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異能者特務機関:TMI 第19話「念爆者(サイコボマー)」 ジェームズらが去った後、アリナ、フローレンス、哿はしばらく黙っていた。 「アリナ……」 フローレンスが口を開いた。 「わたしは念爆者捜索チームに入るつもりですが日本支部を抜けるつもりはありませんよ。フローと哿さんを念爆者捜索チームに入れるように長官に頼みます。断られても支援チームに入れるようにします」 「アリナさん……」 「二人が一緒なら念爆者を目の前にしても自分を抑えられる気がします」 「Bチームの三人にも長官から聞いた話を伝えるべきですよね?」 哿は長官の話を端末に保存していた。 「そうですね……普段あまり顔を合わせないからこそ情報共有はしておいた方がいいです。それに行方不明のAチームの事も……」 フローレンスはアリナの髪を三つ編みにしながら言った。 *** ―北海道 TMI研究施設 「今日はここまでにしましょう」 白を基調としたアーマー前部半分が開き、修復作業の指揮にあたっていた美濃セレスティア白夜は言った。 「了解」「はい」「わかりました」 10人の作業員が一斉に返事を返す。彼らもセレスティア製のアーマーを外す。日本のBチームのメンバー3人もそこ中に居た。 「Adele(アデル)システムチェックメンテナンスを」 『イエスマスター』 セレスティアは眼鏡に表示されたAI・Adeleに命令する。作業員全員のアーマーが閉じ自立歩行でメンテナンスに向かう。 「Adele作業員の皆さん全員のバイタルデータを」 『送信します』 眼鏡に表示されたデータを見てほんの少し口角を上げるセレスティア。 「問題無いようですね」セレスティアは後片付けをしている作業員に視線を向ける。「片付けが終わったら皆さんは帰ってもらって結構です。最終チェックおよび明日の準備は私が行いますので」 「了解」「はい」「わかりました」 全員が施設から出たのを確認するとセレスティアは元々倉庫に使っていた実験室に向かう。厚さ3mのコンクリートと鋼板に囲まれたこの部屋は爆破物を管理していたものであった。今は戦闘用の人型の警備ロボが置かれている。 「Adele、始めましょう10億ボルトから」 『イエスマスター』 警部ロボの両腕がセレスティアに向けられる。そこから電撃が迸った。電撃はセレスティアに命中することなく逸れ八方に散る。 「Adele、出力を200%上げて」 『イエスマスター』 青白い閃光がセレスティアに放たれる。電撃は見えない壁に衝突したかのように散り天井と壁に激突する。 「Adele、次の準備を」 『イエスマスター』 人型警備ロボは壁の収納スペースに収まる。次に現れたのは30体の戦闘用ドローン。 「始めましょう」 『イエスマスター』 戦闘用ドローンがセレスティアを取り囲む。そして搭載された9㎜弾を一斉に放つ。弾丸はセレスティアに命中する前に緑光の光を放ちながら弾かれる。 セレスティアが左手を前に突き出す。五指が緑光に輝き閃光を放った。戦闘用ドローンを一気に10体撃墜する。振り返りながら今度は右の指から閃光を放ち7体のドローンを撃ち落とす。 「はっ」 飛び上がったセレスティアは回転し両指から閃光を放ち残り全てのドローンを撃ち落とした。 「次を」 『イエスマスター』 床からせり上がってきたのは3m程の重機を思わせる軍用パワーフレームローダー。 ワイヤーの付いた直径50cmのロケットパンチが放たれる。セレスティアは飛び上がって回避、手のひらから光弾を打ち出してロケットパンチのワイヤーを切断する。着地同時にセレスティアの足元から緑光が水の様に伸び、パワーローダーの脚部に触れると火花をあげる。脚部を破壊されたパワーローダーはうつ伏せに転倒した。 セレスティアの前にソフトボール大の緑光の球体が二つ浮かびそこから強烈な閃光が放たれる。パワーローダーを貫通しそのまま軌道変え切断していく。 「こんなところね、終了よ」 切断面がまだ赤く溶解している鉄塊と化したパワーローダーを眺めて言った。 『イエスマスター。お疲れ様です』 ドローンと作業ロボが現れ消火、回収していく。 「Adele戦闘データを送って」 『承知致しました』 眼鏡に表示されたデータに目を通していくセレスティア。 「電気信号を操作して身体能力のリミッターを外しての動きはこの辺りが限界か。これ以上はスーツ無しでは耐えられない」 『マスターの異能者強度は現在カテゴリー5に属されます』 「そうでしょうね、でもそれを表立って示すことはしない。TMIに知られれば利用される。犬に成り下がるつもりは無い。TMIにとって私は【弱異能の科学者】でいいの。スーツを着ていればスーツの力のみであると認識する」 『マスター、メッセージを受信しました。TMI本部からです』 「表示させて」 眼鏡に表示させるAdele。 「……明日の朝7:00に電人G対策チームの作戦会議。まぁ随分とのんびりしてる事」 『TMIの動きは想定より14時間36分遅れています』 「メンバーの変更は無いようね。終夜アリナが入ることも想定していたのだけど」 電人G対策チームメンバー▽チームリーダーフョードル・ヴァシリエヴィチ(ロシア支部長)▽メンバー イワン・チェーホフ(ロシア支部)アントン・マカロフ(ロシア支部)美濃・セレスティア・白夜(TMI関連施設職員)枩島大弼(TMI関連施設職員)長神一露子(TMI関連施設職員) 「こちらの準備は全て整っているわ。Adele、ゴリラ・フォッシーの容体はどうかしら?」 『オートドクターに接続……バイタルサイン全て正常。意識は戻っていません』 「そう、それじゃプランBを進めましょう」 『承知致しました。プランBを進めます』 ホテルを使わず施設で生活をしているセレスティアは白衣を纏い自室に向かった。 *** ―数時間後、日本支部 TMI専用回線を使い、アリナ達は日本Bチームとテレビ電話で通話を始めていた。 「……という訳です」 アリナ達は念爆者捜索チーム、電人G対策チームの話をした。 『そう……ありがと』 「顔色があまり良くないですね」 フローレンスが言った。 『……とにかく疲れているのよ。分からない、どうしてなのか。セレスティア博士のアーマーを着ての作業に慣れていないからかも』 Bチームの樋野映子は目をこすりながら言った。 『そのせいか分からないけど、ロシアの雷帝【様】は電人G対策メンバーに日本Bチームは一人も入れないって言ったのさ。自分の部下二人を連れてきてさ』 ショートカットの頭を掻きながら小さくため息をする樋野映子。 『愚痴はこの辺にしておいて……何が聞きたいんだったっけ?Aチームの事??』 「そうです」 アリナはモニター越しに真っすぐ目を見て言った。 『价子も万緒もダウンしてもう寝てるし私だけの話になるけど?』 「構いません」 『そう』 樋野映子はグラスに入ったウィスキーを口にする。 『……行方不明になったAチームの一人、舟木陽爻と私は付き合っていたんだ。結婚も考えてたよ。短気で馬鹿だけど正義感があって曲がったことが嫌いな奴でね、裏表がないというか気持ちのいい性格で一緒に居て楽しかったんだよ。私はサイコメトラーでこの力を制御できるようになるまでは他人の見たくないことまで見てしまって嫌になって、上っ面だけの距離を置いた人付き合いをしていた』 机に肘をついて顎を乗せる樋野映子、グラスを眺めている。 『制御できるようになってからも深い付き合いは誰ともしなかった。日本支部に入ることになって舟木陽爻と出会うまではね。やる気はあって真面目だけど要領が悪くて短気な舟木はいつも支部長に怒られていたよ。書類のミスも多かったし書き方もなってなかったから私がよく手伝う事になって遅くなった日は出前取って二人で食べたり……それである日バーで顔を真っ赤にして大声で「好きだ付き合ってくれ!」って言われてさ物凄く恥ずかしかったけど私も同じ気持ちだったからOKしたよ』 アリナは集中して聞いている。 『のろけはこのくらいにして……それからしばらくして舟木の様子が少しおかしくなりだしたんだ。色んな事件の現場に行って色んな調査もしてきた経験豊富な警官上がりの舟木が急にね。何かあったの?と聞いても「そのうち話すよ」とだけ。携帯で誰かと正義がどうとか話してるのを立ち聞きしてしまった事があった。私は舟木が自分で言いだすまで待つことにした……同じころウチのBチームの万緒が親友の様子がおかしいって言いだした』 「万緒……藤根万緒さんですね。その親友というのはAチームの中平朔良さん」 哿が言った。 『舟木が携帯で話していたのは同僚の中平朔良だった。だから私は中平に話を聞きに行ったのさ。そしたら「何もやましい事はしてないない。でも何も舟木さんが言ってないのなら私から言えることは……TMIを抜けるつもりでいる」とね』 「……その後支部長と哿さんが舟木さん、中平さんを何度も説得した」 『ええそうよ。舟木は「君に迷惑はかけたくないけど正義の為には仕方ないんだ」と泣きそうな顔で言ってた。私はどうする事も出来ず舟木の力になってあげることもできず悔しかったさ。私も付いて行くと言ったけど「待っててほしい」と言われたらね……』 「それからは?」 『突然支部長を呼び出して一緒に消えた。价子の義理の兄である支部長、万緒の親友中平、私の恋人舟木。Bチームにとって大事な人間が行方不明になった。だから異能者共有で探そうとしたのさ』 「異能者共有の危険性は知っていたのに実行したのは何故ですか?記憶喪失だけならまだしも最悪の場合精神が破壊され廃人になる可能性がある危険な行為です」 『その通り、もちろん知っていたさ終夜。本部のサイコメトラーですら手掛かりがつかめなかったのに自分たちが何か得られるとは本気で思ってなかったよ。でもね、やりもしないで諦めるなんて嫌だったのさ三人とも。異能者共有は怖かったさ、でも少しは自信があった。Bチームはとても強い絆で結ばれてるんだって三人とも感じていたから』 『それで声を拾った』 『そうよ。感じられたものはそれだけじゃなかったけど、ちゃんとデータに取れて意味のありそうな情報は声だけだったの。感じた匂いや目に映ったものは再現しても意味がないようなものだった』 「どのようなものだったのですか?」 『説明するより本部のデータを見れば早いんだけど……まぁ見れないか。見えた者はどう説明していいか……万華鏡をもっとぐちゃぐちゃにして立体感も速度も色もでたらめで……匂いは嗅いだことがあるようなないような頭を混乱させるものだった。本部のテレポーター曰く「テレポートの際の異次元に繋がる感覚に似ている」と』 「そうですか。……哿さん、どう思いますか?」 突然話をふられた哿は慌てた様子で、 「そ、そうですね……僕はちょっと違うんですけど、移動先の座標を見る時の感覚と似ているのかなーと。今見えている光景とテレポート発動の時見える光景は違いますから……異次元の感覚は人それぞれ変わるので……ごめんなさい」 そう言った哿は申し訳なさそうに頭を下げた。 「テレポーターといっても系統がありますからね。しかしこれで分かったこともありますね。Aチームのメンバーは異次元の干渉を受けて消えたのだと言えるのでは?」 『そうだね……まぁ本部も当然そこに行きついただろうさ。でも手掛かりがそこで消えてしまった訳だし声だけではその時はそれ以上追えなかったのさ』 「……Aチーム失踪の異次元の干渉は術師由来の可能性もあるのではないでしょうか?長官は念爆者を追えないのは確か『否認の呪い』と。関係あるかもしれません」 『呪いねぇ……そんなものでAチームの三人が消えたって信じがたいよ。本部に頼るのも嫌だったんでもう一度異能者共有をいつかやろうってBチームみんなで言ってたんだけどね……』 「危険です、異能者共有はしないでください。念爆者を捕らえAチームの事を吐かせれば良いのですから」 『そう……まぁ期待してるわ』 「??」 うつむいて表情を暗くする樋野映子。アリナは気になって、 「何か……言ってないことがあるのでは?」 モニターに顔を近づけて言った。 『そんな事はないわ……疲れてるだけよ』 「モニター越しでは言えないことですか?」 『……そんなものは……』 樋野映子はアリナに目を合わせで2回瞬きをした。そして確信した。 『ないわ』 「そうですか。樋野映子さん、それにしても体調がすぐれないように見えます、一度フローに診てもらっては?Bチームの他の皆さんも一緒に」 それを聞いたフローレンスは頷く。 『そ、そうね……この疲れ方はちょっと診てもらった方がいいかも』 「明日の午前中にはそちらに着くはずです。電人Gチームから外れて良かったですね」 フローレンスはアリナと見つめあった後、モニターの樋野映子に2度瞬きをして見せた。 「長官もメンバーの体調管理の為に動くのは反対しないでしょう」 「ちょっと待って……それじゃあ私と哿さんはアリナに同行できないのでは?」 「……大丈夫だと思います。僕が全力でテレポートを繰り返せば飛行機よりも速く到着できますので。北海道からすぐに戻って合流できます」 「哿さんそんな距離を往復なんて大丈夫ですか?しかも私を抱えて……」 「大丈夫ですよフローレンスさん、僕は前にAチーム全員を東京沖縄間往復移動したこともありますので」 続く
Jul 26, 2019
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異能者特務機関:TMI 第18話「認識阻害」 「食事の後でBチームの皆さんと連絡を取ってみましょう」 フローレンスはTMI本部の【異能力共有】のレポートを探している。 アリナはGOGOイチに出前を注文した後、BチームAチームのメンバー表を眺めている。 「哿さん、前Aチームの二人とBチームの人間関係はどうでしたか?」 「えっと……行方不明になった舟木さんとBチームの樋野さんは仲が良かったです。本人達は言いませんでしたが付き合ってると皆噂してましたね。行方不明になった中平さんはBチームの藤根さんと同期で親友だったと聞いてます……それと支部長の篁さんとBチームの當摩さんは義理の兄妹です」 「つまり行方不明になった3人とBチームは浅からぬ関係であったという事ですね。なるほど、リスクの大きい【異能力共有】をしてでも手掛かりを得たかった訳ですね。この行方不明事件はカテゴリー6がらみという事で本部が担当していると考えていますが哿さんは何か知っていますか?」 「長官からこの事件は本部が預かると聞いています。Bチームの皆さんは自分たちを事件捜査に加えるように強く抗議されてましたが却下されてしまいました……」 「……そうですか。長官がわたしに黙っていたのはBチームも巻き込んで動くと考えたのでしょうね。哿さん、長官に口止めされているのでは?」 「口止めされています……でもこのままじゃいけないって……あの時Bチームのみんなと一緒に抗議すべきだったと後悔しているんです」哿は目を強く閉じる。「僕が支部長になれば本部の捜査にも加わわる事もできるのですが。日本支部長の篁さんが戻って来るまでの間だけでも……」 「そうなるとUチームに新たなメンバーが必要になる訳ですね」 異能力共有のレポートを読みながらフローレンスが言った。 「そろそろ新しい支部長を決めるのではないでしょうか。バクテリア事件の事で日本の人材不足、指揮系統の見直しが本部で議題に上がってるのでは?今日か明日あたりにUチームの新たなメンバー候補を提示してくると思います」 「……アリナさんを本部所属にして監視下に置くという事も考えられます」 「あり得る話ですね哿さん。アリナを日本支部から外せばBチームやカテゴリー6の事をそのままにしておけると考えても不思議では無いです」 「わたしはそのような異動受け入れませんよ」 「長官にカテゴリー6の調査メンバーに入れると言われればどうですかアリナさん?」 「それは……」 「長官が考えそうな手ですね」 タイミングを見計らったかのように制服の首から下げたTMI専用の通信機が振動する。 「はい、哿希世美です。長官……」 『やぁ哿くん、今から本部の人間と日本支部に行くからね。食事中だったらゴメンね』 「いえ、大丈夫です。いつでもいらして下さい」 『そうか、では1時間後にまた』 「はい」 通信はアリナとフローレンスにも聞こえていた。 *** ―1時間後。食事を終えて待機していた三人、そこに長官ジェームズと髪の逆立った大柄な男、長髪赤毛の少年が現れた。 「あれは……」 ロシア支部長フョードル・ヴァシリエヴィチ(自らを雷帝と称するエレクトロキネシス)に、本部所属イグネイシャス・ファインマン(スーパーファイヤーヒーローを名乗るパイロキネシス)の二人であった。 アリナは立ち上がって見据える。 「フン……」 腕を組んだままのフョードルが鼻を鳴らす。 「チィーッス!」 軽いノリで片手を上げて歯を見せるイグネイシャス。 「カテゴリー5の武闘派が二人も……」 哿は椅子に座ったまま眺めている。 「いきなりで驚いたかな?電人Gの対策チームリーダーに就任したフョードル君、カテゴリー6念爆者(サイコボマー)捜査班のイグネイシャス君だ」 「何の用ですか長官」 アリナは鋭い目つきで長官を見る。 「なに、アリナくんには新しいチームに入ってもらおうかと考えていてね」 「いきなりですね」 「電人Gも念爆者もTMIの総力を挙げて取り組まなければ解決できない。君のように強い異能者の力が必要なのだよ」 「それでTMI最強のエレクトロキネシスに最強のパイロキネシスの二人ですか」アリナは長官の前に移動。「念爆者ついてわたしの前で初めて言いましたね長官」 「そろそろ君に黙っておくのも限界だと感じてたし、本部の会議でもアリナくんに協力させるべきだという声が多くてね」 ジェームズはゆっくりと歩きソファに腰を下ろして葉巻を取り出した。 「ウィッスどうぞ」 イグネイシャスの指から出た小さな火の玉が葉巻の先に付く。ジェームズは先を炙って葉巻を吸い始める。 「カテゴリー6の念爆者……君に敵(かたき)を取らせたいとは思うが奴が敵なのは君だけじゃあないんだよ。スタンドプレーは許されないよ」 「長官がそういうのならば、わたしは一人で念爆者を追います」 「TMIの協力なしで追っても私達の方が早く奴にたどり着いて斃してしまうかもしれないよ?」 「……」 アリナの目つきは更に鋭くなり、喉の奥でほんのわずか唸り声をあげる。 「おっと、君を怒らせるつもりはないんだよアリナくん。念爆者を斃したい気持ちはよーく理解できる。だからこそ捜査が進むまでは何も言わなかったんだ、君を止めることはできないし止めたとしてもその後が大変だからね」 「……ということは念爆者の捜査は進んだという訳ですか?」 「そうだ」 ジェームズは煙を吐いて答える。 「本部には優秀な捜査官がいるからね。念爆者の手がかりを思わぬところから拾い上げジグソーパズルのように組み上げていったんだ」 「奴はどこに?」 「まあ聞きたまえ。奴の居所は突き止められても会う事は困難なのだ。大国の大統領を殴りに行くとかそういったレベルの困難じゃあない。認識できないのだ」 「どういうことか説明してもらえますか?」 「例えば電車の向かいの席に奴が座っていても『気が付かない』のだ」 「認識を阻害させる異能者と一緒にいるということですか?」 「それならばその場にテレパスがいれば気が付くことが出来る。あれは異能力ではない」 「特殊な装置を持っていると?」 「……ああ、そういった類のものだ。これの厄介な所は念爆者を探す者は奴を見つけることはできない点なのだ」 「では念爆者の存在を知らない者は普通に接している訳ですか?」 「そうだ、そのせいで捜査は難航したのだ。昔、奴を追い詰めた時に脳波のパターンをTMIのスーパーコンピューターが記憶した。衛星で世界中を監視している、能力を使用すれば即座に居場所が判明するのだがここ数年それも無い。最後に奴が力を使用したのは日本の南、太平洋上にある某国の軍事基地に対してだ。奴は触ったものを任意のタイミングで24時間以内なら爆破できる。触れなくても半径100メートル以内にある認識できるものならば爆破できる……その気になれば核爆弾と同等の威力で発動させられる。つまり自由に扱える核爆弾を持っている、ゆえに奴は念爆者(サイコボマー)はカテゴリー6なのだ。奴は跡形もなく基地を吹き飛ばしたのだ」 「……」 「我々は奴を認識できない、そこで奴を乗せた船の船長に話を聞きモンタージュを作成したり犬を使い匂いを覚えさせたりして徐々に奴を追っていた」 「何も知らない船長ならば顔を見て覚えている、犬は念爆者なんて存在を知りません匂いの主を追っているに過ぎない、だから追えたのですね」 「ああ、そして引き続き船長に協力を仰ぎ、映っている思われる映像見せて奴の顔を確認させて最新鋭の顔認証システムに登録。警察の知り合いにこれを配備させて日本の空路航路を徹底的に見張るようにした。他の国に逃げられたらもう二度と追えなくなるかもしれないからね」 「念爆者のにおいを拾った犬の記憶をデータ化できなかったのですか?」 「……それも試したが成果はいまいちだ。事前に奴の匂いのデータを取って登録しておけばおけば良かったのだがそれが無い為日本中を手探りで探さなければならない状態だったのだよ。年月が経った今、もう匂いを辿ることは不可能に近い」 「では捜査が進展したというのは?」 「声と顔認証システム、日本Bチームが拾った声、電人G対策チームのおかげで奴を突き止めることができた奴の今の名は【 】だ」 「は?今なんと?」 「……こういう事なんだよアリナくん。念爆者を知らない者には名前を聞いて認識できただろうがね」 「長官はどうやって奴の名を?」 「テレパシーの応用だよ。私がTMIのAIに繋がり奴の名前を読み取らせて自動再生した」 「ではどうやって電人Gの対策チームが念爆者にたどり着いたか聞かせてもらえますか?」 「いいだろう」 ジェームズは短くなった葉巻を消して哿に茶を要求する。 「電人Gは電脳世界を自由に移動し電子機器を自在に操る脅威の存在だが……本体を持たないという事が弱点にもなりうることを突き止めた。電人Gを駆除するワクチンプログラムを電脳世界から世界中にばら撒けば駆除できる。駆除される前に電人Gは電脳世界から隔離された機械などに本体を移す可能性もある。例えばアンドロイドなどにね、ではどうすれば電人Gを追えるか?」 ジェームズはアリナ達全員を座るように手で合図する。 「電人Gは本体を安全な場所に移し、そこから電脳世界に干渉するだろうと考えた。安全を確保したら次は何を始めるか?バクテリアの実験だ。バクテリア自体はTMIが確保したが電人Gはデータは得たと言っていた。ブラウン博士に聞いたところ、人工的合成ゲノムからバクテリアを作り出すことは可能だそうだ。電人Gは恐らくその手法でバクテリアを作り出し実験を始めるつもりだ」 「……それが念爆者とどう繋がるのです?」 「電人Gが実験を始めるにはバクテリアを作成できる施設が必要だ。北海道にある施設は当然ながらもう使うことはできない。アメリカの施設は爆発で消滅。ランクは落ちるが実験可能な日本国内施設は東京に存在している。そこを使うのなら電脳世界を使って現地で直接行うのではなく、職員のIDを使って遠隔操作をするだろう。そこで我々は職員を調べることにした」 ジェームズは哿の淹れた茶をすする。 「東京の施設職員の中に【 】がいたのだよ」 「!?」 「恐るべき偶然だ。念爆者は何らかの方法で東京の施設の職員に成りすましていたのだ。認識阻害の影響で当然最初は誰も気が付かなかった。だが、TMIのスーパーコンピューターAIが反応し奴を見つけ出した。Bチームの拾ってくれた声のデータのおかげでね。姿や声は整形やサイバネ技術で変えることはできるが本人の話し方の癖までは変えることが出来ない」 「ではすぐに奴を!」 「そういう訳にはいかん。別の人物になりすまされればまた追う事になる。奴の目的を知る必要がある。そして認識を阻害するものを打ち破る方法を知らなくてはならない。それができなければ戦う事なく奴の先制攻撃で爆破されて我々は敗北する」 「……」 「電人Gが念爆者を知らないというのは考えにくい。TMIの関連施設に居たのならばカテゴリー6念爆者の事は耳に入るはずだ。にもかかわらず奴のIDにアクセスできたのは何故か?AIには奴の認識阻害は効果が無い。半AIと化している電人Gなら自身は念爆者の認識阻害を受けてるが、知らずにアクセスできたと考える」 「認識阻害を打ち破るにはAIが必要だと?」 「いやAIで認識阻害を完全に破ることはできない。別人になりすまされれば追うのにまた時間を要する。方法は正確には分かってはいないが『否認の呪い』を利用したものと私個人は推測するね」 「それはどういうものですか?」 「アリナくん、君は霊といった存在を信じるかね?」 「信じてはいません、わたしは確認できていませんから」 「うむ、では霊を『見える話せる』という人をどう思うかね?」 「何かしらの原因で脳に影響を受けたかと思われます。例えば薬物、異能力などです」 「そうではないとしたらどうかね?科学でも異能の超能力でもない力があるとしたら?」 「そんなものがあるとすれば……オカルトですか?」 「そう言ってしまえばそこまでなのだが無いものとして考えるのではなく、あるものとして考えてくれたまえ。何故私がそう考えるのか?それは大量の異能者を生み出したレインボーフォリナー事件の原因はオカルトに関係しているからだ」 「……!?」 「それについてはまた機会があれば話そう。とにかくオカルトは存在し、それを操る術を持つ者たちもいる」 「長官が嘘をついていないのは分かりますが、信じがたいですね」 「すぐに信じろとは言わない、念爆者の認識阻害を打ち破るのにオカルトを操る者の協力は必要だと考える。電人Gに関しては最強のエレクトロキネシスのフョードル君なら電脳世界に現れた電人Gの後を追いのアジトを見つけることが出来るだろう」 「長官、それならば何故そのオカルトを使える連中に最初から協力を仰がなかったんですか?そうしてれば何年も捜査しなくて済んだのではないですか?」 「何もしてなかったわけでは無いよ。オカルト連中……ここでは術師としておこうか。知り合いを通じて術師に念爆者の捜査を依頼したことも何度かあったが全員が首無し死体となった」 「……」 「おそらく念爆者の一味だろう。だが今回はそうはさせない、こちらは奴の居場所を突き止めた。術師には認識阻害を破ってもらう、その護衛にはTMIが着く」 「その護衛にわたしも入れというのですか?」 「そうだ。だが念爆者の認識阻害を破るまでが任務だよ。その場で奴に挑むのはやめてもらいたい」 「念爆者を前にしてわたしを止めるのですか」 アリナは拳を握りしめる。 「さっきも言ったが念爆者を斃したいのは君だけじゃあ無い。自分自身を抑える自信が無いのなら電人G対策チームに入ってもらうよ」 「……長官、念爆者がAチームと日本支部長と接触して消えたのは何故だと考えています?」 「さあね、分からんよ。だが念爆者を捕らえれば分かるんじゃないか?さて、アリナくん、君は念爆者捜索チームか電人G対策チームに入るか決めたかね?」 「少し時間をいただけますか?」 「いいとも、夜までに返事をくれたまえ。明日の朝には作戦開始だからね」 そう言って立ち上がる。 「フョードル君、イグネイシャス君、何か彼女らに言っておくことはあるかね?」 フョードルが立ち上がり前に出る。 「終夜アリナ、電人G対策チームに入るのは拒まんが俺のチームでの勝手な真似は許さんぞ?俺は甘くない、粛清が必要と感じたのなら容赦なく行う!肝に銘じておけ!!」 フョードルは手に稲妻を発生させて顎を上げ上から睨みつける。続いてイグネイシャスが立ち上がる。 「ウィッス!まぁ仲良くやろーぜアリナちゃん!雷帝のアニキはああ言ってるけど気にしないでいいぜ。こっちの念爆者捜索チームは基本自由で拘束はしない。チームの規則は一つだけ【チームの為に動く事】だ」 火を纏わせた指先でハートを描いた。 「以上だ!長官!!」 「ウィッス!」 「では行こうかフョードル君、イグネイシャス君」 扉を開けると同時に3人の姿は消え、本部へと転送された。 続く
Jul 7, 2019
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