“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2023.11.29
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冬の連続講座(過去の会報から振り返る) 商圏クロスオーバー戦略 その14 足元商圏外のお客様に売るための戦略的アイテムは売りすぎない~「四方よし通信」2015年12月号より

 先日、北陸の会員の『​ ヤムヤム ​』というカレー店を営む宮本宏さんの店を訪れました。


まず、『​ ヤムヤム ​』のカレーはインド系のおいしいカレーで、小麦粉もラードもあまり使っていなくて、うまみ調味料も使っていないカレーということで、金沢の対極にあるカレーと区別するために、私は勝手に「白山自然派カレー」と命名させていただいております。
 こちらの商品ラインナップは900円台からあり、1,000円を超えるぐらいがメインで設定されています。したがって、価格設定だけみると、ある意味わざわざ来るカレー屋と言えるでしょう。
当然、日常性が出る価格でないので、ロードサイドゆえフラッと入ってみる人はいると思いますが、段々落ち着いて、おいしいと思った人だけが残るような状況だと思います。


アイテム的には角煮カレーというのが売りで、たしか、1,200円前後ぐらいだったと思うのですが、私のイメージとしては、角煮カレーはおいしいのですが、自然派カレーゆえやさしく、本来なら、売価を低くして、しょっちゅう来てもらえるようなロケーションにあるといいカレーなのかなと思いました。

 宮本さんとディスカッションしていて、どんな看板商品がいいかと言う話になりました。

では、ということで、ご飯というものをもう少し強調したらいいのではないかということで、「注文が入ってから、土鍋でご飯を炊いて食べるカレーを作ったらどうですか?」と提案しました。
土鍋ご飯カレーみたいなイメージですね。
『ヤムヤム』さんのカレーはバターライスが合うということもおっしゃっていましたので、注文が入ったら、ターメリックライスなり、バターライスなりを土鍋で炊くわけです。
さて、ここで多くの方から、提供時間について心配されます。一般的には食事需要の店が一等地やロードサイドに構えると、注文が入ってからなるべく速く提供しなければいけませんね。ただ、先ほど言いましたように、「待つ」から遠方から来るのです。だから、お客さんを遠方から呼ぶには、「待つ」という要素を組み合わせなくてはいけません。
そして、このメニューをみんなが取ると、時間がかかるため不満足の原因になりますし、後は、お店のオペレーションもいっぱい入るとグジャグジャになりますね。
そこで、まず売れない高い値付けをします。ただし、いずれ名店になるので、名店になった時点で、目的意識を持ってきた人が買ってもいいギリギリの高い価格を付けます。これがポイントです。
繁盛店は繁盛する前提で強い値付けをします。逆に売れない人は売れないのではという恐怖心から低い価格を付けます。この気合が勝負を二分します。よく商品開発すると、売れなければいけないと思っている人が多くいると思うのですが、実は最初から売れる必要はありません。名店になれば自ずと売れるわけですから。
ストーリーある名店を作ろうと思った時は、最初に異常に売れますとオペレーションが崩れますし、みんなが頼むとありがたみがありません。情報は発信することに意義を見出す人から流さないと、情報の価値自体が無くなります。だからこそ、こういうアイテムというのは売価を高くした方がいいのです。
ただ、高いにふさわしい部分というのは入れておいた方がいいですよね。そこの仕掛けをどうしたらいいのかの話はまた別として、私のイメージとしては、土鍋で炊くと15分から20,30分かかります。
お客さんが来てから捌き始める鰻の名店『石橋』のような感じです。逆に言うと土鍋カレーがいきなりすぐ出てきたら面白くないではないですか。
その間にお客さんはヒマになってしまうので、一番いいのは、その間にお鍋をくつろげればいいわけなので、カレー屋さんですが、サラダの八寸や階段のサラダや前菜などを出したら印象に残るし、「待たされるも価値のうち」そんな感じで待つ楽しみになるでしょう。

カレーを食べた後に角煮でも入れて、スープを入れるとか、ご飯を余らせてターメリックライスは持ち帰ることが出来るようにするのも楽しいでしょう。そういう風に繁盛店はストーリーを作っていくわけです。ただ、しょっちゅう行く人にとって、待たされるのは苦痛以外の何物でもないので、電話して、頃合いのいい頃に作っておいてもらうわけです。それが常連らしくてまたいいですね。

 最初は誰でも「郷に入れば郷に従え」で店のルールに合わせるでしょう。
段々慣れてきて、スタッフと人間関係が出来て、わがままを言ってみます。そこに個別対応があり、新規客と常連の区別がされます。そこまで通いつめていただく通な客を育成するのも、店の役割なのです。そういう店が、商圏をクロスオーバーさせるのです。





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Last updated  2023.11.29 10:09:04


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