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異能者特務機関:TMI 第17話 「フローレンス・フランシス」 ―日本支部 Bチームと一般職員は北海道での任務にあたっている為、日本支部にはアリナ達Uチームの他には警備ロボと雑務をこなすアンドロイド、宿直の職員1名だけであった。 待機中のアリナ達Uチームの3人は自分の席に着きそれぞれ資料漁りや装備のチェック、読書などをしてくつろいでいた。 フローレンスは北海道での会話の後、それまでさほど気にしていなかった日本支部長、Aチームの事が頭から離れなくなっていた。 「哿さん」 「はい、なんでしょうフローレンスさん」 「Aチームと支部長の事で訊きたいことが事が」 「はい」 「日本支部長とAチームの2名は失踪となっていますが、TMIは一度登録した異能者は世界中どこにいても追跡できるはずなのですが、行方不明扱いになっているのは何故ですか?以前長官に尋ねたことが事があるのですが答えてはくれませんでした。なので哿さん言える範囲で教えてくれませんか?」 フローレンスはタブレット端末を持って哿に言った。 「わかりました。失踪事件はミイラ取りがミイラになったといいますか……初めに二人が突然TMIを辞めたいといいだしてそれを止める為に僕と支部長と4人で何度も話し合ったんです。休養が必要なら取ってもいい、前線が嫌ならバックアップか訓練施設や本部の職員になっても良いと説得したんですけど……」 「ミイラ取りがミイラになったとは?」 「辞めると言っていた二人が『合わせたい人物がいる』と支部長を呼んだんです。僕は支部長をその建物の入り口まで送りました。その後支部に戻り連絡を待っていたのですがその日はありませんでした。翌日支部長の机の上に辞表ともいえるメモが残されていました。そしてそのまま支部長とAチームの二人は姿を消してしまったのです」 「日本支部長、篁真守(たかむらまもる)テレパス。Aチームメンバー、舟木陽爻(ふなきようこう)パイロキネシス。Aチームメンバー、中平朔良(なかだいらさくら)サイコキネシス……素行に問題はなく優秀……と記されてますね」 「ええ、なのですぐに捜索が始まりましたが本部の異能者でも3人の行方を突き止めることはできませんでした。かろうじて手掛かりはあったのですがそれは3人の痕跡ではなく……一人の男の声でした」 「男の声?」 「本部のサイコメトラー数人が同じ声を聞いています。テレパスによる情報共有で確認しました。声はデータ化され各国支部に送られたのです」 「声しか痕跡が無かったというのは妙ですよね。テレポートで消えたとしても直前の光景はサイコメトラーには見えるはず」 「きれいさっぱり何も見えなかったと報告書にあります。あったはずのものを消し去ったかのような……」 「その方法は解明できていないのですね?声の男の方は何か手掛かりはあるのですか?」 「その声とは……カテゴリー6ですね」 それまで静かに聞いていたアリナがつぶやいた。 「え?」 フローレンスはアリナの声のトーンに驚く。 「そ、そうです……声はカテゴリー6……十年程まえに突如現れ世界を混乱に陥れた念爆者(サイコボマー)のカテゴリー6、一度はTMIが追い詰めたのですが……今は行方知れずの人物です」 「……」 「アリナ……?」 フローレンスがアリナの顔を見ると眉間にしわを寄せ机の上で組んだ手を眺めている。 「わたしはフランスで偶然支部長のシャルルさんがその事件のことを長官と話しているの聞いたのです。PDAの資料から聞こえた声……忘れるはずがありません。わたしの家族の命を目の前で奪ったあの男の声を……」 「日本支部長とAチームのメンバーが消えた事とアリナの探している人物が繋がるなんて……」 「わたしはその声を聞いて日本支部に来たのです。カテゴリー6を追って来たのです」 「アリナさんの発言を無視するわけにもいかなかったフランス支部はカテゴリー6と日本支部失踪事件の男の声を照合しました。結果は完全一致。そして二日後にアリナさんが日本支部に来られました。僕とBチームで迎えに行きました」 「その3日後にフロー、貴女が日本支部に来た」 「私は……日本支部の空きが出来たので呼ばれただけです。工作員からTMIに入り訓練所を卒業した後は本部でフリー扱いで様々な支部の応援に入ってました。私はアリナに出会ったのも偶然です」 「いいえ、違いますよフロー。わたしが貴女を選んだのです」 「え?」 「貴女を見てわたしが選び長官に申請したのです」 「そうだったの」 「カテゴリー6を討つために選んだのではありません。一目で気に入ったのです、わたしのチームメイトは貴女だと」 「私のどこが気に入ったの?」 「合う、と感じたのです。わたしは自分の感覚を基準に判断します」 「アリナ……」 「貴女がわたしと合うかは若干不安でしたが。フランス支部で合うメンバーはいませんでした。仲間として認識はしていましたが向こうはどう思っていたかは分かりません」 「僕と合わないと感じていたらアリナさんはどうしてたのでしょう?」 哿は一瞬だけアリナを見て床見て目を伏せる。 「……任務に支障をきたすことは無い様に振舞っていたと思いますね。ただ、任務外での付き合いは無かったかと。こう言った会話も無いと思います」 「そう……ですか……」 「わたしは偉そうに言える者ではありません。好みかそうでないかそれだけです。わたしは自分自身の目的の為にフランス支部を辞め日本支部に移り自分のやり方を押し通す者です長官や皆に迷惑をかけていると思います。ですが止まりません誰にも邪魔はさせません」 「そんな迷惑だなんて……!」 哿は少し大きな声を出した。 「僕の事もアリナさんは真っすぐに見てくれます。男っぽいとか女っぽいとか言わずに関係なく接してくれます。変な気を遣うことも無いですし僕もアリナさんとは接しやすいです。仕事も優秀でさりげないサポートを良くしてくれるを僕は知ってます」 「そうですアリナ、あなたのおかげでどれだけ私は救われているか。あなたは誰かが言った『我儘な猛獣』なんかじゃない」 「アリナさんの程の力を持つ人があんな丁寧に手加減をして被害を最小にできるのは他に居ないですよ」 「過大評価ですよ」 「そんな事はない!」 フローレンスは立ち上がる。 「アリナ、あなたに出会って私は救われた」 ―フローレンス・フランシスは製薬会社に勤める両親の間に生まれ比較的裕福な家庭で育った。 フランス語、ギリシャ語、イタリア語、ラテン語、哲学、数学、天文学、経済学、歴史などあらゆる教育を施される。 フローレンスはその中で一人の偉人に感銘を受け『自分もこうなりたい』と思うようになる。 その名はフローレンス・ナイチンゲール。 両親は反対しなかった。フローレンスの目標を応援するようになった。順調に目標へと進んでいたフローレンスに悲劇が訪れる。 家族旅行の最中、ハイジャック犯により飛行機が夜の山の中に墜落した。 墜落後、意識を取り戻したフローレンスは幸い大きな怪我も無く、壊れた座席から這い出た。 両親を探すフローレンス、発見した父親は首をあらぬ方向に曲げ、母親は機体に圧迫され口から血を吐いて絶命していた。 両親にも隠していた生体コントロールの異能を使い治療しようとするフローレンス、既に死亡した生命はコントロールできず両親の遺体を抱え泣くだけであった。 ―助けて 掠れた小さい声を聞いたフローレンスは立ち上がり壊れた機内から出ると地獄が広がっていた。 飛行機は完全に破壊され機体の残骸は荷物と共に散乱、そこら中から火があがり大勢の人が倒れうめいていた。目の前に自分より年下の少年が助けを求めていた。少年の下半身は飛行機の残骸により完全に潰されていた。 フローレンスは何ができるかわからないまま少年の手を握り生体コントロールで傷を治そうとした。潰れた下半身は再生途中で止まり麻痺していた神経を繋げてしまった為少年の苦痛は爆発的に増してしまった。激痛のあまり少年は意識を失いそのまま意識は戻ることは無かった。 フローレンスは何が起きたのか分からず瓦礫を移動させようとするも動くはずもなくその場に座り込んでしまった。 ―助けて ―苦しい ―痛い 周囲から声がする。フローレンスの頭にナイチンゲールの『ランプの貴婦人』のエピソードがよぎった。 「助けなきゃ……皆を助けなきゃ……」 フローレンスは燃える火の灯りを頼りにまだ生きている人々を探して生体コントロールの異能を使うも幼く未熟な彼女は適切な処置はできず出血を止めるのが精々で苦痛を和らげる術は持たなかった。 徐々に消えていくうめき声。フローレンスは力尽きて倒れるまで夜の山の中を歩き回り人々を見て回った。 病院で目を覚ましたフローレンスは夢では無かったことに絶望し生き残ったのは自分を含めたった3名だと聞かされどん底に突き落とされた。 「私はできなかった……ナイチンゲールになれない……こんな力があるのに」 その後、養護施設にあずけられたフローレンスは他人との接触を避け勉強と体を鍛えることに没頭した。そして13歳で高等部のカリキュラムを卒業後、施設の紹介で軍の敷地内で医療部隊で事務の仕事をはじめた。 フローレンスの異能の力の事を知っていた軍の一人の男の目に留まり特殊工作員の隊に配属された。そこで彼女は銃器の扱いを覚え特殊工作員として前線に立つ者のサポートをすることになった。やがて敵スパイの尋問拷問をも担当させられフローレンスの精神はすり減っていき、目標としていたナイチンゲールへの思いも褪せてきていた。 テロリスト集団との戦闘が激化する中フローレンスはTMIの長官ジェームズと出会う。そして次の日にはTMIの訓練施設に入り半年後本部に配属となる。17歳に准看護師の資格を取るための実務経験を積む為そういった現場に派遣されるようになる。そして20歳で正看護師になる為に。 すり減った精神はそれでも戻ることはなくフローレンスは幼少期の飛行機事故のトラウマに悩まされながら16歳を迎えた。 フローレンスは長官から日本支部の配属を言い渡されアリナと出会い精神力を取り戻していく。 フローレンス・ナイチンゲールの言葉、『天使とは、美しい花をまき散らす者でなく、苦悩する者のために戦う者である』というものがある。アリナは復讐の為に我が道を進んでいるといいながら、目の前で助けを求めている善良で弱い者を無視できない、それらを助けるために迷いなくすぐ行動に移れるアリナに思い描いていた天使像を見た彼女はナイチンゲールを追うのではなく自分最高の看護師を目指すこと決めたのであった。 すぐに打ち解けあいお互いの身の上話をした二人。フローレンスはあの飛行機事故の時、アリナの異能が自分にあれば全員では無くても救える命あったと考え、アリナも大量出血で死んでいった家族を救えたのはフローレンスであったと考えた。 アリナが目標を達成したどうするのか決めていないと聞いたフローレンスは医療従事者の道を薦めた。彼女の純粋さや信念精神力の強さは戦闘マシーンとして敵を打ち倒すのに使うのではなく救うための力に使うべきだと考えた。アリナは『考えておきます』とだけ少し微笑みながら答えた。 「フロー?」 フローレンスの目が潤んでいるのを見たアリナが言った。 「なんでもないです……」 座るフローレンス。アリナは向かいの席にいるフローレンスの隣に腰を下ろした。 「本当に何もないのですか?」 「ええ、少し昔を思い出しただけ……平気」 「そうですか」 「アリナに嘘は付けないから分かるでしょう?」 「ええ」 「そ、そうだお茶淹れてきますね」 哿は小走りで給湯室に向かう。 「アリナ」 「はい」 「もしもの話ですが、カテゴリー6が他の国で発見されたのなら移籍するのですか?」 「分かりません……その選択肢もあり得ます」 「移籍するのであれば私も一緒に……」 「フローが付いて来てくれるのなら反対する理由などありません」 「フランス支部の人達はアリナに付いていこうとした者はいないのですか?」 「いませんでしたね。皆わたしを引き留めはしましたが日本に付いていくとは言いませんでした」 「付いてくる者がいたらアリナは了承した?」 「了承しなかったと思います。合わない者と一緒に過ごしてもお互いの為になりませんから。わたしを追いかけてきたとしてもわたしがその者と距離を置き続けるのは本人にとってよくありませんからね」 「そう……ところでアリナ、お昼ご飯は何にする?」 フローレンスは数秒目を閉じてからそう言った。 「GOGOイチのカレーライスギガ盛り全トッピングをと考えているのですが」 「じゃあ私もGOGOイチにする。あそこのハヤシライス気に入ってるの」 「ハヤシライスもいいですね。ギガ盛がメニューにないのが残念です」 「じゃあ僕もGOGOイチで。シチュ―ライスにします」 哿が淹れたほうじ茶を二人の机に置く。 「Aチームの事は放置したままにしておけない事件です。何とかしたいですね」 「本部のカテゴリー5の力をもってしても手掛かりを掴めないとなると……」 「カテゴリー6……男の声はどうやって拾ったのですか?哿さん」 「Bチームの三人の異能力共有で何とか拾えたのです」 「異能力共有……失敗すれば脳細胞に深刻なダメージを残すあれを……!?」 「そ、そうです。長官も止めたのですが……」 「Bチームの三人と話をしたいです。時間を取って話したことはありませんから」 アリナは携帯端末を操作してカレーショップGOGOイチの番号を呼び出しながら言った。 続く
Jun 30, 2019
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異能者特務機関:TMI 第16話「レインボーフォリナー9」 下の階に降り、隔壁のロックを解除し除染室を通りぬけ保存室に入るアリナ、フローレンス、哿。 「あれがコールドスリープのポットですね」 哿はポットに近づきPDAを操作してコールドスリープの解除を始める。 「バイタルサイン正常……あと1分で覚醒します」 1分後ポットが開き冷気の中から全身ボディスーツの美濃セレスティア白夜が現れた。 「美濃博士……分かりますか?」 「……ん」 美濃セレスティア白夜の呼吸器を外す哿、フローレンスが首に手を当て確認する。 「んん……あなたたちは……その服、TMIですか?」 ゆっくりと目を開ける。 「そうです美濃博士、バクテリアの事でブラウン博士と一緒に来ました」 「……あなたたちが無事にここまで来たという事は五所川原を退けたのですね。ああ、私のことはセレスティアもしくはティアと呼んで下さい」 「僕は哿希世美といいます、こちらは終夜アリナさんにフローレンス・フランシスさん」 「そうですかどうぞよろしく」 体を起こすとゆっくりとポットから降りるセレスティア。そのまま歩いて壁際のカーテンの付いた簡易シャワー室の横のロッカーを開けボディスーツを脱ぎ捨てた。 「どうしましたかTMIの皆さん?」 「い、いえあまりに落ち着いておられて自宅で着替えるかのような姿に驚いただけです」 セレスティアから目を反らせる哿。 「……?」 「気にせず着替えをしてください」 アリナは哿の前に立って言った。 「私が落ち着いているのは……もう安全だと確信しているからですよ。正直コールドスリープからいつ覚めるのかわからなかったので不安はありましたがね」 「まだ上の階層は安全とは言えませんがTMIで保護します」 「五所川原振之助はどうなりました?」 下着を着け、袴を思わせるパンツに深緑のシャツ、和風デザインの白衣を身に着け橙色のシュシュで髪をまとめ透明フレームの眼鏡をかけるセレスティア。 「逃がしてしまいました……バクテリア事件の詳しい事はわからないままです。セレスティア博士良ければ知っていることを教えてもらってもよろしいですか?」 アリナはこれまで得た情報をセレスティアに話す。 「そうですか……五所川原振之助はゴリラのフォッシーの実験結果を見た時から興奮していました。そして次なるステップとして人体実験を行う事に意欲的でした。他の職員は当然反対。それで諦める五所川原ではありませんでした。そこで彼は大金をちらつかせ個人的に交渉を始めた。私はフォッシーからそれを聞き五所川原に詰め寄りました」 「阻止するために五所川原と対立したのですね」 「いいえ」 いいえと意外な答えにアリナは一瞬目を見開いた。 「止めるために対立するよりも協力者を装ってコントロールすることにしました。フォッシーも理解してくれましたし五所川原を刺激したくなかったのです。戦闘スーツを用意して何かあれば対処するつもりでいました」 「それでどうなりました?」 「私は人体実験に意欲的であった彼の為に人体実験シミュレーターのソフトをフォッシーと作り上げました。実際に行う事は出来なくてもシミュレーションならできる、それで妥協させるつもりでした。彼は自分の生体組織のデータをシミュレーターで何度も実験していました」 「……」 「彼は最低限の自分の関わっている業務をこなし後は人体実験シミュレーションに夢中でしたね。施設の人間のサンプルをとりシミュレーションにかけてデータを取っていました。この頃から少し五所川原はおかしくなってきたのかもしれませんね」 「停電のあった日、貴女はどうしていましたかセレスティア博士」 「覚えている範囲でならお話しますよ。……停電のあった日、私は五所川原にコールドスリープのポットに入るように命じられましたね」 「何故五所川原はそんなことを?」 「私は彼に好意をもたれるように勘違いさせておいたので、私を生かす為にそうさせたのかも」 「そんな簡単に好意を?」 「ああいったタイプの研究者の男性は理解者と自分の研究に協力できる人間を求めているので。身内にそういう男性がいたので知っているのです」 「停電の後に施設は五所川原の手によりバクテリアで汚染され、五所川原は覚醒して適合者となった。同時期にアメリカの施設で事故が発生バクテリアが流出しテロリストの手に渡って周辺の市街にまで被害が及んだとのことですがどう考えます?」 「そうですね……同時期に起きた事件……アメリカの施設とは頻繁にやり取りをしていたので五所川原に感銘を受けた者。逆にアメリカにいる者が五所川原に影響を与えたという可能性も考えられます。計画的犯行の可能性も」 「五所川原の背後に何者かが居る可能性も考えられますね」 「ありえなくはないでしょう」 「セレスティア博士、事件についての話は後でTMIで話してもらうとして、今は施設最奥にあるバクテリアを確保したいのですが」 それを聞いたアリナは哿を見て頷いた。 「そうですね、哿さんの言う通りです。今はバクテリアを入手してブラウン博士に抗バクテリアを作ってもらわなければ。セレスティア博士協力をお願いします」 「もちろんです。あのバクテリアの抗菌性抗生物質を造るのですね。取り扱う以上同時に研究もしてましたのでデータはあります。私が眠っている間に設備が破壊されていなければすぐにでもかかれるでしょう」 *** ―施設一階 「ハァハァハァ……これで全部よ!」 ルキナ、カレン、マイケルはゾンビ化した感染者を全て破壊。ゾンビを操っていた菓谷彪介(かたにひょうすけ)に迫る。 「クソクソクソクソクソがああああああああああっ!!」 背を向けて走り出す菓谷。ルキナは空気圧縮ブレードを飛ばして足に命中させる。 「ごおええっ」 顔から転倒する菓谷。カレンとマイケルはアサルトライフルを構えて距離を詰める。 「やめっ……やめてくれぇええ!!」 「動くな!」 「お前は放っておいていい存在じゃない怪物だ!」 「バクテリアに支配されてるだけなんだ!助けてくれ治療してくれ!!」 「……隠し持っていた銃を撃つつもりネ?」 カレンは予知で見た光景を口にする。 「黙れ死ね!!」 懐に手を入れた瞬間、マイケルのアサルトライフルが火を噴き菓谷に弾丸を浴びせた。 「動くなといったはずだぜ?」 カレンが予知で死亡を確認。そのタイミングで通信が入った。 『施設の制圧を完了。これより生存者の美濃セレスティア白夜博士と共に戻ります。アポートは無しでお願いします』 Uチームのリーダーである哿の声を聞きルキナらは小さくため息をついて安堵の表情を浮かべた。 *** 研究施設の事件は事故として処理されることになり、アリナ達Uチーム、ルキナ達チームエンジェルは他のチームに引継ぎをし任務から外れる事となった。 ―翌日 終夜アリナのUチームと早乙女ルキナらのエンジェルチームはジンギスカンで評判の店で食事を終えワゴン車に乗り込んでいた。 「とても満足しました」 「良い店でしたねアリナ。客層も店の雰囲気も」 「ルキナさんたちも美味しそうに食べてましたね」 ハンドルを握る哿、ワゴン車を発進させる。少し遅れてエンジェルチームのワゴン車は反対車線に出ていくのが見えた。 「箸を持てなかったマイケル・カルーヤには少し悪い事をしましたね」 「フォークで納豆サラダばっかり食べてましたね」 「デザートのアイスクリームも美味しかったですね」 他愛もない話で盛り上がる三人。 「エンジェルチームはブラウン博士とセレスティア博士の護衛があるのでしばらく北海道にいますしもう一回くらい一緒に食事できそうですね。今度はどんな店がいいですかね?」 「哿さん、蟹料理が食べたいです」 「私はアリナの希望で良いです」 「ではエンジェルチームにも伝えておきましょうね。今度はBチームも呼びたいですね、いつも僕たちUチームのバックアップをしてもらってるので」 「あまり顔を合わすことはありませんがBチームには感謝しています。是非とも一緒に」 アリナは窓の外、研究施設の方角を見ながら言った。 「Bチームは昔から哿さんと組んでいるメンバーなのですよね?」 フローレンスはPDAに表示されているBチームのメンバーを見て言った。 「そうですね、Bチームの三人との付き合いはもう3年になります。彼女たちは後方支援や調査、追跡を得意としていて前の僕のAチームもとても助けてもらってました」 「Aチーム……わたしとフローが日本に来る前に居たメンバーですね」 アリナは横目でPDAを見て言うとすぐに窓の外に再び目を向けた。 エンジェルチームのワゴン車はアメリカ支部長のハリー・ハーマンと通信していた。 『これから本部の会議に参加する……君たちはそのまましばらくこっちには戻ってこない方がいいかもしれんそっちで任務を受けてもらう』 「なぜですか支部長?」 鏡でメイクをチェックしながらルキナが言った。 『詳しい事は会議が終わってから話す。この通信は本部のテレパシー異能者の力を借りたもので例のゴショガワラには傍受される心配はない、今後もこの方式で君たちと連絡を取ることにする』 *** 上空1万メートルに浮かぶ白い塔。TMIの本部。 「……」 長官のジェームズ・スチュワートは椅子に体重を預けコーヒーを飲んだ後にため息をついた。 「コーヒー、お気に召さなかった?」 アーニャ・アイゼンハートは落ち着いた声で少し口角を上げてそう言った。 「アーニャ、君は何も思わないのかね今回の事件」 「変わった事件だとは思いますけどこれまでに例が無いというほどでは。なのでいつも通りに処理して良いと思ってますよ」 「電子世界を自由に行き来できる犯罪異能者がバクテリアのデータを持って逃げたのだぞ?世界的危機に発展しうる大事件だと私は考えているんだがね?」 「だからこそ、ですわジェームズ。世界的危機を何度も救ってきたTMIは今度もいつも通り世界を救います。既に対策チームを立ち上げています。作戦会議の資料の準備が出来たのであなたに書類のデータとコーヒーをお持ちしたのですよ」 「……そうだったのか、いや流石だよアーニャ。君は昔から優秀だが年を経てますます磨きがかかっているように感じるな。それに比べ私は……」 「日本の支部長までやってるのでは疲れが溜まって当然、十分なスペックを発揮できなくて当然です。今日にでも代理を任命すべきです」 「ああ……日本支部は哿くんに任せたい。だがあのチームはテレポーターもしくはアポーターが必要なんだ。哿くんやマイケルくんほどの異能者とは言わないが適任者が見つからなくてね」 ジェームズはTMIの名簿を見て頭をかく。 「4名ほどいるはずでは?」 「……3名が断っている。無理強いしてもいい結果にならないのは目に見えている」 「なにが原因ですか?」 「アリナくんの足を引っ張ってしまうのが怖いという声と、日本より自分の国で活躍したいという声があるのだよ……後1名はフランスにアリナくんを戻すのが条件という……」 「終夜アリナを戻すようにストライキを起こすと言っているジョリス・シモン。彼もテレポーターですね」 「彼だけは絶対に無い」 「ジョリスは終夜アリナをジャンヌ・ダルクか何かだと思っているのでは?」 「……否定はできないね。フランス支部のシャルルくんからアリナくんの活躍っぷりを聞かされていたからね。彼はアリナくんを制御しきれてなかったし実質フランス支部を引っ張っていたのはアリナだったと聞いている。彼女を使いつぶす為に彼は過酷な任務を与えつ続けていた節があったね」 「結果フランス最大の犯罪組織を壊滅、その混乱に乗じて台頭してくる組織も全て潰したって訳ですね」 「警察も優秀でうまい具合にTMIと連携が取れてたから混乱も起きずに解決できた。アリナくんの亡くなった父親が警察官であったのも関係あったのかもしれないね」 「彼女一人の力では無かったにせよ、ジョリス・シモンにとって終夜アリナは英雄であったという事ですね。突如現れた救世主に見えたのでしょう」 「ジョリスくんは哿くんと同等かそれ以上のテレポーターなんだが……アリナくんに心酔するあまり視野が狭くなってしまう可能性がある」 「能力に問題は無い、のであれば期間限定で彼を日本支部に入れてみてはいかが?問題があればすぐにフランスに戻すという条件で監視すればストライキも防げるのでは?」 「そうだな検討しよう……だが今じゃない」 「そうですね、これは急ぐ必要はありませんね」 「……では行こうか、会議へ。五所川原振之助の対策が先だ」 コーヒーを飲み終えるとジェームズは立ち上がり、タブレット端末を手に取る。それを見届けたアーニャは扉を開けた。 会議室には既に4名が席についており残りの席にはモニターが置かれている。各国の支部長、カテゴリー5の面々が集められていた。 「皆揃っているな……では早速始めようか。五所川原振之助、仮称【電人G】の対策会議を始める」 *** 事故の起きた研究施設は徹底的に浄化が行われていた。美濃セレスティア白夜の用意していたアーマード戦闘スーツを着た職員数十名。バクテリアを視認できるように調整されたカメラ、バクテリアを掴むことのできるマニュピュレーターを装備して作業に当たっている。全員が抗菌性抗生物質を投与されバクテリアの対策はされていた。 「施設の外に流出した可能性は低いが念のため調査は行った方が良いだろう」 戦闘スーツを着ながら作業するブラウン博士が言った。 「そうですね。アメリカは既にかなり広範囲に広がっているとの事ですからせめてこちらは防ぎたいところです」 自分専用女性型戦闘スーツを着ているセレスティア。白を基調とし部分部分に鮮やかなグリーンとオレンジのパーツをあしらえてある。 「しかしこんな高性能戦闘スーツ良く残っていたね?セレスティア博士」 「五所川原は全て破壊したつもりでいたようですが、それは組み上げた旧式の物だけです。新型は組み上げる前の状態でAIもまだ組み込んでいなかったので無事でした」 「そうだったのか、備えていたのだね。ところでセレスティア博士、抗菌性抗生物質は投与されてない様子ですが?」 「感染の危険はありません。私は強い異能者ではありませんが自分自身の異能の扱いを熟知していましてそれを使い体内のバクテリアは全て駆除しました。スーツのカメラでスキャンして確認していただいて結構ですよ?」 「……確かにバクテリアは微塵も見当たらない」 「安心しましたか?では作業を続けましょう」 続く
Jun 24, 2019
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異能者特務機関:TMI 第15話「レインボーフォリナー8」「この研究施設で何かが起きて停電、その後全員が眠らされ今の状態になった……と」 ブラウン博士は哿のPDAを見ながら自分のタブレットを操作して言った。「……停電のログを見るに……6日前……アメリカの施設が爆破された日と同じだ。この研究施設にアメリカでテロを起こした犯人と繋がっている者がいるのか?」「現状怪しいのは所長の五所川原振之助、そして美濃セレスティア白夜博士ですね」 アリナは周囲を警戒しながら言った。「ブラウン博士、美濃博士はバクテリアを扱う事はあったのですか?」「アメリカの施設ではあったが彼女は直接の実験に関わることは無かったよ。深海、宇宙などの過酷な環境に対応できるスーツや作業ロボットの開発チーム所属だったからね。だがバクテリアには興味を持っていた様子だった」「経歴を見るに美濃博士は元々生物学を学んでいたようですね」「ああ、在学中に彼女は変更したんだ。きっかけは何だったかな……家族の不幸があってそれからだったと言っていたかな」「五所川原振之助所長は帝都大学卒。専攻は生物学」「米日の交流会での印象は良かったよ。快活でリーダーシップもある。医師や研究職の一家だと聞いている」「電子操作の異能を使って米日同時に事件を起こした可能性も?」「ありえない事ではない。だが動機が不明だ、彼は研究者として充実してたようだ。テロを起こすなんて考えにくい」「では美濃博士は?」「考えにくいね、家族の不幸もテロリストの事件に巻き込まれたと聞いているからね」「二人は別の異能者に操られて起こした可能性は?」「なんとも言えないな、全職員を調べなくては」 突如部屋のPCのモニターが全てついた。映し出されたのはノイズがかった青白い顔の男。「ようこそブラウン博士、TMIの諸君。私が所長の五所川原振之助だ」「!?」「実にいいデータが取れたよ。バクテリアは素晴らしい!!」「……」 アリナは哿とブラウン博士の前に立ちモニターの前で構える。「電子機器は全て私の支配下にある」「ずっと止まっていた搬入用エレベーターが!」 哿が叫ぶ。地下8階で停止してたエレベーターが起動、中から現れたのは10体の戦闘スーツ。「あそこのスーツも私の力で操っている」 戦闘スーツが一斉に手を向ける、掌の光学兵器が輝く。「危ない!」 アリナが射線に飛び出し両手を合わせてガントレットを構える。 青白い光弾が一斉に発射される。受け止めたアリナは衝撃で吹き飛ばされる。「哿さん!ブラウン博士を!!」 飛ばされながら叫ぶアリナ。テレポートすべく哿はブラウン博士に近づく。「はははは!」 突如ブラウン博士の背後に戦闘スーツが現れる。そして光学兵器を放ちブラウン博士を背中から貫き、哿の左肩も貫いた。「ステルス迷彩!」「……っ!」 哿は意識が飛びそうになるのを耐えブラウン博士を掴みテレポートする。「逃げたか、だがあの傷ではブラウン博士は助からない。そしてこの施設からは誰も逃がさない!」「ううううああああああああああああっ!!」 アンカーボルトをセット、ベヤリング弾を構えるアリナ。「フォッシーはまだ君に異能を戻してないな?ならばこのままぶっ殺させてもらう!!」 光学兵器の出力を上げビーム状に放つ戦闘スーツ。アリナはガントレットで受け止める。「ウウム!なんという防具だ!!このプラズマレイに耐えるとは!!」「うううううううううああああああああああああああああああ!!!」 ガントレットの温度は上昇しアリナの腕を焼いていく。それでも前に進み距離を詰めていく。「がんばるねぇ~!だったら次はこれだ」 両腕の装甲が開き砲門が現れる。そこから放たれたのは超音波。「超音波砲だ!動けまい!!止めはこれだ!!」 戦闘スーツの胸が開き中央のリアクターが輝き始める。「ははははは!美濃博士の作った戦闘スーツは最高だねぇ!!」「こんなところで……こんな敵に……負けられない!!」「リアクター!最大出力!!吹き飛べ!!」 戦闘スーツの胸部リアクターから青白い粒子が放出。ガントレットで受け止めるアリナに直撃した。「…………」 床を転げるアリナ。腕のやけどで爛れた所からの出血がガントレットの熱で蒸発し煙を上げている。「はははは!フォッシー、お前のおかげで難なく勝てそうだ!!能力の使えない異能者などこの程度!!だがまぁTMIの小娘お前はよくやったほうだ」「終夜アリナ……すまない!今すぐ君に能力を戻そう!!」「おっとそうはさせん!!」 戦闘スーツのプラズマレイがフォッシーの足を貫く。「フォッシー、お前は殺さん。これからもその異能利用させてもらうぞ」「こんな……こんなつもりでは!終夜アリナすまない!私が君の力を抑えたせいで!!」 ゆっくりと近づいてくる10体の戦闘スーツ。「フォッシーの無力化を解除するには本人に触らせて解除させるか射程距離から離れるか奴の意識を失わせるしかない。小娘、フォッシーお前らは今どちらも選択できない」 両腕から血を滴らせゆっくりと立ち上がるアリナ。「その腕ではもはや何もできまい?……バクテリアの実験に使ってやろうか?」 机を挟んでアリナとフォッシーを中心に戦闘スーツはプラズマレイを向けて包囲する。「ははははは!!」 アリナの正面の戦闘スーツがプラズマレイを放つ。アリナの両脚に命中、煙と鮮血を飛び散らせる。「これでフォッシーの射程から出ることも私から逃げることもできなくなったな!!はははは!絶体絶命というやつだ!!」 膝をつくアリナ。「このフロアーに入った時からお前は罠にかかっていたんだよ。フォッシーに無力化させたところで襲撃!どんな異能者であろうがこれで終わりだ!!フォッシーがメモリーを隠していたのも来た人間に渡すのも全て罠だ!!油断させるためのなぁ!!俺は最初から全てを見ていたそして備えた。地上の感染者共の襲撃もエレベーターのロックも出来損ないどもの配置も俺が決めたのだ!」「…………」―アリナ…… 声がする。この声は父…―アリナ…… 懐かしい声、母だ。―お姉ちゃん…… ……アリス。―アリナよ…… 祖父…… なにも悪くない何もしてない皆がどうしてあんな無残に殺されなくてはならなかった?その場に居合わせなかった祖父はずっと自分を責め続けた。病に倒れ敵を討てなかった事を最後まで悔いていた。 わたしがやるから安心して。わたしは力を持って生まれて生き残ってしまったからやり遂げる。あの男は許さない。あの黒スーツの男を斃す為にわたしは生きている。その前には死ねない。 アリナの目がわずかに輝き髪が逆立っていく。それに反応するようにフォッシーが痙攣し始める。「ううううううううあああああああああああああああああああああっ!!」「あがががががががが……」「何!?」 アリナが叫ぶと同時にフォッシーは鼻血を噴き口から泡を吐く。 次の瞬間、アリナの体は弾丸めいて突進。目の前の戦闘スーツの5体を吹き飛ばして粉砕した。「ふううううううううう…………こんな所で終われない……父と母とアリスの敵を……祖父の無念を晴らす前に終われない……!」「なに!?フォッシーの能力を打ち破って力を取り戻したというのか!?」 御所河原がそう言った直後、立っていた5体の戦闘スーツの頭部が粉砕。アリナの手にはベヤリング弾が握られている。「ふうううううううう…………わたしは止まらない、誰にも止めさせない、あの黒スーツ男を討つまでは!!」「なるほど……ライフル弾にも耐えるこの戦闘スーツを指弾で破壊……対物ライフル並の威力を出せるということか。君のデータを更新しておこうか、それでは次だ」 衝撃と共にエレベーターの扉を破壊して現れたのは一回り大きな戦闘スーツ。「美濃博士の開発した試作型軍用戦闘スーツだ。どうしてこんなものまで彼女は持ち込んだのか分からないが遠慮なく使わせ貰う。スペックによると戦車の砲撃にも耐えられる……ああしかし、砂川との戦闘を見た後ではどこまで耐えられるか分からんな。重傷を負ってるとはいえ力を取り戻した君に対抗できるか不安だ」「アアアッ!」 ベヤリング弾打つと同時に突進するアリナ。戦闘スーツの肩に取り付けられた機関銃の銃口をベヤリング弾で跳ね上げ踏み込むアリナ、正拳突きを戦闘スーツの頭部に打ち込んだ。そして壁に激突した戦闘スーツを追いかけ連打を叩き込む。「この猛攻、反撃すら……できないだと……どうやら私には君を止めることはできないらしい。だが私を止めることもできんよ?なぜなら私の肉体はすでに無いのだから」 中身のない戦闘スーツを破壊するアリナ。次に五所川原の顔が映るモニターに飛び掛かり破壊する。「ハハハ!まるで北欧神話のベルセルクだな!」「ベルセルク?……わたしは正常ですよ五所川原振之助」「さて……戦力も全て失った所で退散させてもらおうかな。プログラム体となった私を捕まえることはできないぞ。世界中のネットを駆け巡りどんな機器でも操れる。バクテリアに完全適合し異能の力を大幅に上げた私はバクテリアの支配から離れるために体を捨てたのだ。手に入れた神にも等しいこの力!世界は私の実験場!!」「……お前も必ず斃します」「ハハハハハ!次に会うのを楽しみにしてるよ!!この施設のバクテリアもどうぞ持っていくがいい!データは得た、もはや不要!」「美濃博士はどこに」「利用価値があったのでコールドスリープのカプセルに閉じ込めてある。まだ生きていると思うがね。ま、今となっては不要の存在だが……ではまた会おう」 モニターの五所川原の顔が消える。アリナは床に座り込んだ。***「アリナ!」「アリナさん!」 彼女の目の前に現れたのは哿とフローレンス。哿はテレポートでアリナのガントレットを外す。中の腕は重度の火傷を負って全体的にケロイド状となっていた。「これはひどい……」「必ず治します、だからアリナ安心して」「……少し意識を失っていたようですね。すみません、わたしが至らないせいで五所川原に逃げられてしまいました……哿さん体は大丈夫なのですか?」「何をいってるのですアリナさん、あなたがいなければどうなっていたことか。僕はフローレンスさんに治してもらったのでもう平気ですよ」「アリナ、貴女はそのまま意識を保ってください必ず私が治します」 手をかざすフローレンス。彼女の額に汗がにじんでいく。「フロー……ブラウン博士は?」「大丈夫よ、なんとか一命を取り留めました」「あなたは今日だけで4人は治療してるのでは?無理してるのでは?」「私は平気、TMIに入る前に日に10人を治療したことがあるので……」 アリナの腕に新しい皮膚が出現し見る見るうちに再生していく。腕が終わると足の治療にかかる。「アリナ、体力の消耗が激しいです。携帯食料を持ってきたので食べて」「……はい」 銀色の包みを開け細長い高栄養ケーキを渡すフローレンス。経口補水液のキャップを開けアリナの前に置く。「もう大丈夫ですフロー、ありがとうございます」 経口補水液を飲み干して立ち上がるアリナ。「大丈夫ではないですアリナ。私は傷は治せても体力の回復はできない、疲労感はやわらげていますが貴女は消耗し衰弱している状態です」「……そうですか分かりましたフロー」 両手を握るフローレンスの目を見てアリナは頷いた。「これ以上の戦闘はやめましょう、次に遭遇した場合僕がすぐにテレポートで連れて退避します。アリナさん、フローレンスさんよろしいですね?」「……はい」「了解です」「それでは美濃博士を探しましょう、コールドスリープされていると聞きました」「哿さん、施設の地図を見せてもらえますか?」「は、はい」 哿は地図を表示させると立体ホログラムにして二人に見せる。「おや?こういう表示も可能なのですね?」 フローレンスはホログラムを眺めながら言った。「今まではバッテリーの消費を考えて使わなかったのです。今はもう撤退を視野にいれてますので少々は大丈夫かなと」「そうでしたか」「予備バッテリーを持ち歩けばいいのですが任務中に交換するのを気にして使いたくないので車に置いてるのです」「……やはり日本支部には人材が足りませんね。哿さんには支部長もしくは代理となってもらって現場指揮官に、哿さんの今のポストには新しいテレポーターもしくはアポーターを就かせるべきです。私とアリナに合う人が条件ですが……早乙女ルキナも悪くないですね、アリナとは違うアタッカーで負担をお互い減らせますし」「ルキナさんはアメリカ支部のエースですからそれは無理かと……」 哿は苦笑いしながら言った。「どう思うアリナ?」「早乙女ルキナは嫌いじゃありませんよ。あの対抗心剥き出しなのが苦手なだけです」「そ、そうですか……メンバーの増員の事は今度本部にも使えておきますね。その事はいったん置いておいて今は美濃博士の捜索です」「はい」「そうですね」つづく
Jun 1, 2019
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