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吉田なさこう

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chariza @ Re:10年☆(06/08) お久しぶりです~。 もう先月のことなの…
小山千鶴 @ おめでとうございます\(≧▽≦)/ 凄い! 3500gを超えているんですね…
*☆*:;miyabi*☆*:; @ こんにちは。 お久しぶりです。久しぶりにブログにきた…
姥3 @ おめでとう~~~~!!! 大変ご無沙汰してますよ~~! まこと…
hirasol123 @ Re:いきなり出てきてごめーん、まことにすいまメーーン(10/16) ふふふさすがなさこうさんの子だよ。 ス…

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着たい服


今までに作ったもの


助産院のススメ


1.助産院を選んだわけ


2.初めての助産院


3.2度目のマタニティーライフ


4.助産院派 OR 病院派


今月のオススメ本 バックナンバー


ママへ100の質問


小説 once 第一章(九州編)


once 1 俺達の今


once 2 私の旅立ち


once 3 破壊の衝動


once 4 会いたい


once 5 始まる運命


once 6 最低な晴天


once 7 二人の過去(1)


once 8 二人の過去(2)


once 9 二人の過去(3)


once 10 終わりとそれから


once 11 10年後のデート


once 12 どん底の思い出


once 13 27歳のお姫様


once 14 夕焼けの観覧車


once 15 不実な男


once 16 流れ星のピアス


once 17 妖艶な策士


once 18 10年の距離


once 19 航空券


once 20 知られた秘密


once 21 秘められた過去(1)


once 22 秘められた過去(2)


once 23 秘められた過去(3)


once 24 秘められた過去(4)


once 25 秘められた過去(5)


once 26 秘められた過去(6)


once 27 掴んだ手


once 28 願掛け


once 29 昨夜の記憶


once 30 抱けない女性


once 31 三日月と涙


once 32 先輩は先輩


once 33 伝わる気持ち


once 34 痛む心


once 35 巨大な屋敷


once 36 朝子の告白


once 37 有芯の告白


once 38 大木宏信


once 39 傘の人


once 40 不良たちの誘惑


once 41 たった一人の救世主


once 42 感謝表明


once 43 堰を切った思い


once 44 太陽のような彼女


once 45 惹かれ合う宿命


once 46 坂道


once 47 さよなら


once 48 素直な唇


onse 49 忘れるために


once 50 悲しい顔


once 51 傷つける瞳


once 52 こんなに愛してる


once 53 本当のキス


once 54 愛に満たされて


once 55 Body language


once 56 空腹


once 57 幸せな笑顔


once 58 疑惑の視線


once 59 嫉妬、悲涙


once 60 暗くなりゆく道


once 61 今日という日


once 62 冷水


once 63 俺だけを愛して


once 64 失言


once 65 非情な電子音


once 66 別離の朝


once 67 決意


once 68 絶望と希望


once 69 泣き虫


once 70 キスマーク


once 71 奇跡


once 72 お前の責任


once 73 再会


once 74 祈り


once 75 雨


once 76 銃声


once 77 Love is over


野口嘉則 「鏡の法則」


小説once あらすじ


小説once第二章(北陸編)


2-1 タンポポ


2-2 プレゼント


2-3 半年


2-4 着信


2-5 初恋


2-6 苦渋


2-7 悲しみの旋律


2-8 後輩


2-9 自嘲


2-10 前に


2-11 SOUP


2-12 解雇


2-13 元カノと煙草


2-14 優しくする理由


2-15 顔


2-16 思い出


2-17 SevenStars


2-18 ブレスレット


2-19 川面


2-20 斜陽


2-21 言葉にならない悲鳴


2-22 今、ここで


2-23 影


2-24 不安定


2-25 昨日までの世界


2-26 夏祭り


2-27 最初の花火が上がる時


2-28 捨て台詞


2-29 鏡


2-30 人攫い


2-31 先輩として


2-32 後輩として、男として


2-33 闇の中から


2-34 腕輪


2-35 希望の光


2-36 一つの別れ


2-37 地獄に落ちても


2-38 切れ切れになった希望


2-39 決別


2-40 見えない壁


2-41 辻褄合わせ


2-42 篤の怒り


2-43 破綻する心


2-44 どうしても好き


2-45 鋭い眼光


2-46 たった一人


2-47 クロゼット


2-48 くろぽんとお星様


2-49 いちひとの変化


2-50 守りたい人


2-51 抗議の声


2-52 灯台、下暗し


2-53 手当て


2-54 いいわけない


2-55 突然の告白


2-56 同じ絶望


2-57 心理戦、逃走


2-58 思わぬ誤算


2-59 非常事態


2-60 ショートした理性


2-61 嘘つき


2-62 すれ違う想い


2-63 ありがとう、先輩


2-64 終わり


2-65 愛さない


2-66 掴むべきもの


2-67 最後の笑顔


2-68 子離れと彼女


2-69 元カノと人妻


2-70 完全敗北


2-71 塵


2-72 旅立ち前


2-73 全てを掛けて


2-74 振り返らない


小説once


小説once第三章(長野編)


3-1 離婚届


3-2 海のお星様


3-3 昼下がりのリビング


3-4 突然の電話


3-5 遠い太陽


3-6 ケンサヤク


3-7 対立


3-8 先輩の親友


3-9 言ってくれ


3-10 幸せになどできない


3-11 悪人面の王子様


3-12 悲しい思い出


3-13 たとえ話


3-14 篤の企て


3-15 背徳の夜、決意


3-16 おまじない


3-17 新たな危機


3-18 花


3-19 あなたのことを


3-20 溜め息


3-21 厄日


3-22 災厄の果てに差す光


3-23 疑惑


3-24 母の祈り


3-25 最後のお願い


3-26 必然


3-27 温かみ


3-28 妙な組み合わせ


3-29 健二郎の誘い


3-30 ノンストップトーキングドライブ


3-31 『運命』


2007.06.23
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カテゴリ: 小説[once]
第一章&二章は こちら


***32*** 

有芯は自分の中で、段々といちひとに対する意識が変わっていくのを感じ、不思議な気持ちになっていた。

こいつは確かに朝子と篤の子だが、しかしそれ以前にいちひとという名前の、1人の人間なんだと思えるようになったのだ。

俺はこいつを人間として扱っていなかったんだ。子供の扱いは苦手だが……人間の扱いなら何とかなるかもしれない。

そう考え、妙に吹っ切れた気がした有芯は、いちひとに少し申し訳ない気持ちがした。気楽に接してみると、いちひとははきはきと話すし、頭の良いいい子だと分かった。有芯は会ってから初めて、いちひとと過ごすのが楽しいと思えるようになっていた。

目的のキャンプ場にやっと着いたのは、夜の九時を少し回った頃だった。辺りには小さな灯りがちらほらあったが人影は全くなく、杉や松の木が高く茂る林に囲まれたそこは、まるで小さな公園のようだった。

「やっと着いた……!」

有芯がほっとして小さく叫ぶと、いちひとは「やったー! おなかすいた」と言ったものの、「ちょっと暗いね~」と不安そうな顔をした。



「はぁ~」

大きな溜め息をついた有芯に、いちひとはニコニコと嬉しそうに言った。「ね~ね~、早く火をつけようよ!」

有芯は引きつり笑いをした。「あーーー……、点けなきゃダメか?」

「暗いもん! ねぇねぇ早く!」

「………分かったよ! よし、キャンプファイヤーだ!」

有芯は腹をくくることにした。既に目的地の目と鼻の先まで来ている。篤は、おそらくまだ朝子の居場所を知らない。こいつを急かすとろくなことにならないのは経験済みだし、ここでのんびりするのもいいか………。

有芯はいちひとと一緒に松ぼっくりを探し、燃やせそうなものを車内からも車外からもありったけ集め、そのゴミの山を二つに分けて、一つに火をつけた。

燃え上がる炎に歓声を上げるいちひとの横で、有芯はやきそばを作った。玉ねぎを切っていると、いちひとがいつの間にかやきそばの袋を開けてくれていた。有芯の顔から笑みがこぼれる。

「ありがとう」

「だっていつもお手伝いしてるもん」

はにかんだいちひとに、「そうか、えらいな」と言うと、有芯はまた玉ねぎを切りだし、「ちょっと水、汲んできてくれないか?」と頼んだ。



「できた!」

「やった!」

二人は顔を見合わせ、「おっしゃぁ!」「わーーいわーい!」とそれぞれ歓声を上げた。ホウ、ホウ、ホホホホ……と、フクロウの泣き声がして、一瞬二人は黙って空を見上げたが、また顔を見合わせると吹き出し、一緒に「食うか!」「いただきまーす!」と言い、もそもそと食べ始めた。

「おお、久しぶりの料理にしちゃ上出来じゃねぇか!」

機嫌よく食べながらそう言ったところで、有芯はいちひとが何も感想を言わないことに気付き顔を上げた。すると、いちひとが無言で泣いている。



「………」

さっきまではしゃいでおしゃべりだった小さな男の子が突然泣いているので、有芯は慌てた。「大丈夫か?! どっか痛いのか?! それともまずいか?! 水か?! 喉につかえたか?!」

まくしたてるように聞く有芯に、涙を止められないままいちひとは顔を上げた。

「違うよ……やきそばおいしい」

有芯はいちひとの背中を擦りながら、今度はゆっくりと聞いた。「じゃあ……どうして泣いてんだ?」

いちひとはしばらく黙って泣いていたが、やがて真っ赤な目をまっすぐ有芯に向け、言った。

「ママとパパと、一緒に食べたかったよ……! 前は、一緒に食べたもん………」

そこまで言うと、いちひとは息を震わせ、ぼろぼろと大粒の涙をこぼした。

有芯は言葉を発することができなかった。

自分の存在が、この子のほんのささやかな望みを奪い去ってしまうんだと思った。

彼は必死で、自分のわががまの結果泣いている子供にかけてやれる言葉を捜した。しかしどの言葉も、目の前で泣いているこの子の心を穏やかにはしないだろうと彼は思った。ぽたぽたと炭っぽいやきそばに、しょっぱそうな水滴が落ちる。

有芯は、言い訳のように浮かんできた全ての言葉を頭から押し出し、真っさらな心でやっと言葉を選んだ。

「そうだよな。………次は、次はきっと……ママと、パパと……食べような」

親がいなくなる寂しさを、俺は知っているのに。この子にこんな思いをさせているのは、他でもない俺だ―――。

彼はそっといちひとを抱き締め、頭を撫でてあげた。ちいせぇな、細いなぁ……抱えきれなくなりそうな苦しょっぱい思いを持て余しながら、有芯は思った。

この子と朝子を、これから先何があろうと死ぬまで守ろう、と。









この調子じゃブログタイトルを「日常時々小説」に変えなくちゃならないかな?!(^-^;)



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Last updated  2007.06.23 18:41:14
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