全4件 (4件中 1-4件目)
1
![]()
神崎忠昭『新版 ヨーロッパの中世』~慶応義塾大学出版会、2022年~ 2015年に刊行された初版(記事はこちら)に「知の世界」の章を加えるとともに、初版にはなかった文献案内も補足した新版です。 本書の構成は次のとおりです。―――イントロダクション第1章 大いなるローマ第2章 古代世界の終焉とゲルマン人第3章 フランク王国第4章 隣人たち――交流と緊張第5章 鉄の時代――混乱と再編第6章 皇帝第7章 教皇第8章 修道士第9章 英仏の葛藤第10章 都市第11章 新しい宗教生活第12章 知の世界第13章 国民国家第14章 それぞれの国制の模索第15章 隣人から一員へ第16章 中世後期の教会第17章 衣食住第18章 人の一生第19章 宗教改革第20章 近代へエピローグ文献案内――さらに学びたい人のために人名・事項索引図版出典一覧――― 概説書なので細かい紹介は省略して、完全に自分のためのメモをしておきますが、特に分かりやすかったのは、教会行政に関する役職と品級の違いを簡潔に指摘する140-141頁。7つの品級(司教、司祭、助祭、侍祭、祓魔師、読師、守門)は叙階の秘跡によるもの、大司祭や大助祭は参事会教会の長(別事例もあり)を意味する、教会行政による役職。これは勉強になりました。 冒頭にも書きましたが、初版に参考文献目録がなかったのが残念だったので、今回文献案内が追加されたことは嬉しいです。単に章ごとの参考文献を挙げるだけでなく、総論として、論文の書き方に関する基本文献の紹介から始まり、研究入門、概説・事典等、総論、翻訳史料、データベースについても紹介があるのが有益です。(2022.09.17読了)・西洋史関連(邦語文献)一覧へ
2022.09.23
コメント(0)
![]()
泡坂妻夫『乱れからくり』~創元推理文庫、1993年~ 日本推理作家協会賞受賞作の長編ミステリです。伝法肌の宇内舞子さんと、宇内さんの会社の社員になりたての勝敏夫さんの2人が活躍します。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。――― ボクサーの夢をあきらめた勝敏夫が就職した先は、宇内舞子1人が社長をつとめる経済系の探偵社だった。 最初のミッションは、舞子とともに、玩具商「ひまわり工芸」の馬割朋浩の妻を尾行することだった。依頼主の朋浩が帰宅後も、依頼どおり尾行していると、2人は空港に向かい始める。その道中、隕石が落下し、2人の車は炎上、朋浩は死亡してしまう。 その妻―真棹を助ける中で、敏夫は彼女に特別な思いを抱き始める。 そんな中、真棹の息子は大量の睡眠薬を飲んで死亡、その他馬割家の人々が次々に謎の死を遂げていく。――― これは面白かったです。 隕石という不慮の事故のインパクトからの、奇怪な連続死(殺人)という、いわゆる魅力的な謎が満載です。 馬割家の人々が暮らす「ねじ屋敷」の迷路、様々なからくりについての蘊蓄など、興味深いテーマも多く、わくわくしながら読み進めました。 宇内舞子さんの人柄も魅力的です。 良い読書体験でした。(2022.05.29読了)・あ行の作家一覧へ
2022.09.17
コメント(0)
![]()
泡坂妻夫『11枚のとらんぷ』~創元推理文庫、1993年~ 泡坂妻夫さんによる第一長編。奇術サークルを舞台にした短編小説集『11枚のとらんぷ』になぞらえられてメンバーが殺されたという事件の真相を、小説集の作者にして奇術サークルの会長、鹿川さんが挑むという物語です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。――― 公民館創立20周年記念ショウに、奇術愛好家の素人サークル「マジキ クラブ」のメンバーが登場。それぞれ得意の奇術を披露する中、種になる薬品がこぼれたり、ハトが思うように動かなかったり、子どもたちが騒いだりと、なかなかスムーズにはいかなかった。 最後の奇術では、登場するはずのメンバーの女性がいつまでも現れず、しばらくして、その女性が自宅で殺されているという知らせがもたらされる。「マジキ クラブ」の会長にして、実際には演技できない特殊環境での奇術をモチーフにした作品集『11枚のとらんぷ』の作者の鹿川は、現場の様子を聞き、事件は作品になぞらえて起こされたことに気づく。 事件後、世界国際奇術家会議東京大会に出席した中で、鹿川は事件の真相に近づいていく。――― 長編の中で起こる事件は、奇妙な状況での殺人事件がメインで、綿密な伏線から解明されていく鮮やかさがすがすがしい作品。 また、作中作の短編集(奇術の種明かしに挑む11話)も、それ自体面白いですし、また事件全体の鍵にもなっているという凝った作りになっています。 有名な作品でありながら、なかなか読めずにいましたが、この度読めて良かったです。 良い読書体験でした。(2022.05.22読了)・あ行の作家一覧へ
2022.09.10
コメント(0)
![]()
島田荘司『新しい十五匹のネズミのフライ―ジョン・H・ワトソンの冒険―』~新潮文庫、2020年~ 島田荘司さんによる、シャーロック・ホームズシリーズのパスティーシュ長編。 副題どおり、ワトソン博士が活躍する物語です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。―――「赤毛組合」には、ホームズの裏をかく陰謀があった。 黒幕の予想通りの「解決」の後、ホームズは難しい事件が舞い込まないためドラッグ漬けになり、精神病院に入院してしまう。その間に、「赤毛組合」事件の犯人たちは刑務所から脱走し、警察でも行方がつかめなくなる。犯人たちが口にしていた「新しい十五匹のネズミのフライ」という言葉の意味とは。 不在のホームズにかわり、ワトソン博士が真相をつきとめようと奮闘する。――― これは面白かったです。 本書を読みたいがために、先にホームズシリーズを全部読んでおいたのですが、正解でした。(もちろん、ホームズシリーズを読んでいなくても、本書は純粋に楽しめると思います。)「まだらの紐」や「這う人」執筆の裏話が語られるのも面白いですし、プロローグでホームズを罠にはめるための陰謀が語られるシーンも面白いです。 と、ファニーな(笑える)要素も盛りだくさんであると同時に、愛する女性のためのワトソン博士の奮闘や白人上位主義に苦しめられる人々や女性へのワトソン博士のまなざしは印象的ですし、なにより表題の「新しい十五匹のネズミのフライ」という言葉の意味や、犯人たちがいかに脱獄不能といわれる刑務所から脱獄したのか、という興味深い謎の解明も素敵でした。 島田荘司さんには、『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』(光文社文庫、1994年)という、同じくホームズもののパスティーシュ作品があり、そちらも面白かったですが、本作もとても楽しめました。 良い読書体験でした。(2022.05.10読了)・さ行の作家一覧へ
2022.09.03
コメント(0)
全4件 (4件中 1-4件目)
1
![]()
![]()
![]()