“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2022.11.01
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霜降の連続講座 その21 値付けは商品を開発する前に決めないといけない


値付けは商品を開発する前に決めないといけない
 「先生、ペペロンチーノってどれくらいの価格がいいですか?」
イタリアンを開業する塾生から以前、こんな質問をされたことがあります。
お店を開業するときや新商品を開発して値付けをするとき、多くの人は世間相場を参考にして、どんな値付けをするか考えると思います。
この 商品を開発して、開発した商品の価格を考えるというだれも疑わない流れ
一見するととても手堅い手法にも見えます。しかし、このパターンの値付けをする人の店や商品は得てして大きな違いが作れず、熾烈な競争から抜け出すことができない場合が多いように感じます。
今回は、この負けパターンから脱出する効果的な方法、価格から入る商品開発についてお話ししましょう。

 例えば、ペペロンチーノに売価をつける場合、ペペロンチーノ価格イメージをまずつかむために、ターゲットとなる消費者に「ペペロンチーノをいくらなら食べますか?」というアンケートを行うことから始める場合もあるでしょう。

これがペペロンチーノというアイテムの20代後半~30代くらいのOLさん価格イメージと言うことができます。
 ところで、この結果を受けて、700円~1,000円の売価をつけたり、商品開発したりするかたが多いと思います。しかし、このパターンは多くの場合、先駆者でなければ成功しません。この価格イメージは、多くの場合、ごくありふれた利用シーンにおける、市場にある既存商品に対する価格イメージであり、同じような原材料費や収益構造の中で開発なら、明確に認知できる差を作ることがとても難しいからです。
 また、料理人ですと、ちょっとおしいものを考え、1,000円~1,400円の売価をつけるかも知れません。しかし、よっぽど立地選びをしっかりしていないと、さらに利用シーンに整合せず、誰にも支持されないで終わってしまうことも多いかもしれません。
 基本的に、爆発的なヒット商品を作るにはスピード感が重要であり、誰にでもわかる、わかりやすい価値をつけなければならないのですが、この商品を開発してから値付けするパターンでは、制約条件が多くわかりやすい価値をつけるのは至難の技であると言えるでしょう。

 では、なぜ、700円~1,000円の売価をつけてしまう人が多いのでしょう。それは、商品を開発して、開発した商品の価格を考えるという習慣化されたパターン――だれも疑わない流れがあるからです。この流れで考えると、既存の商品イメージや価格イメージに無意識のうちに縛られてしまい、既存商品と似た価値の中に収まってしまうのです。
 爆発的なヒット商品を生み出すには、今までの枠にハマらない新しい価値観が必要です。逆に、この枠にはめ込んでしまう要因が、商品イメージであり、価格イメージだと言えます。



 誰しも販売商品おのおのに商品に合致した価格イメージを持っています。そのため、どうしても価格イメージに基づく潜在意識に引きずられて商品開発してしまいます。
「売れないときは値段を倍にして考えなさい」
これは私が塾生に対して常々言っていることです。私がそう言うのは、価格イメージの半分や倍で考えれば、従来の商品イメージとらわれない、画期的なアイデアが浮かぶことがあると私は考えております。
 例えば、価格イメージの半分の値段で考えれば、必ず何かの要素を捨てなければ商品が開発できません。
そこで思い切って構成要素を“削”ったり“捨て”たり、大胆な再構築に一歩を踏み出すでしょう。


 その一方で、商品開発後にデイズカウントする人もいますが、犠牲が伴う場合も多いです。例えば、商品が競合他社の商品と似たような繰り返しになりますので、“売上倍増のための勝算なき身を切る値引き”になりがちです。そして、無理な値引きで経費に負担がかかり、そのしわ寄せが、従業員や取引業者に及ぶことがあります。このような値引きは不毛であり、取り返しのつかない痛みを伴うことになります。
 2,000円で売ることから考えたらどうでなるでしょうか。そのまま、既存イメージ通りのペペロンチーノを2,000円で売れば、あまりにも高いと誰もが感じることは明白です。そこで、このような無理難題が課せられれば、ペペロンチーノを注文した人が「!」となるようなことを一生懸命に考えざるを得ないでしょう。倍の値段にして考えることは、現在の商品イメージの大幅な再構築を要求されるのです。すべてが成功するとは限りませんが、画期的な方法が見出されることもあるのです。
例えば、この本誌にもよく登場する福岡の『パロマ・プラスワン』のターンテーブルで提供される“農園のメリーガルグイユ”のように、唖然とするような価値を付加した商品が生まれることもあるのです。
 商品を開発してから値付けをするのでなく、戦略的な値付けを決めてから商品を開発することは、とても大切な値付け法なのです。






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Last updated  2022.11.01 10:04:47


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