) 和解にあたり同社は「謝罪文言」を発表しました。「人権が侵害された歴史的事実を率直かつ誠実に認め、痛切なる反省の意」を表明。「重大なる苦痛及び損害を被った」ことに対し「歴史的責任を認め」「深甚なる謝罪」の意を表しました。 また「二度と過去の過ちを繰り出さないために、記念碑の建立に協力し、この事実を次の世代に伝えていくことを約束」しました。 和解の対象となったのは三菱マテリアルの前身、三菱鉱業(当時=炭鉱・金属鉱業)の下請けを含む関係の事業場で働かされた中国人元労働者3765人です。その数は日本国内へ強制連行された中国人の約10%にあたり、人数としては最大規模。三菱側は既に11人の労工本人に支払ったとされています。 被害者・遺族の6団体のうち、5団体が和解を受け入れ、残る1団体は謝罪文などに不満があるとして拒否しました。◆中国人強制連行・強制労働 外務省の「華人労務者就労事情調査報告書」(1946年)によると、アジア・太平洋戦争中、3万8935人の中国人が強制連行されました。35企業が経営する135事業場(炭鉱、港湾、発電所など)で重労働を強いられました。6834人(59年、厚生省)が病気や落盤などの事故で命を落としました。◆和解の骨子▼人権侵害の事実と歴史的責任を認め、深く謝罪▼謝罪の証しとして被害者1人あたり10万元を支払う▼旧三菱鉱業の事業所跡地に記念碑を建て、追悼事業を行う▼所在が未判明の元労働者の調査を行う▼和解事業を行うための基金を設立する2016年9月11日 「しんぶん赤旗」日曜版 18ページ「中国人強制連行、謝罪し、『次世代に事実伝える』」から一部を引用 日中政府間の合意では、中国政府は日本側に賠償を求めないということで、その代わりに日本政府は多額の経済援助を行って、中国政府はそれで納得したのでしたが、実際に被害を受けた本人とその遺族は、それでは納得がいかず、三菱マテリアルとしても、実際に中国で商売をする上で、そういう「問題」にフタをしたままでは、なかなか仕事がやりにくいという事情があって、この際、悪かったものは素直に「悪かった」と謝罪するという、極めて当たり前の対応をとったのは当然であったと言えます。他の企業もこれを見本として努力を積み重ねることによって、真の日中人民の和解がもたらされると思います。
2016年09月28日
アメリカに追随して軍隊を送りイラクを侵略したイギリスは、あれが正しい戦争だったのかどうか、7年の歳月をかけて検証し、今年の7月にその結果が公表されました。報告書は6400ページにのぼる膨大なものですが、8月7日の「しんぶん赤旗」は要点を次のようにまとめています; 英国のイラク戦争参加を検証する英独立調査委員会(チルコット委員長)の報告書が、7年の作業を経て、ついに公表されました(7月6日)。全12巻、約6400ページの膨大な報告。「イラク戦争を強行する必要はなかった」と結論づけました。報告の注目点は-。(坂口明、田中一郎記者)<誤り1>脅威あおって開戦▽開戦前、イラク政府とテロ組織アルカイダの「協力関係」を誇張▽大量破壊兵器を保有、開発していると信じ込む 「報告書は、イラク戦争に反対した世界中の人々が正しかったことを示しました」 米国のイラク反戦運動をリードしたシンクタンク・政策研究所のフィリス・ベニス研究員は南アフリカのラジオ番組で語ります。 注目点の第一は、イラク戦争の開戦の口実の検証です。 2001年の9・11テロ後の「対テロ戦争」の新段階として03年に始まったイラク戦争。国連の承認もない先制攻撃の戦争でした。英国は米軍に次ぐ兵力(最大4万6千人)を投入。09年の撤退までに「英国市民200人以上、イラク人15万人以上」(チルコット氏)が犠牲となりました。 開戦の口実とされたのが、イラク・フセイン政権の大量破壊兵器(WMD)の脅威でした。報告書は、当時のブレア首相が、この脅威を誇張していたことを解明しました。 ブレア氏は「イラクのWMDがテロ集団と結びつく危険」を強調。「両者の結合の可能性が英国にとり現実的な現在の危険だ」(03年3月18日)と、開戦承認を議会に迫りました。 ところが報告書は▽ 開戦前に真情報機関が、イラク政府とテロ組織アルカイダの「相互不信」から両者の「協力はありそうにない」と指摘していた▽ 両者の結びつきの弱さはブレア氏も認めていた-ことを示しました。 報告書は、政府と情報機関で▽イラクはWMDを保有、開発していると深く信じ込んでいた▽イラクがWMDを持っていない可能性は検討されなかった-と指摘。「外交解決の選択肢をくみ尽くさず、”最後の手段として軍事行動しかない”段階に至らない」まま開戦が強行されたことを浮き彫りにしました。<誤り2>対米追随が最優先▽首相が米大統領に「何があっても支持する」と手紙▽独仏は開戦に反対したが対米関係は悪化しなかった 第二の注目点は、ブレア首相がなぜ、そこまでして開戦に踏み切ったのかの検証です。 報告は「イラク問題で米国を全面支持しなければ英米関係が損なわれるとの懸念」から対米追随を最優先させる姿勢が「決定的要因」だったと指摘します。 それを端的に示すのが、報告書で初公開されたブレア氏の02年7月28日のブッシュ米大統領宛て書簡です。書き出しは「何があっても私はあなたを支持する」。結びで「来年1~2月」開始を想定した「軍事計画」を提案し、「われわれができるどんな方法でも(米国を)支持する」と約束していました。 イラク戦争での対米追随を露骨に誓約した重大な書簡。ストロー外相やフーン国防相にも諮らずブッシュ氏に送られました。 独仏両国は開戦に反対しました。しかし、その後の両国の対米関係への永続的影響はなかったと報告書は指摘します。「英国がイラク問題で(米国と)異なった立場を堅持しても、対米関係の根本的・永続的変化をもたらさなかっただろうと考える」と述べます。<誤り3>政治的解決を放棄▽多数の国が「全面的・効果的な武装解除は査察で平和的に達成すべき」と主張▽「軍事行動はテロの脅威を高める」と英情報機関が事前に警告 第三の注目点は、軍事行動によらない政治的解決が可能だったかの検証です。 イラクの大量破壊兵器については1991年の湾岸戦争後、国連機関による現地査察が続いていましたが、98年に中断。米英両国が空爆を強化し、査察は不可能になりました。 9・11テロ後にWMD問題が強調されると、多数の国は「全面的・効果的な武装解除は査察で平和的に達成すべき」「武力行使の条件は満たされていない」(03年2月10日の仏独ロ3カ国宣言)との立場を支持しました。報告は、国連の武力行使容認を得ようとする英政府の活動が破綻し、米英両国が孤立する過程を詳述しています。◆「世界最悪のテロリスト」 報告書によれば英情報機関は「アルカイダは西側権益への最大のテロの脅威だ。対イラク軍事行動で脅威は高まる」(03年2月10日)などと警告していました。過激武装組織ISはイラク戦争後の混乱から生まれました。 戦死した英兵179人の遺族からは「ブレアは世界最悪のテロリストだ」とし、その戦争責任を追及する動きが起こっています。<日本は>報告書たった4ページ イラク戦争の検証は、米国、オランダ、オーストラリアでも実施されました。03~09年に自衛隊をイラクに派兵した日本では、民主党政権下で外務省が12年に検証結果をまとめました。ところが公表されたのは、わずか4ページの概要だけです。 内閣官房副長官補として官邸でイラク派兵の実務責任者だった柳沢協二さんは、イラク戦争検証のシンポジウム(7月16日)で、こう指摘しました。 -日本は、イラク戦争でブレア首相が失敗した論理を繰り返しているような気がする。 -自衛隊のイラク派遣は、米国との良好な関係を維持するために、米国が望む派遣をした。イラクをどうするかでなく、自衛隊の派遣そのものが目的だった。 -日本でイラク戦争支持や自衛隊派遣が検証されないのは、「米国の支配する秩序が日本にも望ましく、米国が秩序を守るために戦争するのは正義だ」という考え方があるからだ。米国が戦争の判断をするのであり、その正否は日本が言う話ではないとの認識がある。2016年8月7日 「しんぶん赤旗」日曜版 18ページ「イラク戦争正しくなかった」から引用 自国政府のことについて、客観的で公正な検証を行ったイギリスは、さすがに立派な国です。それにひき換え、わが国の「検証」の報告書が4ページとは、あまりにも情けない話です。やはり当時の民主党は、政権担当に慣れていなかったと思われますので、ここは経験十分な自民党が検証をやり直して、見本を見せれば、自民党の株はぐっと上がるのではないでしょうか。自衛隊をイラクに派遣するときの小泉首相の国会答弁は、いろいろと問題があったことが思い起こされます。是非、徹底検証をしてほしいと思います。
2016年09月27日
『大本営発表』を出版したフリーの歴史研究者、辻田真佐憲氏について、11日の「しんぶん赤旗」は次のように一問一答を掲載している; 71年前の日本の戦争で、全滅を”玉砕”、撤退を”転進”と言い換えて国民をだまし、被害と苦しみを拡大した日本軍の「大本営発表」。なぜそんなことになったのか。フリーの歴史研究者、辻田真佐憲さんが『大本営発表 改悪・隠蔽・捏造の太平洋戦争』で迫りました。(神田晴雄記者) <帝国陸海軍は本8日未明西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり> テレビや映画でよく聞く太平洋戦争開戦(1041年12月8日)を告げる大本営発表です。 大本営とは作戦や用兵を担当する戦争の司令塔です。そこが発表する戦局情報が、戦果は過大、損害は過小でした。 たとえば太平洋戦争の分かれ目の一つとなったミッドウェー海戦(42年6月)。日本軍は空母4隻と多数の熱練パイロットを失うまさかの大敗北を喫します。しかし発表は「空母1隻喪失、同1隻大破」。 報道部の発表原案は「空母2隻沈没、1隻大破、1隻小破」でしたが、作戦部や海軍省軍務局が「国民の士気が衰える」と反発。関係部局のバランスを図って落としどころを探った結果でした。 「大本営の発表はいろいろなセクションに決裁をとります。そのさい口を出されて赤字を入れられる。特に負け戦の場合は損害の責任を問われたくないので過小の発表になりました。小役人の集合意思みたいなものです」 陸軍と海軍とが、陸軍の中でも参謀本部と陸軍省が、参謀本部の中でも作戦部と情報部がバラバラという、「日本軍の組織間の不和対立」が一つの原因だと指摘します。 二つ目は情報軽視です。 「戦果の水増しは情報の不足によるものです。高速で飛ぶ飛行機から眼下に見える艦(ふね)は粒です。どんな艦が沈められたかは熟練パイロットでなければわからない。その熟練パイロットが撃ち落とされ、未熱なパイロットによる精度の低い情報が上層部に上がってきたのです。しかも日本軍は敵の情報を集めようとしなかったから、現場からの情報をウソだと言えるる根拠がありませんでした」◆現代への教訓 今日に教訓を投げかけているのが軍とメディアの一体化です。 「メディアは戦争中、報道合戦になります。軍に協力してもらった方が取材しやすいので軍に近づいていきました。軍の方もメディアを統制したいという狙いがあります。勝手に作戦を発表されては問題です」 本書には、新聞社と軍の癒着を表す「宴会疲れ」(岡田聴・日本産業経済記者の証言)という言葉が出てきます。軍の報道部員が新聞社や雑誌社に料亭へ何度も誘われていたという事実です。 「こんな状態では軍の発表に疑問を感じても、批判的な記事を書きようがありません。メディアがチェック機能を棄たさなくなれば国民に大事なことは伝わりません」 ひるがえって安倍晋三政権による「公正中立」を標ぼうした報道への介入を危惧しています。 「電波の停止は戦前の新聞に対する用紙供給停止を思い起こさせます。政権・与党に『公正中立』が判断できるわけがありません。報道への介入の先に『大本営発表』が見えてきます」 本書は発売1カ月で4刷りを重ねました。 「うれしいですね。この本が”大東亜戦争は正しかった”というトンデモ歴史観を改める一助になれば」2016年9月11日 「しんぶん赤旗」日曜版 29ページ「『大本営発表』国民だました軍と報道の一体化」から引用 71年前に終わった戦争ですが、まだまだ発掘されていない史料がたくさんあるようですから、今後も研究が進めば、もっとリアルな戦争をした時代の世の中の様子が分かってくることと思います。物資が不足した戦時中は、紙の配給を止められれば死活問題だった新聞社が、容易に軍になびいてしまったのは不幸なことでした。今日、電波の管理が政府の手中にあるのも、一歩間違えば戦前と同じ事態を引き起こしかねないという点に、私たちは十分注意する必要があると思います。ちなみに、「大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争」は幻冬舎新書で929円です。
2016年09月26日
この夏に公開された忘れてはならない映画、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」について、映画評論家の石子順氏は7月31日の「しんぶん赤旗」に、次のように批評を書いています; 「ローマの休日」の脚本家がダルトン・トランボ(1905~1976)だったことをご存じだろうか? トランボに関わる映画を、その没後40年たってから見ることができて感動だ。先人の苦難をとらえたジェイ・ローチ監督に感謝したい。 米ソ冷戦激化で国家権力が47年から本格化させたハリウッドの”赤狩り”。最初の公聴会に喚問され、証言を拒否して告訴された10人の映画人の先頭にいたのがトランボだ。 トランボを日本に招こうとした企画があった。トランボが39年に書いた反戦小説『ジョニーは戦場へ行った』を、70年に彼が自己資金で初監督した。71年カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞。日本ヘラルド映画が日本配給権を獲得し、トランボの来日を要請した。トランボからは「パピヨン」の脚本を執筆、撮影中は国外へは出られないので残念という返事がきた。 「ジョニーは戦場へ行った」では第1次大戦中、砲弾で両手足、アゴ、聴覚、視覚を奪われた兵士が、暗黒の中で看護師との交流から頭でモールス信号を打ち意思表示をしはじめる。回想はカラー、現実は白黒でトランボの演出と画面構成が見事な人間賛歌となり、ベトナム戦争への反戦アピールをこめていた。73年に日本で公開されてヒットした。 映画「トランボ~」は長年トランボや関係者に取材して書かれたブルース・クックの本が原作。トランボ(ブライアン・クランストン)を追いつめていく政治状況と、それに抵抗しつつ、復権していく家族の映画になった。トランボはジョニーのように砲弾で身体の自由を奪われたのではないが、反共、赤狩りという政治的偏見の暴力で口も手も人間の尊厳も、地位も収入も仕事も奪われ”ジョニー状態”になったのだ。監獄で裸にされ看守の命令どおりすべてを見せる屈辱。看守を見続けるトランボの目には、この逆境を逆転させていこうとする男の意志があった。◆自由の貴さ描く「ローマの休日」 映画として怒りがある。下院非米活動委員会の”共産主義者がハリウッドを占領している”と称しての”赤狩り”審問。憲法をもとに証言を拒否したものは追放と投獄だ。”赤”を追及した委員長が脱税で逮捕されトランボと監獄で顔を合わせる。ジョン・ウェインの反共ぶり。女性の映画コラムニスト、ヘッダ・ホッパー(ヘレン・ミレン)のトランボ敵視。デマと脅迫で仕事を奪う”正義”。名画を売って裁判資金をトランボに提供した俳優まで仲間を裏切る。 映画として壮快である。古代ローマの奴隷の反乱を描く「スパルタカス」の脚本を、カーク・ダグラスが政治的圧力をはねのけてトランボに依頼してくる。偽名でのB級映画の脚本で生活を保ち、映画人仲間も助けていたトランボの才覚と実行力。 父と娘との対話が意味深い。対立もするが父に学んで黒人の公民権運動に参加していく娘。トランボは家族を奪われなかった。妻クレオ(ダイアン・レイン)の賢さと強さ。トランボに脚本を書くエネルギーをもたらし、偽名で仕事をしていたトランボの、本名を取り戻していく十数年の闘いを支えた。 トランボは「ローマの休日」で王女の”自由の貴さ”を描いた。「黒い牡牛(おうし)」では黒い牡牛をブラック・リストにのせられた自分たちに模した。闘いぬく牛に観衆が共感し助命を叫ぶラストに生きる希望をこめた。この2作には偽名で書いたトランボにアカデミー賞を与えざるをえない力があふれている。 映画界を追放されても闘い続け復権した男のこの映画はいまの日本で必要だ。日本国憲法の精神を否定して人間を人間として認めない勢力の横暴、戦争法強行という時代に、生きぬく励ましを与え、勇気が湧いてくる映画だからである。(いしこ・じゆん:映画評論家)2016年7月31日 「しんぶん赤旗」日曜版 29ページ「赤狩りと闘いぬいた男」から引用 わが国に民主主義をもたらしたアメリカも、一皮むけばこのような人権蹂躙が起きるということは、民主主義の実践が如何に難しいか、という教訓です。つい最近も、ニューヨークの高層ビルをテロリストにやられたからと言って、何の関係もないイラクに因縁をつけて侵略し、そのための混乱がいまだに収まっていないという事態を引き起こしています。そういうアメリカに、憲法を曲げてまで自衛隊を差し出すという安倍政治を、私たちは許してはならないと思います。
2016年09月25日
ホームページには「盛り土をしたので安全です」と堂々とアピールしていたのに、実はその「盛り土」は虚偽だったことが発覚した築地市場移転問題について、メディアはどのように報じたか、元ワイドショー・プロデューサーの仲築間卓蔵氏は、11日の「しんぶん赤旗」コラムに次のように書いています; 11月7日に予定されていた築地市場の豊洲移転。小池百合子東京都知事は「移転延期」を表明(8月31日)しました。理由は「安全性への懸念」「巨額かつ不透明な費用」「不十分な情報公開」です。 日本共産党都議団が談話を発表したように、これは市場関係者や消費者団体などの都民の世論を受けたものであり、重要です。今後必要なことは、山積する問題の抜本的な検討をおこない、移転中止を含め、最善の解決方法を選ぶことです。テレビはこの問題をどう報じたのか-。 3日の「ウェークアップ!ぷらす」(日本テレビ系)は、キャスターの辛坊治郎氏が、「(予算が)膨れ上がる向こう側に一部都議の利権があるのではないか、との声もある」と指摘しましたが、それ以上は暗み込まず-。橋本五郎・読売新聞特別編集委員は、「安全性が確保されれば、こういう手順で進みますよと示してくれないと、準備している人たちは困る」と移転賛成派を代弁します。 築地移転を急ぐ背景に、築地市場の跡地が東京五輪に向けてつくる環状2号線の通り口になる、という問題があります。4日の「サンデーモーニング」(TBS系)では、コメンテーターの安田粟津紀さん(フォトジャーナリスト)が、「オリンピックへの影響を懸念する声もあるが、オリンピックは短期的なこと。長い視点で見据える局面だ」と。 寺島実郎氏(多摩大学学長)のコメントも的を射ていました。「築地移転問題は、不透明感が漂うので今回の延期はおおいに納得いく。ただ移転延期というと、普通は計画の見直しか中止。時間を後ろにずらすことだけで終わってしまうのか。一種の手の込んだ儀式に終わらないように。われわれがじっと見つめておくべきだろう」 メディアの役割は、継続した監視。小池知事の動向、メディアの対応ぶりに今後とも注目です。(なかつくま・たくぞう=元ワイドショー・プロデューサー)2016年9月11日 「しんぶん赤旗」日曜版 35ページ「メディアをよむ-築地問題の今後に注目」から引用 聞くところによれば、豊洲の市場予定地は以前は東京ガスの工場があって、石炭を加工して天然ガスを製造する仕事をしていた土地で、ベンゼンやらヒ素やら猛毒が地面にしみ込んでいるので、東京都に売却するに当たって東京ガスは「くれぐれも学校や病院のような、健康に注意が必要な施設には使用しないでほしい」という申し入れを書面で提出していたそうです。にも関わらず、「学校や病院」どころか、もっと厳しい環境基準が要求される食品市場に使うことを決めた東京都議会の責任は重大です。辛坊治郎氏は、一部の都議の利権を指摘していますが、これは単に指摘して終わりにしないで、是非真相を追究するべきです。この事業で多大な利益を得るのは建設会社で、この事業を推進するには与党の賛成が必要で、全与党議員に号令をかけて「豊洲案」に賛成票を投じさせることができる有力議員という条件付けで検索すれば「怪しい議員」はすぐに浮上することでしょう。その議員に、豊洲で稼ぎまくった建設会社から、どの程度の政治献金が流れたか、裏金はどうなのか、洗ってみる価値はあると思います。こうなったからには、オリンピックどころではありません。徹底究明を希望します。
2016年09月24日
世論の強い反対にあって、これまで3回も廃案になった共謀罪法案を、安倍政権はさらに内容を改悪して再提出しようと画策している。この問題について、11日の「しんぶん赤旗」は、次のように報道している; 実際の犯罪行為がなくても相談し合意しただけで犯罪とされる「共謀罪」法案が、装いを変えて再び国会に提出されようとしています。世論の強い反対で過去3回も廃案に追い込まれた同法案。自民党の二階俊博幹事長は4日のテレビ番組で、準備が整えば臨時国会に提出する意向を示しました。 安倍政権は今回、共謀罪の名称を「テロ等組織犯罪準備罪」と変更。「テロ対策」が目的であるように装っています。 過去の法案は適用対象を「団体」とし、犯罪を話し合い合意(共謀)しただけで処罰できました。このため、広く労働組合や市民団体、会社組織も対象となり、例えば、仕事仲間と飲酒中に「上司が気に入らない。殴りたい」「そうだ。殴ってやろう」と会話しただけで犯罪になる、などと厳しく批判されました。 今回はそうした批判を意識して、共謀罪の適用対象を「組織的犯罪集団」に絞りこみ、共謀だけでなく、具体的な「準備行為」が行われることを処罰の条件に加えました。 しかし、何が「組織的犯罪集団」にあたるかは、捜査当局の考え一つ。いかようにも広げることができ、テロ組織や暴力団に限られません。「準備行為」も条文上は「資金又は物品の取得その他」とされ、どうにでも解釈できるようになっています。 共謀罪を適用する範囲も懲役・禁錮4年以上の犯罪で、過去の法案と同じ。日本弁護士連合会によると、その犯罪数は600を超えます。テロのような重大犯罪だけでなく、つり銭詐欺やキセル乗車(詐欺罪)、万引き(窃盗)など、決して凶悪とはいえないような犯罪まで広く含まれます。 日本の刑法は、犯罪が実行され、結果が発生した場合に罰する「既遂」処罰が原則です。しかし、共謀罪は具体的な行為がなくても犯罪について話し合い合意しただけで処罰されます。これは「危険な意思」=内心を処罰するようなものです。 人と人の意思疎通が犯罪となってしまうため、盗聴(通信傍受)や日常行動の監視をはじめ、個人のプライバシーに踏み込み、侵害する捜査手法が横行することになります。 実際、安倍政権のもとで、電話や電子メール、SNSにいたるまで、捜査機関が第三者の立ち会いなく監視できる盗聴法大改悪が、今年の通常国会で成立しました。 参院選では、野党候補の支援団体の出入りを警察が隠し撮りしていたことも発覚。無法な監視捜査はいまでも行われています。 「テロ」を冠して罪名を変えたところで、市民弾圧法の本質は何も変わっていません。 メディアも「この政権が『共謀罪』を手中にする危うさも考えたい。民主主義を掘り崩す制度は要らない」(琉球新報)、「捜査当局による乱用の懸念は消えない」(信濃毎日新聞)などと批判しています。 安倍政権は7月の参院選で、共謀罪導入を公約すらしていません。選挙が終わった途端に悪法を持ち出すやりかたは、まさに「だまし討ち」です。 日本共産党の小池晃書記局長は「安倍暴走の一つひとつを、幅広い国民と力を合わせ、国会内外のたたかいでも、国会論戦でもストップさせるために全力をあげる」(8月29日の記者会見)と表明しています。2016年9月11日 「しんぶん赤旗」日曜版 2ページ「『テロ対策』装い市民弾圧」から引用 今回の共謀罪法案提出にあたって、安倍政権は過去3回の失敗に学び、法の適用範囲を「組織的犯罪集団」に限定する、という条件をつけて、これなら労働組合や市民団体は除外されるので、一般国民から批判されることはないはずという計算のようです。しかし、実際に法案に「一般の労働組合や市民団体には適用しない」などという文言が明記されるわけでもなく、何が「組織的犯罪集団」に相当するかは警察の判断しだい、ということでは、政治的主張を表現するデモであっても「交通を妨害することを狙った犯罪行為」と認定したと言われ、こういうことを画策する団体は「組織的犯罪集団」だ、と言われれば、もはや我が国の民主主義は終わりです。したがって、こういう法案は廃案にする以外に道はありません。
2016年09月23日
関西学院大学准教授の貴戸理恵氏は、神奈川県相模原市の障害者施設で起きた大量殺人事件について、8月7日の東京新聞で次のように論評している; 相模原の知的障がい者施設で利用者19人を刺殺する事件が起きた。この施設の元職員である加害者は「障害者なんていなくなればいい」「意思疎通ができない人たちは幸せをつくれない」などの発言を繰り返しているという。 このような差別を許す社会であっては絶対にならない。今、あらためて言葉にする必要を強く感じる。「いない方がよい命」などない、と。障害の有無にかかわらず、ただ「生きること」自体が尊いのだ、と。 加害者の差別発言を「身勝手な理由」など個人の異常性に帰する報道もある。だが、「役に立たない人間は価値がない」というメッセージは、この社会にあふれている。たとえば、今野晴貴さんの著書「ブラック企業」には、新入社員を「会社の利益にならない人間以下のクズ」などと罵倒する会社役員が登場する。ここまででなくとも、就職活動などを通じて「能力の低い人間は競争に負けて当然」とする自己責任論を内面化していく若者は、ありふれた存在だ。こうした考え方と「役に立たない存在は生きる価値がない」とする発想までの距離は近い。 「何かができる・できないにかかわらず、生きること自体が尊い」という価値を社会で共有する倫理的な態度として選び取り続けたい。これは絵空ごとではない。 事件の加害者は「意思疎通のできない人」を狙ったというが、「意思疎通ができない」かに見える存在は、障害がある人だけではない。たとえば、赤ん坊や老人。生まれ来ては死にゆくそうした人を受け入れずには、人間の社会は回らない。もっといえば、自然の猛威や豊かさなど、世界はそもそも意図を解釈できないもので満ちている。人間中心の思考と能力主義に侵された私たちは、まずそのことを認識しなおす必要がある。 「意思疎通」とは何かという問題もある。幼子と毎日触れ合う保育者は、泣き方ひとつで何が不快か聞き分ける。介護者は利用者のまばたきや足の指の筋肉の動きによってその意思をくみ取る。「意思疎通」の成立は、情報を発する人の「能力」だけでなく、受け手の「聞く耳」や「見る目」にもかかってくるのだ。 確かに、知的障害などのため「意思疎通に人一倍の時間と労力がかかる人」はいるだろう。それならば、周りが時間と労力をかけること、またそれを可能にするゆとりを持つことで対応できる。ひとりの人間の存在の重みを、効率の良さなどよりも大切にする社会をめざせばよい。 「生を肯定する倫理へ」を著した野崎泰伸氏は、「障害者の問題は(私たち)の問題である」としながら、「障害があるだけで人間扱いされないような社会に、あなた自身も、私も住んでいることを、あなたや私はどう考えるのか」と問う。それを嫌だと思い、変えたいと思う人は、本人と家族だけではないはずだ。 事件を受けて、知的障害がある人と家族の団体が声明を出した。「もし誰かが『障害者はいなくなればいい』なんて言っても、私たち家族は全力でみなさんのことを守ります」 本来ならば、私たちの社会の代表が言わなければならないのだ。「差別は絶対許しません。社会として全力で守ります。安心して、堂々と生きてください」と。(関西学院大学准教授)2016年8月7日 東京新聞朝刊 11版S 4ページ「時代を読む-生の無条件の肯定、今こそ」から引用 この記事は、相模原で起きた事件について重要な問題提起をしているように、私には思えます。この記事が指摘するように、事件を起こした青年は障害者を「意思疎通ができない人」などと考え、障害者に対する理解がまったくないことが分かります。おそらく、何度も一般企業の就職試験にチャレンジして、そのたびにふるいにかけられて、振り落とされるたびに「おまえは価値のない人間」という烙印を押された気分になったのではないでしょうか。そういう人間が最後にたどり着いたのが「障害者施設への就職」で、就職してみたら「なんだ、オレよりも価値のない人間がいるじゃないか」と、間違った「自信」を回復したのではないかと思います。しかし、本来障害者施設で働く人は、専門職として一定の知識と技能を身につけるべきで、経費削減を優先して経営を民営化し、職員は「派遣社員」でまかなうなどという「経済優先」の政策がもたらした弊害であって、このような悲惨な事件を生んだ行政の責任こそ問われるべきではないかと思います。
2016年09月22日
世の中が危険な方向に傾く中、野党共闘が小さいながらも成果を上げたことについて、新聞ジャーナリストの阿部裕氏は、8月7日の「しんぶん赤旗」に次のように書いています; 大量殺人、無差別テロ、ヘイトクライム(憎悪犯罪)の横行-世界各地で排外的極右が台頭する中、日本の政治や社会の動向もこうしたことと無縁ではありません。 先の参院選で改憲勢力が3分の2を占め、東京都知事選でも日本会議議連メンバーで新しい歴史教科書をつくる会が推した小池百合子氏が当選しました。 こうした結果だけ見ると、「喜らしや雇用、人権はどうなるのか?」と危機感を募らせる人もいます。 しかし、参院選1人区の沖縄や福島はじめ東北被災3県では「自民全敗」「野党統一候補が全勝」(河北新報、福島民報)です。現職閣僚を破るたたかいの成果と教訓を全国に発信し、共有したい。 さらに新潟や長野のように、定数削減で2人区から1人区となった大激戦で、野党共闘候補が現職を打ち破った意義にも着目すべきです。 「市民プラス野党共闘」の歯車がかみあい、地元紙(新潟日報や信濃毎日)が、きちんと争点を読者に明示する役割を果たすならば、民意が選挙結果に反映される可能性は高まります。もちろん沖縄2紙のオール沖縄の民意に基づく政権与党批判はいうまでもありません。 7月19日、今年度のJCJ員が発表され、新聞では大賞が「毎日新聞 憲法骨抜きを許した内閣法制局の対応スクープ」、JCJ賞は「神奈川新聞の連載シリーズ『時代の正体』」が受賞しました。 とくに、筆者がこの欄で何度も紹介した「時代の正体」の受賞は、わがことのようにうれしさをかみしめています。立ち位置が難しい首都圏の地方紙の「型破りジャーナリズム」-戦争法、米軍基地、ヘイトスピーチ、歴史修正主義まで、すべてのジャンル・地域の垣根を超えて、危険な方向に傾く「時代の正体」に対峠(たいじ)し、「記者も当事者」を体現する覚悟が記事からほとばしります。その潔さに拍手!(あべひろし=新聞ジャーナリスト)2016年8月7日 「しんぶん赤旗」日曜版 35ページ「メディアをよむ-『時代の正体』に対峠して」から引用 新潟県のフェリー購入問題では泉田知事側の主張を一切無視するという不可解な態度の新潟日報ですが、7月の参院選では、きちんと争点を読者に明示するという、報道機関としては当然の使命を果たした結果、新潟県の野党統一候補は現職の「野合だ」という不当な批判をかわして勝利することができました。フェリー購入問題でも、読者が判断を誤らないような情報提供が望まれます。
2016年09月21日
女優の吉永小百合さんは、政治学者の姜尚中氏と「女性自身」で対談し、次のように述べています;<前半省略>吉永 私が若いころに出演した映画『愛と死の記録』と、昨年公開の『母と暮せば』の2本をこの夏に都内の映画館で上映していただいたのです。その際、劇場の支配人が、新聞の取材に「反核や反戦という言葉を口にするのが、ためらわれるような時代になってしまった」と、答えていらして。そんな時代になったのか、とあらためてショックでした。姜 たしかにイベントなどで”憲法9条”とか”平和”という言葉を使ったとたんに、公的な施設が、「それはやめてほしい」と、使用許可を取り消すことがあるようですね。吉永 ええ。学校でも、政治的なことを話してはいけないような空気があるとか。選挙権が満18歳以上に引き下げられて、これからもっと、学校で政治や社会のことを学んでほしいと思うのですが・・・。姜 政治や平和を口にする人は、特別な主義主張を持った人ではないかと思われてしまう。言論の自由があるのに、政府に反対の意思を示すようなことを言ってはいけないのではないか、と。ちょつと角ばったことを言う人を、モグラたたきのように、たたく。だからみんな怖いんですね。吉永 議員になった山本太郎さんのように、原発事故後に、デモに参加したり脱原発などについて発言したりしたために、バッシングされた俳優もいらっしやいました。姜 ですが、欧米の排優などは、みんな自分の意見を言います。フランスでは、イヴ・モンクンやカトリーヌ・ドヌーヴなどもデモに参加していますし、アメリカのロバート・デニーロなども。吉永 そうですね。姜 有名俳優でも、大統領候補にトランプが出てきたら、はっきりと反対の意思表明をしている。ですから、日本でも著名な排優などが意思表示をするのは、むしろ歓迎です。 いろいろ議論をしたうえで、安保関連法が必要だという人も、僕はいてもいいと思うのです。吉永 そうですよね。日本でも、坂本龍一さんや渡辺謙さんはずっと発言してこられました。最近では笑福亭鶴瓶さんは、「戦争はアカン!」ってはっきりおっしゃるし、樹木希林さんも、戦争をテーマにしたテレビのドキュメント番組に積極的に出演されています。姜 歌手の美空ひばりさんも、『一本の鉛筆』という歌の中で、私は一本の鉛筆があれば、戦争はいやだと書くんだというような歌を歌って、反戦の気持ちを表現されていました。吉永 あの歌は本当に素晴らしいですよね。戦時中に、あちこち慰問されていた森光子さんも、ご生前は「戦争だけはダメです」と、ご自身の体験からはっきりおっしゃっていました。姜 以前は、「やっぱり戦争はダメ」という、最低限度の暗黙の了解がありましたが、最近は、そのタガが急に外れつつあると感じます。吉永 はい。こんな時代だからこそ、私たちも、思っていたら言わなきゃいけないと、今あらためて思っています。姜 たとえ感情的だと思われても、戦争は嫌だと言い続けなければなりませんね。吉永 はい。日本は、核廃絶に関する会議があっても、政府として明確に核廃絶を訴えませんよね。唯一の被爆国だから、核や核兵器は絶対やめよう、と言ってほしいのに言わない。被爆者の団体の方たちも、どんなにガッカリしていらっしやるかと思います。それはシンプルに言わなきやいけないことなのに。姜 今、こうして僕たちが話をしている問も、沖縄の高江という集落では、米軍のヘリパッド建設に反対する住民たちに対して、政府の荒っぼい弾圧が行われています。こうした問題を中央のメディアは、あまり伝えません。吉永 ええ。そんなに必要なら海兵隊を東京に持ってきたらどうかと思うくらい、申し訳ない気持ちがあります。言葉では言い表せないほどつらい経験をしてきた沖縄の人たちに、もっと人間らしい対応をしてほしいと思うんですね。けれども、なかなかそういう思いは、政治に反映されません。 私自身、どういう形で政治をチェックし、参加していけばいいのだろうと、思い悩んでしまうんです。姜 それはそうでしょう。ひとつは、既存の組織メディアに働きかけること。最近は署名記事が多いので、よい記事があれば、すぐ激励のはがきを送るとか。そういうことをしていかなければ、メディアは雪崩をうって、問題のあるものには近づきたくないという方向に進んでしまいます。吉永 恐ろしいですね。私は原発の事故のあとに、都内で毎年行われている「さようなら原発」という集会に何度か参加しているんです。<後半省略>かんさんじゆん/熊本県生まれ。国際基督教大学准教授、聖学院大学学長などを経て、東京大学名誉教授。著書に『悩む力』(集英社新書)、『心』(集某社)、ほか多数。現在は熊本県立劇場の館長兼理事長も務める。よしながさゆり/東京都生まれ。’59年スクリーンデビュー。’62年『アキューポラのある街』でブルーリボン賞主演女優賞。『細雪』『夢千代日記』『北の零年』『母と暮せば』などに出演。’86年から戦争、原爆の過ちを二度と繰り返さないために詩の朗読活動を行う。2016年8月23日 「女性自身」8月23日・30日合併号 60ページ「みんな、声をあげて! 命が押し潰される前に」から、一部を引用 吉永小百合さんは、1945年3月13日生まれです。私が彼女の生年月日を知っているのはそれだけ熱心なファンだから、というわけではなくて、ある日のラジオ番組に出演していた吉永さんが「私は終戦の年の東京大空襲の3日後に生まれました。空襲で焼け野原になったことで、私の将来を心配した母が、どんな世の中になっても谷間の小さな花のようにしっかり生きていってほしいとの思いで小百合という名前にしたと、後に母から聞かされました」と、印象的なエピソードを聞いて、他人事ながら「これは覚えやすい生年月日だな」と思った次第です。 上の対談で吉永さんは「沖縄の海兵隊がそんなに大事なら、東京にもってくればいいじゃない」というような大胆な発言をしています。海外のことは知りませんが、日本で芸能人がこういう発言をするとすぐに干されるのが普通ですから、なかなかできる発言ではありません。それで思い出したのは、昔、60年安保で日本が揺れていた頃、連日連夜「安保反対」のデモが繰り返されても一向に聞く耳を持とうとしない当時の岸内閣を、野党の羽仁五郎議員が批判して、「法務大臣、あなたは日頃町でなんと言われているか、ご存じですか? 昨日のテレビでは人気のコメディアンのトニー谷くんが漫談で『近所に耳のない子が生まれて、心配している母親に、私は言ってやりましたよ。お母さん、心配することはありません。この子は将来法務大臣になれるから』と、こう言って笑いをとっている。物笑いの種にされてでも国民の声には耳を貸さない、そういう態度はいかがなものか」と追求したのでした。ところが、その法務大臣は実は芸能界に影響力を持つ政治家だったために、その後トニー谷氏はテレビにもラジオにも出演できなくなり、数年後に出版された羽仁五郎氏の随筆集に「あのときはトニー谷さんには本当に迷惑をかけてしまって、すまなかったと思っている」と書いてありました。しかし、吉永小百合さんの場合は、この数年は会社や事務所に頼らずに映画を自作しているようですから、周囲に妙な気を遣うことなく率直な気持ちを表現できるのだと思います。
2016年09月20日
新潟県の第三セクターが関係した「フェリー購入問題」について、我々の手元にある情報は新潟日報の偏った報道によってもたらされたもので、新潟日報によって一方的に批判されている泉田知事には、どのような言い分があるのか、まったく闇の中ですが、昨日の欄に引用した「週刊金曜日」の記事の続きは、泉田知事から次のようなコメントを引き出しています; 真相はどこにあるのか。泉田知事を直撃した。 * 日本海横断航路の一連の報道について、一部、事実に反する記事や県民に誤解を与えかねない記事がずっと載り、「県関与があったのかどうか」というところばかりに焦点が当たる。「訂正してほしい」「地元紙なので適切な報道をしてほしい」と申し入れました。しかし、県から『新潟日報』へ申し入れがあったことも報道されないし、県の申し入れが正しいのか正しくないのかも伝えない。あまりにも回数が重なったので直接記者会見を開き訂正を求めました。『新潟日報』の読者投稿欄に「泉田知事 説明責任を果たせ」という投書があったので、2日後には答えをお届けしたのですが、載せてくれない。「県の主張を届けるのが難しいのではないか」ということから今回、「(知事選から)撤退」という決断をしました。 反論には「インターネットやツイッターがあるじゃないか」という指摘があるのですが、毎日45万部以上も配られる情報量と、全部合わせて数千アクセスというインターネットの情報量には差がある。民主主義の基本として、言論で「県がおかしい」と批判するのであれば、県の主張を載せた上で「県の主張のここがおかしい」と主張していただかないと、県民、有権者の皆様は判断ができない。民主主義の基本は「情報が行き渡った上で是か非かを判断する」。圧倒的な情報量の会社(新潟日報社)が自社の一方的な記事を載せて、県の反論を載せない。「次の記事から直しました」と言われても、事実に反する記事を直したことにならない。印象だけが残ってしまう。 本来、知事選では「原子力防災にどう向き合うのか」「新潟県の未来をどうしていくのか」を問うべきです。でも私が出馬すると、「航路問題で過去の県の対応は適切だったのか」ということばかりに焦点が当たって、「県民が今後の新潟県をどうしたいのか」という意思表示の場にならないのではないか。私が引くことで、今後の新潟県のあり方、原発、原子力防災への向き合い方ということが議論可能な環境にできるだろうと思っています。 原子力災害対策指針では一定程度線量が上がったら避難することになつていますが、その線量は毎時500マイクロシーベルトなのです。一般公衆が許される年間被曝量を2時間で超える数値になって初めて避難をすることになっている。ということは、屋内退避をしている該当者44万人を2時間で避難させないといけないということなのです。だから「原子力災害対策指針が妥当なのか」といった議論を知事選を通じてやらないといけない。 あるところから「『航路問題で泉田知事の首を取る』というプロジェクトが進んでいるようだが、現状どうですか」という取材の申し込みがありました。ということになると、単なる報道の問題ではなくて、「政治的な狙いも含んだもの」と理解せざるを得ない。だからこそ、(県民に)届かないのだと。ということになると、私が出ることによって多くの人に過度な負担をかけることになる。これは避けたいし、「本来、次の県知事選で議論するべきことをしっかりと議論できる環境を作ってほしい」ということが撤退の理由です。 老兵は去るのみです。後継指名はしません。いい論戦をする選挙になって欲しいと思っています。 * 泉田知事は原子力防災の議論を引き継ぐ候補者が出ることを期待すると同時に、『新潟日報』の一連の報道姿勢を告発するために知事選から撤退したといえる。 これに対し『新潟日報』は「本紙の見解は紙面で発表しています」「県民のための紙面作りをしている」と強調。東電の広告掲載回数・広告掲載料・上乗せ価格の有無は「答えられない」と拒否、一部の自民党との連携についても否定した。 泉田県政が継承されるかどうかが注目される。<横田一・ジャーナリスト>2016年9月9日 「週刊金曜日」 1103号 13ページ「知事追い落としでうごめく『新潟日報』と東電の影」から一部を引用 現職の泉田知事が不出馬というのは、大変残念なことですが、原発事故の対策をどうするのかという問題について、県民が冷静に選択できるような選挙を実現してほしいものです。それにしても、原発事故がいったん起きたら、2時間以内に44万人を避難させなければならないというのは重大な問題です。事故はいつ起きるとも予測はできないのですから、東京電力は常時避難用のバスを44万人ぶん待機させなければならないのではないでしょうか。そういう点からも、原子力発電は莫大なコストがかかり、しかも「危険」と、何もいいことがありません。やはり、これは再生可能エネルギーに切り替えていくのが最善と思います。
2016年09月19日
9日の「週刊金曜日」は、新潟日報と自民党が連携して泉田知事追い落としを画策した可能性について、次のように報道している; 新潟県知事選は、「福島原発事故の検証と総括が先決」と主張して東京電力・柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)再稼働に厳しい姿勢を取り続ける泉田裕彦(いずみだひろひこ)知事と森民夫(もりたみお)前長岡市長(全国市長会会長)との一騎打ちとみられていた。が、4選出馬を今年2月に表明していた泉田氏が8月30日に県紙『新潟日報』(小田敏三社長)の報道を理由に出馬撤回。すると株式市場は素早く反応、再稼働の可能性が高まったとして東京電力の株価が上昇したのだ。◆東京電力の全面カラー広告 地元事情通はこう話す。 「対抗馬の森氏は旧建設省出身で長岡市長を5期務めたものの、67歳と高齢で長岡市以外の知名度は低く、全県的な支持では泉田知事に及ばない。そこで一部の自民党が、『新潟日報』と組んで泉田知事へのネガティブキャンペーンを仕掛けたようです。東電も同紙に全面カラー広告を出して援助。『不祥事を起こした企業の広告料は高く、東電の広告も”上乗せ価格”』という情報も流れた」 泉田知事も出馬撤回の文書で「東京電力の広告は、今年5回掲載されていますが、国の原子力防災会議でも問題が認識されている原子力防災については(中略)重要な論点の報道はありません」と指摘している。『新潟日報』は、県が出資した海運会社のフェリー購入問題(日本海横断航路問題)を批判する記事を7月から連日のように掲載している。しかし「民間企業間の契約トラブルにすぎず、県に損害が生じているわけでもない。突出して『新潟日報』が取り上げるが、他紙はほとんど追いかけていない」(地元事情通)『新潟日報』と自民党が連携した形跡はいくつもある。 8月10日に森氏が出馬会見を県庁内で開いた際、記者クラブ代表幹事である『新潟日報』の記者は、庁舎管理責任を有する県職員の同席を拒否し録音も認めないうえ、泉田知事に森氏出馬へのコメントを求めたという。県庁内での会見に県職員の同席が拒否されるのは異例のことだが、『新潟日報』は「当日は幹事社ではなかった」と関与を否定。 新潟国際海運が作成した「新潟県議会建設公安委員会説明資料」には、フェリーを販売しようとした韓国企業「セオドン社」が新潟国際海運に送ったメールがあり、そこには「ある県議会メンバーが本件について非常に高い関心を示していることも知っている」「新潟日報が私の力になってくれるのを知っている」と記されていた。「『新潟日報』がセオドン社や県議会メンバーと接触しながら泉田知事降ろしを画策していた」という可能性を示唆(しさ)する内容を含んでいるが、同紙は「接触の有無については答えられない」と回答。『新潟日報』の姿勢は、同じく原発立地県である青森県の地元紙『東奥日報』(塩越隆雄社長)と二重写しになる。『東奥日報』も脱原発派の鹿内博(しかないひろし)青森市長に、第3セクターの赤字問題を執拗(しつよう)に批判し、鹿内市長が辞意を表明したのだ。(後半省略)2016年9月9日 「週刊金曜日」 1103号 12ページ「知事追い落としでうごめく『新潟日報』と東電の影」から一部を引用 原発事故について、厳しい見方を貫く泉田知事の姿勢は、住民の安全に責任を持つ知事として当然ですが、東京電力から多額の政治献金を得ている自民党としては、目の上のたんこぶであることは自明であり、3期もやったんだからそろそろ替え時だ、新潟日報を使って追い落としにかかったという事態は十分あり得ます。いずれにしても、県が損害を被ったわけでもないフェリー購入問題で泉田知事を攻撃しておきながら、相手の説明は一切封じてしまうという恥知らずな態度は、報道機関としてあまりにもお粗末、よく新潟県民はがまんしてるものだと思います。
2016年09月18日
大企業・東京電力の使いっ走りであるかのように、原発事故を重大視する知事の排除を画策している新潟日報について、法政大学総長の田中裕子氏は、9日の「週刊金曜日」に次のように書いている; 今年の正月、BSN新潟放送が企画した鼎談(ていだん)に出た。「新潟の魅力を世界!」という番組で、新潟県の泉田裕彦(いずみだひろひこ)知事、現在の文化庁長官宮田亮平氏とご一緒した。3人とも新潟の魅力を存分に語った。 それから8カ月、泉田知事は9月末告示の知事選出馬を撤回した。その理由をここで語るにあたって、順番を間違えてはならない。正しい順番は、2011年3月18日、泉田知事が東京電力・柏崎刈羽原発の関係者を呼んだこと、そして福島の状況について説明を受けたことに始まる。その際、東電が福島におけるメルトダウンを認めなかったことを知事は問題視した。それだけではない。新潟県は「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」を作り、福島の事故の検証を続けたのである。 その結果、今年の2月、メルトダウンの定義が社内マニュアルに明記されていたが5年間その存在に気づかなかったことがわかった。さらに4月11日、技術委員会は「福島第一原子力発電所事故に係る通報・報告に関する第三者検証委員会」に対して、詳細な質問状を渡した。その報告書および質問状は公開されている。東電は8月、泉田知事に謝罪した。 7月、『新潟日報』は新潟県が出資する第三セクター・新潟国際海運が韓国の企業からフェリーを購入する契約を結んだこと、整備状態に問題があって受け取りを拒否した結果トラブルになっていることを報道。県側が購入判断に関与していた可能性を報道し、県側は事実関係を説明する文書を9回も『新潟日報』に送ったにもかかわらず『新潟日報』は掲載しなかった。むろん10月に知事選があることを承知の上である。 8月、泉田知事は知事選出馬を取りやめた。31日の定例記者会見で知事は、「原子力防災」とどう向き合うか「原発をどうするか」こそ、知事選の議論の焦点であり、放射性物質の影響やヨウソ剤の配布方法など、議論すべきことが多くある。にもかかわらず、船舶問題でそれができなくなった。声が届かない中で選挙戦はできない、と語った。船舶問題については、県民が事実を知った上で判断するのが民主主義であるが、しかし県による事実説明を40万部発行する地方新聞が掲載しようとしない。この状態では本来すべき議論ができない、と述べている。会見はyoutubeで見ることができる。 さらに『新潟日報』は、東電の広告は載せても、住民避難問題等、県が提起している重要な原子力防災に関する記事は掲載しないでいるという。一方、私がアドバイザーを務める原子力市民委員会には「青森県の『東奥日報』によって脱原発首長である青森市長が辞職に追い込まれているのとまったく同じ手口」という情報が寄せられた。やはり、前市長が手がけた第三セクターの駅前ビルの赤字の責任を問われたのである。 大事な問題を別の問題で隠しあやふやにする。主権者は気をつけねばならない。泉田知事の記者会見は実に見事でまっとうなものだった。県内では不出馬撤回署名活動が始まっている。たとえ出馬しなくとも、泉田裕彦がこれからどう動くか、かなり期待できる。2016年9月9日 「週刊金曜日」1103号 11ページ「泉田裕彦氏のこれから」から引用 新潟国際海運のトラブルについて、憶測混じりのいい加減な記事を書きながら、県側の説明は一切報道しないで握りつぶすという新潟日報のやり方は、明らかな不正である。こういう悪徳企業は、放置しておかないで不買運動をやって、経営者とそこで働く人々に反省を促すべきである。新潟日報と東奥日報は、報道機関としての自覚を喪失しており、カネが目当てで住民の安全を第一に考える政治家を排除するというのは犯罪に等しいといえる。
2016年09月17日
政治学者で上智大学教授の中野晃一氏は、本年7月の参議院選挙について、4日の「しんぶん赤旗」で、次のように述べている; 参院選での野党共闘が、過小評価されていると思います。非民主的で現職・世襲に有利な日本の選挙制度のもと、32の1人区では自民党が全部とってもおかしくない。共闘した結果、野党が11もとったのはすごい成功をおさめたといえます。 衆院小選挙区は、地方だけでなく、無党派層が多い都市部にもあり、野党票のほうが自公票を上回っているところも多い。野党共闘で互角の勝負になることは容易に想像がつきます。与党側から「野合」批判が強まるのは、それだけ脅威を感じて、ヒステリックになっているからです。 だいたい、選挙協力や連立政権を「野合」と呼ぶのは世界で通用しない論理です。野党が重要政策で一致して、リベラル左派連合をつくってたたかうことは普通です。◆∪字回復 例えば、フランスです。右派のシラク大統領に対抗して、社会党のジョスパン氏が共産党や緑の党など左派連合を率いて、国会の多数と連立内闇を勝ち取り、首相に就任しました(1997年)。彼らは自らを、小異を抱えつつ一致点をともにする「複数形の左派」と呼んでいました。 歴史的にみても、ファシズムの台頭のように民主主義が壊されようとしているときは人民戦線がつくられ、政治理念を超えて大同団結してきました。 今回の野党共闘は「立憲主義を守る」の一点で、政党間で公式に交渉し合意したもので、世界標準です。 確かに、参院選の結果をみれば、足踏み感があるかもしれません。しかし、日本のいびつな選挙制度もあいまって、ここまで追い込まれた野党が「すぐにV字回復できる」と考えるのは楽観的過ぎます。弱った状態が底を打ち、上向きになった。現実的にめざすべきは「U字回復」です。「一回で結果がでなかったから」と野党共闘を捨て去るのは愚の骨頂です。◆共闘名を 衆院選に向けて課題も残されています。 一つは「何のための野党共闘か」という訴えをもっと前面に出していくことです。共闘する野党をどう呼ぶのか、いまだに名前がありません。例えば、「立憲野党」や「立憲勢力」といった呼称で、”立憲主義を守るための共闘だ”ということを訴える。政策的にも、先の国会で法案を共同提出してきた実績があるわけです。共闘を釈明するのではなく、互いの一致点や中身を堂々と語っていくべきです。 もう一つは、候補者調整の公開性を高めていくことです。野党共闘は、市民社会が後押ししています。勢いを広げるうえでも、共闘を支える市民を巻き込み、市民が納得する形で候補者調整を進めていくことが重要で、今後の工夫のしどころです。2016年9月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 7ページ「”大義で選挙協力”は世界標準」から引用 この記事が指摘するように、今回の選挙で民進党と生活の党、社民党、共産党が共闘した理由は、安倍政権の憲法をないがしろにした政治手法があります。憲法違反であるとの指摘があっても、多数の力でこれを無視して強行採決するというやり方は、明らかに民主政治を崩壊させるものなので、民進党から共産党まで、普段の「主張」はお互いにいったん引っ込めて、「民主主義を守れ」という目的で一致して、傲慢な与党に挑んだわけで、にわか作りながら結構健闘しました。総選挙でも同じ戦略で与党の暴走を止める効果は、かなり期待できると思われます。
2016年09月16日
7月の参議院選挙に野党統一候補として長野県の選挙で勝利した杉尾秀哉氏は、4日の「しんぶん赤旗」で、次のように体験を語っている; 自民党は参院選で、「集中砲火作戦」と称して、首相、閣僚、幹部らを定数1の激戦選挙区に大量投入しました。私の長野選挙区もまさにその対象でした。 公示10日前の6月14日には、下村博文・総裁特別補佐が自民党県連の選挙対策会議に乗り込んできて、「50万票」目標という大号令をかけ、業界団体に割り振りし、地方議員のノルマも決めました。自公が猛然と組織を締めて首相先頭にのべ約100人の幹部などがきました。安倍首相夫人までね。◆個人攻撃 デマ、ウソを含めたビラや街頭演説が激しくて、私を東京から来た「落下傘だ」と攻撃して、「落下傘より健太さん(自民の若林健太候補)」なんていう。自民党議員らはそれが”選挙の大争点”と演説し、安倍首相も繰り返しました。そんなことがありえますか。憲法とか安保法制とか、アベノミクスと格差の問題とか、TPP(環太平洋連携協定)とか、そういうことに全く触れずに個人攻撃が選挙の「大争点」なんて。そんな選挙があるのか、と心の底から憤りました。だから”絶対に負けられない。こんなのに負けたらだめだ”と奮い立ちましたね。 こういう攻撃をはね返して当選できた最大の要因は、県民が選挙に行ってくれたことです。長野県の投票率は62・86%で全国一でした。無党派層・支持なし層といわれる人たちが多く投票に行って、出口調査ではその層の6割超が私に投票してくれました。まさに長野県民の良識が勝ったと思っています。 そういう状況をつくることができた大きな要因が「市民と野党の共闘」だったと思います。 市民グループの人たちがいろんなところで「勝手連」を立ち上げ、電話かけとか集会を開いたりしてくれました。それが県民のみなさんに浸透して、「激戦区だ」とのメディアの報道と相まって、全国一の投票率に結び付いたのです。◆支援呼ぶ 無党派層からの支援を呼び込んだのは、市民の運動とともに野党間の共闘でした。民進党、共産党、社民党、生活の党との野党共闘がなければ、私の当選はありえませんでした。とくに長野県の共産党の比例代表選挙得票は13万5千票。私と自民党候補の得票差は7万4000。共産党などの大きな支援がきわめて重要でした。 次は衆院選です。私は、自分の選挙を市民と野党の共闘で勝ちました。ですから衆院選でも野党共闘の路線はぜひ進めてほしい。それが長野県民の負託にこたえる道だと思っています。2016年9月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 7ページ「卑劣な攻撃退け 良識が勝つ」から引用 憲法や安保法制の議論を避けて、相手候補が落下傘候補だから、それでいいのかが最大の争点と主張した自民党のやり方は、明らかな争点隠しでしかも卑劣な個人攻撃です。そういう下品なやり方が有権者に嫌われて野党候補の勝利になったと思われます。もともと自民党もそんなに強いわけでもないようですから、次の総選挙でも野党共闘は十分勝算ありと考えて間違いないと思います。
2016年09月15日
立正大学教授で元NHKプロデューサーの桜井均氏は、NHKのテレビ番組「加藤周一 その青春と戦争」について、4日の「しんぶん赤旗」に次のように所感を書いている; 評論家の故・加藤周一の蔵書や遺稿を集めた如藤周一文庫が今春、立命館大学に新設され、没後発貝された若き日のノート8冊がデジタル・アーカイブとして公開されるようになった。NHKのETV特集「加藤周一 その青春と戦争」(8月13日)は、このノートの言葉を、残された者や学生たちが解読していく番組であった。だから、番組の主語はあくまでも「言葉」であり、それが立ち向かう先はむろん「戦車」であった。 8冊のノートは、18歳のとき日中戦争開始とともに書き始められ、22歳、太平洋戦争開始の翌年で終わっている。若き加藤は、負ける戦争の破滅を予感しながら、第1次大戦直前のヨーロッパの危機を分析し、死を運命づけられた親友Nの言葉を書きとめていた。作家・池澤夏樹は「加藤周一は初めから加藤周一だった」と述懐した。◆「孤独」のなかで 加藤は「孤独」のなかで書いていた。世界の騒がしさを逃れて、独りきりになろうと別の世界に行ってみたが、そこもまた騒がしかった。もとの世界に戻ってきて、求めていたのとはまるで違った「孤独」を見いだした。そして、「滅びるものは美しきかな」という言葉でノートを閉じた。 国家の都合で、憎み合わない者同士が戦わされる。加藤はこれを激しく憎んだ。だが、親友Nはフィリピンの戦場で死んだ。「どうして私じゃなくて彼なのか」、「彼だったらやるであろうことをやらないということはない」。 加藤が戦後初めて発表したのは、「天皇制を論ず」であった。加藤文庫開設の講演で、大江健三郎は加藤の言葉を引いた。「『太平洋戦争を導き、悲惨な結果をもたらしたのは天皇制だ。廃止しなければまた戦争の原因になる』。そういう悲惨な経験があって、憲法を作り変えた。天皇は日本人のシンボル、大きい権力でもなんでもない、いわんや、暴力であることはありえない。私たちは憲法にそれを書き、いまでもそれを持ち続けています」◆「九条の会」から 晩年になって加藤は「九条の会」の呼びかけ人として、書斎の外で「言葉」を発することが多くなった。死の直前に書き遺(のこ)した「言葉」-、「私は戦争で二人の親友を失った。もし彼らが生きていたら決して日本が再び戦争への道を歩み出すのを黙って見てはいないだろう。南の海で死んだ私の親友は日本が再び戦争をしないことを願ったに違いない。憲法九条にはその願いが込められている。私は親友を裏切りたくない」。 この放送を見ながら気づいた。俳優・西島秀俊が、加藤の筆跡をなぞりながら読み進めたが、「憲法九条にはその願いが・・・」という部分に、特攻出撃の映像がかぶり、加藤直筆の「憲法九条」の文字を見ることができなかった。 安保法が施行されたいま、一刻も早く加藤文庫のアーカイブで、「憲法九条」を含むすべての言葉が公開されることを期待したい。(立正大学教授・元NHKプロデューサー)2016年9月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 30ページ「戦争憎む激しい『言葉』」から引用 「太平洋戦争を導き、悲惨な結果をもたらしたのは天皇制だ。廃止しなければまた戦争の原因になる。」これは実にもっともな理屈です。天皇個人は何を考えたかは別としても、戦前の日本政府は国民を侵略戦争に駆り出すのに天皇の権威を利用し、その効力は100%発揮されて260万人の邦人と2000万人のアジアの人々が殺戮された、この悲惨な歴史を反省してできあがったのが憲法9条であることを、私たちは今一度確認する必要があると思います。
2016年09月14日
参議院選挙が終わって、いよいよ足かせがなくなった安倍政権はPKOを口実にして自衛隊に武器を使わせる訓練を始めることになったと、4日の「しんぶん赤旗」が報道しています; 防衛省・自衛隊は8月末、安保法制=戦争法に基づく新任務の訓練を始めました。南スーダンPKO(国連平和維持活動)に11月派兵予定の部隊に同任務を命じることが狙われています。自衛隊が海外で「殺し、殺される」ことになりかねない事態です。 「第2次世界大戦後初めて、海外での軍事行動で(自衛隊)部隊が(戦闘に)巻き込まれるおそれが出てきた」 稲田朋美防衛相の記者会見(8月24日)を受け、英ロイター通信は報じました。 稲田氏は「いかなる場合にも対応できるよう、しっかり準備していくことは当然だ」と述べ、戦争法に基づく訓練を開始することを発表。その一環として南スーダンPKOに11月から第11次隊として派兵予定の第9師団(青森市)を中心とする部隊の訓練を25日から始めることも明らかにしました。 戦争法で、PKOに参加する自衛隊部隊は▽他国部隊やNGO職員が攻撃されたときに応戦する「駆け付け警護」▽宿営地への攻撃に外国軍と共同して応戦する活動-などができるようになりました。 日本共産党の笠井亮衆院議員が2月に暴露した防衛省内部文書(2012年3月)によると、同省は「駆け付け警護」の一例として「人質救出」を検討。「実際の作戦は、武装集団を射殺することはおろか、万が一、失敗すれば文民等を死亡させるリスクもある」とし、「殺し、殺される」軍事作戦になることを認めています。 すでに第9師団の第5普通科連隊約40人は、モンゴルで行われたPKOのための多国間訓練(5~6月)に加わり、パトロール訓練などに参加。戦争法発動に向け着々と準備を進めてきました。 戦争法により、集団的自衛権の行使も可能になります。 防衛省は、10~11月に米軍とともに行う日米共同統合実動演習(キーンソード)を予定。そこで集団的自衛権を行使する「存立危機事態」を想定した訓練を実施する方向で調整を進めています。 ◇ 日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は8月25日、南スーダンに派兵する自衛隊の新任務訓練着手に抗議する緊急街頭宣伝を青森市役所前で行い、「自衛隊員守れの共同を広げよう」と呼びかけました。◆内戦激化PKOは破たん 自衛隊がPKOで派兵されている南スーダンは、2011年にスーダンから分離独立した世界で最も新しい国です。ところが13年12月以降、キール大統領派とマシヤール副大統領派の武力衝突が激化。昨年8月に和平協定が結ばれたものの、今年7月に戦闘が再燃し、内戦が続いています。 同国で活動するPKOの国連南スーダン派遣団(UNMISS)は「平和の定着」などの目的で独立時に設置されました。しかし現地政府が分裂、対立。政府軍や武装勢力が国連施設・部隊を攻撃する事態にまで至っています。PKOの成立要件を満たさなくなっているとの見方が強まっています。 国連安全保障理事会は8月12日、UNMISSの活動期間を12月15日まで延長する決議2304を賛成11(日本を含む)、棄権4(中国、ロシア、エジプト、ベネズエラ)で採択しました。 決議は、周辺諸国軍部隊からなる4000人規模の地域防護部隊(RPF)の設置を決めました。RPFは首都ジュバの空港や主要施設の安全確保に当たり、「国連部隊・施設への攻撃を準備するとみられる」勢力に対処する権限を与えられます。 しかし南スーダン政府代表は同会合で「本決議の採択は、紛争の主要当事者の同意という国連PKOの基本原則に反する」として反対を表明。キール大統領報道官は新決議に基づくPKOに「協力しない」と述べました。 決議案に賛成した国からも「当事者の支持がないことは否定的影響を及ぼしうる」(アンゴラ)といった意見が出ました。 UNMISSの現状は、「停戦合意」成立など日本のPKO参加5原則を満たさず、自衛隊は撤退すべきです。しかし安倍政権は現状に目をつぶり、「5原則は崩れていない」(菅義偉官房長官)としています。2016年9月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 5ぺーじ「『駆け付け警護』南スーダンへ自衛隊」から引用 そもそもわが国は、憲法によって軍隊を持つことを禁止されているので、軍隊は存在しないのであって、軍事力を提供してPKOに協力する立場ではありません。そういう筋を通して戦後70年間やってきたのですから、これからもその方向で、非軍事の立場から国際貢献すればいいのです。だから、自衛隊員の命を犠牲にして軍需産業で景気を浮揚しようという安倍政権の邪な野望に対し、国民は反対の声をあげていくべきです。
2016年09月13日
先月101歳で天寿を全うしたジャーナリストのむのたけじ氏について、阿部裕氏は4日の「しんぶん赤旗」コラムに次のように書いています; ぺン先に全体重を乗せて書け-。60年代半ば、駆け出し記者だった筆者の座右の銘、『詞集たいまつ』の一節です。8月21日、101歳の生涯を全うした現役ジャーナリスト・むのたけじさんの魂の言葉です。 むのさんは、「戦争中、大本営発表のまま嘘を書いてきた責任をとり」敗戦当日、ただ一人、朝日新聞を退社。その3年後、秋田県横手市で週刊新聞「たいまつ」を創刊し、平和や農業、教育などをテーマに反権力の筆を振るいました。自著『たいまつ十六年』にその足跡をまとめ、地域住民や若い人たちにエールを送り続けました。地域に根差し、自ら汗をかき、家族とともに書き、活字を組み、印刷し、住民に届ける新聞の原点を実践したのです。 「ジャーナリズムは死んだか?」-90年代にJCJ主催の講演会で、むのさんは「とっくに死んどるよ!」と言い放ち、私は仰天。講演直後に「むのさんがJCJ会員になった」と聞き、すごい人だなと感心しました。 2011年出版された『希望は絶望のど真ん中に』(岩波新書)は、まさに死中に活を求める達人の言葉と行動だと納得しました。 さらに驚嘆したのは、むのさんが90歳を過ぎ、米軍辺野古新基地をめぐるたたかいと沖縄2紙の若い記者たちの奮闘ぶりを間近にして、「あの時、『朝日』を辞めたのは早計だった。踏み留まってたたかうべきだった」と述懐されたこと。常に現場で現実と対峙(たいじ)しながら、認識を改めるジャー・ナリスト精神に脱帽しました。 ここ数年は、むのさんに若い人向けの「ジャーナリスト講座」や秘密保護法や戦争法反対集会でのスピーチをお願いし、車いすで駆け付けていただきました。「朝日」「毎日」や多くの地方紙が1面や社会面で同氏の訃報と業績を大きく扱いました。きな臭さが漂う今こそこぞって、むのさんの志を継ぐ決意を示したいものです。(あべ・ひろし 新聞ジャーナリスト)2016年9月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 35ページ「メディアをよむ-むのたけじさんの言葉」から引用 むのたけじ氏は作家の石坂洋次郎の教え子で、敗戦で朝日新聞を辞めて、田舎に帰って小さな新聞を発行するというアイデアについて相談しようと思って、卒業後何年も合っていなかった恩師を訪ねたら「おお、むの君か。しばらくだね」と、自分のことを覚えていてくれたので、大変嬉しかったというエピソードを読んだことがあります。101歳まで、反権力の姿勢を貫いたのは「すごい」の一言に尽きます。
2016年09月12日
稲田防衛大臣の領収書ねつ造疑惑について、4日の「しんぶん赤旗」は次のように報道している; 日曜版(8月14日号)が報じだ稲田朋美防衛相の政治団体をめぐる白紙領収書疑惑をマスコミが相次いで取り上げました。稲田氏側に白紙領収書を出していた第3次安倍再改造内閣の閣僚・副大臣・政務官などが30人にのぼることが新たに判明。白紙領収書のやり取りが自民党の”慣習”だった疑いが浮上しました。<山田健介記者> 自民党閣僚経験者の秘書が打ち明けます。 「日曜版の記事は事実だ。自民党国会議員の間では10年以上前から、白紙領収書のやり取りがあった」 日曜版が指摘しだ稲田氏をめぐる疑惑をあらためて紹介します。 - 稲田氏の資金管理団体「ともみ組」は自民党議員の政治資金パ上ティー代金を払っだ際、白紙領収書をもらっていた。 ― 稲田氏側で領収書に金額、年月日、宛先などを記入していた。 - 稲田氏側で記入した領収書は合計で約260枚、約520万円分にのぼる。 ― 稲田事務所は白紙領収書の授受を「自民の慣習」と説明した。 日曜版の報道後、写真週刊誌『フラッシュ』(6日号)や同『フライデー』(9日号)、「日刊ゲンダイ」(8月24日付)などが相次いで疑惑をとりあげました。 疑惑について稲田氏は福井新聞(8月22日付)のインタビューで 「相手が発行した正式な領収書で、受け付けの混乱を避けるため合意に基づき、実際に支払った金額を記人したもので、何ら問題はない」と居直っています。◆領収書に当たらず 本当に問題はないのか-。 政治資金規正法は2009年以降、国会議員関係政治団体に1円以上すべての支出の領収書の徴収義務を課しています。違反すれば、3年以下の禁錮か50万円以下の罰金が科せられます。「会計経理や収支報告に厳正を期するため」というのがその理由です。 総務省政治資金課の「国会議員関係政治団体の収支報告の手引」は、「領収書等」とは、支出の「目的」、「金額」、「年月日」の3事項が記載されている必要があり、「1つでも欠ければ、法の『領収書等』に該当しません」としています。「領収書等は支出を受けたものが発行する」、「国会議員関係政治団体側で追記することは適当ではありません」とも明記。総務省に設置された政治資金適正化委員会も「『手引』に記載されている通り」と説明します。 これらを発行した議員は現職、元職をあわせて約150人です。 8月に発足した第3次安倍再改造内閣では現職閣僚10人のほか、副大臣11人が白紙の領収書を稲田氏側に発行(別表)。官房副長官(―人)、政務官(5人)、首相補佐官(3人)を加えると30人にのぼります。 ある副大臣の事務所は「パーティー会場の受付では人手がなくて忙しいときは暗黙の了解で白紙領収書を出している」と説明します。その他の副大臣は回答がありませんでした。 高市早苗総務相も『フラッシュ』の取材に、面識のある議員、秘書には白紙領収書を渡すことがある、と回答。白紙領収書は、まさに自民党ぐるみの”慣習”だったことが明らかになりました。 稲田氏は自民党が野党時代、衆院法務委員会(09年11月17曰)で「政治とカネ」問題をこう追及していました。「政治家はだれでも政治資金規正法についてはきちんと認識をしておかないといけない」「その趣旨を理解していただかないで何か民主主義ですか。何か議会制民主主義ですか」2016年9月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 35ページ「白紙領収書 疑惑拡大」から引用 稲田朋美氏は本職が弁護士ですから、領収書とはどういうものか知らないわけがありません。日付も金額も宛先もないものは「領収書」ではなく、「領収書用紙」に過ぎません。それを双方合意の上で、相手が発行したものだなどという言説は、まったく国民を馬鹿にしているというものでしょう。領収書用紙は確かに相手から受け取っても、日付も金額も自分に都合のいいように書いたのでは「ねつ造」と言うほかありません。しかも、こういうことを10年前からやってる党員が150人もいるという事態は看過すべきではありません。これらの150人は全員起訴して50万円の罰金を支払わせるか、刑務所に入れるかして、自民党は自浄作用を発揮するべきです。
2016年09月11日
小説「未来ダイアリー」を発表した弁護士の内山宙(うちやまひろし)氏について、4日の「しんぶん赤旗」は次のように紹介しています; 自民党改憲草案が実現したらどんな世の中になるのか-。それを小説『未来ダイアリー』として出版した弁護士がいます。「明日の自由を守る若手弁護士の会」のメンバー、内山宙さん。自民党改憲草案の危うさや、日本国憲法の魅力について聞きました。<佐藤幸治記者> 物語は、主人公の大学生が「改正」前の憲法(現憲法)を調べようとして「公の秩序違反」に問われて警察に任意同行を求められるシーンから始まります。以前の憲法を学ぶことは、憲法秩序を破壊しようとする行為と見なされたのです。 「現憲法にも『公共の福祉』という言葉はありますが、それは権利と権利がぶつかるときの調整、バランスをとるものです。ところが草案では『自由や権利には責任や義務が伴う』、『公益及び公の秩序に反してはならない』とあり、国が個人の権利を制約できるものになっています」 改憲草案に「家族は互いに助け合わなければならない」との家族観が明記されています。小説では、そのために子育てを家庭に押し付けられ、働き続けられなくなって苦しむ母親がでてきます。また、デモに対して「緊急事態の宣言」を発令したい内閣と市民との緊迫した攻防が描かれています。 「『緊急事態の宣言』は、首相の一存で発令でき、強大な権限を手にして国民主権を停止する余地があるのに、歯止めが不十分です」 「自民党改憲草案は、国民を縛るものです。国民の義務を強調して『義務を果たさないと権利を与える必要はない』というニュアンスで書かれています。これは憲法が権力をしばるという立憲主義に反します」◆現憲法知って 憲法は変えた方がいいという前に、今の憲法をよく知ってほしいという内山さん。その一例として内山さんは、「個人の尊重」をうたう憲法13条をあげ、一番好きな条文だといいます。 「”みんなそれぞれ違っていいんだよ”というメッセージを憲法が送っているというのはすごいことだと思います。つい、自分を周りの人と比較して、落ち込むことがあっても、『違っていいんだ』と前向きになれます」 その「個人」を自民党改憲草案では「人」に置き換えています。 「たとえばLGBT(性的マイノリティー)の人たちや、夫婦別姓を求める人たちが『私はこういう権利がないと幸せじゃないんだ』と言っても、『あなたの個性は尊重しない。人並み程度でがまんしてね』と片付けられてしまう恐れもあります」 物語では、同性婚や夫婦別姓が認められず、在日コリアンや障がい者が差別されている現在の日本が抱えている問題にも触れています。 「こうした問題は、憲法の適切な解釈や平等原則を生かすことで解決できます。少数者に配慮して運営していくのが本来の政治の役割だと思います」 内山さんは憲法の講演などで、フランス革命が舞台の漫画『ベルサイユのばら』を引用したり、『スターウォーズ』のエピソードと絡めたりして、聞き手の興味を引き出す工夫をこらしています。 「共感を得る伝え方が重要だと思います。小説もその取り組みの一つで、無党派層の人にも関心を持ってもらいたい。これまでの運動が憲法に関心が無い人の共感を得られるものだったのか見直すきっかけにしてもらいたい。そして、諦めないでほしいという思いで書きました。あなたでないと動かせない人がいるはずだからです」2016年9月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 2ページ「自民改憲案が実現したら」から引用 世の中には「公共の福祉」も「公の秩序」も同じだなどと、字面の印象だけを根拠に間違ったデマを言いふらす者もいますが、この二つは、天国と地獄ほどの違いがあるということを、私たちは知る必要があると思います。また、「家族は互いに助け合わなければならない」という言葉もモラルとして語られるぶんにはごく自然な言葉と言えますが、これを憲法に書き込んで政治的な意味を持たせると、個人の自由を束縛する力を発揮するわけで、明らかに近代民主主義に反すると言えます。一人一人の人間の個性がそれぞれに異なるように、それぞれの家庭のあり方も多様であっていいのであって、他人の目でみて「あそこの家庭は助け合っていないようだ」などと言って行政が家庭生活に介入するようでは、西欧先進国と価値観を同じくする国とは言えないことになり、安倍首相の常日頃の発言とも矛盾する事態となります。こういう改憲草案はゴミ箱に捨てるしかないと思います。
2016年09月10日
本年7月の参議院選挙について、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は4日の「しんぶん赤旗」に次のように書いている; 参院選の結果について、各新聞には「自公圧勝」「改憲勢力 3分の2」という見出しが躍りました。私は検証が必要だと思い、自民党の人たちを取材してみました。 すると全く違いました。選挙に強い議員、全国を応援で回っている議員、安倍晋三首相の周辺は、「圧勝」ではなく「辛勝」だと。逆にこれからの衆院選のことを考えるとかなりまずいと言って、相当な危機感を示しました。 それは、参院の32の1人区すべてで野党共闘が完成し、うち11選挙区で持っていかれた。最初、自民党の選対幹部議員などは、野党共闘の話が出たときは「三つか四つ、落とすかなあ」なんて笑っていました。それが世論調査をやっていくと、12から14は落とすと。半数にせまれば政権運営に響くから安倍首相以下必死で巻き返し、かろうじて11で止めた。それが真相ですよ。 自民党はなぜ11選挙区で落としたのか。東北では秋田以外は全部負けました。「地方」の支持を失っている。アベノミクスの恩恵は結局ない。地域経済はどうしようもない。そういうアベノミクスヘの批判があった。さらにTPP(環太平洋連携協定)で農業票が離れ、沖縄米軍新基地建設や福島原発事故への対応にも反感がある。 つまり、安倍政権の個別政策について、地方はノーだと言ったのです。「野党共闘は野合だ」と自民党がいくら批判しても、東北の有権者は「だからと言って安倍政権の政策を看過できない」と投票した。これは安倍政権としては大きな痛手です。◆地殻変動 自民党は参院選後、神奈川選挙区で当選した無所属推薦候補を追加公認し、無所属の平野達男参院議員を入党させるという数合わせで「改憲勢力3分の2」にかろうじてこぎつけたけれど、実は大きな地殻変動が起きているといっていい。 もし衆院選で本格的な野党共闘が組まれると自民党本部の分析でさえ、70前後の小選挙区で与野党が逆転すると見ています。2014年衆院選小選挙区の当選者は与党231人、野党64人なので、極端な話、政権交代だって現実味が出てくる。 安倍首相の思いとしては、絶対に自分の手で「憲法改正」をやり、オリンピックも迎えたい。だから自民党党則を変更して任期を延長したいが、そのためにはどこかで総選挙をやって勝たなければならない。首相がこだわるのはやはり9条改憲です。チャンスは一回。命がけでやってくるでしょう。 この安倍シナリオに立ちふさがるものとしては現状では野党共闘が最有力です。そのためには、選挙区調整では野党第1党が謙虚になり少数政党を尊重すること、憲法や安保法制だけでなく、経済政策や社会保障、介護問題など生活者のための野党共通政策もあわせて深めること-などが必要だと思います。2016年9月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 「首相周辺 相当な危機感」から引用 さすがに自民党は選挙のプロが多いだけに、獲得した議席数に浮かれることなく、今回の選挙がきわどい勝利だったことを肌で感じている様子です。毎回厳しい戦いを強いられてきている共産党も、自民党の弱点がどの辺なのか、しっかり把握しているように思われます。しかし、肝心の野党第一党・民進党は、今回の選挙をどう評価しているのか。今後の日本政治の行方は民進党にかかっているのではないか、と思います。今回の選挙結果をしっかり総括しないで、前回岡田氏に妥協して共産党と共闘したのだから、今度は我々のやり方でいくんだ、などというような軽率な理屈では、とても自民党には勝てないでしょう。民進党のみなさんには、リアルな現実認識をもってほしいと思います。
2016年09月09日
本年7月の参議院選挙の結果を、共産党はどのように分析しているか、4日の「しんぶん赤旗」は次のように報道している; 「自民党衆院議員がいま一番怖がっているのは野党共闘だ」。ベテラン自民議員が語ります。参院選後、次の総選挙を見るとき、誰もが注目する最大の焦点は、野党と市民の共闘がどう広がるか-。参院選で自民党が受けた衝撃からもその威力がみえてきます。 参院選では自民・公明などの改憲勢力が、改憲発議を可能にする「3分の2」を上回り、メディアは「自公圧勝」などと伝えました。ところが自民党内などの本音は-。 「選挙は本当に勝ったのか。1人区であれだけ負けて」というのは自民党閣僚。「(11敗は)予想していなかった。私は勝ったという認識はない。暗い気持ちだった」と続けます。 参院選では、32の改選1の選挙区すべてで歴史上初の野党共闘が成立。うち超激戦区の11選挙区で自民党を落とし、野党統一候補が勝利しました。 開票の日、安倍晋三首相はテレビの前では笑顔でしたが、側近の前では「勝ってなんかいないからな!」と吐き捨てた、と週刊誌で報道されました。 自民党幹部(衆院議員)は「これ(参院選)は負けだ」と言い切ります。そして「今(衆院を)解散したら「3分の2」を失うどころじゃない。小選挙区(295)のうち(自民党勝利の選挙区で)得票率が50%を下回るのが80ある。民共で組まれると、それが全部落ちる」と。 安倍暴走政治ストップのカギ、共闘の力をさらに検証します。 参院選公示(6月22日)後、安倍首相が遊説に入った1人区は11です。そこで自民党が勝ったのは熊本と愛媛だけ。青森、岩手、宮城、福島、新潟、長野、山梨、三重、入分の9選挙区は野党統一候補が当選しました。世論調査で「歯が立たない」と見た沖縄や山形は最初から応援を避け、首相が入ったところは2勝9敗。しかも2回、3回と入った選挙区でも負けました。これまでは応援に入った選挙区での勝率は5~8割だったのに今回は1割8分でした。 さらに自民党は選挙最終盤、重点選挙区を七つ(青森、宮城、福島、新潟、山梨、長野、三重)に絞り込み、「集中砲火」として、首相、主要閣僚らを大量に送りました(表)。それにもかかわらず、この7選挙区すべてで落選したのです。 選挙中、青森県に応援で入った自民党秘書がいいます。 「派閥の呼びかけで入ったが、その日に『負け』を感じた。事務所に人が集まらないのに、総理、大臣らは毎日のようにぽんぽん入ってきて議員事務所もその対応で忙殺された。やりすぎて逆に投票率を上げ、墓穴を掘ったのではないか」◆「共闘の力実感」統一候補ら 他方、野党統一候補は市民と野党の共闘の力を実感しました。 「歴史上初めての野党共闘と大同団結がなければ、どの1人区も勝てなかった」「野党共闘をもっと進化させて、今後の活動に生かしていかなければならない」(新潟・森裕子さん) 「(勝利の)原動力は、シールズをはじめ国民が声を上げ、あきらめない継続した行動と、野党共闘の力」(青森・田名部匡代さん) 日本共産党の志位和夫委員長は、8月の党創立記念講演でこういいました。「総選挙で野党共闘が実現するならば、多くの小選挙区で与野党が逆転し、現在与党が握っている憲法改定に必要な国会の基盤を崩す大激変をつくることは十分可能」「野党共闘は、第一歩の参議院選挙では大きな成果をあげました。第二歩が総選挙です」※ この特集は竹原東吾、田中倫夫記者が担当しました。2016年9月4日 「しんぶん赤旗」日曜版 1ページ「野党共闘 自民に衝撃」と6ページ「自民は”重点区”すべてで負けた」から引用 この記事からも分かるように、共産党は今回の野党共闘を前向きに評価しており、次の総選挙でも有効な戦術であると考えているようです。あとは民進党の態度如何にかかっています。民進党は、共産党と共闘するメリットと共闘によって失う「保守票」と、どっちが大きいのか。ここは冷静に損得勘定をして、次の総選挙では、最低でも議席の3分の1以上の獲得、あわよくば自民党を下野させることを目標とする、このような観点から必勝の戦略を構築してほしいものです。
2016年09月08日
戦争法を強行採決し、軍事国家への道をひた走る安倍政権を、前衆議院議員の佐々木憲昭氏は、6月19日の「しんぶん赤旗」日曜版コラムで、次のように批判している; 日本最大の財界団体である日本経済団体連合会(経団連)は、安倍内閣・与党が昨年9月19日、戦争法(安保法制)を強行採決したとき、ただちに「歓迎したい」とコメントを発表しました。その4日前には、武器輸出を国家戦略として推進すべきだとする「提言」を発表しています。 経団連が、戦争法を歓迎し軍需産業の振興を求めるのは、安倍内閣と結託して軍事国家をつくる野望があるからです。 もともと経団連は侵略戦争を遂行した戦時中の経済団体を引き継ぎ、戦後アメリカのアジア戦略に協力するなかで、1946年に創立されました。50年に勃発した朝鮮戦争を契機に、経団連の内部に防衛生産委員会を立ち上げ、朝鮮特需によって軍需産業を復活させました。経団連は創立当初から戦争と密接な関係をもっていたのです。 防衛省が武器・弾薬などの装備品を買い入れている会社の上位20社のうち、過去15年間に経団連の役員を務めた大企業(子会社を含む)は13社に上ります。 装備品中央調達の総額は2014年度で1兆5717億円。そのうち経団連役員企業の受注額は8416億円で、全体の53・5%を占めます。経団連と軍需産業は密接な関係にあり、軍事予算や装備品調達は巨額な利潤源になっているのです。 そのため日本の財界・軍需産業は、軍事費の増額、武器輸出の推進、宇宙の軍事利用を長年にわたって執拗(しつよう)に求めてきました。 安倍内閣は、その要望に応え、13年12月に国家安全保障会議を設置して「国家安全保障戦略」を作成し、防衛大綱や中期防衛力整備計画の改定を行いました。14年4月には、武器輸出を解禁する「防衛装備移転三原則」をつくり、15年1月には軍事利用を含む宇宙基本計画を策定しています。 さらに15年4月、日米で新ガイドライン(日米軍事協力の指針)をつくり、同年9月19日に戦争法(安保法制)を強行、10月1日には防衛装備庁を発足させました。 日本の財界・軍需産業は、アメリカの軍産複合体(軍需産業などと軍隊・政府の連合体)の下に組み込まれながら、他方でアジア諸国への軍事的援助を増やし武器輸出の拡大を狙っています。 武器弾薬などの軍需物資は、個人消費のためではなく、人間を殺傷し器物を破壊するためのものです。軍事費の増大は、社会保障・福祉を圧迫します。また「秘密保護」の態勢をつくりあげ民主主義を圧殺します。 財界の軍事国家づくりの野望のもと、戦争する国へと暴走する安倍内閣を打倒するたたかいをいっそう強めなければなりません。佐々木憲昭(ささき・けんしょう 前衆議院議員)2016年6月19日 「しんぶん赤旗」日曜版 20ページ「経済 これって何?-戦争法を歓迎する財界」から引用 軍需産業の復活は、平和を求める日本国民にとって由々しき事態であると言えます。とかく資本家というものは、世の中の平和よりも己の懐が豊かになることを優先する者で、資本の論理に支配された資本家は金儲けのためなら他人の命など一顧だにしない。だから、平気で自衛隊を海外に派兵し、武器弾薬を消耗させて、それにつれて生産高を上げて利益を獲得する、そのためには自衛隊員の命などは、莫大な利益の中から少額の保証金を出すだけで間に合ってしまうのだから、経団連にとってはまたとないビジネス・チャンスというものです。こういうことをやっている安倍政権を、私たちはいつまでも容認しておくわけにはいかないと思います。
2016年09月07日
元放送記者の藤田文知氏は、政治家が憲法に規定された政教分離の原則を無視して靖国神社に参拝する問題について、メディアが沈黙するのは問題であるとして、8月28日の「しんぶん赤旗」コラムに次のように書いている; 8月15日。日本武道館では恒例の戦没者追悼式が行われ、天皇は先の大戦について昨年に続き「深い反省」の気持ちを述べました。 安倍晋三首相の式辞には「侵略の反省」や「日本の加害責任」は一切なし。同日、閣僚の高市早苗総務相と丸川珠代五輪担当相が靖国神社に参拝しましたが、「国策に殉じた方々に尊崇の念を持って感謝の誠をささげた」と参拝後のコメントはいつもと同じせりふ。 テレビニュースは、閣僚の言い分をそのまま垂れ流し、「みんなで靖国神社を参拝する国会議員の会」の行列も放送しました。しかし、閣僚の靖国参拝がどうして問題になるのか、天皇はなぜ靖国参拝をしないのか。この日のテレビはほとんど説明していません。 靖国神社は、侵略戦争のシンボルとなった神社です。中国が閣僚の靖国参拝に反対する理由について、文化放送の朝番組(12日)で中島岳志東工大教授がこう解説しています。 「中国では日本の戦争責任は戦争指導者にあり、日本国民に責任はないと説明してきた。それなのに1970年代に靖国神社に突然、A級戦犯が合祀(ごうし)された。以来、天皇の靖国神社参拝はない。しかし閣僚が参拝するのでは中国は国民に説明がつかない」 安倍内閣で最も保守色の強い稲田朋美防衛相も一貫して靖国神社を参拝してきました。しかし、中国、韓国の批判を恐れたのか、12日に突然、アフリカ東部のジブチの自衛隊の視察に。姑息(こそく)な批判外しです。 ところで8月のテレビはリオ五輪一色でした。甲子園の高校野球も重なって、NHKはスポーツ放送局に化していました。しかし、こうした中でもNHKは戦争に関する見応えのあるドキュメンタリー番組を放送しました。特に「決断なき原爆投下~米大統領71年目の真実」、「沖縄・空白の1年~基地の島はこうして生まれた」などは特筆すべき内容でした。(ふじた・ふみとも=元放送記者)2016年8月28日 「しんぶん赤旗」日曜版 35ページ「メディアをよむ-靖国問題の本質を回避」から引用 今年、高市早苗と丸川珠代が口にした「国策に殉じた方々に尊崇の念を持って感謝の誠をささげた」というセリフほど戦死者を馬鹿にした言葉はありません。戦死したという理由で靖国神社に勝手に祀られた人々は、国のために英雄的な戦いをしたのでしょうか? 当時の兵隊は「国のために」と思い込まされて戦地へ行っただけで、実際は国が企んだ侵略戦争に利用されただけです。しかも、敵軍との戦闘で死亡したのは極一部で、大部分は食料補給の計画もない無謀な作戦で戦地に騙されて送り込まれて餓死したというのが実情であったことが、近年の歴史研究で明らかになっています。したがって、国には靖国神社に祀られた260万人の人々を死なせた責任があるのであって、政府の一員である高市早苗や丸川珠代には「国策に準じた方々に感謝の誠を」などときれい事を言う資格はありません。むしろ、「みなさんを死なせてしまったことを、政府の一員としてお詫び申し上げます」というセリフのほうが、よっぽど理にかなっているというものでしょう。
2016年09月06日
7月に神奈川県で起きた障害者施設での殺人事件について、8月28日の「しんぶん赤旗」は、事件が起きた施設の元職員にインタビューして、次のように報道している; 神奈川県相模原市の障害者施設「県立津久井やまゆり園」で19人の命が奪われた殺傷事件から26日で1カ月です。同園に36年間勤め、事件当日も園にかけつけた元職員の太田顕(けん)さん(73)。いま訴えたいことは・・・。<本田祐典記者> 太田さんは事件が起きた7月26日早朝、知人からの電話で起こされました。自宅近くの「県立津久井やまゆり園」の前には、すでに報道陣が詰めかけていました。「元職員です」と園内に入り、ボランティアを申し出ました。 園内の体育館に案内されると、男性入所者がパジャマ姿のままで50~60人ほど集まっていました。 「職員時代にかかわった入所者も6、7人いました。でも、園に居るはずなのに姿が見えない入所者が何人かいました。いま考えると、亡くなった人は事件現場に残され、負傷した人は搬送されていたんですね」 体育館には、無事だった入所者に寄り添う家族もいる一方、厳しい表情で体育館の横を通り過ぎていく家族の姿も・・・。 「居合わせた人から、私がよく知る入所者が亡くなったようだ、と聞かされました。なぜ、彼らの人生がこんな形で終わらなければならないのか」と悔しさをにじませます。 事件後、太田さんは再び衝撃を受けました。植松聖容疑者の「障害者は不幸しかつくらない」という発言に共感する声がインターネット上にあったからです。 「容疑者の動機を論じるだけでは解決にならない。弱い立場の人を排除するようなことが、ぽつぽつと出てくる風潮が危険です」◆差別解消へ続けた努力 太田さんが神奈川県職員に採用され、園に赴任してきたのは1968年。園設立から4年後のことです。 職員時代、入所者や家族がうけた差別を肌身に感じてきました。 -家族から「嫁のおまえの血が悪いから、こんな子が生まれた」となじられた母親が、子どもを背負って線路に飛び込もうとしていた。 -園で亡くなった入所者の葬儀を親族がこばみ、ひつぎを引き取らないこともあった。 「本来は、障害があっても地元で暮らせる環境が整っている方がいい。そういう地域社会になっていれば、遠い入所施設に来る必要はない。でも、まだまだそうなっていない」 太田さんは、「せめて、園のある地域を入所者にとって住みやすくしよう」「自分は入所者とかかわり続けよう」と心に決めました。そのため2004年3月の定年退職まで36年間、転勤や昇進を拒否し、園で働き続けました。園から徒歩5分の場所に家を建て、現在もそこで暮らしています。 園の周辺では、障害に対する理解が少しずつ広がりました。県が園建設の交換条件とした職員の地元雇用や、食材・日用品の地元調達も大きな力になりました。住民らが園に直接かかわることで、人権や福祉を学んでいったからです。◆園のあり方、議論深めて 今回の事件は、それらの努力を打ち砕くような衝撃を与えました。事件を受けて、園をどのように存続するのかが大きな課題です。 神奈川県は、施設の建て替えか大規模改修によって園を「再生」する方針を15日に示しました。 太田さんは「施設だけでなく、運営の在り方も含めてみんなで考えるべきだ」と指摘します。県が進めた経費削減で、園の在り方が以前と変わった、と感じているからです。 県は05年に職員らの反対を押し切り、園の運営を民間法人に委ねる指定管理者制度を導入しました。職員が入れ替わり、パートなど一部職員の給与は最低賃金すれすれに下がりました。食事の調理が外部委託されて、食材などを地元調達する約束も、ほごにされました。 「国や県が福祉に効率や採算性を持ち込んだことが、障害者をじゃまもの扱いする一部の風潮に拍車をかけているのではないのか。福祉施設は、障害者と健常者がともに生きる『共生社会』を進めるようなメッセージを発信すべきだ」 指定管理者制度の導入に反対した太田さん。退職後、園とのかかわりに消極的になりました。いま、そのことを後悔しています。 「傍観するのではなく、今度は地域の側から園にかかわりたい。弱者を排除する風潮を止めるためには、みんなで手をつないで前へ進んでいくしかないと思うからです」2016年8月28日 「しんぶん赤旗」日曜版 35ページ「障害者排除の風潮は危険」から引用 重度の障害を持つ人々を一度に19人も殺害するという衝撃的な事件について、メディアはほとぼりが冷めたら全く報道しなくなりましたが、この事件を、私たちは「頭のおかしい人間がしでかした事件」という認識でやり過ごしていいのか、私は疑問に思います。犯人が事件を起こす数ヶ月前に、「重度の障害を持つ人間は、生きていても意味がない」などと言い出したとき、周囲は「こんなことを言うのは、頭がおかいしからだ」と言って、強制的に病院に入院をさせたものの、たった2週間で病院から出てきたのでは、何の意味もなかったわけで、本来は「頭がおかしい」者扱いしないで、優生思想の間違いについて、本人を説得する必要があったのではないかと思います。この事件を、このまま放置したのでは「ああいうこともあり得る」と誤解する勢力が出てくる危険性があるのではないか、心配です。
2016年09月05日
昨日引用した記事の続きで、憲法学者の長谷部恭男氏は、次のように述べています; - 安倍首相は投開票日の翌日、「いかにわが党の案(自民党改憲案)をベースにしながら3分の2を構築していくか。これがまさに政治の技術だ」といいました。 「政治の技術」という発言には、「民意とは尊重すべきものではなく、操作の対象だ」という考えがうかがえます。 自民党の改憲草案はとにかく憲法を変えようとしてつくったものだといえます。”とにかく”文字面を変えようといじっている部分と、立憲主義の基本原則を変えてしまおうという部分とが、抱き合わせになっています。 自民党の改憲草案は筋も通っていません。たとえば日本という国が大事だ、「国民は気概をもって国土を守れ」という文言が前文に入っています。しかし大事にしなきゃいけないのは、その国がまっとうな国だからです。日本がまっとうな国なのは日本国憲法がまっとうだからです。その憲法をおかしな方向に変えようとしながら、国を守れというのは筋が通りません。 日本国憲法は「すべて国民は、個人として尊重される」(13条)とあります。国民一人ひとりを、どう生きていくか考える存在として国は扱いますよという考えです。ところが自民党の改意車案は「個人」を「人」に変えようとしています。大事な原理を骨抜きにするものです。 - 昨年の戦争法(安保法制)の審議の中で政府は「安全保障環境の変化」という説明を繰り返しました。 「変化」について具体的な話は何もなかったですね。 オーストラリアに本部を置く経済・平和研究所(IEP)が、「2016年の世界平和度指数(グローバル・ピース・インデックス=GPI)」を発表しました。世界163カ国の安全度をランク付けしたものです。◆自衛隊派遣は愚の骨頂 それによると、日本は安全な方から9番目です。自衛隊が派遣されている南スーダンは162番目です。ちなみに最下位はシリアです。安倍内閣は自衛隊を平和で安全な日本から、世界で2番目に危険な国へ派遣するだけでなく、「駆けつけ警護」などの新たな任務を課し、武器使用の拡大をしようとしています。安保法制で世界中に自衛隊を派遣してアメリカの戦争に協力するなんて愚の骨頂です。 - 戦争法(安保法制)を廃止して立憲主義をとりもどすというたたかいの展望は。 立憲主義の実現というのは1年、2年の話ではなくこれから何十年かかるかもしれません。 国家にとっての憲法は、人間にとっての人格と同じです。人間がバランスをもって判断できるのは、人格がきちんとしているからです。バランスがいったん崩れるとなかなか元にもどらない。憲法もバランスを元に戻すのは大変です。 安倍首相は改憲に突き進んでこのバランスをさらに壊したいのでしょうが、憲法の平和思想、9条の思想は国民に根付いています。新聞の世論調査でも憲法9条を変えるペきだという人はだんだん少なくなり、守るべきだという人は増えて、「朝日」(5月3日付)では約7割です。そう簡単に、安倍首相の思い通りにはいきません。はせべ・やすお=1956年生まれ。早稲田大学教授(憲法)。元国際憲法学会副会長。「立憲デモクラシーの会」呼びかけ人。主な著書に『法とは何か』『検証・安保法案』(編著)『立憲デモクラシー講座 憲法と民主主義を学びなおす』(共編)2016年8月28日 「しんぶん赤旗」日曜版 2ページ「9条の平和思想は国民に根付いた力」から引用 この記事の冒頭に首相の発言が紹介されてます。読みようによっては、いかに自民党案を国民に押しつけるか、自分の腕にかかっているといったところでしょうか。しかし、民主主義の政治はそういうものではないはずで、有権者は「政治のことは政治家にお任せ」ではなく、自らの意志で政治の選択をしていくべきで、そのための情報提供を、当ブログも微力ながら貢献していきたいと思います。
2016年09月04日
憲法学者で早稲田大学教授の長谷部恭男氏は、憲法改正に否定的でない議員の数が3分の2を超したこのたびの選挙結果について、8月28日の「しんぶん赤旗」で次のように述べています; 安倍晋三首相はこの秋、憲法「改正」に乗り出そうとしています。首相が「改憲」のペースにしようとしている自民党改憲案とはどういうものか。日本国憲法の値打ちなども含め、さまざまな角度から編集部は安倍改憲を追及していきます。第1回は憲法学者の長谷部恭男・早稲田大学教授のインタビューです。<細田晴雄記者>- 安倍晋三首相が憲法「改正」発言を強めています。先の参院選の結果をどう見ますか。 野党統一候補が11の1人区で勝利したのは善戦だと思います。野党共闘がなければとてもここまで持ちこたえられなかったでしょう。衆院選でも野党は選挙協力をしないことには勝負にならないと思います。 よく、野党協力には政策の一致が必要だといわれます。しかし、100%政策が一致しなくては共闘できな事となったら、一つの政党になるしかない。そんなことは現実にはありえません。◆立憲主義の原則定めた現行憲法- 他方、「改憲」勢力が憲法「改定」の発議に必要な衆参両院の3分の2を占めました。安倍晋三首相は首相在任中の憲法「改正」に意欲を見せています。 安倍首相はじめ与党は選挙中、「3分の2の議席を得たら憲法改正します」なんて一切言いませんでした。もっぱら「アベノミクス」のことを訴えていました。ですから選挙結果から、改憲に向けて有権者のマンデート(信任)を受けたなどとはとてもいえません。 しかも「改憲勢力が3分の2」といいますがそれにどれほどの意味があるのか。憲法「改正」といってもどの条項をどう変えたいのか党派によっても議員によっても違います。 日本国憲法は非常に簡潔にできている憲法です。条文の数も多くないし、規定の仕方もそれほどきめ細かくない。「立憲主義の基本原則を定めています」という憲法です。憲法制定当時に予想しなかったような新しい問題が持ち上がったとしても、新たに法律をつくるとか、場合によっては適切な解釈をしていくことでだいたいのことは間に合います。2016年8月28日 「しんぶん赤旗」日曜版 1ページ「国民は信任を与えていない」から引用 もともと長谷部恭男氏や小林節氏は憲法改正について前向きな考えを持った学者で、憲法には改正手続きについても規定しているのだから、その規定に則って、必要があれば改正するのは当然であると主張し、自民党の憲法論議にも積極的に協力する学者であったのですが、安倍晋三氏が大きな顔をするようになってから、これらの学者はガラリと態度を変えました。それもそのはず、安倍氏がリーダーシップをとって作り上げた改憲草案は、現在の憲法をより進歩した方向に改正するのではなく、現憲法が保障する国民の権利に昔のような条件をつけて制限しようという明らかな「改悪」だからです。また、安倍政権の立憲主義に反する政治のやり方なども、これらの憲法学者を敵に回すことになった経緯は、当ブログにもたびたび紹介してきておるところです。こういう野蛮な政権は、早めに終わりにして、我が国の政治をまともな路線に戻す必要があると思います。
2016年09月03日
ジャーナリストの大村アスカ氏は、8月5日の「週刊金曜日」に、今年の参議院選挙に関連して今後の政局について次のように書いている; 参院選、都知事選が終わった。民進党の岡田克也代表は、9月に行なわれる党代表選に立候補しないのだという。岡田氏は、2つの選挙で野党共闘の路線を敷いた。結果、32の一人区全部で野党共闘を実現し、11選挙区で勝利した。 これをどう評価するのか。 その、振り返りと評価の作業が、この党にはないように思われる。これが民進党の甘いところで、足りないところだ。今回の最大の取り組みが野党共闘だったのだから、検証するのは当たり前のことだ。 今回、岡田氏が立候補しなかったことで、野党共闘の路線は変わるのかもしれない。変わるにしてもそうでないにしても、検証をうやむやのままで終わらせるべきではない。もしそうなら、この党は永遠に再生できない。3年前の参院選では、一人区で野党系は2勝しかしていない。だから、一定の成果をあげたのだ、とはよく言われる。 そうだろうか? 2007年の参院選では、29の一人区で23勝しているのだ。個々の選挙区によって事情も違うのだから、詳細に分析してこそ次回以降に生かせるというものだろう。 その数少ない作業をしているのが、同党の馬淵澄夫(まぷちすみお)衆議院議員である。個々の選挙区の分析ではないが、全国的に党勢が回復しているのかどうか、それと野党共闘との関係について、05年以降の国政選挙の結果を総覧して、興味深い分析をしている。詳しくは氏のプログで読めるので参照してもらいたいが、一言でいうと、「民進党の党勢は回復していない」「野党共闘で、民進発も共産党も、それぞれ票を減らしている」という。データとファクト、数字に基づいて議論しているので、説得力があり、なかなか衝撃的な数字だ。 それから、もう一つ、野党共闘について別の観点から指摘しておきたい。一言で「野党共闘」といっても、その裏にはいろいろな思惑が渦巻いていることを忘れてはならない。今回、野党共闘に大きく踏み出したのは、冒頭に記したように野党第一党のトップ、岡田氏だ。けれども、キーパーソンの一人は間違いなくこの人だ。生活の党の小沢一郎氏である。生活の党は今回の参院選で、比例で一人だけ、すべりこんだ。いずれにせよ、党勢は青息吐息である。 さすがの小沢氏もなすすべもないのか・・・というところで、今回彼は野党共闘、なかでも共産党を巻き込む、というところに、自らの起死回生をかけたのではなかったのか。そして、共産党を使っての彼の大勝負は、まだ続いているのではないか。共産党の志位和夫(しいかずお)委員長に小沢氏は「公明党をめざせ」と促したと伝えられている。自公連立政権のような政権構想を描いているのだろう。 もちろん、政治なのだから権力闘争はつきものだし、一つの舟の上の人々が、別々のことを考えているのもそう珍しいことではない。ただ、市民連合をはじめ、野党共闘を推進する人たちはこのことを考えておいたほうがいい。小沢氏が野党共闘の先に何を思い描いているのか、留意すべきだと。 要はそのくらいのタフさとしたたかさを持たなければ、権力闘争を勝ち抜いていけないということだ。数は力であり、その力をつけていくためには、純粋ばかりではいられない。<おおむら あすか・ジャーナリスト>2016年8月5日 「週刊金曜日」1099号 10ページ「大村アスカの政治時評-野党共闘の次狙う? 小沢一郎の政権構想」から引用 この記事は、民進党には「振り返りと評価の作業がない」と言っているが、私も人ごとながら民進党には頑張ってもらいたいので、この党が次ぎの選挙で勝つには、やはり終わったばかりの選挙について、今回の戦術がこれでよかったのか、もっと良い手があったのか、様々な角度から検討して、次の勝負に備えるべきではないかと思います。党首を選ぶにしても、リーダーとしての資質の評価よりもマスコミ受けを優先して女性議員を立てようというような「安易」な姿勢ではなく、自民党とどう戦うかという戦略から、最も適切な人材を選出するべきと思います。
2016年09月02日
大分県で警察が野党支持者を恫喝して選挙活動を妨害するために、野党の活動拠点に監視カメラを設置するという違法行為を行った事件について、8月5日の東京新聞は次のように報道している; 大分県警の捜査員が参院選公示直前、社民党と民進党候補者の支援労組が入居する施設の敷地内に無断でビデオカメラを設置していた。野党を狙い撃ちする警察のやり方はおかしい。(白名正和) 隠しカメラが設置されたのは、連合大分の東部地域協議会や、社民党系労組でつくる別府地区平和運動センターが入居する別府地区労働福祉会館(大分県別府市)。参院選の公示(6月22日)前の同18日夜、大分県警別府署刑事課員2人が、会館敷地内の木の幹などにカメラ2台を設直。公示後の同23日、労組側の依頼で草刈りをしていた業者によって発見された。労組側が映像を確認したところ、会館に出入りする人の姿がきれいに写っていた。 労組側から通報を受けた県警は、自分たちが設置したことを認め、刑事部長名で「他人の管理する敷地内に無断で立ち入ったことは不適切」との談話を発表。一方、設置の目的については「特定の人物の行動確認」「(捜査内容が)参院選に関連した捜査かどうかは言わない」などとあいまいな説明に終始している。 連合大分の関係者男性は「こちら特報部」の取材に「警察権力による不当な監視であり、断じて許せない卑劣な行為だ」と語気を強める。 旧社会党委員長の村山富市元首相を生んだ大分は、伝統的に革新陣営が強い。今回の参院選大分選挙区(定数1)では、連合大分が推薦し、社民、共産両党が支援した民進現職が、次点の自民新人と1910票の僅差で三選を果たした。 会館は、民進候補や、比例代表で落選した吉田忠智社民党党首の運動拠点として機能していた。前出の連合関係者は「選挙妨害が狙いだったと考えている。野党候補の支援者を見張り続けて動向を把握し、支援者を萎縮させて選挙から遠ざけようとする狙いがあったのだろう。気付いていなかっただけで、今までも同じようなことをされていたとしか思えない」と憤る。 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「公職選挙法違反などの犯罪を疑う合理的な理由が説明されていない以上は、選挙活動の監視が目的だったとしか理解できない。選挙の公平さ、思想信条の自由を侵害する憲法違反の警察活動だ」と批判する。 山梨、熊本両県警で捜査二課長を歴任したジャーナリストの原田宏二氏は「選挙期間中は全国の警察が、組織の総力を挙げて候補者を監視する。民主主義の国であるべき捜査かは疑問だ」と指摘した上で、今国の隠しカメラ問題の異常さを強調する。「捜査力が低下し、情報提供者を確保できなくなっている中で、安易な方法に走りすぎた」 上智大の田島泰彦教授(メディア法)は、現下の政治情勢との関連を疑う。「安倍首相は今回の参院選で、野党を敵視する発言を繰り返していた。大分は野党が強く、県警が政権や与党の考えを忖度(そんたく)し、野党の情報収集を何が何でもやろうと考えたのではないか」 心配なのは今後だ。通信傍受(盗聴)の対象拡大や司法取引の導入を柱とした改正刑事訴訟法が今年5月に成立しており、警察側の権力行使の手段が増えている。田島教授は続ける。 「大分県警の謝罪には、市民の権利を侵害したことへの言及がない。『勇み足』ということで収束させたいのだろうが、ことはそれほど単純ではない。警察による不当な監視、権力行使は民主主義社会ではあってはならないことだが、警察側の感覚がまひしていないか。なぜこんなことが起きたのか、誰が指示したのかなど真相を究明し説明する責任が、県警にはある」2016年8月5日 東京新聞朝刊 11版S 28ページ「違憲の疑い 感覚マヒ」から引用 政治的には中立公正でなければならないはずの警察が、野党候補の運動拠点を監視するというのは、あからさまな野党弾圧で、民主主義の社会では許されない行為です。誰の指示でこういうことをやったのか、国会でも取り上げて、個人名を明らかにして責任を追及するべきです。
2016年09月01日
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