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異能者特務機関:TMI 第4話「首狩り斬鬼2」 タクシーで吉岡警部補の自宅に向かうアリナ。灯りはついている。 「……」 タクシーから降りたアリナは妙な気配を感じ取りガントレットを構える。 「デヤァッ!」 突如アリナの目の前に黒パーカーの男が出現、金属製の竹刀型特殊警棒を振り下ろしてきた。 「!!」 アリナはとっさに左後方に回避、ガントレットに仕込まれたベヤリング弾を指で弾き右肩に命中させた。 「ぐあっ……」 続いて黒パーカー男の大腿にベヤリング弾を撃ち込むと竹刀型特殊警棒を落として膝をついた。 「吉岡警部補ですね?」 「クソ……痛てぇ……!だ、だれだお前……首狩り斬鬼の仲間か?」 ゆっくりと起こすアリナ。黒パーカーの男は肩ををさすって答える。 「いいえ、異能者特務機関:TMIから派遣された終夜アリナです。お話をしたくてきました」 アリナは特別捜査官のIDカードを取り出して言った。 「TMIか……異常に攻撃的な気配を感じたのでな、てっきり奴の仲間だと。それにしても俺の攻撃を初見で対処するとはな……」 「気を張っていましたので」 「こんなところで立ち話もなんだ、俺の家に入って話そう」 「はい」 閑静な住宅地の中に吉岡警部補の家はある。 「家族は当分の間嫁の実家に行ってもらってる、首狩り斬鬼の事件が解決するまではな。家事は義手のリハビリにもちょうどいい。コーヒーでも飲むか?」 そういうと手袋を脱いで金属製の右腕を見せつけた。 「お構いなく」 「じゃあ早速奴の話をするか」 「ええ、お願いします」 ソファに身を預ける吉岡警部補。アリナは正面の椅子に座る。 「この右腕は首狩り斬鬼にやられたってのは聞いてるな?」 「はい」 「俺は剣道大会の優勝経験もあって自信もあったんだ。斬りかかられても絶対に対処できるってな。奴の行動パターンを分析し部下に監視カメラを見張らせ現れるのを待った。俺のテレポート能力ならこの街のどこに現れても5分以内に到着できる。今まで犯人を逃がしたことは無かった」 吉岡警部補はコーヒーを口に含む。 「……で、5日目に奴を見つけた。その後の事は……説明をする前に監視カメラの映像を見て欲しい」 机のノートPCを開いて映像を再生する。 雑居ビルの薄暗い路地裏。刀状の刃物を持った人物と若い男が映っている。刃物を持った人物は後ろを振り返り人間離れした跳躍で飛び上がりカメラの視界から消える。直後、吉岡警部補が現れ竹刀型特殊警棒を振り下ろした。空を切る特殊警棒、中段に構えなおす吉岡警部補、突如右腕がまるで役目を終えた打ち上げロケットの様に落ちた。何が起きたのか理解できない様子のままテレポートでその場から離れる。 「TMIのお嬢さん、どう思う?」 そこで再生を止めた。 「おかしいですね」 「……そうか。あんたはそう感じるんだな」 *** ―同時刻北海道警察署内 「これが吉岡が首狩り斬鬼と遭遇した時の映像です」 上山刑事部長は投影機の再生を停止して言った。 「首狩り斬鬼は吉岡の特殊警棒を回避し右腕を切り落としました。腕の断面は驚くほど綺麗に斬り落とされ腕さえ回収していれば再生できていたと医師は話していました」 「……なにかひっかかりますね」 「そうですね」 哿とフローレンスがつぶやく。 「首狩り斬鬼はどうやって吉岡警部補の腕を切断したのでしょう?」 「憶測ですが……テレポートの瞬間斬りつけたのではないかと」 上山刑事部長は映像を少し戻して両者が映りこんでいる場面で停止させる。 「この時に攻撃してきたのだと考えます」 更に上山刑事部長は別の資料を表示させる。他の事件の詳細が記されている。 「首狩り斬鬼は同じように斬りつける犯行を繰り返しています。突如現れて斬りつけそして消える……もみあいになったことは一度も無いのです」 「そうですか……テレポーターとしての意見を言わせていただくと、とても不自然な犯行の仕方です」 哿は言った。 「僕なら現れた瞬間に斬りつけます。そうすれば相手は何が起きたのか分からないままです。首狩り斬鬼はわざわざ姿を見せつけるようにしてから斬りつけて消えているかのように見えます、そこがひっかかりました」 「ほう」 「私からもよろしいですか?」 フローレンスが言った。 「吉岡警部補の右腕の切られ方から見るに彼の右側に立ち、上から刃物を振り下ろさなけば不可能です。見てください、吉岡警部補が現れたのは首狩り斬鬼の後ろ。振りかって両者は正面で向かい合います。その後首狩り斬鬼は飛び上がり吉岡警部補が警棒を振り下ろします。この瞬間に斬られたのなら右腕の断面は斜めになるはずです。飛び上がりながらの切り上げでは真横の断面は出来ません」 「……そういわれて見れば確かに。お二人の意見を参考に資料を作り直し捜査会議で提出してみます。明日は犯行現場に案内します」 *** ―吉岡家 「この映像ですと貴方は姿を消した首狩り斬鬼に対して攻撃しているように見えます」 アリナは映像を一時停止していった。 「……そうだよな、そう見えるよな?」 「あと、この間合いでは首狩り斬鬼の刃物は届かないです」 「俺の目で実際に見た状況は映像とは少し違うんだ。奴が振り返り俺がテレポートする所までは同じだ。俺の竹刀型特殊警棒は奴の刀っぽいものを打ち付けたはずだった。だが手ごたえは無くおかしいと思った時には右腕は切断されていた」 「首狩り斬鬼が飛び上がったのを見ていないということですか?」 「そうだ。わざわざ飛び上がった後の何もない空間を打ったりしない、奴は目の前にいて竹刀型特殊警棒が当たる寸前まで動かなかった。奴がある程度の速度の物質に対して発動するテレポーターであっても映像の動きはおかしい」 「先に首狩り斬鬼が飛び上がり、貴方が攻撃を仕掛けそして右腕を失う……」 アリナはしばらく映像を眺めながら考える。 「これは一度リセットして考え直す必要がありそうです。監視カメラの映像データを頂いてもよろしいですか?それと一つ聞きたいことが。貴方の証言は捜査に反映されていないのですか?」 「データは持って行ってくれていいTMIに協力は惜しまないさ。俺の証言はあんまり信用されてない、映像の方を信用するんだとさ」 「そうですか」 アリナの耳の通信機が反応する。 「はい」 『アリナさんそちらはどうですか?』 「吉岡警部補から話を聞けました。哿さんの方は?」 『資料を見ていくつか気になった点がありました。ホテルに戻って話しましょう』 「分かりました」 *** 『吉岡警部補は異能者強度カテゴリー3の空間置換テレポーターだね。以前彼に接触し勧誘したんだが断られてしまってね、警察官として生きたいとか。それから時々連絡を取ってたんだ。今回の事件を知るきっかけになった』 ジェームズがテレビ電話越しに言った。 『テレポーター自体が珍しい異能者だけど彼の場合連続使用ができないのと実際に目で見える場所に限られ距離は20メートルまでだからTMIでの判定はカテゴリー3だ。』 TMIが独自に定めている異能者強度は7段階ある。 カテゴリー0(異能者の兆しはあるが発現していない。もしくは一般人) カテゴリー1(スプーン曲げやコップの水を波打たせる程度の弱い能力) カテゴリー2(ある程度日常生活で活かせる弱い能力) カテゴリー3(ある程度日常生活で活かせる強い能力)ここからTMIのリスト入り。 カテゴリー4(超常現象を起こせる程度)哿、フローレンス。 カテゴリー5(軍隊を相手にできる程度)アリナの他に8人、計9人がTMIにいる。 カテゴリー6(国を脅かす程度)過去に一人認定されている。 『首狩り斬鬼が異次元移動テレポーターだと仮定するとカテゴリー4になるねぇ。別の能力かもしれないがね』 「長官、北海道警察の上山刑事部長も異能者だったんです。能力は離れた人の声が聞こえるもの程度の範囲は隣の部屋くらいまでらしいですが……」 哿が言った。 『んん?それはおかしいねぇ、聞こえるだけってのは無いんだ基本的に。テレパスの能力っていうのは送受信できるものだよ、何か脳にダメージを受けたりしない限りはね』 「では上山刑事部長は声を出さずに指示も出せる……と」 『そうなるねぇ……でも受信しかできないって本人が言い張れば証明は難しいよ。TMI最強のテレパスのあの子を使えばすぐにわかるんだが』 「いえ、今はそこまでしなくても大丈夫です。あの子は23時間の睡眠が必要なので無理はさせれません」 「長官」 『なんだねアリナくん』 「わたしは首狩り斬鬼がテレポーターではない可能性が高いと考えています。その根拠は……」 アリナは吉岡警部補の家で映像を見た時の違和感をジェームズに伝えた。 『なるほどねぇ……アリナくんの意見も参考にしてこっちでも調べてみよう。もし現場検証にサイコメトラーが必要ならいつでも言ってくれたまえ派遣するよ』 「長官、私からも」 『なんだねフローレンスくん』 「首狩り斬鬼と繋がっている警察関係者がいるかもしれません。なのでホテルも油断できませんTMIの作戦用ワゴン車の手配をお願いします」 『TMIの特別車両なら対異能者装甲でテレパスの干渉も受けなくて済むからね、安心だ。分かった用意しよう』 「アリナを休ませてあげたいのです。彼女は北海道に入ってから警戒を1秒も解いていませんから」 「大丈夫ですフロー、3日間はこの状態を維持できます3日以内に終わらせましょう」 「私の能力でさっきアリナを見ましたがストレスが尋常ではありません見過ごせません」 『私としてもTMIに9人しかいないカテゴリー5のアリナくんにベストコンディションで働いてもらいたいからねぇ。分かった明日の朝には車を用意しよう他にリクエストは?』 「では、名物のジンギスカンというものを食べさせていただけますか?10人前ほど。それでストレスも軽減され消費したエネルギーの補充にもなります」 アリナは旅行者用のサイトを開いて長官に見せつける。 『いいだろう!すぐに手配する!』 アリナはジェームズの言葉を聞くと少しだけ表情を緩め立ち上がった。 「首狩り斬鬼を探しに行きます」 『当てはあるのかね?』 「ええ、おそらくわたしを狙ってくるでしょう」 『ほう、何故だね?』 「……」 アリナは【上山刑事部長が怪しいとわたしは考えています】と目の前にあったメモに書いてジェームズに見せる。 『勘かね?』 「はい」 アリナは【上山刑事部長に異能者であることを問いかけた時心拍数が上がったのを感じました】とメモに書いて見せた。 『それだけでは確証できないねぇ……だが君の勘は軽視できない』 その時ホテルの部屋の扉がノックされた。 「……」 アリナは哿に合図する。 「……はい」 哿はアリナの腕をつかみ扉の外へテレポートさせる。扉の前に立っていたのは黒覆面姿の細身の人物。 「お前は誰です?」 「!?」 背後に現れ声をかけるアリナ。慌てて振り返る黒覆面、手には黒く塗られたナイフ、アリナはベヤリング弾を2発構え、吉岡警部補の時よりも強く弾き出す。 「グッ……」 ベヤリング弾を膝と肩に受け床に手を突く黒覆面。すぐに立ち上がり黒いナイフをアリナに投げつける。半身で回避したアリナ更に力を込めたベヤリング弾を発射。 「シャアアアアッ!」 黒覆面はとっさにしゃがむ。頭をかすめ金属製の扉にベヤリング弾が突き突き刺さった。 「!?」 一気に間合いを詰めるアリナ、頭を掴みにかかる。黒覆面は頭を下げて回避、そのまま前方宙返りをして踵でアリナを狙う。 「はっ!」 体を捻って回避するアリナ、遠心力を利用し加速させた左裏拳を黒覆面に叩き込んだ。 「ギャアッ!」 黒覆面が壁まで吹き飛ばされる。アリナの裏拳をガードした腕は粉砕され関節の無い所で曲がっている。 「逃がしませんよ」 ガントレットに仕込まれた炭素ワイヤーを飛ばすアリナ。黒覆面の右足を捕らえる。 「!?」 サプレッサーの取り付けられた拳銃を取り出す黒覆面。アリナは一気に引き寄せ銃を撃たせる間もなく胴体に拳を撃ち込んだ。 「ガ……」 黒覆面は意識を失う寸前、何かをかみ砕いた。 「!!……哿さん!フロー!」 テレポートで出てくる哿とフローレンス。 「フロー!この者の治療を!」 「分かった」 手をかざすフローレンス、だがすぐに首を振る。 「駄目……既に死んでる、即効性の毒を使ったみたい」 「そんな……」 哿も駆け寄り覆面をめくって取り外す。口から緑の液体が垂れていた。 続く
Feb 16, 2019
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異能者特務機関:TMI 第3話「首狩り斬鬼」 『ごくろうだったね。しかし一日と経たずに終えるとは……』 ジェームズの通信の声はため息交じりであった。 「簡単な仕事です。フランス支部の任務に比べればどうという事無いです」 『キミが向こうでどんな任務に就いていたのかはシャルルくんに聞いているよ。こっちではまず君の従事していたような任務は無いと思ってくれて良い、もう少し肩の力をぬいてもいいんだよ』 「油断は死に繋がります。そういったメンバーを多く見てきました。なのでわたしはわたしのやり方でいきます」 『シャルルくんも心配してるんだよ……とにかくおとなしめで頼むよ』 「善処します」 「結局アリナ一人でほぼやってしまいましたね」 「すみません全然お役に立てなくて……」 「いえ、二人には二人にしかしかできない仕事があるので。わたしは戦闘だけが取り柄ですからたまたまです」 アリナは清涼院を担ぎ上げ裏門へと向かう。回収班のワゴン車に乗り込み清涼院を捕獲カプセルに押し込む。そこで再びジェームズの声がした。 『任務は完了だが手続きがあるから放課後まで学校で過ごしたまえよ。菊彩学園の食堂ランチは美味しいらしいよ?』 「……長官、こんな茶番じみた任務何の為に?学校の問題児などTMIのテレパスを使えばもっと楽に解決できたでしょう」 『君には簡単すぎる任務だとは思ったんだ。けどね、もっと慎重に時間をかけて哿(かなり)くん、フローレンスくんと連携して静かに遂行して欲しかったんだよ。君がずんずんと突撃して終わりじゃなくてね』 「真意を量りかねますね」 『駄目なんだよアリナくん。もっとコミュニケーションをとって目立たずに静かにスパイ映画のエージェントのようにだね』 「……?スパイ映画の主人公は大抵無茶を沢山してますが?」 『イメージだよイメージ!たとえが悪かったすまん。ニンジャ……そう、忍者のようにやってくれると良かった』 「忍者ですか……そういえば長官、わたしのガントレットとブーツは何故使用させてくれないのですか?」 『あのねぇ……学生を捕まえるのに軍隊と戦える戦闘力はいらないんだよアリナくん。そんなもの必要ないだろう?』 「この国にいるはずのわたしの敵(かたき)と出会った時に困るので」 『……それなんだけどねぇ見つけていたらTMIが真っ先に対処するんだがね。中々尻尾を掴ませないんだよ。君の事情は良く知っている、だから隠すようなことはしないと誓うよ』 「長官、今ここに敵が現れたらどうするのですか?ガントレットとブーツをわたしから取り上げないでください」 『……もしそこに君の敵が現れたら私自ら対処しよう』 ジェームズはいつもの軽い口調ではなくゆっくりと低いトーンでそう言った。 「……分かりました」 『よろしい、では支部に帰ってくるのを待ってるよじゃあね!À plus tard !』 依頼主の校長および教頭らに報告をする哿。校長はアリナを特待生で迎え入れたいと申し出るがこれを拒否。わずか1日で三人の私立菊彩学園の生活は終了。アリナが食堂のカレーライスを10㎏平らげたことは菊彩学園の伝説となった。 *** ―3日後 長官ジェームズ・スチュワートは再び上空1万メートルに浮いているTMI本部に足を運んでいた。目の前にはフランス支部長のシャルル・ベルナールド。 「アリナは……どうですか?」 シャルルは額の汗をぬぐいながら目を合わさずに言った。 「優秀だよ。この前の任務中にターゲットと戦闘になったが圧倒的だったよ」 「同僚とはなじめてますか?」 「そうだねぇ……フローレンスくんはアリナくんを気に入ってるようだしアリナくんも嫌っている様子はないね。哿くんとも話をしたりして馴染んでると思うが。なぜだね?」 「実は……フランス支部のメンバーがアリナを戻すように抗議して動き始めてるのです。ジョリスという男が中心になって声をあげていまして……」 「それで?」 「アリナを戻さなければストライキもあり得るとか言い出す始末でして……長官と会いたがってます」 「君はアリナくんを異動させた理由をきちんと伝えなかったのかね?」 ジェームズは葉巻をカットして火をつける。 「はぁ……その……生まれ故郷の日本の支部が人手不足だから抜擢されたと……」 「それが納得できないと言ってるのだろう?シャルルくん、本当の理由は言わなかったのかね?」 「例のカテゴリー6の情報をアリナが知ってしまった件ですよね?」 「そうだ、君はうっかりしてアリナくんに知られた。よりによって彼女が探していたカテゴリー6の特徴に合致してしまった」 「……長官、自分には彼女を止めることはできないですよ。サーカスから逃げ出したライオンを威嚇の声一つで大人しくさせた事もありますし、TMI最強クラスのサイコキネシス身体強化の能力者なんですから」 「アリナくんは能力うんぬんよりも異常なまでに強い目力と、隙を見せればすぐにでも飛び掛かってきそうな圧力を感じる猛獣めいた子だからね。まぁ気持ちはわかるよ、それでも君は支部長なんだからもう少し上手い事やって欲しかったねぇ」 「……はい」 「まぁ、アリナくんの事は私に任せたまえ。そっちの問題はシャルルくんが何とかしてくれよ?日本は支部長が不在だから私が兼任してるんだ忙しいのだよ。君は仕事ができる人間だ大丈夫。少し心配症な所が玉にキズだがね」 ジェームズは葉巻の火を消して立ち上がる。 「ちょ、長官!お待ちを!!」 「また何かあれば連絡くれたまえ。私はこれからアメリカ支部長のハリーくんと会う約束をしててね」 *** ―菊彩学園の任務から1週間後 日本支部にアリナ、フローレンス、哿の三人の姿が見える。相変わらず他の机は空いている。アリナは次々と牛丼を口に運び、フローレンスは医学書を広げ、哿はパソコンに向かって書類仕事をしている。 「諸君!任務だぞ!!」 ジェームズは大きな声をあげてオフィスに入って来る。 「長官、わざわざ来られなくても放送で呼んでくれれば部屋までお尋ねしますのに」 哿は驚いて言った。アリナは一瞬箸を止めるもすぐに食事を再開。フローレンスは少しだけ会釈を返して医学書に視線を戻す。 「君たちを集めるよりもこうして私が来た方がやりやすいと思ってね。そのまま聞いてくれたまえ。次の任務は異能者の連続猟奇殺人犯の確保だ。場所は北海道、地元警察に話は通してある。早速向かってもらうよ。詳細は後で説明する」 「長官」 アリナは牛丼を食べ終えて箸を置いて言った。 「なんだねアリナくん?」 「ガントレットとブーツの使用は許可していただけますか?」 「許可しよう。今回はかなり危険な任務となる可能性がある。哿くんもフローレンスくんも万全の準備で挑むように。準備が出来次第、私の部屋に来るように解散」 アリナはロッカールームでガントレット、ブーツを身に着け腰のポーチにベヤリング弾と応急処置薬、炭素ワイヤー、予備の通信機を入れる。 フローレンスは防弾ジャケットに暗視ゴーグル、圧縮ガス銃を身に着けアタッシュケースに予備の通信機と医療キットを詰め込む。 哿は光学迷彩スーツに圧縮ガス銃、予備の通信機に防弾使用のPDAをカバンに詰める。 準備を終えた三人は長官室に入る。 「今回のターゲットは『首狩り斬鬼』と呼ばれる者だ。日本刀のようなもので次々と罪のない人々を襲い首を狩って殺害している。地元警察は監視カメラで姿は捕らえているが逮捕までは至ってない。警察をあざ笑うかのように監視カメラの目の前で殺人を行う始末だ。現場に駆け付けた異能者の警察官も姿を見ることはできず片腕を失う重傷を負った。『首狩り斬鬼』は異能者だ」 「長官、質問があります」 「何だね哿くん」 「警察官が首を切られずに助かったのはどうしてですか?」 「それは二つ理由がある、警察官は40代後半の男性だ。首狩り斬鬼の被害者は全て若者だった。奴は若者の首にしか興味を示さなかったと考える。もう一つはこの警察官がテレポーターの異能者だったから現場を離脱出来て助かったのだよ」 「首狩り斬鬼を認識できないとはどういうことですか?」 「奴もテレポーターではないかと考えられている。哿くんと同じ別次元を利用した座標移動なのか、もしくは切られた警察官のように空間置換移動のものか、あるいは他の系統か詳しい事は分かっていない」 「長官、大雨や雪の日の被害は?」 「良い質問だね哿くん。テレポーターにとって激しい雨雪は厄介なものだからね。座標移動系の場合は情報量が多すぎると出現位置がズレる場合がある。空間置換系の場合は操作を誤りやすくなる……首狩り斬鬼は雨の日には出現してない。そのことからもテレポーターである可能性が濃厚だ」 「長官わたしからも質問が」 アリナが静かに言った。 「なにかね?」 「今回も生かして捕らえるのですか?」 「当然だ。だが今回は痛めつけるなとは言わないがね」 「わかりました」 「ジェームズ長官私からも質問が。首狩り斬鬼は男性ですか女性ですか?」 フローレンスが言った。 「性別年齢全て不明だ。監視カメラの映像の姿は大きなロングコートにフードをかぶっている。身長もあてにはならない」 「神出鬼没の怪人ですか……」 「まさにその話題でマスコミが嗅ぎ付けようとしている。警察は情報規制に躍起になっているよ」 「被害にあった若者の共通点はありますか?」 「特には無い……無差別というわけではなさそうだ。二人組の一人だけが首を切られた例もある」 「そうですか……」 ジェームズとフローレンスの話を聞きながらアリナはじっとモニターに映し出された資料を眺めている。 「どうしたのアリナ?」 「……いえ、何でもありませんフロー。フランスにいた頃に似たような猟奇殺人事件がありましたので思い出していました。その犯人の手口は爆破でしたが。追い詰められたその犯人は最後に大勢の人を巻き込んで自爆。同僚は巻き込まれ死亡しました」 「オホン……首狩り斬鬼の情報は向こうの警察署にもあるからね確認しておくように」 軽く咳払いをした後ジェームズは葉巻に火をつけた。 屋上のヘリコプターに乗り込む三人。機内のモニターに資料が映し出される。 「……」 「どうしたのですかアリナさん?」 モニターをじっと見つめるアリナ、哿が聞く。 「首狩り斬鬼の担当警察官を見てまして」 「首狩り斬鬼に片腕を切断された警察官ですよね、何か気になることでも?」 「全国警察剣道大会の優勝経験がある人物ですね。名前は吉岡矗十郎(よしおかちくじゅうろう)46歳、警部補」 「はい」 「到着してまずは吉岡警部補に話を聞きに行きます。北海道警察とのやり取りは哿さんお願いします」 「あ、はい……今回は情報集めからですかアリナさん」 「ええ、ターゲットの居場所が分かっていませんので」 *** 北海道警察のヘリポートに着陸するTMIの機体。到着してすぐに署長室に通される。 「署長の鷲塚だ。ジェームズ長官が何を言ったかは知らないが君たちは我々の指示に従って動いてもらう。単独行動は許さん、署の警察官と常に行動するように」 アリナは鋭い眼光を署長に向ける。 「な、なんだその目は!!小娘がこのワシを誰だと思ってる!!」 「吉岡警部補と話がしたいのですが」 「なにぃ!?そんな事するは必要ない!!さっさと資料を受け取って会議室で大人しくしてろ!!勝手に出るんじゃないぞ!!」 「……」 「わかったら返事をしろ!!」 「わたし達は警察官ではありませんしあなたの部下でもありませんよ。一般人に対してもこのような扱いをするのですか?」 ゆっくりと署長に近づくアリナ。 「だだだだ、だまれ!嫌なら帰れ!!TMIの手など借りずとも署の威信にかけて必ず連続殺人犯を捕まえてやる!!」 「署長、失礼します」 入ってきたのはダークスーツの背の高い姿勢の良い男性。 「上山君!丁度良かったこの者たちを連れて事件の詳細を説明したまえ」 「承知いたしました」 上山と呼ばれた男性はアリナ達に名刺を渡す。役職は刑事部長。 「上山です、さぁ別室で打ち合わせをしましょうこちらへ」 廊下を歩き一番奥の資料室の隣の部屋に入る。 「先ほどは署長が失礼を。この所ストレスで情緒不安定になってしまっているのです、お許しを。平常時ならああでは無いのですが」 「哿希世美です」 「終夜(よもすがら)アリナです」 「フローレンス・フランシスです」 「改めて自己紹介を。上山晴亮です。思ってた以上にお若い方が来られて驚いています。ジェームズ長官には以前お世話になりましてね。私の弟が能力に目覚め暴走に困っていた時に力になっていただいたのです。弟は日本のTMI関連施設で訓練を受けています」 「そうでしたか」 哿は上山という名前に聞き覚えがあった。TMIの施設は両親の元を離れ寮生活を送っている22歳までの少年少女が暮らしている。哿もそこで育った。 「署長はああいってましたが、あなたたちは基本束縛されることはありません。私への報告さえしていただければ自由に動いてもらってかまいません。ただ場合によってはこちらに行動を合わせていただきたいです。特別捜査官用のIDカードと連絡用の携帯を渡しておきます」 「ありがとうございます。それでこれからの行動ですが……」 「わたしは吉岡警部補と話がしたいです。それと……上山刑事部長、貴方も異能者ですね?」 アリナはじっと上山刑事部長に目をあわせる。 「これは参りましたね、その通りです。強度は低いですが一応異能者ですテレパス系の。少し離れた場所の会話が壁越しでも聞こえる程度のものです。頭の中まで読めればどんな犯人も追及できたのですがね」 「頭の中まで読める、そのようなことができるのはTMIでも3人しかいません」 「はは……そうですか。終夜アリナさんはお若いのに相当に経験を積んでいるようで」 「何故そう思うのですか?」 「鬼教官と呼ばれた方でさえもひるませそうな目力と圧を貴女から感じるので」 「わたしは首狩り斬鬼と警察が繋がっているという可能性も視野に入れています貴方もその対象です、なので観察しています」 「ほう」 「アリナさん!失礼しました上山刑事部長……」 哿は慌ててアリナの目の前で手を振る。 「吉岡は退院して今は自宅にいるはずです、彼の住所はここです」 データを送信する上山刑事部長、哿のPDAを覗き込み地図を確認する。 「ではわたしはこれで。後は哿さんとフローに任せます、連絡はします」 アリナは立ち上がると会議室を出ていく。 「……いいのですか?」 「ええ、アリナさんは止められません」 「よほどお腹がすいていない限りは」 続く
Feb 9, 2019
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異能者特務機関:TMI 第2話「終夜アリナ2」「哿(かなり)さん、次は虎屋 伝の制圧に向かいますので狼谷 猟の確保をお願いします」『え?もう……ですか?わかりましたすぐにフローレンスさんを連れて向かいます』 哿は動揺しながら答えた。アリナは携帯端末からフォルダを開いて次のターゲット虎屋 伝の顔を確認する。「(あと10分でホームルーム開始ですね……次のターゲット虎屋 伝は休み時間にしますか)」 アリナは狼谷 猟が窒息しないように舌を引っ張り横向けに寝かせ呼吸音を確認する。 哿とフローレンスが屋上庭園に入ってくる。ヨーヨーで破壊された壁と割れた窓ガラス、狼谷 猟の姿を見て哿は小さくため息をついた。「……フローレンスさんお願いします」「了解」 倒れている狼谷に触れるフローレンス。破裂した内臓を修復し出血を止めると見る見るうちに顔色が良くなる。患部を瞬時に感じ取り元の状態をイメージし相手の生命力を上げながら治療していく。十数秒で狼谷は元の状態となった。 フローレンス・フランシスの能力はサイコキネシスでの生体コントロールである。「完治しました。哿さん首輪をどうぞ」「は、はい」 哿はポーチから小さな機械を取り出しワイヤーを伸ばして狼谷の首にかける。対異能者用にTIMが開発した能力制限装置である。念のために哿は狼谷にチタン合金手錠をかける。そして哿は狼谷 猟を掴む。一瞬にして屋上の壁の外にテレポート、続いて空中でテレポート、校舎裏に着地、そこから3回テレポートを繰り返し裏門に止めてあるワゴン車に乗せる。 哿 希世美の能力はテレポート。一度に移動できる距離は10mである。 アリナは見届けた後トイレに入り身だしなみをチェックして教室へ向かう。「では、哿さんフロー、何かあれば通信を」『はい』『了解』 教室のドアを開けるとクラスメイトの視線が集まった。時計を見るとホームルームまであと5分であった。 教室に入ったアリナはクラスメイトの視線を気にせずに歩き、ホワイトボードに大きくALINA YOMOSUGARAと書いた。「よもすがら?珍しい名前だな?」「苗字は日本語?だったらどんな字を書くのかな?」「つーか狼谷君帰ってきてなくね?」「美人だけどなんか目つき怖いなぁ」 クラスメイトのざわついている様子を気にせずどこ吹く風のアリナは窓から外を眺めている。やがて教室に慌てながら担任の男性教師が入ってきた。「終夜さん!まずは職員室に来てくれないと……」「そうでしたね、申し訳ありません」 TMIの事は理事長を除く教師全員に既に知らされてる。男性教師は狼谷の席を見た後に目配せするとというとアリナはゆっくりと頷いた。「……ゴホン(そうか狼谷はもうTMIに対処されたのか)」 咳ばらいをしたあと出席簿を教壇の上に乗せる男性教師。「みんな静かに~交換留学生の終夜アリナさんだ」「終夜アリナです。よろしく」 スカートのすそをつまんで片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたままあいさつをする。「おお~」「俺、あれ映画で見たことある」「あれカーテシーっていうんだっけ?」「あの子お嬢様か何か?」「すごいきれいな動作だったよね」「終夜さんの席は一番後ろのあそこね。それと狼谷だが……早退するそうだ」 アリナは席に着くと用意されていた教科書を机から出してパラパラとめくって確認する。「おーい静かに。出席確認するぞ~…」 HRが終わりそのまま1限目に入り2時限目の前10分の休憩時間になると、アリナの周りにクラスメイトが集まってきた。「終夜さんてハーフ?」「向こうの学校はどんなところ?」「彼氏はいる?」「何が好き?」「……フランス人の母と日本人の父です。向こうの学校は退屈でした。彼氏はいません。食べることが好きですね」 笑顔を浮かべることも無く、猛獣を思わせる目つきのままゆっくりと丁寧に答えた。その後も質問攻めにあったが無難な受け答えをしてやり過ごした。 4時限目が終わるとアリナはクラスメイトの誘いを「昼休みに職員室に用事があるので急いで食事をとりたいです」と断り、早歩きで食堂に向かった。 程なくして哿とフローレンスが現れた。「来ましたね、虎屋 伝を確保しに行きます。……二人ともついてきてください大丈夫です、一人5分で終わらせますので昼食時間は十分残ると思います、では」「え、アリナさんちょっと……」「仕方ありませんね、行きましょう」 廊下をオリンピック競歩選手並の速度で歩くアリナ。哿とフローレンスは走ってついていく。アリナは休憩時間中にクラスメイトに虎屋の事を聞きこみ、いつも屋上で食事をするとの情報を得ていた。 「虎屋 伝は居ますか」「あん?誰だ!?」 非常用の災害備蓄倉庫の上から飛び降りる虎屋 伝。坊主頭にラインを入れている。哿とフローレンスは屋上の扉の前で待機している。「なんだテメーらは?見ねえ顔だが何者だ?」「単刀直入に言います。お前を制圧します」「はぁ?お前だとコラ!!なにがセイアツだ!!」「良い反応ですね、すぐに挑発に乗る性格はやりやすいです」「俺を誰だかわかってるのか?ボクシングミドル級インターハイ日本一の虎屋 伝さまだぞ?能力なしでここまでの強さを持つ俺が能力を持ってんだぞ!口の利き方には気を着けた方がいいぜ女ぁ!テメェがどんな能力を持ってようと瞬殺できんだぞ?」 踏み込む虎屋、アリナを驚かせるつもりで左ジャブを放つ。するとアリナは右肘で合わせ拳を砕きにかかる。虎屋は拳を寸前で止めバックステップで距離を取り構えた。「!?おっと……テメェも何か格闘技やってやがるな」「狼谷 猟よりはやるようですね」 アリナは猛獣めいた眼光を向けゆっくりと虎屋との距離を詰めていく。「猟がどうしたって?まさかアイツとやりあったのか?」「ええ、一撃で潰しましたが」「まさか……まぁテメェも能力者ならあり得るか、ハ!でかい口を叩くだけはあるってことか。どんな能力を使ったか知らねぇが猟をやったとなれば最初から本気で行かせてもらうぜ」 虎屋は一気に間合いを図りながら滑るように横にステップ、ジャブストレートのコンビネーションを繰り出す。アリナは難なく捌いた。「俺の動きについてこれるか?まだまだ加速するぜ!!」 アリナを中心に円を描いてステップする。虎屋の能力は自分の周囲の空気を操ることができる。高速のステップは空気で体を押している。「猟の奴は油断してたんだろうな!不意打ちでやったんだろう」「……そう言うのならばいいでしょう、お前も一撃で狼谷 猟と同じように制圧します」「ほざくな!(くらえ必殺のジェットナックル!!)」 能力で右腕を加速した虎屋のストレート。アリナは空手の上段捌きでストレートを払いつつ右側面に体を移動、左拳を虎屋の腹部に叩き込む。 「げぶっ」 体を曲げ宙に浮く虎屋。そのままうつ伏せに倒れる。「終わりです、カウントしましょうか?」「ごえっ……おえっ(カウントだとふざけやがって……)」 「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ……」 淡々とカウントを唱えるアリナ。「がはっ……(バカな鍛え上げた俺がボディ一撃でこんな……)」 血を吐き気絶する虎屋。「シックス、セブン、エイト、ナイン、テン。わたしの勝ちです、フロー、哿さんお願いします」 慌てて駆けよる哿とフローレンス。すぐに虎屋の治療と拘束を開始する。「これで任務完了ですね」 拘束治療を終えた虎屋を抱えたまま屋上から飛び降りるアリナ、そのまま裏口の車に走って虎屋を乗せる。「長官、狼谷 猟と虎屋 伝を制圧しました」 哿は長官ジェームズに通信を入れる。『うむ、アリナくんのおかげかな驚くべき速さだねぇ……哿くん、今から別の班に狼谷と虎屋の回収に向かわせる。だが……任務は続行だ、新たな問題が発生してね』「え……」『清涼院宏昌という生徒を確保して欲しい。成績優秀で生徒教師からの評判も良い……のだがどうもねぇ……怪しいんだよ。気になって調べたんだが異能者としての強度は狼谷と虎屋と同等かそれ以上、それならば二人とも交流があるはずなんが不自然なほど無い』「……はい」『URABAN(裏番)じゃないかと思ってね』「えっと……その言葉の意味はよく分かりませんがその清涼院宏昌が黒幕ではないかという事ですか?」『イエス!彼は相撲部のキャプテンで期待のホープだそうだ。異能者という事を隠してこっそりと能力を相撲で使い不正を働いていた可能性もある』「長官は何故そうお考えに?」『清涼院宏昌の相撲の様子を映像で見てそう思ったのだよ。こう見えても私はTMIの長官だからね、ピーンと来たんだ。だから先ほど学園理事長にも連絡をしておいた、ひどく狼狽えていたがね』「分かりました任務続行します。アリナさんフローレンスさん聞こえていましたね?」「はい」「聞こえていました」 アリナは屋上の壁に飛び上り相撲場の位置を確認する。「これより清涼院宏昌を制圧します」「え?アリナさん清涼院宏昌の顔は知っているのですか?」「いいえ、なので放送で相撲場に呼び出しましょう」『アリナくん……そんなに急ぐ必要は無いんだよ?放課後でも……』 ジェームズはため息交じりに言った。「いいえ長官、悠長に構える必要はありません。哿さん、放送お願いします。フロー、わたしと相撲場に行きましょう」 アリナはそう言い放つと早歩きで相撲場を目指す。「ちょ、アリナさん待ってください……」「哿さん、急いで放送を。私はアリナと一緒に相撲場に行きます」「は、はい」 アリナとフローレンスが一階に降りたすぐに放送が鳴った。『2年4組清涼院君、至急相撲場に来てくださいお話があります。繰り返します、2年4組清涼院君、至急相撲場に来てくださいお話があります……』 早歩きで相撲場に接近するアリナとフローレンスの前にまわしをつけた相撲部員二人が立ちふさがった。「おっと、これより先は土俵だ、女人禁制だぜ。清涼院クンのファンなら出てくるまで待ってな」「その制服他校の生徒か?高校生横綱に会いにきたのか」「邪魔です、どきなさい」 アリナはヨーヨーを投げつけそばにあった2mはある仁王の石像を粉砕した。「おまえー!清涼院クンの作品をー!!」「なにしやがる!!」 掴みにかかる部員二人。アリナは片手ずつ部員の手首を掴み後方に無造作に投げつけた。「ぐあっ」「あだっ」 植え込みに突き刺さる部員。もがいていると相撲場から長髪で筋骨隆々の大男が現れた。「何だ騒がしい……!?僕の作品が!!」「清涼院宏昌ですね。そこの石像はわたしが粉砕しました」「君は誰です?どういうつもりかな?」「お前を制圧します」 アリナは猛獣めいた殺気のこもった目で清涼院をにらみつける。「なんて目をしてなにをいいだすんだい?聞き間違いでは無ければ『制圧』だと言ったね?僕に挑むという事はどういうことか分かって言ってるんだろうね?」 清涼院は片足を高く上げ四股を踏む。すると地面に衝撃波が走り植え込みのレンガに亀裂が入った。「なるほど、その能力を利用して石像を作ったと」「そうだよ、僕は『波』を操れるんだ。あの塀と同じになりたくなければ土下座して謝れ。そうすれば石像の事は許してやる」「土下座?度し難い申し出ですね」 アリナは相撲場の横に積んであった工事用の10m程の鉄骨を持ち上げ紙でも扱うかのように軽々折り曲げた。「なに!?(バカなあの鉄骨をあんな風に曲げるとは……金属を操る能力か?)」「狼谷と虎屋は既に制圧確保しました。この鉄骨のようになりたいですか?大人しく捕まるも抵抗するもお前の自由ですがどうしますか?」 アリナは曲がった鉄骨を軽く投げ捨てた。地面に突き刺さる鉄骨、それを見た二人の相撲部員は言葉を失い相撲場の裏に身を潜めた。清涼院は動揺しながらもアリナを睨みつける。「大した能力を持っているようだけど……僕には通じないね」「そうですか、やってみれば分かりますよ」「うおおおおおおああああああああああああああっ!!力波ィ!!!!」 四股を踏み衝撃波を走らせる清涼院、アリナは地面を殴りつけ衝撃波をかき消した。「な……まだまだ!力波三連打!!」 対するアリナは右腕を大きく後ろに引き、腰を落としながら地面を削り取り衝撃波をかき消しながら土砂を清涼院に投げつける。「ぬぐ……」「それはわたしには通じませんよ」「ペッペッ、だが直接体に叩き込めばどうかな!!撃・力波!!」 体当たりを仕掛ける清涼院、アリナは腰を落として相撲の構えで迎え撃ち相撲の立ち合いの形になる。衝突した瞬間大きな破裂音が響いた。清涼院はアリナの左張り手を腹に受けて後方に吹き飛ばされ相撲場の中の土俵を転がり更にロッカールームの扉を突き抜けてようやく止まった。アリナのセーラー服の袖は衝撃波で裂けていた。「げぼおおおお……」 腹を抑えのたうち回る清涼院。「お前は相撲をする資格がありません、能力を使って高校生横綱になるなど言語道断」「(……なんだ、なんなんだ……僕の撃・力波を跳ね返しただと!?ありえない、波を操る僕は自分かかる衝突の衝撃を地面に逃がせる、そうやって横綱になったんだ。あの女の能力はテレキネシス?だから吹き飛ばされた?それにしても女が吹き飛ばないのはどうしてだ……衝撃は伝わったはずだ……)」 ゆっくりと近づき土俵の前で停止するアリナ。清涼院を見据える。「……もしかしてあんたは政府だかなんだかの異能者か」「そういうものですね」「はは……通りで強い能力を持ってる。じゃあもしあんたを倒しても、別の異能者が捕まえにくるって訳だ」「わたしを倒せる気でいるのですか?万が一にもあり得ませんが代わりは来るでしょう。ところでまだやりますか?」 アリナは土俵を迂回して清涼院に近づく。ゆっくりと立ち上がる清涼院。「政府のエージェント相手に僕がどこまで通じるか興味あるね。これまでは殺してしまう危険性があったから人相手に全力を出したことが無かったんだ。アンタなら平気そうだ」「言っておきますが、わたしは全力を出す気はありませんよ。お互い全力を出し合ってぶつかり合う相撲というすばらしい日本の国技に関わりながら異能力での全力を望むとは本当に度し難い人物ですねお前は」「知ったような口を!異能者が能力を使って何が悪い!僕が相撲を始めたのは能力を生かせて頂点に上り詰められると思ったからだ!辛くて苦しい稽古をしなくても勝てるんだこれは僕の才能であり武器だ!」「もういいです。これいじょう聞きたくありません、後は長官相手に吠えてください」「僕をあまり舐めない方がいい!」 すり足で接近する清涼院、張りて突きを連続で繰り出す。「百撃・力波!攻守ともに完全な技だ!」「……」 アリナは前に進み両手で体の内から外に円を描く動きで清涼院の攻撃を捌き、そのまま両腕を突き出して清涼院の鎖骨を拳で打つ。のけぞる清涼院、アリナは鞭のようにしなる前蹴りを顎に撃ち込んだ。連続した破裂音が相撲場に鳴り響く。「……っと!今度は耐えたぞ!どうだ!!」「なるほど、それならば」 アリナの打撃の力を地面に伝えて耐える清涼院。アリナは片手で清涼院の腕をつかみ捻りあげながら背後に回って首に腕を回して締め上げる。「グ……グググ……」 締め上げながら持ち上げるアリナ。清涼院の肘、肩の関節は悲鳴を上げ、顔面は真っ赤に染まっていく。「……終わりです。フロー、哿さんお願いします」 清涼院の肩の関節が外れ首の圧迫により意識が途切れる。離れて見ていたフローレンスが慌てて駆け寄る。少し遅れてテレポートで哿が現れた。続く
Feb 2, 2019
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