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異能者特務機関:TMI 第9話「レインボーフォリナー2」 走り出すチームエンジェルのワゴン車、Uチームのワゴン車は転倒した車に横着けして停車する。 「哿さん、チームエンジェルに連絡してください。あの黒装束はわたしたちが止めると」 「は、はい!」 飛び出すアリナ、ベヤリング弾を構える。畑から立ち上がる二人の黒装束男。割れたヘルメットのシールドから見える顔は土気色で双眸はうっすらと白く濁り犬歯をむき出している。 「明らかに異常ですねあの二人」 「グアアアアアアッ!」 拳銃を構える黒装束男、アリナはベヤリング弾を打ち出して拳銃を持った右手に命中させ拳銃を弾いた。 「……」 ベヤリング弾に打ち抜かれた手からは血がしたたっているも黒装束二人は気に留める様子も無く左手の特殊警棒を構えてアリナに突進する。 「ゴアアアッ!」 ローキック、前蹴りで黒装束の膝を折り曲げるアリナ。 「痛みを感じていないようです」 足を折られ這いつくばる黒装束、片足と腕を使い這いながらアリナに迫る。アリナは後ろに飛んで下がり再びベヤリング弾を構える。 「アリナ!戻って!!」 フローレンスが叫ぶ。カバンから筒状のネットランチャーを取り出す。 「よほどの異能者じゃない限りこの電磁ネットランチャーで昏倒するはず」 網が発射され黒装束二人を捕らえ電撃が走る。 「グウウウウアアアアアッ!」 網に捕らえられ転倒する黒装束。電撃を受けしばらく痙攣していたが再び動き出す。アリナがワゴン車に戻るのを確認した哿はすぐに発車させる。 「アリナ平気?」 「ええ」 アリナがわずかに動揺しているのをフローレンスは見逃さない。 「アリナ、こっちを見て深呼吸を」 アリナの両手を握るフローレンス。アリナの心拍数が上がっているのを感じる。 「フロー、哿さんあの男たちの様子を見ましたか?」 「見ました」 「はい」 「長官の言っていたNYでのテロリスト事件の犯人らの特徴と一致しませんか」 「……そうですねアリナ」 「そ、それでは映像を長官に送りついでにあの二人の回収をお願いしておきます」 一時的に運転をオートに切り替える哿、カメラの映像を長官に送信する。フローレンスは能力を発動させてアリナを落ち着かせる。フローレンスは知っていた、アリナは幽霊や呪い祟りなど自分の力で解決できないものを苦手とすることを。 「(考えたくありませんねアレがもしアンデッドならそんなものが存在するなら……)」 「アリナ、大丈夫ですよ」 フローレンスはアリナの目をまっすぐ見つめて言った。 *** 先を走るエンジェルチーム。Uチームからの通信を受け取る。 「不死身の異能者とかありえますかねぇ?」 マイケルは顔をしかめて言った。 「聞いたことないわ、超再生とか聞いたことあるけど痛みも感じないなんて……」 ルキナは髪を整えながら言った。 「謎ですねェ……それも気になりますが突然の襲撃も……」 「それよ!博士の護衛の情報が外部に漏れるなんてありえない!待ち伏せしてた感じだったわ……」 ルキナは少し考える。 「襲撃の可能性があるからUチームをあたし達につけた……のよね?博士、何か知ってる?」 頭を抱え震えるブラウン博士。 「うるさい!とにかく研究所に連れてってくれ!!」 「博士!?」 「……すまない、取り乱してしまった。最初の予定ではあのさっきの車に乗り換えて研究所に行くつもりだったんだ。男二人は研究所の警備兵だ……TMIの長官の指示で飛行に乗る直前に予定を変えたと聞き、車の二人に連絡した。だからあの車の彼らがあそこで待ってるはずが無かったんだ」 「え……?」 「研究所が無事だといいが……さっきから連絡してるんだが誰も応答しない」 「カレン、今の博士の言葉Uチームに伝えて」 「了解」 ―30分後 大学の横を通り山に入っていく。行き止まりのコンクリートで固められた山の斜面の手前で駐車、ブラウン博士が携帯端末からパスワードを入力、斜面は左右に開きトンネルが姿を現した。 「こんな所に研究施設が……カレン、何か見える?」 「1分後まで何も起きないヨ」 「しかし誰も出てこないねぇ……ガードマンもいないぞ?」 マイケルが言った。トンネルの照明は薄暗く人の気配も感じられない。車をゆっくりと進める。続いてUチームのワゴン車がトンネルに入る。 「トンネルのゲートが閉じてく……私は操作していない、研究所の誰かが閉じたのだ」 「……誰かいるのに博士を出迎えないのは気になるねぇ」 搬入用エレベーターの区画に入るワゴン車。エレベーターの前に人影が見える。 「あれは警備ロボットだ。様子がおかしい、まったく動作していない」 携帯端末で警備ロボットの操作を試みるブラウン博士。 「駄目だ、完全に停止している。あのロボットに身分証を提示して研究所内部の者が承認しないとエレベーターは動かない」 「他に入るルートは?」 「非常階段があるが……地下10階までは降りられない。地下5階の中央エリアを通って専用エレベーターもしくは階段で降りるしかない」 ブラウン博士は端末に表示された地図を見せる。 「何故そんな構造に?」 「……非常事態に備えての構造だ。地下6階からは外部に持ち出しができないものがある」 「最奥の地下10階にあたしらは行くのよね?一体何があるの?」 「君たちに隠しても仕方が無いか……超危険生物、そのサンプルが地下10階にあるのだ。そしてそれはNYの研究所にもあった。今は跡形もなく吹き飛んだが……」 「え!!じゃあNYにその超危険生物が放たれたって事??」 「わからない……消滅してなければどれほどの被害をもたらすやら。だから合衆国のTMIは異能者をほぼ総動員して事態の収拾に努めているのだ。君たちは何も聞かされていないようだな」 「聞いてたらこっちに来てないわよ!」 「そういう事だろうな……」 「TMI本部にはカテゴリー5の未来予知(プロディクション)がいますネ。それを見て長官は判断したのではないですか?」 カレンが言った。 「エンジェルチームとブラウン博士とUチーム、当初の目的であった施設到着は果たしました。そろそろ次の指示があるのではと思いますヨ」 『ジェームズだ、話は聞いていたよ。チームエンジェル、Uチームの諸君聞いて欲しい』 2台のワゴン車内に長官ジェームズの通信が入る。 『本部のカテゴリー5未来予知者ミッシェルは高齢でね、あまり無茶はさせられない為こういった形を取らせてもらった』 「未来への分岐を出来るだけ少なくして能力の使用回数を減らすということですネ?」 『そうだカレン君、強度は違えど同じ能力を持つ者、理解が速くて助かる。ミッシェルの予知では君たち6人が必要だった。ここからは慎重になって欲しい、結果を言えば6人と博士、全員無事でなければならない。先ほどの待ち伏せしていた襲撃者、あの二人のせいで最初の予測とは若干変わってきている。敵にも未来予知者、あるいはテレパスがいると考えていいだろう』 「NYはどうなっているんですかぁ?」 マイケルが聞く。 『アメリカ支部長ハリー君が中心となって奮闘してくれたおかげでNYの混乱は収まりつつある。油断はできないがね』 「超危険生物が逃げたかもしれないって聞いたんですけど?」 ルキナが聞く。 『サイコメトラー達が捜索しているよ。消滅したにせよ生きてるにせよ必ず突き止めるよTMIの総力を挙げてでもね』 「長官」 『なんだねアリナくん』 「危険生物とモンスター化する急増異能者の関連性は?」 『……うむ、危険生物とは【異能バクテリア】だ。モンスター化は異能バクテリアが関係している』 「異能バクテリア……」 『数十年前、突如世界を包み込んだ謎の虹色の光。時間にして10分程度であったがその現象は世界全体、気候、土地、動物、植物、昆虫、人間に影響を及ぼした事は皆知ってるね?』 「はい」 『異能バクテリアはバクテリアの一種でね、脳に取りつき宿主を変異させる性質をもつんだよ。これまで動物実験が行われてきたけど利用するにはあまりにも危険という事でTMIが管理することになったんだ。虹の光事件の後、北海道とNYで発見された』 「長官、そのバクテリアが人間に入るとどうなりますか?」 『……その質問を答える前に、動物実験を行った結果どうなったと思うね?……変異したんだよ。新しい生物になったと考えてもいいほどの変異だ。手足の長さを自在に変えれる猿、言葉を話す犬、高速で夜中でも飛び回るキジなどだ』 「動物によって変異の仕方が変わるのですか?」 『良い質問だアリナくん、その事に関して詳しい説明はブラウン博士にお願いしよう』 話をふられるとブラウン博士は小さく咳払いをする。 「……動物によって変異の種類が変わるのではと我々研究者も考えたが違った。別の猿は派手な毛色に変化、また別の猿は体が大型化した。そこで仮説を立てた、個体の願望が変異に影響するのではと」 「……それで人間で実験する計画があったのですね?」 「あった、だが倫理に反する上にバクテリアの影響を受けた動物の99%は24時間以内に死に、体内のバクテリアも死滅していた。そんな危険な計画は即刻却下凍結した。人体実験を行っていたら可能性としては人間に異能バクテリアが入ると能力を発現させてもおかしくない。その人間に能力を得たいという願望があればね」 「では急増異能者は何者かによる人体実験の被験者なのですか?」 「……考えられるだろう。バクテリアの影響を受け死亡した生物は狂暴化して蘇生し次の宿主を探す。次の宿主に移れなかった場合バクテリアはそのまま24時間で死滅する、ただし完全適合すれば新たな生物として活動を続ける」 「治療する方法は?」 「あるとも言えるし無いとも言える、抗生物質を打ちバクテリアの活動抑制物質を使った治療薬を24時間以内に使えば治療は可能だ。だがそれは初期段階のみだ。完全適合や蘇生狂暴化した生物には効果が無い。今の所それらの対処は高温で完全に焼却しか方法は無い」 「!!では先ほどの黒装束の二人は……」 『心配無用だよアリナくん。あの二人はすでにBチームに対処させた』 「そうですか」 「君たちTMIのメンバーであればこの先研究施設が変異生物であふれていても対処できるだろう……問題は」 『変異完全適合の異能者だね?ブラウン博士』 「そうだ、TMIに配属される強度では無かったカテゴリー1~2の異能者が5人この研究施設に勤めていた。彼らが完全適合していれば能力の強化あるいは別の力を手に入れてると考えられる。そうなればカテゴリー5に匹敵するやもしれん」 『作戦はこうだ。1・まず、博士の持っている抗生物質とバクテリア抑制剤を全員接種。この場所でアポート(転送)のマイケル君が全員に触れてアリナくんと待機。2・そしてルキナくんカレンくんのコンビが先頭を切ってフロアーの安全を確保。3・その後哿くんがテレポートでフローレンスくんと博士を連れ安全なフロアーに移動。4・最深部にたどり着いた後、博士の作業が終わり次第マイケル君が皆をここに転送だ』 「長官、わたしは待機でよろしいのですか?」 アリナが聞く。 『ああ、君はもしもの時の為に待機だマイケル君の護衛も兼ねてね』 「わかりました」 『(最悪の事態を考えて……ルキナくんが感染し暴走した場合アリナくんしか止められる者がこの場にいないんだよね。アリナくんは能力の性質上感染する可能性はほぼ無いし。先頭に配置して万が一アリナくんが感染してしまったら私でも止められるかどうか)』 「どうしましたか長官?」 『アリナくん、抗生物質は必要ないだろうけどバクテリア抑制剤は接種したまえよ。抑制剤を排除しないで体に取り込んで自分のものにできるね?』 「できます、やってみせます」 『結構、では作戦を開始する』 続く
Mar 30, 2019
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異能者特務機関:TMI 第8話「レインボーフォリナー」 上空1万メートルに浮いている白い塔。TMIの本部、日本支部長室で長官ジェームズは首狩り斬鬼事件(ブラックヴァリー)の報告書を眺めていた。本部に設置されている支部長室は各国の支部と繋がっており本部のコンピューターに許可されたものだけが瞬間移動で訪れることができる。 ―首狩り斬鬼事件の2日後 ジェームズの部屋にTMIの白を基調とした軍服風の制服に身を包んだ50代の女性が入って来る。 「……よくあの三人をチームにしましたね、つくづく思いますよ長官」 そう言った。 「アーニャ……君が日本支部の様子を見に来るとは珍しいね」 コーヒーの入った金属のマグカップを空中操作して長官の机に置くアーニャ・アイゼンハート。TMIの副長官を務めている。 「最近長官が日本支部にかかりっきりなので少し気になっていました。しかし……その気になればテレポートでナイフを飛ばし一瞬で10人程度の心臓を貫ける哿希世美。元特殊工作員で殺人の経験は無いもののあらゆる銃器の扱いに精通し生体操作の能力で拷問も担当していたフローレンス・フランシス。そして常に戦場に身を置き続けていた最強クラスの身体強化カテゴリー5の終夜アリナ。Uチームは危険なメンバーの集まりですよね」 「良いチームだと思うよ私は。哿くんは二人をよく見て動いてくれるし優秀だよ、やさしいからナイフで殺しなんてとても。フローレンスくんも好きで工作員をやっていたわけでない今は工作員とは縁が切れている。アリナくんもこっちの支部に来てからは凄惨な事件には関わっていない。哿くんフローレンスくんの二人と一緒なら落ち着いているし自分を制御できているよ」 「反対をしているわけではないのですよ長官。感心しているのです、貴方は昔からそういうのが得意だった。異能者の個性を生かして導くのが」 「アーニャ、そんな事をわざわざ言いに来たのではあるまい」 「NYで起きている同時多発テロの件ですが……」 アーニャはタブレット端末を開いて見せる。 「うん」 「先日アメリカ支部長ハリー・ハーマンと会われて話をされましたよね」 「急増しているカテゴリー3までの異能者の事だよね、逮捕者の中に何人もいたって。それがどうかしたのかね?」 「私が独自に調査した結果、NYの異能逮捕者全員が変異したことが判明しました」 「……どういうことかね?」 「異能逮捕者は全員容体が急変し死亡、その後息を吹き返したのです。いえ、正確には別の者として活動を始めたと言った方が良いかと。体温は異常に低く、かぎ爪を生やし、筋肉は大きく盛り上がって狂暴化。近くにいた病院の職員に襲い掛かったのです。幸い大きな被害を出さずにその場にいたTMIのメンバーで鎮圧したようですが」 「まるで……ゾンビ映画のような事件だね。後でハリー君と話をしなければならないね」 *** 「しばらくは札幌市内のホテルとワゴン車での生活になりそうですね」 アリナはホテルの朝食バイキングのウィンナーを口に運びながら言った。 「アメリカから来るチームのサポートに入るのでしばらくは北海道での生活です」 哿はカフェオレを飲んで言った。 「今度は私たちがサポートですか。アリナがいるのにメインチームじゃないのは珍しいですね」 フローレンスはコーンスープを口に運びながら言った。 「そういえばアメリカにいるカテゴリー5は二人……そのうちの一人はアメリカ支部長のハリー・ハーマンさんもう一人は……」 「早乙女ルキナですね」 アリナが言った。 「早乙女ルキナが来るのですか哿さん?」 「はい……早乙女ルキナさんのチームが北海道に来ます」 「チームエンジェルはサイコキネシス(エアロマスター)早乙女ルキナ、未来予知(プロディクション)カレン・ユン、転送(アポート)マイケル・カルーヤの三名ですね」 「よく覚えてるのねアリナ」 フローレンスは取り皿にサラダを盛りアリナに渡しながら言った。 「ええ一応は。哿さん、チームエンジェルはどのような任務で北海道に?」 「護衛ですね。アメリカの研究員と物資を札幌市内にある研究所まで送り届ける任務です」 哿はジェームズから送られてきた添付ファイルを二人に見せる。 「僕たちUチームはエンジェルチームのリザーブとして就く事になります」 「エンジェルはカテゴリー5のエアロマスターに未来予知、転送の異能者……なるほど今回の任務に適したチームですね」 「しかし私達Uチームがリザーブというのはよく分かりませんね、他に適したチームがいる気がしますが」 「後で長官に聞きましょう、朝食が終わったらミーティングですから」 哿はPDAのファイルを閉じてカフェオレを口に運んだ。 *** 『今から6時間後に新千歳空港にチームエンジェルと護衛対象のキース・ブラウン博士と物資が到着する。君たちUチームはリザーブとして後方から警戒に当たってくれ』 「長官」 『なんだねアリナくん』 「わたし達Uチームがリザーブというのは何故ですか?他に適したチームがあるのでは?」 「カテゴリー5のいるチームを二つも護衛任務に就かせるのは何か訳があるのですか?」 アリナに続いてフローレンスが言った。 『念には念を入れてという事だね。NYで深刻な被害が出ている事件が多発しててね』 「同時多発テロ事件ですね……」 『そうだ、その事件には異能者が関係している。テロのメンバーにカテゴリー3までの異能者が多くてね、それは突如異能者となった者なんだ。あまりに増えてごまかすのもそろそろ限界といったところなんだよ。更に厄介なことに急増する異能者はどのようなきっかけか分かってないが突然死の後蘇り理性を無くしたモンスターとして暴れだすんだ』 「ではアメリカ支部は……」 『アメリカTMIメンバー9割がNYでの事件に当たっている。これが5日前の状態で今のNYは非常事態宣言、出入りは禁止になっている』 「ブラウン博士が来日する目的は?」 『……ごく一部の者しか知らない表向きは大学研究棟のTMIの研究施設がある。その一つが北海道にあってね、そこに博士を連れていく。博士はTMI創立当初からの付き合いがあるんだ』 「アメリカにはTMIの研究施設が無いのですか?」 『あったというべきだ……今回の事件の発端がNYにあるTMIの研究施設だったんだよ。テロリストに完全に破壊されてしまって今はもう無い。幸いブラウン博士は休暇中で無事だったがね。北海道のTMIの研究施設で異能者とモンスター化する急増異能者の関連、治療方法を調べてもらう』 「では本部のテレポーターを利用して日本に?」 『うむ、博士は外部の人間だが今回は緊急事態なのでね。NYのアメリカ支部から本部に飛び、そこから東京の日本支部に。そこから飛行機で新千歳空港に移動する。その間もチームエンジェルが同行する事になっているよ』 *** ―6時間後新千歳空港 TMIの制服上着の上に紺のダッフルコート、スカートは自前のグレーのチェック柄、素足にルーズソックス、ローファーを履いている。髪を青色に染め眉毛の上で真っすぐに切りそろえている10代の少女。カテゴリー5の早乙女ルキナ。 「リザーブなんていらないっしょ、チームエンジェルだけで十分だっていったのにぃ」 「アリナ・終夜がいるから不機嫌なのですかぁ?」 ジャストサイズのTMIの制服を着る浅黒い筋肉質な20代の男、マイケル・カルーヤ。 「はぁ?ちがうし!あんなパワーゴリラ意識してないし!!」 「ルキナちゃん、マイケルくん、任務に集中ですヨ!」 黒髪を後ろでまとめたメガネをかけた20代の女性が言った。カレン・ユン。 「大丈夫、博士から目を放してないし周囲の警戒もしてるわよ。カレン、何も起きそうにないっしょ?」 「30秒先の博士まで何も起きませんネ」 「博士が男トイレに入っていきますねぇボクがついていきますよぉ」 マイケルがアタッシュケースを持ったブラウン博士の後を追ってトイレに入る。 「おや、日本のUチームも来ましたネ」 「え?」 アリナ、哿、フローレンスが階段を上がってくる。 「終夜アリナ……」 アリナをにらみつける早乙女ルキナ。アリナは周囲を一瞥した後カレン・ユンに近づく。 「挨拶は省略しますカレン、ブラウン博士はどこに?」 「久しぶりネー!アリナ!ブラウン博士はトイレ、マイケルくんが見てるヨ」 「ちょっとちょっと!あたしを無視するなっての!!」 アリナの肩を掴みかけ思いとどまり前に出る早乙女ルキナ。 「なんですか邪魔ですよ」 「は?邪魔ァ!?ちょっとあんたマジ……」「黙ってもらえますか」 すかさず言葉をかぶせて睨みつけるアリナ。苦虫を潰した顔で下がる早乙女ルキナ。 「ふ、ふん!任務中だからここは引いてあげるわ、それだけだし!」 「まぁまぁ仲良くしまショ。哿さん、フローレンスさんもお久しぶり!」 早乙女ルキナをなだめた後カレンは哿とフローレンスに声をかけた。 カレン・ユンはチームエンジェルのまとめ役であり実質リーダーである。癖の強い早乙女ルキナ、少しぬけたところがあるマイケルをうまくまとめている。 「お久しぶりですカレンさん」 「お久しぶりです。博士とマイケルさんが出てきましたね」 トイレからブラウン博士とマイケルが出てくる。 「オー!Uチームの皆さーん!ヨロシクゥ~!」 大きく手を振るマイケル。ブラウン博士の斜め後ろを歩いている。 「さ、急ごう。こんなに人が多い所は早く去りたい」 ブラウン博士が歩くのを見て早乙女ルキナが先頭に出る。左右の後方にカレンとマイケル、Uチームは少し離れて後ろを歩く。 TMIの用意した白ワゴン車に乗り込む博士とエンジェルチーム。続いてTMI黒ワゴン車に乗り込むUチーム。 「アリナ、ルキナさんを挑発しては駄目」 「挑発したつもりはなかったのです。ただ話す必要が無かったので」 「そうだとしてもです。貴女はルキナさんより容姿もスタイルも頭脳も異能者としても上なんだから。同じカテゴリー5でも貴女が上です」 「わかりました気を付けます」 静かにうなずくアリナに握り飯と麦茶を渡すフローレンス。哿は苦笑いでバックミラーに移るフローレンスとアリナを見る。 「早乙女ルキナさんはアリナさんに異常に対抗心燃やしてますものね」 「一度打ち負かしたのですが懲りてないようですね」 「アリナ、ああいった人は自分の成果よりも相手の失敗を喜びます。私たちは気にせずいつも通り任務に挑みましょう」 「ええ」 「高速道路には入らないようですね。この前みたいに高速道路で襲撃されたら厄介ですねものね」 哿は前の白TMIワゴン車を見ながら言った。法定速度で走る2台のワゴン。 「カレン、能力の使用は無茶する必要ないから」 助手席に座る早乙女ルキナが言った。 「分かってますルキナ大丈夫ヨ」 未来予測の異能者のカレン・ユン。24時間先までの未来が見える。ただし見た未来の時間分はインターバルを必要とし、体力の消耗は激しい。未来を変える行動をした場合見たとおりになるとは限らない。 「1時間程で着くのだろぅ?ノープロブレム!」 後ろを向いて親指を立てる運転席のマイケル。 「マイケル!前!前向いて!!」 約30分、何事も無く走行するワゴン車。大通りの前の交差点で工事中の為迂回をさせられる。 「オット、ナビを修正しなくてはー」 大きくルートを外れ農場の細い脇道を進むワゴン車。日没し徐々に周囲は暗闇に包まれていく。途中の脇道から車が2台現れ白いワゴン車の前を走る。 「前の車スピード落としてくるねぇ~嫌な感じだー」 マイケルは左脇のホルスターの銃を確認して言った。 「カレン!」 叫ぶルキナ。 「……1分後前の車からあやしい男が二人出てくるヨ、注意して」 「そいつらは何をする?」 「ワゴン車に攻撃を仕掛けてくるヨ」 「だったら……先手必勝っしょ!」 窓を開けて飛び出すルキナ、風を操り宙に浮く。停止する前の車。 「はっ!」 ルキナは右手をかざす、突風が発生し前の車を横転させ畑に転げ落とした。 「ルキナちゃん戻って、マイケルくん車を出しテ!」 カレンが叫ぶ。 「まだよカレン!車から出てくるわ!」 「シャアアアアア!」 飛び出したのは全身黒ずくめの戦闘スーツの男二人。 「どうやってあたし達の事知ったのか、何者か気になるけどとりあえずぶっ飛ばすわ!」 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」 特殊警棒で攻撃を仕掛けてくる黒装束、ルキナは飛び上がり黒装束に手を向けて突風で転倒させる。起き上がった黒装束二人は拳銃を取り出しルキナに発砲。 「効かないわよ!」 空気のシールドによって弾丸は逸れる。ルキナは両掌を前に突き出し砲を思わせる形をとり空気を圧縮していく。 「ヴォルテックスキャノン!」 ドーナツ状の空気の塊が発射される。 「ガッ」 「ゴッ」 衝撃で10メートルほど吹き飛ぶ黒装束、畑の中に落下する。 「手加減はしたし死んでないっしょ」 「ヘイ!ルキナ!速く車に乗ってくれぇ!」 マイケルの声に反応し空中旋回して車内に飛び込むルキナ。 「カレン、何が見える?」 「人間とは思えない速さで車を追いかけてくる男らが見えるヨ」 「はぁ!?あいつら異能者じゃないっしょ?そんな感じしなかったし」 「ブラウン博士を無事届けるのが任務ヨ、マイケルくん出して!」 「オーケイ!」 博士は頭を抱えてしゃがんでいた。 続く
Mar 24, 2019
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異能者特務機関:TMI 第7話「首狩り斬鬼5」 ―俺は正義の味方だ。あいつもそう言ってくれた ―守れなかった。何が正義の味方だ。 ―俺の憧れていた正義の味方は警察官ではなかった。 ―悪は滅ぼさなくてはならない。好き勝手に蔓延るあいつらが許せない。 ―俺の考えに賛同してくれる者がいた。ドンドン増えていった。 ―力を貸してくれる者がいた。だから俺は、俺たちはそいつが望むものをくれてやった。 ―首だ。法律で裁けない悪人の首を刎ねて欲しがるそいつにくれてやる。 ―俺たちはブラックヴァリー。正義執行の為には手を汚す。血で塗れて染まろうとも。 ―ブラックヴァリーの邪魔をするものは始末しなければならない。 能力制御の手錠をつけた吉岡警部補ら他二人をBチームに引き渡したアリナ達は発信機をつけたトラックを追う。サービスエリアで買い込んだパンとドリンクをアリナに与えるフローレンス。 「選んでる時間はなかったのアリナ、好きな物だけ食べて」 「大丈夫ですよフロー、ありがたく頂きます」 綺麗な所作でパンくずを一つもワゴン車に落とすことなく食べていくアリナ。 「トラックは利根別自然公園の中で止まりましたね」 「首狩り斬鬼……ブラックヴァリーにはまだ異能者がいる可能性があります」 「十分気を付けて行きましょう」 利根別自然公園の前で停車するTMIワゴン車。ブラックヴァリーのトラックが見える。アリナはゆっくりとワゴンから降りる。哿とフローレンスは車内でガス銃を構える。 「……」 吹き矢がアリナを襲った。のどに触れる寸前でガントレットで受け止める。 「無駄ですよ。わたしの身体強化は筋力をあげるだけではありません、知覚も上げているのでわずかな動きも見逃しませんよ」 アリナはベヤリング弾を打ち出す。茂みから小さなうめき声が聞こえた。 「化物め……これがカテゴリー5か……」 別の茂みから姿を現したのは上山刑事部長であった。 「Bチームがあなたを監視してたはずですが」 「簡単な事だ。体格の似た部下に顔面の人工皮膚を被らせたんだこれが意外とバレない。有名な怪盗もこの手口を使っている」 「……」 「終夜アリナ、お前のおかげでブラックヴァリーはめちゃくちゃだ。たった一度会っただけで俺を疑い、二日でここまでやるとはな。舐めていたつもりは無かったがあまりにも予想外だった。俺はお前に会うべきでは無かった。警察内部の誰であろうと捜査を操れる立場の俺に逆らえる奴はいない。署長はカテゴリー0、異能者は全て俺がブラックヴァリーに取り込んだ。誰にも知られず誰にも邪魔されないはずだった……TMIは適当なサイコパスを逮捕させ去ってもらう予定だった……全てお前のせいで狂った、だがもう終わりだ」 「ここで姿を見せて白状し迎え撃つということは、わたしに対抗できる手段があるという事ですか」 アリナは鋭い眼光を上山刑事部長に向ける。 「もちろんだとも……防衛省が極秘に開発した戦闘スーツだ」 上山刑事部長がコートを脱ぎ捨てると全身を包み込む金属製のスーツが現れた。 「ロケットランチャーの直撃、2000度の炎にも耐える。全身に鎮圧用の装備が仕込まれている。カテゴリー5に対抗するように開発されたのだ。更に!」 左腕に装着されたダイアルを回す。全身に張り巡らされたチューブが紫色に輝いていく。 「装着した異能者の力に反応しエネルギーへと変換するサイコパワーフレーム搭載だ」 ヘルメットを装着する上山刑事部長。 「そしてこのヘルメットはテレパスの影響を99%カット。テレパスである俺自身の能力も使えなくはなるがこの状況では関係ない。サイコパワーフレームは人間相手に使うのがこれが初めてだ。巨大熊も6秒で始末できた、お前は何秒もつかな?」 突進する上山刑事部長、右ストレートを繰り出す。アリナは左にスウェー左ボディブローを撃ち込む。上山刑事部長の体が浮き上がる。 「チッ!」 ジャブストレートのワンツーから左フック、右回し蹴りを繰り出す。アリナは全て躱し右回し蹴りが引くのに合わせて右ストレートを胸に打ち込んだ。たたらを踏む上山刑事部長。 「くっ……」 姿勢を低くしタックルを仕掛ける上山刑事部長。アリナは右腕を伸ばして首に巻き付け左腕は上山刑事部長の脇の下から滑り込ませて受け止める。そして締め上げながら後方に投げつけた。 「この程度でわたしに対抗できると?」 「このスーツは格闘戦だけのものではない、見せてやる」 両手を前に突き出すと上腕部から飛び出す銃口。弾丸が連続で発射される。アリナは両腕のガントレットで防いで接近。ワンツーから左フック、右回し蹴りを瞬時に叩き込む。上山刑事部長は地面を転げる。 「グウウウウウウ……お前俺と同じコンビネーションを……」 「わたしと同じカウンターはできませんでしたね」 「おちょくりやがって……」 「いいえ。そのスーツがカテゴリー5に対抗できるというのなら、わたしと同じ事ができるのではないかと考えただけです」 「次はこうだ!」 スーツの掌から火炎を放射する。大きく跳躍したアリナは空中から右踵を落とし、首に右足をかけたまま左腕を掴み包み込むように体を滑らせ挟み込むように右膝を顔面に打ち込む。そして一気に左腕を捻りあげて頭部を地面に叩きつけた。 「何……」 「さぁどうです?この動きがあなたにできますか」 「大した格闘技術だがこのスーツを着ている俺にダメージは無い。そんな動きが出来たところでダメージが入らなければ意味は無い!できる必要など無い!!」 「そうですか、ならば」 片手で上山刑事部長を空中に放り投げるアリナ。落ちてきた所に正拳突きを叩き込む。上山刑事部長は弾丸めいて水平に吹き飛んで電柱に叩きつけられる。電柱は折れ上山刑事部長は勢いあまって錐もみを描いて地面を転がった。 「がはっ……スーツの損傷率67%だと!?たった一撃で……」 「次の一撃は更に強度を上げます」 歩いて近づいていくアリナ。 「……だがこのスーツは単体だけの性能ではない!」 左手のダイヤルを操作すると後方のトラックが変形し人型の作業用重機に。上山刑事部長はそれに乗り込む。 「これだ!このパワードフレームローダーは米国と共同開発された軍事用スーツと連動し自分の体のように操作できる、戦車に代わる新たな戦力だ!!」 パワードフレームローダーの右手をアリナに向ける。 「くらえ!!」 パワードフレームローダーの拳が発射される。ワイヤーの着いた直径50cmの金属の拳がアリナに襲い掛かる。 「……」 ガントレットの十字ブロックで受け止めるアリナ、衝撃で1mほど下がる。金属の拳はワイヤーで巻き取られ腕に収まった。 「このロケットパンチを受け止めただと……それなら次は」 パワードフレームローダーの背部装甲が開くとミサイルが4発上空に向けて発射、空中で分解し火の玉となって降り注ぐ。 「どうだ!」 アリナの周囲が火の海と化す。 「度し難いですね、こんな兵器を対人で使うとは。ブラックヴァリーは大量殺人集団以外の何者でもありませんね」 アリナが足を振ると周囲の炎は全て消し飛んだ。 「馬鹿な……焼夷弾は身体強化で防げるようなものでは……」 「ベヤリング弾で軌道を反らし落ちた焼夷弾は地面を捲りあげ吹き飛ばしただけの事」 「うおおおおおおおおっ!!」 パワードフレームローダー突進させ両腕でラッシュを仕掛ける。 「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねー!!ブラックヴァリーの正義の為に!!」 「……」 ラッシュに合わせアリナは拳を連続で叩き込む。 「パワーは互角のようだなカテゴリー5!」 「互角?わたしが全力を出しているとでも?」 拳の打ち合いの衝撃でパワードフレームローダーの両肘が崩壊していく。 「くっ……まだだ!高速徹甲弾で砕け散れ!!」 後ろに飛ぶパワードフレームローダー。肩から砲門が伸びアリナをロックする。対するアリナは右腕のガントレットのアンカーボルトを拳にセットする。 「高速徹甲弾発射!!」 「はっ!」 高速徹甲弾を左手で受け止め受け流すように右足を軸にして回転。回転しながらアンカーボルトの拳を高速徹甲弾の後部に撃ち込むアリナ。砲弾が割れ弾芯が飛び出し、パワードフレームローダーの左脚部に命中した。 「何が起きた!?……左脚部損傷だと?」 「アンカーボルトセット」 アンカーボルトを交換、今度は両拳にセットするアリナ。 「まさか砲弾をはね返したのか?それがお前の全力か……」 「いいえ違います、アンカーボルトに頼っただけの事。全力を出す時ではありませんので」 「くそっ……」 「終わりです」 「お前は無理でもワゴン車に乗ってる仲間だけでも道連れにしてや……」 パワードフレームローダーの右腕部が千切れ飛ぶ。一気に踏み込んだアリナがアンカボルトの左ストレートで破壊した。 「なっ……」 続いて右ストレートで左腕部が吹き飛ぶ。仰向けに倒れるパワードフレームローダー。アリナは取りつき装甲を引きはがして上山刑事部長を引きずり出した。 「ひぃ……や、やめ……てくれ……」 「確保するだけですよ。まさかわたしがお前を殺すとでも?ありえませんね、わたしが殺すと決めているのはただ一人だけです」 「だ、誰なんだそれは……」 「おまえに言う必要はありませんよ。ところで……ホテルを襲撃したブラックヴァリーの近くにお前はいて能力で指示を出していましたね?それと狩った首はどうしてたのです?」 「ふ……そこまで分かっていたのか……そうだ俺はお前らの部屋の隣にいて暗殺の命令を出した。首はスポンサー……に渡した。そいつはブラックヴァリーに出資、支援する代わりに首を欲しがった。目的は知らない……ここで俺を逮捕したところでブラックヴァリーのメンバーは残っているそして増え続けるだろう止められはしない。ブラックヴァリーは作戦指揮官は居てもボスの存在は不明だ、俺は作戦指揮官にすぎない」 ひきつった顔で上山刑事部長は答える。 「スポンサーに会ったことは?」 「誰も会って無い、いつも違う代理人を介してやり取りをしていたからな。ブラックヴァリーの立て直しには時間がかかるだろうが必ず復活する。お前に対抗しうる異能者や兵器を集めてな……」 「気絶させる前にもう一つ、カテゴリー6の話を聞いたことは?」 「カテゴリー6だと?そんなものは聞いたことがないお前で5なら6はどんな奴なんだか……」 「そうですか……」 アリナは脳震盪で上山刑事部長を気絶させ戦闘スーツを剥ぎ取りワイヤーで縛り付ける。 「哿さん、フロー、制圧完了しました」 「お疲れ様……他のブラックヴァリーのメンバーは姿が見えませんね」 銃を構えワゴン車から降りる哿。 「気配は感じませんね」 フローレンスも銃を持って降りてくる。 「他のメンバーはここで解散したという事でしょう。どうしますか哿さん」 「上山刑事部長を確保して長官に報告します」 テレポートで上山刑事部長を拾いワゴン車に乗せる哿。ジェームズと通信をする。 『早いねぇ~……もう首狩り斬鬼事件の首謀者4名を確保とは。ブラックヴァリーとやらの異能者はその4名だけとは限らないけど一段落着いたね』 「長官、次はどうすれば?」 『上山刑事部長をBチームに引き渡してとりあえずは……待機だ。捕まえた4名の異能者を尋問しなければならないからね。まぁ1日はかかるだろうその間は休みだね』 「長官」 アリナが割って入る。 『なんだねアリナくん』 「ブラックヴァリーの背後にいるスポンサーが気になります。この者の捜索を」 『放っては置けないね、でもそれはアリナくんのUチームが担当するかはまだ決めてないよ』 「しかし長官」 『……アリナくん、私を信用して待ってくれないか?焦る気持ちはわかるけどね。もしカテゴリー6の手がかりとなるのなら君個人の問題だけではすまないのだから』 「……はい」 『さぁ後は本部で報告を聞こう、ジンギスカンを好きなだけ食べてくるがいい』 *** 「追加のオーダーお願いします。ラム肉5皿、スープ、野菜盛り合わせ5皿で」 アリナは20皿目のラム肉を鉄板に乗せながら言った。 「ブラックヴァリーとは結局何だったんですかね……」 哿が焼いたもやしを食べながら言った。 「ニンジャとか?いえ、ジョークではなく今時の忍者みたいなものかと思いまして。アリナはどう思う?」 フローレンスがホルモンを食べながら言った。 「ニンジャがいてもおかしくは無いと思いますね。ただ、ブラックヴァリーは壊滅させる必要があります」 「うんうん」 「忍者ですか……そうですね超能力者いるんですから居てもおかしくないですよね。そういえばBチームからつい先ほどメッセージが届いたのですけど……」 「どんなメッセージなんですか?哿さん」 アリナは届けられた皿を受け取りながら言った。 「アリナさんの今回の戦闘記録を訓練施設の子供たちに見せて良いか?ですって。アリナさん人気だから……」 「早乙女ルキナのようにわたしに挑んでくる者もいるくらいですからね」 「あの人はちょっと特殊で……他は純粋なファンじゃないですかね」 「まぁ良いですよ、施設の子供たちに見せても。そう返事しておいてください」 「はい!」 続く
Mar 21, 2019
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異能者特務機関:TMI 第6話「首狩り斬鬼4」 ハンドルを握る哿の手が震えている。助手席に座るフローレンスの心拍数が上がっていく。アリナが放つ圧に二人に緊張が走る。アリナの隣の吉岡警部補は表情を変えずに手袋をつけて小さくため息をついただけであった。 「この前も驚かされたけどいや、恐れ入ったよTMI。これは首狩り斬鬼もお手上げじゃないかな?」 「首狩り斬鬼は個人では無いとわたしは考えていますが吉岡警部補はどう考えていますか?」 アリナはベヤリング弾をまだ持っている。 「組織の可能性はあるだろうね」 「組織?」 「ああそうだ。ところでこの車に猛スピードで迫って来るトラックが見えるんだが」 高速道路に入っていくTMIのワゴン車、それを追いかけてくるトラック。 「TMIの特殊車両はロケット弾にも耐えれるのでご安心をテレパスの影響も受けない防護仕様です」 「それはすごい!高速に入ったみたいだけどトイレに行きたくなってきた……サービスエリアに寄ってくれないか?野幌のサービスエリアで止めてくれ」 吉岡警部補は腹部を押さえて訴える。 「それはできませんね。哿さん、気にせずに運転を」 「は、はい……!」 「おいおい漏らしちまうぞ……」 吉岡警部補はポケットから小さな直径1cmほどの玉を取り出した。アリナは即座に手首を掴む。 「何するんだいお嬢さん?これは下痢止めだよ」 「それは必要ありません。フロー、吉岡警部補を診断してあげてください」 「……それには及ばないな」 そう言うと吉岡警部補はテレポートする、腕をつかんだままのアリナと共に。 TMIのワゴン車の天井に現れる二人。 「さよならだお嬢さん」 ワゴン車内から爆発音が聞こえた。一瞬注意をそらされたアリナ、その隙を見逃さずに吉岡警部補はアリナの手を解く。 「ただの煙玉だよ大丈夫」 「逃がしませんよ吉岡警部補」 アリナは構える。ワゴン車の車内は煙で充満、哿は車AIに命じて換気をさせ速度を落とし路肩に移動する。 「ごほっごほっ……」 「大丈夫ですか哿さん、吸った煙は私が肺から排出させてあげます」 フローレンスは哿の胸に手を当てて肺から煙を吐き出させる。 「ア、アリナさんは?」 「いません、吉岡警部補もです」 天井で音がする。 「上!?」 「二人は車の上に!?」 吉岡警部補は両手を後ろに回すと棒手裏剣を取り出しアリナに投げつける。アリナは4本の棒手裏剣を指で挟んで受け止める。 「受け止めたか。そしてガントレットで麻痺も防いでる」 「吉岡警部補あなたが、いやあなたは首狩り斬鬼の一人ですね」 「ハハッ!俺を車に乗せた時から疑ってたんだろ?失神するほどの殺気だったよ」 「いいえ、昨日の夜から疑っていました。ホテルを襲撃してきたのは首狩り斬鬼の一人ですね」 「ふっ……結局あいつが自殺したのは無駄になってしまった。あせって襲撃命令を下した奴がいたんでな、お嬢さんにビビっちまったんだなぁきっと」 「あなたを制圧します」 「俺に気を取られてもいいのかな?」 TMIのワゴン車を追いかけてきていたトラックの荷台部分のサイドがせり上がり、中から黒覆面黒装束の男達が5人。全員がアサルトライフルを装備している。 「じゃあな」 車から飛び降りる吉岡警部補、テレポートでトラックに移り積まれていた黒い大型バイクに乗る。ヘルメットを被るとアクセルを捻って飛び出し加速してTMIのワゴン車を引き離す。 「っ……!」 トラックの黒装束はアリナに向けて一斉掃射。アリナは腕をクロスさせて弾丸の雨を受け止める。 「アリナ!」 トラックとは反対側の窓を開けて呼ぶフローレンス。アリナは窓から車内に飛び込む。 「アリナ落ちなくて良かった」 「ええ、なんとか。フロー、哿さんも無事で何よりです。吉岡警部補を追いかけましょう飛ばしてください哿さん」 「でもこの先は渋滞で……バイクには追い付けないですよアリナさん」 「それなら……」 TMIのワゴン車を追い抜いていく紅い大型のバイクを見つけるアリナ。 「哿さん、あのライダーをわたしと交代させてください」 「ええっ!?で、でも……」 「あのバイクなら追いつけそうですお願いします。運転を一時的にオートにしてください」 「分かりました……」 アリナを連れてテレポートする哿。空中でライダーを掴みテレポート、再び車内に移動する。アリナは紅いバイクに跨りアクセルを捻る。 「え?え??えええええっ!??なななななな何が!!!」 ライダーは突然の出来事にパニック状態に陥る。 「すみません……貴方のバイクをお借りします。事情は後で説明しますので近くのサービスエリアに寄りますので待機してもらえますか」 「ちょっ……何?どういう事??俺のバイクは?」 「大丈夫ですよ」 フローレンスはライダーの手を握る。徐々に落ち着きやがてゆっくりと眠りについた。哿はハンドルを握りワゴン車を走らせる。黒装束の男たちを乗せたトラックはぴったりと後ろについてきていた。 アリナが乗るのは日本国内最速の大型二輪車レッドファルコン。最高時速452kmを誇るモンスターマシン。渋滞し、徐行運転で移動している車の間を猛スピードで駆け抜ける。前方を走る吉岡警部補の黒いバイクは時折をテレポートを行い先に進む。 「(ちっ……なんで今日に限って渋滞してるんだ事故か。あのお嬢さん追ってきやがった)」 吉岡警部補は消音器のついた拳銃を確認する。後ろから猛スピードで迫って来るアリナの姿をバックミラーが捉えていた。 「(……もうすぐ渋滞を抜ける)」 渋滞を抜けアクセルを全開する。続いてアリナが渋滞を抜ける。2台のバイクはすぐに時速300㎞に到達する。 「(馬鹿な……あのお嬢さんヘルメット無しでこの速度の中、目を開けていられるのか呼吸できるのか)」 更に速度を上げる吉岡警部補、アリナは平然とアクセルを捻り追いかける。唸りを上げる2台のマシン。「(時速400㎞……これ以上の速さは制御できない、テレポートの演算もできない、このマシンも限界だ。お嬢さんには転倒してもらうか)」 悲鳴を上げるが如く限界を感じる音を放つ吉岡警部補の黒いバイクに比べ、アリナの乗るレッドファルコンは本領発揮に喜びの声を上げてるかのような音を放っている。 レッドファルコンを横着けするアリナ。手を伸ばし吉岡警部補のバイクのハンドルを掴みにかかる。 「(そんな事をすれば二人ともクラッシュだぞ!この速度でクラッシュすれば……)」 アリナは両脚を地面に着く。片手でレッドファルコンを操縦、片手で吉岡警部補のバイクのハンドルを掴み姿勢を維持。両足で減速を行う。特殊合金のブーツはアスファルトを削り破片をまき散らしていく。 「(……このまま減速して俺を捕まえる気か、それならそれで都合がいい。テレポートして着地できる速度まで落ちれば即離脱だ)」 路肩に寄せながら減速していく2台のバイク。トンネルの前で完全に停車する。 「はっ!」 テレポートする吉岡警部補、トンネルの上部の山に出現する。次の瞬間右足に激痛が走り着地を失敗、山の斜面を転げる。 「ぐっ……ベヤリング弾か!!」 「逃がしませんよ吉岡警部補」 斜面を登っていくアリナ。 「俺がテレポートする位置がなぜわかった」 「トンネルの前で停車させれば貴方は山にテレポートすると予測していました。後は反応してベヤリング弾を打ち出すだけです」 「テレポートで現れた瞬間にベヤリング弾を当てれるか普通……」 「訓練していますので」 「つくづく化物だな……」 左手で拳銃を構える吉岡警部補、アリナは爆発的なロケット弾を思わせる突進で一気に肉薄。拳銃を手刀で叩き落す。 「なっ!?速……」 吉岡警部補はテレポート、右手の義手から肉食獣を思わせる爪を伸ばす。そして貫手でアリナの心臓を狙う。対するアリナは肘と膝で義手を挟み込んで粉砕した。 「あ……あ……」 「抵抗は無駄ですよ」 アリナは吉岡警部補の顎先を指で弾いて脳震盪で気絶させる。ガントレットからワイヤーを伸ばして拘束した。 「アリナです。吉岡警部補を確保しました、哿さんそちらはどうですか?」 『流石ですアリナさん!こちらは……あまり良くない状況です。野幌サービスエリアに騒ぎを聞きつけた警察が来て黒装束集団が銃撃戦を始めました』 「そうですか、今から吉岡警部補と紅いバイクを持って野幌サービスエリアに戻ります……いえ、もう少しかかりそうです。敵が現れました」 気配を感じたアリナはゆっくりとレッドファルコンから降りてガードレールの外の林にに入る。 「首狩り斬鬼ですね」 「……ほう、完全に音を消し姿を消しているのに分かるのか」 「匂いですね」 「犬並に鼻が利くのか……だがそれがどうした?今からお前の首を切断し吉岡を回収する」 アリナの目の前に突如軽トラックが出現した。同時に感じていた匂いも消える。 「……」 「くくく……どうだ?匂いも分からなくなってきたのではないか?さぁさぁ行くぞ!俺がどこにいるか分かるまいズンバラリと首を切断してやるぞ」 アリナの首に刃物が触れる。だがそこで止まっていた。皮の一枚さえも刃物は斬っていない。ガントレットがそれ以上刃を進ませない。 「なにっ!」 「Grrrrrrrrrrrrrrr……Growl!!」 刀男の腕を掴み猛獣の咆哮をあげるアリナ。空気が震える、するとアリナの周りに二人の男が出現した。 「はっ!」 アリナは刀男を一人の男に投げつける。吹き飛ばされた二人は軽トラックに激突する。 「が……は……」 「そ、そんな……」 車体との間に挟まれた男は気絶する。投げられた刀男の肩は外れだらりと下がっている。 「透明化と認識を変える異能者ですね。違いますか?」 「な、なんだと……!?何故分かった!!」 「監視カメラの映像を見て予想をしました。吉岡警部補と他二人の異能者がいればあの映像は作れると考えました。あの場にいた首狩り斬鬼は三人です」 「たった二日で……俺たちが……」 「十分考える時間はありました。確証はありませんでしたので試してみる事にしたのです。最初はテレポーターと認識を変える異能者+指令を出す者と考えていましたが、吉岡警部補を首狩り斬鬼の一人と考えると色々納得できたのです」 「違ったらどうしてたんだ……」 「外れれば次を試すまでです。分かりやすく威嚇して挑発すれば乗ってくると考えていましたので。それで首狩り斬鬼はあとどのくらいいるのです?」 「……俺たちは『ブラックヴァリー』だ。首狩り斬鬼なんて言うんじゃねえ」 「一応覚えておきましょう。これ以上は服毒自殺で秘密を守る気でいますか?」 「いいや自殺なんてしないね。だが話す気も無い、徹底的に黙秘を貫くぜ」 「そうですか、TMIの尋問に耐えられた者はいませんので覚悟しておく事ですね」 気絶させワイヤーで縛り荷台に三人とレッドファルコンを乗せるアリナ。 「哿さん、今度こそ終わりました。人数が増えたので車で帰りたいのですがそちらはどうですか?」 『パトカーを破壊した後黒覆面らのトラックは去っていきました。アリナさんは今どの辺ですか?』 「岩見沢サービスエリアは通り過ぎました。そこからしばらく進んだ所にあるトンネルの前です」 『わかりましたではライダーさんを乗せてそちらに向かいます。黒覆面のトラックには発信機を取り付けておいたので動きは分かります』 「もしここにトラックが来たら制圧します。いいですね?」 『あ、はい……』 しばらくすると哿からトラックは岩見沢インターで降りたとの通信が入った。その数十分後TMIのワゴン車が到着する。 「わあああああん!俺のレッドファルコンちゃあああああん!!無事でよかったあ!!」 ワゴン車から飛び降りて紅いレッドファルコンにしがみつくライダー。 「とても良いバイクですね。おかげで目標を逃がすことなく確保できました」 「君がレッドファルコンちゃんを操縦したの?マジで!?何㎞くらい出したの??」 「時速400kmは超えましたよ。それでもそのバイクはとても安定してました。無傷で返せて良かったです」 「うあああああん!良かったねぇレッドファルコンちゃん!俺だと100㎞までしか出して走らせてあげれないから……本気で走れて良かったねぇ。この子は生涯最高速で走ることなく終わるバイクだって言われてるんですよ~……君良かったら名前を教えてくれない?レッドファルコンちゃんに君の名前のステッカーを張りたいんだ。特殊警察か何かなんだよね?だからダメなら諦めるけど」 「終夜アリナです。貴方は安全運転で命もバイクも大切にしてください」 「ありがとう」 ライダーはレッドファルコンに乗りゆっくりと走り去っていった。 続く
Mar 17, 2019
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終夜(よもすがら)アリナ:16歳 能力(身体強化) 哿(かなり)希世美:18歳 能力(テレポート) フローレンス・フランシス:16歳 能力(生体コントロール)異能者特務機関:TMI 第5話「首狩り斬鬼3」 黒覆面をテレポートでバスルームに運ぶ哿。すぐに長官に通信を入れる。 「長官、アリナさんに襲い掛かった人物が毒で自殺しました……」 哿はPDAのテレビ電話を起動して報告する。 『オーマイガッ!……だがこういう事も想定済みだよ哿くん』【そこは危険だすぐに部屋を出て屋上に行きたまえ】とメモを見せるジェームズ。 死体とアリナ、フローレンスを窓の外にテレポートさせる哿。そこから連続でテレポートし、屋上に到着する。哿が10メートル程の距離を刻んで移動するのは異次元移動の際の演算を簡単にする為である。その気になれば50メートルを一気に移動できる。ただし触れているものに限られる。 屋上にはコンテナが置かれていた。TMIの文字が刻印されている。 「これは……!長官いつの間に!?」 『君たちを北海道に送った日に設置させた。その中にテントが入ってる今日はそれで朝まで過ごしたまえ。TMI製の寝袋とテントは南極でも平気だよ、死体の回収は別のBチームにやってもらう』 「という事はこのコンテナはBチームの為に置いたものですか」 『そうだ、彼らは朝までにそちらに到着するよ。特殊車両を持ってね』 アリナは警戒しながら横でじっと聞いている。 「アリナ……貴女のせいじゃない。貴女でなければこの謎の男にやられていたかも」 フローレンスはそっとアリナの肩に手を置いて能力で落ち着かせる。 「フロー、あなたは素晴らしい。哿さんも。わたしは戦う事しかできない」 「そんな事ない、アリナは……」 「大丈夫ですよフロー、一日も早くこの事件を解決しましょう」 死体袋に覆面男を入れるアリナ。そしてコンテナからテントを取り出し組み立てていく。 「速いですねアリナさん」 「キャンプ設営は慣れていますから。哿さん中へどうぞ、冷えますよ。フローも中に」 「アリナさんも中に」 「いいえ、わたしは朝まで見張っています。大丈夫ですよ、食べれば回復します。ジンギスカンを楽しみにしています。お二人は休んで体調を万全に」 アリナはテントの前に立ち周囲を警戒する。夜明けまでの8時間立ち続けた。アリナはその間過去を振り返る。 *** わたしが普通の人とは違う異能者だと気が付いたのは5歳の時だった。生まれつきサイコキネシスでの身体強化を持って生まれ無意識の内に行っていた。哺乳瓶のペットボトルを握りつぶしたり歯が生えてくるとおもちゃをかみ砕いたりしていたという。それでも両親は普通の子供として育ててくれた。5歳までは。 フランスで生まれ育ったわたしには警察官の父と教師の母、妹がいた。断片的だけど庭に植えられた沢山の薔薇を覚えている。庭の芝生の上で妹や両親、時々来る日本人の母方祖父と遊んだ記憶がある。 事件の日は日曜日だったのを覚えている。父が珍しく日曜日に休みが取れたので祖父を除く家族全員でショッピングモールに出かけた。 「お姉ちゃんは何を買ってもらうの?」 妹のアリスがそういった。ふわふわしたクマのぬいぐるみをいつも抱えていた。 「わたしはキックスケーターを買ってもらうの!薔薇の様に赤いのが欲しい!」 わたしは近所の子供がキックスケーターに乗ってるのを見てどうしても乗りたくてねだったのを覚えている。 アリスはおもちゃのピアノを買ってもらいわたしは紅いキックスケーターを買ってもらった。その後ショッピングモールのレストラン街で食事をすることになった。 日本料理の店で料理を待っている最中に突如爆発が起きた。覆面をかぶった銃を持つ集団がレストランに入るや否や手榴弾を投げ込みライフル銃を乱射し始めた。 父がわたしたちを押さえて頭を下げさせたのを覚えている。 悲鳴、銃撃、怒号、爆発音。全てが聞こえなくなった後、わたしはゆっくりと体を起こした。わたしを抱きしめていた父の背中は真っ赤に染まり。横にいたアリスと母も全身を真っ赤に染めていた。何が起きたのか理解できない私の目の前に一人の男が立っていた。 「ほう、全員始末したと思ったのだが」 スーツの男が言った。手には銃が握られている。最初に乗り込んできた覆面男たちはその男の足元に倒れていた。 「あ……あ……」 「この銃撃の中を生き抜いた能力者、しかも女……だが幼すぎる10年は早い」 恐怖で体が動かなかった声が出なかった。男が去るのを見る事しかできなかった。 それからしばらくして日本の祖父の元で暮らすことになった。 *** 「アリナ」 フローレンスがテントから出てきた。 「どうしましたフロー、まだ三時間ほどしか経っていませんよ」 「アリナ交代を。少しでも体を休めて……」 「大丈夫ですよ……といっても貴女は納得しませんね。分かりました15分仮眠を取ります。気温は-10度ですから気を付けて」 「僕も見張ります。なんだか目がさえてしまいまして」 「哿さん……」 交代で一晩過ごした三人に通信が入る。 『おはよう諸君。今から送る座標のポイントに向かってくれたまえ、特殊車両と物資を持ったBチームと合流だ』 「はい長官」 テントを素早く片付けた後、哿のテレポートでホテルの屋上から路地に降りる三人。正面玄関の様子をうかがうとパトカーが見えた。 「ここで姿を見られるのは少し面倒ですね」 「どうします哿さん?」 「僕のテレポートで離れた所まで移動します」 「死体袋を入れたコンテナ、それと私とアリナの二人……負担が大きいのでは?」 「わたしがコンテナを持って走りますよ。哿さんはフローを連れてテレポートを」 「それなら僕がコンテナをもって合流地点の車に乗って二人を迎えに来ます。どこかお店で待っててください」 「それが良い気がしますね、アリナに食事をさせてあげたいですし。ここから歩いて10分ほどの所にハンバーガーショップがありますのでそこで待ってます」 フローレンスはアリナの肩に手を置く。 「……思ったより消耗してるねアリナ。気づいてない」 「食べれば回復しますよ」 「おっと……」 フローレンスは凍った水たまりで少し足を滑らせた。 「北海道は雪国ですから足元には注意ですねフローレンスさん」 「気を付けます」 「……」 アリナは足元を見て考えている。 「どうしました?アリナさん」 「アリナ?」 「……少し気になることが。後で吉岡警部補が襲われた現場に行きましょう」 「確か……タヌキ小路商店街の近くでしたね。では後で」 コンテナと共にテレポートする哿。10mずつ刻んで移動しあっという間にアリナ達の視界から消えた。 ハンバーガーショップ・マスドに入る二人。アリナは10個のチーズバーガーを注文、フローレンスはフライドポテトを一つだけ頼んだ。壁際の席に着き食べ始める。 「雨や雪の日は首狩り斬鬼は現れていない、その理由はテレポーターだと考えられるから。というのが今の捜査関係者の考えですよね」 「ええ、それがどうかしたアリナ」 「別の理由で雨、雪の日に現れないのだとしたらどうでしょう。テレポーターではないのでは?」 「どうしてそう考えたのかしら?」 フローレンスは綺麗に次々とアリナの口に運ばれていくハンバーガーの様子を嬉しそうに眺めながら言った。 「ステルス迷彩を装備、もしくは認識を歪めるテレパスの可能性もあるのではないでしょうか?」 「うーん、当然警察もそう考えたりしたのでは?」 「これはわたしの感覚での考えですが、わたしが首狩り斬鬼でテレポーターならわざわざ監視カメラの前で挑発するような事はしません。テレポーターはテレポーターであることを知られないほうが都合が良いからです」 「監視カメラの前で見せつけるのはメッセージやアピールの為では?」 「それもあるでしょう。そしてそうならば首狩り斬鬼は個人では無いと考えます」 「複数犯と?」 ミルクティーを一気に1リットル吸い込むアリナ。それを眺めるフローレンス。 「テレポーターの首狩り斬鬼と認識を歪める者それと指示を出す者三人はいるのではないかと」 「私達のチームの様に……?じゃあどうやって首狩り斬鬼を見つけるの?」 「手掛かりは吉岡警部補です。彼だけが警察関係者の中で首狩り斬鬼と対峙しています。今度はフローと哿さんとわたしの三人で会って話を聞きましょう」 「上山刑事部長は?」 「信用できません」 「でもアリナ、彼らと距離を取りすぎるのも危険なので署に顔を出さないと」 「昨晩の事でややこしい事にならないでしょうか?」 「それは哿さんと長官にお任せするという事でどうかしら」 「やはり死体を運んだのは不味かったでしょうか」 「そうとも言い切れないわ。確かにあの襲撃者は服毒自殺したけれど他にも負傷していた、署によって死の原因を歪められる可能性はあった。上山刑事部長が怪しいのならそのくらいの事をしてくるかも」 「一刻も早く首狩り斬鬼を見つける必要がありますね」 *** 「上山刑事部長が出勤していないのですか?」 哿は普段より大きな声が出た。 「ああ、急に体調不良を訴えてね緊急入院だそうだ」 署長は大きな腹をさすりながら答えた。 「……まぁなんだ、昨日は言いすぎたよこちらとしてもTMIとはいい関係を築きたい。襲撃者のホトケの情報は隠さずにTMIに提示するよ。長官にもよろしくね」 「助かります。事件の早期解決の為に全力で捜査いたします」 署長室を出る哿。廊下を進み非常階段の前でジェームズに連絡を取る。 『どうかね哿くん、署長の態度は』 「昨日とは別人のようですね……」 『色々と頑張ったんだよ、日本は支部長が居ないから本当に大変だ。早く哿くんにまかせたいのだがね』 「いえそんな僕にはまだ早いです……」 『そのへんは追々ね……』 「はい」 『特殊車両を取りに行く前に急にお願いして悪かったね。Bチームから特殊車両を受け取ったらそのままアリナくんらと合流してくれたまえ。上山刑事部長の動きはBチームに監視させるよ』 「分かりました」 『TMIを舐めてはいけない。そう思わせないとね』 「あの長官……今回の任務、Bチームをメインにした方が良かったのでは?」 『Bチームはサイコメトラー(残留思念読取能力者)にクレアボヤンサー(透視能力者)にトランサー(憑依能力者)だからね。確かに哿くんの言う通りだ』 「ならば何故僕たちUチームを?」 『期待しているんだよ。哿くん、フローレンスくん、アリナくんの成長をね。君たちはまだ全員10代だからね』 ジェームズはそう答える。 「分かりました、それではこれからアリナさんフローレンスさんと合流します。定時連絡で報告します」 『うむ』 ジェームズは通信を切った後葉巻に火をつけて大きく吸い込んだ。 *** 「また来ると思ってたよTMIのお嬢さん」 グレーのスウェット姿の吉岡警部補が出迎えた。 「首狩り斬鬼について聞かせてください」 「お願いします」 「お邪魔します」 アリナ、フローレンス、哿は玄関から上がらない。 「吉岡警部補、外に出る支度をしてください。車の中で話しましょう」 アリナがじっと目を合わせて言った。 「なにか訳があるんだな?よし、すぐに着替えてくる」 防寒着に着替えた吉岡警部補を乗せてTMIの特殊ワゴン車が走り出す。 「だれかに聞かれる可能性があったので乗ってもらいました」 アリナは後方から追ってくる車がないか確認する。 「そうか、それで何を聞きたい?」 「首狩り斬鬼の被害者は本当に何の罪も無い人たちだったのですか?」 「前科はないな……だが」 少し考えて次の言葉を口にする。 「訳アリではあった。評判は良くない、悲しむ者もほとんどいないむしろいなくなった方が清々すると言われてたくらいの者たちだ」 「どのような者だったのですか?」 「……酒に薬物を混ぜて飲ませて乱暴する者、いじめで自殺に追い込むのを楽しんでいた者、近隣住民に嫌がらせをして喜ぶ者、窃盗の罪を他人になすりつけたりした者らだ」 「そうですか、では次の質問です。なぜ首切り斬鬼と対峙できたのですか?」 「向こうからタヌキ小路通りの監視カメラを見ておけって連絡があったんだよ匿名の電話でな」 「なるほど……ところで吉岡警部補、義手の調子はどうですか?なぜ生身に近いものにしなかったのですか?」 「ん?ああ、俺は刑事だしどうせ義手にするなら首狩り斬鬼に後れを取らないような戦闘向けにカスタマイズされた義手が良いだろうと思ってね」 吉岡警部補は手袋外して金属の輝きを放つ右手を隣に座るアリナに見せつける。アリナの右手にはベヤリング弾が握られている。 「お、ベヤリング弾。いつ首狩り斬鬼が襲ってくるからわかんねえもんな」 「ええ、そうですね。ほんのわずかでも殺気を感じればわたしは迎撃します」 「そりゃ怖いこった。初めて会った時にぶち込まれた個所はまだ痛む」 「首狩り斬鬼相手ならもう少し強く打ち出しますよ。骨を粉砕するくらいまでは」 「全力で打ち出せばどのくらいの威力になるんだい?」 「さぁ、分かりません。最近の計測ですと2045m飛びました」 「それは怖い」 続く
Mar 13, 2019
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