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コナン・ドイル(阿部知二訳)『バスカヴィル家の犬』~創元推理文庫、1960年(1996年51版)~ シャーロック・ホームズシリーズの長編第3作(作品順番でいえば『緋色の研究』『四人の署名』『シャーロック・ホームズの冒険』『回想のシャーロック・ホームズ』に続く第5作)。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。――― 「バスカヴィル家の犬」の呪いが伝わるバスカヴィル家の当主、サー・チャールズが、不可解な状況で死亡した。何かから逃げたような足跡を残し、しかし外傷などもなく絶命した彼のそばには、大きな犬の足跡があったという。 チャールズの甥にあたるサー・ヘンリがバスカヴィル家に戻る頃、関係者のモーティマー医師が、ホームズに事件の報告にきた。事件に興味をもったホームズは、ヘンリの身辺を警戒するが、何者かがヘンリを尾行していることをつきとめる。さらに、ホテル滞在中のヘンリの靴が立て続けに紛失するという奇妙な事件も起きていた。 いよいよバスカヴィル家に戻るヘンリに、多忙のホームズにかわりワトソン博士が同行する。邸宅滞在中に経験した奇妙な出来事などを、逐一ホームズに報告するが……。――― 過去の呪いを伝える伝承、サー・チャールズを襲った奇怪な出来事、そしてサー・ヘンリを狙う何者か、執事の夜中の奇妙な振る舞い、荒野に轟く犬の鳴き声、脱走した凶悪犯と、サスペンスフルな描写に満ちた作品です。 密室のような不可能状況が提示されているわけではなく、サー・ヘンリが邸宅に到着してからも奇妙な出来事はいろいろ起きますが、じわじわと雰囲気を盛り上げていく感じで、しばらくはゆっくりと読み進めました。が、11章から急展開し、そこからは夢中で一気に読み終えました。 最終章でホームズが真相を語るシーンでは、いろいろな伏線が回収されて見事でした。 これは面白かったです。(2022.03.17読了)・海外の作家一覧へ
2022.06.26
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Beverly Mayne Kienzle (dir.), The Sermon, Turnhout, Brepols, 2000, 998p. ビヴァリー・メーヌ・キエンズル編『説教』(西欧中世史料類型第81-83分冊)A-VI.B A.文献史料 VI.宗教・道徳生活関連史料 B.説教活動 (1.一般的諸問題 2.説教・聖書講話の集成 3.語られない説教 4.説教術書 5.例話集)* * * 久々にレオポール・ジェニコが創刊した叢書『西欧中世史料類型』からの紹介です。今回紹介する第81-83分冊は、説教史料(そして関連する説教補助手引き)について、膨大な文献目録、、一般的性格を示す序論、そして初期中世から後期中世までを時代別に、また地域別に論じる諸論文から構成されます。 本書の構成は次のとおりです。(拙訳。連番は便宜的に付けました) ――― 献辞 編者前書き 文献目録(George Ferzoco) [01]序論(Beverly Mayne Kienzle) [02]中世ユダヤ教説教(Marc Saperstein) [03]初期中世説教(Thomas N. Hall) [04]12世紀修道院説教(Beverly Mayne Kienzle) [05]12世紀学校教師と聖堂参事会員の説教(Mark A. Zier) [06]1200年以降のラテン語説教(N. Bériou) [07]イタリアにおける中世説教活動(1200-1500)(Carlo Delcorno, trans. by Benjamin Westervelt) [08]古英語の俗語説教(J. E. Cross) [09]中英語説教(H. L. Spencer) [10]古北アイスランド語説教(Thomas N. Hall)[11]フランス語説教、1215-1535年(Larissa Taylor) [12]スペイン、ポルトガル、カタルーニャにおける俗語説教活動(Manuel Ambrosio Sánchez Sánchez) [13]中世におけるドイツ語説教(Hans-Jochen Schiewer) [14]結論(Beverly Mayne Kienzle) 写本索引 ――― 40頁程度の小著もある本叢書ですが、本書は全体で998頁と、おそらく叢書のなかで最長の一冊。文献目録だけで120頁以上あります。 序論と結論を除く各章は、I.定義、II.発展、III.普及、IV.解釈の諸問題、V.校訂版、VI.歴史的関心、VII.サンプルテクスト、という叢書に共通する構成を持ちます(一部順番が違ったり小見出しが違ったりしますが)。序論は中世説教史料の定義と概観を提示しており、中世ヨーロッパの説教を勉強するうえでは必読。結論は、各章のIV.解釈の諸問題とVI.歴史家にとっての関心を整理しており、この整理から各章のポイントをつかむことができます。 ごく簡単なメモですが、このあたりで。 学生時分から(関心部分については)何度も読んでおり、今回も全体に目を通したわけではありませんが、ようやく記事が書けました。(2022.03.13読了)・西洋史関連(洋書)一覧へ
2022.06.18
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梨木香歩『裏庭』 ~新潮文庫、2001年~ 梨木香歩さんによる長編小説。第1回児童文学ファンタジー大賞受賞作とのことです。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 両親がお店で忙しいので、照美は友達の綾子の家によく行っていた。そして、適度な距離感で接してくれて、いろいろな話をしてくれる綾子のおじいちゃんを好きになった。 バーンズ屋敷の裏庭の話には、わくわくしていた。ある日、お母さんに思いを伝えようとしても聞いてくれなかったとき、照美は学校に行かずにバーンズ屋敷を訪れた。そして、おじいちゃんが話してくれた鏡を見つけると、「裏庭」にたどりついていた。 「裏庭」では、3つの国が分かれて、大きな竜の化石を分け合っていた。この国を元に戻すには、そして照美(裏庭ではテルミィ)が元の世界に戻るには、竜の化石をすべて集めてもとに戻さないといけない。どの国にも属さないコロウプのテナシや、スナッフとともに、テルミィは化石を取り戻すための冒険に出る。 ――― 裏庭でのテルミィたちの冒険と、おじいちゃんが幼い頃にバーンズ屋敷に住んでいたレイチェル、そして照美のお母さんたちそれぞれの物語が交錯しながら、物語は進みます。 自分の思いを反映する服を選んだテルミィは、それによって助けられることもあれば、大きな試練を迎えてしまうこともあります。照美にしっかり向き合えていなかったお父さんやお母さんにもそれぞれの事情があったり、そしてお店の常連の夏夜さんの話で、いろんな人生がつながったりと、「児童文学ファンタジー」というイメージで想像するよりはるかに深い物語だと感じながら読み進めました。 久々の再読ですが、良い読書体験でした。(2022.02.27読了)・な行の作家一覧へ
2022.06.11
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筒井康隆『愛のひだりがわ』 ~新潮文庫、2006年~ 筒井康隆さんによるジュヴナイルものの長編小説。 舞台は、治安が悪化しいたるところで争いが起こっている日本。 主人公の月岡愛さんは、小学生。早くに父がいなくなり、母親とともに料理店で寝泊まりしながら働いていましたが、その母も病死してしまいます。料理店の男に母が残したお金も奪われ、そこで仕事しながらなんとか暮らしていました。 彼女は、過去にグレート・デーンという種類の獰猛な大型犬に左腕をかまれ、左腕が動かなくなっていました。しかし、その愛嬌から、店では客に人気者でした。 そんな愛さんが、父親の行方を捜しに、家出をして旅に出ます。犬と話せる愛さんは、まずは犬のデンとともに町を出ます。自警隊にデンが攻撃されてしまってからは、旅の途中で出会ったご隠居さんにいろいろなことを学びながら旅をともにしたりと、様々な人々が彼女を支えます。もちろん、愛さん自身も、学ぶことの重要性を感じ、貪欲なまでに学んでいきます。 安定して愛さんを支えるご隠居に、乱暴な男と暮らしながら素晴らしい詩を作っていた志津恵さんなど、魅力的な人物にあふれています。悪者との決戦もあり、わくわくしながら読み進めました。 ただし、あたたかいばかりの物語ではありません。現実を突きつけるようなラストは印象的でした。 あまりに面白くて、病院の待ち時間であっという間に読んでしまいました。 良い読書体験でした。・た行の作家一覧へ
2022.06.04
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