紅権八は、愚かでした
外は雪がちらついている夜、菊富士には、いつものように権八と小夕の姿がありました。小夕の視線は一人静かに酒を飲んでいる権八を恨めしい素振りで見つめています。権八が小夕が立っている窓のそとの雪に目をやります。
権八「降って積もってはかなく消える、権八の命のように・・・」
と呟くのを見て、小夕は「いや」と言いながら権八にすがりつきます。
権八「何時かは討たれる・・明日か・・明後日か・・・」
通りから菊富士の二階に権八がいることを確認した富士馬の姿があります。
小夕は権八が「帰してくれ」という目を見て、「初めて会ったときもその目でした」と。そして、比呂恵に討たれるつもりでいる権八に、討たせはしないとすがりつく小夕です。
その小夕を振り払い部屋を出て行こうとする権八に、厳しい声で「権八さん」と引き止めます。権八が小夕を見ます。
小夕「あんた、花川戸の親分さんのお心を踏みにじっても。討たれたいというのか
い」
権八「親分の心を踏みにじる・・・何のことだ」
小夕は花川戸の親分が、権八を殺させたくないために、権八の身柄を百両のお金と一緒に小夕に預けてくれたことを話します。それを聞いた権八は
権八「親分の真意も知らず、紅権八は、愚かでした・・」
と今さらながら悔やむのです。
菊富士からの帰り道、 材木河岸で待ち受ける辰馬、富士馬の兄妹、比呂恵達に囲まれます
。
辰馬が「権八、抜け」と言い、富士馬が「行くぞ」と権八に斬り込んでいきます。蛇の目傘で応戦していた権八ですが、 真っ二つになった傘を捨て
、止む終えず刀を抜いたところに 斬り込んで来た富士馬を斬ってしまいます
。
権八が必死に逃げてきた途中に、比呂恵が隠れるようにいるのに気が付きます。追っ手を気にしながら比呂恵に近づきます。比呂恵は権八に「逃げてください、早く、早く逃げて」と言い、権八に比呂恵は自分が住まっているところを教えるのです。
姫路藩江戸詰めの戸梶は権八を見送って泣いていたのを見て、辰馬や比呂恵とは別に富士馬の仇をと動き出し、小夕の家に来ています。
小夕が命をはって惚れた男が他の女にのぼせ上がっても命を張るか、「比呂恵という女だ」と聞かされますが、その手には乗らないと突っ張ります。権八は比呂恵に命を張っている、比呂恵も仇だというのに懐剣さえ抜けないほどののぼせかただ、と吹き込まれ、権八の居所を教えるよう迫られますが、そこでは何も話はしませんでした。
しかし、心配になり小夕は権八が住まっている宿鮒源に足を運びますが、出かけたと聞いてしょんぼりと帰っていきます。
その頃、比呂恵の住いでは、辰馬がこれからどうするつもりかと比呂恵の気持ちを聞きに来ています。辰馬とは別れ別れの道を取ろうとするのか・・・辰馬の思いを聞いていた比呂恵は、私と一緒に権八を討ってください、と辰馬に答えます。辰馬は権八は自分が討つ、比呂恵には権八を見てまた心が変わると困るので討ちに行ってほしくない、と言って帰ろうと玄関先に出てきます。
その時権八の足は比呂恵が滞在している家へと向いていました。そして家を見つけて中をのぞいた時、玄関先での辰馬と比呂恵の姿を目にしたので、 後ろ髪を引かれますがあきらめて帰っていきます
。
その権八の後ろ姿を、小夕が見つけたのです。出かけて行ったのは・・もしや・・小夕は権八が行っていた先を突き止めようと道をひきかえしていきますと、辰馬を見送って家に入ろうといている比呂恵を見て、てっきり権八を見送っていたと思ってしまいます。
(嫉妬からの小夕の誤解が、権八を窮地に追い込んでいきます。)
続きます。
炎の城・・・(11) 2024年08月05日
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