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予定通りの開催が可能なのか危ぶまれる大阪万博について、大手全国紙が一斉にチケット販売の広告を掲載したことを、弁護士の白神優理子氏は10日の「しんぶん赤旗」で、次のように批判している; 費用の膨張に国民からの批判が広がっている大阪・関西万博。チケット販売開始の11月30日付の全国紙は、記事とともに、万博のカラー全面広告を一斉に掲載。どうなっているのか。 「朝日」は1面の記事で「万博は成功したら維新の手柄、失敗したら首相の責任」と指摘。2面でも費用増、建設遅れなどを報じています。しかし17面は万博の持ち上げの企画。その下には「万博開幕まで『500日』・・・高まる期待」と企業名などが並びます。18面はカラー1ページを使った「くるぞ、万博」「前売りか断然、お得。入場チケット販売開始」の広告です。 「毎日」も記事では費用増加を問題視する一方、「『ミャクミャク列車』お目見えJR西、きょうから運行」(地方版)との記事や全面広告2づを掲載しています。 「日経」は全面カラー広告2ページと見開きカラーの特集記事。「読売」も、万博推進記事と広告を載せています。「産経」は「会場完成ずれ込み不安視」と伝えますが、見開きで万博推進の特集と広告を掲載。12月2日付「主張」では、「日本の威信がかかっている。中止や延期はあり得ない」と。総じて全国紙は広告を載せる一方、批判は鈍い。 一方地方・ブロック紙は・・・。「東京」(11月29日付)は、万博費用について、「3000億円あれば、保育の質向上、沖繩振興に・・・」と指摘。維新が万博をやめない理由は「万博の先にカジノがあるから。万博はその露払い」との在阪ジャーナリスト、吉富有治氏のコメントを掲載しています。 北海道新開(11月27日付)も「万博が失敗に終われば投資額1兆円のIRにも影響が避けられない。維新の党勢を左右しかねないというわけ」と鋭く指摘します。 巨額の広告費を出してもらいながら、万博批判が本当にできるのか。全国紙には権力監視の報道の原点に立ち戻ってほしい。(しらが・ゆりこ=弁護士)2023年12月10日 「しんぶん赤旗」 日曜版 31ページ 「メディアをよむ-全国紙一斉に万博広告」から引用 白神弁護士が批判するように、記事では「経費が当初予算を大幅に上回る見通しだ」とか「参加国のパビリオン建設申請が、まだほとんど始まっていない」などと批判的な報道をしておきながら、広告では「いよいよ万博です」などと持ち上げて、いただける広告費はしっかりいただきます、という姿勢は、どこか読者を馬鹿にしているような気配が感じられて、そういう姿勢では国民もあまり真剣にものを考えてもしかたがないという気分になるのもうなずけます。しかし、19世紀や20世紀始めの頃のように、「外国」が物珍しかった時代と違って、現代は海外旅行は手軽に行けるし、わざわざ出かけて行かなくてもテレビやインターネットで異国の町の様子や有名な観光地の映像もふんだんに見られる時代に、わざわざチケットを購入してゴミを埋め立てた人口島に出かける「意味」がないし、予定どおり開催されるかどうかも分からない催事のチケットを、前もって購入するのが「お得」など、庶民をたぶらかすような広告は大手新聞の矜持として慎むべきだと思います。
2023年12月31日
自民党安倍派の閣僚が更迭されるきっかけとなった「裏金疑惑」を告発した神戸学院大学教授の上脇博之氏は、不正の温床である政治資金パーティーについて、10日の「しんぶん赤旗」で次のように述べている; 昨年11月に日曜版が5派閥のパーティー収入不記載をスクープした際、私は「パーティー券の売り上げ総額を過少にして裏金をつくっているのではないか」とコメントしました。その指摘が的中しました。 裏金づくりや、派閥のノルマを超えて売ったパーティー券のキックバックは、事務方だけでやれることではありません。派閥トップなど国会議員の関与なしにはできません。◆規正法に違反 麻生派の会合で幹部がキックバックを裏金で議員に渡していたことや、安倍派の会合で「今年はキックバックしない」と伝えていたことが日曜版の取材で判明したのは重大です。派閥ぐるみ、自民党ぐるみの組織的行為であることを示すものだからです。 ノルマ超過分を派閥が議員にキックバックした際、収支報告書に記載されていない、いわゆる裏金は当然、政治資金規正法違反です。◆「対価性」なし 一方で大手メディアは、キックバックがあっても収支報告書に記載していれば問題なしとしています。しかし政治資金パーティは対価性があることが大前提。この点からみるとおおいに疑問です。 形式的には派閥にパーティー券売り上げのお金が入り、その売り上げから派閥が議員に寄付をしているようにみえます。 しかし派閥にキックバックの仕組みがあれば、その所属議員は企業などからお金を集めれば集めただけ、自分への寄付が増えることになります。 なぜなら議員自身は派閥パーティーの経費を払っていません。パーティー券をノルマ以上に売れば、その分がそのまま自分のもうけになることを承知で、パーティー券を販売しているからです。 これでは売る側の議員にはまったく対価性がない。パーティーの体をなしておらず、単なる金もうけです。このようなカネ集めを認めて良いのかという大問題です。 そもそも政党助成制度は腐敗の温床である企業・団体献金をなくすという口実で導入されました。しかし政党支部が企業・団体献金を受けられるという仕組みは温存されました。 もう一つは政治資金パーティ。パーティー券の大半を企業・団体が大量に買っているのが実態で、形を変えた企業・団体献金になっています。裏金づくりなど不正の温床にもなっています。 政党助成法を廃止し、パーティー券購入を含む企業・団体献金を全面禁止するなど徹底した改革が必要です。2023年12月10日 「しんぶん赤旗」 日曜版 7ページ 「政治資金パーティー自体が不正の温床」から引用 この記事は、現在東京地検特捜部が捜査している「裏金疑惑」が国会議員逮捕にまで発展するかどうかを予測する上で重要な情報を提供している。パーティー券の売上がノルマを超えた場合に、超過分をキックバックするとか裏金にするというような「判断」は事務方だけでできる話ではなく、派閥のトップとか党幹部のような地位にある国会議員が関与しなければできない話だ、ということになれば当然、麻生太郎や岸田文雄も捜査の対象になって当然であり、もしそうならないのであれば、地検特捜部は途中で挫折したと見なければならないのだと考えられます。
2023年12月30日
玉木俊明著「戦争と財政の世界史」(東洋経済新報社)について、京都大学教授の根井雅弘氏は9日の東京新聞に、次のような書評を書いている; 「持続的経済成長」を前提とする社会システムは消滅の運命にある-本書はこう主張する警世の書である。 近代世界システム論で有名なウォーラーステインの説では、「持続的経済成長」は17世紀のオランダから始まった。当時のオランダは、七つの州が公債を発行し、戦費を調達し、―人当たりの税負担がヨーロッパでも多い国だった。だが、公債を返済できたのは、「持続的経済成長」が実現されていたからである。 これに対して、18世紀のイギリスは、フランスとの戦争に勝利するために、イングランド銀行に巨額の国債を発行させ、その返済を議会が保証するという形の資金調達を行った。しかし、ここでも、イギリスが長期的に何とか借金を返済できたのは、「持続的経済成長」が当然のことのように前提されていたからだ。19世紀初頭、イギリスの公債発行額の対GDP比は200%近かったが、経済成長のおかげで、19世紀末にはその比率は30%ほどになった。「大英帝国」が、海運業や金融業からの収入や植民地からの収奪に支えられていたことも公債依存度の低下に寄与した。 日本も日露戦争の巨額の戦費を、欧米の外債市場での国債発行によって調達したが、その借金を最終的に1986年に完済できたのは、やはり経済成長のおかげである。 ところが、最近、先進諸国は少子高齢化と社会保障費の増大によって公債依存度が高まるようになっている。「持続的経済成長」が期待できなくなった現在、その借金は返済できるのだろうか。著者は、それはもはや持続可能ではないレベルに達していると主張する。 イノベーションによって経済成長はまだ実現可能であるという反論はある。だが、「持続的経済成長」を前提にした社会システムが消滅の危機に瀕しているという著者の主張は、「脱成長論」とはまた別の文脈で、成長至上主義に警鐘を鳴らすものである。やや悲観的に過ぎるところもあるが、歴史的視野をもって財政問題を考えるときに参考になるに違いない。<たまき・としあき 京都産業大教授・近代ヨーロッパ経済史。『ヨーロッパ覇権史』など。>2023年12月9日 東京新聞朝刊 10ページ 「読書-公債返済の前提が破綻」から引用 経済というのは、政治よりも複雑で理解が難しい点があるように、私には思えるのだが、この記事はなかなか興味深い。オランダもイギリスもかつては莫大な借金をかかえた国であったが、どちらも植民地の搾取や国内産業の活性化で経済を成長させたから、その莫大な借金を返済できたのであったが、日本も日露戦争を戦うにあたって莫大な借金を抱え、その借金を払い終えたのは1986年であったと、この記事には書かれているが、これは本当であろうか。今から40年ほど前は、私は現役サラリーマンであったが、あの頃「日露戦争のときの借金をようやく完済した」というようなニュースを聞いた記憶はないから不思議である。ちなみに江戸東京博物館のホームページには、「日露戦争費調達のために発行された債券の元利償還が終了した時期については、確認できる資料が見つかりませんでした。」との記述があるのみで、国の借金という重大事項について、この程度の認識でやり過ごしていいものなのか、大きな疑問を禁じえません。
2023年12月29日
日本が先の十五年戦争で敗戦国となる前と後とで、日本人社会がどのように変化したか、8日の朝日新聞は次のように書いている; 真珠湾攻撃で命を落とした若者は、「軍神」とたたえられた。自己犠牲の美談にあおられ、戦意を高めた国民のまなざしは戦後、一変する。太平洋戦争の開戦から8日で82年。研究者は、時代の空気を支えたものに目をこらすよう訴える。 1942年春ごろ、前橋市の農家の前に黒塗りの車が止まった。降りてきた軍服姿の嶋田繁太郎海相らが、わらぶきの家に入った。当時6歳の岩佐直正さん(87)はその様子を見ていた。 嶋田海相らが訪ねたのは、真珠湾攻撃で戦死した岩佐直治さん(享年26)の実家。直正さんの叔父にあたる。攻撃後に母艦に戻るのが難しい、2人乗りの小型潜水艦「特殊潜航艇」に乗っての出撃だった。 計5隻の乗組員のうち軍部は捕虜になった1人の存在を隠し、戦死した9人を神格化。直治さんは死後、大尉から中佐に2階級特進し、新聞やラジオは「九軍神」とまつり上げた。直治さんの歌や映画が作られ、地元の寺に墓も建てられた。 直正さんも気づけば「海軍に行く」と口にしていた。周囲の子どもたちも同じだった。 だが、終戦を境に世間の視線は変わる。墓参りに訪れる人は減り、「空襲で前橋が狙われたのは、軍神がいたからだ」となじる人もいた。 いつまでも「軍神のおい」と見られることに違和感を抱えながらも、気にしないように生きてきた。それでも、いまだに同窓会で「おじさんのお墓参りをさせられた」と言われることもある。 戦時下、犠牲をいとわず、国を挙げて戦争を続ける空気は当たり前だった、と直正さんはふり返る。「異常だった。今となっては間違いだと分かるが、当時それに気づくのは難しかった」 世界では今も、ロシアのウクライナ侵攻や、イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突が続く。その報道に触れるたびに、戦時下の日本社会を思い起こす。 「戦意があおられた記憶を継承するのは大切なこと。『軍神』をつくる世の中に二度とならないでほしい」と願う。(三井新) ■プロパガンダ、現代にもあふれる 近現代史研究家・辻田真佐憲さん 真珠湾攻撃での「九軍神」による戦果発表は、大本営によるプロパガンダ(政治宣伝)だ。「戦艦1隻を撃沈」と発表したが、戦果はうそで国民の戦意高揚に利用した。戦争末期の特攻隊報道でも人々の感情を刺激し、戦局の悪化を糊塗(こと)した。 それでも開戦当初の大本営発表は比較的「誠実」だった。特殊潜航艇の戦果のように虚偽もあったが、それ以外はおおむね正確。戦果の捏造(ねつぞう)や損害の隠蔽(いんぺい)は、戦局の悪化で加速した。要因の一つが、報道機関の権力チェック機能の放棄だ。 戦況という、国民の一大関心事を書いた新聞はよく売れた。軍は「情報を教えるから批判的なことは書くな」と、報道機関と協力関係を築いていく。両者はやがて従属関係になり、一体化する。 この歴史から得られる教訓は、メディアの独立の重要性であり、感情を揺さぶる情報との距離のとり方だと思う。 ウクライナやパレスチナの戦争では、刺激的な動画がネット上に流布している。SNS社会に対応した形だが、過去を知る人なら、古典的なプロパガンダだと気づける。「敵はとんでもないやつらだ」「自分たちは被害者」という、単純なメッセージを対立する双方が繰り返し発している。 現代社会はプロパガンダであふれている。日本でも、政府はメディア対策に熱心だし、各政党がSNS上で巧みに支持を訴えている。過去を学ぶことが、これらと付き合う際の「ワクチン」になるのではないだろうか。(聞き手・後藤遼太)◆キーワード<真珠湾攻撃> 1941年12月8日(現地時間7日)、旧日本海軍の空母6隻、航空機約350機などからなる機動部隊が、ハワイ・真珠湾にある米軍基地を奇襲攻撃した。米軍は艦船6隻が沈没するなどの損害を受け、約2400人が死亡。直前には陸軍も英領マレー半島へ上陸し、太平洋戦争が始まった。2023年12月8日 朝日新聞朝刊 13版 27ページ 「真珠湾の『軍神』国民の視線一変」から引用 戦前の日本は、国民が教育勅語を叩き込まれて育ったので、天皇が神の子孫であり国民は天皇を守るためには命を惜しまずに国のために戦うのだと教えられ、それが社会の「常識」となっていたので、国の言うことに多少の疑問を感じても、それを口にすることは遠慮して周りに合わせるのが日本人としての「作法」であった。そういう社会では、上の記事が示すように、国家権力は国民を騙してでも国策遂行を優先するもので、それは国民にとって悲惨な「敗戦」という結果をもたらしたのであった。戦後の日本が制定した新しい憲法では、この国を統治するのは天皇ではなく、「国民」であることが宣言されたので、我々国民はこれからの世の中では、「命を懸けて国を守る」というような間違った考えを捨てて、全ての国民が安らかな人生を過ごせるように、国がすべての国民に豊かな生活を保障する国家機構を目指すべきです。戦後の日本は、これまで自衛隊はあっても「専守防衛」に徹し、他の国々と戦火を交えることを避けてきました。それが、安倍政権以降は雲行きが怪しくなってきているのは由々しい問題です。金の力で票を集めるような政党は相手にしないで、憲法の精神をよく理解した政党に投票を集中して、私たちの国が戦前体制に戻ることにブレーキをかける時に差し掛かっていると思います。
2023年12月28日
安倍政権が国会審議を途中で打ち切り、強行採決で成立させた憲法違反の特定秘密保護法が施行されてから10年になる12月6日の東京新聞は、平和主義のはずの日本が「戦える国」へ変質している事態を、次のように報道している; 安全保障などに関する政府の情報管理を強化し、国民の「知る権利」を侵す恐れも指摘される特定秘密保護法は6日、成立から10年を迎えた。2012年末に発足した第2次安倍政権が戦後の外交・安全保障政策を次々と転換させ、憲法9条に基づく平和国家の姿を変質させていくきっかけとなった。「戦える国」に向けた動きは、岸田政権下でより内容を伴ったものとなっている。◆「専守防衛」形骸化の出発点 特定秘密保護法の成立から10年、「戦える国」に向けた政策転換が相次いだ。(小椋由紀子) 第2次安倍政権は2013年12月4日、首相や一部の閣僚だけで重要な外交・安保政策を決められる「国家安全保障会議(NSC)」を発足させた。その2日後、米国と共有する防衛機密などの漏えいを防ぐことを目的とした特定秘密保護法が自民、公明の与党の賛成で成立。政権中枢に権限と機密情報を集中させた。 14年4月、武器輸出三原則を見直し、禁輸政策を転換。武器の輸出や他国との共同開発を事実上解禁する防衛装備移転三原則を閣議決定した。同年7月には、歴代政権の憲法解釈を変更し、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を閣議決定。集団的自衛権行使や米軍支援拡大などを可能とするための安全保障関連法は15年9月に成立した。 17年6月には、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を含んだ改正組織犯罪処罰法も成立した。運用によっては、政府に批判的な団体への圧力になるとの懸念もある。 岸田政権も安倍政権の路線を引き継ぐ。22年12月に閣議決定で改定した安保関連3文書には敵基地攻撃能力(反撃能力ビの保有を明記。憲法9条に基づく「専守防衛」を形骸化させるとの指摘は根強い。現在は自民、公明両党で武器輸出ルールの緩和に向けた協議が続いている。 第2次安倍政権以降、日米の軍事的な一体化と情報管理の強化が進んだ。国民の権利侵害や憲法違反の懸念が拭えないまま、戦争ができる国づくりに向けて、政府の意思決定と政策遂行の密室性は高まっている。【用語解説・特定秘密保護法】防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、国の安全保障に関連した政策や自衛隊の活動などに必要で秘匿性が高いと判断された情報を特定秘密に指定し、流出しないようにするための法律。2014年12月施行。公務員らが外部に漏らした場合、最高で懲役10年が科される。指定の有効期間は原則最大30年で、内閣の承認があれば延長できる。2023年12月6日 東京新聞朝刊 12版 1&2ページ 「秘密保護法10年-『戦える国』へ変質続く」から引用 自民党政権が武器輸出三原則を決めたのは60年代であり、そのころ野党第一党は日本社会党だった。当時も社会党はなかなか政権を取るところまではいかず「万年野党」と揶揄される存在であったが、しかし現在の立件民主党に比べれば、はるかに強力な存在感を示しており、優れた調査能力を駆使して与党議員の不正を暴くというようなことが度々起きるので、「爆弾男」という異名で呼ばれる名物議員もいるような状況だったので、さしもの自民党も「武器輸出三原則」という憲法の精神に則った「方針」を打ち出さざるを得なかったわけです。しかし、その後、右翼と財界に指導された自民党は、国鉄民営化をはじめとする公共事業の民営化を武器に労働組合の弱体化を進めると、社会党議員はどんどん落選し、今では参議院にただ一議席を占めるだけの存在となっています。こうなると、安倍政権のように、憲法などはどうでもよくて、裏金はつくるし武器は輸出するし、専守防衛だったはずの自衛隊も米軍の指揮命令の下、世界のどこへでも出かける事態になってしまいました。このような憲法違反の政治を、なぜ国民は黙って許しておくのか、不思議です。
2023年12月27日
来年が台湾出兵から150年に当たることにちなんで、歴史家で琉球大学准教授の大浜郁子氏は6日の朝日新聞に、次のように書いている; 2024年、近代日本最初の海外派兵である「台湾出兵」から150年を迎える。 1871年に琉球の漂流民が「台湾原住民」に殺害される事件が起き、これを口実に74年に日本が台湾出兵を強行して、属領民殺害に対する義挙であると清に認めさせた。一連の出来事を「牡丹社事件」という。清と日本に両属していた琉球王国を崩壊させ、日本が併合した79年の「琉球処分」の契機ともなった。 沖縄では、沖縄が出兵を引き起こした「加害者」で、その後の台湾植民地統治の「先兵」でもあったとみなす誤った解釈をする向きもある。 しかし、琉球処分以前の台湾出兵に、琉球人は一人たりとも出征してはいない。事件翌年に藩へ降格させられた琉球藩王の尚泰も、明治政府に出兵中止を要請していた。日清両属の現状維持を望み、清を刺激しないようにとの意図があったためだ。日本の台湾出兵の目的は琉球の領有権を主張することにあり、問題の本質は琉球の帰属にあった。史実に即してみれば、琉球は台湾出兵の被害者であるというほかない。 台湾出兵には、史実がまだ正確に把握されていない点が多々ある。 日本の教科書では、殺害された琉球島民を長らく「漁民」と表記してきたが、実際には地方役人だったため「漂流民」と修正された。近年も現地の「牡丹社事件紀念公園」の説明板に、漂流民殺害は原住民の正当防衛であるという趣旨の記述があったことに対し、漂流民の遺族の声を受けて宮古島市議会でも取り上げられた。修正後も不十分な記述が残り、問題は解決していない。 他方、日本軍に討伐された牡丹社の住民は、原住民の口承と史資料に基づく研究によれば、実際の加害者ではなかった可能性もある。台湾出兵が確証を持ってなされた「復仇(ふっきゅう)」なのか疑義が生じている。史実の究明は緒についたばかりなのである。 2021年、台湾で牡丹社事件ドキュメンタリー「SEVALITAN」が公開された。琉台日清米の多角的視点から検証した映像記録は、異なる歴史認識をもつ国や地域を架橋する意義があり、事件を正確に後世へ伝えようとする好例である。 台湾出兵150年を迎えるにあたり、将来的な和解に向けて、史実の究明のさらなる深化が求められる。日本と沖縄と台湾のこの不幸な出来事は、沖縄の命運が、沖縄の頭越しに、沖縄の意向を無視して、大国間で強行決定されていった初発の事件であった。今そこから得られる教訓を肝に銘じる必要がある。<おおはま・いくこ 琉球大学准教授(日本近現代史)>2023年12月6日 朝日新聞朝刊 13版S 15ページ 「私の視点-沖縄の意向無視 教訓胸に」から引用 沖縄はその昔、琉球王国と称して清朝中国と日本に対し等距離外交をしていたが、領土を広げようと考えた日本が、琉球の漁民が台湾の牡丹社住民に殺害されたから、報復として日本は台湾に出兵すると、当時の中国に通告し実際に出兵したのであったが、実際に日本軍に討伐されたのは加害者ではなかった可能性が、最近の研究で明らかになりつつあるとのことで、これは歴史の真実を明らかにする必要があると思います。かつての日本は、アイヌの人たちが自由に生活していた北海道を国土に編入し、台湾出兵のあと沖縄を編入し、そのあと朝鮮半島を編入しようとしますが、北海道や沖縄であれば、日本語の使用を強制してうまくいったかもしれませんが、朝鮮半島をまるごと日本語強制といっても、そうは問屋がおろすはずもなく、そのような強硬姿勢が国際社会の批判を浴びて世界を相手に戦争をすることとなり自滅したのは、誰もが知っている通りです。しかし、上の記事が示すように、いまだに日本政府は台湾出兵を始め、様々な史実を隠ぺいしているようですが、いずれ学問がすすめば、やがては全てが明らかになる時代が来ると思います。
2023年12月26日
神奈川県が朝鮮学校に通う子どもたちに対する学費補助金の支給を停止している問題を解決するための学習会が、横浜市で開かれたことについて、3日の神奈川新聞は次のように報道している; 外国人学校のうち、朝鮮学校に通う子どもたちに対してのみ学費補助金の支給を停止している県の差別政策の是正を求める学習会が2日、横浜市内で開かれた。県は「補助再開は県民の理解が得られない」と繰り返すが、桜井みぎわ弁護士は「憲法は少数者の人権保障のためにある。多数派である『県民』の理解が得られないからといって少数者の人権侵害が正当化されることはない。憲法のイロハを踏まえていない主張だ」と切り捨てた。(石橋 学) 県弁護士会人権擁護委員会の委員長である桜井弁護士は2018年、憲法と国際人権条約に違反する差別をやめるよう黒岩祐治知事に求めた「警告」の発出に携わった。 県は朝鮮学校の教科書に拉致問題を盛り込む改訂がなされていないことを理由に16年度から補助金を停止した。中華学校やインターナショナルスクールなども支給対象だが、要件にない教育内容が問題視されているのは朝鮮学校だけ。同委員会の調査報告書では「拉致を行った国家と朝鮮学校を結び付け、児童・生徒と無関係で関知し得ない条件を課している」といった不当性を数々指摘している。 桜井弁護士は保護者へのアンケートや聞き取りの結果を紹介。▽子どもたちは「自分たちは日本社会に受け入れられていない」というマイナスのメッセージを受け取り、自己肯定感を育めない▽「自分たちは何の罪を犯したというのか。在日に生まれたことが罪なのか」という作文を書いた子どもがいる−−といった深刻な被害を県が生みだし続けていると強調した。 4月施行のこども基本法は、国籍に関係なく全ての子どもの最善の利益を最優先に考慮すると定めているとして、「この法律を基に状況を打開したい。東京都では条例もでき、議員が動き始めた。政治的に知事を動かしていくことが必要だ」と力を込めた。 川崎朝鮮初級学校の姜珠淑(カンジュスク)校長も「同じルーツの友だちと自然に朝鮮語を話し、アイデンティティーを育める場はほかにない」と民族教育の必要性を訴えた。 学習会は実行委員会の主催で約80人が参加した。県議と横浜、川崎市議計8人も出席し、「日本人の私たちが同じ県民の仲間として声を上げていかなければならない。議会の雰囲気を変えることも大事で、差別をやめろという声を広げていきたい」「被害を受けているのは子どもたちだ。権利回復に取り組み、多文化共生のまちの象徴である朝鮮学校を超党派で守っていきたい」と約束していた。2023年12月3日 神奈川新聞朝刊 18ページ 「差別禁止法を求めて−朝鮮学校補助 再開を」から引用 朝鮮学校差別をやめようとしない神奈川県当局は、「朝鮮学校の生徒支援は県民の理解が得られない」と、鬼の首でもとったかのように言うが、外国人学校の生徒を支援するのは個々の生徒の「学習する権利」を保障するための制度であり、県民の多数決で「この学校は良いが、あの学校はダメ」というような「差別」をしてはならない問題であり、むしろ県当局は理解の足りない県民を啓蒙するためにも、この国に暮らす子どもたちは国籍の如何を問わず等しく学ぶ権利があることを教え諭すために、朝鮮学校生徒の学費支援を再開するべきだと思います。
2023年12月25日
自民党議員がパーティ券を売って得た金額を政治資金報告書に記載せずにフトコロに入れたとされる「裏金問題」が報道され始めたころ、ジャーナリストの古住公義氏は3日の「しんぶん赤旗」に、次のように書いている; 自民党主要5派閥が4000万円の政治資金パーテイーの収入を政治資金収支報告書に記載していなかった疑惑が大きな問題になっています。この問題は「しんぶん赤旗」日曜版が1年前にスクープしていました。政治と金に目を光らせる報道姿勢に改めて敬意を表します。この問題をめぐるテレビ報道を振り返ってみます。 11月22日の「ニュースウオッチ9」(NHK)は国会審議を紹介し、政治部デスクが「説明を尽くし、信頼回復ができるか問われる」と解説。「報道ステーション」(テレビ朝日系)も大越健介キャスターが同様のコメント。「二ユース23」(TBS系)はストレートニュースだけでした。 その後の追跡報道では24日、NHKの「ニュースウオッチ9」が独自に去年1年分の政治資金報告書を調べ、自民党4派閥と1グループに計約600万円分の不記載が見つかったと報じました。25日の「NHKニュース7」でパーティー券購入の団体関係者の声を紹介しましたが、総じて政治とカネにメスを入れる姿勢でなく残念でした。 そんな中、注目したのが「サンデーモーニング」(26日・TBS系)でした。刑事告発した上脇博之神戸学院大学教授の「単純ミスではない。裏金により政治が動かされる」とのコメントを紹介。星浩コメンテーターも「自民党の政治資金の構造的な問題があぶりだされた」と。スタジオでは松原耕二コメンテーターが「政党助成金を導入し、企業団体献金はやめようとなったのに二重取りが続いている」と指摘しました。 25日の「ウェークアップ」(日本テレビ系)では、若狭勝弁護士が「(政治資金パーティーは)裏金づくりには最適な場所」と言及していました。 ”形を変えた企業献金” ”政治資金の抜け穴”といわれる政治資金集めパーティーのヤミに、各局総力挙げた報道が求められます。(こすみ・ひさよし=ジャーナリスト)2023年12月3日 「しんぶん赤旗」 日曜版 31ページ 「メディアをよむ-パーティーの闇に迫れ」から引用 この問題が報道され始めた頃は、この記事のように5派閥で数千万円という情報であったが、その後捜査が進んだのか、調査報道の成果か、安倍派だけで5億円を越えるという事態が明らかになり、さすがの岸田首相も安倍派閣僚を全員交代させざるを得なかった。しかし、二階派にも同じ問題で検察の捜査が入ったというのに、二階派の閣僚は「温存」するという、岸田氏らしい「ダブルスタンダード」で、支持率低下に拍車をかける事態になっている。いずれにしても政治資金規正法は、自民党が主導して作った法律だけに、抜け穴だらけだから、今回このように大騒ぎをして、一体どの程度の「事態の改善」が期待できるのか、まったく予想は出来ません。無駄な空騒ぎに終わらないようにお願いしたいものです。
2023年12月24日
米、英、仏、カナダ、韓国、日本など20カ国がCOP28の会議に合わせて、2050年までに原発を今の3倍に増やすとの声明を発表したと、3日の東京新聞が報道している;【ドバイ=共同】米国や日本など約20の有志国が、世界の原発の発電能力を2050年までに3倍に増やすとの宣言をまとめたことが分かった。気候変動対策の一環としており、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)首脳級会合に合わせて打ち出した。環境団体は「誤った対策だ」と批判している。 日本は再生可能エネルギーを拡大する有志国誓約にも参加。温室効果ガスの削減対策として原発と再生エネを共に活用する姿勢を示した。 宣言は、気候変動対策に「原子力は重要な役割を果たす」と明記。発電能力を20年と比べ50年までに3倍にするため、参加国が協力するとした。日米のほかカナダ、フランス、韓国、ウクライナ、英国などが名を連ねた。 原発は発電時に温室効果ガスを排出しないが、事故リスクなど課題も多い。宣言を受け、国内外の環境団体が連名でコメントを発表。気候危機に対処するためには「一刻も旱い化石燃料の廃止が必要で、原発をはじめとする誤った気候変動対策は真の対策を遅らせる」と訴えた。米国で次世代型原発の小型モジュール炉の建設計画が中止されたことにも言及し、原発を3倍に拡大するのは「全く実現可能性がない」と批判した。 日本政府は、原発の60年超運転を可能にするなど原発利用を推進している。現行計画で30年度の電源構成は20~22%を見込む。2023年12月3日 東京新聞朝刊 12版 1ページ 「『原発3倍に』日米など宣言」から引用 日本国内では新しく原発を建設するどころではなく、今ある原発を一日も早く再稼働させて建設に掛かったコストを早く回収したいというのが、電力各社の本音と思われる。そのために日本政府は、今まで40年としていた「原発の寿命」を、科学的根拠もなしに勝手に「60年」と決めて再稼働を目論んでいるのだが、今のところ原子力規制委員会がまともに機能しており、電力各社のレベルの低い「ごまかし」を見逃すことなく指摘して是正を勧告しているので、既に完成している原発の稼働も覚束ないのに、これを3倍に増やすなど「何を寝言を言ってるのか」という感想しかない。これまでもそうであり、今後もそうであろうと思われるが、原子力発電は無限にコストが掛かるもので、これで利益を出すことは不可能であるのが現実だ。次世代型は「小型モジュール」だなどと言ってるが、この記事でも触れているように、既に採算が取れるビジネスにはなり得ないという「結論」がアメリカで出ている。見切り発車で始まった原子力発電で、最大の問題は核のゴミをどう処理するか、という点である。数十年前に原発を稼働させた時点では、そのうちに学問が進み新しい技術が開発されて、核のゴミ問題も解決されるであろう、などと夢のような話をしていたが、何十年経っても一向にそのような技術は出現せず、原発を稼働する限り有害な核のゴミは増え続けるのは、今後も同じなのだから、日本のように狭い国土で、しょっちゅう地震が発生する国では、原発稼働は「亡国への道」であることは間違いない。
2023年12月23日
自民党では30年前から党所属の議員がパーティを開いて、パーティ券の売上げ収入を政治資金報告書に記載せずにフトコロに入れる違法行為が公然と行なわれていたことが、最近になって明らかになっているが、このようなカネまみれの自民党政治について、現代教育行政研究会代表の前川喜平氏は3日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 今や事実上の企業団体献金である自民党のパーティー券収入。安倍派では所属議員に販売ノルマを課し、それを超えた収入は議員に裏金としてキックバックしていたらしい。裏金の総額は5年間で1億円を超え、東京地検特捜部は政治資金規正法違反での立件も視野に調べているという。 このキックバックについて11月30日、安倍派の塩谷立座長は「そういう話はあったと思う」と言った。その後撤回したが時すでに遅し。この人は根が正直なのだ。 根が正直と言えば石川県の馳浩知事もだ。自民党五輪招致推進本部長の時、当時の安倍首相の了解の下、官房機密費でIOC委員に高価なアルバムを贈ったと明かした。 パーテイー券収入による裏金づくりも官房機密費の濫用も、自民党内では公然の秘密であることがうかがわれる。あまりに公然なので、つい秘密であることを忘れてしまったのだろう。 2019年参院選での河井克行・案里夫婦の買収事件は記憶に新しいが、今度は柿沢未途前法務副大臣が江東区長選でカネを配り、買収の疑いで捜査を受けている。 自民党政治で潤う財界が自民党にカネを出し、自民党はそのカネをつぎ込んで選挙に勝つ。勝った自民党はまた財界のために政治をし、国民の税金を私物化する。カネまみれの自民党政治。もうやめさせよう。(現代教育行政研究会代表)2023年12月3日 東京新聞朝刊 11版 19ページ 「本音のコラム-カネまみれの自民党政治」から引用 そもそもは財界のカネが自民党にばかりつぎ込まれて、野党は労組のカンパで細々と選挙活動をするしかないという不公平な事態を改善するために、各政党に議席数に応じて政党助成金を支給するという法律が出来上がったのであったが、政党助成金ともなるとまさかこれを「買収」に使いました、と報告するワケにもいかず、自民党員ともなると、彼らは政治活動と称して講演会とか討論会とか、そのような高級な活動のやり方を知らず、やることと言えば、現金を握らせて投票を約束させるという「違法行為」しか思いつかないという人たちですから、国から支給される政党助成金を有効に使う術をしらず、どうしても裏金に頼ることになるわけです。有権者がその辺を賢明に判断して、カネを使うことしか考えないような世襲議員に投票することをやめて、まともな政策を訴える候補者に投票するという政治的なセンスを身につけないことには、レベルの低い自民党議員が蔓延ることを防ぐのは難しいと思います。
2023年12月22日
安倍首相(当時)は普段から自分が気に入る発言を繰り返す黒川検事長を優遇し、検察庁の長年のルールを無視して東京高等検察庁の検事長にまで抜擢したのであったが、それを無理やり検事総長に取り立てるために、その年の3月に停年退職の予定だった黒川氏の退職を突如延期して、雇用を継続し、数ヶ月後には検事総長に任命する腹づもりであったのが、実はその直後、「文春砲」が賭けマージャンの現場に踏み込んだ様子を報道したため、検事総長就任の話は流れてしまったのであったが、この時に、黒川氏を抜擢する目的で退職時期を延期したのは公務員法に違反するのではないかとの裁判が大阪地裁で開かれ、元法務省事務次官が証人として出廷し、証言したことを、2日の毎日新聞が、次のように報道している; 黒川弘務・東京高検検事長(当時)の定年を延長した閣議決定(2020年1月)を巡り、関連文書の開示の堤非が争われている訴訟で、当時の法務事務次官、辻裕教(ひろゆき)氏(62)の証人尋問が1日、大阪地裁であった。黒川氏の定年延長については安倍晋三政権(当時)による恣意(しい)的な人事との批判があるが、辻氏は検察官の定年を延長させる必要があったとして「黒川氏のためではない」と否定。一方、政権との事前協議があったのかなど具案的な人事プロセスについては回答を避けた。 検察官の定年は当時、検事総長は65歳、その他は63歳(段階的な引き上げで25年度から65歳)。国家公務員法には最大3年の定年延長を認める規定があるものの、政府は従来、検察官には適用されないと解釈してきた。しかし、安倍政権は20年1月31日、2月8日に63歳となる黒川氏の定年を半年延長すると閣議決定。安倍首相は法解釈の変更によるものだと事後に国会で説明したが、政権に近い黒川氏を検事総長にするための強引な人事だと野党が追及した経緯がある。 証人尋問では、法解釈変更は黒川氏のためだったのか▽安倍政権側からの要請があったのか――などが焦点となった。辻氏によると、閣議決定の約2週間前の1月16日、法務省刑事局から「社会情勢の変化に伴って犯罪の性質も複雑化し、検察官にも勤務延長が必要だ」との報告を受けた。検察官にも国家公務員法の定年延長規定が適用されるとの解釈が可能だとする内容で、辻氏も法解釈の変更はできると判断。森雅子法相(当時)に報告し、口頭で了解を得たとしている。その後の内閣法制局や人事院との協議でも異論はなかったとし、法解釈変更の政府見解が確定したと説明した。 辻氏は、「解釈変更は黒川氏の勤務延長を目的としたものか」との質問に対し、「そのようなことはない」と否定。また黒川氏の定年延長に関して政権と事前にやり取りがあったかについては「職務上の秘密にあたる」「個別の人事に関すること」などと繰り返し、協議の有無を含めて明かさなかった。 訴訟は22年、神戸学院大の上脇博之教授が起こした。解釈変更について法務省内で協議した過程を記した文書を情報公開請求したが、ほとんどの文書が「存在しない」として一部しか開示されなかったとして、不開示決定の取り消しを求めている。【安元久美子、鈴木拓也】◆「違和感」裁判長指摘 省庁の元事務次官が法廷に立つという異例の証人尋問は、大阪地裁の大法廷で約3時間行われた。 辻氏は19年1月、東京高検検事長に就いた黒川氏の後任として事務次官に起用された。辻氏も検祭官出身で、同じ東京大学の出身である黒川氏の3期下。21年9月に事務次官から仙台高検検事長のポストに移ったが、証人尋問が決まった後の23年7月に退職している。 この日の尋問では、淡々とした様子で質問に答えていた。ただ、原告側から人事の件で官邸を訪れたことがあるかを尋ねられると、「お答えを差し控える」と語気を強めて返答する場面もあった。 証人尋問の最後には、徳地淳裁判長から質問を受けた。黒川氏の定年延長の根拠となった法解釈変更について「2月の黒川さんの退職に間に合わせようと、1月半ばから急いで準備したという世間の見方についてどう考えるか」と聞かれると、「そういう事実関係はない」と明言した。 辻氏は法解釈変更の理由について、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案を提出するために必要だったと脱明したが、徳地裁判長に「法改正の前に(黒川氏の)勤務延長をすることに違和感がある」と指摘される一幕も。これに対し、辻氏は「具体的な人事に関わることなので言えない」と述べるにとどめた。【安元久美子】2023年12月2日 毎日新聞朝刊 13版 21ページ 「政権との協議 証言せず」から引用 国家公務員法には、国家公務員は63歳で停年退職すると明記されており、特別な事情がある場合は65歳まで延長することも出来ると規定されているが、この「規定」は検察官には摘要されないというのが従来の政府の見解であり、そのように運用されて来たのであるが、安倍政権が突如この「見解」を変更することになったのか、変更するに当たってどのような議論がなされたのか、議事録は存在しないと裁判所に呼ばれた元事務次官は証言したが、安倍政権下では「ない」と言っていた文書が、実は「ありました」といってほとぼりが冷めてから出てくるということが、たびたび有りました。安倍政権以降は官僚が政権をかばうために虚偽の発言をして、あとからバレるという事案が一度ならずありました。したがって、この度の裁判も、いろいろな角度から追及すると、これまで「ない」と言い張っていた「証拠」が出てくる可能性は大きいと言えます。歪められた日本の政治を正しい道に戻すために、裁判所は頑張ってほしいと思います。
2023年12月21日
長野県飯田市が開設した平和記念館では、当初予定していた「731部隊」の元少年隊員の「証言」を展示する予定であったのに、直前になって見送られた件について、朝日新聞記者の三井新氏が1日の同紙夕刊に、次のように書いている; 戦時中の旧満州(中国東北部)で、旧日本軍の細菌戦部隊「731部隊」は様々な人体実験を行った。細菌兵器を実戦で使う「細菌戦」にも関わった。 終戦直前、軍によって施設は破壊され、文書も焼かれた。口外を禁じられたとされる元隊員は戦後78年が経って多くが世を去り、史実の継承が課題となっている。 そんななか、長野県飯田市が昨年開設した平和祈念館では、元隊員らの証言の展示が見送られた。「クロロホルムを注射し、生きている人間をパタッとやった」「300体もの生体解剖をした」。こうした証言が、パネルで紹介されるはずだった。 この夏、平和祈念館を訪ねた。元隊員が持ち帰った医療器具などは展示されていたが、部隊についての説明はどこにもなかった。自らの証言パネルが展示されるはずだった元少年隊員の清水英男さん(93)は、「事なかれ主義だ」と見送りの判断に憤る。 なぜ、展示されなかったのか。平和祈念館を運営する飯田市教育委員会は取材に対し、「731部隊は研究途上で、社会的にも様々な意見が存在しており、慎重に検討する必要があると判断した」と説明した。 確かに、731部隊についての史料は限られ、ネットでは「捏造(ねつぞう)」といった極端な意見もある。だが2002年に中国人遺族らが日本政府に賠償を求めた訴訟では、東京地裁が人体実験を行ったことなどを認定している。様々な意見があるからこそ、行政には元隊員らの証言を通して、何が行われていたのか伝えていく責任があるのではないか。 大学生だった6年前の夏休み、部隊の拠点があった施設跡を訪ねた。大部分が破壊されているものの、1枚の壁と、そこから伸びる2本の煙突が風化にあらがうように立っていた。私には、部隊の歴史を後世に伝えようとしているように思えた。 飯田市教委は9月、清水さんらの批判を受け、裁判で認定された部隊の説明を引用したパネルを1枚展示した。一方で、肝心の証言の展示については、今も議論が続いている。貴重な証言を伝えなければ、加害の歴史を語り継ぐことは難しくなる。そうなれば、被害を受けた国の人たちとも理解し合えないだろう。 歴史を見て見ぬふりをしていては、本当の意味での「平和祈念」とはならないはずだ。あったことをなかったことにしないために、あの戦争を伝え続けたい。(ネットワーク報道本部) *<みつい・あらた> 2019年入社。金沢、仙台を経て、今年5月から東京勤務。最前線でニュースを追いかける「フロントライン班」所属。発生現場に駆けつけたり、気になるテーマを深掘りしたりしている。2023年12月1日 朝日新聞夕刊 7ページ 「取材考記-長野の平和祈念館 731部隊の証言、伝える責任」から引用 当初予定していた元隊員の証言展示を見送ったことに関する飯田市教育委員会の説明は、まったく説明になっていない。社会的に色々な意見が存在するのは当たり前のことで、だからこそ司法によって確認された「事実」は、行政のリーダーシップの元に公開されて、社会の共通認識とするべきである。戦後80数年にわたって、行政がそのような責任から逃避を続けてきたから、実際にあった「戦争犯罪」の行為も、でっち上げたのデマだのという流言を発生させる元凶となってきたのであり、一方では被害を受けた側では、子々孫々にまで「史実」が語り継がれるのであるから、加害国の子孫が史実を知らずにのほほんと暮らすのでは、将来に大きな禍根を残すことになります。飯田市教育委員会は、史実を隠蔽するような態度を改めるべきだと思います。
2023年12月20日
原子力発電所から出る「核のごみ」を放射線が出なくなるまでの10万年間、安全に保管する場所は日本には存在しないという専門家の声明について、朝日新聞編集委員の佐々木英輔氏は11月30日の同紙に、次のように書いている; 「知ってた」「そりゃそうだろ」 そんなインターネット上の反応が目につくニュースだった。 原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物「核のごみ」の最終処分をめぐり、10月末、「日本に適地はない」とする声明を地球科学の専門家有志が発表した。 地殻変動の激しい日本では、10万年にわたり地下に閉じ込める「地層処分」に向く場所は選べないとし、抜本的な見直しを求める内容だ。 確かに、日本が地震国、火山国であることは誰もが知っている。いくつものプレートがせめぎ合う場所であることも、今や常識と言える。 とはいえ、日本列島をよく知る人たちの言葉には重みがある。声明は「地球科学を学ぶ者にとっては、容易に理解できること」とも言い、300人以上が賛同者に名を連ねた。 「地学を専門とする私たちの責任で意見を示そうと取り組んできた。議論を喚起したい」と呼びかけ人の一人、赤井純治・新潟大名誉教授は記者会見で語った。 「日本の地質条件を無視」「人工バリア技術を過信」。声明は、こんな厳しい言葉を並べ、今の最終処分の法律廃止と「地層処分ありき」の原発政策の見直しを訴えている。 人工バリアとは、廃棄物をガラスで固め、金属で覆い、粘土で囲む多重の障壁のことを指す。さらに地層が持つ閉じ込め機能(天然バリア)で、地表に届かないようにする。 長期にわたり安定していた地層はある。地殻変動や海面の変動で露出しないよう、300メートルより深くに処分する。場所を選べば処分はできるというのが今の法律の前提にある。 これに対し声明は、安定な場所を選び出すのは「現状では不可能」だと指摘する。岩盤は不均質で亀裂も多く、地震活動も活発だ。直撃を受ければ、岩盤のすき間の地下水に放射性物質が漏れ出す。しかし、岩盤の変化や地下水の流れを長期にわたり予測することはできないという。 10万年たったとき、結果的に安定していた場所はあるかもしれない。しかし、それがどこなのか、事前にはわからないとの主張だ。 「後世に押しつけず、現世代で」。処分地選びを今進める理由は、しばしばこう語られる。一方、赤井さんは「危険を後世に渡すことになるかもしれない」と言う。 今の枠組みを容認する地球科学の専門家もいる。ただ、後世にとって何が最善なのか、本質的な議論をする場が乏しいのは確かだ。専門の視点からの発信はもっとあっていい。 少なくとも現代の私たちは、活断層の間近や真上、巨大地震の震源域に建ててしまった原発があることを知っている。大津波が来る所に建て、取り返しのつかない事故を起こした原発のことも。(編集委員)2023年11月30日 朝日新聞夕刊 4版 4ページ 「e潮流-核のごみ、専門家指摘の重み」から引用 日本の原子力発電は1955年頃から、中曽根康宏や正力松太郎といった人物が旗振り役で推進された。当初はノーベル物理学賞をもらった湯川秀樹氏が専門家会議の議長であったが、政界や財界代表の委員が科学的な見解や安全性の確保という観点をあまりにも軽視して、原発推進ありきで無責任な決定をすることに嫌気がさして辞任した時点で、日本は「進路」を過ったのであった。その後、電力会社はどんどん原発を殖やして全国に50基以上も作り、第一次安倍政権のとき、共産党議員が「福島第一原発を稼働する電源が地下にあるのは問題だ。津波がきて浸水したら、全電源が停止して原子炉の冷却が出来ないという恐ろしい事態が予測される。早急に改善が必要ではないか」と糾したのに対し、安倍首相(当時)はへらへら笑いながら「そのような事態はあり得ません。完ぺきな安全対策はできてる」と答弁したのであったが、数年後には質問した議員が言った通りの「事故」が起きてしまったのは、全国民が知っている通りである。その上、メルトダウンした原子炉を「廃炉作業」を行なうことによって、有害な放射線物質を除去して事故を起こした原発がある土地を元の「普通の土地」に戻すなどと、常識を逸脱した「計画」を実施中であると東京電力は言ってるが、作業が始まってから数年経つのにメルトダウンしたデブリを、ただの1gも取り出しは出来ておらず、おそらく100年経ってもこの「作業」は完結しないであろう。莫大な経費をつぎ込んで、いつまでこのような愚かな作業を続ける積もりなのか、国民は無責任な政府や電力会社に任せきりにしないで、自ら決断しなければならない時がいずれ来ると思います。
2023年12月19日
東京大学教授で国際政治学者の坂本義和氏は、東大退官後も明治学院大学や国際基督教大学で教鞭をとった学者であったが、2日の東京新聞は2011年のインタビュー記事を再掲載している; 戦後日本の平和と民主主義を問い続けた国際政治学者の坂本義和さん(故人)は、憲法や国家と個人のあり方について多くの言葉を残した。日米開戦70年の節目となる2011年12月8日の本紙特集紙面で、人と人が「想像力を交換する」ことの大切さを説いた坂本さんのインタビューを振り返る。――太平洋戦争の開戦をどのような気持ちで迎えましたか。 当時、中学2年生の私にとっては憂うつで嫌な日でした。町中の店から軍艦マーチの放送が流れ、みんな高揚していました。そのギャップはその後も続き、いつか戦争に行かねばならないことを、自分の中でどう正当化するのかが切実な課題になりました。当時は「戦争は間違い」とは言い切れず、最後は「親を守るために自分は戦う」と正当化するしかなかった。徴兵拒否は事実上不可能だったし、徴兵拒否の思想的根拠を持てませんでした。――戦後、自分と国との関係で変化がありましたか。 あと3ヵ月戦争が続いていたら、私も軍隊に行っていました。あのころはもう戦争というより自爆。それが国の方針でしたから。戦争が終わると、世界が逆転して国のウソがどんどん出てくる。国に裏切られたと思うと同時に多くの兵隊たちは何のために死んでいったのか、との思いが募りました。 補給すら保証せずに兵を送るのが、日本軍の方針でした。南方に行った日本兵の多くが餓死しています。これこそ棄民です。もっと大規模な棄民もありました。1945年2月に近衛文麿らが終戦を天皇に進言しました。あのとき終戦交渉を始めていれば、東京大空襲も沖縄戦も原爆投下もソ連参戦もなかったでしょう。国民よりも国体の護持が最優先でした。――国に裏切られた、棄てられたという思いは、国民に広く共有されていましたか。 何のために夫や息子が死んだのか、という思いの人は多かったと思います。だが、問題はその先です。責任を問うという問題です。誰が戦争を決めたのかを問わなければいけない。しかし、日本人は上の人間が下の人間の責任を問うことはあっても、下の人間が上の人間の責任を問う文化がない。とにかくこうなっちゃった、ということであきらめてしまうんです。決定権をもつ者の責任を問わない民主主義はあり得ません。――戦後、日本国憲法がつくられました。どのように受け止めましたか。 戦争に負けて終わった45年、生きるために国家は頼りにならないと痛感しました。国家はわれわれを殺すことはあっても、生きることを保障してくれなかった。ですから自分がどう生き、どう死ぬかは自分で決める。民の自己決定権としての民主主義と反戦・平和は体験として先行しており、憲法はその後から来て、私の気持ちを表してくれました。――国民の憲法に対する意識はどう変化していったのでしょうか。 48年ごろ、米国の占領政策が民主化、非軍事化から反共優先へと変わりました。そこで米国に対して「今度はわれわれが平和や民主主義を担うのだ」と抵抗した時に、憲法が自分たちのものとなり始めました。 しかし、安保闘争が終わり、60年代末から70年代になると、憲法問題はあまり争点にならなくなる。そのころから、世論も「憲法も大事、自衛隊も大事」とダブルスタンダード(二重基準)になっていくんですね。今では自衛隊を違憲という憲法学者はほとんどいません。――沖縄の基地問題は政権交代しても変わりません。われわれ国民の側に問題はないのでしょうか。 沖縄は棄民と同じだと思います。それは沖縄と本土の新聞の違いにも感じます。同様に、東日本大震災の報道で使われる「がれき処理」という言葉が気になります。 「がれき」の中には、行方不明の人の骨片や、被災者にとってかけがえのない思い出の品があるに違いない。混じっているのは人間で、私は「残骸」だと思います。 「骸」とは「なきがら」です。「がれき」という言葉を当たり前に使う感覚が沖縄の問題にもつながる。沖縄の人ならどう思うだろうかという感覚が消えている。棄民を忘れる感覚は、権力者だけでなくわれわれの中にもあります。沖縄の苦難を忘れずに、基地をなくす方向に努力する意思を持ち続けることが重要だと思います。――他者への無関心を克服するには、どうすればよいでしょうか。 戦争を経験していない若い世代に「あの戦争を忘れるな」と言うだけでは足りません。人間は経験していなくても想像することはできます。他者と自分を関係づける時に、他者の立場を尊重して想像し、互いに想像力を交換することの大切さを学ばなければいけません。想像力とは、自分は経験してないが、経験したかのように感じること。人間らしさとはそういうものです。<さかもと・よしかず> 1927年、米国生まれ。 2014年10月2日に87歳で死去。旧制一高に入学し東大法学部に進学、同大教授となる。 88年に退官後、明治学院大教授、国際基督教大平和研究所顧問を歴任した。論壇でも積極的に発言した。2023年12月2日 東京新聞朝刊 11版 24ページ 「再読 あの言葉-想像力を交換する大切さ」から引用 この記事は、戦争体験者で戦後も生き延びた人でなければ知らないことを書いているので、私は大変興味深く思います。戦争が終わると、それまでの日本政府が国民を騙していたことが、次々と明らかになったと坂本氏は証言しているが、戦争中の日本政府はどのように国民を騙していたのか、今からでも国民の前に明らかにするべきだと思います。靖国神社に祀られた戦死者も知覧の特攻記念館に飾られた特攻兵も、英霊ではないし英雄でもない、政府の命令で騙されて死んだ犠牲者であることを、戦後の我々は見落としてはならないと思います。
2023年12月18日
ネタニヤフ政権のパレスチナ人皆殺し作戦に莫大な経済支援をしているアメリカが、気候変動の被害で海水に浸されつつある国々に対する経済援助は26億円に過ぎないという状況について、文筆家の師岡カリーマ氏は2日の東京新聞コラムに、次のように書いている; アラブ首長国連邦(UAE)で開かれている国際会議COP28は、早速初日に、気候変動の被害にあった途上国を支援するための基金の運営が合意された。複数の国が620億円の拠出を表明したという。総額を聞いただけでその少なさが衝撃的だが、そのうち日本の拠出は15億円で、UAE・ドイツの10分の1、英国の5分の1。なお、気候変動による経済的被害は毎時間約24億円(ガーディアン紙)に上ると言われる。アメリカの拠出金も26億円ほどだが、参考に調べてみたら、オスプレイが1機100億円、アメリカが昨年イスラエルに提供した軍事支援がアルジャジーラの報道で5600億円。優先順位が桁違いである。 気候変動は全人類にとって待ったなしの死活問題。その脅威にもっともさらされているのは途上国の人々だ。英国の支援団体によれば、気候変動によって昨年は2700万人の子どもが飢えを強いられた。原因をつくってきたのは主に先進国だが、気候難民の増加で困ると思っているのも先進国のはず。それにしては、日米が約束した拠出金はまるでどこかのお金持ちの1ヵ月分のお小遣いみたいな金額だ。他の枠組みでも資金を出しているのはわかるが、それは独英も同じであろう。 日本はもはや、大金を出せる豊かな国ではないということ? それなら防衛費も相応に抑えてほしいものだ。(文筆家)2023年12月2日 東京新聞朝刊 11版 21ページ 「本音のコラム-優先順位が違う」から引用 国際会議COP28に参加した主要国の首脳は、会議のテーマをどの程度真剣に考えているのか、上の記事が示すように、大きな疑問を禁じ得ない事態であるが、実はこの後、アメリカの大統領は温暖化防止のために、原子力発電所を現在の3倍に増やしたいと、まるで開き直りでもしたかのような演説をしたのであったが、呆れるほかない。温暖化防止を確実に実現するには、地道に太陽光発電や風力発電を積み上げるのが正しい道であり、原子力発電は、その結果出てくる「核のゴミ」は半減期が数億年という有害な物質を意味も無く「生産」し続けることになるのであって、そんなことを続けていけば、温暖化による国土の水没と同じように、放射能汚染による居住可能スペースの喪失になるのであって、それは「人類滅亡への道」にほかならない。
2023年12月17日

山口智美、斉藤正美著「宗教右派とフェミニズム」(青弓社刊)と、小林美香著「ジェンダー目線の広告観察」(現代書館刊)の2冊について、小説家の山内マリコ氏が2日の朝日新聞に、次のような書評を書いている; どこかおかしい、なにか嫌な感じがする。という違和感が言語化されるようになったSNS時代。しかし世の中のムードを作る「なんとなく」には、ちゃんと原因がある。2冊はそれぞれの視点で、現代日本の歪(ゆが)みの根っこをつまびらかにする。 安倍元首相銃撃事件によって旧統一教会と政治の癒着が明らかになったが、双方を結んでいた一つに、2000年代に展開された「ジェンダーフリー」へのバッシングがあった。『宗教右派とフェミニズム』はフェミニズム側である著者コンビが、反フェミニズム側、いわば敵の動向を淡々と追い、ニュートラルな筆致で事実を列記する。 とどのつまり、女性がより主体的に生きられるよう声をあげるや、目ざとく宗教右派の人がやって来て、地元の議員を抱き込み、右派メディアと恐るべき結束力で連携し、活動を潰してきた30年の歴史だ。 バックラッシュのリーダーだった若き頃の安倍晋三氏。選択的夫婦別姓を「家族が壊される」の一点張りで反対してきた保守派。国民の声との乖離(かいり)は大きくなる一方だが、なにしろ彼らのチームプレーは非常に高度に洗練され、一枚岩である。 日本も1980年代までは、世界的な性差別撤廃の動きに連動し、法整備をしていたが、勤勉で活発な草の根保守運動の結果、もう30年もの間、ほとんど前進がない。国際社会から浮き、やることなすことピントがずれた奇妙な国に……。なにかおかしい今の政治の裏が、フェミニズムをキーワードにすることで暴かれていく快著だ。 国民の知らないところでいつの間にか回っているのが政治なら、広告もまた、人々が気づかないうちに影響を与える。 『ジェンダー目線の広告観察』が着目したのは、コロナ禍の電車広告。とりわけ脱毛の広告は、女性たちを脅し、煽(あお)り、ときにおだてる。そこには一企業の商材以上の、性差別的なメッセージが織り込まれている。 家父長制的な古い価値観をびまんさせる広告イメージは常時、私たちを取り囲む。その洗脳から逃れるには、ジェンダー目線で本質を見抜くスキルとセンスがいる。本書はそれを磨く良き手引きとなる。 しかしどれだけ炎上しても性差別的な広告はなくならないし、政治はあさっての方向に舵(かじ)を切りつづける。なぜか? 『宗教右派』で紹介されていた70年の朝日新聞にあった言葉を借りるなら、彼らが躍起になって守っているものは、「男性天国ニッポン」なのだろう。そのためには一致団結し、国が沈むのも辞さない覚悟なのだ。<評・山内マリコ(小説家)> * 『宗教右派とフェミニズム』 ポリタスTV〈編〉 山口智美、斉藤正美〈著〉 津田大介解説 青弓社 1980円 電子版あり 『ジェンダー目線の広告観察』 小林美香〈著〉 現代書館 2200円 * やまぐち・ともみ 67年生まれ。モンタナ州立大准教授 さいとう・まさみ 51年生まれ。富山大非常勤講師 こばやし・みか 73年生まれ。写真やジェンダーに関わる執筆やワークショップを手がける。2023年12月2日 朝日新聞朝刊 13版S 22ページ 「読書-歪みの根っこをつまびらかに」から引用 この記事が指摘するように、安倍晋三が国会議員になって表や裏で変な行動を始めた頃から、世の中の「進歩」が否定され、足を引っ張られ、ジェンダー平等を推進する先進国とは裏腹に日本では女性蔑視が継続され、女性の権利だけではなく労働者の権利も歪められて、スト権を武器に戦う労働組合はなくなり、労働者の待遇は韓国でさえ向上しているのに、日本だけは低迷してきたのが、これまでの30年であった。折しも、今月に入って自民党議員の裏金問題が浮上し、岸田政権は取りあえず安倍派の閣僚を全員更迭したのであるが、安倍時代にばらまかれた「病根」を岸田政権だけで一掃することができるのか、場合によっては自公政権を退陣させて、野党連合による「救国内閣」を立ち上げるくらいの覚悟がなければ、今日の窮状を打開するのは無理なのではないかと思います。
2023年12月16日
今さら万博やカジノで経済を活性化することなど出来るわけがないという世間のムードにもかかわらず、決めたからには予算オーバーも構わずに実行するのだという政府と大阪府の姿勢を、ジャーナリズム研究者の丸山重威氏は11月26日の「しんぶん赤旗」で、次のように批判している; 政府と大阪府・市が2025年4月に予定している大阪・関西万国博覧会について「中止を含む再検討を」との声が広がっています。11月14、15日開かれた参加国会議で資材や人件費の高騰で、1250億円とされた建設整備費が2359億円に膨れ上がったことが判明、メキシコとエストニアの参加辞退も明らかになりました。 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに「いのちの賛歌」を歌い上げようという万博ですが、”350億円の巨大環状屋根をはじめ終了後残るものは何もない”し、「遠方に暮らす人にとって、税金をむしり取られるだけ」という状況(「東京」11月10日付「こちら特報部」など)です。 メディアの論調は、中止を含む「再検討」とあくまで「推進」の2つに分かれます。 「万博の会場建設費 安易な増額は認められぬ」(「毎日」11月5日付社説)、 「(維新と政権に)開催の是非を省みる責任がある」(「朝日」10月23日付社説)などの一方、 「撤退国出さぬ対策強化を」(「産経」11月14日付主張)、 「政府主導で局面の打開を図れ」(「読売」9月15日社説)との論調も。 地方紙でも 「経費節減へ計画見直しを」(「熊本日日」11月8日付社説)、 「延期も視野に計画見直しを」(「京都」7月15日社説)の声も出ています。 維新は、万博を「新しい大阪をつくるための起爆剤」(松井一郎大阪市長、23年1月)と成長戦略に据えてきました。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)建設を見込んでの計画です。しかし、「中止でええやん」とするウェブ署名は11月9日で7万5000筆超。(前出「東京」)。全国世論調査でも「不要」が7割(「共同」5日)、「反対」が過半数(「朝日」21日付)です。 間違いや失敗が明らかになり、世論がどう言っても、「まずかった」と言えない。決めたことは強引に突っ走る。万博は、政府と維新のそんな政治手法を改めるチャンスです。(まるやま・しげたけ=ジャーナリズム研究者)2023年11月26日 「しんぶん赤旗」 日曜版 31ページ 「メディアをよむ-万博 なぜ立ち戻れない」から引用 この記事は「なぜ立ち戻れない」のかと疑問を投げかけるタイトルになっているが、答えは記事本文にあるとおり、維新の会が「万博」と「カジノ」で大坂の経済を活性化できると信じてこれまで無理やりやって来た手前があり、今もそれで経済の活性化は可能であると信じているから、「立ち戻る」などはまったく考えていないというわけである。ここでもし、建築費その他の経費が予想以上にかかる危険があるから中止に、ということになれば、その後に計画している「カジノ」も当然中止であり、維新の会は今まで「やるぞ」と言ってきた手前、責任を取って退陣するのが「当然」という「流れ」になるのは自然なことだ。そういう「流れ」をなんとしても起こしてはならないとの「一心」で、何処までも「やるぞ」と言い続けているわけだ。しかし、このまま「やるぞ」「やるぞ」と言い続けて、それでどうなるかと言えば、やはり2倍以上に膨れ上がる予想の建築費を理由に、参加を辞退する国々は増えるのではないでしょうか。無理してパビリオンを建設しても、それを見学に来る人々が何人いるのかも疑問です。わざわざゴミ捨て場だった人工島まで出掛けて行かなくても、家で4Kテレビで見れば十分な迫力で見学は出来るし、50年前の大阪万博に比べれば、わざわざ見学に出掛けようという人は、あまりいないのではないかと思います。その後に控えた「カジノ」も、日本の一般庶民は生活苦で「カジノ」どころではないし、海外から来る「富裕層」もわざわざ日本まで来なくても、香港、マカオ、ソウルと、至るところにあるし、そもそも富裕層は、ギャンブルなどに手を出さないから富裕層になれたのであって、カジノの設備を作れば金持ちが来てカネをばらまくだろうというのは、考えが甘いと思います。万博もカジノもやめるべきです。
2023年12月15日
マイノリティに対する差別を扇動する発言を続ける杉田議員や、それを放置するのみならず党の要職に抜擢する自民党などの諸問題について、法政大学名誉教授・前総長の田中優子氏は11月26日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 11月17日の本紙「本音のコラム」で北丸雄二さんが、宝塚会見の「軽さ」と自死の事実の「重さ」の不均衡を指摘していた。SNS上の誹謗(ひぼう)中傷に見える言葉の軽さと、ジャニーズ事件被害者の自死の重さも同様だ。この不均衡は近ごろ、至る所に見られる。 某自民党議員がフェイスブックに「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」と投稿し、札幌と大阪の法務局が人権侵犯と認定した。さらにアイヌ政策関連予算について会計不正があると主張し「公金チューチュー」と揶揄(やゆ)した。この議員は日本学術振興会の科学研究費助成を受けたフェミニズム研究を誹謗中傷し、それが「名誉毀損にあたる」という判決も受けている。 これらは「差別問題」とされている。ヘイトスピーチ解消法やアイヌ施策推進法に反しているのだから、確かに差別だ。しかしこの議員に差別思想はあるのか? 思想という言葉の重さと言動の軽さの間には、気の遠くなるような深い溝がある。法務省が「特権ではない」と明言した事柄を「在日特権」と表現した差別も同じ構図なのだが、しかしこの公金・コスプレ表現には「差別思想」どころか、思想の「し」の字も見当たらない。だからこそ、怖い。 ◇ ◆ ◇ ちなみに、あえてこの議員の名前を挙げないのは「自民党議員」というくくりで十分だからである。この議員を問題視しない自民党では、他の議員たちも同じ感覚を持っている、とみなすことができる。 「公金チューチュー」という言葉は、これより前に使われていた。若年女性の支援をしている「コラボ」への攻撃だ。その攻撃に加担した人物のインタビューが公開された。彼は攻撃を率いたりーダーを巨大な公金不正組織と闘っている英雄だと思いこみ、彼のために多額の寄付金を集めた。そのリーダーは全ての責任を負って闘ってくれている「戦車」だったからだという。自分たちフォロワーを守り「さあ、お前ら攻撃しろ」と言ってくれる。その戦車は絶対正義であり、その闘いに参加し、リーダーの喜ぶ情報を集めて褒めてもらうのが、この上ない快楽だったという。これは「戦争ごっこ」だ。 ◇ ◆ ◇ コラボにもアイヌ政策関連予算にも公金不正はなかった。証拠も根拠もなく「悪」を作り上げて自らを正義とするのは、典型的な陰謀論詐欺である。「チューチュー」「コスプレ」等の言葉で生身の人間の存在の重さや深さ、事実に向かう真摯をことごとくゲーム感覚の「軽さ」に変換する。そうやって快感を与え、その快感で称賛者たちを集め、従わせ、彼らを集金装置や集票装置にするのだ。この自民党議員がよく使うおはこが「生産性」である。相模原の障害者施設で19人を刺殺したとして死刑判決が確定した植松聖死刑囚も、優生思想や障害者を殺害したナチスの思想を知らなかったが「生産性のない人間は生きる価値がない」と言い放った。生産性とは何か自分の頭では考えず、殺人を生産性に貢献する「正義」と思い込んだ。数値と競争のみで人間を測る社会が、その思い込みを生んだのだ。 イスラエルはガザで多くの人間を殺している。そのユダヤ人たちも膨大な人数が殺された。日本には、政治家を含め、人間への想像力を欠いた誹謗中傷を快楽とし、人の命と心を日々殺している人々がいる。2023年11月26日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-公金とコスプレ」から引用 この記事は人権侵害という重大な犯罪をテーマとしながら、しかし、その重大な問題をどう解決するべきか、どの人間が「犯人」で、どう処罰されるべきかというような議論の「核心」が存在せず、問題の全貌を抽象的に表現するだけで、「だから、こうするべきだ」という結論がない。だから、「コラボは公金を搾取してるぞ」というような「扇動」に素早く反応するような人たちの関心を引きつける効果は期待できない。杉田水脈やコラボを攻撃する男たちは問題なのだが、彼らの不正行為をどう止めさせることが出来るのか、誰も答えを知らないという「現実」が目の前にあるだけのような気がして、甚だ残念である。
2023年12月14日

井上日召著「一人一殺」(河出書房新社刊)について、ジャーナリストの斎藤貴男氏は11月25日の東京新聞に、次のような書評を書いている; 大胆きわまる連続テロ計画が、まるで日常生活の1コマでもあったかのように、淡々と書き進められていく。標的どもは総選挙に気を取られて警戒を怠るだろうとして。 <乗ずべき好機はこれを措いてない、と私は考えたのだ。そして、実行方法は一人一殺主義をとり、(中略)同志相互の連絡を禁じ、拳銃・資金は直接私から手渡す、などの一般方略を決定した>。 1932(昭和7)年の2月と3月に、前蔵相・井上準之助および三井合名理事長・團(だん)琢磨を暗殺した「血盟団事件」の首謀者が、獄中で認(したた)めた自伝である。新たな戦前と囁かれる中で復刊された。 当初は20人もの命を狙った日召らの行動は、直後に決行される5・15事件の”第一幕”でもあった。やがて2・26事件に続く一連のテロとも合わせ、今日に至る同時代史も見えてくる道理。現代人必読の第一級資料と言える。 近代化をひた走る明治の日本に生を受け、煩悶(はんもん)し続けた青年が、アイデンティティの喪失をいかに克服せんとしたのか。事後の「建設」には関心を示さず、ただ腐敗した時代の「破壊」のみを目指したとされる魂を、安易に”義挙”だと讃(たた)えてしまいがちな短絡に陥らず、虚心に知り、学ぶ姿勢こそを、具体的な動機は違えど、安倍晋三元首相暗殺事件を経験した私たちは今、求められているのではないか。 北一輝が、頭山(とうやま)満が、藤井斉(ひとし)が出てくる。大川周明(しゅうめい)や西田税(みつぎ)、安岡正篤(まさひろ)らを、著者がどこか軽く見ているように読めるのが興味深い。 日召は無期懲役の温情判決を受けた上、複数回の減刑により数年で仮出獄。1940年の紀元2600年祝典における特赦で判決自体が無効となって、「前科」さえ消えた。近衛文麿首相のブレーンに迎えられる顛末(てんまつ)と相成り、読者を「なんという時代だったか」と呆れさせてくれる。 が、何のことはない。日召一派の中心にいた四元(よつもと)義隆は戦後も歴代首相の参謀であり続けたし、團琢磨を殺した菱沼五郎も茨城県の有力議員になり果(おお)せて、原発推進の旗頭となった。これが日本である。<いのうえ・にっしょう> 1886~1967年。戦後、公職追放後は農村青年への講演活動。2023年11月25日 東京新聞朝刊 8ページ 「読書-時代の破壊 目指した魂」から引用 財界や政界の大物を殺害したテロリストが、温情判決を受けた上に複数回の減刑や特赦で「前科」も消えて、挙げ句の果ては政府のブレーンに迎えられるという、実に呆れた国が日本だった。アイデンティティの喪失を克服するためにテロに走ったと言っても、だからと言って「殺人」の罪が許されるわけもありません。それにしても、カルト団体との不明朗な関係を怪しまれて銃撃された安倍元首相暗殺事件から1年経って、安倍派の「裏金」が5億円もあったことが取りざたされる今日の日本は、井上日召が活躍した時代からあまり進歩していないのだなと思いました。
2023年12月13日
パレスチナ人虐殺を止めようとしないイスラエルについて、文筆家の師岡カリーマ氏は11月25日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 「1200人ものイスラエル人がハマスに殺されたのに、報復するなというのか」。よかろう、では仮にイスラエルが正しく、ハマス撲滅が実際に可能で、武力抵抗を正当と見る多くのパレスチナ人の心情もそれで消滅するとしよう。「ハマス掃討作戦」終了まで、ガザ住民をエジプトの砂漠でテントに住まわせるという案がイスラエル側から出たが、これも現実的とさらに仮定しよう。 エジプト? 仮設住宅なら、イスラエルのネゲブ砂漠に建てればよい。防災王国日本の技術で素早く実行できるはず。そこへの移動に際しては、ガザ住民の各世帯に「帰還・住宅権利書」を配布する。「掃討作戦」が終了したら、イスラエルはこれまで占領地に建設してきた違法入植地をモデルにし、快適な住宅をガザに建設する。病院や学校、そしてイスラエルの高い文化度を象徴する劇場や公園も完備、そこにガザ市民が帰還する。 費用は、イスラエル軍に無償で食事を提供すると表明したハンバーガーチェーンをはじめ、イスラエルを支援しているとして占領反対派がボイコット対象にしている大企業が負担し、イメージ回復につなげればよい。 ロクでもない代案だがつまり民間人を殺したくなければ方法はいくらでもある。結局、民間人は巻き添えではなく標的なのだ。そして犠牲者が増えるほどハマス予備軍も増えるのだ。(文筆家)2023年11月25日 東京新聞朝刊 11版 21ページ 「本音のコラム-『代案を出せ!』」から引用 イスラエルがガザの難民をエジプトに避難させるべきだというのは、腹黒い意図に基づいている。要するに、この機会にパレスチナの土地から先住民を一掃する魂胆であり、世界はこの邪悪な「提案」をまともに受け止めるべきではありません。ガザを掃討する間、一般住民を避難させるならワザワザ国外に行かせなくても、イスラエル国内に存在する砂漠に仮設住宅を建設して、そこに一時非難させればいいのであって、そもそもイスラエルの国民が今住んでいる土地は、元はと言えばパレスチナ人が居住していた地域なのであって、本来は砂漠の避難所に行けなどと言われる立場ではないはずなのだ。上の記事が述べるように、今は一時イスラエル軍がハマスを殲滅したとしても、その後にイスラエル政府がパレスチナ人に相応の居住環境を提供しないのであれば、やがては第二、第三のハマスが立ち上がって、イスラエル殲滅を目標に活動を始めることになると思います。
2023年12月12日
中東の疫病神と言う形容が最も相応しいイスラエルについて、東京新聞論説委員兼編集委員の田原牧氏は11月22日の同紙に、次のように書いている; パレスチナのイスラム組織ハマスの襲撃に対し、イスラエルの報復攻撃が続く。 イスラエル側の犠牲者は1200人。民間人に限れば建国以来最大で、パレスチナ側も1万3千人を超えた。 ハマスの急襲に驚いたが、次第に違うことが気になり始めた。中東に長年携わる研究者の発言の少なさである。 私たちは「人の命は平等」と教わってきたが、この紛争ではその常識が通じない。 パレスチナ自治区ガザだけでも、イスラエルとハマスは2008年から21年にかけ4回衝突した。犠牲者数はパレスチナ側か約4千人、イスラエル側は約100人。今回も10倍もの開きがある。 この不均衡さは捕虜交換にも表れる。1985年にはイスラエル兵3人とパレスチナ人1151人が交換され、2011年はイスラエル側1人に1027人のパレスチナ人が釈放された。同胞愛の美名の裏にイスラエル側が見なす命の価値の格差が透ける。 そもそもイスラエル建国運動の標語は「民なき土地に土地なき民を」だった。先住民だったアラブ人は不在者にされた。この事実と命の価値の格差は無縁ではなかろう。 欧州の植民地主義もそれを後押しした。イスラエル建国前、パレスチナは英国の統治下だったが、土地の帰属を検討した委員会で後に首相となるチャーチルはこう語った。 「厩(うまや)の犬が長らくそこに寝そべっていても、厩についての権利は持たない」。アラブ(パレスチナ)人は人間として扱われなかったのだ。 歴史をたどれば、欧州(ロシアを含む)のユダヤ人差別が事の元凶だった。ロシアや東欧でのポグロム(ユダヤ人迫害)、フランスのドレフュス事件(ユダヤ人将校へのスパイ冤罪事件)、ドイツ・ナチスのホロコーストなどがイスラエルの建国を誘った。 素朴な疑問が浮かぶ。迫害されたユダヤ人がなぜ、パレスチナ人を迫害するのか。 かつてイスラエルの旧国家宗教党(極右)の長老、ヨセフ・ブルグ氏に尋ねた。彼は「ナチスには最小の倫理しかなかったが、われわれには倫理観がある」と答え、パレスチナ人への迫害を否定した。 ただ、左派系知識人の一人は「虐待の連鎖の一種かも」と説いた。虐待を受けた子どもが後に虐待をする親になるという知られた現象だ。 今回、襲撃したハマスについてもうんざりする。イスラムの教義に基づく聖戦やイスラエルへの抵抗の大義は理解する。だが、住民に犠牲を強制し、それを政治宣伝に利用するやり口は常套手段だ。 ただ、身近な大日本帝国を振り返っても大義による死の強制はハマスに限らない。 命の価値の不平等、虐待の連鎖、大義による死の強制。目新しくない野蛮さが繰り返され、いまも目前で展開されている。人は進歩しているのか。その回答への逡巡が研究者の寡黙さの一因かもしれない。(論説委員兼編集委員)2023年11月22日 東京新聞朝刊 12版 6ページ 「視点・私はこう見る-人は進歩しているのか」から引用 人は進歩しているのか、というタイトルであるが、これに対する答えは「No」である。人が成し遂げたことで、明らかに進歩しているのは科学技術である。これが進歩した理由は、この分野では人がウソをついても即座にそれがウソであることがバレてしまうから、ウソが通用しない。だから、この分野は急速に進歩したのだと思います。しかし、政治や経済の分野では、幸か不幸かウソをついても、それがウソだと判明するまでは一定の時間がかかるため、ある程度時間が経ってしまえば、ウソであったことがバレても、そのまま修正もしないで通用してしまうのが政治の世界だから、その昔、チャーチルが「パレスチナに先住民がいるなんて言っても、厩に勝手に寝そべっている犬には、別に何の権利もありはしない」とウソをついたのが、この度の中東紛争の「始まり」なのだ。世界の政治をリードする指導者が大嘘つきであったがために、中東に紛争の火種が持ち込まれ、その紛争地に大量殺戮兵器を次々と持ち込んでは利益をあげるアメリカの兵器産業が隆盛を極めているのだから、とても「人が進歩」する余地はないのが現状だと思います。
2023年12月11日
ある日、新聞を読んでいると18歳の高校生が書いた次のような投書が目に止まった; 両親は日本人とアイルランド人です。日本の高校に留学し、教育の質は高く、特に数学はレベルが高いと思いました。一方、物事の本質を見極め論理的に思考するクリティカルシンキング(批判的思考)の力を文系科目で身につける教育が欠けていると思いました。 日本の国語の授業は物語や論文で使われる単語の意味を習い、文章の意味など学んだことをそのまま受け入れます。歴史では特定の出来事の暗記に重点が置かれ、議論や討論の機会はあまりありません。留学中、深い話をしようとすると避ける人もいて、欧州とは違って政治や社会問題への若者の関心が低いことも気になりました。 アイルランドでは国語や歴史の授業で議論をし、自分の意見が問われます。課題やテストでは詩や物語を読み、自分の観点で分析して解釈や意見を論文にします。 クリティカルシンキングは人々が物事を分析する際の基礎となる力で、これなしに真の民主主義の実現は難しいと思います。この力をつける教育改革は、科学やビジネスも含むあらゆる分野でアイデアや革新を生むと思います。2023年11月26日 朝日新聞朝刊 13版S 8ページ 「声-議論重ね自分の意見持つ教育を」から引用 この文章は、高校生が書いたにしては中々の洞察力があり世の中の真実を言い当てているように思いました。同じ年頃の日本の高校生を見た感じでは「政治や社会問題への関心が低い」ように思ったと書いてますが、これには相応の理由があり、日本では大人から子どもまで「政治には関心を持たないように」「政治につていは発言をしないように」しつけられているという重大な問題がある、と私は思ってます。少し前に、当ブログにも紹介したのですが、関西のある中学生がホームルームの時間に政治に関する発言をしたところ、担任の教師から「政治の話は学校の外でするように」と注意された、これが日本の「政治の問題」の全ての根幹、諸悪の根源と言えるのではないかと思います。教員自身が子どもの頃から「政治の話はしない」としつけられて育った関係上、自分の教え子にもそのような「しつけ」が伝達されて、戦後80年になるというのですから、問題は深刻です。アイルランドでは、国語や歴史の授業では生徒がそれぞれに自分の意見を表現し、論文を書くという授業があるようですが、日本の政府は「国語の授業で文学を扱うのは止めて、契約書や取扱説明書のような『実用的』な文章を学ぶことが、これからの社会の役に立つ」などと、まったく非教育的な方針を掲げ出す始末で、日本の教育レベルが低下していくのは、一重に「保守政権」の無知蒙昧に起因していることを、国民はよく考えるべきではないかと思います。
2023年12月10日
札幌と大坂の裁判所から「人権侵害」を指摘された杉田水脈議員は、その後反省するどころかかえってマイノリティを蔑む発言を繰り返し、反省の「は」の字もない。そういう杉田議員を、岸田氏は党総裁として注意もせず党の要職に抜擢するなど、相変わらず世間の常識からはかなりズレた人事を行なっている。そのような事態を、11月22日の朝日新聞「社説」は次のように批判している; 差別はあってはならない。そう言いながら差別に居直る発言を繰り返し、他者をあおっている国会議員が、放置され続けている。とうに個人の資質の問題ではない。岸田首相や自民党は、差別扇動者と決別する意志を示すべきだ。 アイヌ民族や在日コリアンに関する発言で、法務当局から人権侵犯認定を受けた自民党の杉田水脈衆院議員が、その後も「私は差別をしていない」などと言い続けている。「(人権侵犯という)非公開の案件について、マスコミに説明している」と、被害者側を責めさえした。 総務政務官を事実上更迭された際には「(アイヌ関係の)こんな団体に謝罪するぐらいだったら辞める」と考えた、と述べたほか、差別にかかわる利権や特権が存在するとことさらに主張している。 当事者らに謝罪すると昨年の国会で表明したのはいったい何だったのか。 記者会見などでの説明を拒む一方、自らの支援者向けには動画やSNSで理解を呼びかけ、自らの差別言説を再生産する。そのように国会議員が同調者を集めて勢力をなそうとする以上、差別主義と非難されても当然である。 だが杉田氏に対し、自民党は何の処分も行っていない。研修中にエッフェル塔前で写真を撮り投稿した松川るい参院議員は党内で注意された。それなのになぜ、市民の尊厳を平気で踏みにじり続ける杉田氏は問題にしないのか。 岸田首相は「説明責任をしっかり果たしてもらいたい」と人ごとのような答弁に終始し、自民党の茂木敏充幹事長にも動く気配は見えない。少数派の人々が不安や恐怖を訴えているのに、人権意識があまりにも低く、慄然(りつぜん)とする。 折しも、ジャニー喜多川氏からの性被害を訴えていた男性が死去したことが明らかになった。自殺とみられる。「金が欲しいんだろう」などと中傷されていたそうだ。 多数派でない人たちが声を上げると世間から逆に批判されるこの国の現状は、好転する兆しがみえない。杉田氏に最近も役職を与え、差別発言を等閑視している自民党が、自らそんな社会の空気を醸成していないだろうか。 岸田首相は最近、所信表明演説などで「人間の尊厳」という言葉を多用する。この「最も根源的な価値」を中心に据え、世界を分断・対立ではなく協調に導くのが日本の立場だと語るが、言行不一致もはなはだしい。 足元を省みない首相の言葉は空疎に響く。杉田氏への問責決議の検討など、国会にもやるべきことがあるだろう。2023年11月22日 朝日新聞朝刊 13版S 10ページ 「社説-自民と杉田氏 差別扇動者と決別せよ」から引用 自民党が健全な政党であれば、杉田議員のような変な議員はすぐに処分されていたはずで、70年代ころまでの自民党はそういう健全さを保持していたように思います。しかし、近年は次第に支持率も低下し、国政選挙の投票率も低下しているため、政権を維持するには、杉田議員のような変な議員に面白がって投票するような有権者の票も、自民党にとっては貴重な「票田」であるため、裁判所から「人権侵害」の指摘を受けた議員でも優遇しないと次の選挙は危ないという「危機感」が岸田氏にはあるのかも知れません。政治に対してまともな判断をする有権者層は、政権交代を成し遂げた「民主党政権」がわずか3年という短期間に見るべき成果を上げなかったからと言って「失望」し、それ以来投票所に足を運ばなくなったことが、今のような歪んだ形の自公政権の存続を許しているわけで、有権者は現在の与党がここまでダメになってしまったからには、野党が信頼できるかどうかという「点」にささるのではなくて、この党がだめなら次の党を、という割り切った判断基準をもって次の総選挙に臨んでほしいと思います。
2023年12月09日
これまでの歴代日本政府は、憲法の「平和主義」を尊重する立場から「武器輸出三原則」というものを決めて、滅多なことでは武器を輸出しない方針を堅持してきたのであったが、最近は長年にわたって政治献金を提供してきた経団連の圧力に負けて、「武器輸出」ではなく「移転」であると言葉を誤魔化して輸出することにしている。それだけではなく、公務員は憲法を擁護する義務があると規定されているにも関わらず、近年では総理大臣自ら白昼堂々「憲法改正」を公言してはばからない時代になってきている。このような「憲法をとりまく状況」について、神戸女学院大学名誉教授・凱風館館長の内田樹氏は、11月19日の東京新聞に、次のように書いている; 憲法をめぐる講演に呼ばれた。演題は「どうやって憲法の主体を育てるのか」である。「憲法の主体」とは誰のことか。私見によれば、それはまだ存在しない。これから創り上げてゆくものである。 よく憲法は国のあるべきかたちを示すものではなく、権力を摯肘する最高法規だという定義を下す人がいるけれど、私はやはり憲法は「あるべき国の理想」を語るものであるべきだと思う。その点であらゆる宣言と同じである。「共産党宣言」も「シュールレアリスム宣言」も実現されるべきものを指し示してはいたが、その時点では、共産党もシュールレアリストも萌芽的にしか存在しなかった。それで構わないと思う。日本国憲法もそうである。この憲法に書かれているような国が実現したらすばらしいとは思うけれど、それは公布の時点も今も存在してはいない。 日本国憲法は法理的には大日本帝国憲法を改正したものである。だから発布に際して「上諭」という額縁が付けられていた。主語は「朕」である。天皇が「枢密顧問の諮詞」と「帝国議会の議決」を経て裁可し、公布したのである。 ◇ ◆ ◇ 憲法前文は「日本国民」が「この憲法を確定する」という感動的な一文から始まるけれど、発布の前日まですべての日本人は「大日本帝国臣民」であり、日本のどこにもこの憲法を起案し、その当否を議する権利を持つ「日本国民」なるものは存在しなかった。 だから、私は憲法集会で講演を頼まれるたびに「憲法は空語だ」という言明から始める。「だから無意味だ」と続くのではない。「これは満たすべき空隙である」と続くのである。「憲法は権力を梨肘する最高法規である」と言うなら、権力を摯肘し得るほどの実力を憲法に与えることこそが国民の責務ではないか。憲法をして憲法たらしめること、それが主権者の仕事である。私はそう思う。 しかし、日本では総理大臣自身が「改憲」を堂々と政治的目標に掲げている。これは憲法99条に定められた「公務員の憲法尊重擁護義務」に違反している。そこには「天皇または摂政および国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う」と明記してある。総理大臣自身が憲法は十分な強制力をいまだ持つに至っていないという事実を明らかにしている。彼らもまた憲法は「空語」であるということを知っているのである。 ◇ ◆ ◇ 自民党改憲草案の「緊急事態条項」を見ればわかるが、改憲派は憲法を停止できる権力を内閣総理大臣に与えようとしている。行政府が憲法より上位になる政体を望んでいる。だから、その手始めとして、いかに憲法に強制力がないかを誇示しようとするのである。私は憲法にそれにふさわしい威信と実力を賦与したいと願っている。憲法とは自然物のように「あるもの」ではない。絶えざる努力によって「あらしめる」ものであると私は考えているからである。 だから、「憲法の主体とは何か」という問いに私はこう答えることにしている。「白い紙と鉛筆を渡して『あなたの理想とする憲法を書いてください』と言われたときに、今の日本国憲法のようなものを自力で書ける人間」がそれである。そのような「憲法の主体」を私たちの国は公布から77年たって、まだ持っていない。それならこれから育てるしかない。2023年11月19日 東京新聞朝刊 11版 5ページ 「時代を読む-憲法の主体」から引用 憲法改正の議論は多数決で決めて良い「議題」ではないため、国会に憲法審査会を設置する際は「議事の進行は全会一致によって進める」ことを原則としてきたのであったが、安倍政権以降はその原則が蔑ろにされつつあり、今は自公維国だけの「賛成」で「改憲案」の条文を作って国会に提案しようという「動き」が出てきている。そのように護憲派はもう追い詰められてきているように見える割に、上の記事は「これから憲法の主体となる国民を育てる」と言っており、ずいぶん悠長な話で、果たして憲法改正を阻止する「実力」になり得るのかどうか、ずいぶん心細い話だと思いました。
2023年12月08日
千葉県銚子市にある創立10年ほどの私立大学が定員割れで経営困難に陥っている問題について、現代教育行政研究会代表の前川喜平氏は11月19日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 加計学園の加計孝太郎理事長から千葉県銚子市に、同学園が市内に設置する千葉科学大学の公立大学化を求める要望書が提出された。同市ではその是非を判断する有識者会議を設置するそうだ。 大学の誘致の際、市は建設費77億5千万円を助成したが、その大半を市債で賄ったため、その後財政危機に陥った。そして今、この大学は加計学園にとって大赤字のお荷物になっている。今年の入学者は定員490人の半分にも満たない228人。私学助成は定員割れが大きくなればなるほど減額される。経営が立ち行かないことは明らかだ。公立大学になれば地方交付税交付金がもらえるから当面の赤字は減らせるが、18歳人口は今後急減するから定員割れはさらに大きくなる。孝太郎氏はこのお荷物を銚子市に押し付けたいのだろうが、このお荷物は時限爆弾入りだ。僕が市長なら引き取らない。 2014年5月、この大学の10周年式典に出席した当時の安倍晋三首相は孝太郎氏を「腹心の友」と呼んだ。しかしその友はもうこの世にいないから頼れない。10周年には当時の岸田文雄外相も来ていたが、岸田氏は孝太郎氏を友とは思っていないだろう。あと孝太郎氏が頼れる友といえば萩生田光一氏くらいか。落選した時、同大学の客員教授として面倒を見たから、多少は恩を返してくれるかもしれない。(現代教育行政研究会代表)2023年11月19日 東京新聞朝刊 11版 19ページ 「本音のコラム-加計学園のお荷物大学」から引用 10数年前に銚子市に大学設置の話が持ちかけられた時に、日本は既に少子高齢化がかなり進んでおり雇用環境も正規雇用が徐々に減少し非正規雇用が圧倒的に増え、それにつれて若年層の経済状況は悪化して結婚を思いとどまるケースが増えて少子化に拍車がかかっていたのであったが、それでも市当局は「やがていつかは日本の経済も好転して・・・」などと夢のようなことを考えて77億円余の市債を発行して財政危機に陥ったという苦い経験をしているのだから、有識者会議を開くまでもなく「赤字の大学を廃学とする作業」は設立責任者である加計学園にやらせるのが「筋」というものでしょう。この度銚子市が設置する有識者会議は、よほど自民党安倍派の息のかかった有識者でもない限り、「千葉科学大学の公立化を引き受けるべし」などという結論にはならないと思います。
2023年12月07日
BBCの報道や被害者のカミングアウトでジャニーズ事務所の性加害問題が表面化したとき、いち早く故ジャニー喜多川を批判した作詞家の松尾潔氏は、「ご縁とご恩」を大切にする山下達郎氏によって所属事務所との契約を解除されたのであったが、その後の当該事務所の性加害問題について業界関係者が沈黙している状況について、11月20日の朝日新聞で、次のように述べている; 「音楽は自由だ」。そうかもしれない。でも、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の性加害問題で音楽家らが沈黙する状況にこうも感じる。「音楽業界は不自由だ」。平井堅やケミストリーのプロデュースなどで知られ、性加害問題で積極的に発言を続ける「業界人」、松尾潔さんに話を聞いた。(聞き手・滝沢文那)■自由も知名度もあるのに、短絡的な反応を回避/欠いた社会正義「作品に罪はない」でいいのか――そもそも旧ジャニーズ関連の仕事は? 「事務所の依頼で、SMAPやNEWSらに6、7曲ほど提供しました。『ファンが愛せるものを作る』観点で楽曲の精度を上げていく。これがアイドルの仕事なんだと感服しました」――業界で、ジャニー喜多川氏の問題は知られていた? 「うわさでは耳にしていましたが、実際のところはよくわからないのが実情でした。それが、BBCの説得力ある報道で打ちのめされた。声を上げて変えていくことが大事だと考え直しました」――5月、ラジオ番組で事務所に苦言を呈したことがきっかけで、山下達郎さんらが所属する音楽プロダクション、スマイルカンパニー(SC)とのマネジメント契約が中途で終了した。SCは元社長が旧ジャニーズの顧問を過去に務め、山下さんも多くの楽曲を提供している。松尾さんは、ジャニーズ側に近いSCと関係を持ちながら、業界内の体制派に異議申し立てしたようにみえた 「みなさんが知っているようなアーティストやレコード会社の関係者など、多くの人に声をかけられました。大半がエールでしたね。ただ、この件で気になるのは、後日『選挙にでも出るの?』と真面目に言ってくる人が結構いたことです。SNS上では、『松尾は共産党員だ』『立憲民主党員だ』と事実無根の話をする人までいた」――すぐ政党や党派に結びつける人がいる 「あまりに短絡的な思考が社会にある。エンタメの世界では、そんなSNS上での好ましくない展開を回避するために、政治的発言をしないことが当然になっている。あらかじめ言葉を奪われていますよ。発言するだけの自由も知名度もあるスターらが、老若男女問わず、不自然なまでに沈黙している」 「日本のミュージシャンはよく『私は音楽で語ります』というロジックを盾にして、政治や社会に対して表だった発言をしないんですよね。僕は『逃げ』だと思います。申し訳ないですが、曲を聴いてもなかなかわからないですよ」――山下さんは7月のラジオ番組でジャニー氏の性加害について「あったとすれば、もちろん許しがたいこと」としながら、「私の人生にとって一番大切な事はご縁とご恩」と語った。「(ジャニー氏への)ご恩を忘れない」ことと、「社会的、倫理的な意味での性加害を容認する」こととは「全くの別問題」とも 「『ご縁とご恩』の人間関係から、ヒットを生みだしたことは美しい話かもしれません。ただ、その前提に社会正義を欠いていたら、話は別です。性虐待で魂を殺された少年たちの涙の上に成り立つご恩って何でしょう。権限を握った加害者とデビューを夢見る被害者の明確な力関係の中で起きたことです。こんなアンフェアな話はない」―― 一方で、ジャニーズの名のもとに生み出された作品や楽曲に多くの人が感動したという事実はある 「達郎さんもラジオで『作品に罪はありません』と語っていた。その考え方に、僕も一定の理解はある。ただ、今は作品の帰属先を厳密に問うべき時でしょう」 「例えば、米国のR・ケリーという歌手は未成年を含む女性への性虐待で有罪判決を受けました。僕は彼のライブを米国まで見に行くほどのファンでしたが、事件後は米国の放送業界の対応と同じく、自身のNHK-FMの番組でかける気にはなれなかった。一度、達郎さんがゲストで来た時に、彼の強硬な希望で放送しましたが、僕には忸怩(じぐじ)たる思いがあり、放送後に番組の公式サイトでなぜかけることになったのか経緯を説明しました。ファンが個人的に聴くのは構いません。今後時間の経過に伴って状況は変化するでしょう。けれども、公共の電波に乗せる時には立ち止まって考える必要があると思います」 ◇ 山下さんのラジオでの発言は、性加害の事実認定を事務所が受け入れる前のものだったため、朝日新聞はその後の見解についてSCに尋ねたが、「コメントは差し控える」としている。 *<まつお・きよし> 1968年、福岡市生まれ。プロデュース、作詞、作曲(共作)したEXILE「Ti Amo」が日本レコード大賞、天童よしみの「帰郷」で日本作詩大賞。2023年11月20日 朝日新聞朝刊 13版 25ページ 「文化-音楽家たちの沈黙は『逃げ』」から引用 この記事は、松尾潔氏の考え方がよく分かる記事だと思います。しかし、性被害という「事件」に我々はどう対応するべきなのかという観念が、私たちの社会にはあまりにも希薄な存在であるため、常日頃からそういう問題には無頓着で暮らしてきているので、急に「こういう問題がある」と言われても、なかなか急には適切な対応が難しい、というのが実情ではないかと思います。だから、多くの業界関係者が口をつぐんでいる。世の中で誰もが「常識」として認めた判断基準がないため、誰もがうっかりしたことは言えないと考えているのではないかと思います。そういう状況の中で、一人突出した言動をする者を見ると「あれは、共産党ではないか」とか「立憲民主党だろう」などと陰口をたたく者まで出てくる。あまりにも遅れた社会だな、という感じがします。それにしても、作品の帰属先を厳密に問うべきだとする松尾潔氏に対し、アメリカで有罪判決を受けた後でもその歌手の歌を放送することに何の抵抗も感じない山下達郎氏の「感性」も如何なものかと思いました。
2023年12月06日
ジャニーズ事務所の性加害問題は、数年前には週刊文春が名誉毀損で訴えられて無罪となったにも関わらず、国内のニュースとしては大きな問題にならなかったのに、今年英国BBCが取り上げると一気に大問題となりました。その後、国内各放送局はそれぞれに事の顛末をまとめた「検証番組」を放送して「幕引き」となりかけた所に、ある民間団体が「各局バラバラのまとめ」ではなく、同一基準の調査を行ない、記録を残すことを民放連に要請することになったと、11月19日の「しんぶん赤旗」が報道している; 故ジャニー喜多川氏による性虐待問題をめぐり、メディアの沈黙はなぜ起きたのか。一般社団法人「社会調査支援機構チキラポ」が8日、記者会見を開き、日本民間放送連盟(民放連)などに横断調査を求めることを発表しました。芸能界におけるハラスメント構造についての調査も要望。業界風土の改善を求める新たな動きです。<板倉三枝記者> なぜ横断調査を提言したのか。代表で評論家の荻上チキさんは「旧ジャニーズ事務所が権威性を持った背景には、各報道局に対する影響力がありました。現在、各局が独自に社内の『検証』を行っていますが、その動きにはばらつきがあり、調査内容も不透明さが残る」と指摘します。 検証番組は、9月にNHKが「クローズアップ現代」で放送、民放が後に続き、12日までに全てが出そろいました。「各番組が、謝罪したりコメントすることは重要ですが、これが通過儀礼のように位置づけられてはいけない。次の調査のための一歩だと考えることが必要です」と荻上さん。 「重要なのは参照性です。番組を作って終わりではなく、そこで明らかになった素材などを報告書の形でまとめて、一般の方が読めるようにする。改善がどこまで進んでいるのかをチェックできることで、先の課題を共有できると思います」 民放連に横断調査の旗振り役を求めるのは設立目的に「会員共通の問題を処理」とあるからで、各局の自治の侵害には当たらない、と話します。 調査の共通項目として「事務所からの接待」も要望。テレビ東京の検証番組では元編成局員が「ハワイのコンサートに招待され、大勢のメディア関係者と同席で食事した」と証言。各局を横断した解明が必要です。 また「権威を使った営業活動や妨害、各種ハラスメントは旧ジャニーズ事務所以外にも存在する」として、調査を旧ジャニーズ事務所に限定しないこと、調査・分析には第三者性を確保することを求めました。 労働環境の安全確保については、契約締結の問題を挙げます。 「10月2日の旧ジャニーズ事務所の記者会見で、『赤旗』記者がジャニーズJr・の契約書が無かったことを追及していました。メディア企業がそれを知りながら使い続けることは、事務所の横暴を黙認することになる」 チキラボでは独自に報道・芸能関係者にアンケートを行うことも表明。「圧力」「接待」「性暴力」「ハラスメント」などの項目を設け、目撃経験や伝聞経験も尋ねます。 NHKは13日、「第74回NHK紅白歌合戦」の出場者を発表。そこに旧ジャニーズ事務所のタレントの名はありませんでした。紅白に出場しないのは44年ぶりのことです。2023年11月19日 「しんぶん赤旗」 日曜版 26ページ 「ジャニーズ性虐待 黙殺したメディアを問う」から引用 民放連に再調査を要請することになったある民間団体というのは、TBSラジオの「セッション」という番組でキャスターを務める荻上チキ氏が代表を務める社団法人で、荻上氏は連日ラジオに出演しながら本も出版するという中々の活躍ぶりです。彼が心配するように、ジャニーズ性加害問題はこのまま黙っていれば、どの放送局も通り一遍の検証番組を放送して「おしまい」となりそうな状況ですから、そうではなくて、今回の騒動を切っ掛けとして、今現在どのような問題が存在し、何時までに時間をかけてどこまで改善したのか、ということが一般市民にも確認できるような仕組みを作るというのは、大変前向きな姿勢であり、応援していきたいと思います。
2023年12月05日
市民生活の安全のために犯罪を未然に防止する役目を担う警察が、本来の使命を果たしているのかどうか、毎日新聞専門編集委員の伊藤智永氏は11月18日の同紙に、次のように書いている; 街頭遊説中の安倍晋三首相に「アベやめろ」と叫んだ男性が、警察官たちに力ずくで聴衆から離れた場所へ連れ出され、過剰警備じゃないかとニュースになったことがある。2019年参院選の、現場は札幌市。近くで女性も1人、同じ目に遭った。 あれは何だったんだろうと気になっていた。というのは、2人は「表現の自由の侵害で違法警備だった」と裁判に訴え、22年3月に札幌地裁で認められた。ところが直後の7月に安倍氏が殺害され、右派メディアやネットが「警察が萎縮し警備が手薄になったせいだ」と判決批判を姶めたからだ。 今年4月、岸田文雄首相襲撃事件が起き、批判は勢いづく。6月の控訴審判決で札幌高裁は、女性への警備は自由の侵害だったが、男性への警備は適法だったと訴えを退けた。まさか。 北海道放送(HBC)が4年も追跡取材を続け、知られざる「排除」の実態を掘り下げていた。テレビ放映できなかった映像も加えた映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」が12月に公開される。メディア向けの試写を見た。 男性は「言葉を届ける方法が他になかった」と語る。女性は目の前の光景に義憤を感じ「増税反対」と声を上げた。同じ日、市内各所で何人もの市民が同じように発声を制止されたという。年金不安を「ですます調」で訴える新聞紙大の厚紙を用意し、黙って掲げようとした年配女性たちも、警官につきまとわれ、できなかった。 警察は何がしたいのか。思い出すのは17年の東京都議選である。安倍氏が秋葉原で「アベやめろ」のヤジと横断幕の一群に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と声を張り上げた一件だ。 12~19年の7年間も首相秘書官だった大石吉彦氏は、19年参院選時の警視庁警備局長。組織的な指示か忖度があったのだろうか。開示された公文書が黒塗りのため真相は分からない。大石氏が、安倍氏襲撃時にSPを派遣していた警視総監だったのも因縁めく。 重大な危害を企てる者は、分かりやすく声を上げたり標語を掲げたりなどしない。教室では先生の話を黙って聞けといわんばかりの会場整理に人手を割きすぎて、肝心の見えない悪意を阻止できない警備・公安とは何だろう。 安倍氏襲撃犯はネットに膨大な書き込みをしていた。警察はテロ防止目的でネット上の治安情勢を常に監視・分析している。何を見ていたのか。元警察庁長官の一人に尋ねたら「イスラム過激派ばかり警戒していて全く気づかなかった」のだそうだ。(専門編集委員)2023年11月18日 毎日新聞朝刊 13版 2ページ 「土記-ヤジと民主主義」から引用 警察が首相の街頭演説にヤジを飛ばした市民を実力で排除して裁判で敗訴した事件が元で、次の首相の街頭演説の警備が手薄になったというのは、根も葉もない右翼の「言い掛かり」に過ぎない。首相秘書官だった大石吉彦を、安倍晋三がそれまでの警察官僚のルールを無視して情実人事で警視総監にしたのだから、大石本人は張り切ったかも知れないが、首相の恩に報いるためには「演説会場でのヤジは許すな」というような指示を出していた可能性は否定できない。一事が万事トップがその調子では、本来の治安維持目的のネット上の「治安情勢 監視・分析」が疎かになった可能性は大いにあり得るし、安倍氏が奈良で街頭演説をすることにしたのは、突然の予定変更であったために、奈良県警が十分な体制構築の時間がなかったという事情もあった。結局、安倍氏のデタラメな「人事介入」が自らの「悲劇」を招いたものではないかと私は思います。
2023年12月04日
ヘイトスピーチを禁止する条例について今年の春に専門家会議の答申を得た神奈川県相模原市は、この度市として条例案を作成して市議会に提出した、と11月18日の東京新聞が報道している; 2016年7月に入所者ら45人が殺傷された神奈川県立津久井やまゆり園のある相模原市は17日、障害や性的指向などに絡む差別的言動を禁止する「人権尊重のまちづくり条例」案の概要を市議会に示した。市長がヘイトスピーチの実行者らに中止を勧告・命令し、従わない場合は内容や氏名を公表できる規定を盛り込んだ。先行して制定した川崎市の条例にある罰則の導入は見送った。来年4月の施行を目指す。 案では障害や性的指向、人種、国籍などを理由とする区別や排除、権利行使の妨害などを目的とする行為を「不当な差別」として禁じる。 被害者側の申し立てを受けた市長に対し、人権委員会の意見を聞いた上で、解決のための助言やあっせんをする権限も付与。外国籍の人への差別的言動については、実行者や団体に公共施設の利用、道路・公園などでの行動を認めず、応じなければ氏名などを公表する。 市の諮問を受けた市人権施策審議会は今年3月、条例の中でやまゆり園事件を「ヘイトクライム」と明記し、刑事罰など罰則の導入や、人権委を新設して被害者救済に当たることなどを柱とする答申を出した。市はいずれも条例案に盛り込まなかった。 本村賢太郎市長は記者団の取材に、案が答申から後退したわけではないと反論。罰則導入の見送りについては、市内でヘイトスピーチなどの「実態、実情がない」と説明した。(古川雅和)【用語解説】ヘイトスピーチ 特定の人種や民族、国籍、出身地などの属性に絡めて「殺せ」「帰れ」「犯罪者」などと偏見や憎悪をあおる言動。2013年に東京・新大久保や大阪・鶴橋など在日コリアンが多く暮らす地区で、差別扇動団体が「朝鮮人を殺せ」などと叫ぶデモを繰り返して社会問題化した。◆差別根絶 見えぬ決意、審議委員失望の声 相模原市が17日に公表した「人権尊重のまちづくり条例案」の概要は、聞くに堪えないヘイトスピーチやヘイトクライムを許さないという、断固とした態度が見えない内容となった。今年3月に市人権施策審議会は答申で、著しい差別的言動や犯罪扇動に対して刑事罰などの罰則まで盛り込み、県立津久井やまゆり園の事件を「ヘイトクライム」と位置付けて「決して容認できない」と明記するよう求めていたが、反映されなかった。人権団体や審議会の委員から失望の声が上かっている。 ヘイトスピーチに対する規制は、憲法で保障された表現の自由との兼ね合いが問題になり、罰則を設ける難しさは当然ある。市の担当者は、同日の市議会全員協議会で表現の自由の重要さを訴えたうえで、「規制は市の実態に沿ったものでなければならない」と説明。本村賢太郎市長も、2020年7月に同様の条例を施行した川崎市と異なり、罰則を適用するだけの行為が現在は行われていないとの認識を示した。 やまゆり園事件をヘイトクライムと表現しなかったことに、本村市長は「『やまゆり園事件』ということで理解してもらえる」と説明。新たに設置する市人権委員会も市の付属機関で、相談を受け付けたり、市の人権行政をチェックしたりする組織にはしなかった。 公道などで顔をさらして不当な差別的言動をする人たちが勧告で身を正すのか。やまゆり園事件の現場がある自治体として、不当な差別を根絶するという強い姿勢は見えてこない。 市は12月から概要に対するパブリックコメントを行い、来年3月議会に提案する。市議会全員協議会を傍聴していた人権団体の関係者は「答申をまったく無視した内容だ」と憤りを見せた。(古川雅和)2023年11月18日 東京新聞朝刊 12版 3ページ、15ページ 「人権尊重条例案、相模原市が概要」「差別根絶、見えぬ決意」から引用 相模原市の木村市長は、2~3年前にヘイトスピーチを禁止する条例について専門家会議に審議を委託するとき「川崎市の条例に負けないようなしっかりした条例案を期待している」というような発言をして、条例の制定に積極的な姿勢であったが、時が経つにつれて発言が徐々にトーンダウンし、終に専門家会議が罰則付きの立派な条例案を提示したにも関わらず、「市内の実情が罰則を必要とするような状況ではないから」などと、苦しい言い訳のようなことを言ってる。また、市の職員も「表現の自由の重要さ」を訴えたとのことであるが、ヘイトスピーチは「表現の自由」に包摂されるものではないという点の理解が欠落しているか、「罰則はつけるな」という「圧力」がどこかからかけられたとでも考えるしかない事態だと思います。誰が木村市長に圧力をかけたのか、真相を調べて報道してほしいと思います。
2023年12月03日
今は石川県知事をしている馳浩氏は、先月都内の会合で講演をして自身が国会議員だった頃に東京五輪の招致活動を行ない、その際に総理大臣だった安倍晋三氏から「官房機密費を使ってIOC委員に贈り物をして東京招致を勝ち取れ」と言われたと話したことを、11月18日の東京新聞が次のように報道している; 石川県の馳浩知事が17日、東京都内の会合で講演し、2013年に開催が決定した東京五輪の招致活動で、開催都市決定の投票権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)委員に対し、内閣官房報償費(機密費)を用いて贈答品を渡したと発言した。馳氏は同日夜「誤解を与えかねない不適切な発言であり、全面的に撤回する」とのコメントを出した。 公表されていない機密費の使途に言及するのは異例。贈り物の授受が事実ならIOCの倫理規定に触れる可能性もある。 自民党で東京五輪の招致推進本部長だった馳氏は、当時の安倍晋三首相から「必ず勝ち取れ」「金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」と告げられたと講演で述べた。 当時100人余りのIOC委員に対し、それぞれの選手時代などの写真をまとめた1冊20万円のアルバムを全員分、作成したと説明。「それを持って世界中を歩き回った」と話し、陸上男子棒高跳びで活躍したセルゲイ・ブブカ氏(ウクライナ)らに渡したとした。 IOCは倫理規定で五輪関係者への贈り物の授受を禁じる一方、当時の招致ルールで、慣習的な「ごくわずかな価値の贈り物」は認めていた。 会合はスポーツ振興に関するフォーラムで、全国の自治体関係者ら約90人が参加。報道陣にも公開されていた。馳氏は発言に先立ち、出席者に「メモを取らないで」「外で言ったら駄目」とした。講演後の取材に対し「オン(レコ)とは聞いていない」と述べた。2023年11月18日 東京新聞朝刊 12版 7ページ 「機密費でIOC委員に贈答」から引用 馳氏は県知事を務めるほどの社会経験がありながら、新聞記者が来てるかもしれない会合で講演をするのに、口頭で「メモを取らないで」とか「外では言わないように」と言えば、後は何を言っても「秘密は守られる」と思っていたとは、あまりにも世間を知らなすぎる。石川県民はよくこの程度の認識の人物を県知事にしておくものだ。それは新聞記者も人間だから、人に「他の人には言わないで」と言われれば、そういう事情があるのなら協力してもいいですけど、と思うでしょう。しかし、その内容が官房機密費を使ってIOC委員を買収したという「犯罪の暴露」であれば、「これは聞き捨てならない」という「職業的倫理」を優先せざるを得ず、発言した本人の意向にかまってる場合ではなく、報道するのは当然です。もしこれを、馳氏が言うようにオフレコのままにしておけば、それはオフレコにした記者も「IOC委員買収」に加担したことになるわけで、そんなことをして良いわけがありません。また、馳氏は自分の発言が報道されたと知るや、すぐさま「今日の発言は撤回する」と言ったそうであるが、いくら「撤回だ」と言っても、買収の事実が消えてなくなるわけではないから、あまり意味がないと思います。これが仮に「将来はこうしたい」という話で、それを後から「撤回する」と言えば、我々は「あの話はなくなったのだな」と理解するが、「過去にこんなことがあった」という自慢話を聞いてから、「あれは撤回する」と言われても、過去に起きたことが消えてなくなるわけではないから、馳氏の場合はいくら本人が「撤回した」と言っても、彼がIOC委員を買収した「事実」が消えてなくなるわけではないという「常識」はもってほしいものです。
2023年12月02日
関東大震災時にデマが流布されたために多くの朝鮮人が虐殺された史実について、「そんなことは無かった」ということにしたい自民党政権を、法政大学教授の慎蒼宇氏が11月15日の朝日新聞で、次のように批判している; 関東大震災の朝鮮人虐殺を記録した公的史料とはどんなものなのか。虐殺と日本の植民地支配の関係について研究する法政大の慎蒼宇(シンチャンウ)教授(近代日朝関係史)は具体例を挙げつつ、政権の態度は「歴史修正主義的だ」と強い懸念を示す。――朝鮮人虐殺について「記録が見当たらない」という官房長官発言が注目されました。 公的記録はあります。研究者がまず挙げるのが司法省の調査です。233人の殺害記録が載っていますが、刑事事件として立件された事件のみで官憲による殺傷に触れておらず、被害者数が少ない史料です。――官憲の虐殺についての史料はありますか。 陸軍の戒厳司令部詳報があります。軍隊による殺害事件20件が記載され、うち12件が朝鮮人の殺害です。中には、200人が殺されたという事件も載っています。 今年9月に公表された、神奈川県知事から内務省にあてた報告書も重要です。県内の殺傷事件59件の概要などが載っています。――公的記録だと、被害者数が少ないですね。 民間では、政治学者の吉野作造らの調査で2613人、在日朝鮮人の慰問班の調査で6661人とされています。 公的史料はあくまでも権力者側に都合のいいデータです。殺された側からアプローチした民間史料と突き合わせ、何が実相に近いのかを検討しなければいけないでしょう。 他にも公的史料はあります。たとえば山本権兵衛内閣による内閣告諭。震災4日後に出され「民衆自ら濫(みだり)に鮮人に迫害を加ふるが如(ごと)き」ことは「諸外国に報ぜられて決して好ましきことに非(あら)ず」といさめる内容でした。 海外報道を気にする点は注目です。それ以前に日本が植民地支配の中で民族運動に向けてきた軍事暴力との共通性が見えるからです。――どういうことでしょうか。 日清戦争(1894~95年)以降、日本は支配地の民族運動を徹底的に弾圧し、しばしば欧米から非難されました。そのたび日本政府は「外国に批判されないように注意すべし」という対応をとります。歴代政府の似通った姿勢を見ると、朝鮮人虐殺が一過性の出来事ではなく、植民地支配の軍事暴力と連続性があると考えられると思います。――官房長官発言から何が見えてきますか。 真相究明をしてこなかった日本政府の一貫した無責任さ。そして、ここ十数年の自民党政権の歴史修正的な姿勢への変化です。朝鮮人虐殺だけでなく、慰安婦や戦時強制連行でも「公的な史料が確認できない」という主張を繰り返しています。――そのような主張をする理由は。 真相究明をしたくない人のロジックです。真相究明の入り口でフタをしようという行為です。 歴史修正主義的な主張が、保守派やネット右翼だけでなく、政権の歴史認識になっています。 官房長官発言は、今まさに彼らが何かを隠蔽(いんぺい)し、正当化しようとしていると見なさなければなりません。発言が公的記録として残り、50年後に「官房長官がこう言っているから、正しい」となってしまう。果たしてそんなことで大丈夫かと、考えなくてはなりません。(聞き手・後藤遼太)2023年11月15日 朝日新聞朝刊 13版S 30ページ 「朝鮮人虐殺・『記録』を追う<中>-真相究明せぬ政府の無責任さ」から引用 真相を究明してこなかった日本政府の無責任さは断罪されて当然です。私たちはこれまでの歴史学の成果を学び、それぞれの地元に伝わる追悼行事を継承して、過去の過ちは過ちとして認識して始めて、間違いの無い将来の進路を選択できるものと思います。もとより私たちの憲法は、日本人が国際社会で名誉ある地位を占めたいと望むと明記しているのですから、都合の悪いことはしらばっくれるという態度は、憲法の精神とは相容れないということを、私たちは自覚するべきです。
2023年12月01日
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