また、商売替えだ
新吉 「旦那、ちょっとあれ見てやっておくんなはれ。なんや、子供みたいなもん
だな」
城太郎「えっ」と言い新吉をながめて、
城太郎「 浪花屋の若旦那様
、道中だけでも、もうすこーし品を良くしていただきと
うぞんじますね」
と腰を低くしていうと、新吉が「せっしょうやがなあ、旦那」と言っている脇を早馬が駈け抜けて行きます。馬が駈け抜けたあとをじっと睨み、 何かあったのでは・・・と・
・ (
城太郎の目が侍の目になっています )
早馬が駆けつけた先には琉球からの使節の行列のところでした。行列が通り過ぎるのを平伏す城太郎達ですが、早馬が又駈け抜けて行くのを見て、 城太郎は伊佐のことが気になったようです
。
お春も父親と城太郎達の後を追っていました。お春は早馬が通り過ぎるのを見て、「あんな馬に乗って早く箱根に行きたい」と父親に馬に乗せてとせがみます。
城太郎達が海を眺めながら話をしていると、道の先方から、薩摩藩の大勢の侍と闘っている一人の侍、公儀隠密の伊佐を見つけます。城太郎は「伊佐っ」と叫ぶと、駆けだします。
伊佐が斬られます。城太郎は「待てっ」「待った」と言いながら 伊佐のところに駆けつけます
。
新吉に伊佐を頼むと、城太郎は本田の刀を取り、 薩摩藩の侍達に立ち向かいます
。
侍達は逃げていき、城太郎は伊佐のところへかけ戻ります。
伊佐は「上様の命が危ない」と城太郎に言います。 薩摩藩家老平賀監物が琉球使節と手を握って、上様の命を亡き者にしようとしている、というのです。その「 証拠はいずれに
」と聞く城太郎に、「琉球使節献上の香炉の煙り・・」と伊佐。そして、陰謀の仔細と隠密の門鑑を城太郎に渡し息絶えます。城太郎の顔には、友の死の悲しみと、 薩摩藩家老監物達への怒りがわいてくるのです
。
新吉に後を頼むと、城太郎は 江戸に向かって走り出します
。
しばらく走ったところで、城太郎を追ってやって来たお春が父親にせがんでのんびりと馬に乗ってやって来ます。ちょうど良いところにと、
城太郎「お春坊、お春ちゃん」
お春 「新さん、どうしたの ?
」
城太郎「 降りろ
」
お春 「えっ ?
」
馬から「どうしたの ?
」と聞くお春を降ろして、
城太郎「 また、商売替えだ
」
と馬にまたがり、「 達者で暮らせ
」というと、江戸へ向かいます。 お春は「新さん、待って」と泣きながら後を追いますが・・「新さんの馬鹿」。
琉球使節が江戸城に入ります。城太郎は馬に鞭を入れ急ぎます。琉球使節の献上の香炉がたかれ将軍の前に差し出されています。
その時、庭先から「上様、危ない」と声がかかります。間一髪、城太郎が父多門と駆けつけます 。 (
裃姿の城太郎・・今までの城太郎からは想像もつかないくらいりっぱな侍ではないですか
)
城太郎が急ぎ「 お下がりください、お下がりください、お下がりください
、しばらく、・・しばらく」と門鑑を見せながらやって来ます。
監物 「無礼者、下がれ」
城太郎「控えません、本田城太郎忠昌、火急に推参、御免」
監物の止めるのをはらい、家斉の前にあった香炉を掴むと、鳥かごに向けて放り投げます、すると、小鳥が死にました。
監物 「乱心もの、上様御前で無礼であろう」
城太郎「黙れ、平賀監物、琉球渡りの珍しい香りとは、まっかな偽り、香炉の煙に
仕掛けた劇毒にて、上様のお命縮め奉るとは、天を恐れざるにっくき企
み、この鳥の姿に申し訳できるか」
監物 「ううん、おのれ」
城太郎「その方、薩摩藩家老職を悪用し、琉球使節と手を結び、徳川家内乱を企て
しこと、公儀隠密伊佐新次の今際の際の証言にてすでに明白」
監物一味は引き出物に隠していた刀を取り出し、 立回りになります
。
城太郎「上様、御前をも返り見ず、無礼の数々、平にお許しくださりませ」
家斉 「城太郎、このたびの働き見事であった。褒めて取らすぞ」
城太郎「 有難き幸せ
、これみな、亡き伊佐新次が働きにござりまする」
家斉 「多門、よきせがれを持って、そちは幸せじゃ。 城太郎、今後も忠勤を励ん
でくれよ
」
城太郎「ははあ」
如仙は城太郎の配慮で本田家への仕官が叶い、新吉とお絹は浪花屋に落ち着いて仲良く、・・新吉が「お祝いに行こう、旦那もとうとう侍になってしまう」から・・と言っているが・・・。
(えっ、あら、この物語の最初と同じ風景が映し出されます。)
本田家の家臣が乗った馬がかけていきます。絵日傘は、城太郎がお春にプレゼントした日傘です。
馬が駆け抜けて行ったあと相合傘から出て来たのは、町人姿の城太郎です。
お春に「 さぁ、行こうか
」というように お春に優しく手を貸して、二人仲良く戻ってゆきます
。
城太郎は、侍にもとるのですよね。一時的に家出をしただけなのでしょうね。城太郎はお春と一緒になるのでしょうね。
晴れやかな二人の楽しい旅が始まるのです。 (
完 )
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