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異能者特務機関:TMI 第14話「レインボーフォリナー7」 アリナのガントレット及びアンカーボルトは金属操作の異能者が作り上げた金銀銅チタンを含んだベリリウム合金である。 アリナはバクテリアを超知覚と超筋力で狙い撃った。銀銅の殺菌成分と衝撃により完全破壊した。 「長官、バクテリアの破壊に成功。感染者はどうしますか?」 『出来る事なら拘束してくれたまえ。我々は警察ではない、相手がいかなる人間であっても状況であっても故意の殺人は許されない。分かってるね?』 「……了解」 アリナはしつこいくらい長官のジェームズにこの事を聞かされている。家族の敵を討つためにTMIに入り研鑽を続けているアリナ。彼女の目の前に家族の敵が現れた時は止められないと思いつつもジェームズは繰り返し聞かせる。 『それでは探索をつづけたまえ』 *** ――早乙女ルキナは夢を見ていた。 彼女はアメリカ人と日本人の間に生まれた。彼女は英語と日本語を話しアメリカと日本の文化に触れながら育った。 彼女の両親は家を空けることが多く、そのたび祖父母の家に預けられた。祖父母の家の近くには大きな農業用の小屋がありクラシカルデザインの風車が屋根に取り付けられていた。その風車が勢いよく回る季節にいつも両親が帰ってくるためルキナは風車が回れば両親が帰ってくると思い込んでいた。 「あの風車がとても速く回ればパパもママもすぐに帰って来るのねグランパ?」 「ああそうさ、ルキナはよい子だから待てるな?」 4歳のルキナは既にある程度異能を使いこなしていた。両親との約束で人前で決して力を使ってはいけないと言われていた。ルキナは祖父のトウモロコシ畑にかくれて空気を操る異能をつかい遊んでいた。そしていつか風車を回してやろうと考えていた。能力の練習で畑にミステリーサークルをつくったり雑草刈りをしたりして過ごしていた。 5歳になる頃には空気を風としてだけではなく、任意の場所に固定できることが分かった。ルキナは空気の階段を作ってみたり手にもって振り回してみたりした。やがて思い通りの形に固定できることに成功しその範囲も広がっていった。小屋の風車は思い通りに回すことが出来るようになっていた。ルキナは両親の帰りをより一層望むようになっていった。 「風車が回ってもパパとママが帰ってこないのはあたしのせいなんだ。あの風車は無理やり回していいものじゃない、もっともっと大きな風、パパとママがお仕事してるところから来てるものだから勝手に回したらダメなんだ」 その年、アメリカは史上最大規模のハリケーンが襲った。ルキナの両親は職場でハリケーンに巻き込まれ、祖父母は家ごと吹き飛ばされ命を落とした。ルキナだけが生き残った。 「あたしがもっと力を使えてればハリケーンなんか消せた。あたしが強ければパパもママもグランパもグランマも助かった、ごめんね皆あたしがもっと……」 ――早乙女ルキナはこの夢を頻繁に見る。 家族を失ったルキナは、その後ジェームズに保護されTMIの施設に入った。そして12歳になる頃にはハリケーン対策やレスキューで活躍するチームに配属されていた。能力でハリケーンを反らし、被害にあった街での救助活動。幼いころ出来なかった事が出来るようになり充実した毎日を過ごしていた。14歳までは。 *** 「……ううん」 目を開けるルキナ、視界に入ってきたのはフローレンスとカレン。 「フローレンス……カレン……あれ?あたしは……」 「意識が戻りましたねこれで一安心です。貴女は戦闘中に倒れアポートで運ばれここにいるのですよ」 「良かったよルキナ!心配した!!」 見渡すルキナ、エンジェルチームのワゴンにいると理解する。フローレンスとカレンは窓から身を乗り出し銃を撃っている。 「今の状況は?」 「貴女の代わりにアリナが下に向かいました。ここは感染者の進行を止めている最中です」 「良かったなルキナ!」 運転席でアサルトライフルを撃っていたマイケルはシートに身を預ける。 「無理しなくていいがあの集団を押し返したいんだ。シャッターの奥まで押せれば締められるんだがよールキナ……」 「いいわできる、フローレンスのおかげで傷は治ってるし」 車から飛び出し浮いたまま手をかざすルキナ。突風が巻き起こり倒れている感染者を含め全て前方に吹き飛ばしていく。 「簡単な仕事だわ」 「おうおうおうおうお!俺のカワイイゾンビちゃんを飛ばしてんじゃあねえぞコルア!」 施設の警部服を着た顔色の悪い男が半開きのシャッターの奥から現れた。 「じわじわと追い詰めて絶望に沈む姿を見てやろうと思ってたのにそんな便利能力でサクッと押し返してんじゃあねえっつの!!あのパワーガールの奮闘は見ごたえがあったなー殺せる力を持ってるのにできなくてもどかしい感じがなぁ~!ゾンビちゃんはもう元には戻せねぇよ!!無駄な努力だったなケケケケケケケ!!」 菓谷彪介(かたにひょうすけ)と男の胸についたプレートには記されている。 「俺は死んだ生き物しか操れねぇ!つまりここにいる約300人は全て死人!!ケケケケケケケケケケケ!!あ~熊とか犬は知らねえアレは死んでるつうか変化したおぞましいモンスターだ。扇動することくらいはできたがよ」 「あんたが……殺したの!?」 「そうさ!どうせ感染してたし助かる見込みはねえ!!避難所の通気口から麻酔ガスで眠らせて後は二酸化炭素を送り込んで窒息死だ!なあにここの職員も実験動物をそうやって殺してたんだ因果応報ってやつよケケケケケケケケケ!!」 「ゆるせない……この施設をこんなにしたのもあんたね!!」 「ちげーよ、俺も被害者だ。見ろよこの体まるでゾンビじゃねえか。俺がやったのは施設の人間を避難所に誘導して閉じ込めて殺したところまで。原因なんて知らねえ!砂川なら何か知ってんじゃね?」 「そいつなら……下で遭遇したわ」 「まぁなんでもいいこうなったら何もかもめちゃくちゃにしてやるだけだ!お前ら全員ぶち殺してゾンビ仲間に加えてやる!!日本中をゾンビで埋め尽くしてやるよおおお!!」 叫ぶ菓谷に無数の弾丸が撃ち込まれる。車のマイケルとカレンがテスラアサルトライフルを構えている。 「ケケケケケケ効かねえなぁ!ちょっと痺れるがその程度だ!!」 ルキナは風の勢いを増し全ての感染者をシャッターの外に吹き飛ばす。菓谷も巻き込まれ飛んで行く。 「シャッターを閉めて博士!!」 「駄目だ……動かない」 車内でタブレットを操作するブラウン博士。シャッターの表示は変わらない。 「どうしたの??」 「誰かが妨害しているようだ……この端末からの命令が届いてない。手動で閉めるしかないようだ。壁に設置されてるハンドルを回せばいい」 「マイケルお願い!あたしは感染者とあの変態を吹き飛ばしておくし!!」 「オーケー!」 *** 迷路化した地下7階の壁を打ち抜き、地下8階に降りるアリナ。哺乳類を使った実験フロアー。 「(……声がする)」 微かに声が聞こえた。警戒しながら声のする部屋に入るアリナ。そこには白衣を来たゴリラが立っていた。 「来たか……」 モニターから振り返るゴリラ。 「言葉を……!お前は何なのですか?」 「私は実験動物ナンバー001467G。名前は付けられなかったが自分でつけた名前はフォッシー。見ての通りの霊長目ヒト科ゴリラ属のゴリラだ」 「話すゴリラ……お前はバクテリアに関係しているですか?」 「君は異能者特務機関Talent's secret military institutions通称TMIの終夜アリナ。異能は身体強化のカテゴリー5ナンバー07。さて質問に答えよう、私はバクテリアに関係している」 「バクテリアの影響で知能を上げたゴリラとはお前の事ですか」 「ああそうだ。バクテリアには感謝している、世界はこんなにも面白い事であふれていると教えてくれたからね。ただのゴリラのままでは気づけなかった事だ。君はレインボーフォリナー2世だから生まれつき異能を得ていた訳だからこの気持ちは分からないかもしれないが」 ベアリング弾を握るアリナ。 「おっと、戦闘は望むところじゃない話をしよう。私は何もしないする気も無い。私が君に勝てるなんて考えていない」 「わたしはわたしの判断で動きます」 「突如世界を包み込んだ謎の虹色の光。時間にして10分程度であったがその現象は世界全体、気候、土地、動物、植物、昆虫、そして人間に影響を及ぼし、これまでの常識を覆した現象が世界各地で発見されるようになった。超越した力、俗に言う超能力者が現れ、軍事、外交、経済、あらゆる分野で活躍し始めた。古くからの異能者たちは彼らをレインボー、RF(レインボーフォリナーズ)と差別し対立し多くの血が流れた。ほどなくして異能者特務機関(Talent's secret military institutions通称TMI)が組織され。TMIは両者の間に入り争いを収束させた。と資料にある、このレインボーフォリナーズにバクテリアも含まれているという訳だが……この虹色の光についての資料はこの程度しかない。結果何がもたらされたか世界はどのように動いたかそう言った資料は多数出てくる。何故だと思うね?」 「おとなしく拘束されれば後でいくらでも話を聞いてくれる者が居るはずです。わたしはお前と会話をするつもりはありませんよ」 「そうか、では大人しく拘束されよう。君の活躍はここのモニターで見ていた強大な力を持つカテゴリー5相手に抵抗などしない、さぁやってくれ」 両手を合わせて突き出すゴリラ・フォッシー。アリナはワイヤーを取り出しフォッシーに近づいていく。 「なるほど、その首にかけているネクタイのようなものが通信機になっているのか」 「……」 フォッシーに接近するアリナは嫌なものを感じる。 「さぁ早くやってくれ」 フォッシーの腕をつかむアリナ、次の瞬間アリナの体が傾く。 「!?」 フォッシーの手がアリナの左手首をつかんで捻りを入れている。 「悪いね終夜アリナ。私の異能は「無力化」なのだよ。触れた対象の異能を発動できない状態にするもの。今の君はただの16歳の少女、ゴリラの私にはかなわない。再び異能を使うには私が解除するか意識を失うか死ぬしかない。君を逆に拘束させてもらうよ」 「……だからどうしたというのです」 アリナは掴まれていた左手の拳を右手で掴みテコの原理で引いて離す。そして裏拳をフォッシーの顔面に撃ち込んだ。フォッシーはたたらを踏んで後方のテーブルに倒れこんだ。 「ぐふっ……これは驚いた。君は異能を使わずとも常人を遥かに超えた身体能力を持っているのか」 アリナは強化モード状態でトレーニングを重ね限界まで鍛え維持し「強化した状態」に体をなじませ、更に強化してよりハードなトレーニングを重ねることを繰り返している。 結果、強化モード未発動の状態で常人の数倍の知覚、身体能力を手に入れた。そうして鍛え上げられた肉体は能力の大幅な底上げとなり10倍、100倍、1000倍の負荷のトレーニングもこなせるようになる。そしてそれを今も繰り返している為、能力と素の肉体は上がり続けている。―全ては家族の敵を討つために。 「大人しく拘束されるのはお前ですよ。それとも抵抗しますか?」 アリナはガントレットとブーツのアンカーボルトをセットする。 「いや、君から受けた一撃でどれほどの力の差があるかを思い知らされたよ。私など相手にならない」 そう言いながらフォッシーは白衣の中に手を入れる。アリナはそれを見逃さず回し蹴りをフォッシーの右腕に叩き込んだ。 「下手に動かないほうがいいですよ。それと、わたしはゴリラを保護するように言われてませんので容赦はしませんよ」 「ゴフォ……腕が……早まらないで欲しい、武器を取り出そうとしたわけじゃない」 「異能が無くてもお前を絶命させることは可能です。戻さないのならこのまま攻撃を続けます無理に拘束する必要はありませんから」 「……これは誤算だったな。君の異能を抑えれば話を聞いてくれると思ったのだがね……私の安全の為に。ならば上着のポケットからメモリーを取ると良い」 「これは?」 「この研究所で行われていた実験の記録だ。プロテクトがかかっていたがなんとか解除してメモリーに移すことができた。この施設の事件の真相とアメリカの施設の関係を知ることが出来るだろう。私はゴリラだ、人間のような自由はない外部の者と接触することは難しいのだ」 「お前はここで何をしていたのですか?」 アリナはメモリーを腰のバッグに収納する。 「ただ観察をしていた。このフロアーから私は出ることはできない。施設のメインコンピューターに侵入し外部との連絡を試みたが無理だった。異能者によってこの施設は支配されている。所長の五所川原振之助によってね」 「五所川原振之助がこの事件を起こしたと?」 「そう簡単な事じゃない、メモリーを見て欲しい。それと、どこかに隠れているDr.美濃セレスティア白夜を探して保護して欲しい」 「美濃博士……ですか。その前にお前を拘束して哿さんとブラウン博士を呼びます」 「君の異能を戻そう……さぁ拘束してくれ大人しく私はTMIに保護されることにする」 アリナは特殊ワイヤーでフォッシーを後ろ手に椅子に縛りつける。通信を聞いていた哿がブラウン博士と共にテレポートでアリナのいる部屋に現れた。 「本当にゴリラですね……」 「彼は理性を保っている……完全適合者だな」 「哿さん、美濃セレスティア白夜博士の情報を見せてもらえますか?」 アリナはフォッシーから受け取ったメモリーを哿に渡す。 「は、はいすぐに調べます」 哿はPDAで検索をかける。出てきたのは金髪で眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の顔立ちが整った『美濃セレスティア白夜』の画像とプロフィール。 「MIT博士号取得卒業後、美濃博士はアメリカの民間企業に就職……カテゴリー3の異能者エレクトロキネシスでもあるのですね。手から小さなプラズマを発生できると。この施設にはバクテリア研究とは直接関係の無いチームに配属されていますね。実験器具や作業ロボットの調整やメンテナンスのチームです」 「見せてもらいますね」 アリナがPDAを覗き込む。 「顔は覚えました。フォッシー、美濃博士はどこにいると考えていますか?」 「この下の準備室だと思うね。最後にモニターで確認したのはそこだった。最下層の実験室はBSL4、そこに美濃博士がいるとは考えにくい。所長の五所川原振之助はどこに潜んでいるか分からない、モニターにも映らないのだ」 「五所川原振之助……電子操作の異能。カテゴリー3のエレクトロキネシス」 PDAの画面をのぞき込んでつぶやくアリナ。 「ああ、だから彼に見つからないようにメモリーにデータを保存するのは苦労させられた。停電が起きた時に美濃博士の協力で1台だけノートPCを廃棄品として手に入れたんだ」 「停電?その時に何か起きたのですね?」 「すぐに非常電源に切り替わったがね。停電の後、いつの間にか意識を失っていて気が付くと施設は今の状態になっていた。美濃博士の姿も消えていた」 続く
May 6, 2019
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異能者特務機関:TMI 第13話「レインボーフォリナー6」 「……狂ってる!ここの研究所は狂ってるわ!」 ルキナは次々と繰り出されるコンクリートスパイクを弾く。 「所長は1億と引き換えに人体実験の参加者を募ったんだけど誰も志願しなくてね。俺も断った、だけど気が付いたら感染させられていた。仕事中に意識失って倒れて起きたら培養槽の中で浮いてたよ3日経ってたし。ゴリラの次は人間での実験さ、確かにここは狂っているね。でも結果は上々、俺は満足しているよ1億も振り込まれたしな!!」 「上にいたカエル男と植物女はどうなのよ、明らかにおかしい様子だったわ」 「バクテリアとの共生がうまくいかず自我の崩壊を起こした連中だね。適合してもああなったらどうしようもない。終わりさ、俺と違ってね。さてルキナちゃん君はめんどくさいし手ごわそうだ、もう十分データもとれたしここらで逃げようとも考えてるんだが」 「……ここを出てれたとしてもどこ行くつもり?TMIからは逃げられないわよ」 「アテはあるんだよね。それじゃあ君を大人しくさせてから壁の中を移動して悠々と外に出ていくよ」 「させない!ヴォルテックスバースト!!」 「プラズマ弾か、それは危ない」 回避しながら準備していたヴォルテックスバーストを放つルキナ。対してコンクリートの礫を大量に飛ばす砂川、ヴォルテックスバーストに衝突させる。砂川に届く前に爆発を起こし爆風が駆け巡った。 「そんな!」 「それは障害物が多いと使えないね。植物女との戦闘を見てたから知ってるよ」 床に潜りこんでいた砂川が立ち上がる。 「だから言ったよね?風属性の君では土属性の俺に勝てないって」 「そんなバカげた相性!関係ないわ!!」 「終わりだよルキナちゃん」 ルキナの全方位からコンクリートの波が押し寄せる。ルキナはバリアーでガード、コンクリートはバリアーごとルキナを包み込む。 「そのスペースの空気だけで脱出できるかな?無理だよね?このまま待つのは俺の趣味じゃないんで一気にイカせてもらうよ」 包み込んだコンクリートの形を変えていく。女性の頭部をかたどった筒状の拷問器具『鉄の処女の形』に変えていく。 「ああああああああっ……」 ルキナの叫び声が聞こえる。コンクリート中でルキナは無数のスパイクに刺し貫かれている。 「鉄の処女ならぬ石の処女ストーンメイデンってやつさ。運が良ければ助かると思うね。じゃあ俺はこれで」 石の処女が開かれると全身に刺し傷を負い血まみれのルキナはゆっくりと床に倒れた。 「ルキナちゃんっ!!」 カレンが飛び出し砂川に向けて銃を撃つ。弾丸はコンクリートアーマーに弾かれた。 「ハハハ!ハンドガンなんて俺には効かない!おまえは攻撃手段を持たない異能者だな?まぁなんでもいいか、お前もルキナちゃんと同じ目に合わせてやるか」 床からストーンメイデンを出現させて狙う砂川、カレンは予知で回避する。 「お?」 「マイケル!!アポートでルキナちゃんを回収シテ!!」 叫ぶカレン、1秒先の予知を連続で見て砂川のストーンメイデンを回避する。 『オーケーオーケー!通信聞く限りヤバそうだし一旦全員1階にアポートさせるよ!』 アポートを発動させるマイケル。ルキナとカレンは1階のワゴン車に転送され、すぐ後にフローレンス、哿、博士もワゴン車の近くに転送させた。 「通信を聞いてました、ルキナさんを診させてください!」 フローレンスがワゴン車のドアを開けてルキナの状態を確認する。両手をかざしすぐに治療を始めた。 「大丈夫です、私の力で治せます」 見る見るうちに傷が塞がっていく。 「体内にバクテリアの存在は確認できないので感染してはいないと思います」 「良かったねルキナちゃん……」 カレンは涙目でルキナの手を握りしめて言った。 「……長官、わたしが行きます」 アリナはルキナとカレン、フローレンスの姿を見て言った。アリナは早乙女ルキナの事は好きでは無いが、決して嫌いなわけではない。同僚の無残な姿を見て拳を握りしめた。 『……わかった、君に任せよう』 「哿さん、わたしをテレポートで運んでくれますか?」 「は、はい」 *** 地下6階 「消えたか……まぁいい、俺は外に出るだけだ。ん?」 砂川の目の前にアリナと哿が現れる。 「また美少女が現れたか!ハハ!今度は金髪クール系に小柄ボーイッシュか!」 「お前を制圧します」 アリナは睨みつけながら両手両足のアンカーボルトをセットして言い放つ。 「は~ん、金髪の君はパワー系かな?それじゃそういう系のにはこうするね」 砂川の足元から徐々にコンクリートの床は液状化していく。 「底なし沼さ!もがけばもがくほど沈んでいくぞ!」 「哿さんは離れて下さい、巻き込みたくありませんので」 「わかりました、気を付けて……」 テレポートする哿。アリナは液状化する前の床を蹴り一歩で砂川まで接近。 「な……!!?」 「はっ!」 アリナはアンカーボルトの付いた右拳で砂川に殴りかかる。とっさにシールドを構えるもアリナのアンカーボルトの拳は易々とシールドを粉砕し砂川の左腕のアーマーを砕き、あらぬ方向に折り曲げた。 「は?」 「(長官が最初から自分に任せてくれていれば早乙女ルキナはあんな目に合わずに済んだ、ゾンビまがいの感染者を大量に相手にすることも無かった)」 長官の采配に不満と任されなかった自分の力量不足に憤りを感じるアリナ。 「いぎゃああああああああああ!俺の腕があああああああああああっ!!クソが!!痛えだろうがあああー!!」 遅れてやってきた痛みに絶叫する砂川。天井床左右からコンクリートスパイクを伸ばす。アリナは片足を上げ両腕は空手の回し受けを思わせる動きでスパイクを全て叩き折った。 「ああクソ!これだからパワー系は!!……いてぇ痛えよ~腕が痛え~」 連続で壁からスパイクを生やしながら下がる砂川、折れた左腕は新たに形成したコンクリートアーマーで固定する。 「ストーンメイデン!」 アリナの背後から現れた扉を大きく開いた石の処女が襲い掛かる。スパイクの付いた内部に収まる直前に内側からの打撃で粉々に砕く。 「ハア!?コンクリートだぞ??発泡スチロールじゃねえんだぞ!!」 接近するアリナ。砂川はアリナに全方向からのスパイクで攻撃をしながら下がっていく。 「ああくそ!近づくな!!近づくんじゃねぇ!!」 砂川は下の地下6階の一角が水で満たされてることを思い出し瞬時に床に穴を開けてアリナを落としにかかる。 「フゥッ!」 足元に突如現れた落とし穴、アリナは大きく息を吸い込み噴き出す勢いで空中移動、横の壁を蹴りピンボールの如く跳ねて砂川に接近。 「うおおおおお!?ガ、ガードだ!!」 砂川はルキナのドリルを防いだ粘土状の高反発壁を出現させる。アリナのアンカーボルトをセットした拳が壁に突き刺さる。 「ハハ!フハハハハハ!!硬くてダメなら柔らかいので対処する!!」 「無駄です」 アリナは左のアンカーボルトも突き刺し、勢いよく左右に広げ壁を引きちぎる。そして裂け目から飛び出し、砂川の腹に蹴りを叩き込んだ。 「がっ」 砂川は弾丸めいて壁に衝突しコンクリートアーマーを砕け散らしながら飛んで行く。 「ゲボオオオオオ……(い、息ができねぇ!戦車砲を受け止められる構造にしたはずだ、外は硬く中は柔らかく……)」 頭部のアーマーを解き吐瀉物をまき散らす砂川。アリナはゆっくりと距離を詰める。 「(くそ……死にたくねぇ……あれは無理だ、俺にはどうにもできねぇ!くそくそくそ!TMIにあんなのがいるだなんて知ってたら最初から逃げてんだ……)」 痛みと衝撃のダメージで這いつくばった姿勢のまま動けない砂川。 「(体をコンクリートと同化して逃げるしかねぇ……)」 床と同化する砂川。それを見たアリナは歩みを止め知覚を更に強化して研ぎ澄ます。 「そこです」 アリナはアンカーボルトの付いたブーツで左下を踏み抜く。コンクリートの床が砕け中に潜んでいた砂川は左足を潰された状態であらわになった。 「ひぎいいいいいいいいいいい!!」 「終わりです」 アリナは猛獣めいた目線で砂川を睨みつける。 「ちくしょう!畜生!チクショウー!……俺は強い、俺はバクテリアに選ばれたんだ!こんなみじめに這いつくばっていいはずがない!もっと……もっともっともっともっと俺は進化できる!!」 砂川の体は灰色のコンクリート色に変化していく。床のコンクリートを摂食するかのように取り込んでいく。これまでとは違い取り込んでいる。 「俺は……俺が俺こそがコンクリートになれば!!」 液状化した砂川が立ち上がり人型を取った後ビジネススーツ姿に変化、髪をかき上げネクタイを調整した。 「まだ……終わりじゃねえぞ!!」 「そうですか」 正拳突きの2連打を叩き込むアリナ。ガードした両腕を砕け散らす砂川、しかし次の瞬間破片は集まり元の姿へと戻る。 「フハハハハ!はぁーはっはっはっは!痛みも感じない!俺はコンクリートになった!!この施設すべてを取り込んでやるか?」 高笑いする砂川に連打を浴びせるアリナ。両手両足を粉々に粉砕する。 「ハハ!わざわざ加減して手足を潰してくれてるのか?いいぜどこでも打って砕いてみろよ?無駄だって証明してやるからよ!」 周囲のコンクリートを集め手足を巨大化する砂川。 「と、思ったが俺のターンだ!!」 アリナの背後に砂川がもう一人現れ殴りかかる。アリナは振り向きざまに拳を振り分身砂川の腕を粉砕する。 「こっちだこっち!」「こっちもだぜ!」「ハハ!こっちだ!」「くらえ!!」 天井壁床から出現する砂川。 「全方向俺だ!!」 飛び掛かる砂川をアンカーボルトの拳で打ち胴体に穴を穿つアリナ。 「ハハ!そんなことをしても無駄だ!内臓もコンクリート化してある瞬時に再生だ!」 「……」 「この世のすべてのコンクリートは俺になる!!世界最強無敵能力者ってか!!」 壁に巨大な顔を出現させて笑う砂川。 「さぁさぁさぁ砕いてみろよ!パワー系の君は土属性、俺も土属性!互角の相性だがその時は力の強いものが勝つって訳だ!!」 「四大元素説……」 「あ?知らねえよそんなもん!属性は世界の常識絶対的な相性!!アニメでもゲームでもそうなってるんだよ!!」 「お前は偶々運よく早乙女ルキナを斃しただけ、四大元素説とは関係ありませんよ」 壁の顔を粉砕するアリナ。床に巨大な顔を出現させた砂川はアリナに噛みつきかかる。 「ハハ!俺は無敵最強!!もはやこれはカテゴリー5をこえたカテゴリー6なのでは?」 「……」 アリナは身体強化の強度を上げる。そして床の砂川を殴りつける。 「ほほう!更にパワーを上げたか!だが無駄だ!!」 床は下の階まで粉砕され水の溜まったフロアーが見えている。 「(無敵の能力なんてありえない……この者がカテゴリー6なんてありえない……バクテリアで進化したのならバクテリアを完全に粉砕すれば……)」 知覚を上げていくアリナ。わずかな空気の流れ、音、匂い、目に映る全ての動きに集中する。 「超微細コンクリートになって肺の中から突き破ってやろうか?パワー馬鹿でも肺は鍛えられねぇだろ!」 砂と化す砂川の動きを更に知覚を上げ観察する。今のアリナには世界が10万分の1のスローモーションに見えている。 「(飛んでくる砂粒にバクテリアは見当たらない。背後の壁の振動は配管のもの。反対側の壁の熱反応は電気ケーブル……敵はわたしを見ている、見えている所に必ずいる)」 砂粒を回避し壁に体をつけるアリナ。指で壁をノックして音を聞く。 「何!速い!!」 砂川にはアリナが瞬間移動にも似た速さで動いているように見える。 「(壁の中で何かが動いた……不規則な動き……)」 アリナは向かいの壁に狙いをつけアンカーボルトの拳を叩き込む。拳を打ち込んだ厚さ2メートルの壁は半径4メートルの穴を空け後ろの岩盤は剥き出しにしてくり抜かれトンネルを作った。 「ごげええええええええええええッ!!!」 人型の砂川は一瞬で生身に戻り目鼻口から血を噴き出した。 「なななんなななあ?どうなった……??」 「バクテリアの声は今でも聞こえますか?」 「ああ!?……おい、なんだよ……聞こえねえ……ごええええええええ」 大量の血を吐く砂川膝から崩れ落ちて倒れる。 「どうやらバクテリア完全適応者でも弱点はあるようですね」 「ばばばばばバクテリアがなくても俺は最強……だ!」 手をかざす砂川、体はコンクリート化しない。 「どうなってる!」 砂川の手は徐々に土気色に変化、全身に広がっていく。 「は?はあ?何だ!!なんなんだあああ!!」 立ち上がろうとする砂川の体は徐々に変化していく。顔は犬の様に尖り始め牙が生え目は生気を失っていく。 「ナンナンダ……オレハ……サイキョウ……」 続く
May 2, 2019
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