文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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Aug 22, 2010
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カテゴリ: Tomorrow is another day.


松山市の話だった。主人公は、いわゆる第二地銀の愛媛銀行。

松山市役所が松山城のロープウェイ乗り場に県外からの観光客向けのアンテナショップを設営し、愛媛銀行がショップの運営をおこなう。
ハードは行政、ソフトは民間銀行だ。

去年11月下旬に松山市へ帰ったとき、ちょうど開店準備中だった。いま調べたら、去年12月6日が開店日だ。

地域産品の市場拡大のような仕事は、ほんらいは商社の守備範囲ではなかったか。
それに手をつけないことに、いささか忸怩たるものを感じた。

だが、勤務先の商社で、愛媛県の地域産品の域外拡販はとても手がけられない。
そもそも松山市に事務所を置いていない。
むかしは置いていたが、駐在者がひとりとアシスタントの女性がひとりだけ。とてもこんな仕事はできない。

企業と企業、事業と事業の間に入るバルク商売 (=量で勝負するビジネス) の業態として成長してきたので、こまごました商品の育成は苦手だ。
この分野では、コンサルタントとしてさえ機能すること能 (あた) わず。

地方銀行の場合、商流そのものでは商売にならなくても、それが融資先拡大のきっかけになればいいわけだし、地域活性化がそのまま業容拡大につながる業態だ。


日経 Marketing Journal (流通新聞) 平成22年8月16日1面


≪地銀、地域の 「食」 育む
愛媛銀、アンテナ店運営仕切る
―― 融資先開拓の重点に


 地域の食材は地方銀行が育 (はぐく) む――。地銀が農林業や地場の食品業界との取引を強化している。
製造業を中心に資金需要が低迷し、新たな取引先の発掘を急ぐ地銀、小売業や外食店といった販売先の開拓や紹介を地銀に期待する農業・食品業界、双方の思惑が一致。
地銀は 「農」 や 「食」 を今後の成長分野と位置付け、地域経済再生の切り札に据える。

 8月上旬、松山城 (松山市) の近くにある愛媛県産品のアンテナ店 「えひめイズム」 は観光客や地元客でにぎわっていた。
しゃれた店内には地元企業75社の食品や工芸品、日用品など660品がずらり。
市が昨年12月に開いたが、品ぞろえや店の運営などは地元の第二地銀、愛媛銀行が一手に引き受けている。

 同行感性価値創造推進室 (感性室) の室長で、アンテナ店の仕掛け人、三宅和彦氏は 「愛媛の逸品を全国に発信する拠点」 と位置付け、「実力はメジャー級なのに知名度はマイナー級な商品ばかり集めた」 と話す。
開発段階から企業と取り組み、売れる商品に育てるインキュベーター (孵化器) の役割も持つ。

 感性室は同行が昨年5月に 「銀行の殻を破る」 (中山紘治郎頭取) ために設けた販路開拓に悩む取引先の “相談所” だ。
地域経済が低迷するなか、地元企業の業容拡大を後押しし、融資など銀行の本業につなげる効果を同室は期待されている。
これまで売れなかった理由は何か。商品の名称か、包装デザインか。
検討会議には感性室が紹介したデザイナーやコピーライターも加わる。

 設置から 1年3ヶ月。販路開拓では成功例も出始めた。

 ミネラルウオーター 「竜馬の水」 (350ミリリットル 100円) は以前、製造販売元のぞっこん四国 (松山市) と似た 「ぞっこん水」 という名称だったが、販売が低迷。感性室の協力を得て4月に名称と包装デザインを変更。
取水する四国カルストが坂本竜馬脱藩の道であることを包装に載せ、物語性を持たせた。
刷新後は西日本高速道路のサービスエリアなど納入先が5割増えた。

 ミカンジュースの販売会社、じねん (松山市) は日本航空の国内線ファーストクラスで出される飲み物の座を射止めた。
瀬戸内海の中島で育てたミカンの最良品だけを材料にしたジュース 「朱光 (あかり) 」 だ。150ミリリットル入り 750円と高価で販路は限られていたが、「独力ではつかめない大企業との接点を銀行が作ってくれた」 (じねんの佐伯清社長)

 有高扇山堂 (愛媛県四国中央市) が えひめイズムに置いた水引のはし置きはホテルオークラ東京内のレストランに採用された。

「地元に密着した地銀ほどプロデューサーに向いているところはない」
と力を込める三宅氏は実は経済産業省出身。
官僚時代は主に中小企業政策を担った。

「売り込み交渉役は買って出る」。
銀行マンとしてその思いを実行に移している。

 同じ愛媛県を地盤とする伊予銀行も今春からサントリーグループと連携し、取引先の食品メーカーの全国進出を後押ししている。

7月には同グループの外食会社、ダイナックの居酒屋 「咲くら」 にミカンジュースを材料に使った 「愛媛ハイボール」 がお目見えした。
伊予銀の取引先の食品会社が食材を提供した。

「地域の 『いい食材』 を最も知っているのは地銀。その情報がバイヤーの役に立つ」 (伊予銀・法人営業部の松下大介課長代理)
伊予銀はサントリーグループ関連会社の社員をかんきつ農園や漁協に案内し関係を深めた。

 地方の中小企業が高付加価値の商品を売り込んでも
「価格以外の点は小売り側に評価されず空しく帰ってくることばかり」 (愛媛県内の食品会社)
だが地域を代表する地銀からの話なら小売りも 「聞いてみようという気になる」 (同) 。「売る地銀」の役割は一層大きくなりそうだ。

■ 農家や食品業者 融資先開拓の重点に ■

 地方銀行はメガバンクとの競争激化、製造業を中心に融資の伸び悩みなどに直面している。
一方、デフレや食の安全・安心に対する消費者の関心の高まりなどから、小売り・外食業者は信用できる食材を求めている。
農家や地場の食品業者は販売先の開拓を進めたい。

 三者三様の課題があるなか、地銀は 「農」 や 「食」 を成長分野と位置付け、ブランド化の推進、販路の開拓・紹介などの支援を通じて業容拡大を狙う。

 愛媛銀行の中山紘治郎頭取は
「地域経済の回復が遅れるなかで、銀行が 『商品開発』 『販路開拓』 の支援で地域経済を引っ張っていく」
と強調している。≫



満足に商品化されないのを昔から残念に思っている愛媛県産品がある。
愛媛県内子町 (うちこちょう) 小田 (おだ) の釜揚げウドンだ。

山間部だから、大豆と椎茸で出汁をとる。
醤油色の濃いつけ汁に、卸した柚子や生姜、あるいは胡麻で香りを添える。
麺は、讃岐うどんのように腰はなく、やわやわしている。これをするするいただく。

田舎うどんである。

JA小田が商品化したものがあるが、包装に 「売ろう」 という気がまるでない。
松山空港にも置いてない。

「えひめイズム」 が、小田うどんを全国区に送り出してくれないだろうか。
内子町小田は、わたしの父の里である。





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最終更新日  Aug 22, 2010 04:54:41 PM
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