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ぼくのキャノン池上永一文春文庫☆☆☆☆☆◎ 実はタイトルを一見してカメラの話だと思った間抜けは私……。実際は「カノン砲」のこと。沖縄の村を見守る60年前のカノン砲とその村の秘密だ。 主人公は10歳の雄太。彼の祖母マカトはこの旧帝国陸軍が設置した「キャノン様」を祀るノロでもある。そして雄太の住む村はマカトとプロの泥棒チヨの二人のおばぁと無口で隻腕の樹王の三人、とくにマカトおばぁが天才的(?)ともいえる政治手腕で独裁体制を敷き、しかもチヨおばぁの手腕のせいか、何故か非常に豊かな村だ。しかし、この村には実は秘密があった。。。その秘密を狙って自称アメリカの地質学者だの開発業者だのが押し寄せてくるのだ。 911のテロに世界を揺るがす金貨、第二次大戦の記憶を巧みに織り交ぜて、悲惨な戦争の記憶にも目をそむけることなく、それを「ファンタジー」にして未来へと繋ぐ物語になっている。戦闘機、輸送機、キャノン砲の描写が非常に詳細。よく考えれば、登場人物の設定がカリカチュアライズされているのだが、設定や舞台装置はもちろん、テーマ自体が非常にしっかりしているので、安っぽい小説にはなっていない。寧ろそうした性格設定のお陰でとっつきやすくなっているような気がする。そして最後の方になって、村の秘密が語られるところは出先で読んでいたにもかかわらず涙腺が緩くなっている私には泣けてきた。 この著者もファンタジーノベル大賞を受賞した人だが、ファンタジーノベル大賞ってやっぱりレベル高いなぁ。
November 30, 2010
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音迷宮石神茉莉講談社 四六上製☆☆☆☆☆ 短編集。表題作はシリーズものでノベルスになっていて、既刊が2冊あるようだ。なかなか凝ったブックデザインでもある。「音」迷宮となっている通り、「音」が主題になっている作品も幾つかあるが、それは「音」であって「音楽」とは言いがたい。でもそれも面白いところだった。子供やその周辺の大人が主な登場人物になっていて、かなり不気味なストーリー。子供独特の観察力の鋭さと知識の浅さが一層ストーリーに不気味さを加味している。また、登場人物が何かに遭遇した時、読者が予想する反応を示さず、それが一層怖さを強調しているところもある。ブックデザインが凝っているというのは頁下にノンブルがあり、左ページにはその短編のタイトルがずっと書いてあるのだが、最終頁だけ、その短編のテーマになっている化け物の名前が書いてあり、まるで、心霊写真を見つけたような不気味な演出効果になっているのだ。これだけでかなり作品の雰囲気を盛り上げている。私が特に面白いと感じたのは、「鳥の女」「Rusty Nail」「海聲」の三篇。このうち二篇は自分の男に別の女がいる女がその男や女に復讐する話だから、我ながら性格が悪いかも。また、「鳥の女」はトルコが出てくるが、他の作品も異国情緒豊かだ。これも一種の「異界」という怖い話し系では欠かせない舞台装置なんだろう。 面白かったので、この本よりはもしかしたらライトな読み心地かもしれないが、ノベルスのシリーズも読んでみようかな。
November 28, 2010
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ニライカナイの語り部鯨統一郎中央公論社 C*Novels 新書判並製☆☆☆☆ タイトルの通り、沖縄を舞台にしたミステリ。でも他の民俗学や歴史の解釈を盛り込んだミステリよりは旅情要素の方が強いと思う。でも沖縄独特の雰囲気はあんまり濃くないと思う。 ニライカナイランドという(架空の)テーマパーク建設に関連してと思われる殺人事件が起こり、処女作を書いてからスランプというミステリ作家六波羅一輝がその謎に挑む。確かこれ、テレビのドラマにもなっていた気がする。この六波羅一輝の設定が若い女性の裸恐怖症。若い女性の裸やビキニ姿を見ると、心拍数が上がって失神してしまうという笑える設定。作中、おばぁの全裸も目撃するが、その時は少々ドキドキしただけで終わっている。 もう少し沖縄の民俗がしつこく書いてあると嬉しかったかな。確かにこの六波羅一輝の持病(?)といい、テレビドラマにしたら面白そうだ。すぐ読めてしまうので、遠野物語をネタにした前作があるようなので、気が向いたら読んでみよう。
November 28, 2010
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岸辺成雄音楽之友社 A5上製☆☆☆☆ 昭和59年発行。全ページ数80ページの本で、正倉院の楽器のコンパクトな紹介の本。ちょっと残念なのは昔の本のせいか、モノクロページが多いこと。残欠なんかでも惜しみなくカラーを使って欲しかったかも。 ちょっと前にこの著者の「古代シルクロード」の音楽を読んで、もっと正倉院の楽器について知りたくなり、同じ著者だしと思って借りてきた。やっぱり昭和23年~27年の正倉院の楽器の調査を実際に行った人の一人であり、唐代の音楽史の専門家でもあるので、真面目に正倉院の楽器を知りたい時にはいい本だと思う。私も正倉院には残欠も含め、75点もの楽器が収蔵されているとは思わなかった。私も四弦琵琶と尺八、そして今年念願だった螺鈿紫檀五弦琵琶を見てきたけど、今度は金銀平文琴や七絃楽器とだけなっている楽器、また弓に楽器や踊り、歌の様子が描かれている墨絵弾弓も実物を見てみたいな。 また、正倉院にはないのだが、奈良時代の音楽に使われた楽器として莫目(まくも)という楽器があるそうだ。が、管楽器と考えられるだけで、正体がわからないそうだ。こういう楽器も興味あるなぁ。あ、でもこの本が書かれたときよりもう20年以上経ってるから、学問的に結果が出てるかもしれない。 奈良時代が好きで、楽器・古楽器・民族楽器なんかが好きだと、やっぱりこの手の本は難しいながらも読んでいて非常に楽しい。他にも探してみよう。というか、いつか正倉院の楽器の豪華な本を買って手元で眺めたいな。
November 27, 2010
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収穫祭(上)収穫祭(下)西澤保彦幻冬社 四六上製☆☆☆☆☆◎ 上のアフィリエイトリンクは文庫だが、この文庫が図書館で待機なしで借りられなかったので、単行本で読んだ。文庫で上下巻になっているだけあって、単行本も本文2段組で600ページ余りある。一週間くらいかかるかと思っていたら、3日で読み終わった。~ネタバレが結構ありますので、その部分の文字色は背景色と同色になっています。~~ 全体は1982年8月17日、1991年10月、1995年10月~12月、2007年8月17日、1976年5月の5部構成だが、ページ数が割かれているのは1982年、1991年、1995年のところ。最後の二つは2つあわせて30ページそこそこ。 とにかく、第一部の1982年の本文の緊迫感が半端ない。台風通過中の猛嵐の中、3人の中学三年生がほんの十数人しか住んでいない集落の中で、自分達以外殆どの人間が鎌で喉を掻き切られて死んでいるのを発見していくのだ。この事件が発端になり、その後もこのような事件が起こり始める。 事件が解決したと思うと、次の凄惨な事件に繋がっていく。中心になっているのは、最初に惨劇を体験した3人(主に絡むのは2人)なのだが、彼らもどこか病んでいて、それに男女の秘め事が濃密に絡んでいくのだ。凄惨な連続殺人に淫楽を絡めるものだから、キャッチーさは抜群。ただ、もう少し一番最初の事件の展開手順とそこに至る心理描写、そして主人公の心理が微に入り細に入りだと説得力があったかも。途中、謎の女性達(?)が出てくるのだが、彼ら誰?という気がしないでもなかった。色々と詰めが甘いような気がしないでもないが、そうでないと、冗漫になるかな?しかし、伏線の張り方や小説の展開の仕方はとても効果的でハラハラしながら読めた。特に、最後の一文が良かった。それまで小説のタイトルがイマイチピンとこなかったのだ。 久しぶりに派手な展開のミステリが読めてかなり(内容が血生臭いのでアレだが…)楽しめた。結構こういう現実にあったら海外にも報道されるくらいセンセーショナルという設定の事件のミステリはあるようで少ないような気がする。また、残虐な事件というだけでなく、過疎化が深刻で廃村間近の集落やその近くの村、県庁所在地の市という架空の土地が出てくるのだが、この3つの土地の移り変わりの描写も読んでいていい演出効果を出していた。また、長期間を描いた小説だけに、あ、この人また出てきた、というちょい出しキャラもいて楽しかった。初めて読んだ著者なので、既刊も読んでみよう。それに、主人公の元少年ブキとカンチのその後も気になるし、意味ありげな死亡への言及もあったし、続編が出たら楽しいのになぁ。
November 25, 2010
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カンナ(飛鳥の光臨)高田崇史講談社ノベルス☆☆☆☆☆ QEDでファンの著者だが、その別シリーズ。神社の息子鴨志田甲斐の実家が秘蔵していた古文書が盗まれ、近所に住む兄代わりのような諒司が失踪するという事件が発生。彼は東大生(休学中)で博識な巫女の中村貴湖と愛犬で忍者犬の訓練を受けているというミニチュアブルテリアのほうろく(雄4才)と調査にあたることになる。 この盗まれた古文書というのが、この著者お得意の歴史解釈の中心。まだ作中ではっきりと内容が出てきていないが、読者や登場人物にはもしかしてそういう内容か、と推定できるように書かれている。とはいえ、古文書を巡る内容の説明が結構混み入っているので、お子様向きではないかもしれないが、展開や登場人物の設定はどちらかというとライトノベルのよう。まあ、個人的には許容範囲だけど。というか犬好きなので、ほうろくの今後の活躍が楽しみなのだ。今回は飛鳥という名の通り蘇我氏と聖徳太子が主なテーマだが、結構トンデモな内容だった。面白かったけど。これが多分シリーズの底流にあるのだろうが、次の巻からどう展開して言っているのか楽しみだ。QEDもあと1・2作未読作品があるのだが、そちらとこのカンナのシリーズと両方読もうと思っている。
November 23, 2010
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失踪調査藤田宜永 光文社文庫☆☆☆☆☆ ミステリというより、ハードボイルドと書いた方がしっくりする。1994年初版。巻末解説宮部みゆき。 恵比寿のうらぶれたビル(2作目からは自宅マンションが事務所兼になる)を事務所としている竹花の元に、失踪人の調査を依頼しにくるワケアリげな男女が訪れるところからストーリーが始まる。この現代日本で警察に捜索願を出しにくい人々ばかりだ。一作目は旧日本統治時代の恩師を探して欲しいとやってくる現代日本人よりも流暢な日本語を操り、日本名を名乗る台湾人夫婦。二作目は拿捕された時に弁護してやったのに、その弁護料が未払いだというロシア(まだソ連だったっけ?)の日露ハーフの弁護士、三作目は愛娘が失踪した関西のヤクザの組長。特に、このヤクザの組長の親ばかっぷりはいい。コカイン中毒で家に閉じ込めておいた娘が失踪したのだが、「嫁入り前の娘にキズが~」なんて口にしている。 とはいえ、この調査、どれも殺人事件が起こり、竹花は警察に先んじて調査を行うことになり、結果として解決に寄与することになるのだ。ストーリー展開は探偵物の「定番」といえるだろうが、そこに配されている登場人物で、先述のヤクザの組長の他、各作品に出てくる、ワケアリだが酸いも甘いも知っているじいさん達、そして第三作目の医大を中退した売れない芸人の若者などがいい味を出している。どちらかというと、ストーリーよりはその周囲の雰囲気を楽しみながら読んだし、そう読める作品だと思う。さらに第三作目では主人公が犯人を尾行して葛西橋通りを車で走るシーンがあり、もろ、自宅の前を通り過ぎていったことになっていた。初めてはっきりと土地勘のある場所が出てきたのだ。ドラマになってもいい作品だと思う。長編があと一作あるので読んでみたい。
November 22, 2010
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「狂い」の構造春日武彦 平山夢明扶桑社新書 019 新書判並製☆☆☆☆ 某掃除全般板でタイトルを見かけ、また平山氏の怖い話は結構好きだったので図書館で借りてみた。春日武彦氏は精神科医。この二人がクレイジーな事件について放談している。 第一章『「面倒くさい」が「狂い」の始まり』とか、第三章『"雑"な狂人たち』とか常日頃、面倒くさがりだの大雑把と言われている私には、なかなか自虐的なタイトルかもしれない。この第一章から第三章までが、日本の事件を中心に「考えられない・信じられない」狂気の沙汰のような事件の根底には「面倒くさい」「疲れた」という意識と、先のことを考えないいい加減さ、優先順位の狂いがあると指摘しており、かなり身につまされた。「面倒くさい」で赤ちゃんをバイクのヘルメットケースに入れて死なせたとかいう信じられない事件の説明になるような感じがするから恐ろしい。だからといって、「放談」と当人達が言っているとおりなにか解決策が提示されるわけではない。彼らの対談では、かなり世相を騒がせた常識はずれの事件の数々に言及されている。そして、平山氏がスランプに陥ったとき、春日氏のアドバイスで部屋の掃除に精を出したらスランプから脱出したとか。作中ではほんの数行だが、ここが読みたくて読んでみたのだ。私も今、日々ヒマなのをいいことに部屋の掃除に精を出し、ついにン10年来の汚部屋を脱出した。他に玄関先の戸棚、トイレの戸棚、洗面所も掃除した。。。でも何もないが。。。まあ、確かに30センチごとに区切って床を磨いたりはしなかったけど。。。 と、第三章までは日本の信じられない事件の事例が殆どなのだが、第四章は"ハイ"になってしまった人々でこれも日本国内のやっぱり信じられないお騒がせな人々のこと。故有吉佐和子さんのいいともジャックなんかにも言及されている。第五章は"殺す"狂人達。ここはアメリカのシリアルキラーについて。第四章・第五章は身につまされることもなかった。まあ身につまされたらかなり困るが。 話の内容が結構とりとめがないのだが、「道徳」という飾りをかぶっていないので、二人の語り口の悪さが却って爽快だった。しかし、これを読むと「面倒くさい」が恐ろしい言葉に思えてきてしまった。自分自身が面倒だと思うとき、この本で「面倒くささ」とともに言及されていたセンセーショナルな事件を思い出して自戒にしようと思う。対談形式でなく、もっと淡々と怖く書いてあれば、買って座右に置き、自戒の書にしたいところだ。
November 19, 2010
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狛犬遍路みち宇野弘介文芸社 四六上製☆☆☆○ 狛犬への薀蓄べったりの小説を期待して読んだのだが、実際は「どこそこの」狛犬と地域の狛犬だったので、ちょっと残念といえば残念。その各地の狛犬の描写ももう少ししつこいとイメージが湧きやすかったかも。ヒロインの勤務先が岡山市内で、実家の神社がその郊外(?)なので、なんとなく周辺の描写が楽しかった。 神戸でコーヒー豆の輸出をやっている主人公は、狛犬マニア。その主人公が狛犬を通じて知り合った神社の娘で高校教師のヒロイン(といっても娘くらいの年)の神社の盗まれた狛犬が見つかり、それを買い戻す話と、彼女の結婚、そして、狛犬を盗んだ男の人間模様が交錯する。この狛犬を盗む男は営利目的というよりは、好きが高じてといったストーカー気質というかで手元に置いて楽しみたいというタイプ。かなりなマニアで彼と主人公のやり取りは私にもなかなかツボだった。が、、、おじさん著者にありがちなことだが、ヒロインに夢見すぎ。おじさんドリーム全開で読んでいてムズ痒くなってくる。また作中真ん中あたりで「神は死んだ」って連呼されるんだけど、出典くらいちらっと登場人物に口走らせてもいいんじゃないかなぁ。 しかし、地域の神社の狛犬を買い戻すのに氏子でお金を出し合うって、家の近くにも神社があるから、結構身につまされる話だ。信仰の対象としての「神社」が廃れているとき、作中でも登場人物の口を借りて言及されるが、そんな神社の用途もよく分からないような狛犬のために安くは無い金額を出す気になれるかどうか……。ま、懐が許せば私は出すタイプだが。信仰心には自信がないし、神社や狛犬が好きなだけだが。ただ、神社を維持していく努力はやっぱりそこを一種の「村の集会場」みたいに信仰よりも何も人が集う場所にしていくのが一番いいんじゃないだろうか。ま、幼稚園や駐車場にしてお金を稼ぐのもいいと思うけど。
November 19, 2010
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いなか巡査の事件手帳深沢敬次郎中公文庫☆☆☆☆○ 来年の手帳を選定中に図書館で手帳の使い方関連の本でも借りてみようかと思って検索していて、面白そうだったので書庫から出してもらって借りてきた。タイトルから、どこかの田舎町を舞台にしたミステリだと思ったのだ。ここのところミステリ系を読んでいなかったので、禁断症状が出てきたのだ。 ところが、実際は終戦直後に巡査になった人の随想。場所が群馬県だったので、両親の実家があるせいもあり、読んでみるとあっさりとした語り口だが、終戦直後から昭和50年代末の世相が反映されていて面白い。だが、時の流れとともに今の犯罪とは様相が異なってきている。人間模様は変わっていないが、世相は変わった。今ならば有無を言わさず「犯罪」とされる、詐欺まがい商法のことが、まだこれは罪になるのか、と警察官自身が疑問に思っているようなこともある。今なら心中なんか考えないようなことでも心中してしまったり……。それに毒物も工場廃水も今より管理が甘そうだ。公害の調査も警察が行っているのだ。 時代からいって、横溝正史の映画の片隅にいる制服警官が、金田一耕助達と無縁で過ごせていたら、こんな感じの日常を送っていたんだろうな、と思う。
November 15, 2010
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古代シルクロードの音楽~正倉院・敦煌・高麗をたどって岸部成雄講談社 A5上製☆☆☆☆☆◎ 正倉院展で螺鈿紫檀五弦琵琶を見た勢いで図書館で検索して借りてきた。昭和57年初版。 主に、正倉院の楽器、中国の中世くらいまでの音楽史、朝鮮半島三国時代(新羅・百済・高句麗時代)の古代音楽について。正倉院の楽器と三国時代の楽器についてのところはこんな楽器もあるんだ~と楽しく読んでいたのだが、この本で著者の専門ということもあって、一番頁が割かれていた中国の音楽史については、政府お抱えの楽人の官制や音階の説明もあって、難解……特に音階は訳が分からん。。。。十二律に七声でワケが分からなくなった。でも、一部の調名がインドの起源という記述は面白かった。 それに、正倉院って楽器のコレクションも多いということを恥ずかしながら始めて知った。残欠などがあるせいだが、中にはアイヌのトンコリに似ているらしいが、よく分からない七弦楽器なるものもあるそうだ。今度、正倉院の楽器の本借りてこよう。 素人目にもかなり充実した内容。今、こんな音楽書あまり見かけないような気がするが、あとがきを見て愕然。専門(中国の音楽史)の研究の傍ら、十数年がかりで上梓された本だったらしい。 正倉院の楽器や雅楽に使われる楽器に興味があったので、こういう本は大好き。できれば自分でもやってみたいが今はムリかな……。
November 15, 2010
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乙女の日本史堀江宏樹 滝乃みわこ東京書籍 B6並製☆☆☆☆ さらば「おじさん史観」っていうが、あんまり変わってないぞ? 女性の側に立った視点というけれど、あまり目新しいところはない。少々男色絡みの記載が多い程度だ。もう少し突っ込んだ記述が欲しかったかなぁ。中に若い女性向きのマンガや小説、文献の案内があるのは面白いけど、一部はあまり歴史に突っ込んだ作品じゃないような気がしないでもない。なんだか、リア充インスタント歴女向けの内容という気がする。あと、二色本文なのはいいいが、マゼンタ100?の文字色はちょっと見難い。こんなこと書くんだから、私はこの本の読者ゾーンには入らないのだろう。乙女を謳っているが、どっちかというと、今の何かが違う「女子」向き内容だと思う。「乙女」を謳うなら嶽本野ばらレベルくらいやって欲しい。それに、女性史観というけれど、だったら待賢門院の記述がなかったのはつまらん。後深草院二条より待賢門院の方が後の時代への影響が大きかったような気がするけどなあ。ここで後深草院二条を取り上げているあたりがまだおじさん史観に近いような気がする。
November 3, 2010
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Harry Potter and the Deathly Hallows UK版 Adult Edition (ハードカバー)価格:3,112円(税込、送料別)J.K. RowlingBloomsbury 206 x 134 (mm) Hardcover☆☆☆☆☆ や~っと読み終わった。とはいえ、ちゃんと辞書を引いてないので、一部意味があやふやなまま読んでるからなぁ……。ストーリー的には収まるところに収まったような感じがするが、しかしまあ、バタバタと登場人物が死んでいった……。ヘドウィッグも犠牲になってしまうし……。もう、この巻になると、ハリーはホグワーツには復学しない。そして、ヴォルデモートとダンブルドアの秘密を訪ね、追手がかかる中、魔法界を旅するのだ。そんな中でも、ロンとハーマイオニーはハリーと行動を共にするが、途中、ロンはハリーの行動に計画性が見られないとなじり、別行動になったりもするが、しかし、最終決戦の場は決まっている。様々な秘密が明らかになる中、ハリーをはじめとするOrder of the PhoenixとDaeth Eaterたちとの死闘が繰り広げられる。しかし、その中でもハリーは大切な人々を失う。けれど、彼らは不屈の闘志を燃やし、ヴォルデモートと戦い抜くのだ。特にモリー・ウィーズリーは凄かった!それに、6巻あたりではただの親バカの母親にしか見えなかったナーシッサ・マルフォイもここまで徹底すると、もう立派な肝っ玉母さんかも。それにしてもザンネンだったのは、リーマス・ルーピンがパパになってすぐに奥さんとともに、ホグワーツで死んでしまうこと。遺児テディは両親と母方の祖父をこの戦いでなくすことになるのだ。19年後となっている最終章では、憧れのお兄さん、みたいな感じで出てきて、ハリーにも甥のように可愛がられているように書かれていたけど。そして、ビル・ウィーズリーとフルール夫妻(この巻冒頭に結婚式の場面がある)の娘、ヴィクトワールとイイカンジになっているようだ。また、最初から結構おいしい役だったのは、ネヴィル・ロングボトム。彼が最後はグリフィンドールの剣で大蛇ナギニを倒し、最後にはホグワーツの魔法植物学の教授になっている。そして、ハリーの長男、ジェームズに「ポッター家に招かれているときはともかく、学校では教授だよ?愛してるよ、なんて気軽に言えないよ」と畏敬の念すら抱かれているのだ。まあ、細かいところはよく分かっていないので、日本語版で補填しようと思う。にしても、この本も発売日に届いていたのだが、読み終わるのには随分かかったもんだ。
November 1, 2010
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御開帳綺譚価格:1,300円(税込、送料別)玄侑宗久文藝春秋 四六上製☆☆☆☆☆ 表題作と「ピュア・スキャット」の二編を収録。初めて読んだ著者。最初の部分を拾い読みしてみて、お寺関係の小説で神社仏閣めぐりも好きなこともあって借りてみた。表題作は21年ぶりに開帳される秘仏を巡って、その寺の住職で主人公の無状とその仏像に関係した男女、そして無状自身のプライベートにも関わる内容。ハリーポッターの最終巻の並行して読んだせいか、物凄く大人な小説だと思った。男女関係も色っぽさを超えて、生と死、エロスとタナトスが分かちがたく絡んでいる。秘仏のご開帳という、もう長い間、宗教的な儀式というよりは、もっと俗っぽい目的の方が大きくなっているような行事を中心に、それでも、この行事が何がしかのきっかけにはなって、無状とあと一組の男女の関係性の変化が暗示される。 もう一つの「ピュア・スキャット」も内容的にはほぼ同じ。ご開帳ではなく、お祭りのおみこしを担ぐという行動が中心。なにせ「私」こと主人公の女性は週に3度人工透析を受ける体なのだ。食べ物の制限も多いし、日常の行動も自由にならない体で、それを隠してお神輿を担ぐ。彼女には夫もいて、彼は彼女の無茶を咎めつつも聞き入れないことが分かっていて、それを見守っている。一緒にお神輿を担ぐ人々には迷惑な話だと思うが、この夫は前カノを病で亡くし、また重い病を患う主人公と、危篤だった彼女の父の前で結婚する。何だか人間ホスピスみたいな人物だと書いたら、不謹慎だろうか。主人公の願いは叶うが、結論は読者の想像に委ねられている。ちなみに、タイトルは彼女の夫がジャズマニアらしくジャズバーを経営しており、作中にも往年の名ジャズメンの名前や著者のジャズのスタイルなどに関する薀蓄のようなものがちょこちょこと顔を出している。(これは「御開帳綺譚」にもちょっと出てきており、ジャズに詳しい人なんだろう)そういえば、ジャズミュージシャンにも不慮の死を遂げた人が結構いる。それも関係してるのかな。とにかく、単純な私はこれを読んだだけでも、少しオトナになったような気分になった。本文の字詰めは割合緩やかなのだが、描写も濃密だし、内容も重いので、読むのには意外と時間がかかった。
November 1, 2010
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