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十三の呪三津田信三角川ホラー文庫☆☆☆☆○ 死相学探偵の第一作目。先に読んだ「四隅の魔」の前作にあたる。じつはこの本、書店店頭で見かけたとき、少々ライトノベルっぽいカバーを食わず嫌いして読んでいなかったのだ。 自分を巡る人々が次々と死んでいく…と東京に「探偵事務所」を構えたばかりの弦矢俊一郎の元を訪れた美少女といってもいい若い美女は最初、俊一郎に死相が見えないからと追い返される。しかし、二度目にたずねたとき、彼女の肌には不気味な死相が蠢いていた…というところからストーリーは展開する。 第二作目を先に読んだせいもあるが、こちらの方が二作目よりちょっとこなれていない感じがする。登場人物にちょっと言及される形で別シリーズの主人公刀城言耶のペンネームが登場するのも面白いが、怪奇描写がこの著者にしてはあっさりしているせいか、怪奇色よりもミステリ色を強調しているような印象を受ける。そして、それが逆効果となって、却ってストーリーの印象を散漫にしているような気がする。同じことを第二作でもしているのだが、第二作目の方がそれに成功しているんじゃないだろうか。 ただ、二作目の方が面白かったし、第三作目も近々出るようだし、また次作も読んでみようと思っている。
February 28, 2010
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私の大和路(秋冬紀行)私の大和路(春夏紀行)入江泰吉小学館文庫☆☆☆☆☆◎ 大和路の写真で有名な故入江泰吉氏のエッセイと写真をフルカラーの文庫本にまとめたもの。2002年初版。 最初に秋冬紀行を読み、次に春夏紀行を読んだ。来週末に東大寺に修二会を観に行こうと思っているので、この本の秋冬編の最後にその写真が載っていることもあって先に読み始めたのだ。私は特に氏のエッセイが興味深かった。写真も好きなので(多少入江氏への憧れもあると思うが…)氏の撮影メモは面白かった。 一番写真が気に入ったのは、白黒の追憶の大和路という章。1950~60年代の風景なのだが、私が訪れたこともある白毫寺の参道は1970年の写真では人一人ならまだ余裕で通れそうだったが、私が行った数年前はすでに石段の両脇の萩が生い茂り、人一人でもスレスレだった。それに、「白毫寺村」のスナップとして石彫りの白毫寺への道しるべが写っていたが、その背景は田圃に囲まれた田園風景で、鋤だか鍬だかの農具を担いだ農婦の姿も映っている。が、しかし今このあたりはどう考えても奈良市の郊外となり、いかにも郊外の住宅地になっており、田圃なんぞどこにもない。大仏開眼1200年祭の写真は資料的な価値も高いだろう。また、氏と交友のあった奈良の寺院の高僧たちの思い出も綴られており興味深い。奈良の仏像がアメリカへ持ち出されてしまうのでは、という心配から奈良の風物を撮り始めたと書いておられるが、終戦直後、大阪の大空襲で焼け出されて故郷の奈良に戻った日は修ニ会満行の日であり、疎開先の仏像が東大寺に戻ってきたときの様子、面白い語りで有名だったあのお寺のお坊さん、若い頃は美男だったそうで…など、往時の様子を読むのも奈良好きにはいいと思う。 秋冬、春夏どちらもいいと思うが、花の写真も多い春夏編の方が和むかな。
February 27, 2010
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新井政彦光文社文庫☆☆☆☆☆ まず「長編推理小説」となっているが、名探偵が出てくるわけでも謎に満ちた殺人が起こるわけでもない。舞台は2018年の日本。この時代では、精神医学・大脳生理学・ヴァーチャルリアリティが融合して人の脳の中の情報をデジタル化し、さらにそれをパソコンデータとしてコピーし、その中に人間をデジタル情報化して入り込ませる、という技術が可能になっている。人の脳の中に入り込んでバーチャルイメージ化されたその人のトラウマをやっつける、ということが出来るという設定。この技術者をバーチャル療法士と呼び、この世界では「宇宙飛行士になるより簡単だがプロ野球選手になるよりは難しい」職業という設定になっている。まあ、人の心の中に入り込んで、その中に巣食うトラウマだかリビドーだかに立ち向かう、というのは似たような設定をどこかで聞いたことがあるような気がするけど、まあ、ベタなイメージでいう「推理小説」じゃないような気がするなぁ…。正直タイトルを見たときは、ドロドロした因縁の歴史ミステリを連想して、図書館で借りたんだけど。いざ読んでみると近未来SFアクションといえる内容だ。 バーチャル世界で血なまぐさい戦いを繰り広げつつ、「患者」であるメディチ家の血を引く少女のトラウマを取り除いていく、というのが最初のストーリー。この少女の精神世界に入っていくと、中では彼女にすら意識されていないが、ルネッサンス期のフランスで血で血を洗う戦いになっているのだ。どちらかというと、ロールプレイングゲームの小説版のような連想もしたが、その戦いの場面がスリリングで結構なページターナーでもあった。さらに先に進むと思わぬ展開となり、どこかで聞いたような設定の小説ではなくなるしさらにページを捲る手に加速がかかる。 確かに面白かったし、私が一日で読んでしまうほどのページターナーだったが、好みのタイプの小説かというとそうでもないかも…。なにせ過去の因縁に結びついた伝奇小説的なドロドロの方が好きなので。ただ、息もつかせず「読まされてしまった」小説ではある。 まあ、要はSFが肌に合わないんだろうな、やっぱり。
February 24, 2010
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四隅の魔三津田信三角川ホラー文庫☆☆☆☆☆◎ 「死相学探偵」シリーズの第二作目。このシリーズの1作目は書店の店頭で見ていたのだが、カバーのイラストがライトノベルのようでちょっと読む気がしなかった。この作品はそのシリーズだと知らずに借りたのだが、読む前に下で読んだ「赫眼」の最後にこの「死相学探偵」の紹介編のような短編があり、それも面白かったので読んでみた。 大学の怪奇愛好サークル百怪倶楽部に入った入埜転子はこのサークルが夏休みに寮で開催した「四隅の間」に参加する。これは真っ暗闇の中、5人が正方形の部屋の周囲をリレーのように順に巡っていくうち一人が抜ける。しかし、それでも巡る動きは途絶えず、じゃあ、抜けた一人の替わりは…?という100物語などと同じようなゲームだ。そして、その最中に学生の一人が心臓麻痺で死んでしまう。さらに、一緒にゲームをした部長も転落死し、おびえた転子と友人が死相学探偵を訪ねる…というストーリー。 これはホラーとミステリの要素が両方交じり合っている。その混じり方の著者の他の作品より分かり易いと思う。また、おそらくレギュラーであろう死相学探偵を巡る人々と猫のキャラが漫画っぽくて面白い。特に高名な霊能者である探偵の祖母と探偵のやりとりは、ノリが大阪だ。(祖父母は三津田作品で出てくる地名である奈良県の「杏羅」という所に住んでいるのだが)また、刑事と探偵のコンビも読んでいて楽しかった。このシリーズの第一作も早速図書館に予約した。
February 24, 2010
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千一夜の館の殺人芦辺拓光文社 カッパノベルズ 新書判並製☆☆☆☆☆ かつて画期的なパソコンのOSを無料で提供しようとした日本人学者が渡米した後死亡。その遺産を巡っての連続殺人。莫大な遺産はお金とそして、おそらく学者の研究内容から新型コンピュータではないかと思われるDVD。その学者の妹と弟の家にはアラビアンナイトに取材した絵が飾られている。作中各所にアラビアンナイトから採られた場面もちりばめられている。 そして、主人公森江春策はこの遺言の執行人となり、東京にオフィスを提供されて任にあたるが、そこに思いがけない人物が現れて…。名探偵森江はあまり登場せず、その思いがけない人物(そのDVDの関係者である若い女性)と学者の妹の孫にあたる少年の推理と冒険(?)になる。このタイトルの館の設定も眼から鱗が落ちるような気がして面白かったが、複雑な系図、莫大な財産、隠された血脈と本格推理の定番がこれでもかとちりばめられているが、名探偵の登場が少なく、事件に巻き込まれていく若い女性と少年のサスペンス色の方が強い。名探偵がもっと出ずっぱりのほうが好みかな。
February 22, 2010
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赫眼三津田信三光文社文庫☆☆☆☆☆ 著者初の怪奇短編集。怪談のような文体で、どれも結構怖い。また、どこまでが著者の実体験でどこからが虚構なのかが、分かりにくくなっていて怖さ倍増。しかも舞台が関西が多いので、読んでいて楽しい。特に「百蛇堂」の取材途中に出会った、という設定の「後ろ小路の町家」は京都の町家が舞台で、私好みの怖さだった。そして最後は彼のシリーズ物の一つ「死相学探偵」からの短編。このシリーズも面白そうだ。今度読んでみよう、というかシリーズの二作目をもう借りてきているので、これから読んでいこう。そういえば、私はこの人の作品から日本のホラー、オカルト物が結構好きになったのだ。
February 19, 2010
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三津田信三原書房 四六上製☆☆☆☆☆◎文中、ネタバレの可能性がある箇所は背景と同色の文字色にしてありますが、勘のいい方には分かってしまうかもしれません。 タイトルは「水魑の如き沈むもの」「水魑」は「みづち」と読む。思わず上の商品リンクのリンク元からコピー&ペーストしてしまった。このブログにも上手くアップロードできるといいけど。 これも500ページある大作。終戦から10年くらい経った時、奈良のとある田舎の村で珍しい雨乞いの儀式が行われると聞き込んだ怪奇作家刀城言耶は編集者とともにその村に向かう。しかし、そこでは彼の目前で連続殺人が起こる…というストーリー。 また、このシリーズの特徴のような気もするが、地理関係が複雑で地図が欲しくなる。そして、これは人なのかそれとも…?と思ってしまう描写がさりげなく込められている。このさりげなさが曲者で、私の場合は、気にしていると一層怖くなってくるのだ。更に、久しぶりにこの著者の代表作で思いっきり怖かった「蛇棺葬」シリーズと同じ「~け」で終わる方言が復活し、あのシリーズの恐怖も思い出されてきた。 ストーリーは最後の最後で二転三転。しかも明確な解決はごまかしてある。割合救いのある描写ではあるものの、この結末思いっきり読者は混乱するぞ。謎めいた田舎の旧家に終戦のどさくさ、まだ残っている「闇」がごたまぜになって、不気味な世界が展開される。妙に社会的な内容にならないだけに、かえって現実離れして薄気味悪く感じる。それだけでなく、今回は 入浴など何気ない生活習慣の描写なども後になって意味を持ってくるので、作者の伏線の張り方も前より細かくなっているような気がする。そして、この作品の第一作目に出てきた架空の地の出身者が重要な役割を果たしているような気がする。今後シリーズの中でこの設定が繋がるのだろうか。そうなったら楽しみだけど。このシリーズの前の作品は一番最初を除いて、ちょっと物足りなく思っていたので、この作品のこの展開は大歓迎だ。次作が楽しみになってきた。ちなみにこの本、図書館で予約して借りたが、1ヵ月以上待たされた。
February 17, 2010
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陋巷に在り(1)酒見賢一 諸星大二郎(カバー絵)新潮文庫☆☆☆☆◎ これ、全何巻あるんだろう…?10年近く前に雑誌掲載の挿絵が南伸坊さんだったのと、この著者のデビュー作「後宮小説」が面白かったので気になっていたのだが、雑誌掲載から大分年月が経ち、おそらく文庫でも全巻揃っているのではないかと期待して読み始めた。ただ、カバーの絵も南氏のほうが私は好きだったりするが、著者本人が諸星氏の「暗黒神話」に影響を受けたと書いておられるのでそうなるだろう。 まだなが~い小説の第一巻なので、何が何だかという感じだが主人公は顔回(字は子淵)と孔子(この人にもなんかたくさん名前があったが、面倒なので省く)。大昔の高校時代の朧な記憶を辿ると、顔回は孔子の愛弟子で早世したとき、孔子が「天は我を滅ぼす気か」と嘆いた、と漢文の教科書に書いてあったような気がする。他にも何となく漢文の時間の論語で出てきた弟子の名前があるような気がするが、似たような名前が多いのでよく覚えていない。 今まで、忠考の硬直した教え、というイメージがあった儒教だがこの小説によると孔子存命中の儒教はどちらかというと呪い系のイメージがあったらしい。(作中ではこれを原儒として区別されるべきものと書いてある)そして、冠婚葬祭の儀礼と呪い・魔よけめいたアヤしい行為を区別していったのが孔子らであると書いてあった。また、先年なくなった有名な漢字学者の著作が参考文献の最初の方にあるから、その考えが反映されているのだろう。 古代中国物で舞台設定はややこしいわ、登場人物の漢字は読めないわでかなり読みにくい小説になると思うが、意外に読み始めるとやめられなくなった。孔子をはじめとする論語に登場する登場人物達の印象も教科書とは随分違うので面白い。のんびり続巻も読もうと思う。
February 13, 2010
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世界のスピリチュアル・スポットレベッカ・ハインドランダムハウス講談社 280x230mm 上製☆☆☆☆◎ 原題はSacred Places Site of Spirituality and Faithという。全世界の宗教的な遺跡や神聖視されてきた自然の景観の写真集。南米のマチュピチュやチチェン・イツァなどの石造遺跡、ヨーロッパの巡礼地、アジアの仏教や他の宗教の遺跡、オセアニアのエアーズロックやそのほかの自然の奇景や先史時代の人々が書き残した洞窟壁画…。私が特に印象に残ったと言うか、初めて目にして目新しく感じたのは二つ。一つはアフリカ、マリのトンブクトゥやジェンネの日干しれんが?のモスク。この建物は中東のドーム屋根がモスクのイメージだと思っていた固定観念を吹き飛ばしてくれる。なんだか古代ゲルマンの砦のようにも、どこかのファンタジーの世界の建物のようにも見える。あと一つは、オセアニア各地の自然が作り出した風景で、モダンなパターンのようでとても面白い風景だ。現地のアボリジニやマオリ族の人々が「タプ」(タブーの語源)として禁足にしたのが分かるような気がする。また、一つ一つの場所にはそれに関連した歴史や宗教やそこに暮らしていた原始の人々の宗教観の解説が書き添えてあり、ただの観光ガイド調の内容になっていないので、訳文がちょっと硬かったのが気にはなったものの楽しめた。よく考えたら、私が国内旅行でよく行くのは神社仏閣だし、この本そういう傾向の場所を集めた写真集で、しかも好みの薀蓄が語られているのだから、そりゃ、好みの内容にならないはずがない。寝る前に写真を眺めて楽しもうと思ったのだが、一度はちゃんと解説を全部読んでみた。ただ、非常に大判なうえに、フルカラーの写真集同様厚い紙が用いられ、更にハードカバーなので、机の上において読まないと、重くてかなわないのが玉に瑕だ。もう一つ難を言うなら、写真の粒子が粗いことか。ただ、この本、大判フルカラーで250ページを越える厚さだ。通常の写真集なら軽く7千~8千円…どころか1万円超えのお値段になっていても不思議ではないので、このお値段(って図書館で借りたんだけど)を考えると、妥当かもしれない。ちなみに日本で取り上げられているのは、紀伊山地と富士山のみ。紀伊山地のところでは高野山や熊野三山に触れられている。 眠れない時にこんな写真集を眺めたらいいのではと思い、試すつもりで図書館で借りてみた。自然のダイナミックな造形や神さびた遺跡の写真は特によかった。割と目が見慣れているように思う街の遠景や豪華な教会の写真はもうちょっと少なくてもよかったかも…と思える。まあともかく、私好みの景色ばかりを集めたと言える本だった。枕元にこういう本があるとやっぱりいいかも。
February 9, 2010
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シャイロックの子供たち池井戸潤文春文庫☆☆☆☆☆ 以前に2冊くらい読んだような気がするが、今回も郊外の都市銀行のある支店を舞台とした金融ミステリーの連作短編集。最初は銀行員の日常の小説でミステリじゃないんじゃないかと思っていたら、途中からキナ臭いキナ臭い…。この人の小説の面白いところは、伝票や貯金口座の動きで様々な謎を解き明かしていくところ。今回もATMが発行した古びた明細票が決め手になったりする。でも確かにお金の動きを追うと、社会や人の輪郭はつかめるだろうなあ…。 さらに、この作品に現実味を加えているのは、個々に登場人物の描写の細かさだ。こーゆー上司や同僚って銀行ならずともどこにでもいると思わせる。そして、職場を離れた彼らの家族とのつながり…それも人それぞれ。温かい家庭だったり、別居していたり…。名探偵も出てこないし、派手なトリックも使われないが、伝票やアクセス記録の検証の積み重ねから大きな事件が明るみに出て、謎の部分も残るものの、それなりにさわやかな解決もある。地味目なミステリはあまり好きではないのだが、この人の作品は好きだ。
February 8, 2010
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グラン・ギニョール城芦辺拓創元推理文庫☆☆☆☆☆◎ 冒頭、少年の虐待シーンというかなりショッキングな描写から始まる。が、ちょ~っと表現に矛盾があるような気がしないでもない…。この「グラン・ギニョール」というのはフランスでエログロナンセンスを売り物にしたお芝居だったらしい。そこから派生して「グラン・ギニョレスク」なる形容詞もできたとか作中に書いてあった。私は、この著者を始めて読んだので、解説を読むまで(文中からシリーズ物らしいとは思ってたが)この作品が10作目になるほど既刊が出ているとは思っていなかった。 20世紀はじめの古城で繰り広げられる作中作の連続殺人とシリーズの探偵役の弁護士森江春策が偶然関空からの電車内で出くわした毒殺事件とが平行して進行する。この二作、どちらを読んでもなかなか面白い作品だが、作中作の方はちょっと私の勘も当たった。(というか東野圭吾の小説で同じ著述トリックに引っかかったことがあったせいもあるかもしれないし、こっちの描写の方が分かり易かったし)また、森江編は関西の鉄道網の描写が嬉しい。(単に奈良・大阪・和歌山あたりの地理が好きなだけ…)とにかく、作中作は若い頃外遊中に知り合った新進ミステリ作家が書いた本を和歌山の素封家が私家版として翻訳した、という設定になっているが、この作中作の仕掛けも面白い。 そして、最後の結末の付け方も見事だと思う。まあ、多少はこれありかなぁ…?というあまりリアリティを感じない箇所もあるにはあるが、逆にこんな感じの名探偵と謎めいた建物、昔の因縁、謎の人物などをちりばめた(多分)新本格といわれるミステリであれば許容範囲という程度か。(社会派って言われてる作品でやったらマズいかもしれんが…) このシリーズ、他の作品も読もう。これも新規開拓成功。
February 7, 2010
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塚橋一道角川ホラー文庫☆☆☆☆☆ 経営が著しく悪化し、院長が失踪医療スタッフどころか消耗品すら不足している病院。スタッフもどこかピリピリしている。そんな病院で医療事故が発生し、隠蔽工作中に急患が運び込まれる…というところからストーリーが始まる。 この急患が持ち込んだ(多分架空と思われる)「感染」症がとんでもないシロモノ。それが病院に広がっていく様子が実に気持ち悪い。(だからホラー文庫のラインなんだけど)特に、婦長が発症するところはキモかった…とにかく、登場人物が殺伐としているか、救いようがないかのどちらかしか出てこないし、同情を引くような書き方がされていないので、ホラーとしての迫力は十分。また、薄い本なのだが、展開も速く、読んでいて次々とページを繰ってしまう。ただ、難をいえば、結末にもうちょっと不気味な余韻が欲しかったかも。少々その前のインパクトが強かったので、物足りなく感じた。 とはいえ、こんな病院にだけは入院したくないぞ~~~。
February 2, 2010
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