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異能者特務機関:TMI 第43話「新たな道」 哿のテレポートで穴井千種のいる事務所に飛ぶ三人。そこには黒い靄を纏った人間らしき者が立っており、周囲の人間は昏倒していた。穴井千種はかろうじて意識を保っていた。 「穴井さん!」 「ダメ……来ないで!力が暴走してるの……AAAAAAAAAAAAAA!!」 「GEGEGEGEGE……」 黒い靄の人物の口端が上がって見えた。耳の近くまで裂け、目は魚のように見開いたまま、鼻はそぎ落としたように低い。 「穴井さんから離れなさい!これは警告です、次は撃ちます!!」 フローレンスがショック銃を構える。 「GRHAAAAAAAAAAAAAA!!!」 口を大きく開き、何かを吐き出す謎の人物。咄嗟にアリナはフローレンスを伏せさせる。吐き出された飛翔体は後方の壁に突き刺さった。半透明の骨のような棘であった。壁紙を焦がし煙を上げていることから強酸性を思わせる。 「GOBUBUBUBUBUBUBU……」 アリナのベヤリング弾が嵐のように放たれ謎の人物をあっという間に血だるまに変えていく。それに合わせてフローレンスもショック銃を撃ち込んでいく。 「HIGIIIIIIIIIIIIII……コレデ……アキラメルト……オモウナヨ!」 謎の人物は窓を突き破って飛び降りる。追う哿、下に姿は無く周囲を見渡す。上に気配を感じ視線を向けると謎の人物はトビウオを思わせる翼を生やし滑空していた。 「……っ!追跡弾を当て損ねました、すみません」 「深追いは危険です、穴井さんを守れただけ良しとしましょう」 「ええ、フローの言う通りです哿さん」 フローレンスは穴井の傍にしゃがみ異能で治療を始める。 「ありがとう……さっきのアイツ……アイツが度々意識に入って来るのよ!そのせいで私は……」 「明らかに穴井さんを狙っている様子でしたね……」 「今日からしばらく24時間穴井さんのマンションを張り込みましょう」 「また来ると言ってたのでそれが良いでしょう」 ―それから数日 時折現れる魚顔人間の撃退を続ける三人。根本的な解決には至ってないと長官ジェームズに相談した。 『その件に関しては既に日本の専門機関が動き始めているよ。君たちにはすまないが事態が収束するまで穴井千種の護衛をお願いしたい』 「専門家らと協力して捜査はさせてもらえないのですか?」 『専門知識や経験が乏しい我々では足手まといになるそうだ。哿くん』 「そうですか……」 『【霧】には近づくなと言われたよ。もし霧を見かけたらすぐに連絡して欲しい』 「解りました」 ―その日の夜 空は曇り異常に生暖かい空気、ほのかに感じる磯の香。じっとしているだけでも汗ばむ息苦しい状態の熱帯夜。 「霧が……山の方だけじゃなくて街、川の方にも発生です!」 「このマンションを囲うように霧が出てきてますね」 「フロー、哿さん、警戒してください。妙な気配を感じます」 アリナはゆっくりとワゴン車から降りた。 「!!」 コンクリート製の床であったはずの駐車場は粘度の高い黒い水で濡れていた。アリナの足首ほどの深さまで達していた。 「哿さん!フロー!車から出ては駄目!!足を取られます!!」 他の者なら一瞬で転倒し黒い水に飲み込まれてしまうが、アリナは常人離れした筋力とバランスで持ちこたえている。 「この水から霧が発生しているようですね」 哿はテレポートで飛んでアリナを回収、車の天井に着地する。 「長官に連絡が繋がりません……この霧が関係しているのかもしれませんね」 フローレンスは端末を操作しながら言った。 「車をホバークラフトモードに移行しました。これで水面でも移動できます」 「哿さん、車をマンションの玄関前につけてください、住民の皆さんをむやみに外に出さない為にも」 「そうですねアリナさん」 ホバークラフトワゴン車をマンションの玄関スロープの前に停車させる。マンションは驚くほど静かで人々が騒いでいる気配は感じない。 「誰も出て来ませんね、こんな異常事態なのに」 「穴井さんもインターホンに出ません……」 『KOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』 「!?」「うっ!!」「うあっ……」 これまで聞いたことのないような不快な叫び声が響き渡り三人に襲い掛かった。 「この音……声ですか、なんという不快な」 「体の奥からぞくぞくします……」 「二度と聞きたくない声でしたね……」 三人の目の前に複数の人影、それに加え巨大な影が現れた。 「何か出て来ましたね霧の中から」 アリナはスロープに降り立ちベヤリング弾を構える。 「魚顔の連中です!100人はいるかと!!それの後ろの巨大なのは!!」 「怪物……!?」 『DA……DA……GO……』 じりじりと迫って来る魚人の群れ、先頭には例のトビウオ魚人。最後方に20メートルはあろう巨大な魚人が控えている。 「連中をマンションに入れるわけにはいきません。ここで食い止めましょう」 アリナはベヤリング弾を放ち魚人を撃っていく。赤黒い血をまき散らしながら魚人は進行を続ける。 「穴井さんや他の住民の様子も気になりますがまずはあの者たちを何とかしなければ」 「怪物相手に容赦などいりませんよね?」 フローレンスは暴徒鎮圧用のグレネードランチャー装備のショックアサルト銃を取り出した。哿はフラッシュバンを取り出す。 哿のフラッシュバンに続いてフローレンスの銃撃。次々と倒れていく魚人であったがひるむことなく仲間を踏みつけ前に前に出てくる。 「フロー、哿さん下がって」 黒い水から上がってきた魚人をスロープで迎え撃つアリナ。ステンレス製の手すりを引き抜いて槍のように構えた。 『GURAAAAAAAAA!!』 突進する魚人、対するアリナは最小最速の動きでステンレス棒をで突き喉を砕いていく。 『GOBUUUAAAAA!!』 仲間を踏み台にして飛び上がる魚人には振り抜いて迎え撃つ。バッティングセンターのボールの如く飛んで行く。 「GEBOOOOOOOOOOOOO!!」 棘を一斉に発射する魚人。アリナはプロペラめいてステンレス棒を回転させて弾く。後列の魚人がそれに合わせて突撃。 「そう来るのなら……」 アリナは高跳びめいてステンレス棒を使い跳躍、上空からベヤリング弾の連続発射。魚人の頭に着地する。 「アンカーボルトセット」 かかとのアンカーボルトが魚人の頭を貫く。アリナは飛び上がり空中回転捻りして別の魚人を踏み抜く。その反動を利用してまた飛び上がりベヤリング弾を撃ちながら回転。魚人の動きを止めながら次々と頭を砕いていく。 「アリナやっぱりすごい」 「あれでアリナさん今は異能使ってないのですよね」 着地したアリナにつかみかかる魚人、手を払うと同時に手刀で喉を潰して振り回す。投げつけられた魚人は他の魚人を巻きこんで将棋倒しになり残りは10人ほどに。残る魚人は哿とフローレンスの射撃で倒れていった。 「KOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!」 不快な叫び声をあげて巨大な魚人が歩みを始める。アリナはステンレス棒を拾い、槍投げする。 「GYAOOOOONN」 巨人のガードした腕に突き刺さるステンレス棒。貫通するまでには至らず胸の前で止まった。 「威力が足りませんでしたか……」 「とにかく撃って撃って撃ちまくってマンションに近づけさせないようにしましょう!」 「そうですね!」 アリナは周囲を見渡してつぶやく。異能を使えば粉砕できる自信はあったがコントロールできない今、安易に使うべきではないと考えている。 「あの巨体……斃す武器……」 アリナはワゴン車に積んであるロープと拘束衣を見つけた。 「アリナ?」「どうしたのですかアリナさん?」 「これであの巨人を斃します」 拘束衣を折り畳み、両端にロープを繋げた簡易的な投石機を手に持つアリナ。花壇のブロックを引きぬいて投石機にセットする。 ブロックがセットされた投石機を振るアリナ。空気を裂く音が響き渡る。 「ハッ!!」 放たれるブロック、ソニックブームを発生し霧を散らしながら巨人の頭の僅か上を通り抜け後ろの山に着弾、木をなぎ倒したのが見えた。 「今ので大体分かりました。フロー、哿さん、そのまま射撃で巨人の足を止め続けてください」 「ええ!」「はい!」 特殊合金のワイヤーを編み込んだロープ、炭素繊維を使った拘束衣はアリナの振り回すパワーに耐えれた。 「ハッ!」 第二射が放たれる。巨人は投石を察し手で防御の姿勢を取る。ブロック弾は巨人の両手を粉砕し右目に命中した。悶絶する巨人は足を速める。 「それならば」 第三射、第四射で巨人の両脚を砕くアリナ。膝をつき停止する巨人。 「ハッ!」 第五射を放つアリナ。高速のブロック弾は巨人の眉間に命中、頭部を粉砕し肉片をまき散らした。ゆっくりと仰向けに倒れる巨人。その時遠くで雷鳴が響き渡った。 続く
Jul 27, 2020
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異能者特務機関:TMI 第42話「日常」 アリナは通う学校の周辺と異次元で見た幻赫の消滅の場所を散策した結果、正体不明の魚顔の存在と遭遇。TMI長官のジェームズはそれを回収し詳細はまた後日という事になった。 「退院後2度目となる今度の任務は異能者の中学生、穴井千種の観察だ」 ジェームズから言い渡された任務は、あの日幻赫とアリナが激突した日以来、様子が変わった生徒と接触してしばらく様子を見ろというものであった。 「寮の管理人には話は通してある。もしもの場合は拘束してTMIの施設に送ることになるだろう」 「長官わたしは……アメリカに行かなくても良いのですか?」 アリナはモニターの前のジェームズに言う。 「ああ、君が行く必要はない。しばらくは日本での任務に就いてもらう。補充要員を確保できたらアリナくんらUチームは本部の配属になるだろう」 TMI本部配属のエージェントになれば、ジェームズの判断で本部と支部へのテレポートはいつでも可能となり世界中の高難度任務に就く事になる。 「本部所属となっても学校は引き続き日本で通ってもらって結構だよ。希望があれば他の国でもよいがね」 「ありがとうございます長官……しかし」 「こんなご時世だからこそ、君たちのような若者に多くのチャンスを与えたいのだよ。TMIは戦う為だけの組織じゃあない、異能者を導く存在でありたいんだ。もう二度と異能者大戦なんてものは起きてはならない……異能者は特別な存在ではなく個性として受けいられていくべきなんだよ」 「TMI所属の研究者から100年後には世界の人間全てが異能者になるという論文も発表されていますね」 哿が言った。 「ああ、カテゴリー1の人口は増え続けている。本人も気付かない程度の異能の強度の者もいる。人類が次のステージに進化していると唱える者もいるくらいだ」 「問題は人類総異能者化する前の段階ですね長官?」 フローレンスは論文に目を通しながら言った。 「そうだ、そこで第二次異能者大戦が起きる可能性は低くない。本部の管理者もそう言っている。だからこそ次の世代である君たちにはあらゆる支援を惜しまない。私やアーニャ……幻赫の時代の者はもう過去の存在だ。これからの時代は君たちが作るのだ」 「長官……」 「世界の問題は山積みだ。人類は栄枯盛衰を繰り返してきた、今は衰退の時代とも言えるかもしれん。文明は発達したが原因不明の悪性腫瘍や新型ウイルスによる病は年々加速している」 「異能者は悪性腫瘍もウイルスも感染しない……その事が徐々に世界に広まればどうなるのでしょう……」 「考えるだけで恐ろしい……世界的暴動が起きると予測される。世界保健機関はもちろんそのことは把握している。メンバーの半数は異能者や亜人種だ。情報管理は徹底されている、今のところはね」 ジェームズの言った亜人種という言葉に反応する三人。 「長官、亜人種とは?」 「亜人種とまとめて言ったが人類とは違う知的種族たちの事だ。既に君たちは存在を知っている魔法は人類とは違うものから授けられたもの。……回りくどい言い方をしたね、映画に出てくるような耳の長い長身の種族、肉食獣をそのまま人型にした容姿の種族、お伽噺にでてくるモンスターの種族などだよ」 「あ……」 アリナは魚顔の人型の事を思い出した。 「鵜蔵池で遭遇した存在もそうだ。TMIはそちらの領分には踏み込んでいなかったが今後はそうもいっていられないだろう。これまでは本部の一部エージェントにまでしか公開していなかったがね今後は違う分野の組織【G.D.】とも連携を取っていくだろう……」 「G.D.……【G.D.IIIのWW副統括ミカエル・パウマン氏】の組織ですね!」 「そうだ哿くん」 ジェームズは葉巻に火をつけながら答えた。 「TMIと対になる組織と言えるだろう、あちらは少々荒っぽいがね」 「確か長官のお姉さまの……」 「ああ、魔女である姉が総括の組織だよ」 「魔女……」 アリナがつぶやいた。 「そのおかげと言うか魔女との交流はあってね。一緒に任務に就いたこともあったよ、ちょうど今日本に滞在していると聞いている」 「その人、どんな魔女なんですか?」 「おせっかい焼きで曲がったことが大嫌い、やると決めたら一直線でさっぱりとした性格の魔女だ……魔女らしくない魔女として界隈では有名だよ、私の姉と違ってね。私の姉は意地悪で卑怯で飽き性でねちっこい性格なんだ」 天井を見つめて煙を吐き出すジェームズ。 「大分話がそれたね……任務の話をしようか」 *** 【穴井千種14歳 サイコキネシス……超大型台風以降、無機物に限り5トンの質量まで操作できるようになる(推定カテゴリー4)】【窓の外から何かが見てる、気配を感じるとしきりに訴えるようになる】【駐車場の車を持ち上げて屋上に投げ込む、ガラスを全て吹き飛ばすなどの奇行を取る】 「普段は愛想も良く大人しいのですが夕方ごろから様子がおかしくなるのです。彼女は電子雑誌の専属モデルでもあるので夕方には寮に帰るように言い聞かせております」 寮の管理人はアリナ達にそう答えた。 「そうですか……穴井千種さんは今どちらに?」 「部屋に居ます、これから電子雑誌社の事務所に向かう所ですので皆さんに同行をお願いしまいのですが」 「わかりました」 三人は穴井千種の部屋に向かう。インターホンを鳴らすといきなり金属製のドアがひしゃげた。 「誰だ!!知らない声!!」 「管理人さんの紹介で来ましたTMIの者です」 「……入って」 電子ロックが解除され玄関に入る三人。そこには髪をピンクと黒に部分的に染め上げた細身の少女が立っていた。 「……TMI……そこの二人は分かるけど金髪のアンタは何?【奴ら】の関係者?」 穴井千種は自分の周囲に包丁を4本浮き上がらせて構える。 「わたしは終夜アリナ、TMIのカテゴリー5エージェントです」 「……吐き気がするわ!異常なまでの波動……頭痛と悪夢を運んできたあの台風と同じよアンタは!!夢に出てくる奴ら化物も!!」 包丁を射出する穴井千種、対するアリナは包丁を全て指で挟んで受け止める。 「!?え……嘘……指で!?」 「落ち着いてください穴井千種。わたし達はあなたを守るために来たのです」 「ふん!ああそう!!これから仕事なのよ、邪魔はしないでしょうね?」 「近くで見守らせてもらうだけです。できればあとで奴らとやらの話を聞きたいのですが」 アリナは包丁を置いて穴井千種の前に立って言った。 「時間が惜しいわ、話は移動中の車でよ!」 アリナの圧に押されながらも穴井千種は強気で言い放った。 車中で穴井千種に話を聞く三人。 「毎日同じ夢を見るのですか」 「見たくも無いのにね!暗い暗い水の底……深海から浮き上がってくるのよ何かが。ソレは私の近くで見てるのよ。気持ち悪い魚人間と一緒にね!!」 「魚人間……」 哿は端末を操作して池の調査で遭遇した魚顔人型が映し出した。 「……!?これよ!!コイツが夢に出てくるのよ!!あんたたちこれをどこで??」 「この近くの山で偶然見つけたのです」 「やっぱりただの夢じゃなかったのね……終わりだわ……」 頭を抱える穴井千種。車内の小物が浮遊し始める。 「落ち着いて下さい穴井千種」 横に座っていたアリナが肩に手を置いた。 「はっ……私とした事が……見苦しい所を。私の悪夢の原因はその魚顔が関係してそうね」 「現在調査中です」 「そっか……うん、少し落ち着いてきた。さっきは包丁飛ばしたりして悪かったわ。てっきり悪い異能者か悪夢の中から出てきた悪者かと思ったのよ」 憑き物が落ちたように表情が明るくなった穴井千種。アリナは肩から手を放した。 「急に吐き気と頭痛が嘘みたいに消えていったわ」 「そうですか」 アリナは自分の手を見つめる。穴井千種の肩に触れた瞬間どす黒いもやのようなものが車内から出て行ったの目撃した。 「それにしてもアンタ……本当にただのエージェント?モデルとかしてないの?」 「ただのエージェントです」 「ふうん……ねぇ、美容に気を付けてる事って何かある?」 「美容は詳しくありませんが身体を最適に保つために食事とトレーニングには気を付けてますね、簡単に言えばよく食べてよく鍛えてます」 「なにそれアスリートじゃん!まぁでもアスリートできれいな人多いもんねスタイルもめちゃくちゃいいし……そっかやっぱり食事と運動かぁ」 駅近くのロータリーに停車する。 「1時間もすれば終わるから適当に時間潰してて、17時に事務所の前で待ち合わせね」 穴井千種はそこから見えるビルの一室、雑誌社に向かった。 「流石に部外者の僕たちが雑誌社にまではいけませんしね。ここから様子を伺いましょう。何かあればテレポートで駆け付けられる距離ですし」 TMIのワゴン車に取り付けられた全方位カメラの映像を車内モニターに映し出す。 アリナは屋台のラーメン屋、たこ焼き屋などを見つめている 「そういえばアリナさんたち食事は?まだ少し早いですけど時間ありますしどうぞ」 「……わたしとしたことがすみません哿さん。良い香りがしたのでつい」 「そんな、いいんですよアリナさん。僕は逆に嬉しいのです前までのアリナさんならそんな反応しなかったですから。今は少しやわらかくなって良かったなって」 「アリナ、哿さんもそう言ってくれてますしラーメン食べに行きましょう」 フローレンスは医療用マスクを装着してアリナの手を取りワゴン車のドアを開けた。 「でも……」 「僕がちゃんと見てますし大丈夫です。さぁ遠慮しないで行ってください」 ワゴン車から降りるアリナとフローレンス。目の前に並ぶ屋台、一番手前の立ち食い天ぷらにアリナは向かった。 「アリナ、ラーメンは?」 「その前に天ぷらを」 大きなエビの天ぷらを4つ注文するアリナ、あっという間にたいらげ屋台を離れる。フローレンスはその間向かいにあるレーザー射的で最高得点を叩き出し景品の高級サングラスを取得していた。 「はいアリナ、これをあげます」 「サングラスですね、ありがとうフロー」 「私よりアリナの方が似合うかなって」 「フローも似合います、だからこれは時々あなたもつけて欲しい」 「ええ、わかった」 サングラスを装着するアリナ。 「ラーメン屋台、人が並んでますね。人気なのでしょう」 「携帯端末から提供までの時間を見られますね。20分待ちなら問題ありません」 屋台の列に並んで待っているとタオルを頭に巻いた威勢の良い店員が注文を取りに来た。 「スープ超濃厚、麺、具、マシマシマシで、サイズはこのチョモランマ盛りを」 アリナは携帯端末のメニューを見ながら注文する。 「承知致しやした、そちらの方は?」 「汁なし味麺の並でお願いします」 「へい、承知致しやした!」 続けてフローレンスが注文すると店員は首から下げた端末に入力していく。 「チョモランマ盛りって……麺だけで1㎏だって!!すご……」 後ろに並んでいる女学生の声が聞こえてきた。 「チョモランマて私達二人でも無理だよね晴凛」 「和美のお父さんでも流石に無理そう、あの人いけるのかなぁ残したら追加料金だよ」 「私たちは普通の並で」 アリナ達と女学生は隣のテーブルに着く。しばらく待つとラーメンが運ばれてきた。 「まずは汁なし味麺、こっちはチョモランマ、こっちは並2つお待ちぃ」 出されたラーメンはスープが透き通り味噌の良い香りが漂っている。アリナのチョモランマは丼の大きさは通常の3倍以上、もやしとキャベツ煮豚で麺は隠れその高さは30cm程になっていた。 「うっわぁ~隣のチョモランマすご……」 「あんまり人の見てないで食べよ?」 「そ、そだね。あ、具の真ん中に味噌がある!これを溶かしながら食べるんだね」 「おいしそう~いただきま~す!」 「おいしいねー!」 食べ始める女学生。 「いただきます」アリナはチョモランマ盛りを次々と口に運んでいく。 「え!?もう半分無くなってる……」 「超速くない?速いけど食べ方きれいだね」 5分ほどでアリナはスープまで完飲し立ち上がる。女学生たち二人はまだ半分ほどしか食べていない。 アリナは自分とフローレンスの分の支払いを済ませる。少し遅れて汁なし味麺を食べ終えたフローレンスがマスクを着けて近づいてきた。 「アリナ、行きますよ」 「待ってフロー、向こうにあるたこ焼きが気になるのですが」 「時間ですアリナ、17時までに現場に入らなくてはなりません」 「……仕方ないですね諦めましょう」 アリナとフローレンスは哿の待つワゴン車へ戻る。 「哿さん戻りました。穴井千種の様子はどうですか?」 「事務所でレッスンをしているみたいだけど……さっきから通信機器に妙なノイズが入ってきてまして」 収音装置で拾った音を再生させる哿。 『イ……イ……ダ……ル』 「女性の声……ですね」 『Daaaaaaaaaaaaaaaaaaaggggggg!!!』 「え?なに!?」「!?」「……!?」 獣のような叫び声を拾う収音装置。 「哿さん上です!ヘリコプターが落ちてきます!!」 直後、アリナが哿に向かって叫ぶ。哿は確認するまでも無く二人に触れてテレポート。ワゴン車から離れビルの屋上に移動する。三人が移動した時にはヘリコプターはワゴン車に激突していた。 続く
Jul 21, 2020
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異能者特務機関:TMI 第41話「決着2」 セレスティアはアイスクラーピウスの医療ポッドの前のパネルを見つめている。 アイスクラーピウスのメインAIの一部として組み込まれていたアデル・ホワイトの脳を回収しバイオプリンターで素体を成型し脳と接続ナノマシンによる神経接続、外殻脳の装着、量子チップを組み込んでいく。 「完全な義体を用意するのは後で。今はとりあえずアデルを復活させます。TMIのエージェントらがアイスクラーピウスに踏み込んでくる前に」 「その後はどうするのセレスティア」 「心配ないですよアナスタシア。アイスクラーピウスの進路を合衆国に変えモンスターパンデミックの収束に向かいます」 「それって大丈夫なのかしら?」 「私は幻赫の血縁の者でTMIとも協力関係にあります。アイスクラーピウスも使えます。反対される方は居ないと思いますが?幻赫の信者であっても」 「私はどうすればいいと思う?貴女と一緒に行ってみたい気持ちもあるけれど……」 「来て欲しいですね。貴女の力が必要です、合衆国の危機を救うことは祖国ロシアの為にもなると思いますよ。家を継ぐのであればあちらに太いパイプを作っておいて損はないはずです。それに望むのであればクローンで雷帝フョードル・ヴァシリエヴィチ氏を復活させることも可能ですよ、アデルが戻ってくれば」 「兄はまだ亡くなっていません……回復の見込みはありませんが……」 「フョードル・ヴァシリエヴィチ氏の事は貴女が決めると良いでしょう」 『バイオプリンター完了。生体チェックオールグリーン、覚醒します』 ポッドが開くと白い霧が噴出する。中にはプラチナグレーの髪の女性が見えた。 「……」 ゆっくりと瞼を開ける女性。全身の機能を確かめるように順番に四肢を動かし体を起こした。 「アデル」 「……おはようティア」 「その呼び方、その声……」 「大体の事はアイスクラーピウスのデータとあなたのAI・Adeleで把握している。貴女が私の後に続いてプランを成し遂げても良かったのだけど、どうして私の蘇生を?」 「アデル貴女を復活させること事こそが最適だと判断したのです」 「そう……オリジナルのセレスティアとは少し違う所なのね。あの子なら……AIによる人類救済プランを進めたかしらね。貴女はセレスティアクローン1号の……アルシア・セレスティア・ホワイトだから」 「はい」 「色々話したいこともあるけれど、すぐに始めなければならない事があるわね」 「そうですアデル」 「あなたのAI、名前をClaraに変更なさい。アイスクラーピウスの全権限を幻赫から私に書き換えます。必要なものはClaraに伝えます」 「すぐにそのように。アイスクラーピウスは合衆国に向けて航行します」 「それでいいわ……では15分後にVIPルームで。そこのロシアの子も一緒にね」 「え……あ、はい」 アナスタシアの頭にほんの一瞬『目覚めさせてはいけない者』という思いがよぎったが横に居るセレスティアの笑顔を見てすぐに薄れていった。 *** ―アリナが目を覚ましたのは幻赫を討ってから三日後の事であった。 「アリナ!」 ベッドの横にフローレンスが座っている。目を開けたアリナをみて大きな声で叫んだ。主治医と看護師が駆けつけアリナの状態をチェックする。それが終わると病室にはアリナとフローレンスだけになった。 「意識だけが戻らなくて……何も異常はなかったのに」 「フロー、ここはどこですか?」 「KK大学病院です。哿さんの親族の方が経営されている病院ですよ。哿さんは今日本支部に行ってますすぐにここにきます」 「……ありがとうございますフロー、いきなりですが……あの後どうなったのですか?」 「幻赫は大阪の漢山に墜落し爆発四散。用意していたクローンもセレスティア博士の仲間の人によって始末されました。アメリカ合衆国の変異体パンデミックは収まりつつあります。到着したアイスクラーピウスのおかげで。日本や世界各地で破壊活動を行っていたブラックヴァリーは煙のように姿を消していきました。逮捕者からも有益な情報は得られませんでしたし……分かった事と言えば『黒谷の里』と呼ばれる所が由来だとか」 「なるほどそれでBlack valley(黒い谷)」 「アイスクラーピウスの乗船員は非政府組織として認められることになりました。アメリカの変異体パンデミックは収束に向かっているのですが……予防はある程度できても変異した者への対抗手段に乏しい状態ですね。最初は知性のないモンスターでしたが日々進化しきて今では集団行動するまでに。TMIの主力は今そこで活動しています」 「フロー、わたし達も合衆国に行くことになるのでしょう?」 「いいえ、私達日本支部のUチームは行きません。Bチームの皆さんは向こうで支援活動をしていますが」 「それはなぜ?」 「アリナをしばらく戦いから離れさせたいからですよ。哿さんが日本支部長代理になられたというのもあるんですが、ジェームズ長官も少し様子を見たいと言われて」 「……」 管理者とのやり取りはアリナの記憶の深い所で刻まれてはいたが言葉に出すことは不可能でフローレンスに伝える事は出来なかった。 「どうしたのアリナ?」 フローレンスはアリナが幻赫を討ち全ての気力を失ってしまったのではないかと懸念していた。 「退院してわたしはどうすれば?」 「高校生として過ごせばよいのだそうです。時々任務は入って来るとは思いますがきっと大丈夫です」 「フロー、わたしはもうあの時のような力は……」 「必要ないですよアリナ、あんなのは人類の危機を救うための大きなもの。貴女はあなたのまま私と哿さんのそばにいて過ごしてくれればいい」 「どれほど失ったのかわからないのですよ」 「貴女の価値は異能の力だけじゃないですよ。私にとってアリナは救いの存在、こんな辛い事や悲しい事ばかりの世の中、貴女なしではとても私は生きていけそうもないのです」 「フロー……」 「哿さんも言ってました。『アリナさんとフローレンスさんといるときだけが僕は心穏やかに過ごすことが出来る』って」 「そうですか……」 アリナは体を起こすとテーブルの上にあったステンレスのコップを手に取った。 「水飲む?」 「はい、少しだけ」 アリナはステンレスのコップがひしゃげている事に気が付いた。 「あ……」 「目覚めたばかりで上手くコントロールできないだけですよアリナ」 周りを見渡すと病室にはベッドは一つ。コンクリートの壁に囲まれ窓は防弾に見えた。異能者専用病室ということが分かった。 「わたし……目覚める前にも迷惑を……」 「全然平気ですよアリナ、気にしないで」 いつも気丈に振舞い鋭い目つきをして猛獣の雰囲気を出していたアリナが今では年相応の少女に見えている。その変化にフローレンスは少しだけ悲しくなったが良い変化だとポジティブにとらえそっと手を握った。 「フロー、危険です今のわたしは……」 「アリナ、あなたならできます。今すぐにできなくてもきっとコントロールできる」 「……」 アリナは恐々と震えながらそっと手を握り返す。一瞬握力の強さでフローレンスの手の骨が軋んだがすぐに緩み心地よい力加減に変わった。 「フロー大丈夫ですか?」 「ええ、この調子で徐々に取り戻していきましょうアリナ」 「異能力の減退……」 「減退ではないのだと、バランスが崩れてるとのことです……あの戦いでアリナ自身の能力は成長した。けれど異能力はそうじゃなかった……今のアリナはカテゴリー5に入るかどうかのラインだと長官は言ってましたね」 「そうでしたか……力加減の制御が上手くいかないのはそういう事だったのですね。敵を相手に手加減するのが難しくなるというのは致命的です。殺めてしまいます……」 「アリナに隠してもしょうがないのでハッキリいいますね……原因は精神的なものだと聞いてます」 「精神的……幻赫を討ったわたしは明確な道筋が見えていません……自分自身あの太い一本道があったからこそ異能力のコントロールも上手くできていた気がします。今はとても頼りない道が何本も見えている状態です」 「アリナ……」 「これまでは幻赫を斃すために強くなることを考え生き延びることを考え鍛えてきました。斃した後に道が開ける、人生が新たに始まるとその時は考えたりもしましたが今は何も……フロー、わたしは燃え尽きてしまったのでしょうか」 「燃え尽きたなんて悲しい事言わないで……アリナ貴女はもう強さを追求しなくていい。今すぐしっかりとした目標が無くてもいいじゃないですか。日常を過ごしてみて何か見つかるかもしれない、何でもやりたいと思いついたことを試すのも悪くないと考えるのですが……私と哿さんと一緒に色々やってみましょうよ」 「わたしはこれまで戦う事ばかり考えてきたので思いつきません何が出来るかも……」 「アリナは字が綺麗、フランス語、英語、日本語が使える。マナーが身についている。ダンスが上手、手先が器用で裁縫も料理も……それから……」 「フロー……」 「アリナ?」 「お腹がすきました」 「そうですかじゃあコース料理を……と言いたいところですがまずはお粥ですね」 フローレンスが微笑むとアリナも微笑んだ。 「失礼します」 ノックを三回、病室に現れたのは哿だった。手には花を持っている。 「アリナさん目覚められて良かった……なにも心配しないでゆっくり過ごしましょうね。学校に通う事になりましたが夏休みが近いですし開けてからでも大丈夫ですよ。TMIの任務も本部からの応援で何とかなってますし」 哿は花瓶に花を挿しながらそう言った。 「主治医の先生と看護師さんが来ましたね。哿さん、また後でアリナに会いに来ましょう」 「そうですね」 *** アイスクラーピウスがアメリカに到着して2週間。 ――TMIアメリカ支部 「モンスターパンデミックは収まらない!?どういうことです!!」 アメリカ支部長ハリー・ハーマンは声を荒らげた。 「変異体らは知性を持ち始め人間に擬態し始めました。いえ、寄生とも言えますね」 アデル・ホワイトは手にした端末の画面を宙に表示させる。 「この擬態可能な固体が他の変異体を率いています。既に制圧の為に来たアメリカ軍内部にも入り込んでいると推測されます。これからこの国はこのどこに潜んでいるか分からない敵と戦う事になります、その意味で収まらないと申し上げたのです」 「そんな……奴らの擬態を見破る方法はないのかね?」 「あります……これです」 アデルは画面に緑色のアメーバ状の生物と緑色の皮膚に変化した人物を表示させる。 「これは?」 「オーグルと呼ばれている存在です。古代からこの星に存在する生物で一時期は絶滅したと言われていましたが最近になって原始のオーグルをある研究者が発見し培養に成功したのです。このオーグルは変異体の擬態を見破る事が可能です。次の画像をどうぞ」 そこには街中で変異体に囲まれた少女から緑黒の触手が伸びあっという間に変異体を吸収していく姿が映し出されていた。 「オーグルとやらは危険ではないのかね?」 「危険なのは培養されたオーグルです。それは既に専門家が対処したのでご心配なく。原始オーグルは知性生物です。本体は脆弱で宿主に依存しなければ生きていけませんが上手く共生して栄えた者たちもいるのです。オーガなどと呼ばれて。彼らは人間と敵対する意思はありません協力関係を築けるかどうかはこれからですが」 「ふうむ……このオーグルと共生している少女……オーガの子とは連絡を取れているのかね?」 「もちろん。ああ、それからハリーさん、オーグルの事は最高機密で。これは『ジーニアスレイジ』の一人である私アデル・ホワイトだからこそ知りえたものなので」 「わかった。大統領には知らせなければなるまい?」 「ええもちろん、そちらはお任せいたします。我々は国際的緊急医療団体MSFとの約束がありますのでこれで」 アデルの後ろに立っていた不動了痲(G)がついていく。 ジェットヘリに乗り込むと西海岸沖のアイスクラーピウスに向かう。 「アメリカが堕ちるのも時間の問題だなアデル」 「堕ちる?そうではなりませんよ、既にこの国は大統領さえも操られていますよ。一般に知られる事のない裏組織らによってね。幻赫はアイスクラーピウスを持って彼らに力を見せつけ従わせようとしてたみたいですが私は違います。従うのではなく取り込むのです。政府高官官僚、軍関係者、研究者などが属しているアメリカの裏組織を。軍関係者はもう我々がほぼ取り込んだと言ってもいいでしょうあの子のおかげで」 「あの子……セレスティアか。戦闘スーツの件上手くいったんだな」 「ええ、そう。あなたの知るセレスティアクローン1号のあの子です。私を救出してからは益々研究に没頭してるようで。貴方も頼みますよ、優秀な戦士を育てるのです」 「ああ、任せておいてくれ」 「Mr不動、貴方はあの子に好意を寄せているわね?」 「……新しい存在になってその気持ちも変わったのかと思っていたが一目ぼれと言う奴はそう簡単に消えないらしい」 「添い遂げたい?」 「いや……この距離感で彼女を守り続けるのもいいと考えてる。彼女は俺にとっての救世主であり庇護対象なんだ。崇拝に近い感情だよ」 「それなら……あの子は必要だから無理だけどセレスティアクローンの一人を貴方につけてあげましょうか?それとも貴方とあの子の遺伝子を交配させて子供を作ってあげましょうか?」 「あんたは想像以上にトンデモない人だな。幻赫が警戒したはずだ……だがまぁ望みとしては彼女を俺の目が届くところに置いておいて欲しい。Gとしてのハッキング能力は健在だがネットワークを通じての電脳体移動はもうできない」 「なあに?バトラーとして仕えるのが望み?」 「ああ、そう考えてくれて構わない。俺の主は彼女だ、今もこれからもずっとだ」 「ふふ……なるほど、あの子が貴方を信頼してたのが分かった気がするわ。いいでしょう、あの子の傍にいて守り通しなさい」 「一つ条件があるわMr不動」 「なんだ?」 「貴方のクローンを作らせて」 アデルは口の端をわずかに上げて言った。 *** ―アメリカ軍特殊部隊基地 セレスティアはシミュレーター内に配置された戦闘スーツをモニターで眺めている。 「それではテストを始めますか」 セレスティアが声をかけたのはこの基地を統括しているバルバ大佐と研究主任のアレン。 「無人兵器化が進む中、開発された遠隔操作によるドローン部隊。戦闘車両、爆撃機全て最新のものをシミュレーターに反映させた。君のパワースーツとやらの性能を見せてもらおうか」 「無人兵器大いに結構です。しかし生身の兵士にしかできない事も未だ多く全てをAIに任せるのは抵抗がありますよね?理想はAIとの連携ですが……まずはスーツの性能を見てください(Clara、戦闘終了までの時間は?)」 『3分で殲滅終了ですマスター』 Claraの言葉を聞き笑みを浮かべるセレスティア。 「シミュレーション!始め!!」 バルバ大佐の号令で開始される。その時浮かべていた嘲りと自信に満ちた表情は3分後消えることになる。 続く
Jul 8, 2020
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