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異能者特務機関:TMI 第35話「アイスクラーピウス2」 アプロディーテーの指が再び引き金に掛かる。それと同時にアリナは飛び出し拳を放つ。そこにアプロディーテーの姿は無く空を切っただけであった。 「あなたの攻撃は全て外れると言ったでしょう?」 2メートル後方に立っているアプロディーテーが言った。 「いくらでどうぞ?満足するまでやってみては?その後この弾丸であなたを貫いて差し上げます」 「(わたしの体がアプロディーテーへの攻撃を拒否してる?敵との距離は会話の声からして変わっていない。テレパスの罠にかかっているのなら、かかっていると自覚して体が思うように動かないのなら……)」 アリナは意識を自分の中に集中し瞑想状態に入る。軽く開いた左手を前に右手は顎の前で軽く握り少し腰を落としゆっくりと息を吐く。 アプロディーテーの弾丸が放たれる。アリナは無駄のない出来て当然といった動きでガントレットで弾丸を弾く。視線は宙を眺め定まっていない。 「そんな!」 拳銃を連射するアプロディーテー。アリナは全て弾き返す。 「(『意識と肉体を切り離して無意識下で体に覚えさせた動きを発動させる』)」 アリナは武術を教わった祖父の言葉を思い出していた。森の中で四方八方から打ち出される石礫を捌く訓練を。 「私は完璧なはずよ!この【ささやきの魔女】の魔法から逃れる術などないわ!!『終夜アリナ!自害しなさい!!』」 香りを発動の条件とし声帯と舌を使って魔法を発動。ささやきはアプロディーテーの意のまま、これまで数えきれない人間利用しありとあらゆる犯罪に手を染めてきた。 アプロディーテーの言葉はアリナには届かない。ベヤリング弾が頬を掠める。 「魔法に対する備えも知識もないたかが超能力者がこんな……!!」 アプロディーテーは哿とフローレンスに狙いを定める。一瞬でその前に立ちはだかるアリナ。 「この……」 銃口を向けるアプロディーテー、アリナはその右手を跳ね上げ裏拳を放つ。対するアプロディーテーはそれを身を反らして回避する。 「ふん、近接戦闘が出来ないと思っていて?残念、魔女はバレットアーツを履修済みなの」 動きを加速させるアプロディーテー、右ローキックから左のジャブ、右ストレートのかわりに拳銃を撃ち込む。 アリナは難なくガード、銃撃に合わせてカウンターの正拳突きをアプロディーテーの胸に叩き込んだ。 「げぼぉ……」 大量の血を吐いて膝を着くアプロディーテー。 「バンダースナッチ!」 アプロディーテーの影から青黒い毛むくじゃらの牛程度の大きさの何かが飛び出した。 「こいつらを食い殺すのよ!生きたまま連れて来いとか言われてたけどもうそんな事どうでもいいわ!この私を怒らせたのだから!!」 バンダースナッチと呼ばれた獣が哿とフローレンスに狙いを定める。 「『哿希世美にフローレンス・フランシス!お前たちは戦闘スーツから出る、そしてそのまま動けない!バンダースナッチに食われるしかない!!』」 「!!」 意識を取り戻すアリナ、バンダースナッチに向けてベヤリング弾を撃ち込む。 「GUUUU!」 「おっと貴女の相手はこの私!たかが拳の打撃で防御結界を3枚も砕いてくれたのには驚いたけど。ここで何もできずに生きたまま食い殺される仲間を見てるのよ!!」 拳銃のトリガーを握りこむアプロディーテー。銃口から飛び出したのは光の塊、光帯を伸ばしながらアリナのガントレットに激突。そのまま昇降機の壁に押し込んだ。 「魔法使い相手にお前たちは何もできない!グレイストームは訳の分からない相手に油断して負けたの、たかが突然変異の超能力者が選ばれし才能とそれを磨き上げた魔法使いに敵うはずがないのよ!格の違いを思い知りなさい!」 アリナは正体不明の力に押さえつけられながらも後方の壁を蹴り力づくで脱出を試みる。 「無駄よ!その弾丸に私はささやいた『終夜アリナを押さえつける』と。弾丸は金属を主体とするホムンクルス、私の無限の魔力を使いどこまでも押さえ続けるのよ」 「20%……」 アリナの目が輝く。ガントレットを押し続ける弾丸を両手の指で掴み左右に力を込める。 「指先に力を集中して脱出しようって事?じゃあ更に魔力を込めなきゃね」 「いいえ、違いますよ」 両手を一気に広げるアリナ、破裂音と共に弾丸は真っ二つに引き裂かれる。 「GYAAAAAAA!!!」 断末魔の叫びをあげる弾丸ホムンクルス。 「えっ……」 「押し返せないのなら破壊すればいいのです」 「そんな弾丸を指で引き裂くなんて……ええ、でもそれが出来たからといって私の魔法からは逃れられない!『終夜アリナ、貴女は動く事ができな……』」 言い終わる前にアリナは距離を詰め体重を乗せた肘撃ちをアプロディーテーに叩き込む。一直線に飛んだアプロディーテーの体はバンダースナッチと呼ばれる獣に激突、床を滑っていった。 「が……」 「大丈夫ですよ、即死でない限りフローに助けてもらえますから」 「GULU……」 即座に距離を詰めバンダースナッチを蹴る。サッカーボールめいて飛んで金属製資材コンテナを空き缶のように潰した。 その様子を血を吐きながらアプロディーテーは見ていた。 「この空母を破壊しない程度には威力を抑えてますから」 「こ……の……」 銃を構えるアプロディーテーの指をベヤリング弾が吹きばす。 「アアアアアッ!……やる……わね……だけど幻赫さまには……到底敵わないわ……よ」 肋骨を砕かれ肺を損傷しているアプロディーテーはあらかじめかけていた自動再生魔法でなんとか意識を保っている。 「次は顎を砕きますよ」 「あの方は私や……グレイストーム以上の……使い手……勝てるはずが……な……い」 「それほど魔法を使いこなしていると?」 「私と……グレイストームが……教えたの……だか……ら」 飛ばされていたバンダースナッチが体液をまき散らしながら戻って来る。長いしっぽを振り回しアリナを回避させその隙に毛を伸ばしアプロディーテーを背に乗せた。 「GULUUUU!」 毛針を猛連射するバンダースナッチ、アリナは咄嗟にしゃがんで回避。立ち上がりながらベヤリング弾で応戦、バンダースナッチの体をかすめ体液をまき散らせた。 「GULU……オマエツヨイ、デモコレイジョウヤラセナイ」 「主人を守っているのですね、その者の命を取る気はありませんよ。魔法とやらを解除すればわたしは攻撃を加えませんが」 「GULU……チョウシニノルナヨ?オレガソノキニナレバ、コンナフネゴト、オマエラヲツブセル」 「そうですか、それなら次は50%……一撃でお前を粉砕します」 ゆっくりと下がるバンダースナッチ。尻尾を持ち上げる。 「ダメよバンダースナッチ……『これでおしまい』……さぁ魔法は……解除したわ……(さっきの2倍以上の力……これで50%……更に2倍に上がるというの?)」 戦意を喪失したアプロディーテーは両手を上げゆっくりとバンダースナッチから降りる。 「では拘束します」 アリナはバンダースナッチを影に戻させ、両手足を特殊カーボンのワイヤーで縛る。口には応急手当て用のテープを張って塞ぐ。 「フロー、哿さん」二人に駆け寄るアリナ。 「大丈夫ですよアリナ」「すみませんアリナさん」 「フロー、わたしは大丈夫だから力を使わないでいいですよ」「僕も怪我したわけじゃないからフローレンスさんは力を温存してください」 「そう……ですか、そうですねこの先何が待ち受けてるか分かりませんものね」 三人は腰を上げ格納庫から通路へと進む。 *** 「おいおい……切り札のウィザードとウィッチやられちまったぜ?幻赫さんよ」 ブラックヴァリーの実質的頭領・不動了痲が言った。黒いつなぎに関節部を守るアーマー、両脇腹に消音器付きオートマチックピストル、両大腿には愛用の大型リボルバーが収まっている。腰と足首にはナイフが装着されている。 「想定外であったがデータは取れた。グレイストームに対抗できる者が居るとはな。かといって奴一人でTMIと他を全て相手にできるとは思ってない。魔女ダナイ……いやアプロディーテーか、あの女にしてもそうだ」 念爆者・幻赫は本革張りの椅子に腰かけて言った。 「フランスの坊ちゃんはどうなんだ?」 「あの程度の者期待してはおらぬ。奴は戦力としてではなく交渉のカードとしての人材だ。死なれては困るところであったわ」 「とかいいながら死んだら死んだで異能兵士を整形して坊ちゃんそっくりに作り記憶を埋め込んで使うつもりだったろ?」 「よく分かってるではないか。だからこそデータが大事なのだグレイストーム、アプロディテーの魔法は既に修得済み。奴らのような無制限の魔力は無いが儂にそんなものは必要ない、それを得るために強烈な縛りを受けたく無いのでね」 「ふ……だからあの装置を使うってか。SPBSD(疑似人格脳共有装置)」 「出来損ないどもの脳だが、実験だけに使うのは勿体無い、だからこうして有効利用してやるのさ。儂は人類の49%を犠牲にして51%を救う決断が出来る。49%は犠牲は単なる死ではない、有効利用するのだ。人口が増えすぎる心配をしなくて良い世界になるのだ」 「はっは!ぶっ飛んでんなアンタは相変わらず!だが世界を救う英雄ってのはそうでなくちゃあな。話は変わるが侵入してきたTMIの連中の始末はどうする?俺が行くか?」 「奴らは破壊工作をする様子も無い、適当に探索させてこのアイスクラーピウスを見せつけてやる。不動君、ブラックヴァリーは昇降機のフロアーに行かせ後から来る連中に対応、君は侵入者の3人を除くこの部屋に来るものを相手してくれないか?」 「ん~?それは侵入者の3人はアンタに通せって事かい?」 「ああ、特にあの終夜アリナは特別扱いだ。TMI長官ジェームズ・スチュワート以来のな」 *** アリナ達が先に進んだ数分後、戦闘スーツ姿のセレスティアが現れた。彼女は倒れているアプロディーテーを発見する。 「魔女……」 ゆっくりとアプロディーテーに接近すると口に貼られたテープをはがす。その時甘い香りを検知した。 「……」 「あら……貴女は美濃……いえ、神名セレスティア白夜ね?」 アプロディーテーはささやいた。 「よく調べていますね」 「それはもう……(名前を知ることが私の魔法の発動条件の一つだから)」 「『私を起こしなさい美濃セレスティア白夜』」 「いいですよ」 「『ついでにこの忌々しい拘束を解きなさい』(バンダースナッチはまだ回復中だし)』」 「それはお断りします」 「な!?(魔法にかかってない?香りが戦闘スーツのヘルメットで届いてない?でもこの距離なら直接ささやけば効果は十分)」 「ふふふ……」 「ああ、そうじゃあ『神名セレスティア白夜』拘束を解きなさい」 「しませんよ」 「なに……!?(名前は自分が自覚しているものなら条件に当てはまる……本名じゃなくても自分がその存在と認識していれば)」 「どうしましたか囁きの魔女?」 「バンダースナッチ!」 傷ついて回復中のバンダースナッチを召喚、拘束を解除し、毛針で攻撃。セレスティアの戦闘スーツに突き刺さる。しかし微動だにせず毛針をプラズマで燃え上がらせ処理した。 「殺すのよ!」 毛針を連続発射するバンダースナッチ。大量の針が突き刺さりハリセンボンめいた姿になるも即座にプラズマで焼き払う。 「装甲を貫通して体をハチの巣にしてやったのにどうして……」 「それはこういう事だから……」 装甲がはがれ中から出てきたのは銀色に輝くボディを持つ者。 「お前は……誰!?」「GULUU……ナニモノ」 「Gとでも呼んでもらおうか。使い魔?貴様の毛針は劣化ウラン弾に相当するほどのものだが私には通じなかったな」 電光を走らせ瞬間移動でバンダースナッチの側面に回るG、超電導蹴りを腹部めりこませて天井まで吹き飛ばす。 「私は人類を超越した者。さて……おまえの力を頂くか」 手を伸ばすG、囁きの魔女はワンカウント詠唱で掌に小さな魔法陣を展開させる。 「ヌゥ……」 Gの手は魔法陣で停止、全身を赤い波動が駆け巡る。 「(ファイアボルトを利用したカウンター、魔法耐性の低い者はこれだけで灼熱死)」 「面白い!電撃のようでそうではない灼熱の何かが体を流れたがこの程度の損傷、ナノマシンによるナノマテリアルの構築で瞬時に再生可能だな」 「お前はホムンクルスやオートマタもしくはゴレムの類ね……」 「広大なネットの世界で得た知識だけでは貴様の操る【魔法】は習得できなかった。経験や技術は貴様自身から頂く必要がある」 再び手を伸ばすG、囁きの魔女は後転倒立から立ち上がりコートからナイフを2本取り出した。柄の部分には爬虫類を思わせる装飾がなされている。 「『敵を裂け、解体するのよ』」とナイフに囁きかける。 装飾の爬虫類は口を開けて応じる。囁きの魔女が作り出したホムンクルスである。ナイフの刃の部分は宝石を削り出して作られている。 対するGはプラズマ弾を発射。しかしプロペラ回転するホムンクルスナイフによって弾かれた。 「1万度のプラズマを弾くか囁きの魔女」 「お前の属性は把握した」 「属性?フム……ならばやり方を変えるとしよう」 「勝手にしてるがいい」 囁きの魔女はコートの中から折り畳み式のほうきを取り出し横乗りで腰を掛ける。Gは電光の瞬間移動で接近を試みるがホムンクルスナイフによって進路を阻まれた。飛行する囁きの魔女、全身にキズを負ったバンダースナッチを回収して昇降機に向かう。 Gの行く手を阻むホムンクルスナイフたちはプラズマ弾、電撃をものともせずに付かず離れず牽制を続ける。 「フン!」 Gの背から円盤型のドローンが飛び出す。ホムンクルスナイフが迎撃に掛かると触れた瞬間、糸が切れた様に落下した。 「フォッシーならば【属性】とやらにも対抗できると解った」 異能を一定時間無力化する『ゴリラのフォッシー』はGによりユニットとして復元されていた。 「(フォッシーは容量が大きすぎる力は無効にはできないのは終夜アリナで解っている。囁きの魔女の無力化は不可能であっても奴の放つ魔法は可能……か)」 それを見た囁きの魔女は粘土状のホムンクルスに囁きかけて投げ、昇降機を起動させる。粘土状のホムンクルスは分裂を繰り返し蜂の大軍と変化した。 「『Gお前はなすすべも無く蜂の大軍に破壊される』私に名前を知られたのは間違いだったのよ、魔女を舐めた事を後悔して逝きなさい」 「(馬鹿め聴覚は既に遮断している。貴様はここで全てを奪われ死ぬのだ)」 円盤型ドローンのフォッシーを左手で掴むG、シールドとして前に構える。次々と襲ってくる蜂の大軍を撃ち落として進む。 「しつこい奴だ!」 左大腿からオートマチック拳銃を取り出す囁きの魔女、放つ弾丸は翼の生えた鮫に変形してGに襲い掛かる。 「プラズマエミッター」 目の前にプラズマの球体を生成、翼の生えた鮫を押し戻す。 「……逃がしたか」 鮫を爆散させる頃には囁きの魔女は姿を消していた。 続く
Feb 23, 2020
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異能者特務機関:TMI 第34話「アイスクラーピウス」 ポルックスは言う。 「この船には世界中の要人や病人医師や研究者が乗っている。それは知ってるよね?だから全力でなんて戦えないしこの船は破壊できない。君の力をもってすればそんな事は簡単なんだろうけど絶対やらない」 「何が言いたいのですか」 「杉田幻赫と戦いになってもここでは全力は出せないしむしろ不利って事。約1000人の人質、世界のトップたちを敵に回すことになる」 飛び込みから連続攻撃を仕掛けるポルックス、見えない分身との連携でアリナを攻める。五感を研ぎ澄ませ風切り音と空気の動き、ポルックスの動きの機を見極め全て回避するアリナ。 「そんな事になる前に僕のものになればいい。そうすれば最悪の事態は避けられるよ?悲願である敵討ちはお預けになるけどね」 「言ったはずですよ、わたしを止める事などできないと」 「後悔する事になるよ?敵討ちは出来なくなるなんて言ってない、お預けになるって言ったんだけどね。世界のトップ64人が全員下に着いた訳じゃあない、そこは間違えないで欲しいね」 「わたしは貴方に敵意はありません。通してくれるだけで結構です」 ポルックスの見えない分身と本体の爆発拳を回避しながらアリナは言った。 「杉田幻赫を斃せたとしてその後はどうするんだい?あの人の思想を継ぐ者はいるし世界中に信者はいる。敵討ちをしてそれで終わるわけがない泥沼の闘争の始まりだよ。このアイスクラーピウスは世界中の医療機関が求めているんだ。あの人を殺したりすれば君は世界中から追われるよ」 「あの男は信じてはいけない、斃さなければいけない存在です」 「どうして?彼のこれまでの功績は人類にとって素晴らしいものだよ?」 「幼少の時に見たあの男の姿が忘れられません。あんなに暗く冷たく邪悪な力を感じる者など他に居ません。あの男は功績など目的のための手段でしかないのです」 「それは思い込みじゃない?杉田幻赫と話したことも無いでしょう?」 「話し合う事などありません」 「彼の事をよく知りもせずに討伐しようというのかい?そりゃあおかしい」 「貴方に理解されようなどと考えていません。わたしはわたしの目的の為に進むだけです」 「君のそれは正義でもなんでもない狂気だ!何も生まない馬鹿げてるよ」 「だからどうしたというのです、わたしはそれが目的です。念爆者を斃すことがどういう意味を持つかなどどうでもいいことです。邪悪な存在がわたしの大切な者を奪った、だから斃す。それだけです」 「君が世界にどう思われようと関係ないというのかい?」 「ええ、それがどうしたというのです?わたしは念爆者を斃す為だけにこれまで生きてきました。それだけの存在と思われてもいい」 「君の大切な人も何もかも失う事になるんだよ?ただ一人をやっつける為に他の何もかもを犠牲にするっていうのか?それは君のいう邪悪だ!多少の犠牲を伴ってもより多くの人を救おうとしてるのが杉田幻赫さ。人類の49%を犠牲にしても51%は救われる!」 「どうやら念爆者にすっかり染まっているようですね。それがあの男のやり方でしょう。世界を味方につけて野望を達成する」 「他人の言葉に全く耳を貸さない君は異常だ!」 「それは違いますね、選んでいるだけです」 「杉田幻赫を討伐した後どうなっても知らないぞ!」 「わたしは仲間を信じているので念爆者を討伐した後の心配などしていませんよ」 「……僕は君の仲間になれないと?」 「その通りです。わたしは嘘が分かりますしどのような感情を向けているかも分かります。純粋に騙されて悪意が無い場合は別ですが貴方はそうではありません」 ポルックスのラッシュを見切り徐々にカウンターを当てていくアリナ。 「分身は不死身と聞きましたが不滅では無いようですね」 踵落としをいれたアリナの足に分身を粉砕した手ごたえがあった。 「クソッ……最強の肉体をイメージして作り上げた分身が!でも作り直せばいいだけさ」 「会話をしながらの戦闘中にそれをできるほど貴方に余裕はありませんよ」 下段蹴りでポルックスの膝を粉砕するアリナ。 「あぎゃああああああああああ……クソオオオオオオ!!」 痛みに耐えながら片足で跳んで爆発拳を放つポルックス、アリナはそれを掌で受け止め爆発ごと拳を握りつぶす。 「いぎゃあああああああああああ……」 「まだやる気ですか?」 「うああああああああっ!」 腰から拳銃を取り出し連射するポルックス。弾丸はアリナの皮膚に傷をつける事は無く地面を転がっていった。アリナは拳銃を掴みそのまま捻りあげポルックスの手首を粉砕する。 「うぎいぎぎぎぐぐがあああ……つ、痛覚遮断!!へへっ……ナノマシンによってこの体は強化されてるんだ。すぐに再生して……」 アリナはポルックスを踏みつけて残っている足も粉砕する。 「これで再生に更に時間がかかりますね。それではわたしは先を急ぐので」 「ま、待て!僕を残していったらあっちにいる仲間を殺すぞ!!」 ポルックスは特殊カーボンテントに視線を向けて言った。 「がっ……」 ベヤリング弾で顎先を打たれ脳震盪で気を失うポルックス。 「もう大丈夫ですよマイケル」 「OK!!こっちも準備できたぜ!!それじゃアポートで護衛艦に居る仲間を呼ぶぞ」 テントから出てきたマイケルが両手をかざすと、ルキナ、哿、フローレンス、アナスタシア、セレスティアが次々と姿を現す。 「マイケル、セレスティア博士もですか?」 「なんかあのミカエルって助っ人がジェットヘリも見ててくれるってんで……ねぇ博士?」 視線を向けるマイケル。セレスティアは戦闘スーツの頭部を開けた。 「その通りです。皆さんと距離が近い方がサポートもしやすいので。あちらはミカエル氏に任せることにしました。土御門氏もおられるので平気でしょう」 「早速だけど……敵さんのお出迎えのようだぜ」 暴徒鎮圧用のシールドを呼びだして構えるマイケル。甲板には黒ずくめの兵士たちが4人現れる。一斉にアサルトライフルを構えた。 「邪魔ですね」 セレスティアが左手を突き出す。4本の指から緑光線が放たれ4人の兵士の頭を貫いた。 「は、博士!?」哿が思わず声を上げた。 「ご安心を、あれは戦闘用ロボットですよ」 貫かれた兵士の頭からは火花と青色の液体が流れ出ている。 「あのロボットのパーツと武器を頂きましょう皆さんは先にどうぞ、援軍が来るまでここは私とルキナさん、マイケルさん、アナスタシアで確保しておきますので」 援軍のTMIはマイケルの異能範囲に入り次第空母アイスクラーピウスにアポートする予定になっている。 「長官に呼びかけているけど返事がないな……襲撃者の撃退に忙しいとテレパスの來美ちゃんからは聞いてるが……」 『すまないね諸君、空母への到達ご苦労だった。こちらも準備が出来次第向かうよ』 「長官!」 『一般市民まで操る異能者がいて少し手を焼かされたけどもう大丈夫だ。君たちは気にせず任務に集中してくれたまえ。警察や政治家、ネットを使った圧力攻撃など先の大戦で対処方法は身についているからね』 「そ、そうですか!待ってますよ!!」 アリナ、哿、フローレンスは分析して判明したハッチの前に立っていた。ゆっくりと手で触れ確認する哿。初めて移動する肉眼で見えないテレポート先を慎重に演算している。 「多分大丈夫です。アリナさん、フローレンスさん」 「行きましょうお願いします哿さん」「お願いします」 二人の言葉に頷く哿。その直後テレポートする。三人は天井、壁、床全て白で塗られた昇降機に降り立った。 戦闘スーツを着たままの哿とフローレンスは周囲の状況をスーツのAIに調べさせる。 「監視カメラの他には特に見当たりませんね」 「タレットの一つや二つ覚悟してきたのですが」 「昇降機の下に5人いるようです。今度は生身の人間ですかね……」 哿は心配そうにつぶやく。 「大丈夫ですよ哿さん、私が撃ちます。アリナも気にしなくていいから」 「いえ、僕がやります。平気です」 昇降機の下にアリナ達はテレポートする。不意をつかれた5人はあっという間に哿のテレポートで飛ばした特殊ワイヤーで両足を縛られ転倒、その後まとめて空中に飛ばされ柱に張り付けになる。 「お見事です」 「流石哿さん」 「ふぅ……なるべく無傷で無力化したいですからね。すぐに念爆者の居場所を調べなくてはいけませんね人が集まって来る前に」 「後から来るAチームならすぐに調べられるのですが……」 「いえ大丈夫です、念爆者の居場所は大体分かります。感じるのです」 アリナ目がわずかに輝く。 「向こうから感じます」 アリナ達は空母の通路に向かって歩きはじめる。しばらく進むと人の気配を感じ足を止めた。アリナは五感を研ぎ澄ませフローレンスと哿は戦闘スーツで索敵を続ける。 正面右の自動扉が開くとそこから髪をいくつも束ねた年齢不詳の白いコートの女性が現れた。甘い花の香りがした。 「ようこそアイスクラーピウスへ、終夜アリナさん、哿希世美さん、フローレンス・フランシスさん」 「妙な動きを見せないほうがいいですよベヤリング弾で足を撃ち抜きます。ゆっくりと扉の中に戻って下さい」 アリナの手の中にはベヤリング弾が握られている。 「それはお互い様です」 女性の居る方向からしてる甘い花の香りが変化した。 「リラックスリラックス……フフフ」 戦闘スーツは香りに反応しすぐさま防毒モードへと移行する。アリナはポーチから携帯用のガスマスクを装着する。 「身体強化を極めてもこの香りは効きましたか?フフフフ」 「離れましょう!」 哿は二人の肩に手を置いてテレポートで離れる。 「今更離れても遅いです……既にあなた達は術中にいますよフフフフ、フフフ」 戦闘スーツでバイタルサインをチェックするも異常は見られない。 「毒ガスなんかじゃないわよ?そんなものアイスクラーピウスで使う訳にはいかないじゃない」 突如後ろに現れる女性。 「香りはきっかけ、発動する為のね……」 アリナは振り向きざまにつかみかかるもその姿は煙のように掻き消えた。 「通路に誰も居ない事に違和感は無かったかしら?それは巻き込みたくないからなのよ……だんだん息苦しくなってきたんじゃないかしら?それはそうでしょう、マスクとか戦闘スーツの中に水が溜まってきてるから」 「!?」「み、水が!」「強制排出!!」 「ほらほら外さないと溺れちゃうわよ?フフフフフ」 「強制排出が……出来ない……ごぼっ」 哿は二人の手を取りテレポートで昇降機の方向に連続移動する。そしてテレポートで戦闘スーツの外に出て大きく息を吸った。 「だ、大丈夫ですか二人とも」 「大丈夫です」「問題ありません」 スーツとマスクを開ける二人。しかし水は出てこない。 「どういう事かしら……」 フローレンスはアリナの顔を眺めて言った。 「……香りを使った異能では?複合能力の異能兵士の可能性がありますね。迂闊でした」 「ルキナさんも一緒なら防げたかもしれない」 「フロー、ルキナが来ていれば別の異能兵士が迎えてきたかもしれません。わたしたちは監視カメラで見られていますので」 「私達に対抗する為の異能兵士に出迎えさせた……と」「う……か、体が痺れる」 哿はその場に崩れ落ちた。 「フロー、哿さんを戦闘スーツに戻して。わたしはあの女を斃してきます」 「アリナ……!」 「息を止めても30分以上は動けます」 「待ってアリナ、それなら一度治療する」 フローレンスは戦闘スーツに哿を入れ静かに寝かせた後、アリナの頬に手を当てる。 「……どういう事……異常は何も無いわ。わからない」 「体に異常が見つからないという事は、これはテレパス系の異能では?」 アリナは周囲を警戒しながら言った。 「じゃあ溺れかけたのは錯覚!?」 「実際、水は存在しませんでした」 二人が通路を眺めてると笑みを女が煙のように現れた。 「私は……アプロディーテーとでも名乗っておきましょうか」 女が名乗り終わるとほぼ同時にアリナはベヤリング弾を撃ち込む。しかしベヤリング弾は女の足の横を通り過ぎ壁に激突し火花を散らしただけであった。 「……」 「そんな!アリナが外すなんて……」 「フフ……フフフフフ……当たりませんでしょう?どんなに強くても当てられなければ意味がないんです。こんな程度で幻赫さまに勝てる気でいるだなんて笑わせますわ」 「……フロー、哿さんを連れて下がっててください」 「わかった」 わずかな動きでも見逃さすまいとする視線でゆっくりとアプロディーテーに接近するアリナ。対するアプロディーテーは胸元から小さな拳銃を取り出す。 「フフ、知ってるわよ?貴女は大型拳銃ですら傷つけることはできず、対物ライフルであっても皮膚を貫くことすら難しい程の身体強化の力だということを」 「それを知っていて拳銃を取り出す意味は?」 「あるわよ?この拳銃はごく普通の小型の物だけど弾丸は特別。『きっとこの弾丸は貴女に突き刺さる』貴女は嘘かどうか分るのでしょう?どうする?フフフフフ」 「……」 アリナは鏡を映したかのようにアプロディーテーと同じ構えを取る。拳銃の代わりにベヤリング弾を握って。 「あら?何のつもりかしら?」 「撃てばいいですよ。それが何でわたしを貫くものであったとしても」 「ああ、撃たれるまえに拳銃をベヤリング弾で落とすつもりなのね?それもできないわ『貴女の攻撃は全て外れる』わよ」 二人の距離は徐々に縮まっていく。 アプロディーテーの指の動きを見たアリナは弾丸の軌道を読みそこにベヤリング弾を撃ち込む。破裂音が響きアリナの髪を弾丸がかすめた。 「やりますわね。攻撃では無く防御にベヤリング弾を使用したのですか。ならそれも次は無理になりますよフフフフフ」 続く
Feb 19, 2020
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異能者特務機関:TMI 第33話「ラグナロク5」 「あれが魔法……」 ミカエルが瞬時に縮小、巨大化した様子を見てアリナはつぶやいた。 体の性質を変化させてゴム状や硬質化する異能者は知っている。エネルギーを纏い体を包み込んでの巨大化なら知っている。自分自身の大きさを変えれる異能者は見たことが無かった。 『どうかな?強力な助っ人だろう?』 長官ジェームズの声がTMI最強テレパスの苗木來美を通じて聞こえる。 「魔法とは万能の力ですか?」 『そうとも言えるしそうじゃないとも言える……科学の方が手っ取り早くて扱いやすい。異能の方が安定してるしデメリットもほぼ無いんだよ。不可能を可能にするという点では魔法が一番優れてるとは言えるがね』 「長官は魔法を使えるのですか?」 『子供だまし程度のものならね。魔術師(マジシャン)の家に生まれたのに才能なんて全然無かったんだよ。あぁ……姉は才能の塊のような人だったが』 「……気になる事があるのです」 『なんだねアリナくん?』 「念爆者は魔法を使えるのでしょうか?」 『……先の大戦時では使っていなかった。だけど今は分からない、魔法使いのグレイストームを仲間にしてたのだからね――』 「長官?」 突然の沈黙に警戒するアリナ。 『どうやら大阪に移した仮の日本支部の場所が敵にバレたようだ。すまないがすぐには応援に行けそうにない』 ジェームズは仮日本支部を囲む武装集団を見据えながら言った。ブラックヴァリーに異能兵士、戦闘ドローン。 「想定内です、任務を続行します。ルキナ、マイケル、聞いていましたね」 「やるわよ、やってやるわよあたし達だけでも!」 「ま、武器はしこたま用意してくれてるからな。アポートでジェットヘリと護衛艦からじゃんじゃん取り出してやんよ任せとけって!」 グレイストームの撃破によって弱まった風。ルキナは意識を集中して風を把握していく。アリナとマイケルは戦闘スーツの飛行能力を使いルキナの後を追う。 「風はもう少しよ……博士、空母の解析は進んでる?」 戦闘スーツ越しに空母の解析をしているセレスティアに声をかけるルキナ。 『進んでいますよ。詳しい事は置いておいて必要な事だけ申し上げますね』 「お願い」 『下部のハッチもしくは上部の甲板から侵入可能です、座標を送ります。アリナさんの力なら開けることは可能です』 「本当に必要な事だけね……トラップとか迎撃装置とかは大丈夫なの?」 『ありますが風の解除と同時に取りついてしまえば撃たれることも無いはずです。絶対防御の風は内側からの攻撃も無効するのであちらも撃ってこれない、出来るのならとっくに仕掛けてきていますよ』 「なるほど、だから海獣やら異能兵士やらドローンやら魔法使いやらを出してきたのね」 『問題があるとすれば風を解除した後こちらの護衛艦を狙ってくることでしょう』 「そんな!どうすれば……」 『私に任せてください』 「え?」 『早乙女ルキナさんの援護を戦闘スーツで行います。貴女の異能の演算をスーツのAIで処理させます。暴風の一部に穴を空けそれを固定化するのです』 「風の硬質化固定化対流操作持続をいっぺんにするってことよね……プラズマを発生させるための演算だけでも大変なのに……穴の中を真空にするわけにもいかないし」 『皆さんに配布した戦闘スーツのAIは私のスーツのAIと繋がっています。早乙女ルキナさん貴女のイメージを読み取り高速で処理して演算を加速させます』 「セレスティア博士それって疑似的な異能者共有じゃあ……」 ルキナは異能者共有の実験で生死の境をさまよった同僚の姿を思い浮かべた。 『大丈夫です最悪私のAIがショートするだけですよ。私自ら実験済みですのでご心配なく。AIの思考が逆流して貴女を苦しめることもありません』 セレスティアはそう言ったが半分は真実では無い。AIがショートするだけで済むはずはなく、セレスティアの脳にダメージは受ける。 『メインAIのAdeleと私は常に異能者共有の状態に近いで日常を過ごしています、貴方への暴走は起きませんよ』 「まさか……そんな事してて自分がわからなくなって精神崩壊したりしないの?」 『平気です、Adeleは私の大切な人間をベースにしたAIでお互い理解し信頼しあっていた仲でしたから』 「なるほど……異能者共有でなにより大切なのは理解と信頼だものね。じゃあアタシも博士とAdeleを信じてみる。あなたたちを傷つけない為に!」 暴風の中で手をかざすルキナ、暴風の中に安全な穴を空けるためのイメージを固めていく。戦闘スーツのAIはそれを読み取りセレスティアとリンクする。 「(加速する!思考が加速してる!!時間がゆっくり流れてるいるみたい!!これならできる!今ならどんな風の操作も思いのまま!!)」 「穴が空いたら俺とアリナが飛び込んで空母に取りつくって事でOK?」 「そうですね」 マイケルとアリナは風を操るルキナの後ろで戦闘スーツの飛行能力で滞空しながら待つ。 「あのデカくなったり小さくなったりしてた助っ人兄ちゃんとアナスタシアがいれば護衛艦の守りは大丈夫だろう」 「そうですね。取りついたらそこからはわたし、フロー、哿さんで突入。貴方とルキナは待機ですね」 「ああ、援軍と、作戦終了後の脱出の為にな!まかせとけ」 「……マイケル、気になりませんか?」 「アリナどうした?」 「先ほどまであれほど激しく迎え撃ってきた敵がグレイストーム撃破の後何もしてきません……」 「そういやそうだな……確かに妙だ。アレか?来るなら来い、迎え撃ってやるって決めたとか?」 「罠を用意してると考えておきましょう」 アリナとマイケルが話している間にルキナは風の中に安全に通り抜けられる穴を作り上げた。 「できたわ!さぁ行って!!取りついてしまえばもうこっちのもの、マイケルのアポートで皆通り抜け放題なんだから!!」 戦闘スーツのブースターを噴射して穴に飛び込む二人。風越しに見ていた空母の船体が目に飛び込んでくる。 「行ったわね……ああ疲れたしばらく休むわ」 『無事成功ですね。護衛艦に戻ってゆっくりと休んでください』 セレスティアは戦闘スーツの中で片目に血をにじませながら言った。 風を通り抜けたアリナとマイケルは素早く船体の壁に取りついた。 「船体の色が変化して……光学迷彩ですね。迎撃用砲台は見当たらないですね」 「よし!このまま船体に張り付いて指示のあった上部ハッチに向かうぜ」 船体に取りつくアリナとマイケル。戦闘スーツの吸着を利用し壁を走る。 「暴風の内側は地上と変わりないですね」 「だな、飛んでる船とは思えないぜ」 船体上部に到着する二人。ハッチとその前に立っている人物を見つけた。 「ん?少年か?」 長い髪を後ろにまとめ、手にはナックルガード、服装は腰布にブーツといういで立ちの暗い目をした少年が立っていた。 「わたしたちを迎え撃つ為に船から出てきた者のようですね」 「麻酔銃をアポートする。それでサクッと倒して進もうぜ」 「あれは普通の人間じゃありませんよマイケル。下手に攻撃するよりも貴方は自分の安全を確保と準備をしてください。貴方が倒れてしまえば作戦の続行は困難ですから。あの者の相手はわたしがします」 「分かった」 マイケルは特殊カーボン製のテントを呼び出しそしてその中に。通信機器や武器を次々と呼び出し突入する仲間を呼ぶための準備を始める。 アリナは戦闘スーツから出るとその場に残しゆっくりと少年に向かって歩きはじめる。 「念爆者・杉田幻赫を斃しに来ました」 「知ってるよお姉さん、君の相手をさせる為に僕はその人にここで待てと言われたのさ」 「異能兵士ですね」 「見ての通りさ。僕は肺の病気で運動なんて一切できなかったんだけどあの人に救ってもらってね。今ではこの通りさ」 シャドウボクシングを行う少年。風切り音が響き渡る。 「僕はポルックス。お姉さんには勝てるか微妙だけどまぁ負ける気もしないね。アトラースなんてうすのろのマヌケとは違うから」 「邪魔ですよ」 「ヤァ!」 踏み込むポルックス、2連打のジャブで牽制してからのストレート。空気を裂くパンチをアリナは見切り僅かな動作で回避する。 「やるね!流石だよ、ガードしてもらえたら良かったんだけどそう簡単にいかないか」 アリナはベヤリング弾を飛ばす。拳銃並の速度で弾き出されたベヤリング弾に反応したポルックスはナックルガードで防御した。 「へぇ踏み込んでこないんだ?じゃあこっちから行くよ!」 ステップからのワンツー、ダッキングからフェイントを入れて左右のフックを繰り出すポルックス。アリナは通常よりも大きく回避する。 「そこだ!」 何かに足を払われるアリナ、瞬時に体勢を立て直すもポルックスへの攻撃の反応がわずかに遅れ回避は間に合わずストレートをガード。 「しゃあっ!」 ガードしたアリナのガントレットから火を噴き爆発。体を捻って受け身を取って着地するアリナ。 「おどろいた?ねえおどろいたでしょ?僕は二つの異能を持つんだよ!」 「そうですか」 「あははっ!睨んでるけどさぁ今の攻撃あの人ならお姉さん木っ端微塵になってたと思うよ?つまりあの人と今ここで戦ってたら何もできずにお姉さんは死んでたんだよ。僕の火力は精々手榴弾程度だけどあの人は核爆弾並みまで起こせるからね!それにありとあらゆる格闘技、人体改造、魔法と隙が無い。たかが身体強化だけでかないっこないよ」 「……」 「爆風で自分自身が吹っ飛んでないのを不思議に思う?そうだよねぇ僕はこんなに近くに居たのに爆風の影響はまるでない。それはもうひとつの異能のおかげさ。つまりあの人も自ら爆風に巻き込まれるなんて馬鹿な真似はしないってことさ」 「……」 「なにもかも諦めてこっち側に着きなよ。そしたら僕のものとして悪いようにはしないと誓うよ。あの人に利用されるよりそっちのほうがいいでしょ?」 「貴方は何者ですか?」 「あの人、杉田幻赫の息子みたいなものかなぁ……病気の治療で他人じゃあなくなったからね肉体的な意味でもね。あ、本当のお父さんは別にいるよ?フランスの大統領をしてる」 「……!」 「さっきよりも驚いたね?じゃあ僕が君の事を知ってるのも理解できたでしょ?僕はここで君を足止めし説得し諦めさせることが目的さ。表立っては言わないけど世界を動かしていると言われるトップ64人が杉田幻赫を認めているんだ、つまり君たちに勝ち目はない。民主主義で言うのなら悪だろうけど世界のバランス的にはこちらが正義なのさ」 「何を言ってもわたしを止めることはできませんよ」 「どうかな?徹底的に僕は君を説得する、戦いながらね!」 アリナの背後から風切り音、それに反応ししゃがむ。そこにポルックスはアッパーを合わせアリナを狙う。無理やり片足で横に飛んで回避するアリナ、その際逆立ち蹴りでポルックスを狙うも見えない何かに弾かれた。 「もっと力を見せてくれていいんだよ?まだ1%も力を発揮してないでしょ?」 パンチでラッシュを仕掛けるポルックス、対するアリナはすり足で円の動きで右側方に避ける。そこで風切り音が再び聞こえた為垂直に飛び上がりベヤリング弾を10発連射。空中で弾かれるのを確認した。 「アンカーボルトセット……」 着地と同時にブーツのアンカーボルトを伸ばして船体の甲板に突き立てる。そして合わせてパンチを放ってきたポルックスのストレートを受け止めそのまま爆炎に包まれた。 「む!?」 アリナは体を限界まで逸らし甲板スレスレで留まっている。そこからアンカーボルトで突き立てた足を支点にバネの様に全身をしならせ正拳突きを放つ。 硬いゴムを叩いたような感触があった。アリナの拳はポルックスには届かずその手前の何かに命中。直接命中はしてないものの衝撃で背後のバリケードに突っ込んだ。「ぐはっ……!いやぁ流石だね……異能が無ければ今ので全身骨折かな」 「1%です」 「これで1%かぁ……なるほどね、アトラースが赤ん坊扱いなわけだよ」 「貴方の異能の正体大体分かりました。衝撃を与えたものを爆発させる、もう一つは見えない物質を自在に操るもの」 「ほぼ正解かな、見えない何かは僕の分身体さ。こっちには爆破能力はないけど不死身の体を持つ分身。射程範囲は短くて精密な動作はできない、とはいえとても便利なものさ」 「鵜呑みにするとでも?」 「ははっどっちでもいいよ、これは殺し合いなんかじゃない、説得なんだ。正直今の1%で音を上げそうなくらいなんだけどそっちが僕を殺す気なんてないからまぁ続けられるかな」 「無駄ですよ。大人しく通してください」 構えるアリナ。それに対してポルックスはゆっくりと立ち上がりステップを踏む。 続く
Feb 11, 2020
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