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VAMPIREEYE83「血と宿命」 ―桃山城近くのマンション 霄を乗せた蓮也のバイクが到着する。地下駐車場から特別エレベーターで最上階へ。 「とても変な感じ……本当にここはマンションの最上階?」 霄は窓一つないフロアーを見て言った。 「日光を入れないようにしてあるんじゃないのか?さぁこっちだ」 エレベーターを降りて進んでいくと高級ホテルを思わせる大理石の廊下に赤い絨毯が敷かれていた。一番奥の扉の上には監視カメラその横には物騒な銃口を光らせるタレット。戦闘機にも搭載されるようなタレットは不審者を見つけ次第ハチの巣にする。 扉の前に立つと自動的に開かれた。中は大正時代を思わせる和洋折衷の空間が広がっている。それを見て霄は少し前の白峰家を思い出していた。 「来たか」 声がした。幕を通り抜けた先、部屋の中央にアンティーク調の長テーブル。その両側に男たちが立ち、最奥の椅子に足を組んで座る吸血鬼の女性。その横に金髪長身の男。 吸血鬼の男達と白峰華月、黒谷ジークベルトである。 「霄、こうして会うのは初めてだな。白峰華月だ」 「せ、先代!?……本当に……」 「緊張しておるな?ここにお前の敵はおらん安心するがよい。勝田、何か菓子と茶を持ってきてやれ」 「よろこんでー!」 小走りで部屋を出ていく勝田。 「皆座ってくれ」 一斉に腰を下ろす男達。蓮也は霄の隣に座った。 「雪名から我の事を色々聞いているか?それともお前の父で教会の男、蔵人からか?」 「それは……」 「なぜ今さら復活してるのか、何をしようとしてるのか知りたいのであろう?」 「あ……ええ、まぁ」 勝田が玉露の茶ときんつばを持って霄と蓮也の前に置く。 「さぁどうぞ、霄たん、蓮也君も」 「我が滅びる事になったのは教会の二大勢力、大天狗長門組と葛野忍の陰陽師団が原因だ。木城紫蓮に白峰蔵人、雪名も関係している。奴らにまんまと唆されたのだ」 「……」 「白面金毛九尾退治の為に我は先頭に立って戦った。だがそれが罠だったのだ。元々西の白峰家、東の陰陽師団で闇の住人を抑えてきていた。もちろん争うだけでなく闇の住人側の協力や同盟関係、不可侵条約を結ぶなど平和的解決も行ってきた。そこに海外から【教会】が入ってきたのだ。それまでも執行人とやらはこの国に入り込んで活動をしていた、だが50年前ついに支部を置く事を決め本格的に上陸してきた。能力の高い者たち、化学力、資金力、日本政府と裏で繋がっていたのが大きかった」 「そのような話初めて聞きます先代」 「そうだろうよ……まず初めに陰陽師団が教会の傘下に入った。以前から進めていた京都地下の都市計画を教会の資金力で一気に進め完成させ強力な24の結界を張りそこに教会の支部を設置した。人間側のメンバーが多い教会に反発が大きかった闇の住人らだが、大天狗長門組が半分仕切るという話になり落ち着いた。ここで白峰家に協力していた大半の家が教会所属となったのだ。当時我はまだ当主では無く、虚弱な母上だった。傘下を迫り陰陽師団や大天狗長門組の説得や圧は続き、ついに母上は当主の力を我に託して力尽きた」 蓮也はきんつばと茶を口に運びながら聞いているが、霄はそれどころではなかった。 「我は木城家、黒谷家、水元家、吉良家、須原家、子神家を中心に他の家とも協力しこれまで通り外敵や闇の住人との交渉、戦闘を続けて行った。当然教会は気に入らない」 「子神ってお父さんの家ですね、先代」 「子神蔵人、雪名の夫の旧姓だな。教会は白峰家と折り合いをつけてやっていくかに見せかけ、厄介な案件を押し付けてくるようになってきた。我は日本中を飛び回ることになり、留守の間は木城家と子神家に任せることが多くなっていった。それからしばらくして我は共に行動していた刀工の男と夫婦(めおと)になった。立花陽太郎だ」 「陽太郎お祖父さん……」 「陽太郎は面白い男であったよ。刀工でありながら魔術の使い手でもあった。我は陽太郎から魔術を学び自分の術へと昇華していった。魔法使い、魔女と縁かあるとか言っておった。一歩離れた目線で物事を見て助言してくれる軍師のような存在であり、また我を喜ばせるのが上手な男だった。やがて雪名が生まれしばらくして陽太郎はこの世を去った。白峰家の子を作るという事は魂を削る行為なのだ。陽太郎は自分の全ての魂を使い切るつもりで我に雪名を産ませたのだ」 大きくため息をつく華月。 「魂の強さは生まれ持ったもの、どうにもならない。雪名の夫、子神蔵人はありない程の魂の強さを持ち三人も雪名に産ませた。霄(そら)、吹雪、霞(かすみ)をな。これまで白峰家の子が二人以上生まれた事などなかったから我は当時驚いたものだ……話が逸れたな戻そう」 横に居た黒谷が赤ワイン注いだグラスを華月に渡す。 「ここにいる男達は、近藤、斎藤、沖田、谷川、佐久間、木戸、河上、勝田。陰陽師団の葛野忍の配下にならなかった人間側の白峰派の家の者たち」 深く頷く黒谷。 「私の黒谷家は代々忍者の家系。教会に知られずに同志を集めることに成功しました。分裂した黒谷の過激派らがブラックヴァリーなどと名乗り数を増やしここ十年ほど活動しているようですが、里を離れた私にはもはや無関係です。華月様、お話の続きをどうぞ」 黒谷は静かに言った。 「雪名が生まれ、白峰家は安泰するかに思われた。だが、雪名が成長し子神蔵人と夫婦になった頃から雲行きが怪しくなってきた。雪名と蔵人は教会に属して白峰家はやっていくべきだと度々我に言うようになった」 「はい、その頃から私、黒谷ジークベルトは華月様の支えになるべく尽くしておりました。華月様は歴代白峰家でも最強のお方、大天狗長門組、陰陽師団にとっては脅威だったのでしょう。真っ向から華月様に対抗できるものなど両陣営にいなかったのですからね」 「雪名らの言い分も分かった。我がやりすぎるせいで教会との関係が良くないと。大人しくして教会に属していればいらぬ争いを生まぬと。だが我にしてみれば、これまでの暗黙の了解を破り好き勝手をして自分らの思い通りに人間も闇の住人も支配下に置いていってる教会に従うなどありえない事だったのだ。その証拠に、妖怪連合などというものを酒呑童子が起こしてるではないかと」 「ええ、これはよくありません。妖怪連合というものは人間を一方的に支配しようとしてる。共存する姿勢を見せながらも裏で操る算段なのです。教会側の闇の住人を引き抜いていってはいますが人間側は皆無。結果争いは増える一方」 黒谷は空になった華月のグラスにワインを注いだ。 「ならば先代はどうするつもりなのです……」 霄は一口だけ茶を口に含んで言った。 「教会をこの国から撤退させるもしくは主導権を我が握る。元の状態に戻すのだ。それで全てうまくいくとは言い切れないが次の世代に繋ぐことができる。白峰家も関係する家も存続できる」 「二大勢力を潰さなくても……」 「いいや駄目なのだ。陰陽師団の代表葛野忍が表社会で権力を持てば白峰家は消滅する。奈良時代より続いた家が消滅するのだぞ!」 「何故ですか?」 「奴にとって都合のいい手を組む相手は大天狗長門組。白峰家の代わりに大天狗長門組を国に認めさせ、後は碁盤の目町で飼い殺しにするつもりだ」 「それの何がいけないのか……私にはわかりません。お母さんは普通の人として生きてくれればいいと言ってましたし、私も家族を守れる力さえあれば十分です。多くの敵と戦ったり争ったりなんて必要ないと思います。当主は碁盤の目町でずっと過ごすことになったとしても……当主を継ぐのは一人、継がなかった白峰家の者はやがて吸血鬼の力を失いただの人となって寿命を全うして死んでいく平和に生きれればそれでいいのでは?」 「ふ……雪名と同じような事を言いおる。『広い世界の事より自分の手の届く範囲の幸せを守りたい』と何度も言っておった。その結果がどうだ?今の状況を考えて見ろ。霄、お前の周りは平和か?雪名は蔵人は何をしている?お前は何が出来ている?」 「それは……」 「我とて滅ぼされ偉そうなことは言えないが……諦めたりなどしないし敵とは戦う。強き者が前に出て大切な物を守るなんてものは自然界では当たり前だ」 「……」 「……我は碁盤の目町の結界の中で白面金毛九尾は戦った。奴とて国を亡ぼすのが宿命とはいえあの時点ではこの国の滅亡など考えていなかった。だがやるしかなった、核爆弾よりも危険な妖怪を野放しにはできない。数回の戦闘で弱った奴は葛野忍と蔵人の連携で封印された。我も満身創痍の状態だった、そこに大天狗長門顕彰に術を掛けられ動けなくなった所に木城紫蓮から刀を受け取った雪名が我の心臓を刺したのだ」 「!!」 「泣きながら何度も何度も謝っておったわ。我に刺さった刀は代々白峰家に伝えられてきた霊刀だ。使用者の力を増幅させる物。雪名は【停止させる力】を持つ者。我の再生、魔力を傷口から停止させ更には当主の力を奪った。最後の力で我は刀に意識を移した。霊刀は白峰芙蓉の血と神鉄で作られたもの、何とか成功し完全消滅はまぬがれた。体は灰となり雪名が全て吸収してしまった」 「そんな……」 「その後にお前たち三人が生まれたのだ。何も知らずに都合のいいように話を聞かされただろう。あの白面金毛九尾との戦いは仕組まれたものだったのだ。また同じような事が起き無いとも限らないぞ?今度は雪名が狙われ始末されるかもしれん、あるいは次世代のお前たちか」 「……先代は当主の力をお母さんから奪うつもりですか?」 「ああ、奴が持っていていい事など何もない。我に返してもらう、お前もしくは……新たな子が次の当主にふさわしい存在となった時に譲る」 「新たな……子?」 「お前の子、もしくは我の子よ。まだ先の話であるがな」 黒谷はそれを聞いて深く頷いた。 「我々は人間よりずっと長生きし、若い時期がその寿命のほとんどだ。我のは今は幼体だが完全復活すれば人間でいう所の20歳頃の見た目になる。我は120年の時を生きてきたが100年間ずっと20歳だ」 華月は周囲の男達を見る。 「この者たちも徐々に若返っておる。最終的には20歳程度に落ち着くだろう」 華月はワインを飲み干すと霄の横まで歩いていく。 「一気に色々と話しすぎたな、休憩するか?勝田、霄と蓮也に部屋を案内してやれ」 「アイアイサー!」 立ち上がる霄と蓮也。 「華月さん」 「なんだ蓮也?」 「今話した内容は二郎は知っているのか?」 「ああ、二郎には学園で聞かせた」 「そうか」 「霄、この話は吹雪と霞にはそのうち我から聞かせてやる黙っておけ」 「……はい、私からなんてとても話せないですし」 二人は勝田に連れられ別の部屋に移動する。 「自分の部屋だと思ってくつろいでね霄たんに蓮也君~」 案内されたのは畳の部屋であった。ちゃぶ台と座椅子が置いてある。霄と蓮也は靴を脱いで入った。 「白峰家の離れに似てる……」 「そうなのか……」 二人は座椅子に座る。蓮也は何となくTVをつける。 「北海道の爆発の事ばっかりやってるな……そういやアメリカでも最近テロが起きてるんだってな」 「爆発……私、ここに来る前に襲われて稲荷山トンネルで少し暴れてしまって……」 「大丈夫だ、さっきの部屋にいた人らの内、二人は警官だし上手く処理してくれるだろう」 「無関係の人巻き込まなかったか気になって……」 「そっちか……相変わらずだ霄は」 「蓮也さん、私の事昔みたいに名前で呼んでくれるようになって嬉しかった」 「昔はよく遊んだものな。あの時霄はよく笑ってた、いつの間にか一緒に遊ばなくなって苗字で呼ぶようになってしまったんだった」 「中学に入ってから急に周りも男女を意識し出して何となく……かな。洛庵高校で見かけた時一度話しかけたけどお互いちょっとよそよそしかった」 「ああ、照れくさいのもあったんだ。お互い見た目も変わったしな」 「声変わりしてて背もすごく伸びてて驚いた」 「俺も驚いた、小学生の時のイメージがあったからな。その……成長してて」 「それって……?」 「変な意味じゃない、急に女性らしくなったから驚いたんだ」 「背はあまり伸びなかったけどね」 「華月さんを見てると……霄と似てるなと思うんだ雰囲気は全然違うけど。滅ぼされる前の姿の写真見てああ霄もこんな感じなるのかと思ったよ」 「……私はお母さんより先代に似てるんだ。お母さんに似てるのは吹雪の方だ」 「俺は……華月さんよりもどっちかと言うと霄の方が……」 声が徐々に小さくなっていく蓮也。 「え?」 「なんでもない」 「うん……」 そのまましばらく何も話さず数分間TVを見つめる二人。 「何が正しいのか解らない……お母さんの選んだこの国の新しい平和維持に参加する事なのか、吹雪のように教会で名をあげて内側から変える道に進む事なのか、霞のように人間社会で出世して体制を変えさせる道に進む事なのか……先代の言うように戦う事なのか」 「吹雪と霞そんな事を考えているのか……」 「ええ……だから吹雪は躍起になって任務をこなしてる。霞は勉強して政治家を目指してる、一度芸能界に入るのも手だとか話していた。私は傍から見れば姉妹の中で一番勉強が出来て運動神経にも優れ教師の評判も良い姉なのだろう……でも実際は何も出来ない白峰家で一番の役立たずだ」 「そんな事言うな。霄にだって出来る事はあるはずだ」 「何が出来るっていうの?」 「まだわからないが一緒に考えて行こう、試して行こう。即断即決即行動が必ず良いと限らない。じっくり考えればいい……」 「うん……」 「今は出来る事を一つずつやっていかないか?」 「そうする」 「じゃあ霄……」 様子を見に来た華月と黒谷に霄は杯を用意してくれと言った。白峰家の者が血の力を与える儀式を行うためである。 「良いのか蓮也?霄の血を正式に受けて契約を結べば人間に戻ることは難しくなるぞ?後の事を考えると我は勧めないがな……」 杯と台と小刀を持って来る黒谷。ゆっくりと蓮也と霄に近づく華月。 「お前たち夫婦(めおと)になる気はないのか?蓮也が夫になるには人間でなければならん。毎月仮契約の更新を続ける事を我は勧めるぞ」 その言葉に顔が赤くなる霄と蓮也。 「……仮契約でどのくらいの力を発揮できるんだ?」 「半分程度。だが成長の伸びしろは半吸血鬼の方があると言える。それと一つ気を付ける事がある、更新を怠って暴走すればお前の意識は消えただのケダモノ化した鬼となる、もう戻れん」 「白峰家の力を貰い逃げなどできないようになっているのです。正式契約すれば安定はします。主(あるじ)の意思でいつでも始末される存在となりますがね」 黒谷が言った。 「私は父が西欧の吸血鬼のハーフですが華月様に命を救われ正式契約した者。この命は華月様のものです」 誇らしげに胸に手を当てる黒谷。 「霄はどうしたいのだ?」 「だったら……仮契約にしておきます先代」 霄は少し恥ずかしそうにそう言った。 「蓮也もそれで良いか?」 「ああ」 華月の指示で台を向かい合わせに正座する霄と蓮也。横には見届け人の華月と黒谷。 霄は懐紙を咥え、小刀で親指を刺して杯に血を垂らす。そして懐紙で指と小刀を拭って鞘に納め自分の右側に置いた。 蓮也は杯を両手で掲げ一礼、2回に分けて血を口に含み飲み干した。 続く
Sep 27, 2020
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VAMPIREEYE82「猿と犬」 蓮也と佐久間は醍醐寺近くの林にタクシーを止め周囲を伺っていた。 「こんなに気温が低いとは……蓮也、何かおかしいぞ」 「異常なまでの静けさ……誰も見かけなかったのも気になる」 佐久間はカランビットナイフを、蓮也は華月の抜けた刀を構える。 「来るぞ蓮也!」 木の上から飛び掛かって来る痩せぎすの手足の長い者たち。 「キャキャキャキャキャキャキャキャッ!」 佐久間は敵が掴みかかる腕をカランビットナイフで絡めるようにガードしてそのまま体勢を崩して喉を裂く。喉を裂いた敵を盾にしつつ蹴って押し付け、背後の敵の足を関節蹴りで踏み抜きながらカランビットナイフで腹を刺した。 蓮也は距離を取って最小の動きで刀を振って敵の手首、喉を狙う。明らかに人ではない者の為容赦は無い。 「血が全然出ない……これは沖田と勝田の言ってた屍人って奴か」 「この見た目全然人間じゃない、何者ですかこれは」 「猿の様にも見えるが俺ァ専門家じゃないんでな」 「猿の化物……」 「傷には気をつけろよ蓮也、猿は病気を持ってるからな。化物猿ともなれば俺たち吸血鬼でも警戒しとくんだ」 「わかりました」 蓮也の刀が反応する。倒れた化け猿から血液を吸い取っていく。 「なんだ?」 「刀が血を欲してるんです。華月さんが抜けた後もコイツは血を求めている」 「そうか、その刀自身が化物なのかもな」 化物猿の襲撃が終わると今度は遠くから叫び声が聞こえてくる。 「ヒーーーーーーーヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」 背中合わせで警戒する二人。 「!!」 巨大な岩が突如投げ込まれる。いち早く察した佐久間が蓮也を押して避けさせた。 「くっせぇ血の匂いがすると思ったら吸血鬼か!」 岩の上に身長2mを超える大男が現れた。 「コイツは屍人ではない?」 「くっ……」 「くたばってもらうぜ!」 岩を持ち上げ振り上げる大男、軽々と振り回して二人に襲い掛かる。 「誰だお前は!」 「知りたければ自分から名乗りな!」 蓮也の問いをはねのける大男。 「蓮也、話を聞くタイプじゃないぞこいつは!」 「ちっ!」 大きく飛んで下がる蓮也、佐久間は前に出て両足を恐竜のような足を持つヒクイドリに、両腕をグリズリーに変形させる。 敵は大岩を担ぐ、その形は細長く湾曲している。 「ホキャアアアアアアアアアアッ!」 大岩を投げつける敵、しゃがんで回避する佐久間、一気に間合いをつけてヒクイドリの足爪で攻撃する。 「佐久間さん後ろ!」 「何!?」 湾曲した大岩はブーメランのように戻って来る。一瞬隙を見せた佐久間に敵が襲い掛かる。それを見ていた蓮也はとっさに刀を投げた。 「!!」 大岩と刀が激突、火花が散る。軌道を変えた大岩は林の大木に突き刺さった。 「ホギャアアッ!」 空中縦回転から爪攻撃を繰り出す敵。円の動きで側面に回避した佐久間はカランビットナイフを投げつけて敵の肩に突き刺した。更に上から蹴りで押し込む。 「ウギャアアアアッ」 「これであのバカでかいブーメランは投げられんだろう?」 蓮也は意志を持つかのように戻ってきた刀を手に、襲い掛かって来る屍人猿を斬り伏せていく。徐々に蓮也の髪は白くなり眼は赤みを帯び刀身に熱が宿り出す。 「体が軽い、力が漲る!」 動きを加速させていく蓮也、斬られた屍人猿は傷口から炎上する。 「チッ……キャキャキャキャキャキャッ!」 飛び上がって枝に上る敵、叫び声で合図すると屍人猿は一斉に引いていく。 「貴様らの顔覚えたぞ!!」 木を飛び移って去っていく敵。蓮也と佐久間は追わずに戦闘態勢のまま待った。 「顔を覚えたぞ何て捨て台詞を吐いてやがるが……奴の姿匂いは捕らえた。狩られる側になったんだアイツは」 「それにしてもあの猿どもはここで何をしていたんですかね」 「調査するか……山の上の上醍醐も調べよう」 「はい」 *** ―洛庵高校 放課後 白峰霄はクラスメイトの山根妃羅莉と別れバスで蓮也の示した場所に向かっていた。 「すぅーはぁー」「クンクンクーン」「ハッハッハッハ……」 バスの乗客は異常に鼻息が荒かった。 次のバス停で座席は全て埋まり全員が鼻息を荒くしていた。 「……(客の様子が何かおかしい、視線を感じる)」 「クククーン!もう我慢できない!!親分この子齧っていいよね?」 よだれを垂れ流したタンクトップの男がバスの運転手に話しかける。 「トンネルに入るまで待て」 「!!」 稲荷山トンネルに入るバス、その瞬間乗客全員が立ち上がる。 「うっ……」 急停車するバス、霄は手すりを掴んで耐えた。 「極上の獲物だ……俺が味見するまでお前たちは待て」 運転手が立ち上がり上着を脱ぎ捨てる。徐々に犬に似た姿に変わっていく。 「犬?狼?」 「ここはトンネル、現実との境目になりやすい場所。俺の結界でこのトンネルは地獄と化した。じっくりたっぷり嬲りつくしてやるぞ吸血鬼のメス!」 「はっ!」 霄はカバンで窓ガラスをたたき割って外に飛び出る。後を追って犬人間がぞろぞろとでて囲みを作った。 「(またトンネル……源藤高雅の時と同じ……)」 「1対21だ、どうあがいても餌になるしかないぞ!クククククク!!」 「(だけど今回は他に巻き込んだ人は居ない)」 霄は目に魔力を集中させ、一気にレーザービームの方に放って薙ぎ払う。次に背から魔力の炎めいた羽を出現させて火のついた犬人間に突進。 「WAOOOOOOOOOOOONN!」 立ちふさがる犬人間。霄は急上昇しながら蹴り上げ炎の羽から炎弾を撃ち込む。5人が吹き飛んだ。 「やりやがったな!あまりにうまそうなメスなんで油断しちまったぜ!!」 「(全員を相手にしていられない、トンネルから出なければ)」 足を炎の爪にかえ更に加速する霄、髪は銀髪に眼は真紅に変わる。 「追え!!なんとしても捕らえろ!!」 霄は背中の羽から火の粉を散らし追って来る犬人間に浴びせる。 「ぎゃおん!」「わぎゃん!」「ぐえあっ!」 触れた瞬間小爆発を起こして転倒させる。 トンネルの出口で幕のようなものを突き破る霄、外に出ると大きな炎弾を溜めて待機。出てきた集団に向かって放つ。 「ウガアアアアアアアッ!!」 霄はそのまま飛行して道路わきの茂みに飛び込む。爆発を見た人々が車を降りて集まって来るのを見計らって走る。 「ここから蓮也さんの指定した場所では1㎞もない……」 全力疾走する霄、ショートカットで塀を飛び越え屋根を走り畑を横断する。改装中の古いマンション横の小屋に到着する霄。小雨が降ってきたので軒下に移動する。 「……」 携帯を触って時間を潰す霄ニュースサイトを見る。 『北海道札幌市のテレビ塔周辺で連続爆発事故、テロの可能性も』 「……テロ、北海道で?」 ニュースの画像を見てつぶやく霄。大きな黒煙が札幌市内中に上がっていた。 「白峰」 蓮也の声がして慌てて振り返る霄。 「待たせたな」 「いえ」 「雨も降ってきた、中に入ろうか」 「はい」 小屋の中はほとんど物が無かった。小さなテーブルとイス、ノートパソコンにマットレス、蓮也のカバンだけであった。 「カバンはどうしたんだ白峰?」 「実は……」 霄は稲荷山トンネルであった出来事を話した。 「そうか……災難だったな」 「……」 「しばらくは家の物に送り迎えしてもらったらどうだ?」 「そんな恥ずかしい事……それよりも蓮也さん話って何?」 「……俺は吸血鬼の集団と一緒に行動してる。そして強くなるために力がいるんだ」 「吸血鬼の集団!?誰なんだその者たちは!」 「黒谷ジークベルトが立ち上げた集団。白峰の血縁者である華月さんが蘇った」 「え……」 眩暈を起こす霄。 「しっかりして欲しい白峰」 華奢な霄の肩を掴んで支える蓮也。 「お母さんに言わなきゃ……こんな事私にはどうにも……」 「ダメだ白峰!雪名さんは教会の奥深い碁盤の目町の塔に閉じ込められている。言って話せばもう外に出られなくなるぞ!!」 「吸血鬼を頼ってどうなるんだ蓮也さん?私たちは人間社会に生きてる者なのよ?」 「白峰、お前は強くなりたいって言ってたじゃないか。当主にふさわしくなりたいと。俺と一緒に来るんだ」 「戦えっていうの?源藤高雅とか訳の分からない敵と……もっと強くなってからじゃないとわたしは……駄目なんだ!」 「強くなるのにうってつけの人が華月さんだろう?白峰家歴代最強と言われたらしいじゃないか」 「やめて!ききたくない!!」 蓮也を押しのける霄。 「私がなりたいのはお母さんのような当主……みんなみんな似ているからといって先代と私を比べて……お母さんと先代も比べて……何が歴代最強か!あっけなく滅ぼされて白峰家は没落した!今更復活してなんなんだ!!」 涙を流しながら叫ぶ霄。 「聞いてくれ白峰!」 「いや!」 「霄!!」 腕をつかむ蓮也。 「離して……」 「お願いだ聞いてくれ霄……もう二度とお前をあんな目に合わせたくないんだ。守ってやりたいし強くなって欲しいんだ」 ゆっくりと引き寄せて抱きしめる蓮也。軽く抵抗する仕草を見せたが霄はそのままもたれかかった。 「落ち着いたら移動しよう。教会は信用できない理由は華月さんが教えてくれる」 「門限は19時……それまでに戻らないと吉良と須原が……」 「分かってる。それまでに帰すよ」 しばらくして小屋から出る二人。蓮也はバイクのエンジンをかける。 「後ろに乗るんだ霄」 「あの……」 スカートを抑える霄。 「そうか……なら俺の予備のジャージを履けばいい、小屋の机の横のカバンに入ってる」 「ありがとう」 スカートの下にジャージを履いた霄が小屋から出てくる。 「じゃあ行くぞ、しっかり捕まってるんだ」 ヘルメットを渡す蓮也。後ろの座席に乗ってしがみついた霄を確認すると発車させる。 続く
Sep 20, 2020
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VAMPIREEYE81「天狗と陰陽師」 ―洛庵高校 白峰霄、木城蓮也、山根妃羅莉(鉄鼠)の通っている学校である。 屋上で白峰霄はうずくまっていた。頭の中は無力感、怒り、悲しみ、悔しさ、後悔が渦巻いていた。考えまいとすればするほど余計に考えてしまい自然と涙があふれてきていた。 「どうしたんだ?」 声がした。あわてて振りむくとそこにはジャージを着た木城蓮也が立っていた。 「え……」 「どうした?鳩が豆鉄砲喰らったような顔して。涙で顔がぐしゃぐしゃだぞ白峰霄」 「急に現れて……誰にも連絡しないでどこに行ってたんです!」 「すまなかったな、色々あったんだよ」 霄の横に腰かける蓮也。 「学校には休学届を出した。知り合いにそういう手続きに融通が利くのがいてな」 「蓮也さん、今すぐ白峰家に行こう!人間に戻るんです!!未熟な私なら無理だけどお母さんなら……!白峰家当主・白峰雪名ならきっと!!」 「そいつはできないな、やることがある」 掴みかかった霄の手を上から握ってゆっくりと離す。 「やることって何!?危ない事はしないで!!」 「源藤高雅って野郎を探し出して借りを返すんだ。奴の背後にもおかしなのがいるって聞いた。だから白峰、もっと俺に血をくれ。力をくれ」 「そんな事……出来るわけないじゃないか!」 「あいつを野放しにはできない、かと言って教会も警察もあてにできない。俺には味方ができた、素人が闇雲に探し回る訳じゃない」 「……」 「白峰、跡継ぎになるのならもっと血の力の扱いが上手くならなくてはならないんじゃないか?そうじゃなければ源藤高雅のような男がまた現れた時困るぞ?だから俺に血の力を使って訓練するんだ」 「何で蓮也さんにそんな事を言われなければならないんだ……」 「放課後この住所の場所に来てくれ」 蓮也は霄の携帯に自分の隠れ家の地図を送る。立ち上がるとフェンスを飛び越えた。霄が慌てて見に行くと下にもどこにも姿は無かった。 「蓮也さん……」 蓮也は洛庵高校から出ると近くに止めてあった華月配下の吸血鬼・佐久間瓢介のタクシーに乗り込む。佐久間はタクシー会社を経営者であり元軍人でもある。 「佐久間さん、どうですか?」 「源藤高雅らしき者は突如姿を消したらしい。二条城前で不意に瞬間移動するようにだ」 佐久間は鳥獣などの声を聞くことが出来る。佐久間自身、様々な生物の姿に変わることが可能である。 「瞬間移動……話を聞く限り黒谷さんのようにゲートを開く訳でもなさそうですね」 「厄介だな……匂いで動物たちに追わせてるがまだ痕跡を見つけられていない。関係あるか分からないが、ここ最近急にサイバードッグやサイバークロウの数が増えているのが気になる」 「環境庁が清掃や大気のデータを取るために放っているロボットですね」 「動物たちに何をするわけでもないが気味が悪いと聞かされている。今までサイバードッグやクロウに対して今までそんな事訴えてこなかったのにな」 「佐久間さんは吸血鬼になる前からその能力を?」 「軍人時代にいつの間にか身に着いた。今ほどはっきり言葉で聞こえる程じゃなかったが。そういやお前さん随分と落ち着いているな?もっと野蛮な感じがしたんだが」 「それは……白峰霄と華月さんの力が体の中で渦巻いて破壊衝動を抑えるのにいっぱいいっぱいだったからですよ。今はもう華月さんも復活されて落ち着いたんです」 「そうか」 「佐久間さんはどうして吸血鬼のメンバーに?」 「俺たちメンバーは黒谷の魔法の儀式とやらで吸血鬼化した。よく覚えてないが黒谷は考えてぬいてメンバーを選んだそうだ。職業も年齢も育ちもバラバラなのになぜか気が合う。華月様を信仰する気持ちも同じだ。黒谷曰く同じ失敗はしたくないかららしい」 「……過去に華月さんが滅ぼされた件ですか」 「だろうな……おっと蓮也、動物たちから連絡が来た。醍醐寺の方で何か妙な生き物が集まっているらしい。他のメンバーに連絡してすぐに向かおう」 携帯を操作して吸血鬼メンバーに送信する佐久間、今時珍しいマニュアルのタクシーを発進させ醍醐寺に向かった。 *** ―明命館学園 休み時間、二郎と白峰吹雪は屋上に続き階段の踊り場で小声で会話をしている。吹雪はかすかに感じる吸血鬼の気配に警戒していた。 「木城君、近くに吸血鬼がいるわ……未熟なわたしでは場所までは分からないけれど」 「そ、そうなの?(沖田先生と華月さんかな)」 「それに……なんだか体が少し重いの。何らかの術を行使している可能性があるわ」 「この学校が攻撃されてるって事?(沖田先生の力かな)」 「今朝見た小さな女の子……無関係とは思えない」 「あ、あの子がどうかした?」 「……何とも言えないけど白峰家であんな子はいないのよ。白峰家は分家の吸血鬼なんて存在しないの。分家の吸血鬼が誕生する条件は当主が失われた場合のみ無作為に覚醒する。お母さんが当主で無事なのだからありえないの。でもあの子から感じる血の気配は白峰家の物だった」 「そうなんだ……」 「あの子この学園のどこかにいるはず……探し出して話をしたい」 「どこにいるんだろうね」 二郎は携帯のメッセージに気づき確認する。差出人不明で【校長室】とだけ書かれていた。一瞬考えたがそれが沖田もしくは華月からだと気が付いた。 「なぁに~?そこの二人怪しいわね」 奥寺舞子が通りがかった。ジャンプで踊り場まで一気に飛んでくる。 「学校中を包み込んでる不愉快な魔力、私じゃないから」 「知ってるよ奥寺……さん」 「知ってるよ?って……へぇ、どういう事か知らないけど木城君も分かるようになったんだ。ふぅんそこの白峰吹雪と何かヤったの?」 「……っ!」 睨みつける吹雪。奥寺舞子は瞬時に目で捉えるのが困難なほど細い糸を周囲に張り巡らせて睨み返す。 「邪魔よ土蜘蛛。今はあなたに関わってる暇はないの」 「邪魔なのはあんたよ白峰吹雪。私は木城君に用があるんだから消えてくれない?」 「……木城君に何かあったらあなたを始末する」 「あっそ、自信満々なようだけど笑わせるわ」 二人のにらみ合いに耐えられなくなった二郎は間に立って両手を広げる。 「ふたりともやめてくれよ……奥寺さん、用があるなら聞くよ。白峰さんもいいだろ?」 「……5分だけ待つわ」 「ふん!じゃあ木城君屋上に行きましょ」 奥寺舞子に手を引かれ屋上に上がる二郎。屋上に他の人影はなかった。普段は鍵がかかっており、部活動に利用している生徒しか鍵は貸し出されない。奥寺舞子は糸で鍵を作り開けたのだった。 「用ってなんだい?」 「言っておきたいことがあって。私が操っていた従徒の人間、あれはもうすでに死んでたのよ」 「そうなのか……ってそれでも死体を勝手に操るなんて駄目なことだ」 「最後まで聞きなさいよ。既に死んでいたってのは何者かに殺されて操られてたの。私に襲い掛かってきたからぶっ飛ばして逆に操ってやったって訳。悪い事だってのは知ってるわよでもメールの実験も面白そうだったしついでに最近身に着けたスキルを試したかったのよ……まぁそういう事。だから本気で木城君を殺そうとか従徒にしようとか思ってなかったのよちょっとからかっただけ。妖怪ってそういうもの」 「奥寺さんは誰も殺してないのか?」 「そうね、殺してはいない。で、言いたかったのはそれだけじゃないの。私に襲い掛かってきた屍人の他にもまだまだ沢山いるわ友達も見かけたって言ってるし……心当たりは無い?」 二郎は深夜フードの男らに襲われたことを思い出した。 「異常に顔色の悪い変な奴らを見かけたよ……そのシビトってのと関係あるか分からないけど……」 「そう……一般人の木城君が目撃するくらいなのに教会は動かないって訳ね」 「え?」 「木城君、教会の事は白峰吹雪に聞いたわね?だけど教会なんか信じちゃ駄目よ、妖怪の私が言う事を信じろってのもおかしな話だけど」 「そんな俺にはよくわからないよ……けど奥寺さんなんでそんな事教えてくれるんだ?」 「さぁ?ただの気まぐれかも?その義手から魔力を感じるからちょっと私の勘が働いてっていうか……何かあったらまた教えてあげてもいいわよ」 奥寺舞子は携帯からメッセージを送信して去っていった。 【情報提供の報酬はマスドのドーナツで】 「(……そういや奥寺、勝田博士と電話してた時何か気にしてたな。あの時に今の話伝えたかったのか)」 「木城君!」 慌てた様子で吹雪が屋上に上がってきた。 「無事ね……土蜘蛛だけ降りてきたから何かあったのかと思った」 「大丈夫だよ、ねぇ白峰さん。ここ最近変なゾンビと言うか歩く死体みたいな事件は起きてない?」 携帯をポケットにしまって二郎は質問する。 「急にどうしたの木城君?」 「実は昨日見かけたんだ」 「……そういう事件もあると教会から聞いているわ。調査を担当しているのは別の人達だし、わたしには詳しい事は教えてくれない」 「誰が調査しているの?俺も一応教会と関りがあるし知っておきたいかなって」 「大天狗長門組の副長で烏天狗の【飯田迦楼羅】氏とその部下の人らよ。長門組は教会の二大勢力の一つなの」 「もう一つの勢力は?」 「【葛野忍】氏が代表を務める陰陽師団よ」 「大天狗長門組と陰陽師団が教会の二大勢力って事か」 「そうよ。わたしのように妖の血を引く者たちは大天狗長門組の指示を受けるの。木城君のお父さんである木城紫蓮さんは陰陽師団の指示を受けているわ」 「そうだったのか……」 「そのあたりの事を今夜説明するつもりだったの。速水君も交えてね」 「そっか、じゃあ今夜また話しよう。学校でこんな事話すのあまり良くないんじゃない?」 「ええ、一般人を巻き込む事になるのは避けないと駄目」 ―放課後 「失礼します」「どうぞ」 二郎は校長室に足を運んでいた。そこには落ち着かない様子の校長と、満面の笑みを浮かべる沖田、ソファに腰を掛け足を組みながらグラスを持っている華月が居た。 「そこのひたすら汗をかいている校長は無視して良いぞ二郎。未成年買春に性的嫌がらせに痴漢に盗撮と性的犯罪を犯している変態校長なのだからな。催眠術で全て吐かせたのだよ。我の事を黙っている代わりに放っておいてやるという条件だ」 「えぇ……」 「なんだ不満か二郎?我は警察でもなければ被害者でもない。変態校長の行動など関係ない放っておくだけよ」 グラスを傾け口にする華月。 「私は悲しい……校長がこのような人だったとは。だが告訴はしません、自首を促すだけです。ですがせっかくなので有り余る校長の性欲を抑制すべく生命力をかなり多くドレインしました。校長も華月様の役に立てるのです、ねえ?」 沖田が校長の肩に手を置くと一瞬強張らせた。 「さて木城君、さっそく私の集めたエネルギーを義手に入れよう。義手でエネルギーの質を上げたら華月様に差し上げて下さい」 「わかりました」 両手で二郎の手を握る沖田。赤黒いオーラが二郎の義手に吸い込まれていく。 「うっ……うぐぐぐぐぐ……」 沖田の吸収したエネルギーには吹雪や速水恭一、奥寺舞子も含まれていた為、義手に吸収される際軽い衝撃が走った。 「おや?木城君の右目が少し赤くなりましたね」 「え?ほんとですか!?」 「ふむ、勝田君の言う通りその義手は吸血鬼化してるもののようですね。もしそうなら君の特殊能力は何になるのやら」 その様子を見ていた華月は汗だくの校長に空になったグラスを見せる。校長は慌てて立ち上がり本棚に隠してある最高級のシャンパンを取り出した。 「学校に酒まで持ち込んでいるのだこの男は。京都でも1,2を争う進学校の明命館学園の校長がこのような者だとは生徒は誰も知るまい」 注がれたシャンパンを口にする華月。 「あのっこの酒はワタクシが持ちんだものでは無くその……」 「黙りなさい校長!華月様の許可なく発言はしないように!!」 「ひぃぃっ!」 睨みつける沖田に怯える校長。 「うぐぐぐぐぐぐ……!凝縮できました!!」 二郎の掌から赤く輝く光の弾が出現した。 「華月様さぁどうぞ」「うむ」 沖田が言うと華月はゆっくりと近づいて二郎の手から取り菓子でも食べるように味わいながら口から吸収した。 「美味である……明日もこの調子で頼むぞ二郎」 「はい……」 ゆっくりと右目は元に戻っていく。二郎は体中の血管が熱くなったように感じている。 「二郎君、学校で変わったことは無かったかね?」 「あ、えっと……気になる話を聞きました」 二郎は奥寺舞子と吹雪から聞いた話を華月と沖田に伝えた。 「長門組か……策を巡らすのが相変わらず好きなようだ」 華月はつまらなそうにつぶやいた。 「木城君、ご苦労だった。他に何もなければ帰ってもらって結構です」 「あ、はいでは失礼しました」 二郎が校長室を出ていく。 「この学園、色々と面白い話が聴けそうだな。校長、お前の持っている盗聴器を各教室と廊下に仕掛けろ。我がお前の楽しんでいる更衣室と便所だけ聴いても仕方ないからな」 華月は盗聴器の一つを校長の胸に指で押しつけながら言った。 「ああああ、はいいいいいっ!直ちに……」 前かがみになりながら必死の形相で答える校長。 「私は嬉しいですよ校長。貴方のようなものでも華月様の役に立てるのだから」 続く
Sep 13, 2020
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VAMPIREEYE80「吸血鬼勢」 三人は華月の声に従い伏見桃山城近くのマンションに移動する。蓮也はバイク、二郎と勝田はタクシーで。 マンションの地下駐車場に入った時結界に入った感覚があった。 「ようこそ!私は東邪馬高等学校の校長、谷川克政です」 大柄な男が笑顔で出迎えた赤く光る眼、鋭い犬歯が吸血鬼だという事が分かる。 「木城蓮也だ」「木城二郎です」 「さぁさどうぞ中へ!」 地下駐車場から専用の隠しエレベーターで最上階へ向かう。最上階へは鍵のかかった非常階段か専用エレベーターでしか上がれない二つのみのフロアー。 「このマンションには人払いの結界が張られていますから一般人は入ることはありません。教会の人間には見破られますがそれもご心配なく、対処しているので」 谷川はうやうやしく目の前のドアの鍵を開けた。 中は絨毯張りの高級ホテルのような内装だった。大正時代を思わせる家具が並べられ和洋折衷の空間を作り出していた。 『黒谷』 華月の声に驚くように姿を現したのは金髪で右目を隠したヘアスタイル、漆黒のスーツを身につけた二十代に見える男であった。 「華月様まさかもうこんなに声を出せるように」 『そこの二郎のおかげよ。蓮也の弟だ』 「詳しい話は僕からしますよ黒谷さん」 勝田は黒谷にこれまでのいきさつを話した。 黒谷ジークベルトはヨーロッパ出身の吸血鬼。華月時代の白峰家と交流があり華月に命を助けられた。日本から離れている時に華月の悲報を聞いた。 華月を失ったことをどうしても受け入れられない黒谷はありとあらゆる術、魔法を調べ仲間を集め華月復活を模索した。そしてある日白峰家の特性を知るまでになり華月復活計画を企てた。 「そうですか……その不思議な義手が鍵を握っていたと。良かったです私は仲間に恵まれているようだ。集めた仲間の縁が無ければ二郎君の義手と華月様が触れることは無かった」 「良かったで済む話か黒谷」 睨みつける蓮也。白峰家長女の白峰霄(そら)を傷つけ蓮也が吸血鬼になる原因となった黒谷に殺意を向ける。 「霄様は純粋でお優しい方。ああいったトラブルが無ければ血を使う事など無い。吸血鬼は血を使ってこその存在です」 「黒谷、あのクソ野郎のヴァンパイアハンター源藤高雅もお前の仕業か?」 「あれは想定外です。どこから湧いて出来て来たのやら。予定ではその辺の妖を谷川さんに操らせて霄様とあなたを襲撃して血を使わせるするつもりでしたが、あの源藤高雅に潰されたのです」 「白峰霄は精神的にも傷ついた……よくもトラウマを負わせるようなことを……」 「源藤高雅の行方は追っています。霄様のケアも考えていますよ」 『まぁおちつけ、我の復活が成れば蓮也は人間に戻してやる。霄も現状を理解しこちらに就くはずだ』 華月の声が聞こえる。 「その通りです華月様。そして京を白峰家の統治に」 『義手の生気で目標の半分は達成した。受肉は可能である。完全体には遠いが肉体を得ることを優先とする』 「沖田さんの力で一気に人間どもから吸い上げて完全体へとなられた方がいいのでは?」 『まぁ待て、出来るだけ目立たないように行動するのだ。教会の動きが読めない現状、勝田と二郎に探らせながら動く。沖田の力は緩やかに断続的に使用、明命館の生徒の命を奪わぬように怪しまれない量を収集、生気を二郎の義手で凝縮。それを我が貰う』 「それで間に合いますか?夏休みが近いようですが」 『なあに、受肉できればわずかだが食物からでも生気は接種できる』 「万が一何者かに沖田さんの力を気付かれた場合はどうしましょう?」 『その時の事も考えてある。楽しみにしてるが良い。黒谷、受肉の準備をせよ今すぐに』 その言葉に動揺する黒谷。 「今すぐですか……華月様に用意している衣装がまだ届いておりません」 『湯上り手拭いでもなんでも今日はそれで良い、服は明日に人間の店で購入して来い』 「は、では近藤さん、斎藤さん、沖田さん、木戸さん、佐久間さん、河上さんを呼びます」 ―30分後 黒谷の同志がアジトのマンションに集合する。 警視・近藤肇 警部・斎藤勇雷 明命館副校長・沖田実満 東邪馬高校校長・谷川克政 都メタル社長・木戸剛照 佐久間タクシー社長・佐久間瓢介 平安京新聞社社主・河上起央 科学者・勝田波留夫 以上8名が黒谷の前に立つ。 紅い絨毯の先に設置された豪華な椅子にはバスローブがかけられている。その横に木城蓮也と二郎が立っている。 「蓮也君、刀を椅子に」 黒谷の指示で刀を置く蓮也。 刀から赤黒いオーラが立ち上り徐々に人型を形成していく。小柄な女性のシルエットを形成すると赤黒いオーラは薄れていく。白いつま先が現れる。下から透き通るような白い肌が現れていく。輝く銀髪、燃えるように赤い目。圧倒的存在感を持つ女性が椅子の前に現れた。十代前半くらいに見える。白峰華月がその姿を現した。 「華月様」 裸体の華月に素早くバスローブをかける黒谷。 「流石に幼い姿か。だがこれでお前たちにも支援してやれる」 全員の目が華月に釘付けになっている。 「美しい……」「神々しい……」「完全体になればどれほど綺麗になるのか……」「非の打ち所が無いですな……」「キラキラですねぇ」「ありがたや……」「歴史的瞬間だ!」「ぶひいいいいいいいいい!」 自然と膝をつく吸血鬼たち。 横にいる蓮也と二郎も見つめている。 「(白峰霄に似ている)」「(人形みたいにかわいい人だな……)」 「お前たちに今から血を1滴づつ分けてやる」 華月は椅子に腰かけると足を組んでほんの少し目を細め透き通る声で言った。 「華月様それは……眷属に加えるという事で……?」 黒谷が取り乱している。高位の吸血鬼の血を与える行為は色々な意味を持たせることが出来るからだ。 「心配そうな顔をしおって……今回はお前たちの働きに期待して一時的に力を強化してやるだけの事。効果は30日、その間に我は完全体へ成る。30日後働きが良かったものには更なる褒美を与えるぞ」 「は、ははー!」 「では一人づつ与える。どこに欲しいか申せ」 近藤、斎藤は右腕に。華月が撫でるように塗る。 沖田、谷川は背中に。華月は指を這わせて塗る。 木戸、佐久間、河上は額。華月はゆっくりと指でさするように塗る 「僕はお皿にお願いします!!」 ウィッグを取る勝田、頭頂部の皿を差し出す。華月は指先を血で濡らすと皿に触れ塗りたくるように指を動かした。 「あ、あひいいいいいいいいいいいいいっ!!」 「ふふ、最後は黒谷だな」 「私は目にお願いします」 「よし、お前は特に濃いのをやろう。一番の功労者であるからな」 指から垂らした血を目薬のように落とす華月。 「おお……おおおおっ!」 他の者もため息交じりの声を上げている。 「我の生気の収集、源藤高雅とその関係者の捜索、Vえなじぃ装置の開発、教会の調査をお前たちに命じる」 「「「「「「「ははーっ!」」」」」」」 華月は蓮也と二郎の視線に気が付いた。 「どうしたお前たち。血が欲しいのか?欲しければやるがいいのか?お前たちはそれぞれ霄と吹雪から頂戴したいのではないか?」 「俺は力が欲しいだけだお前と契約するつもりはない」 「お、俺は……」 「どうしても我慢できなくなった時申すが良い。一時的に血の渇望を止めてやる。蓮也は吸血鬼になりかけ、二郎は吸血鬼の特性を持つ義手をつけておるからな」 「チッ……」 「この義手、そういうものなんですか……」 「蓮也は霄を説得し源藤高雅とその関係者捜索に加われ。二郎は教会に属して吹雪の近くにいるがよい」 「言われなくてもあの野郎には借りがあるキッチリと落とし前つけさせてやる」 「教会……親父の属してる組織だし嫌ではないですね」 ―思念体達 『バカな!華月の復活が早過ぎる!』 『しかし……流れは悪くないのではないか?』 『そうだ復活が早いのならその分余裕がある、やれる事が増えるはずだ』 『もしかしてこれが一番の最適道なのかもしれない』 『慎重に慎重にだ……』 二郎の思念体らは混乱していた。 ―翌日の朝 木城二郎と速水恭一は白峰吹雪に連れられ田口堂に来ていた。 「教会かぁ…実際のところよく知らねえんだよなぁ」 速水恭一は頭の後ろで手を組んでため息混じりに言った。 「人間と化物が揉め事を起こさねえように管理してるって話だけど結局人間側の都合を押し付けてるんじゃねえの?それが嫌で従わないのもいるんだろ?奥寺みたいに」 「それを今から聞くんだろ?」 二郎は速水恭一に言った。 「二人共こっちに…」 白峰吹雪が田口堂のカウンターの奥から暖簾をあげて言う。二郎と速水は吹雪に着いていく。 「ここが教会の協力者のお店。木城君は別の用事でここに来てたね?」 「うん、まさかそういう店だとは知らなかったよ」 「は~ん……俺はこういうとこ用がねぇからな。スポーツショップがメインだしな」 「まだ大きな事件は起きてないけど教会は人手がいるの。わたしのサポートメンバーを探していて……同じ学校だし二人にお願いしようかと思って」 「どうすっかなー陸上に打ち込むのもいいけど刺激が足りないつーっか白峰ちゃんと一緒なら楽しくなりそうだし」 「俺はやるよ。経験しておけば親父のサポートもできるようになるだろうし」 「この店がしばらくの間活動拠点になるわ。わたしが居ない時はこの店の店主の田口渉さんに分からない事は聞いて」 ―思念体達 『おかしいな』 『ああ、吹雪が碁盤の目町に案内しない』 『吸血鬼沖田討伐の大成果を上げなかったからか……これは予測できないぞ』 『やはり今回は違う』 二郎と速水恭一は一通り教会の説明を聞いて簡単な契約書にサインをした。 「木城君、お兄さんの事……」 二郎は少し動揺した反応を見せてしまった。 「え、兄貴がどうかした?」 「心配じゃないの?あんなことがあったのに……」 「心配だけど友達の親の知り合いの探偵さんに昨日依頼したんだ……親父にも母さんにも内緒でね」 咄嗟に下手な嘘をついてしまった二郎。吹雪はほんの少し驚いたがそれだけであった。 「そう……」 吹雪は自分の姉の霄が蓮也に血を与えて吸血鬼に近い存在にしてしまったことを気にして二郎に接している。 二郎は吸血鬼勢の事を吹雪に秘密にしなければならない後ろめたさがあった。 「……そろそろ学校に行かないと」 「そうね」 「あ~だりぃ試験がもうすぐ始まんだよなぁ」 三人そろって明命館に登校する。校門の前に人だかりができているのが見えた。人だかりをかき分けて校門にたどり着く三人、そこで見たのは…… 「ごきげんよう」 そう挨拶する漆黒の制服姿の少女、日傘を持った白峰華月であった。 「!?」 二郎は思わず声が出そうになった。横の吹雪の様子は目を大きく開いてじっとしている。 「かわいこちゃんだ。小学生?中一くらいか?」 速水恭一は華月と吹雪を見比べている。 「みなさん通してください。わ、私は今日からこの学園に転入することになった黒谷月と言います」 どよめく生徒たち。 「この時期に転入?」「すっげぇキラキラの銀髪」「超かわいい!」「お人形さん!?」 黒谷月と名乗った華月は二郎の前に立ち頭を下げるようにゼスチャーをする。そして耳元でささやいた。 「生気回収にはこの方が都合がよいのでな。手続きは沖田に言えばすぐだったぞ?なに、夏休みまでの戯れよ」 「ぇぇ……マズイですよ……」 ふふっと笑い綿毛のような軽い動作で二郎から離れる華月。薔薇のような香りが二郎の鼻をくすぐった。 「肩にゴミがついてましたわ。それでは私は校長室に用があるので失礼いたします」 綺麗なターンをきめて校舎に入っていく華月。それを見ていた吹雪は声が出なかった。白峰家の気配を感じる者が見たことも無い人物であった事がショックだった。 「(あの子どこかで見たような……姉さんにとても似ている……誰!?)」 続く
Sep 5, 2020
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