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異能者特務機関:TMI 第40話「決着」 不動了痲(G)は拘束をすぐに解いてセレスティアの自動操縦スーツからAdeleにアクセス。これまでのデータの送信を開始する。 「Gとしての力は半分失ったが不動了痲の力を半分得た……これはこれで良いかもしれん」 容姿にコンプレックスのあった五所川原振之助時代、Gになってからは非人間的な銀色のマネキンを思わせる姿をしていた。不動了痲は若く顔立ちは整っている。ギラついた眼と癖で跳ねた頭髪、どれも気に入った。 「なるほど時間停止は異次元干渉の異能……正確には時間停止では無く対象を異次元に干渉させどちらでもないあいまいな状態で置く。テレポーターのテレポートする瞬間で数秒留めるといった感じか」 不動Gは崩れた前の体を電磁力で組み上げて座っている己の姿を作りスーツの前に置いた。そして迷うことなくエレベーターへ向かって歩き出した。 「セレスティアの目的は……フム、ならば」 医療ポッドのあるエリアに向かう。艦内は驚くほど静かで異能兵士が来る様子も無い。 「今の私は完全に不動了痲だからな。それにセレスティアは幻赫の身内」 エレベーターを降りて医療ポッドのあるエリアに封鎖されている部屋があった。 「ここは確か異能力制限室か。中には……TMIのエージェント二人、あれはフローレンス・フランシスに哿希世美……どれ解放してやるか」 電子ロックを解除する不動G 「!?」 「ブラックヴァリーの!」 銃を構えるフローレンスと哿。 「やめときたまえ。無駄だよ、それに自分は……まぁいいか説明は面倒だ。ともかくここから出てアイスクラーピウスを脱出したまえ。甲板に仲間が待ってるぞ」 「……わかりました」 「あなたはいつか逮捕されますよ」 「そうかい、簡単に捕まってやらねえがな」不動了痲の口調を真似て言う。 二人が去ったのを見届けると医療ポッド室に侵入する。ポッドを起動させるとAdeleにメッセージを送った。 *** セレスティアは目を緑光に輝かせ艦内の人間を見つめていく。 「私を攻撃しようとするものは居ないようですね」 「分かるのですか?セレスティア」 「ええ、異能の応用で。こっちですアナスタシア」 セレスティアは厳重なロックを解除して進んで行く。制止する者はおらず静かに眺めるだけで声すらかけようとしない。 「ちょっと異常じゃなくて?」 「まぁこうなるように仕込みは済ませていたので。邪魔だったのは幻赫本人と直轄の異能兵士とブラックヴァリーでした。それもいません」 「え?あのさっきの若い男は??」 「同志ですよ。さぁこの先です幻赫が甘い言葉で大勢を騙していたものがあります」 防護服に着替えエアロックを解除する。その先には30cm程の立方体が並んでいた。 「この夥しい量の箱は一体……この部屋に漂っているガス?みたいなものは??」 「この中の箱の一つに目的のものがあります。この部屋に漂っているものはR粒子と呼ばれるもの。生身で触れれば取り込まれますよアナスタシア」 「取り込まれる??」 「ナノマシンの改良から偶然生まれた粒子。生物に反応し虹色の光を発し意識の共有融合や変異を促すもの。この粒子はあの例のバクテリアや異能兵士の調整に利用されています。粒子を生み出したのは一人の異能者であり研究者。彼女の脳はこの箱の一つに収められています。他の箱には彼女のサポートをさせるべく異能者の脳が入っているのです」 「そんなこと異常です!」 「幻赫は甘い言葉で世界中の経済的に豊かな者や異能者をこの部屋に誘い脳を取り出してこの装置に組み込んでいたのです。異能兵士の殆どはクローンで幻赫自身もクローンを作り隠しているのです」 「だから異能兵たちはあんな異形な姿に変わっても臆することなく……」 「オリジナルがあれば生き返れると信じているからでしょうね。実際は幻赫がデータを取っているだけです、あの者が更に自分自身を強化するために。次のステージに上がる為に。この装置の事を知っているのは私を含めごく一部の者だけです」 「セレスティア貴女の目的は?」 「中央に置かれている脳が入った箱。アデル・ホワイトが収められている箱です」 「それって……」 「私の大切な人です。彼女を救い、このアイスクラーピウスをふさわしい者に使わせる。その為にここまでやってきたのです」 「そのアデル・ホワイトという人は貴女よりアイスクラーピウスにふさわしいの?」 「ええ、アデルに比べれば私などただの凡人でしかありません」 「それほど……」 「私自身、彼女に生み出されたクローンですからね。オリジナルの私はアメリカでアデル誘拐の際に殺されています。幻赫の手の者によって」 「え、え……そんな……」 「わたしは何人かいるセレスティアクローンの一人です。ささやきの魔女の魔法が通じなかった理由もこれです。既に私のオリジナルは居ないのですから」 「貴女がクローンなら長生きできないのでは?」 「それはとても古い情報ですよアナスタシア。2016年の時点でそれは否定されています。1965年当時に短命と発表されていただけですね。テロメアに関してもいくつかの論文でクローンの短命説には異論が唱えられています。アデルの生み出したセレスティアクローンはむしろ若いまま長寿出来るのは無いかと。実際少女の容姿のままの者もいますので」 「貴女は何も思わないの?クローンであることに」 「生まれ方がオリジナルと違うだけで私は私です。オリジナルのセレスティアとは別人ですし生前のセレスティアの記憶は全員持っているのですが他のクローンと記憶の共有もしていませんので個として一人の人間として存在しています。異能者とただの人間との違いくらいの認識です。アナスタシア、私の事が嫌になりましたか?」 「そんな事ないです!ただあなたの境遇を考えると悲しい気持ちになるというか……」 「後でゆっくりと話しましょうアナスタシア。今はアデルの救出です」 「その箱を持ち出しても彼女の体は無いのでは?」 「ここはアイスクラーピウスですよ。脳移植用の素体ボディくらいあります。オートドクターによるオペと医療ポッドによる治療を行えば大丈夫です。彼女の容姿はAdeleに保存してありますしバイオプリンターで既に素体ボディの調整を行っています」 「あ……ずっと貴女が異能を発動しているのはAIのAdeleとリンクして作業していたのね」 「その通りです。ふふ、アデルが復活した時にはAIの名前を変更しなければなりませんね」 セレスティアはロックを解除してアデル・ホワイトの入った箱を取り出す。 「感じますアデルの脳波を。ええ、抜かりなく準備は進めていますよアデル」 *** テレポートで甲板に出た哿とフローレンス。事情をその場に居たルキナとマイケルに伝える。 「事情は分かった、セレスティア博士の戦闘スーツはまだ無事?それならあたしがハリケーンの壁をぶち抜いてあげるからその隙に連続テレポートで行って。弱まったハリケーンならやれるし!」 ルキナはテントの中にある戦闘スーツの入ったケースを指さして言った。 「アリナは念爆者・幻赫を斃したんだよな?それなら安心してアポート射程範囲に来た仲間をドンドンこの船に呼び込めるぜ後の事は俺たちに任せてアリナを救出したら離脱しろ」 マイケルは栄養ゼリーを飲み干して言った。 「日本支部が心配よ、さっきから來美ちゃんの全体テレパスが聞こえないもの。それに通信も駄目で……」 ルキナは通信機も試みるが反応は無かった。 「虹色の光を見てからだな……アレはアリナか幻赫の仕業か?」 「マイケルさん詳しい話は後程。急ぎますので」「ルキナさんお願いします」 「よーし!!ヴォルテックスバースト!!」 ルキナの空気砲弾を後を追いかけるようにテレポートする哿。フローレンスの腕をしっかりとつかんでいる。 連続テレポートで島にたどり着く二人。 「アリナが倒れてからここまで約3分……まだ大丈夫!!」 フローレンスは自身の生命力を使い切る勢いで異能を発動させる。 「内臓、骨、筋肉、皮膚全て万全……呼吸はしているし私の異能にも反応している……アリナの体に問題は無い。なのに意識が戻らない!!」 「フローレンスさん、護衛艦に戻ってそこから病院に行きましょう!」 頷くフローレンス。アリナを背負い、フローレンスの手を取ってテレポート。連続で繰り返し待機している護衛艦に向かう。 護衛艦に到着するとミカエル・パウマンが出迎えた。 「貴方は……長官の甥の……」 「G.D.IIIのWW副統括ミカエル・パウマンだ。君たちの声は聞いていた。一刻を争う自体では?ここからTOKYOまでテレポートするのは骨が折れるでしょう。私が運んで差し上げる」 「いえ、大阪のKK大学病院でお願いします。僕の親族が教授をしているので」 哿は腕の端末に地図を表示して言った。 「了解です。さぁ私の体に捕まって」 ミカエル・パウマンの背後に浮いていた漆黒の飛行ユニットが羽を広げたように変形し全員を包み込む。 「乗り心地はあまり良くないが我慢して頂きたい」 ゆっくりと浮き上がり音も無く上昇していく。そして爆発的な勢いで加速を始めた。 「G.D.ユニットの内部は気圧の変化は感じないですが加速による揺れは出ます」 「大丈夫です。体調の変化は私が常にチェックしています」 アリナを抱きしめたままのフローレンスが答えた。 *** ―― 「わたしは何もできない」 漠然と感じるエネルギーをどこか遠い所から眺めている。 エネルギーはフローに哿さんにミカエル氏。 フローに抱きしめられているのは情報として認識できる。感触は無く音も匂いも感じない。リアルタイムで夢を見てるような状態。 動かせない、指の一本も動かない。幻赫に全てを込めた一撃を放った後。幻赫の死亡を感じ取った後、わたしは動けなくなった。二人との共有も切れてしまった。 幻赫に最後の一撃を放った後の時間は数分のはず。今の私にはそれが一瞬のようでありとてつもなく長くも感じる。 TMIの塔から膨大な情報が流れ込んで来た。わたしは圧倒されない為に流した。 わたしの中から大きなものが消えた気がした。体の中心にあっていつも燃えていた何かが無くなってしまったような感覚。 きっとわたしは二度とあのような一撃を放つことはできない。屠龍伏虎も理想の形で仕掛けることはもうないだろう。そうする気が無くなってしまったとも言える。 『終夜アリナ』 TMIの管理者の声がする。 『幻赫は討たれあの者の仕掛けた五感を封じる異能も消えました。目覚めるのです』 「そうするつもりなのですが上手くいかないのです」 『あなた自身が真にそう考えていないからです。この次元は肉体というものはありません。意思がここでは何よりも優先されるのです』 「そんなことは……」 『幻赫を討つことだけが貴女の存在意義ではありません。ジェームズの後を継ぎTMIの長官として異能者を導いていくのです。この星のヒトはあまりに未熟。人類が次の段階へ進化するには異能者が必要なのです。異能者共有はその為の鍵です』 「……」 『貴女はまだ成人ではない、少し時間を与えます。ここでの事は記憶から消えます、その時が来ればまた今日の続きを』 「管理者……」 『あれほど強かった貴女も今では年相応の子ですね。それでもジェームズよりは落ち着いていますが。強制的にこの次元からあなたを出します。本来は自分意思で行いこの次元で知識を得てを持ち帰ってもらう予定だったのです』 「わたしは……」 『しばらくの間、ただの終夜アリナとして過ごしなさい。私は塔とジェームズを通じてあなたを見守っていますよ』 「管理者、あなたに一つ質問が」 『いいでしょう言いなさい』 「数か月後に訪れる全世界の危機を乗り越えられるでしょうか?わたしはこの次元で見たのです」 『未来は枝のように分かれています。その中には貴女やジェームズを失ってしまったものもありますがそれも想定済みです。未来は不安定なのです、この発言もまた何らかの影響を及ぼしています。しかしあえて言うのであれば人類絶滅の危機は避けられるでしょう。それがどんな形であれ』 「……そうですか」 『終夜アリナ、そろそろ目覚めなさい』 *** ―日本支部 ブラックヴァリーの襲撃を受け応戦をしていたTMIのエージェント達は苗木來美の超広域テレパスと通信機の故障で連携が断たれ一時的に混乱したがすぐに立て直し支部からすべてブラックヴァリーを排除することに成功していた。 「何が起きたってんだ?」 パイロキネシスのイグネイシャス・ファイマンは目の前のブラックヴァリーを戦闘不能にさせてつぶやいた。 「流れが変わったね……一度本部に戻って皆状態を確認しに行きたいがここを任せてもいいかなイグネイシャス君」 長官ジェームズは弾倉を交換しながら言った。 ジェームズは日本支部長室にもどり椅子に腰かける。念じると本部へと転送された。 転送される一瞬に管理者から念爆者が撃たれたとのメッセージを聞いた。本部の自室の椅子から立ち上がりフロアーに出ると全員が昏倒していた。 「これは……どういうことですかな?管理者よ」 『終夜アリナの発したエネルギーが私を通じ皆に伝わってしまったのです。大丈夫ですただ意識を失っているだけです』 「……ではアリナくんは次の……」 『ええ、ジェームズ貴方の後を継ぐのは彼女です』 「私はイグネイシャス君が選ばれると考えていたのですがね」 『彼も候補ではありました。終夜アリナは杉田幻赫との戦闘中に覚醒、候補に入りそのまま資格を得たのです』 「あなたのいる次元への干渉と認識、異能の次のステージ……カテゴリー7」 『ジェームズ貴方も一時期その位置に居ましたね』 「ええ、ですが幻赫を斃しきれずカテゴリー7の力は二度と発動させることは出来なくなりました……大切な人を亡くして異能者共有の要を失ってしまった……仮に今でも私がカテゴリー7の力を使えたとしても幻赫を斃せたかどうか。あなたはその事すら知っていたでしょうけどね」 『異能の力の極みはカテゴリー6ですが7に到達できるとは限りません。幻赫は7に到達することはありません。他者に対する思いやりや信頼、共感力といったものが重要なのです。カテゴリー7の力は結果を得る力、あなたはあの時自分にとって一番大事な人物よりも大勢の命を救う方を選びなしとげた。その結果が今に繋がったのです』 「私のカテゴリー7としての力はあの時、人類を幻赫から救う為にあったのですね……アリナくんのカテゴリー7は討つ力だった」 『そういう事になりますね』 「アリナくんはこれまで生きてきた人生の目標を成し遂げた。その為のカテゴリー7……その後彼女はどうなりますか」 『彼女にとって幻赫に匹敵する敵が現れない限り再びカテゴリー7の力を使う事は出来ないでしょう。ですが大勢の異能者を共有の力に目覚めさせるきっかけにはなりました』 「この大勢が昏倒している現象……」 『未知の力に対しての恐れは理解することで解消できます。終夜アリナの放った力は私を通じほんの僅かな時ですが本部にいる者と共有した。この経験は大きな可能性の種を蒔いたのです』 「異能者の未来は明るいと考えて良いのですね」 『そうですね。ようやくここまできました』 続く
Jun 28, 2020
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異能者特務機関:TMI 第39話「決戦2」 跳ねあがった幻赫は究極進化薬プロスパーストーンの影響で変形していく。全身うろこ状の皮膚に覆われ手足は杭打ちハンマーを思わせる形状に。 「一発一発が大陸弾道弾ミサイルの威力を持つ爆発打撃連打をくらぇえええええい!!」 亡きがらが残るであろうギリギリの威力を計算し仕掛ける。しかし手ごたえは無くアリナの姿は背後にあった。 「なに……!?」 空中でアリナは幻赫の首に手刀を入れ同時に足を払って弓なりに体を反らせる。そして無防備になった鳩尾に肘を打ちそのまま地面の岩盤に叩きつけた。 「(絶技・伏虎……だと!?)」 火柱が上がる。幻赫自らのエネルギーが行き場を失いアリナの打撃で暴発した。 テレポートで回避したアリナ。火柱の中心に倒れたいた幻赫はゆっくりと立ち上がる。 「奥義・屠龍に伏虎か……だが所詮は対人の技。この究極の存在である儂には通じんぞ!」 「「アリナはそうは思ってませんよ杉田幻赫」」 「フン、その状態でのお前と共有している二人、儂を押しているように考えているようだがそれも時間の問題。このまま戦闘が続けば先に音を上げるのはそちらだ」 「「違います、最初の一撃は貴方が考えているほど甘いものでは無かったのですよ。アリナさんが自らの技術を全てつぎ込んで放った打撃。80%の解放状態でも」」 「あのダメージはもう残っとらん……」 幻赫の鼻から血が滴り落ちてくる。 「まさか……」 幻赫の横にテレポートするアリナ。 反応して爆発拳を放つ幻赫。その拳はアリナに届くことは無く肘から先が消失した。 「!?」 アリナの左手は幻赫の右突きを回し受けで躱した動作をしており、右拳が虹色に輝いているのが見えた。 幻赫には不思議とゆっくりとした動作に見えたが体は動かない。意識だけが加速している。そこでようやく幻赫は自分の消失した右腕が宙に浮いているのが分かった。 アリナの回し受けは手刀で斬撃と化し幻赫の腕を切断していた。痛みは無い、まだ痛みが伝わってきていない。 「どういう事だこれは」 アリナの拳がゆっくりと迫る。 「これは奴らの異能者共有の力か?目の前の虹光の拳は終夜アリナの100%なのか?」 幻赫の予想は半分は当たっていた。 この現象はアリナ100%解放状態&持てる技術の最高峰を拳に乗せ、三人の異能者共有を合わせた結果起きたものであった。 アリナが放ったのは翻浪勁と言われる技術。それは『拳による突きが来るという感覚を消しいつの間にか体に到達していた』というもの。 幻赫に放った翻浪勁は異次元域にまで昇華到達した一撃。相手の時間感覚を狂わせ『到達した』という結果ありきで目の前の光景が展開されている。 「馬鹿な!なんだこれは!!」 幻赫の見ている光景はすでに過去のものでアリナの全力全開+異能者共有の拳は到達している。 「防がねばこの拳は喰らう訳にはいかん」 過去の改変は幻赫には不可能で拳が迫って来るのを察知しながら成す術は無い。 ――死 幻赫の頭にその文字が浮かんだ。 「…………」 目の前が真っ白になっていく。アリナの拳はまだ30cm程離れている。 *** アイスクラーピウスの格納庫ではブラックヴァリー最強の男・不動了痲と電人Gが戦いを繰り広げていた。 「私の電撃を受け止められるとは」 「術なんだよ。雷を操るなんてのはお手の物でね」 常人では捉えられない高速移動での戦闘。Gは不動了痲の術を警戒し一定距離を保ちながら電撃を使って攻撃を繰り返している。対する了痲はコンバットナイフを片手に電撃を往なしながら時間停止の機を狙っている。 「G、お前のデータはみたぜ。あの雷帝を斃したのはいいが割とギリギリだったようだな。お前の活動時間はそれほど長くない、雷帝が短期決戦を仕掛けてきたから勝てたのだ」 「ほう……それで今は時間を稼いでいると?」 「お前も馬鹿じゃない、俺がそうすることを想定して2手3手用意しているだろう。だからこれは慣れの時間稼ぎだ」 「慣れ……か。面白い、こちらもお前の動きの癖を分析している所だ」 「隙を見せた瞬間、俺は時間停止を使いお前のコアを狙って全弾ぶち込む」 「隙に誘われて動けばお前は私のカウンターを受けることになるな。雷帝を再起不能に追い込んだ超電磁加速パンチが決まるだろう」 「後の先の取り合いか……こういうジリジリした戦いは久しぶりだ」 *** 甲板ではヘーラクレースがセレスティアに猛然と接近、暴風のような連打で追いかける。セレスティアはAIのAdeleに半自動回避をさせて自身は戦闘スーツの全身に巡らせたプラズマゲルを異能で加速させる。 「Adeleまともに戦えばこちらもかなりの被害を受けますね」 『この者との戦闘は中止すべきです』 「ええ、じゃあ準備が整ったら退場してもらいましょう」 『ナポレオン、ポセイドン、ソールハンマー準備完了まであと10秒』 甲板の装甲をめくりあげながら突進を繰り返して仕掛けるヘーラクレース。セレスティアは上空に完全に逃れることはせずジャンプと滑空を繰り返して回避を続ける。 完全に飛び上がり上空へと逃れることによってアナスタシアやテントに居る転送要員のマイケルを狙われる可能性があった為である。 小ジャンプからセレスティアは胸部リアクターからプラズマ球を出現させ両手で包み込んだ。両手のユピテニウムによる超加速圧縮を始める。 「隙が出来たぞセレスティア!」 「ふ……」 プラズマ球を解除して両手指を向けるセレスティア。十指から閃光が走り一瞬にしてヘーラクレースをハチの巣に変えた。 「何っ!?最初に見せたユピテニウムによる陽電子砲はパフォーマンス……か」 倒れるもすぐに再生を始めるヘーラクレース。 「あなたのような者と正面切って戦うつもりは無いです」 スーツのプラズマゲルとユピテニウムを利用し動きを制限されないように悟られないように溜めを作って陽電子砲を放った。 「私は戦闘者ではないのだから戦術を持って終わらせるだけですAdele準備は?」 『はいマスター行けます』 「ウオオオオオオオオオオオオオオッ!!」 ヘーラクレースは甲板をめくりあげる勢いでセレスティアに突進をかける。 「ナポレオン!!」 飛び上がったセレスティアの背後から大量の飛翔物が現れた。ロケット型の大きさは10cm程度。周囲を覆い尽くすほどの数は飛蝗の大軍を思わせた。 「昆虫の大軍は群集心理を思わせます。だからこそこの兵器の名前はナポレオン」 「こんな物オオオオオオッ!」 こん棒を振り回し大軍を打ち払っていくヘーラクレース。しかし徐々に距離を詰められ覆い尽くされていく。 「脳波コントロールで操作する兵器ですが試験段階で使用者の人格に悪影響が見られた為正式採用されなかったもの。Adeleと演算を共有する私には扱えますがね」 ナポレオンの一つ一つはドリルのように回転しヘーラクレースの体をえぐり取っていく。そして見る見るうちに骨だけの姿に変えた。 「その状態からでも再生するのは承知です」 ナポレオンの大軍はヘーラクレースを巻きこんで甲板から空に投げ捨てる。 「ポセイドン!」 アイスクラーピウスの近くまで来ていた超高速ステルス潜水艦からミサイルが発射された。ヘーラクレースを捉えたミサイルはその場で爆発することなくナポレオンが付いたまま上昇していく。 「…………!」 ナポレオンの攻撃よりも少しずつヘーラクレースの再生速度が勝り肉体を取り戻していく。彼が完全に肉体を時には大気圏を通り抜けようとしていた。 「ソールハンマー」 射角を極限にまで傾けた衛星から放たれた破壊光線はミサイルを爆破させた。爆発の勢いでヘーラクレースは宇宙空間へと向かって飛んで行く。 「(ヌウオオオオ……まさか宇宙空間だと!?)」 太陽風や宇宙線などの有害物質にさらされながらも再生を続け意識を保ち続けるヘーラクレース。 セレスティアは衛星カメラの映像を見ている。 「いつか再生もできなくなるでしょう、その時まで宇宙空間を旅して下さい。さようなら無敵の戦士。もう会うことも無いでしょう」 「(グウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ)」 ゆっくりと回転しながら徐々に地球から離れていくヘーラクレース。やがて動きを止めそのまま宇宙空間へ。 「あちらもそろそろ決着でしょうか?終夜アリナと幻赫……」 爆発と衝突音、光と水柱があがる小島を見てセレスティアはつぶやいた。 「どちらが勝利するにしても急いでアイスクラーピウスを掌握しなければ」 *** 幻赫の体は宙に浮いていた。アリナの拳を受けて吹き飛ばされたのだ。幻赫の感覚では1cm飛ぶのに数分かかっている。 「(終夜アリナの拳を喰らってどのくらいの時間が経った!?)」 地面からの距離は数メートル。 現実にはとうの前に大阪にある漢山にまで飛ばされ幻赫の秘密のアジトに墜落し研究員の男一人と実験生物を巻きこんで爆散。死亡している。 「儂はどうなる!?このまま何もできないままなのか!?」 幻赫の感覚では数百日後に漢山に到達。数時間かけて爆散の苦しみを受けながら死ぬことになる。 「アリナ!!」「アリナさん!!」 幻赫に拳を放った後アリナは糸が切れたように倒れた。フローレンスと哿との共有も解除され意識は再び異次元へと閉ざされた。 「すぐにアリナを助けに行かないと!」 「まずはこの部屋から脱出ですね、そうすれば僕のテレポートですぐに……」 突如扉が開いた。そこに立っていたのは左半身を銀色の金属と化した不動了痲であった。 「!?」 「ブラックヴァリーの!」 銃を構えるフローレンスと哿。 「やめときたまえ。無駄だよ、それに自分は……まぁいいか説明は面倒だ。ともかくここから出てアイスクラーピウスを脱出したまえ。甲板に仲間が待ってるぞ」 「……わかりました」 異能力制限室を出る二人。謎の男は二人が去ったのを確認した後、隣の電子ロックを解除して部屋に入る。そこは医療用の治療ポッドが並んでいた。 「チェック終了……いつでも使用可能だよ」 ――数分前 実力伯仲の不動了痲とG、隙を伺いながらの牽制が続く中、突如セレスティアとアナスタシアが現れた。ほんの一瞬気を反らせた不動了痲に隙が生まれたのをGは見逃さなかった。指を尖らせ加速させた超電磁加速貫手を放つ。 刹那遅れた不動了痲は時間停止と言われている異能を発動。Gの指が胸に突き刺さったところで止めた。 「あぶねぇ時間停止と言っても完全に停止するわけじゃあないからな、0.001秒遅かったら心臓まで届いてたぜ」 体を離して特殊弾を装填したマグナムを構える。そしてGの核に狙いを定めてトリガーを引く。 「時は動き出す」 背中を大きく破裂させて後方に飛んで行くG。壁に激突するとそのままパズルのように体が崩れていく。 「反応は無し……だな。さぁてセレスティア博士よぉ、アンタはどっち側なんだい?幻赫に従っているようにもTMI側に裏切ったようにも見えないが?」 「……」 「……ん?」 話したつもりが声が出ていない事に気が付いた。 「(何だこれは!?)」 自身の左腕が銀色に変化しているのに気が付いた。 『やぁ不動了痲』 Gの声がした。 「G!!テメェどこに……」 『君の中だよ……フフフ指を突き刺した時に君の体内のナノマシンと融合してね意識はそっちに移した。時間停止してくることは想定済みだった。核を撃ち抜かれるのが先かこうやって侵入するのが先か賭けだったがね』 「テメェ術で排除してやる……」 『おっと、既に心臓と左腕は掌握済みさ。下手に排除しようとすると私と心中することになる。私も核を失い君に寄生してる状態、やめて欲しい』 「俺の体を乗っ取るつもりか」 『そのつもりだったが君ほどの異能者を取り込むことはできない雷帝のように廃人にすることもできるがそうすれば私も無事でいられるかどうか……だから半分貰うことにする』 「何っ……」 『君の記憶と私の記憶は融合する。すなわち全く新しい別人へとなるのだ』 「そんなもんになるくらいなら……テメェと心中してやる!」 『まぁ聞け不動了痲、何もお前が消えるわけじゃあない。私は既に雷帝の記憶も取り入れている、雷帝でもなければそれ以前の電人五所川原振之助でもないが私なのだ。この感覚は伝わらないかもしれないが……人生を二人分経験したといえばいいだろうか』 「死ぬか別人になって生きるか……だと」 『既にお前もある意味経験している、幼い頃のお前と今のお前は完全に同じとは言いきれんだろう?様々な経験を積んで今のお前があるのではないのか?』 「つまり俺はお前と雷帝の人生を経験しお前は俺の人生を経験して一つになると」 『そうだ』 「……嫌だね、俺は俺のまま生きて死ぬ」 『そうか、そう言うと思ってた。だが時間は十分稼がせて貰ったよ』 「……!?」 『既に私とナノマシンは脳に到達している。お前の意識はもうすぐ落ちる、覚める事ない眠りにつくのだな。この肉体が滅びる瞬間まで』 「テメェエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」 倒れる不動了痲、そこに崩れたGの体が吸い付き左半身を銀色に染めた。そしてゆっくりと立ち上がりセレスティアらに視線を向ける。 「電人G……」 兄の敵を目の前にして殺気を向けるアナスタシア。 「おいおい待ってくれGは死んだ、俺は不動了痲だ。それとあんたらと争うつもりもねぇ。見ての通り重傷でね、Gの部品とナノマシンでなんとか立ってる状態なんだ」 銃を全て地面に置きGは不動了痲に成りすまして言った。 「では捕らえます!TMIから警察に引き渡しますテロリスト不動了痲!!」 「死ぬよりかマシか、どの道この船は浮いてる逃げる場所なんて無い」 Gに異能力制限手錠をかけるアナスタシア。セレスティアはGと一瞬目を合わせる。 「アナスタシア、この者は自動操縦の私のスーツに見張らせて先を急ぎましょう」 「え、ええ。急ぐのでしたね」 スーツから出るセレスティアとアナスタシア。自動操縦に切り替え、座らせた不動了痲(G)の前に立たせた。 続く
Jun 21, 2020
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