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異能者特務機関:TMI 第24話「雷帝」 瓦礫の下敷きになっている枩島を発見したセレスティアは彼女の頭部の装甲を取り外し首からナノマシンを注入する。 「これでとりあえず死ぬことはない。枩島を近くの病院に連れて行くから病院に連絡しておいて」 『了解』 枩島を抱えて飛び上がるセレスティア。 『札幌KES研究所に向かう多数の敵勢反応を確認』 「そう……あの研究所はどのくらい持つかしら。私の住んでいるTMIの研究所と違ってセキュリティは大したことない、雷帝のお手並み拝見ね」 病院に到着したセレスティア。玄関に駆けつけた看護師に手短に状態を説明し量産型スーツを解除して枩島を担架に乗せる。 ―札幌KES研究所。 群れを成して飛ぶ戦闘スーツとドローンの様子は見てる者にまるで意思のある一つの生物かのように思わせた。 窓から侵入した戦闘スーツとドローンは次々と扉を打ち破って突き進み、一直線にサーバー室に向かう。そして雷帝フョードルのハッキングしている部屋に飛び込んだ。 「ぬうううん!」 振り向きざまに片手をかざし電撃を放つフョードル。先に飛び込んだ戦闘スーツとドローンの数体は粉々に打ち砕かれた。 「イワン、アントン!ここの守りは任せる!!研究員の女!!雷帝に代わりプログラムでの攻撃を続けろ。貴様などが電人Gの相手が務まるとは思えんが時間稼ぎくらいはできるだろう?」 「はい閣下!」イワンとアントンが同時に返事する。「や、やってみます……」体をこわばらせて研究員・長神が返事した。 「小賢しい機械共が!薙ぎ払ってくれる!!」 電気を全身に纏い、電磁力で侵入してくる戦闘スーツドとローンを引き付けて一気に突進。まとめて一塊にしたそれらを窓の外に勢いよく投げ捨てる。 「ぬん!」 電撃を撃ち込んで空中で破壊する。そして跳躍、研究所の屋上に立った。見上げたフョードルの頭上には100体を超える戦闘スーツとドローンがうなりを上げ群れで蠢いていた。 「この程度!雷帝の裁きの天雷を受けるがいい!!」 全身に電気を纏わせ空中に留まるフョードル。青白い稲妻が走る球体が体を包み込む。 「ぬうううりゃああああああああっ!」 全身からテスラコイルの放電の如く放出される稲妻。空中に浮かぶ戦闘スーツとドローンは回避する間もなく裁きの天雷を受け次々と爆発していく。 「ふはははははははっ!」 後方に控えていた残る戦闘スーツとドローンは一斉に集まり体を合わせ巨大化していく。 「個々では敵わぬと見て合体か!だがそれだけだ!!打ち砕いてくれる!!」 片手を上げるフョードル。上空の雲が急速に集まり雷雲に成長していく。 「断罪の雷槌を受けるがいい!!」 合体途中の機械に巨大な雷が落ちる。周辺のビルの窓ガラスを揺らす程の爆音が鳴り響いた。 「ぬ?」 砕け散った機械群の中に銀色に輝くひときわ目立つ人型が立っていた。目は紅く輝き、口は鋸状に上下に開き耳部には角状の物が湾曲して生えている。 「機械共の大将か!」 「ワタシはG。オマエだな電脳世界でワタシに挑んできた者は」 「ネットワークから出てきたか電人G!!跡形も残さず破壊してやるぞ!!」 「愚かな」 電撃を浴びせかけるフョードル。電撃は逸れGの周囲に拡散する。 「ほう、電磁シールドか。ならばこれはどうか?」 電磁力で戦闘アーマーの残骸を引き寄せるフョードル。指先から青白い光を放しアーク切断機の要領で戦闘アーマー三角錐にカット、そしてそれを空中に浮かべる。 「でりゃああっ!」 電気を帯びた青白い拳を三角錐の金属片に叩きつける。その瞬間ドーナツ状の衝撃波が広がり三角錐はGに向かって加速する。 「……」 軽く体を反らして躱すG。 「質量の大きな物体を電磁シールドで受けなかったのは褒めてやろう」 「アクシオン粒子を使った重力場を発生させるシールドならば完全防御も可能、だがエネルギー効率が悪い。よって金属粒子を利用した電磁シールドでの防御を考えたがお前の射出した金属片を受けきれる強度を0.3秒で形成することは不可能と考え回避した」 「3流の異能者ならばそこで判断を誤り何が起きのか理解できずに敗北する。貴様は違うようだなG!」 「ワタシは電人G。人間・五所川原振之助を超えし存在。お前たちTMIの基準に当てはめればカテゴリー5に収まらないだろう。すなわちカテゴリー6、ワタシがお前に敗北するなどありない」 「挑発か!どの道貴様はここで粉砕する!!」 金属片を体の周囲に浮かべたまま飛翔するフョードル。Gとの距離を詰める。 「レールガンだ!!」 フョードルは電撃でレールを形成。そこに金属片を浮かべGに狙いを定める。 「その金属片の大きさから燃え尽きる距離を計算してワタシとの距離を詰めたか。ならば離れればどうする」 「阿呆が!この雷帝を見くびるなよ!!裁きの天雷!!」 全身から巨大な電撃を放つ。対するGは空中で電磁シールドで防御。 「その状態では身動きできまい!!レールガンを喰らえぃ!!」 「見くびっているのはお前だ」 フョードルの下、ビルの屋上から瓦礫を突き破って機関砲が現れる。 「ちいっ!」 レールガンを下に撃ち機関砲を破壊するフョードル。そのわずかな隙にGは接近。銀色のボディを輝かせ殴りつける。 「ぬううん!」 電磁シールドを突き破るGの拳はフョードルの腕に命中。 「ワタシのパンチはTMI研究所での戦闘状態の終夜アリナに匹敵する。これは戦闘用車両の砲撃に匹敵する」 連続で拳を繰り出すG。フョードルは電撃を放ち距離を取る。初撃を受けた左腕は激痛が走り感覚が鈍っていた。 「ぬううううあああああああっ!」 体内電気を操作し身体を強化するフョードル。同時に再生力も上げる。 「なるほど……ここからは慢心は捨てよう。全力で貴様を叩き潰す!!終夜アリナと同等の膂力?そんなものこの雷帝の足元にも及ばぬことを証明してやるわぁ!!」 「愚かな」 フョードルの周囲に戦闘車両の残骸と戦闘スーツ、ドローンが浮かび上がる。 「邪魔だ!裁きの天雷……」発動する刹那、一瞬速く戦闘スーツらから緑光線が放たれる。 「これは……プラズマレイ!」 「いつまで持つかな」 四方八方からプラズマレイを放ち続ける戦闘スーツ群。緑光はプラズマ流体となりフョードルを包み込んでいく。 「こんなもの!電磁流体衝撃波で押し返してくれるっ!」 「そうすることは想定していた」 包み込んでいるプラズマ流体の波動を感知し、押し返しにかかるフョードル。プラズマ流体は四方に散っていく。 「なにっ!?」 その隙を狙い肉薄するG。電磁力で加速したプラズマ拳を放つ。 「ぬがああああああああああああああああっ!!」 咄嗟に電気操作で身体能力を強化するフョードル。胸の前で腕を十字に構え電磁加速プラズマ拳を防御する。腕は焼け衝撃波がフョードルの体を駆け巡る、そして弾丸めいて吹き飛ばされ下のビルに激突した。 「あの一瞬でガードするとは。だが今の一撃で勝負はついた。ワタシはお前のデータを持っていた。ネットワークで手に入れたデータから終夜アリナの打撃力、セレスティアのプラズマ能力、超合金のボディを組み合わせて挑んだ。こうなることは必然」 「がはっ……馬鹿な……」 「お前はカテゴリー5の中でも上位の戦闘能力を持つ異能者だ。だが一人でワタシと戦ったのは間違いだったなその慢心が命取りとなったのだ。終夜アリナやワタシの事を知り尽くしているセレスティアと組んでいればこのような事にはならなかっただろう」 「…………」 「もはや虫の息だな。両腕は損失、内臓破裂、全身30ヶ所の骨折か」 ゆっくりと下降するG、フョードルの前に降り立つ。そして掌を頭部に乗せた。 「死ぬ前にお前のデータを全て貰う。これでワタシは更なる進化を遂げるだろう」 「おの……れ……」 「電人(DigitalMan)=GoshogawaraからワタシはやがてDigitalGodへと至る。雷帝よ、お前は帝王から神の一部へと進化できるのだ……もはや聞こえてはいないか」 気絶するフョードル。Gは脳波を解析しダウンロードを続ける。 「作業完了まで残りやはり頭部を持ち去ってユニットに接続したほうが効率がいいか。いや、カテゴリー5は制御できるか不明、このまま作業を続けた方が安全」 Gは数十メートル先にある札幌KES研究所を視線を移した。 「邪魔者の残りはあそこか」 フョードルの破壊を免れた戦闘スーツとドローンは一斉に札幌KES研究所へ向かって飛んで行く。 「作業完了までの時間を稼がせてもらおうか」 札幌KES研究所内に戦闘スーツとドローンがなだれ込む。セレスティアの量産型スーツを着た長神は動揺しながら両手を前に突き出しプラズマレイで迎え撃つ。 「うあああああああっ!!」 破壊されていく戦闘スーツ。 「下がれ!」「シールドの中に入れ!」 イワンとアントンが叫ぶ。敵ドローンから対人小型ミサイルが放たれる。 対人ミサイルはイワンのサイコキネシスを利用したエネルギーシールドで避けたものの天井に命中。大きな音を立てて崩落し始める。 「不味い!」「この重量と質量は受け止めきれん!!」 「だ、脱出です!」 サーバー室から廊下に出る三人。そこには無数の戦闘スーツが待ち構えていた。 「閣下からの連絡は?」「まだだ!」 「どどどどうしましょう!囲まれています!!」 「強行突破しかない!」「外に出て閣下と合流だ!!」 「セレスティア博士は!?枩島さんは!?」 「通信が途絶えた」「残念だが……そういうことかもしれんな」 「そんな!」 『GIYYYYYYYYYYYYYYYYYYNNNNNNN!!』 戦闘スーツが一斉に叫びをあげる。その音を聞いた三人は強烈な頭痛でその場にしゃがみこんだ。 「アガガガガガ……」「頭が割れそうだ……」 「あああああああぁぁぁ」 膝をついたまま耐えるイワン、シールドが薄れていく。アントンは嘔吐して昏倒、白目を剥いている。長神は耳を手に当て伏せている。そして再びドローンからミサイルが放たれた。 「作業完了まであと60秒……」 札幌KES研究所の爆発音を聞いたGは確認するようにつぶやいた。 「……」 後方上空から接近する者に反応するG。 「電人G」 降りてきたのは戦闘スーツに身を包んだセレスティア。 「何をしに来たセレスティア」 「貴方を見かけたので」 「やりあうつもりかね?」 「まさか」 「だろうな、結果の分かりきっているそんな茶番に付き合うつもりはない」 「超高速ステルス潜水艦ポセイドン。脳波コントロール飛翔兵器ナポレオン。攻撃衛星ソール・ハンマー」 「……そうか、隠しておきたい奴が持っていた兵器を手に入れたって訳だ」 「で、どうするの?」 「言っただろう?茶番に付き合うつもりはないと。ワタシを止められるものなどいない」 「TMIを甘く見ない方がいい。それと……念爆者を名乗るあの異能者を」 「フ……ここは退くとしよう、作業も完了した事だしな」 「フョードルはまだ生きている?」 「ああ」 Gはフョードルの頭から手を放し飛び上がる。 「……」 一瞬だけセレスティアに視線を向けたGは両手両足からジェット噴射上空に飛び去った。 「雷帝もGには勝てなかった……か」 無表情のセレスティアは応急処置のナノマシンをフョードルに打ち込み、煙の上がる札幌KES研究所に向かった。 火災報知ベルが鳴り響く札幌KES研究所、戦闘スーツとドローンが建物を取り囲み砲撃を繰り返している。セレスティアの接近に気付き一斉に振り返った。 「Adele浸食は?」 『既に解析は完了しています可能です』 「そう、実行する」 『了解しました』 Gに制御を奪われていた戦闘スーツとドローンを支配下に置いて行くセレスティア。 「嫌がらせのつもりだったのかしら」 『不明。男性の恋愛感情心理に構って欲しい、気持ちを察して欲しいなどがありその場合嫌がらせといった行動を取る場合があります』 「生身の時から変わってないのねそういう所は」 『思考、行動パターンは五所川原振之助とGの相違点はそう多くありません』 「Adele貴女も似たようなものなのだけど」 『私はマスターに生み出されたアデル・ホワイトをモデルとしたAIです。故人であるアデルと面識はありませんので比べる事は不可能です』 「そう、そういう所がアデルなの。貴女はとても良いAIよ」 『光栄です』 「さぁ、長神さんたち作戦チームのメンバーを探しに行きましょう」 『了解』 続く
Sep 23, 2019
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異能者特務機関:TMI 第23話「念爆者(サイコボマー5)」 「しかしこの傷でよく助かりましたね」 フローレンスはイグネイシャスと土御門に向けて言った。 「俺は異能を利用してオートガードしたからね。実際危なかったけど……本当なら皮膚を貫通させないはずなんすよねぇ」 イグネイシャスは首と胸をさすって言った。 「小生は身代わりの型紙を用意していた。どういう原理か分からないが発動を後らされた、そのせいでこのような傷を負う羽目になった」 土御門は小さな人型紙を取り出して見せた。 「時間差が起きた……と?」 フローレンスは弾丸の軌道をジェスチャーでして見せた。 「そんな感じっすかねぇ」 「そうかもしれんな。金縛りの類ではない、その程度で呪(しゅ)をかけた型紙が遅れる事などないからな」 「もしかして空間制御……」 哿がつぶやいた。 「空間制御って……そんなもの実在が疑われるものっすよ?」 「あり得なくはないです……虹の光事件の後に現れた神を名乗る異能者がそれを使えたと長官から聞いたことがあります」 「異次元干渉からの並行世界移動もしくは自身でそれを観測しながら制御……か。希代の陰陽師でもできたかどうか」 土御門が頭を振った。 「つまりどういう事でしょう……?」 「時間停止という事になるのではないか?」 フローレンスの質問に土御門が答えた。 「時間停止……」 「時間停止とは全宇宙の動きを停止させる事になりませんか?」 アリナが言った。 「うーむ……小生にはそこまでは」土御門は腕を組んでため息をつく。 「長官曰く、テレポート系の異能で時間の流れが違う異次元の一種に干渉し行動できるといったもの……と聞いています」 哿が言った。 「よくわかりませんね……」 アリナはタブレットを眺めている。 「僕もテレポーターですが完全には理解できません。僕の場合異次元への干渉は座標演算する時にイメージとしてあるものなので……」 「わたし達のいる次元から移動してそこで行動出来るのならすり抜けも自在にできる気がしますが」 「肉体は異次元へ移動はしてないのではないでしょうか」 「時間の流れが違う異次元の影響を肉体が受けて行動すると?」 「僕の想像ですが……どのくらいの時間の長さ停止できるのか分かりませんが、仮に9秒だとしましょう。その9秒の間異次元の時間の感覚で動けるではないかと。テレポートと違い移動して消えて戻って来るのではないと考えます」 「なるほど……わたしたちの次元の法則を無視した超加速と考えれば分かります。対策はやはりテレパスによる演算妨害になりますか?」 「有効だと思いますが」 「問題は射程範囲っすね……仮に9秒止められるとしたら50mは離れていないとやられる危険性がある。当然向こうもテレパス対策は取って来るはず」 イグネイシャスはタブレットからヘルメットの画像を表示させる。 「これは過去の異能者大戦の時に念爆者が耐テレパス用に被っていたものっす。奴が念爆者組んでいるのならこのヘルメットを持っていても不思議じゃない。最悪なのは奴と念爆者を同時に相手する事……それだけは避けたいっすね」 「近づく事さえできれば……わたしが仕留めます。時間停止されても爆破されても常時強化状態で耐えて全力の一撃を叩き込みます」 アリナはガントレットの拳を握りしめて言った。 「それは最後の手段ってことにしようぜアリナちゃん。相手がまともにやりあう気が無いのなら逃げながら攻撃されてこっちの詰みっす。TMI総動員で奴らを仕留めるんすよ」 「……一理ありますね。敵がわたしと戦う気が無い場合は考えていませんでした」 「追い詰めるんすよ、チェスや将棋のようにじりじりと。逆にこっちがやられないように警戒しつつね。さて、本部に報告を上げるよ。北海道に着くころには何か指示があるはず」 *** ―数時間前。北海道札幌市内。 「フン!ネットワークからの足取りをたどり電人Gを追えだと?笑わせるな!!この雷帝にそんな小細工は必要無い!!こちらに引きずり出してやるわ!!」 ロシア支部長、雷帝フョードルは研究員長神と枩島に怒鳴りつける。 「弱小国の低能共は下らぬことを口にせず黙って見ておけ!!いいか、貴様らは人数合わせにすぎぬ。戦闘が始まっても我らは貴様らを守ることなどせん自分の身は自分で守るのだな!!」 「博士~……」 「こわい!博士……」 長神と枩島はセレスティアに振り替える。 「雷帝殿のお手並み拝見といきましょう。長神さん枩島さんは私のスーツを装着していればそうそう死ぬことはありませんよ」 「フン!では始めるぞ!!」 「はい閣下!」フョードルの従者イワンとアントンが同時に声を上げた。 イワンはドーム状のエネルギーシールドを展開、アントンは疲労を軽減させる光で二人を包み込む。 「電脳戦においてもこの雷帝は無敵だという事を分からせてやるぞ電子生命体!」 端末に手を置き異能を発動させるフョードル。意識の半分をネットワークに走らせて電人Gの痕跡を追う。 「ぬうううううううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおお!!」 フョードルの腕から電光が迸り周囲を照らす。セレスティア、長神、枩島はアーマーを装着する。 「攻勢プログラムで迎え撃つか……全て粉砕してくれる!!」 電脳世界を進むフョードル。電人Gの放った攻勢プログラムを破壊していく。 「これは……日本近海に潜航していた正体不明の潜水艦がハッキングされミサイルが発射された。ここに向かって飛んでくるぞ!」 「私が何とかしましょう」 「女、弱異能者にできるのか?」 「ええ、異能の強さではなくこの戦闘スーツの力で」 飛び上がるセレスティア。異能と連動するスーツのリアクター。全身から緑光を発し加速する。 「Adeleミサイルはどこに?」 AIに話しかけるセレスティア。 『南西に確認。到達まで約46秒です』 「ちょうどいいわ、新型の迎撃ミサイルのテストを行いましょう」 『了解、ターゲットロック』 「発射」 肩から超小型ミサイルが発射される。 『ターゲット軌道を変更。迎撃ミサイル再追尾を開始』 急激に速度と軌道を変化させるミサイル。セレスティアの放った迎撃ミサイルはAdeleの指示でミサイルを追う。 軌道を変えるミサイル、その変化に合わせ迎撃ミサイルはAdeleの指示を受けずとも自分で判断して追いかける。 『ターゲットに命中。全対象の破壊に成功』 「ふふ……Adele迎撃ミサイルの実戦データを保存。BSサーバーを更新」 『了解。ユニットの30%が興奮状態』 「そのままでいいわ。そのほうがいい」 『了解。経過観察を続けます……フョードル・ヴァシリエヴィチから入電』 「繋いで」 『雷帝だ!ミサイル撃墜は成功か?失敗でも構わんぞ、ミサイルが降り注ごうが雷帝が撃ち落としてくれる』 「成功です、これより戻ります」 『フン!精々邪魔にならないようにしてろ』 フョードルは更にネットワークを進む。 「奴め、コピーをばら撒いているのか……これは」 研究室の外で大きな爆発音が聞こえた。 「テレビ塔の方ですね……」 「近くを飛んでいる偵察ドローンの映像を出します」 長神と枩島が言った。 「あれは!」 「そんな!軍用パワーローダーが暴れています!!死傷者が出ている模様!!」 「こちらに向かってきています」 連続で爆発音が聞こえてくる。 「また!?」 「戦闘スーツにドローン……戦闘車両が!」 「一体だれが?」 「騒ぐな女ども!!それらは電人Gの操る兵器だ!!」 「こ、こんな数対処しきれません……」 「泣き言は聞かん!時間稼ぎ程度の事はやれ、その間にこの雷帝が電人Gを引きずり出してくれる!!」 「博士……どうしましょう?」 セレスティアを見る長神と枩島。 「TMI本部に応援要請を。私は出て応戦します、時間稼ぎ程度はできるはずです。あなたたちのスーツにもプラズマレイが装備してありますので身を守る事は出来るでしょう」 「私もお供します、博士一人に行かせるわけには!」 枩島がスーツのヘルメットを装着する。 「では一緒に時間稼ぎに行きましょう」 慣れない枩島に合わせて二人は低空飛行で市街に向かう。 「ああ……」 車は炎上、逃げ惑う人々、破壊されていく建物。動かなくなった人の群れが二人の目に飛び込んで来た。 「これ以上被害を広げないように私たちに敵を引きつけますよ」 セレスティアの両手からプラズマレイが発射され電人Gの戦闘スーツを破壊する。それを合図にドローン、戦闘車両、戦闘スーツらは一斉に二人の方を向いた。 「ききき来ます!うあああああっ!!」 プラズマレイを連射する枩島、ドローンを撃ち落とし戦闘スーツにダメージ与える。 「無駄撃ちはしない方がいいですよ枩島さん、貴女は逃げ回りながら攻撃してくる敵だけを狙ってください」 「セレスティアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」 戦闘スーツが同時に叫ぶ。 「ふふ……」 飛び掛かって来る戦闘スーツ達、セレスティアはプラズマレイで迎撃していく。 『マスター、敵戦闘スーツの破壊に必要な出力は20%以上、出力の増加もしくは異能力の更なる使用を推奨します。10%での使用を続けますか?』 「ええ、10%でいいわAdele」 『了解』 セレスティアの10%プラズマレイを受けた戦闘スーツは数発の攻撃を耐えている。 「ああ……博士が……」 枩島の目にはセレスティアが大勢のドローンと戦闘スーツに追われ苦戦しているように見えている。 増え続ける戦闘スーツ、ドローンはやがてセレスティアと枩島だけを追うのを止め研究室に向かって飛んで行く。 「ああああ……やっぱり無理だったんだ……役に立てなかった……」 「そんな事はありませんよ枩島さん、戦闘員でもない私達二人でこれだけ食い止めているのですから。敵はまだまだ居ます頑張りましょう」 「あ、あ、はい!」 『敵戦闘スーツ群の中心のパワーローダーから高エネルギー反応』 「何を見せてくれるのかしら」 戦闘スーツ、ドローンが高エネルギーのパワーローダー中心に集まっていく。パーツを変形させ巨大な人型を作っていく。 「か、怪物です!博士!機械の怪物ですよ!!」 「セレスティアアアAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!」 体長20m程の機械巨人が咆哮を上げる。 「ふふ……そう来ますか。Adele出力を50%に上昇」 『了解』 「GAHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!」 車を投げつける機械巨人、セレスティアは空中回避してプラズマレイを撃ち込む。機械巨人の右手部が吹き飛んで散らばった。しかし機械巨人の右手部に戦闘スーツ、ドローンが集まり元の形に再構築される。 『マスター、コアとなる機体の破壊を推奨します。必要な出力は80%』 「出力は上げない。破壊にはソール・ハンマーを使うわ」 『了解、ソール・ハンマーに接続。発射まで10秒……座標をセット』 機械巨人は口を思わせる部分大きく広げ内部にエネルギーの充填を開始。 『敵から急上昇の熱源反応。ソール・ハンマーを中断しますか?』 「いいえ、発射可能になり次第撃って」 『了解。ソール・ハンマー発射』 上空の雲をかき消し機械巨人に光の柱が撃ち込まれる。太陽エネルギーを利用した衛星の攻撃は半径50mを焼き尽くす。機械巨人の体の表面は融解し重なった戦闘スーツ、ドローンを貫き内部のコアとなっているパワーローダーを破壊。それと同時に爆発四散した。 「!?」 「博士ー!」 爆発に巻き込まれるセレスティアと枩島。吹き飛ばされ倒壊する周囲のビルに激突。 『機体左肩部を損傷、マスターの左肩部に軽度の火傷と裂傷を確認。鎮痛剤を投与。ナノマシンで機体と身体治療を開始します』 「……この爆発は何?Adele」 『敵爆発の原因を予測……爆炎の様子からプラズマコアの崩壊によるものと思われます』 「そう、プラズマコア搭載型……試作機がまだあったのね。ところで枩島はどうなった?」 『検索……量産型スーツから枩島大弼の生命反応を確認。量産型にはナノマシンは搭載されていない為現段階での治療は不可能です』 「回収に向かうわ」 『了解。座標を表示します』 セレスティアは爆発で傾いたテレビ塔を一瞥した後、枩島の座標に向かって飛んだ。 続く
Sep 15, 2019
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異能者特務機関:TMI 第22話「念爆者(サイコボマー4)」 イグネイシャスはこれまで何度もこのような場面に遭遇した事があった。武器を持った相手との一瞬即発の状態。溜めを行わずに炎を放つ訓練を続けた結果ついにノーモーションでの炎弾を撃てるようになった。銃のようにかさばらず重量も無く、装填の手間も無く、狙って構えて撃つといった3動作も必要ない。ノーモーションを身につけてからこの状態で後れを取った事は無かった。 「終わりだ」 少年のその言葉の直後、床に倒れるイグネイシャス。喉に1発、心臓に1発弾丸を撃ち込まれていた。炎弾を発射することも無く、オートガードを発動することも無く一方的に撃たれて倒れた。 「(馬鹿な……テレポート系の能力者……か?)」 薄れゆく意識の中でイグネイシャスは考える。 「(不意打ちならまだしも……正面で異能を使われるのを見逃すなんて……テレポーターでも異能発動の機はある……0.1秒あれば火の玉を発射できる……が)」 倒れているイグネイシャスを踏みつける少年、手負いの土御門は顔をしかめてその様子を見ている。 「ハッハッハー!俺様は最強なんだよ!さて……もう一人の術師のお前も同じ殺し方をすると宣言するぜ!」 「ちっ……」 懐に手を入れ持ちの紙の人型を取り出そうとするがその刹那、弾丸が心臓と喉に突き刺さった。 「な……に……」 リボルバーの発射音だけが聞こえた。 「終わりだ」 土御門が崩れ落ちるのを見た少年は携帯電話を取り出す。 「ジイさん、五月蠅いのを始末したぜ。他の奴らはどうする?………そうかい、じゃあ戻る」 「ま……て……」 傷を焼き、弾丸を取り出したイグネイシャスが立ち上がる。全身が炎に包まれている。 「ああん?まだくたばってなかったか。ち、これだから異能者はよ……頭に撃ち込んで脳みそぶちまけてえ所だがそうもいかなくてな!」 「……」 炎の塊となったイグネイシャス、炎を広げて火災検知センサーに触れる。即座にスプリンクラーは反応、火災ベルが鳴り響く。 「クソが!面倒な事しやがって!!」 「(これなら……テレポート系の能力ならこの降り注ぐ水の中で演算は困難……)」 炎を投げつけて後方の2F非常扉を吹き飛ばす。 「土御門の兄さん、今のうちにそこから逃げてくれ!」 「……よ、よし呪(しゅ)!」 傷口を紙で押さえていた土御門、新たな紙を取り出すと巨大な虎に変化する。虎の背にしがみつき非常扉から1Fに飛び降りる。 「一人逃がしたか……まぁいいか、さてさて……残った異能炎人間に弾丸は通じるかな?」 「(今コイツと戦うのは危険だ……思ったより傷のダメージもデカい)」 スプリンクラーの水がイグネイシャスに触れ蒸気となり辺りを覆っていく。イグネイシャスは蒸気の中でゆっくりと下がりながら炎の格子を作り罠を仕掛ける。 「(水や蒸気や炎はテレポーターにとってやりにくいもののはずだ。迂闊に飛び込めば再テレポートできずに溺れたり、火傷を負う……)」 「クックックー!やってくれるじゃねえか!!ただの雑魚じゃあねえようだな?いいぜ今回は逃がしてやる!!コイツは土産だ取っときな!!」 声と同時にリボルバーの弾丸が飛んでくる。イグネイシャスのオートガードが発動し弾丸は炎で逸れ壁に突き刺さった。 「(今度は普通に撃ってきた……能力に範囲の制限があるのか?)」 非常扉から外に飛び出るイグネイシャス、宙返り飛行の後ゆっくりと着地する。すぐそばに傷を負った土御門、それを見て駆けつけるフローレンスと哿の姿が見えた。 「イグネイシャスさん土御門さん!その怪我……!」 「なんとか作戦は成功っすよ……危ない所だったがね……土御門の兄さんの治療を先に頼む、それと俺の着るものを持ってきてくれると嬉しいっすね。あとは通信機がダメになった、ナターシャちゃんに連絡して欲しい」 「アリナは!?」 「先に戻ってると思ってたけど?いねーんですか?」 「ここに居ますよ」 毛布を持ったアリナが現れた。 「アリナ良かった無事で……」 「ブラックヴァリーの一人でも捕まえてきたかったのですが逃げられてしまいました」 イグネイシャスに毛布を渡すアリナ。そこでようやく炎姿から元に戻る。 「ぐうう……能力発動してないと傷が辛えっすわ……」 *** 院長室でカルテを眺めている男。見た目は30代前半だが実年齢は70を超えている。 「否認の術が解かれたか……まぁいい。今更TMIごときに見つかろうと些細な事」 「TMIの連中がウジャウジャ押しかけてくるか?全員ぶっ殺してやるがな!」 二丁リボルバーの少年が言った。 「計画は最終段階に入った、もはやこの病院にも用はない」 「どこに行くんだ?」 「空だ」 「空?」 「『アイスクラーピウス』が完成した」 「そいつはめでたい」 「後は『プラチナキー』を発動できれば世界は変わる」 「そうすれば退屈せずにすむんだよな?」 「ああ、もちろんだとも。不動了痲(ふどうりょうま)、君の様に能力の高い者は特にな」 「俺は最強だが世界を変える力は持ってねぇ。幻赫さん、俺がアンタに付いてるのはそういう敵わねぇ所があるからだ」 「君とは良き友人でありたいね」 杉田幻赫は半笑いでそう言った。 「あんたに否認の術をかけていた何とかって奴はどうした?」 「儂の孫の一人、【道摩法師】神名Leandra咲夜(かみなれあんどらさくや)か」 「あーそいつそいつ!自慢の術が破られてどういうツラしてるか拝みたかったんだがよ」 「今は愛知の地で重要な任務に就いておる。終わり次第『アイスクラーピウス』で合流する予定だ」 「アイスクラーピウスってのは巨大な船なんだろ?発見されずに飛ばすのは術を使ってやるのか?」 「そうだ、対地対空対異能兵器光化学迷彩も搭載している。空飛ぶ医療施設であり要塞だ」 「んなもん良く知られずに作れたな?」 「この国のおさえるべき人間を全ておさえてあるのでな」 「ハ……流石だな。俺にはできねぇわ」 「儂はすぐに出るが君はどうするかね?」 「地上でアンタの指示を待ちながら適当に邪魔者をぶっ殺しておくさ。それにブラックヴァリーは一枚岩じゃないからな目を光らせておく」 「たのんだよ不動了痲君」 部屋を出る杉田幻赫。 入れ替わりに白衣の長身男、アリナに襲い掛かった医者の一人が入って来る。 「ああん?なんだ百地か……」 「TMIの異能者を逃がした……アレは札幌のブラックヴァリーを追い詰めた終夜アリナだった」 百地と呼ばれた男は顔をしかめて言った。 「逃がした、じゃねえだろう?向こうが退いてくれたんだろうが」 不動了痲はリボルバーを弄びながら言い放った。 「……」 「軍事用パワーローダーを難なく破壊できる異能者相手だぞ?まだまだ舐めてんだよお前らはあの終夜アリナをなぁ!」 「そんなつもりは無かった、ただ……」 「予想以上だったとか言うんじゃねえよな?奴の資料を見なかったのか?あれは強化していく異能者だ。札幌での戦闘、施設内での化物共との戦闘でアイツは更に強くなっていってるんだ。念爆者・杉田幻赫を斃す為にどこまでも強さを求め続けているんだぞ?なまっちょろい殺りかたは通用しねぇんだよ!」 「分かってる……突如この病院に現れるなど準備が……」 「もういい、お前たちには無理だ、俺様が終夜アリナを始末してやる。無駄に仕掛けるんじゃねえぞ分かったな?」 「ああ……」 「こっちにはTMIから連れてきた連中という切り札があるんだ。奴らをうまく使えば近づく事すらできねぇTMIの本部をぶっ潰すことも不可能じゃあ無い」 「ああ、そうだな」 「しっかりしろよ百地よぉ……東京周辺のブラックヴァリーのまとめ役はお前だろうが」 「杉田幻赫殿の存在がTMIに知られた今、我らのやることは……」 百地は頭をかいて顔をしかめる。 「わからねえのか?備えるんだよ!全国のブラックヴァリーにも通達しろ!!備えながら餌を撒くんだ、TMIの奴らが飛びつきそうな餌をな!!」 「具体的には……?」 「有名な奴らの首を刎ねていけ。大物政治家や資産家、芸能人……あとはTMIの関連施設の襲撃だ」 「分からない……無差別にそんなことをする必要がどうしてある?」 「無差別じゃねえよ、叩けば埃の出そうな連中を選んで殺れ。天誅こそがブラックヴァリーの望む活動だろう?」 「しかしそれでは世間に広く暗殺が知られてしまう」 「いいんだよそれで!世間が騒げば騒ぐほどな!!他の事に関心を抱かなくなる。それに大物の首は幻赫の爺さんは高く買い取ってくれる。稼げるときに稼いでおくんだ!……だが一つだけ注意だ、京都での活動はやめておけ。あそこは日本で一番めんどくせぇ場所になってる」 「そ、そうか分かった……しかし世間が騒げば貴方の仕事もやりづらいのでは?」 「関係ねぇよ、俺様の能力は生放送中でも気付かれずに目の前の首相をぶっ殺せる程度の事はできるモノだからよ。で、餌をばら撒けば必ず終夜アリナは現れる」 「大丈夫だろうか?終夜アリナ以上のTMI異能者が現れたりしたら……」 「心配すんな!俺様は最強無敵だ!!」 *** 自らが操縦するものを自在に操れる異能者のナターシャ。彼女はヘリコプターを操りアリナらを回収し北海道に向かっていた。 「土御門さんも連れて行くのですか?」 哿が問う。 「ええ、フローレンスさんの能力で土御門氏、イグネイシャスの傷は癒えてます。体力さえ回復すれば問題ありません。本部からも北海道の電人Gの鎮圧に向かってます」 土御門とイグネイシャスはフローレンスの治療を受け安静にしている。 「TVでも大騒ぎになっていますね……『所属不明のテロリストによる犯行か?』って」 フローレンスが言った。 「何が目的なのでしょう?」 「分かりませんね……電人Gの目的はバクテリアの研究だと言われていましたから」 「電人Gの対策チームが北海道に集まったのを見計らったかのように襲撃してきたと聞いています」 「TMIの動きが読まれている?」 「電人Gが襲撃に使用した兵器がブラックヴァリーの物ならばブラックヴァリーにもTMIの動きを知られている可能性はありますね」 「動きを知られたかどうか分かりませんが電人Gの所為でTMIは6名の死傷者を出してしまいました。フローレンスさんの力が必要です」 ナターシャは通信を聞いた時に取ったメモを渡して言った。 「ええ、もちろん全力で治療させてもらいます。残念ながら死亡されてしまったイワンさん、アントンさん、長神さんは戻ってきませんが……」 「ロシア支部長フョードルさんは意識不明の重体、セレスティア博士と研究員の枩島さんは全治1か月程度の傷を負っています」 「TMI最強のエレクトロキネシスの雷帝フョードルさんが……何があったのでしょう。私もイグネイシャスも雷帝の事は良く知っています。テロ組織や反社会的組織の軍を相手にかすり傷一つ負わず圧倒的でした。それが……」 「電人Gとは相性悪くないはずですよね」 「負ける要素など無かったはずです。最強エレクトロキネシス雷帝に電人Gの思い人であるセレスティア博士、サポートに優れた異能者イワンさんにアントンさん2名に研究者長神さんに枩島さんの2名。万全の体勢だったはずです」 「ブラックヴァリーが相手なら何が起こっても不思議じゃないと考えないといけないかもな……」 イグネイシャスが体を起こして言った。 「あの二丁拳銃の男……得体のしれない力を持っていた。テレポートのようで少し違うものだった。テレポーターの一種だと仮定すればテレパスなら対抗できる。演算を妨害すればテレポートは発動できない。昔起こった異能者大戦の時、長官はその方法で恐るべきテレポーターに対抗したと言っていたっすね」 イグネイシャスはタブレットから資料をダウンロードして見せる。 「これっす。置換型テレポーター・カテゴリー5のバージル。こいつは触れた物を任意の座標と入れ替える異能者だ。例えば石ころを脳と入れ替えて簡単に人を殺害できる凶悪な奴。射程範囲も半径25メートルと長く狙撃も弾丸と空気のオート置換で無効だったって話です」 「この資料は見たことがあります」哿が言った。 「流石はカテゴリー4最優のテレポーター哿希世美くんっすね!」 大きく頷くイグネイシャス。 「僕は移動できるものは自分だったり物だったりしますが異能発動時に移動可能かどうか瞬間的に判断します。僕の場合押しのけられるものだとそこに移動することが出来ます。硬いコンクリートの中は無理ですが、水の中には行けるといった感じです。もしその判断を誤ってしまうと自分の体を潰してしまったり移動先のものを破壊してしまったりといった事になるので本能的にブレーキがかかります」 「例えば紙切れを持ってテレポートさせて鉄骨を切断とかはできたりするんすか?」 「僕は無理ですね。紙の方が弱いので指定した移動方向から破れるか触れた所でストップします……粘土の塊に釘を刺すといった事可能です……というかイグネイシャスさんそのくらいのことは知っておられるのでは?」 「まぁそうっすね、一応作戦前にメンバーの異能は調べてるっすから……これは皆と情報共有して確認の為のものです。じゃあ次の質問、土砂降りの雨の中、炎の壁を抜けて移動することは可能っすかね?」 「ほんの少し演算に時間はかかりますが可能です。僕の場合ですが……移動先は目で見ているわけではないので……」 「うんうん……哿くんにはできる。二丁拳銃の男は恐らくできなかった。だから離れた所から撃ってきたんだ」 「物質を通り抜け出来ないタイプのテレポーターですかね?」フローレンスが言った。 「その可能性はあるね。弾丸も直接体内に飛ばしたわけじゃない撃ったところが分からなかった、そんな感じだ」 「連続使用がどのくらいの時間で可能か気になります」アリナが言った。 「そこもかなり大事だ……あの状況から考えると、一呼吸は置かないといけねーんじゃないかと思うんすよ。俺を撃った後すぐに土御門の兄さんを撃たなかった」 「付け入る隙はありそうですね」 「だねぇ、でもそれは本人も分かってるだろーし舐めてなきゃ何か対策してるでしょう」 続く
Sep 13, 2019
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