
あれ?なんでいきなり飲んでるのかって?いや、朝食後、美しい海に飛び込んだわけよ。よっしぃは海女のように深いところでがんがん海ぐタイプなので、浅瀬の途中にあったくろい物体の塊をこえようと。浅瀬を歩いて、深みへ泳ぎだしたことたった3かき。
この旅最大の悲劇がよっしぃをおそった・・・
いったぁあああああああああい!
その痛みたるや、針に刺されたレベル以上、さらに、なんかじんじんと変な痛みが熱を持って指先から襲ってくる。
ひぃいいいい・・・
親指を「いえーい!」してるみたいに、突き立てたまま、変な泳ぎでなんとか波打ち際にたどりつくと一目散にテラスに走る。
「いえーい!」しながら小走りのアラフォー・・・みじめだ。
ぎゃああーーー、なんか変なとげが刺さってる!いやーーーーー!これはなに?これってうわさのタイのウニ、ガンガゼではないか!?
「ど、どうしたのよっしぃ?」
あわてて駆け寄る、ちーさん親子。
「その黒いところ、ガンガゼの集団だーー!」
「まじ?」
説明しよう。恐ろしく透明な海の波打ち際から深い方に行く途中に、岩場がなんとなくみえて、そこに黒々とした真っ黒クロスケミみたいなやつが固まって生息していたのであるよ。これが刺されると大変なことになるという長ーいとげのタイのウニ、ガンガゼなのだ。
「うわー!どうしよう。めちゃくちゃいたーい!」
そういってるのに、親指をイエーイと立てているので、信憑性が薄い。さながら絶好調だ。
「ホテルの人にマナオ(ライム)もらって来よう!」
というわけで、ホテル経営の家族のいる小さなおうちへ。すると、今朝の朝食担当の長髪のイケメンが「どうしたでげすか?」と出てきた。
しかめっつらでイェーイ、と親指を立てている女を見て、奴は下を向いて吹き出してしまった。こらっ!好きでイェーイ!ってやってるわけじゃないからな!
「ここ!ガンガゼ!」
しまった!刺された、というタイ語を失念している。が、奴はそのなぞのとげを見て「ああ、やられたんだな」という表情。
「マナオ、もってくるでげす」
ガンガゼにはマナオ汁。これがタイでの治療なのだ。
イエーイ親指をマナオ汁のたまった更に時々つけながら、「君たちは泳いでおいで」と二人に告げ、もう飲むことに決めたよっしぃ・・・。
しばらくすると、このホテルの裏山に住む、ちーさんの友人が訪ねてきた。いきなり高島忠夫家族のように、親指を突き立てているよっしぃを見て、彼は戸惑ったが、「ちょっとまってろ!ビネガー買ってくるぞ!」とバイクを走らせてくれた。
ううう、ありがたい。
イギリス人のナイスオールドマンである彼は、ビネガーを皿に入れつつ、衝撃的な発言をよっしぃにぶつけた。
「僕は夜中にこの海で泳いだりするけど、一度も刺されたことないよ。初めてのサムイでたった3かきでガンガゼに刺されるなんて、信じられないよー!」
ええええ?夜中に泳いでもさされないのなのか?あんなにうじゃうじゃガンガゼいるのに。
ますます不運に落ち込む。
「もう海で泳ぐの嫌だろうからさー、僕が管理している友人の別荘のプールで泳ぎなさい。」
まじですかー?ありがとー・・・。しかしその親切なちーさんの友人によっしぃは 「あなたは、チャールズ皇太子に似ていますね・・・。」 と余計なひと言を言ってしまい、表情を曇らせてしまったのだった。
「よっしぃ・・・。イギリス人はチャールズ皇太子はあんまり好きじゃないから、似てるって言われると、いやなんだよ。」
「いやー、それはすまん、いや、もちろんあなたの方がもっともっとハンドサムでげすよ!」
時遅し、そして、言っても言っても、マイナスに向かうだめなフォロー。
親指立ってるだけに痛い。いや、刺されたのが中指じゃなくてよかった。
にこっと微笑まれたので、「いえーい」と指を立てたままぺこり、と頭を下げる。すると・・・
「はーい、どっからきたの?」
と英語で話しかけられた。
むうっ!こういうシチュエーションはあやしい。ちーさんは母子はすたこらさっさと先に進もうとするが「じゃぱん」と答えるよっしぃ。
「私日本人ですよぉおおお!!!」
「えっ?」
その一言でやっとちーさん母子も足を止めた。
「最初はどこの人かなー?って思って見てたんだけど、おじぎしたから日本人だなって思って。」
てへ。癖なんですね。おじぎ。
「いやー、びっくり。この辺のビーチで日本人なんて絶対会わないから、感動しちゃったー!」
聞けば彼女、バンプービーチからポープット方面に15分ほど歩いたビーチ沿いのコテージ集落に息子さんと二人暮らし。たまに翻訳などして生計をたてているそう。もちろん、彼女もこのように泳いで過ごしているが、ガンガゼにさされたことなどないそうな。
そのへんはちーさん仕事がかぶるということで「明日、うちにお茶でも・・・」と、とんとん拍子ではなしがまとまってしまった。明日はいきなり、お宅訪問であるよ。
いやー、誰もいないビーチでいきなり日本人のスレンダー美女と出会うとは、これまた旅って不思議。
そして、夜中にほぼ毎日泳いでもガンガゼに刺されないイギリスオールドマンがいるというのに、はじめてのサムイで、たった3かきで刺されるって、これまた旅って不思議(号泣)。
というわけで、そのままわれらは、昨年ちーさんがご飯を食べに来た、という海辺のレストランへ、ランチに向かうのだった。
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