契り固めの盃が、そのまま別れのしるし
◇菊花の巻
伏見の遊里撞木町で、内蔵助は放蕩三昧を続けています。その乱行は相手を油断させるための芝居ではないかと、途中小林平八郎 、鈴木元右衛門ら吉良の間者が待ち伏せして、内蔵助に刀を突きつけるが、魂の抜けた人のように士下座して謝るばかりだった。武士の性根を失ったものを手にかけても仕方ない、と小林らは帰っていきます。
迎えの篭で行った先は白菊太夫のところです。部屋には原惣右衛門、吉田忠左衛門、小野寺十内の三人が内蔵助を待っていました。
御家再興の件は審議中で近々の採決はないようだということ、そして吉良が本所松坂町に隠居と決まったようだと聞き、内蔵助は、「上杉家の家老千坂兵部は名うての知恵者、松坂町へ移るとみせて、国表の米沢へ引き取るかもしれない、いずれにしても相手の所在と動静だけは確かめておかなければ」と言います。そして、忠左衛門におたかのところへ行ってほしいと言います。
翌日、忠左衛門は金右衛門とおたかのところへやって来ます。そして、おたかに、 すぐに江戸へ発ってほしい
といいます。
おたか 「 まあ、江戸へ
?
」
忠左衛門がその訳を話します。
忠左衛門「我らの狙うその人が、この程お役を退き 江戸本所松坂町に隠居と決まっ
たのじゃ
」
金右衛門「 誠にござりまするか
」
忠左衛門「なんでものう、羽州米沢からわざわざ大工を呼び寄せ、極秘のうちに普
請をしているということじゃ、屋敷内の模様、相手の所在、動静をつき
とめておかなければ万一の場合には不覚をとるからの」
それで、おたかに江戸へ行ってもらい・・・そこまで聞くとおたかが「御城代様のお指図でございましょうか」と聞いてきます。勿論のこと、他に人がいない訳ではないが追腹した平左衛門のことを思い、是非ともこの役目は娘のおたかに果たさせたいということであると告げます。
その言葉を聞いて、今日のうちに江戸へ・・事が決まりました上は少しも早く発ったほうがとおたかが・・聞いていた金右衛門も、
金右衛門「そうだ、それがいい。 いずれは拙者どもも後を追う身じゃ
」
金右衛門が聞きます。
金右衛門「して、 江戸の皆様の御動静は・
・」
忠左衛門「・・・御城代はどこまでも御家再興の守備を待たれるご決心じゃ」
金右衛門「それで、 江戸の方々は、御納得なさいますでしょうか
」
忠左衛門「何しろ血気のものが揃っているのでのう」
二人が話しているところへ、おとわとおたかが膳の用意をしてやってきます。おとわが忠左衛門におりいって頼みがあるというのです。
忠左衛門の仲立ちで 盃をおたかと金右衛門にさしてやってほしい
と。三人は驚きをみせます。
おとわ 「橋本家は手々親と娘一人、岡野家は死に遅れのばばと孫一人、所詮縁組
は叶わぬものと思っていたが・・金右衛門もおたかも、共に命をかけて
の御奉公、形ばかりにせよ祝言だけはさせてやりとうございます」
忠左衛門「そうか、それはいい、それはいいところに気が付いた。金右衛門いぞん
はあるまいな」
金右衛門「 はあ・・ (
おたかの方をちらっと見て )
はい
」
忠左衛門「おたか殿はどうじゃ」
おたか 「はい、・・おばば様と金右衛門様さえ、およろしければ」
とうれし恥ずかしそうに答えます。忠左衛門の仲人で二人は固めの盃をすることが出来ました。しかし、喜んで祝えるものではありません。「世が世であれば、これから花が咲こうというのに、 契り固めの盃が、そのまま別れのしるしと
思うと・
・」忠左衛門は 目頭を押さえます
。
吉良上野介は本所松坂町に隠居と決まったそうだが、上杉の当主綱憲や家老の千坂兵部が心変わりしなければよいが・・・と内蔵助が思っているころ、上杉家では、上杉綱憲は上野介を米沢へ引き取りたいと家老千坂兵部にいいますが、千坂はお家のためには断じてならぬと思い止まらせます。
上野介が本所松坂町に厳重な警護で移ってきます。その屋敷に奉公にあがった娘の中におたかが ”
さよ ”
と名乗っています。上野介の目に止まり、赤穂の間者としてうまく入り込めました。
江戸では、小山田庄左衛門、高田郡兵衛の二人が浪士から離脱していき、安兵衛と源五右衛門は京に上り内蔵助に討入りの決行を迫るが、内匠頭を庭先で切腹させたのは吉良ではない幕府だ。内蔵助はあくまでもお家再興を願い入れて、天下の掟を正すことが第一、そう信じて一日千秋その決着をまっているといいます。
続きます。
水戸黄門・・・(6) 2023年11月28日
水戸黄門・・・(5) 2023年11月23日
水戸黄門・・・(4) 2023年11月17日
PR
カテゴリ
カレンダー
フリーページ
サイド自由欄
コメント新着