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VAMPIREEYE88「三獣」 ―白峰家 長女・霄、次女・吹雪、三女・霞に加え使用人の三人ワーウルフ・吉良伝左衛門、人造人間・須原登流、マーマン・水元来海、計六人が居間に揃っていた。 「水元、どうして碁盤の目町に入れなくなったのか説明して」 霄は水元に視線を向けていった。 「それが……突然だったの。雪名さまの為に夏の新作服を買いに地上に出たら戻れなくなっててねー、最近皆来ないなーとは思ってたけど一方通行になっていたとは気が付かなったの」 水元は頭をかきながら申し訳なさそうに作り笑いをして言った。 「……霄ちゃんなんか変わりました?相変わらず可愛いけど、壊れそうなガラス細工のような危うさがあったのがちょっと消えてる強さを感じる」 水元に言葉に全員が頷いた。 「私の事はいい!心配してくれてるのは分かっていたが自分で解決するしかなかったんだ。それが少しだけ良い方に向かって……それだけだ!」 「ああ……雪名さまにこの事をすぐにでも教えて差し上げたい……」 「私の事はもういいだろう、碁盤の目町の事だ!」 「それねーどうしましょうか……24の結界もそうですが強力なセキュリティで守られた隔壁もありますし中から完全にロックされたら核爆弾でも破壊できないですよ。ハッキングした所で結界の方をどうするのかって話ですし。雪名さまが本気を出せば内側から結界をぶち破ってくれそうですけど連絡の手段もないですし」 「隔壁24枚に24の結界……」 「厄介な事に交互に設置されてるじゃないですか。物理的にも魔力的にも強い構造で更に警備も厳しい」 「入れなくなったのは我々だけなのか?」 「わからない……ただ物資の出入りはあるみたい」 吹雪が言った。 「何がきっかけなんだろうね」 霞が言った。 「先週は入れた……」 吹雪が言った。 「木城紫蓮さんと一緒に入ったのが最後。木城二郎くんと速水恭一くんの制服は田口さんが用意してくれたからわたしは入ってない。今日入れなくなった事に気が付いたの。任務のやり取りは碁盤目町との専用回線でしてるから……」 「先週は入れた……と。その頃何か起きた事と言えば……?」 水元の一言の後全員が霄に視線を向けすぐに逸らす。 「……源藤高雅に襲われた事件だ」 「あー……あの事件不可解ですよね……教会の執行人が突然あんな行動に出るなんて。締め出される前に調べてたんですがどうもハッキリしなくて。教会側が隠したがってるようにも思えましたよ。雪名さまも気にしておられました」 「吹雪、教会のトップ二人とは連絡とれないのか?」 「ええ……連絡はいつも向こうからだけなの姉さん」 「……」 霄は華月の話を思い出していた。 「(やはり白峰家にとっての真の敵は教会のトップ二人陰陽師・葛野忍と大天狗・長門顕彰になるのか。しかし……)」 華月の事を皆に話をするのはまだ早いと考えている。 「霄ちゃん?」「姉さん?」「霄姉ちゃん?」「霄さま?」「ソラさま?」 「なんでもない……」 「教会の動きが分からない状態です、お嬢様方一人での行動は控えて頂いた方がよろしいかと」 吉良は眼鏡を上げながら言った。吉良はワーウルフゆえに嗅覚が鋭かった。霄の制服からかすかに覚えのある香りと知らない香りが付いていた事が気になっていた。 「(あの香り……雪名様に相談したいところですが……)」 「私たち使用人がそれぞれ付くのはどうかしら?学校の中までは無理だけど」 「それがイイナ!」 水元の提案に須原が頷いた。 「では明日からお嬢様たちを車でそれぞれの学校に送り迎えさせていただきます」 「待て吉良!」 霄が机に手をついて叫んだ。 「どうしましたか?」 待てと叫んでみたものの、霄は次の言葉が出てこなかった。華月と会い、蓮也と行動し調査をする予定だから付いてくるなと言えなかった。 「明日は……まだいい。明後日からにしよう」 「はて?理由は分かりかねますが?」 「学校の友人と約束があるのだ」 「それならば終わってから連絡をください我々が迎えに行きますので」 「……そうだな、そうしよう」 その様子を三女・霞は首をかしげて眺めていた。 「霄様をこの私吉良が、吹雪様を須原、霞様を水元でよろしいかな?」 「ウム」「いいよ」 「教会の任務は……どうすれば?」 「陰陽師・葛野忍や大天狗・長門顕彰と連絡が取れないのならば受けるべきではないと思います」 水元はハッキリとした口調で吹雪に言った。 「お屋敷の結界とセキュリティも強化しておきましょう」 「ねぇ来海ちゃん」 霞が水元に声をかける。 「お父さんには連絡取れないのかな?こういう時どうしたらいいか教えてくれるかも?」 「蔵人さまですか……そうですね連絡を取ってみましょうか」 水元の声には蔵人に対する態度が表れていた。白峰家に仕える家の中で人間側の者は教会に入った時に全て離れていった事もあって良い印象はない為である。蔵人の子神家も離れ今は奈良に移り住んでいる。 「あとね、来海ちゃん、あたしは家の事とかよく知らないから色んな人に聞いて回りたい。だから一緒に付いてきて、教えて?ね?」 「え?あ、はい?かすみちゃんがそう言うならいいですけど(思いついたら即行動なところ雪名さまそっくりでビックリしたぁ)」 霄と吹雪は霞が一番次の当主にふさわしいと考えている。しかし碁盤の目町に閉じ込められる事になる為、自分が当主になり家族が普通の人生を送って欲しいと願っている。 霞は霞で、姉二人と母・雪名を自由にしたいと考えている。 *** ―ロンドン 伸ばした自分の手が見えないほどの濃霧が一ヶ月以上続いている。原因は不明、霧の中に潜む存在は無差別に生物を襲いロンドンは死の街と化していた。 警察、軍が出動するも事態の収拾には至らず生存者の救出が精一杯であった。 霧の薄いロンドン郊外にあるシェルターの外で紅茶を飲んでくつろいでいるロングコートの男。名前は白峰蔵人。携帯電話の着信に気づき取り出す。 「ん?白峰家からか、珍しいな」 『お父さん?霞だよー!』 「ああ、お父さんだ。霞、どうかしたのか?」 『あたしんちの皆、碁盤の目町に入れなくなっちゃった。どうしよう?』 「なんだと……」 蔵人は少し考え…… 「お父さんもそっちに行こう、木城紫蓮にも話をしておく」 『木城のおじさん?何で??』 「きっと力になってくれるはずだ。無茶な事はしないで待っているんだぞ」 『分かった。お父さんお仕事はいいの?』 「もう解決できる所まで来ている、後は最後の詰めだけだ」 『そうなんだ、じゃあいつ頃になるの?』 「そうだな……一週間後になるかな。それまでおとなしくしているんだぞ」 『もう、あたしは平気だって!お姉ちゃんと霄お姉ちゃんの方がおとなしくしてないよ』 「はは、そうかもな。じゃあまた何かあったらすぐに連絡するんだぞ?」 『うん分かった、じゃあまたねお父さん』 霞との通話が切れた。 「(この携帯の番号は教会が用意した物。雪名しか番号は知らなかったはずだがな)」 「ヘイ、クラウド!」 後ろから体格のいい浅黒い肌の男性が話しかけてきた。腰には2本の斧、脇と胸には銃を装着している。 「何かあったのか?」 「ああ、緊急の用事だベル。今週中に片付けて故郷に帰るぞ」 「ホウ、そいつはグッドな提案だ。丁度オレの娘の誕生日が来週でな!」 「何勝手な事言ってんのさ」 クラシックドレスを思わせる衣服に装甲を取り付けた姿の女性がふわりと上から降りてきた。肩にはアサルトライフルを背負っている。 「そいつはアタイが言おうとしてたんだよ。いい加減終わらせる時なのさ」 「ジュン……」 「吾輩も新作のゲームが来週発売されるので……」 続いてあらわれたのはクラシックな西洋鎧を思わせる装備を着込んだ人物。 「アロンソ……」 「さぁ、魔王退治と行こうぜ!!」 体格のいいベルが叫んだ。 「ああ、行こう」 *** ―京都西部にある廃工場 「阿呆が!しくじりやがって!!」 3枚刃のブーメランを弄びながら橡(つるばみ)全吉が言った。彼の周囲にはグレイのパーカーを着た獰猛な化け猿達が牙を剥きながら眺めている。醍醐寺で蓮也と佐久間が遭遇した者たちである。 「ああん?テメェだっておめおめとやられて帰ってきたんじゃねえのか?」 六角棍を振って叫ぶ妖蛇の巳島。 「ホント阿呆だなお前は!俺たち魔猿部隊はキッチリ『清掃』の仕事を終えたんだよ!偶然奴らと遭遇しただけでな。お前の仕事はあのクソ坊主大熊我們の殺害もしくは拉致だったんだぜ?」 「邪魔が無ければやれてたんだ!サルガキが、ちょっと特別な力を授かっただけの狒々がこの俺に偉そうな口を利くんじゃねぇ」 「古ければ偉いなんてのはもう今の世では妖の間でも通じないぜオッサン!灰色の軍勢【グレイズ】に居たいのなら結果を出しな、大将が来るまでにな」 「ケケケー!まぁそう虐めてやるなよ橡」 大勢の妖鳥類が止まっている梁から降りてきたのは青鈍(あおにび)砂羽。嵐山公園で二郎たちに襲い掛かってきた者。 「クククク……」 化け犬らを率いて奥から現れたのは稲荷山トンネルで霄を襲った皀(くり)八太であった。 「まぁまぁまぁ仲良くやろうぜ。オッサンは神獣の力を大将から授かってねえんだ協力してやらないとな。俺だってまだ大将に言われた仕事の途中だしよぉ」 「確か皀は『仕掛け』担当か……その様子だと順調そうだな」 狒々の橡が言った。 「ああ、橡の言う通り順調だ。後は伏見区を回るだけだな。大将が来る明日には間に合うさ、青鈍はどうだ?」 化け犬の皀が言った。 「俺も『兵隊集め』をもう少しやっておくか……ところで金で雇われた吸血鬼ハンター『様』はどこに行った?」 青鷺火の青鈍は鋭い目つきで周囲を見渡す。 「今日は見てない」「ああ、俺も匂いを感じてねぇ」 「信用できんなあの男、源藤高雅とかいったか?」 「だが吸血鬼退治にかける執念は異常だった、仕事はやるんじゃないか?」 「教会とやらではかなりの実力者だと大将は言っていた」 「今は特にあの男に用はない、放っておくか」 「そうだな」 青鈍(青鷺火)、皀(化け犬)、橡(狒々)の三人が話しているのを睨む巳島。 「オイ!無視するんじゃねぇ!!」 「なんだ?クソ坊主を狩りに行くのにまた兵隊を借りたいってのか?」 青鈍は肩をすくめて言った。 「雑魚はいらん!俺の足手まといにならないような奴を貸せ!!」 「言うじゃないか!」「調子にのるなよ!」「ハ、次は無いって分かってるんだろうな?」 「テメェらの誰かが来いや!」 巳島は六角棍を回しながら叫ぶ。 「イキるなよ蛇のオッサン!」 「ナメてんのはテメェだろうがサルガキ!!」 「オッサン!サイバネの半グレとつるんでるのがそんなに偉いってか!?俺と、皀と青鈍は人間の弱い者いじめなんてしてイキってきたお前とは違うんだよ阿呆が!大将と一緒に修羅場を潜って生き残ってきた。だから神獣の力を授かったのだ!!」 「黙れシュラアッ!」 飛び掛かる巳島。橡は三枚刃のブーメランで受け止め同時に蹴りを入れる。 「言って分からんのなら、格の違いを見せてやる!『ヒースグレイパワー』」 橡の全身から煙が噴出し巳島を吹き飛ばす。煙は橡を包み込んでいく。そして現れたのは巨大化し腕の長い青紫灰色の魔猿。指から生える爪は一本一本が大きく鋭く鈍い光を放っていた。 「シャシャー!」 蛇化した腕を伸ばして棍で突いてくる巳島。それを橡は右手の爪で一薙ぎする。 「何っ!」 合金製の六角棍が野菜でも切るようにバラバラに切断される。 「さぁどうする?まだ来るならその棒と同じ姿になるが?」 瞬時に巳島の背後に回り首に爪を突きつける橡。 「チッ!まだ奥の手はあるぞ……」 「やめとくんだな、それはクソ坊主相手に使え。なぁに心配すんな、俺たちとしても大将が来るまでに仕事は終わらせておきたい。フォローはする」 「じゃあ武器を用意しろ。今テメェがブッ壊した代わりのモノをな」 「こっちだ付いて来い」 橡は青紫灰色の魔猿姿のまま巳島を連れていく。 「(この蛇はどうせ使い捨ての駒だ。大将の目指す先にある国にこういう輩はいらない。どのみち排除される、精々こき使ってやる)」 橡は鋭い爪で巳島を引き裂きたくなる衝動を抑えながら武器庫コンテナへ案内する。 続く
Nov 22, 2020
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VAMPIREEYE87「灰色の軍勢【グレイズ】」 六角棒を捻る妖蛇の巳島。両端から鋭い刃物が飛び出す。 「フシュウウウウウウウウ!」 プロペラめいて回す巳島。刃が触れた石畳は切り裂かれて飛び散った。 「鬼退治用に貰ったナノコーティングされた超合金ブレードだ」 「何者だお前たちは!!」 我們が叫ぶ。 「海外の妖でも退魔組織でもなさそうだねぇ」 河上は名刺を構えて言う。 「シャッシャッシャッ!!灰色の軍勢【グレイズ】とでも呼びな!!一ヶ月でこの京都は灰色の軍勢が支配する!!アホな人間は屍兵士に、従わない妖には死を!!」 倒れていた屍人が次々と立ち上がる。爆破され欠損した屍人は合体してお互いのパーツを補う。 「死を恐れず最後まで戦い続けるぞこいつらは!烏合の衆と侮るなよ?集団意思で動いているこいつらは斃されるたびに経験を積み強くなる!!」 「灰色の軍勢【グレイズ】(嵐山公園の鳥人間もそうなのか!?)」 二郎はバックル剣を握りしめる。 「シャアアアアアッ」 黒い影の蛇に変身して屍人の間を縫って水のように進む巳島。河上の名刺を避け我們の衝撃のタイミングを外し二郎に迫る。 「くっ!!」 辛うじて超合金ブレード棍をバックル剣で受け止める。生身の左手が痺れた。 「一番弱そうなお前から仕留めるぜ!」 連続突き続いて回転斬りを放つ巳島。二郎は義手の力を発動させて高速の刃を見切る。 「バハァ!」 大きく口を開く巳島、大きな液体の塊を吐き出す。 咄嗟にしゃがみ躱す二郎、石畳に落ちた液体は煙を上げる。 「!?」 「妖蛇の毒は妖にも効くんだぜ~?」 「ゲホゲホッ!」 毒液の煙を吸ってせき込む二郎。その隙を見て巳島が首を狙う。 「ヌッ!?」 剣での防御が間に合わず義手で受け止める二郎。巳島はあまりに固い手ごたえに動揺して一歩離れた。 「なんだこの手ごたえは」 「ゲホゴホ……」 「喝!!」 我們の衝撃波が巳島を吹き飛ばす。 「大丈夫か二郎?」 「ゲホゲホ……なん……とか」 受け身をとった巳島は両腕を伸ばして蛇化、10匹の蛇が二郎と我們を襲う。 「把ッ!」 錫杖で地面を叩く我們、放射状に衝撃波が広がり蛇を受け止めた。 「なんという頑丈な奴よ。拙僧の先ほどの衝撃波は一軒家を倒壊させる力を込めたのだぞ」 「シャッシャッシャッ!灰色の軍勢でパワーアップを果たしたのさ!!そうじゃなきゃ鬼退治になんて来るかよ!!」 伸ばした腕を大きく振り回す巳島、衝撃波の壁ごと二郎と我們の二人を跳ね飛ばす。 「ぐっ……」「ぬう……」 「どうだこの圧倒的パワー!鬼の力を上回るぞ!!」 腕を振り上げる巳島、そこに河上の名刺が命中爆発。 「屍人君たちは吹っ飛ばしておいたよ。次はアンタが吹っ飛ぶ番だ」 「けっ!」 ブレード棍を持った腕を伸ばす巳島。河上は大きく後ろに飛んで回避。 「お前のボンバー攻撃は大した威力じゃない。このまま間合いを詰めれば終わりだ」 「そうかい?じゃあもう少しデカいのを喰らって見なよ」 巳島の革ジャンが燃え上がる。 「言っとくけど爆発させるだけじゃあないんだな」 「ぐああああ……熱い……テメェよくも俺の革ジャンを……!!」 河上の力はエネルギーを無機物に伝え発動させるもの。瞬時に炸裂させれば爆発、断続的に発動させれば燃やすことが出来る。投げて触れさせた対象に移すことも可能である。 「こういう事もできるんだ」 ポケットから取り出したカッターナイフを構える河上。エネルギーが伸び、光の刃を形成した。 「どうだいカッコイイでしょ?映画のフォトンセイバーみたいで!斎藤さん見たいな本格的な剣道やってるわけじゃないけど健康の為にやってるHKF(ハイパーキングファイター)って体感型対戦ゲームをやっててね。僕はそれなりに強いんだよ」 「ゲームと現実の戦いを同じに考えてる阿呆か!」 「それはどうかな?」 巳島の高速ブレイド棍を全て打ち払う河上。隙を狙って刺突、巳島の腕を切り裂く。 「HKFではアンタと同じくらい速い奴もいるんだ。ゲームだからって馬鹿にしていると痛い目に合う事になる」 河上の言っていることは間違いではない。だが現実にゲームの動きを可能としてるのは吸血鬼となった身体能力にある。常人で生身の者にはHKFのアバターと同じ動きは不可能である。 「クソが!?」 「そういう大振り攻撃は弾いてカウンターでストライクスマッシュだ!」 ブレイド棍の振り下ろしを擦るように防御、反動を利用してカウンターの攻撃を放つ。エネジー剣が伸びて巳島の腹を切り裂いた。 「グゲエエエ……」 「止めはこれで!吹っ飛びな!!」 ボールペンを投げつける河上。エネルギーを発し螺旋状に回転しながら巳島の胸に突き刺さり爆発。鮮血をまき散らしながら後方に転がっていく。 「河上さん凄い……」 「いやぁ……やっててよかったHKF!だよ……」 「げぇむでそこまで強くなれるとは……」 吹き飛ばされた巳島はゆっくりと立ち上がる。 「クソが……今度はこうは行かねえぞ!!」 影のような蛇に変身し去っていった。後に残ったのはバラバラになった屍人だけだった。 「いやぁ~危なかったねぇ。からめ手を使うタイプだったら僕は勝てなかった。そもそも僕はこんな風に面と向かって戦うのは苦手なんだよHKFだけにしたいね」 「十分強いですよ河上さん」 「ふむ……」 「はは……斎藤さんや佐久間さんのような武闘派じゃないからこういうのは出来るだけ避けたいところだ」 「逃げた妖蛇の事も気になるがまずはここをどうにかせんとな」 騒ぎになる前に我們は結界術で屍人の破片を移動させ寺の敷地内一か所に集めて封印を施した。 「万が一動き出してもこれで安心だ。茨木に連絡してこいつらの正体を調べてもらうついでに銃火器の出どころもな」 「じゃああとは我們さんにまかせて僕たちは帰ろうか二郎君。我們さんに会いたければまたこれるし、僕の携帯番号も教えたしね」 「はい」 *** ―愛知県 愛知県を流れる木曽川の近くに存在する犬山城。そこから灰色の巫女服を着た女性が出てくる。手には最新型の携帯電話端末。 「青鈍(あおにび)、橡(つるばみ)、皀(くり)、今から私もそちらへ向かう準備はできた」 『こちらの準備も整いつつありますぜ大将!』青鈍が言った。 『バケモノと鬼だらけですわ大将』橡が言った。 『バケモノと鬼を食い殺すのが楽しみです大将速く来てくれ』皀が言った。 「ええやりましょう、バケモノ退治です鬼の征伐です」 灰色巫女の女性は通話を切る。ただならぬ殺気が女性に向けられていた。 「ちょいと待てや小娘」 石垣の影から現れたのは左目に眼帯をした狐人間。修験者の格好をしている。 「ああ、生き残りの方ですか。小汚い狐」 「ただでは行かせん……一族の為にも」 銃剣を背中から取り出す狐修験者。 「やめておいた方が、身の為。ですよ?折角生き残ったというのに」 「貴様……吾輩だけをあえて残したのであろう……何の為だ!!」 「何の為……ですか。それはもちろん、楽しむ為ですね」 女性は邪悪な笑みを浮かべる。 「なんだと!?」 「そうやって、傷つき、怒り、悲しみ、勇気を振り絞って、私に向かってくる。物語の主人公になったかのように自分を奮い立たせる」 「なにを言っている!!」 「貴方はあくまで物語のその他大勢。主役であり作者はこの私。結末は決まっています」 「このイカれ女が!くらえ!!」 銃剣が放たれる。当たれば病魔に侵される狐修験者の力が込められた弾丸。 「ふふ……」 弾丸は大きくそれて弧を描き狐修験者の腕に命中した。 「ぐあああ……!?」 「愚か愚か、あなた達一族がそうやって返り討ちにあったのを見ていたはずでしょう?」 ゆっくりと歩いて近寄る女性。 「うああああっ!来るな!!来るんじゃねぇ!!」 銃剣を振り回す狐修験者。剣は女性の細腕で止められた。 「何だ!何でだ!!」 「これが貴方と私の差です。呪(しゅ)!」 人差し指と中指を立てて狐修験者に向ける女性。銃剣が爆発、狐修験者の指は衝撃であらぬ方向に折れ曲がっている。 「ぎゃああああああっ!!」 「思った以上に頑丈ですね、指が吹き飛ばないとは。その頑丈さで、私の術を受けて下さい。何秒持ちますかね」 逃げようとする狐修験者の前に風のように回り込む。 「ひっ」 「10秒、以上、耐えて、見なさい、さぁ!」 空手やボクシングとは違う独特の打撃を放つ女性。打撃痕が青白く光を放っている。 「ふぐうううああああ……」 「さぁ……爆裂死するまでの数秒間、これまでの生を振り返りなさい。楽しかったこと辛かったこと、後悔、懺悔、今この瞬間が生においてクライマックスです。もはや助かることは不可能!!さぁさぁさぁ!!感情を爆発させなさい!!」 「いぎゃあああああああ……」 全身から血液を爆発的に噴出して狐修験者は息を引き取った。 「ふぅ……中々の悲鳴でしたよ。鬼はもっと良い声で鳴いてくれるでしょうねぇ」 女性の携帯端末が振動した。 「はい、私です。ええ、この地の準備は整いました……ブラックヴァリーを入れるといいでしょう。……はい、アイスクラーピウスの上陸に合わせて計画を進めますよ」 通話を終える女性。 「……思い上がっている、老人が。神名一族が、全て、貴様の思い通りに動くと、思うな」 「咲夜さま」 「梨花か」 小柄な人型ロボットが近づいてきた。グレーを基調とした流線形のボディ。介護用の人工知能搭載型ロボットに式神を憑りつかせていた。 「お車を用意してあります。どうぞ」 「ああ」 神名L咲夜は式神梨花の運転する車に乗り込み京都へ向かった。 *** 自宅に戻る二郎。兄の蓮也が先に帰っていた。 「ただいま兄貴」 「おう……ん?二郎お前その右手……何ともないのか?」 蓮也の目には二郎の右手の義手から黒い靄が立ち込めているように見える。 「何とも無いよ?むしろ生身の時よりいい感じでビックリしているくらいなんだ」 「そうか……どこで見つけてきたか知らないがお前が良いならまぁ……二郎、すまなかったな。その右手……」 「大丈夫だよ兄貴。この義手があったから今日も助かったんだ」 二郎は蓮也に今日会ったことを話した。 「……灰色の軍勢【グレイズ】か。妙な連中と源藤高雅との繋がりもあるかもしれんな」 「兄貴が醍醐寺で見つけたと言ってた連中だよね?」 「そうだ……あの場所で何をしていたのかまだ分かってない」 「華月さん達が調べてるの?」 「ああ」 その後しばらく他愛もない会話をしながら二人は簡単な夕食を済ませた。 「兄貴、久しぶりに稽古付き合ってくれない?」 「そうだな、やろう」 二人は家の裏の道場に足を運ぶ。 日付が変わる頃まで竹刀の音が聞こえていた。 続く
Nov 8, 2020
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VAMPIREEYE86「妖蛇襲撃」 ―桂川近郊の倉庫街 ならず者のサイバネのチームSSS(スーパー・ストロング・サイバネティッカー)が集会を行っていた。 積み上げられたコンテナの上にソファを置きそこに座るしなやかな筋肉を持つ男。SSS京都支部代表の猫田ガイム。正体は化け猫である。 「最近よそ者がデカイ顔してるって聞いてるんだけどどういう事かにゃ?」 「気持ち悪い奴らなんすよー猫田さん!灰色のフード被ったゾンビみてぇな連中で話は通じねぇ異常なほどタフ、骨の1本や2本へし折った所で顔色一つ変えやしねぇんですわ!」 金髪のサイバネ者は叫んだ。 「それだけかにゃ?」 「それだけじゃないんす!ダチが拉致られてかなりの数行方不明っす!そんで昨日偶然風俗街で見かけたんすけどぉ……ダチの秋桜(コスモス)の奴すっかり変わり果てて灰色ゾンビの一員に加わってたんすよ!!オイラ気味悪くて……」 「は~ん?新しいヤクでもやってんのかにゃ……?他には何か知ってる者は?」 「うぃっす!猫田さん!!オレも灰色ゾンビ集団見たっす!!嵐山公園でツレとナンパしてたら急に天気が悪くなってきて……気が付いたらツレの奴消えてて声がしてそこ行ったらツレが灰色ゾンビ集団に噛みつかれてました!ガチヤベーと思ってすぐ逃げました!!」 スキンヘッドサングラスの男が言った。肘から先は機械化されスパイクがついている。 「……(呪術師の仕業かにゃ?)そいつらはウチらを狙っていると思うかにゃ?」 「わかんねーっす!」「どうなんすかね?」「滋賀の連中か?」「サツは動いてない?」 「ああ、ああ~静かに!分からないんなら灰色ゾンビマンを一人連れてくるにゃ!拷問でも何でもして正体を吐かせてやるにゃ!」 「うっす!」 「猫田さん~それって早い者勝ちっすよね?1番のもんには何か賞品あるんすか?」 SSSの幹部・矢島ユウヤがガムを噛みながら言った。バイクの事故と新型悪性腫瘍で下半身の殆どが機械されているサイバネ者だ。 「もちろん。ただ働きは皆嫌いだろうにゃ?先週入手した旧時代の二輪車のパーツでどうかにゃ?」 『おお~っ……!』 歓声と口笛が聞こえる。 「んで、それはどんなパーツで?」 「伝説のバイク、TACHIのハンドルだにゃ!」 それを聞いてますます盛り上がるサイバネ者たち。 「文句ねぇ!一番威勢のいい灰色ゾンビマン拉致って来るぜ!!」 「今から開始にゃ!」 猫田ガイムの合図で倉庫街からバイクの集団が出ていく。残ったのは数名だけだった。 「んん?お前たちは行かないのかにゃ?」 痩せた顔色の悪い長髪の女性、巨漢でバケツサイズのフライドチキンパックをむさぼる男、ニタニタと笑うゴーグルのチビ男、メッシュを入れた両脚機械の少女。 三人は闇の住人でメッシュの少女だけが人間であった。 「バイク……興味ない」「オラは上手いメシの他はどうでもいい」「イヒヒヒヒ……ゾンビはちょっと勃たないっすからねぇ」「……」 「明珠香、何で黙ってるにゃ?」 メッシュの少女に声をかける猫田。 「拉致とか……協力できないよアタシは……」 「ニャハハハハ!いいにゃいいにゃ!お前は金さえ用意してくれりゃあSSSで自由にしてれば!死ぬまで抜ける事は出来ないけどにゃ!!」 「……」 唇をかみしめ、うつむくメッシュの少女明珠香。 *** 車を走らせ30分ほどで二郎と平安新聞社社主の河上起央は大北山松鴎山町に到着した。 「のどかな良い所だよねぇ~」 「ここは初めて来ました」 「お寺があるねぇあそこで大熊我們氏の事を訊いてみようか」 「はい」 小さな寺に入っていく二人。読経の声が聞こえる。 「誰だ?」 読経の声の主が訪ねた。二郎と河上は声のする方に歩いていく。石畳の通路を歩き墓地の横を通り堂の前に出ると僧侶の姿が見えた。 「知らぬ顔だな」 堂に座っている僧侶が立ち上がって振り向く。 「僕は河上起央、平安新聞社の社主でして……この男の子は」 「木城二郎です」 太い眉を顰める僧侶。 「新聞社の社主と少年がここに何をしに?」 「人を探してましてね?」「そうなんです」 「身元調査の類はこの寺はお断りしている」 「探しているのお坊さんでして」「大熊我們さんを探してます、母の知り合いなのです」 「ほう?何の用事ですかな?」 堂から降りてくる僧侶。二郎は義手が反応しているのを感じている。 「貴方が大熊我們氏では?」 「如何にも。拙僧が大熊我們だ」 警戒の色を強める大熊我們。 「俺は……諸田凪子の息子です、話を聞きたくて来ました」 「諸田凪子……あの者の息子とな。それを証明できるかね?」 「電話をかけるので母と話してもらえれば」 二郎は母・凪子に電話をかける。 『どうしたの二郎?今忙しいのだけど?』 「母さん、ちょっとだけ代わるね」 『何々?誰と?』 「申し申し?」 『もしもーし、木城凪子ですけど?』 「凪子なのか?拙僧は大熊我們である」 『あー!我們さん!!お久しぶりですー!!ウチの息子二郎が何か?』 「いや、結構。目の前の少年がおぬしの名前を出すのでな、確認をしたかっただけの事」 『そうだったのですか~いやぁ懐かしいです!いっぱい話したいんですけど今ちょっと取り込んでましてねーまた今度ゆっくり会って話しましょ』 「ああ、そうだな」 電話を切る凪子、我們は二郎に携帯を返す。 「それで、凪子の息子が吸血鬼の気をまとって、そこの吸血鬼と行動してるのはどういう事なのか?」 二郎は華月の事を伏せて簡単に事情を説明した。 「源藤高雅という男、更に正体不明の灰色の連中か……してそちらの新聞社の河上さん、用とはなにかな?」 「僕は木城二郎君の付き添いでね。新聞屋として情報収集のついでに手伝いに来たのです。大熊我們さん、あなたも人間じゃあないでしょう?」 「ああ、お互い化かしあいはやめるとしようか。おぬしはどこの者だね?」 「反教会派の者とでも言っておきましょう。僕の属してる組織には名前がありませんのでね、大熊我們さん貴方は?」 「酒呑童子・鬼の四天王が一人。熊童子である」 大熊我們の額から角が生え顔と腕に青い紋様が現れた。 「意外とあっさり答えてくれるのですね」 「おぬしこそ酒呑童子の名前を聞いてその反応とはな」 「どれほど恐ろしい鬼かは存じておりますよ。約30年前に転生され人間に化けて過ごしておられる。今は企業経営者でしたかな?あなたたちと敵対する理由はこちらは無いのですだから平然としていられる、そんなところです」 「なるほど……それで凪子の息子は拙僧に何の話を聞きにきたのかな?」 「連合の事についてです……」 「ほう……立ち話もなんだ、茶でも出そう、ついてこい」 堂の裏にあるプレハブ小屋に移動する三人。 「ここの住職が病気でしばらく留守にしているので代わりに拙僧が寺の管理をすることになったのだ。この小屋は車で移動できる拙僧の家だ」 「お邪魔します」 「さぁ茶だ……」 宇治茶を淹れて机に置く大熊我們。 「連合の何が聞きたい?拙僧に答えられることなら何でも話そう」 二郎は白峰家と教会の二大勢力、大天狗長門組と葛野忍率いる陰陽師団の事を話し、連合はどう動くのか、二大勢力が倒れた後どうするつもりなのか聞いた。 「酒呑殿は京都の経済界を手にした後は政界に進出するおつもりです。教会については拙僧も何も聞かされてはおりませんな。ただあの方の邪魔になるものは排除するだけです」 「つまり逆を言えば酒呑童子の邪魔をしなければ敵対象にならない。協力すればいい関係を築けるという事ですかね?」 河上起央は宇治茶を一口飲んでそう言った。 「そこまでの話を進める権限は拙僧にはありません。別の機会に代表の者同士で話し合いをするというのはどうですかな河上さん?」 「そうですね、ではこちらの代表の者に伝えておきます。連絡手段はどうしますか?こちらは僕の携帯でいいですが」 「では河上さんの携帯電話に連絡するように伝えておきます」 二郎は思いがけず話が進んでいくことに驚いた。偶然河上と一緒に行動したことにより連合との繋がりを得た。自分一人ではどうなっていたのかと想像して頭を振った。 「あの……我們さん俺は……」 「河上さんと同じ組織の者なのだろう?君は吸血鬼にも関わず特有の殺気を感じなかったから拙僧は話に応じたのだ。河上さん一人で来たのなら話はしなかっただろう。凪子と君は話す雰囲気が似ておる」 「は、はぁ……」 二郎が少し困った表情を浮かべている横で河上はプレハブ小屋の窓の外を見ている。 「おや?大熊我們さん、お寺の外に妙な気配を感じませんか?」 「うむ……招かれざる客が来たようだ」 「えっ?」 錫杖を手に小屋を出る大熊我們、それに続く二郎と河上。 「OHOOOOOOOOOOoooooooh……」 うめき声をあげ現れたのは灰色のフードを被った集団。 「あれが例の灰色の奴らか!」 「はい」 「そうですね」 錫杖を構える我們、二郎はバックル剣、河上は指先を上着のポケットに入れて構える。 灰色の集団は消音銃、ボウガン、サバイバルナイフに斧を手にゆっくりと近づいてくる。 「喝っ!」 錫杖を突き出す我們、離れた灰色の集団の数人を吹き飛ばした。それを受けて一斉射撃を行う灰色集団。二郎はしゃがんでバックルを盾に変形。河上は高く飛び上がった。 「把!」 「ん?」「おや?」 弾丸、矢は我們の手前で止まり次の「喝」の掛け声で四散した。 「すごい……」「法術とやらですかな?」 「なに、大した術では無い。大気に拙僧の鬼力を乗せて留めて放っただけの事」 続けて連射してくる灰色集団に対し我們は更に大きな衝撃波を放って迎え撃つ。弾丸・矢を跳ね返し集団を吹き飛ばしていく。 「去るが良い!追いはせん、だがこれ以上来るというのなら容赦はせんぞ?」 「GAOOOOOOOOOOO……」 弾丸・矢を撃ち尽くした集団はサバイバルナイフと斧を振り上げて一斉に突進。 「喝!喝!喝ーーーーーーっ!!!!」 衝撃波で吹き飛ばされ宙を舞う集団。石畳に叩きつけられるがすぐに立ち上がる。腕はあらぬ方向に曲がり肩は外れ足首は捻じれているが気にしている様子はない。 「む、屍人か……」 「今度は僕にやらせてくださいよ」 名刺を数枚取り出す河上。徐々に発光していく。 「ハッ!」 名刺を投げつける。灰色集団に命中し爆発した。 「河上さん、こいつらを指揮してる奴がいるはずだ」 「そうなんですか大熊さん?」 「ああ、この類の集団には必ずいる」 爆発した屍人の耳からムカデのような蟲が這い出てくるのが見えた。すぐに二郎は気になって近づくが煙のように消えていった。 「あ……今ムカデみたいなのが……」 「何?」 「気をつけろよ凪子の息子、うかつに触ろうとするな」 「はい」 近づいてくる集団の最後尾に金髪革ジャンの細身の男の姿が見える。 「あれがこいつらの指揮者か」 「フッシャアアアアアア……灰になれ。灰になれ。白は駄目だ黒でも駄目、灰色こそ真理」 「なんだいアンタ?僕はこういうもんでね」 エネルギーを込めた名刺を投げつける河上。 「フン!おれは妖蛇の巳島比呂人……」 革ジャンの背中から六角棒を取り出して名刺を叩き落す巳島。 「吸血鬼に酒呑童子四天王鬼に半端者吸血鬼か……さ~て鬼退治鬼退治……」 巳島は先の割れた長い舌をチラつかせてつぶやいた。 続く
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