全2件 (2件中 1-2件目)
1
DHHUその7―財団では緊急対策会議が行われジンガ対策チームが組まれることになった。 作戦指令室に先代勇者セイ、魔術師ミネ、技術者オットー、オペレーターのダン、ノイ。 勇者パーティーに参加予定の10名。 県境の町内の集会所に集まっていた。「ここの町内は財団の関係者が多い。一つの『ギルド』と思えばいい一般人の町内より気軽に使える」 前代勇者セイが言った。「昔この地域で長期任務を行ったことがあった、その為にこの町内に住んだ財団の関係者がそのまま移住して家族を持ったんだ」「へぇ」「そうなんだ」 絆創膏を所々張り付けたユウと左腕に包帯を巻いたケンが言った。「財団はユウ、ケンの二人を勇者に認定した。これは異例の事ではあるが理由がある。同じ任務に挑むことを条件に勇者と認めるそうだ」「そっか」「ちっ」「どちらかが勇者、どちらかが守護者とするには勿体無いとのとこだ。どちらも勇者として存分に実力を発揮させたいのが財団の意向なんだ」「ひとついいですか」 ケンが言った。「勇者が二人となれば意見が分かれ対立するかもしれません、その場合どうすれば?」「いいか、もう一人の勇者は競争相手でもライバルでもないぞケン。それぞれの主張があるのなら財団の現場指揮者か私に相談すればいい。勇者の間に上も下もないのだから」「納得できませんが……受け止めます。任務を最優先に考え迷ったときは上に相談します」「それでいい、ケンお前なら見事にやり遂げられとも」「あの俺は……」 ユウが言った。「ユウは今まで通りで良い。難しい事は考えずに勇者として動いてくれ。いつでも私や現場指揮の者に相談しろ」「はい!」「ではユウ、ケン、パーティーメンバーをここに集まった10人の中からそれぞれ3人ずつ選ぶがいい。選出されなかった者はこの拠点の防衛兼控えとして残ってもらう」「えっと……」 ユウはリストと目の前のメンバーを見比べて思案している。「俺はもうリストを見て決めてるよ。ユウ、後で俺の選んだメンバーが欲しければ納得できる説明で俺を説得してくれ、そうすれば譲るかもな」「え? え!?」 一方的に言い放った後にケンが前に出る。「フン……俺は戦士ラーニー、僧侶アンディ、魔術師ネスターを選ぶ!」「へぇ~解ってますね勇者様は」 屈強な女戦士のラーニーが前に出る。【戦士ラーニー】人工筋肉を大量に移植、超合金でコーティングした骨、外殻脳を搭載した戦闘サイボーグ。自己修復機能持ち。シーアインダストリー製のパルスフィールドシールドを攻撃と防御を状況に合わせて使いこなす。 ――次。「ウィ~! シクヨロ勇者サマ!!」 ヘッドホンを首にかけた痩せたロングコートの男僧侶アンディ。【僧侶アンディ】元エクレシアの体術退魔師。常に音楽を聞きリズムに合わせて体を動かす。シーアインダストリー製アンチマジックコートを着込み魔力攻撃を吸収する。コートと自身の魔力を込めた打撃を敵の体内に撃ち込んでダメージを与える。 ――次。「オエップ……すみませんね朝まで女と飲んでたもんで。でも俺は天才なので大丈夫大丈夫任せておきな!」 酒臭い息を吐いてふらついている男は魔術師ネスター。【魔術師ネスター】 生まれつき魔力を練りやすい体質で高速詠唱や連射も得意。魔力回復速度にも優れ長時間の作戦にも耐えられる。酒癖女癖ギャンブル狂でも有名な魔術師。火の魔術がメイン。シーアインダストリー製の万能杖を持つ。「バランスのいい組み合わせだな。前衛に戦士ラーニー、後方からの火力は魔術師ネスター、サモナー勇者を守る僧侶アンディか。ユウは決まったか?」 先代勇者セイはケンの選んだメンバーを見て言った。「じゃあ俺は……まず武闘家ハオラン!」「ッシャー! またよろしくな!」 拳を掌で叩いて白い歯を見せるハオラン。 ――次。「えっと……死霊術師(イタコ)のサイガ」 派手な恰好をした年齢不詳の女性。ずっと携帯を触っている。「ん? あーし? ま、いいケド。娘がコームインになって出てったからまたこっちの仕事に来ました~的な? スキルは娘に負けてないから全然現役最強イタコ……ネクロマンサーなんでヨロ!」【死霊術師 才賀桃色桜(サイガ・ピンクピーチ)】 物心ついた時から死者との対話が出来たサイガ。【凶】の呪術に対抗できる力を持つことで先代勇者セイのパーティに参加したこともあった。一回り程しか年齢の離れてない娘がいる。 ――次。「錬金術師ドウェイン」「ほう、自分は前線のメンバーには選ばれないかと思ってました。宜しくお願いします」 眼鏡の位置を直し一礼をするビジネススーツの長身の男性。【錬金術師ドウェイン】 医師免許を持つ錬金術師のドウェイン。医療器具をその場で錬成したり、種類は多くないが薬品を合成することも可能。屈強な肉体を持ち日本の剣術道場で免許皆伝を得ている。「前衛に後衛に支援職か、着装するユウは武闘家ハオランと共に前に出て敵と戦い死霊術師サイガに術に対処させ錬金術師ドウェインに補助を行わせる。【凶】の異空間結界(ダンジョン)攻略寄りのパーティーだな」 先代勇者セイは腕を組んで頷きながら言った。ケンのパーティー勇者(サモナー型):ケン戦士:ラーニー僧侶:アンディ魔術師:ネスターユウのパーティー勇者(着装型):ユウ武闘家:ハオラン死霊術師:サイガ錬金術師:ドウェイン「では作戦会議を行う」 セイはモニターに京都の地図を表示させる。「【凶】のジンガは真邪王の邪眼を所持している。これは完全催眠の他に幻覚を見せたり破壊エネルギーを発することができ他にも隠された力があるとされている。奴はまず京都に居る数多くの強力な妖や魔術師、異能者、権力者などを邪眼の能力を使って配下にするはずだ」 セイは地図の上に数名の顔写真を表示させる。「【凶】が東京で活動していた時は政治家に警察、反社会グループに妖の何でも屋を配下に置いていた。異空間結界(ダンジョン)も数多く造られ次の衆議院解散に合わせて与党に多くの【凶】関係者を送り込もうとしていた。ダンジョンは潜伏するに最適で一般人には見つけることはできない」 セイは違う写真を表示する。「京都で【凶】が狙うと思われるのは知事、市長、警察関係者、退魔組織エクレシア所属の陰陽師・土御門道鳴 白峰家当主・白峰雪名……それとセンジョーグループの仙丈隼磨に……これは……」「?」 セイがリストを見て止まった事に気付くケン。「……父さん?」「父さん、何か気になる事でも?」「いや、なんでもない。リストに昔の知り合いによく似ていた者が載っていたのでな。だけだ生きてるはずがない。作戦を続けよう」 セイは咳払いをしてモニターを切り替える。「邪眼の完全催眠を受けた者は死ぬまで戻らない。邪眼の完全催眠で支配できるのは1人のみ。集団催眠の場合は戻すことができる」「一番邪眼にやられたら困るのは誰?」 ユウが言った。「……仙丈隼磨か白峰雪名だな」「その二人だね」「念の為にこの二人も」 黒谷ジークベルトと黒谷月。黒魔術師の家族としか書かれていないがセイがこの二人を意識しているのをユウとケンは感じ取っていた。「わかった」「了解」 セイは目を瞑り思考をめぐらせる。「(……ジンガの父親は歴代の総理大臣に邪眼の完全催眠を使っていた。人間相手であれば完全催眠をかけるまでの時間目を合わせ続けるのは簡単だ……だが京都の強力な妖達相手に目を合わせ続けることなど可能だろうか?怨霊怪獣の作成、ユウの話を聞くにジンガは首領とは比べ物にならないほどの術者というのが分かっている……何か嫌な予感がする)」 邪眼の完全催眠をかけるには対象の相手と10秒間目を合わせ続けなくてならない。ジンガの父親が強力な戦闘力を持つ相手に完全催眠を使用しなかったのはリスクが大きかったからである。ジンガと違い呪術の才能は並であったが話術と人間関係の構築に優れていた。自分の能力を理解しわざわざ猛獣の檻に入るような真似はしなかったのである。 セイは別の資料をモニターに映し出す。「関係者には財団から連絡をしてある。次に財団が自由に使える拠点と協力者がいる場所だ」***―京都府山中「馬鹿どもが集まる場所ってのは簡単に解っていいよな」 産業廃棄物の処理場とは名ばかりの違法投棄を繰り返している山中の会社に乗り込んでいるジンガと用心棒の大池。20人ほどの従業員は全て倒れている。「居なくなっても誰も困らないIDも存在しない連中……大した怨霊怪獣にはならんだろうが数は力だ」 呪符を投げるジンガ。次々と従業員は人型を保った怨霊怪獣へと姿を変える。「ケッ! 大学の時とは比べ物にならん駄作だ!! まあいいコイツらは使い捨ての駒だ、切り札は別に用意する必要がある」「坊ちゃん、マサとアカネも合流できそうですぜ」 用心棒の大池が言った。「そうか、人斬りマサと魔女アカネは脱獄に成功したか」「坊ちゃんのおかげですぜ、今頃拘置所には全くの別人がマサとアカネとして入ってますわ」「特殊犯罪容疑者を収容したあの拘置所のセキュリティはそれなりにレベルが高かったが……完璧なんてものはねぇ。呪符+ダンジョン+怨霊作成の合わせ技トリックを使って破ってやった気付いた時にはもう遅い。大池、市内につくったダンジョンで奴らと合流するぞ座標を伝えておけ」「へい」 ―京都駅南側の住宅街 古い住宅街を歩くジンガ。人斬りマサと魔女アカネの待つ場所へと進む。コンビニの裏路地行き止まりの壁がダンジョンの入口になっていた。 ダンジョンの中は薄暗く木造建築の廊下が続く構造をしていた。「お久しぶりです若! このご恩は働きで返して見せます!」 角刈りに白いシャツに腹巻、雪駄の人斬りマサが言った。「ここのダンジョン和風とは粋ですなぁ」「クク、真邪王の邪体の一つ邪眼の覚醒に成功したからよ、ちと凝った内装で作ってみた」「流石ですなぁ若」「今ここの仮の主は適当に配置した怨霊怪獣だ、あんな奴じゃあ心許ない。このダンジョンはマサに任せる。お前好みにダンジョンをカスタマイズしてみろ」 呪印を刻んだ日本刀をマサに渡すジンガ。次の瞬間襖が開き怨霊怪獣が現れた。「ハハ! 用済みと知って反逆か! マサ、やれ」「はい!」 刀を抜いたマサは抜刀斬りから斬り下ろし怨霊怪獣を十字に切り裂き肉塊へと変えた。「ほぉ~これはいい刀ですなぁ」「お前の腕もな、片手斬りで見事なもんだ」「ボスさま脱獄の手引き感謝いたします。わたくしにはダンジョンありませんの?」 キセルを持ちパーマをかけたピンク髪にスカジャン、下には赤いワンピースにハイヒールの魔女アカネが言った。「勿論あるぜ、街の北にあるラブホの横に作った。お前好みのドSなつくりにしてある、あとは自分でカスタマイズしな」 ジンガは呪印を刻んだ扇子をアカネに渡す。「ウフフフフフ……ボスさま最高」「新生【凶】はここから始まる。親父のように金に縛られた生き方はしねえ。俺は真邪王の邪体を揃え完全復活を無しとげ奇跡を起こしてみせる」「坊ちゃんの意識の高さには頭が上がりませんわ」「流石若どこまでもついていきますぜぇ」「ボスさまの傍なら退屈しないで済みそうだわ」「まずはテメェらに【凶】の切り札となり得る邪眼の支配下に置く戦力候補を探してもらいたい。京都にはウジャウジャ強いのがいやがるからな。これと思った奴が居たら俺様に知らせな」 ジンガは呪符の束を大池、マサ、アカネに配る。「俺の呪符を渡しておく、適当に手下の兵を作るなり死体処理なり好きにしろ。注意するのは一つだけだ、『勇者は殺すな』それだけ守れ」「へい!」「解りました!」*** ケンのパーティーは市内に入り退魔組織エクレシアの人物との待ち合わせの場所に向かう。僧侶アンディの古巣という事もあり約束はスムーズに取り付けられた。「久しぶりに来たぜこの街、相変わらず妖魔の気がムンムン満ちてる息苦しい空気だぜ」 ヘッドホンで音楽を聴きながらアンディが言った。「癖になっちまってんだ探知が。どうだ? オレだけしか解ってないのか?」「いや~自分もビンビン感じ取ってるよぉ~ウヒヒ!」 女性の歩行者を目で追いながら魔術師ネスターが言った。「妖魔の気だと? 殺気の有無は感じ取ってますがね」 鋭い目つきで警戒しながら戦士ラーニーが言った。「フン、思ってたよりしょぼい街だ……カミナとセンジョーで好景気だって聞いてたけど全然東京に及ばないね」 ケンは前髪で魔眼の片目を隠したまま鼻で笑いながら言った。「ギラギラはしてないけど公共の設備は手入れが行き届いているしゴミも全然落ちてないし無駄に飛びまくってる監視カメラドローンも全然ない。良い街だと思いますよ」 戦士ラーニーは街並みの感想を言いながら行きかう人々の表情が明るい事に気が付いていた。「イキリサイバネ者も多いようですが逆に危険人物は解りやすくて観光客には良いのかも知れませんね。余計なトラブルを起こさない為にも」「古いものと新しいものをうまい具合に調和させてるって訳かぁ~うんうん。移動中に見た南側の大きな企業の建物群と比べ中心は歴史と観光スポットが多いんだな」 魔術師ネスターが言った。「何つーかレトロフューチャーっての?サイエンスフィクションの映画の世界をうまく取り込んで融合したような街なんだよ」 僧侶アンディが言った。「こんなのより最新最先端の東京都オータムホースシティに行きたいよ俺は。まだ行ったことが無くてね」 ケンは携帯端末を触りながら言った。「おお~っとっと……全員警戒モードでシクヨロ! 妖魔が俺らを見てるぜ~」 へらへらした表情を止める僧侶アンディ。全員が周囲に気を張る。「4体……かねぇ?」「まだ距離はありますね」「カードで探索するか?」 ケン達の前を治安維持パトロールのパワードスーツが通る。「戦闘用のパワードスーツ……型落ちだけどカミナ製のだ」 ケンがつぶやいた。「自衛隊や機動隊にも正式採用されてるシリーズのを街中で見るなんてね……なるほど、妖らが安易に仕掛けてこない理由の一つか、この街もしばらく来ないうちに変わったねぇ」続く
Mar 17, 2024
コメント(0)
DHHUその6 ユウはこんな時ほど落ち着かなければと深呼吸をした。「冷静にならなきゃ……俺の目的は何だ優先すべきことは……」 【チョウチンアンコウ】と【浮き鳴子】を召喚。自分の周囲に浮かせる。怨獣が出なければそれでいい、目的は【凶】の首領の息子ジンガを捕らえる事。その為にはこの異空間結界(ダンジョン)から脱出しなければならない。「不意打ちであの粘液を喰らうのはヤバイ……だから浮き鳴子に反応したらチョウチンアンコウが飛び掛からせる。粘液到達までの時間を稼いで魔眼を発動、チョウチンアンコウを戻してイクスバーンで斬りつける、それで主である怨霊怪獣を仕留めれば」 異空間結界(ダンジョン)の主か核になっているものを破壊すれば例外無く異空間結界(ダンジョン)は消える。ユウは父の経験談を思い出す。「むう……」 驚くほど静かだった。壁を滴る水と床の水たまりを歩く自分の足音だけが聞こえる。「この異空間結界(ダンジョン)不快なだけで毒も罠も今の所無い……時間稼ぎが目的かな」 廊下を歩くユウ。ぐるりと1周して元の場所に戻ってきた。「構造もシンプルで狭い……L字の廊下を何回か曲がるだけで戻ってきた」 ユウはカードデッキを眺める。「さてどうするか……獅子王着装の状態を保ちつつここをはやく突破するには水場で強い鮫の闘士を使いたい。鰐王は獅子王の予備で残しておきたいしこれ以上着装できるカードの消費は避けたい」現在の着装は獅子王。 狼の銃士は(待機モードでしばらくは使えない) 鮫の闘士(召喚可) 蛇の暗殺者(待機モード) 天馬の騎士(待機モード) 樹の神官(召喚中・自動遠隔操作) 鰐王(召喚可) キョンシー(待機モード) チョウチンアンコウ(召喚中) 怪盗コウモリ(召喚中・自動遠隔操作) ネコマタネコ(召喚可) ゴリラボクサー(修復中) 残りはアイテムなどの支援カード。「ケンなら何かいい脱出方法思いつくんだろうなぁ……」 ユウは呟きながら剣を構える。「ゴリ押しだけど……これしか俺には思いつかないや」 いつでも凄剣イクスバーンを放てる姿勢でゆっくりと歩く。魔眼を発動し続けているユウの目から涙がにじみ出ている。「我慢比べになるかな……向こうが出てこないのなら矢鱈滅多に暴れてやるか。この程度の狭い異空間結界(ダンジョン)なら破壊できるかもしれないし」「ヒゴゴッ」 天井からホース状の口が伸びてくる。その瞬間鳴子の音と同時にチョウチンアンコウが飛び出し粘液を受け止める。「しまった、上からか!」 ユウはとっさに魔眼で浮かび上がらせた怨霊怪獣の幻影を斬りつけホース状の口を両断する。「ヒギャアアアアアアアアオオオオオオオオッ!!」 天井から悍ましい悲鳴が上がった。ユウは凄剣イクスバーンを放つべくチャージを開始。『それはダメなのです!』 ユウの足元の影の中から人影が飛び出し黒い刃が伸びる、ユウの左腕に突き刺さった。「痛っ!」 獅子王の装甲を貫いた黒い刃はユウの腕の皮膚に到達していた。「もう一体の敵!? もしかしてコイツが異空間結界(ダンジョン)の主か!?」『そうとも言えるのです』 ユウには影から発する声が同学年の女子に聞こえる。それは影に再び入り姿を消した。「魔眼発動!」 攻撃を仕掛けてきた敵の過去幻影を浮かび上がらせ斬りつける。手ごたえは殆どなくまるで水を切ったような感覚であった。『無駄なのです、只の分身体なのでダメージはないのです』「誰だお前は! 【凶】のメンバーか!?」『あはははは、メンバー? おかしなことを言うのです。 ワタシが【凶】なのですよ。ジンガ君が邪眼を覚醒させつつあるから少しだけこっちの世界に干渉できるようになったのです』「え?」『おバカにも解りやすく言うと、ワタシは真邪王と言う名で呼ばれてる存在なのです』「真……邪王……だって!?」 ユウの体に電撃が走ったような感覚。まさかそんな強大な存在に出くわすとは。ユウの全身から汗が噴き出す。財団の最大の敵である真邪王。その恐ろしさは父からよく聞かされていた。『今はこうやって異空間結界(ダンジョン)の中でしか活動できないけど邪体が揃えばこの世界で自由に活動できるのです』「そ、そんな事絶対にさせない!!」『させない? あははは! とりあえず邪眼の覚醒はもう防げないのですよワタシがこうやって異空間結界(ダンジョン)に出てこれてるのだから』「うるさい!! 邪眼なんか封印してやる!!」『未熟な勇者がどこまでやれるか楽しみなのです』「うああああああああああああっ! 凄剣イクスバーン!!」 黄金剣の光波を放つユウ、真邪王の影を蹴散らしその背後に隠れていた怨獣に命中した。「ヒゴゴゴゴ! ヒゴゴゴゴゴゴー!!」 頭から股間まで切り裂かれた怨獣は体液をまき散らしながらゆっくりと歩を進める。傷は深い。『驚いた今の一撃は中々やるのです。ではまたどこかで』 何処からともなく聞こえてくる真邪王の声。異空間結界(ダンジョン)は霧が晴れるように消えていく。怨獣は3歩進んだところでうつ伏せに倒れ肉塊へとなり果てた。「はぁはぁはぁ……」 滝のように汗をかいて座り込むユウ。消耗が激しく今にも獅子王の変身を解いてしまいそうになる。「くっそ~急がないといけないのに……」 ユウは真邪王を名乗った少女の声の影を思い出す。「想像と全然違ったや……雷のようなデカい声と大きな悪魔の姿を想像してたのに」 ユウが父から聞かされていた真邪王は正に悪魔そのものの姿であった。真邪王はアンチアタッカーである勇者に合わせて姿を変える存在。先代勇者セイにとって一番やりにくかった相手の姿が大きな悪魔だという事である。更に前の勇者の時は黒い竜の姿だった。「これまで財団は真邪王の完全復活は全て阻止しているんだ……俺だってやってやる!」 完全復活は阻止しているが完全封印も成し遂げていない。財団と【凶】の完全決着はついていない。 ユウは栄養ドリンクを一気に飲み干して立ち上がる。「異空間結界(ダンジョン)攻略完了……もう無いと思うけど」 呻き声が聞こえる方向を目指すユウ。講堂の方に進んでいくと灯りが見えた。「あそこか」「うううううううう……」「おおおおおおおおお……」 ぞろぞろと裸の男女が講堂から出てくる。眼はうつろで足はふらついている。「なんだ!? 一般人?」「ギャハハハハハハハハー!」 下品な笑い声が聞こえた。講堂の扉の開いた隙間から見えるジンガの姿。「侵入者ご苦労さん~だがもう間に合わないぜ? 何の罪もない一般人がお前を阻むぞ」「なに!」「そいつらはお前を殺すことはできないだろうが取り囲んで動けなくする事は出来る。見た感じ甘ちゃんだろうから罪のない一般人を薙ぎ払うことはできんだろ?」 裸の男女の集団を押しのけようとするユウ、異常なまでの力で獅子王の鎧にしがみつき爪が割れている。「うううううう」「おおおおおおお」 次々と集まりユウの上に重なっていく。「クソ……裸だし下手にのけると大怪我させてしまう……」 一瞬カードで何かを召喚して蹴散らそうかと考えたが止めた。「ケンの持ってるファランクスがあれば……」 ケンであれば容赦なくファランクスを使わずとも蹴散らしていた。必要な犠牲と割り切り生命の危険さえなければ良しとしていた。「ギャハハハハハハ! ここで爆破して吹っ飛ばしてやってもいいがそれじゃあ面白くねぇ邪眼の完成を前に何もできず俺を逃し無力を感じ打ちひしがれなー!」「な、何を~」 裸の山に埋もれていくユウ。「一目見て分かったぜお前財団の勇者だ。いいねぇ~宿敵って奴だ。それじゃあこんな所で終わらすのは勿体無いだろ。うっかりさっきの怨霊怪獣で死ななくてよかったな。街で爆発した方はどうなったか知らんが」「余裕ぶっこいてると痛い目にあうぞ」「ギャハハハハハハ! 余裕? 違うね、やる気がモリモリ湧いてきてんだよ。邪眼もほぼ完成し真邪王復活の足がかりができた、そこに宿敵だ。その辺の邪魔者ならその場でぶっ殺してる所だが財団の勇者となれば別だ。勇者は俺様が完全に屈服させ心の底から敗北を認めさせてやるぜ。それが【凶】の魔王ってもんだろ?」「お前が首領の息子……か」「ああ、名前はジンガ。覚えておけ親父を超える大魔王になる男の名だ!」 ジンガは空中に浮いているピンポン玉大の物質に手を伸ばす。「邪眼の完成度は90%か……使用には問題なし、もうここには用はないな」「待てジンガ!」ユウはゆっくりと立ち上がり裸の山を緩やかに崩す。「吠えるなよ、行先は教えてやる追って来るがいい。俺様は好き勝手やるから止めて見せな? 【凶】はあっという間に復活させるぜ。この邪眼さえあれば簡単だ」「くうううう~」「俺様はとっておきの怨霊怪獣を倒しダンジョンを抜けたお前を評価してんだ。だから教えてやるんだ静かに聞けよ……俺様は京都に向かうぜ。魑魅魍魎の跋扈する都市だ。ああだが拠点は街中に作るとは限らんからなよく探せよ? 下手な探し方して京都の厄介ごとに巻き込まれて死ぬとか残念な結果になるなよ?俺様も気を付けるが」 ジンガは呪符を投げるとユウに覆いかぶさっている男の一人に張り付けた。「そいつで時間稼ぎさせてもらう、じゃあな勇者!」 ジンガは邪眼を懐にしまい講堂の窓から飛び降りて去っていく。「ジンガあああああああああ!」「バモモモモモモモ……」 呪符を張り付けられた男の体が変化していく。人型イソギンチャク怨霊怪獣に成る。「クソー! こんな怨霊怪獣の相手をしてる場合じゃないのに!!」「バモモモモモモモモー!」 イソギンチャク怨霊怪獣は全身の触手を伸ばして裸の男女の集団を突き刺していく。「はっ!?」 みるみるうちにしぼんでいく男女。ユウはここで鮫の闘士を召喚した。「シャアアアアアア!」 トライデントを構えた鮫の闘士がイソギンチャク怨霊怪獣に突進。「ここは鮫の闘士に任せて……ハオランと合流してジンガを追わないと」 イソギンチャク怨霊怪獣の触手を切断するユウ、ハオランの居る1階へ向かう。「ハオラン!」 1階へ下りると麺で戦う用心棒大池の姿は無く、倒れているハオランが見えた。「大丈夫!?」「イッテェ……あの麺野郎は何とかぶちのめしたんだけどよ、急に飛んできた黒い塊に撥ね飛ばされてこのザマなんだわ」「黒い塊?」「ああ、ぶちのめした麺野郎を回収して飛んでったぜ。ユウの方はどうなった?」「首領の息子ジンガは見つけたけど逃げられた……京都に行くって言ってた」「そっか……これでまた仕切り直しって訳か」「今すぐ追いかければまだ間に合うかも……」「そうかもな、だけど今のユウの状態で奴に追いついて戦えるのか?顔色がヤバイぜ」「う……」 疲労は限界に近く今にも獅子王の着装を解除しそうになっている。「悔しいけどここは一旦引いた方がいいぜ。財団もお前の弟も奴が京都に向かった事は知らないんだろう? 罠に掛かったらお終いだ」「そう……だよね」「こっちも限界でよ、これ以上の戦いは無理だ」「わかったアジトに帰ろう」***アジトの小屋に戻るユウとハオラン。重傷のケンとターニャが寝かされ治療を受けていた。「一体何が……」「おかえりなさい」 オートドクターを操作して治療をしている財団の女はユウを見る。「2人は【凶】の放ったモンスターと戦闘して傷を負いました。命に別状はありませんよ」「……」 淡々と答える女に少しイラ立ちながらユウは大学で起きたことを説明する。「なるほど、由々しき事態のようですね。追加の人員を要請しましょう」「勇者の試練は中止だよ、こんな状態で出来ない!」「試練は今この段階で終了とします。財団側から結果発表を待ちましょう」「なんだって!?」「スピードが大事です。財団はすぐにジンガの向かった地域に調査員を送り込むでしょう。そして朝には対策チームと共に作戦が開始されます」「く……」「作戦に備えて回復に努めてください。傷はオートドクターやカードの力で治せますが体力は戻りませんので」「わかったよ」 ユウは自分の荷物が置いてある部屋に移動する。「めちゃくくちゃ被害も出てるのにあの女の人全然平気そうだったな」 ユウは部屋の扉を閉めると同時にハオランに言った。「まぁそういうなって。財団の重要なポストを任されてるくらいだから冷静で的確な判断を下せなきゃ務まらないんだろうよ。それにしてもこれで俺たちのパーティーは解散か」「そうなのかな……俺は引き続きハオランと組んで任務に挑みたいけど」「勇者パーティーに入りたい連中は財団関係にも多いからどうなるかな~……運が良ければまた一緒に仕事出来るかもよ。大人数の作戦となれば次は4人1組パーティーになりそうだしワンチャンあるか」「伝統の王道4人パーティー……か」「今頃関係各位大騒ぎだろうぜ。ユウはそんなこと気にせず体を休めてくれよな明日からは大規模な作戦が始まるんだからよ」「う、うん……もし自分でパーティーメンバー選べるのなら俺ハオラン選ぶよ」「おう! そん時はまたよろしくな!」続く
Mar 3, 2024
コメント(0)
全2件 (2件中 1-2件目)
1