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DHHUその29 ユウの額に汗がにじむ。「くそ、くそ……どうすればいいんだ……」「ギャハハハハ! 苦しめ苦しめ!!」 蜘蛛ジンガは黒粘糸を車両に着けスイング、窓を蹴破って車内に飛び込む。「おらおら! クソ雑魚共無駄死にしな!!」 蜘蛛ジンガの姿に驚く車内の人々、避ける暇もなく黒粘糸を浴びせかけられて捕らえられる。「ほらよっ!」 力を込めて一気に引く蜘蛛ジンガ二人の男女が割れた窓から投げ出された。「ああっ!」 車両の天井居たユウが声を上げる。投げ出された男女に気が付いたが間に合わない漆黒の地面に消えていった。「これで二人死んだな! ダンジョンの外に放り出されてホテルビルから落下死だ!」「ジンガあああああああっ!」 獅子王の鎧と凄剣イクスバーンを装備したユウが割れた窓から車内に飛び込む。「ククク、さぁこい! 来いよ!」 黒粘糸を網状に広げて車内の人々を捕らえている蜘蛛ジンガ。「やめろ!」「止めて見せろよ勇者!もたもたしてっと先頭車両から俺のモンスターがコイツらを殺しまくるぜ」 黒粘糸を連続で飛ばす蜘蛛ジンガ、ユウはイクスバーンで受け止める。「使えば使うほど馴染んでくるぜこの適合者の体とコピー能力……」 狭い車内の為突き攻撃を仕掛けるユウに対しバック転で回避しながら黒粘糸で牽制する。「くっそ……」 いつの間にか床に仕掛けられた黒粘糸に足を取られるユウ。「不注意だぜ勇者!」 目の前で網に包まれた子供3人を窓を破って外に放り投げる蜘蛛ジンガ。「やめろおおおおおおおおおおおっ!」 投げ捨てられた子供は間一髪、車両の上にいた桜桃色の骨武者の手によってキャッチ。「あーしらも居る事を忘れてないかい? 魔王さん」 骨武者が車内に入って来る。「俺もいるぜ」 気配を消して近づいたハオランが蜘蛛ジンガに直剣で斬りつける。咄嗟の反応で避けられたが刃は肩を掠めた。「ふん……ならば……」 割れた窓から飛び出し再び車両の屋根にあがる。そして連結部に向かって走り出す。「待て!」「待ちやがれ!」 ユウとハオランが追いかける。「連結部の接続を解除してやるぜ。そうすればどうなるか解るか?」「そんな事をしたら……」 円周の線路上を走っているダンジョン列車、ここで車両の接続を解除されると置いて行かれた車両に先頭車両が激突する事になる。「させるかー!」 ペガサスナイトを召喚するユウ、飛び乗って蜘蛛ジンガに仕掛ける。過去に干渉できる魔眼を上手く使えば激突を防げるかもしれないと考えたが無駄使いは出来ない。タイミングを見極めてジンガが車両を切り離す直前を狙わなければならない。「(回避不可能な必殺の一撃をここぞという時に当てなければ駄目なんだ)」 大きな隙を狙って魔眼で過去の幻影を浮かび上げ凄剣イクスバーンを叩き込みたいユウ。「(ケンなら……魔眼で未来予測をして不死鳥の剣士を使って炎の範囲攻撃で決められるはず……黒粘糸も焼き払えるだろうし)」 ペガサスナイトは蜘蛛ジンガに向かって突進、ユウは凄剣イクスバーンを構える。すれ違いざまに剣で狙うが回避される。Uターンしたユウは蜘蛛ジンガを見失った。「何処だ!?」「ここだぜ」 ペガサスナイトの腹に張り付いていた蜘蛛ジンガは胴体を伝って逆立ち蹴りをユウに放つ。兜の側面を蹴られたユウは大きく仰け反った。「ギャハハハハ!このまま車両の間に落ちて礫死しなー!」 連続蹴りを撃ち込む蜘蛛ジンガ、ユウはペガサスナイトからずり落ちて手綱でぶら下がった状態となった。「ぐう……」「そらあっ!このまま墜落だぁ!」 ペガサスナイトはダンジョン車両に向かって墜落を始める。「負けて……たまるかぁっ!」 車両に激突寸前にペガサスナイトを解除して屋根の上を転げていくユウ。蜘蛛ジンガは片手をついて音もなく屋根に着地した。「ククククク……魔王と勇者が対等だと思っていたか? そんな訳ねえよな、魔王側は常に不利なんだぜ? 俺がお前を圧倒してるのは俺自身を理解し、お前の嫌がる事を理解しているからだ。もう一人の勇者ならこんな展開にはなってなかったという事だ」「はぁはぁ……」「武器、防具、魔力、戦力の数、どれもお前の方が上だ。だがお前は俺には勝てない、俺の方が理解力に優れているからだ」 再び降りて車両の中に戻る蜘蛛ジンガ。「連携もとらせない、人質は最大限利用する。お前にできるのは俺を追って空振りするだけだ」 車内の椅子で頭を抱えていた青白い顔をした学生を黒粘糸で捕らえ外に投げる。「うわぁぁぁぁ……」 叫び声は車両の走行音と漆黒の地面に吸い込まれ消えていった。「また一人死んだぞ?」「うおおおおおおっ!」 屋根を切り裂き飛び込んでくるユウ、蜘蛛ジンガは横に居た中年女性を盾にしてユウの剣を止まらせた。「く……卑怯な……」「卑怯でもなんでもいいんだよ! こっちは魔王だからな!」蜘蛛ジンガの右腕が女性を貫く、鮮血がユウの視界を遮る。蜘蛛ジンガは指先から黒粘糸を飛ばしてユウの鎧に着け貫いた女性をそのまま蹴って押し付けた。「そのままそいつが死んでいくのを間近で見とけよ!」 ユウの鎧に縫い付けられた女性の眼の光が消えていく。「うわああああああっ! 獅子王解除! 樹の神官召喚!」 獅子王はカードに戻り癒し手の樹の神官が召喚される。「ハ! 馬鹿が!」 接近した蜘蛛ジンガはユウを殴りつける。「こうなりゃ只のガキだな! ボロクズになるまで痛めつけてやるぜ」 蜘蛛ジンガのうしろでは樹の神官が女性に手をかざし傷を塞いでいく。馬乗りになって殴りかかってくる蜘蛛ジンガに対しユウは無言でゴリラボクサーを召喚して蜘蛛ジンガの腕を掴ませた。「簡単にはやられないってか」 ゴリラボクサーのパンチが蜘蛛ジンガを捉える。右ストレート、右フック、右アッパーでフィニッシュ、車両の廊下を滑っていく。「許さない! 許さないぞジンガああああああああっ!」「今のは効いたぜ……だがお前に更なる絶望を与えてやるぞ。このダンジョンで俺様を倒せたとしても後2回は蘇る……ここで負けても更に卑劣で残虐で強くなり財団に挑むぞ」「なん……だと!?」「やれよ勇者!必殺の一撃で車両ごと吹き飛ばせばこのダンジョンは一瞬で消えるぜ?」「何やってんだユウ!」 二人の居る車両に飛び込んで来たハオラン。「こんな奴の話を聞く必要なんてねぇ!」「ハオラン……」「サイガは先頭車両に向かってったぜ、運転席について出入口のあるトンネル内で停車させるんだと。その間コイツを自由にさせなきゃいいんだ」 ハイエナ獣人に変身するハオラン。「倒せなくたっていい、今は時間稼ぎだぜユウ!」「わかった……」 蛇の暗殺者を着装するユウ。「チッ! 目の輝きが戻りやがったか……どうやら勇者よりも先にパーティーメンバーを始末した方が良さそうだな」 体当たりを仕掛けるハオラン、体で刀身を隠して肉迫。「馬鹿が!」 黒粘糸を指から発射すべくハオランに向ける。ハオランは手を払い体で隠していた直剣で斬りつける。狙いは蜘蛛ジンガ本体ではなく手首。「ぐっ」 払いのけられ上がった蜘蛛ジンガ右手はハオランの直剣によって深い傷を負った。「ちっ! 切断まではいかなかったか」「テメェ……」 蜘蛛ジンガは割れた窓の縁に飛び乗って距離を取る。そのまま屋根へ。「行けユウ! 車内は俺に任せろ!」「わかった!」 追いかけるユウ、屋根では蜘蛛ジンガが黒粘糸で右腕の出血を止めていた。「やってくれたなあの獣人……だが片手のハンデがあっても俺の優位は変わらない。お前は人質を見捨てることはできない。その気になれば俺はこの列車を脱線させて全員ダンジョンから放りだすこともできるんだ」 列車は出入口のあるトンネルへ突入する。「さぁさぁさぁ……列車は止まるか? 止まらなければまた1周走る間に人質を殺すぜ」「余裕がないのはお前もだジンガ!」「なんだと?」「もう惑わされない、俺はハオランとサイガを信じる! お前を止める!」「やってみろよ勇者ァ!」 陰陽の双剣を装備した蛇の暗殺者フォームのユウ、トンネルの中で暗く揺れて不安定な列車の屋根でも難なくバランスを取り連続攻撃を繰り出す。「動きが違う……!」「この装備の選択が正しかったんだ、お前に挑発されて俺は獅子王とイクスバーンを装備してしまった。こんな場所で戦うの向いてないのに!」 ユウは勝利の絵を頭で描いていた。魔眼を使い過去の幻影のジンガの左腕を切り完全に黒粘糸の能力を封じる。「(あとは大きな隙をつくらせれば……!)」「コイツ……急に動きが良くなった」 黒粘糸を固めた棒を右手に取り付け振り回して双剣を凌いでいる蜘蛛ジンガ、真邪王のコピー元である土蜘蛛は手の指からだけではなく様々な場所から糸を出せるのだがジンガにはまだ無理であった。「(先頭車両の蜘蛛怪人は何をしている……)」 ジンガが放った蜘蛛怪人は既に才賀桜桃色の手によって無力化され骨で固められていた。桜桃色は列車の操作が解からず頭をひねっていた。「これがブレーキだとして……」 列車の速度が落ちていく。「サイガ! やってくれた!」「クソガアアアアアアッ!」 屋根を駆けだす蜘蛛ジンガ、先頭車両に向かう。それを追いかけるユウ。「車両を爆破するしかねぇ」「何だと!?」 呪符を取り出す蜘蛛ジンガ、それを見たユウは魔眼を発動。過去の幻影を浮かび上がらせる。「(呪符を取り出す少し前のジンガの幻影を斬る!)」 陰陽の双剣の4連撃が幻影の背中、肩、両腕を切り裂く。少し前を行く蜘蛛ジンガ本体に斬撃が浮かび上がる。「ぐわあああああああああっ!クソがああああああああっ!」 呪符は発動することなく列車から落ちていく。「やったか」「ちくしょうおおおお……黒粘糸をもっと有効活用すべきだったぜ……やはり慣らし運転はしとくべきだったな」「おわりだジンガ!」「ククク……これで終わりじゃねえぞ」 うつ伏せに倒れているジンガは僅かに体を起こしてユウを睨みつける。「何をする気だ!」「ククククク……」 体を起こしたジンガは腹に手を当てる。すると仕込んでいた呪符が光を放つ。「今から盛大に自爆してやるよ! 次の俺様は負けねーからな」 魔眼はまだ使用できない。ここで自爆されればトンネルが崩落する危険がある。「だったらここは……!」 鰐王を召喚。蜘蛛ジンガを頭からかぶりつき上半身を飲み込む。「そのまま列車から飛び降りろ!」「グラアアアアアアアアアッ!」 落下する鰐王と蜘蛛ジンガ、漆黒の地面に吸い込まれダンジョンから放り出される。「グラアアアアアアアアッ!」 ホテルビルの最上階の高さに転送、空中で鰐王は顎に力を入れ蜘蛛ジンガを噛み砕く。「……」 空中で呪符が発動し鰐王と蜘蛛ジンガは爆発四散。衝撃でホテルビルのガラスが割れていく。『あと少しと言う所で負けたのです……次はもっとジンガ君に良いコピーとダンジョンを用意するのです』 真邪王の声がする。「絶対に負けないぞ……真邪王!」『アハハハハハ! いいですねぇ~それでこそ勇者潰しがいがあるのです! 次からは一切の出し惜しみも無く全力全開で行くのです覚悟しておくのですよ』 真邪王の声が消える。同時にダンジョンも薄れていく。列車は消えユウ達はホテルビルの廊下に出現した。「無事か!」 ドウェインが駆け寄って来る。「なんとか……でも犠牲が出ちゃったんだ……」「くやしいな……」「めちゃくちゃ疲れたよ」 ホテルの部屋からハオランと桜桃色が出て来た。続く
Oct 27, 2024
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DHHUその28「シャッ!」 蹴りを放つハオラン、黒い人物は天井から離れ音もなく床に着地、片手を着いた低い姿勢でハオランを見つめている。「全身タイツっぽいふざけた見た目だが……殺気は凄いなこいつ」「……」 粘弾を飛ばしつつ低い姿勢で突進、ハオランの間合いに入ると体を横にひねり死角から蹴りを放つ。ハオランは冷静に動作の起こりを見極めガードする。「!?」 ガードした左腕には黒い粘糸、床と繋がっている。反撃のストレートを放つハオランだが黒い人物はひらりと蝶のように回避する。「クソ、なんだこの糸は」 糸を引き千切るべくハオランは手に取って引く。「伸びやがる……ゴムみたいに」「……」 天井を利用してスイングした黒い人物は飛び蹴りでハオランを襲う。何とか回避をしたが腕につけられた糸のせいでその場から動けない。「やべ」 黒い人物の先には縫い付けられたドウェインがいる。「させない!」「あーしらを無視してんじゃないよ!」 獅子王を着装したユウ、骨武者を召喚する桃色桜がドウェインの前に立って壁を作る。 イクスバーンを抜いて斬りつけるユウ、黒い人物は軽く躱して粘弾をユウの顔面にぶつける。獅子王の仮面の視界が遮られる。「この!」 左手で顔の糸を千切りながらイクスバーンを振るユウ、妙な手ごたえを感じる。「……」 イクスバーンは黒い人物が両手を上下に広げ粘糸の束に受け止められていた。「コイツ……強い!」 見ていたハオランが呟いた。「うおおおおおおお!」 イクスバーンにエネルギーを送り粘糸を千切り飛ばすユウ。「コイツ只の影コピーじゃない……」『そうなのです! ……かなり精度を上げたコピーをジンガ君が操っているのです』「真邪王!」『テストもかねて勇者の一人でも始末できれば万々歳ですからねー』「テストだと?」『適合者のですよ。邪眼コピーした影を適合者に移してジンガ君が操作する』「……影がここ居るって事は近くにダンジョンがあるんだな」『そういう事になるのです。ダンジョンはこのタワーホテルなのです! 気が付かなったです? 準備はしておいて待機、ルームサービスが部屋にたどり着いたのを確認して発動したのです!』「柄留が追跡弾を付けた奴ってのは……」『コイツなのです! どうやっても追跡弾を除去できないのでいっそのこと割り切ってテスト用に使う事にしたのです! そしてやっぱりジンガ君は才能あるのです私の用意した影のデータを読み込んですぐに使いこなしているのです。オリジナルに比べると動きは違いますけどジンガ君のセンスで十分戦えているのです!』「蜘蛛みたいな能力の者をコピーしたのか」『大正解! コイツの能力は頭の回転が速くないと使いこなせないのです』「やっかいな奴をコピーしやがって」ハオランがつぶやく。『奇襲は失敗に終わったのですがダンジョンはちゃんと残ってるのです。このタワーホテルの従業員と客は全て取り込んだのです! 助けたければ早く攻略するのですよ~?』 投網のように糸を大きく広げて浴びせかける黒い人物。連続バック転で扉を出ていく。 ユウはイクスバーンで網を除去してドウェインを拘束から解く。「向こうから攻めてくるとは余程余裕がないと見える……」 手首をさすりながらドウェインが言った。「息つく暇もないねまったく……」 桃色桜は廊下で気まずそうに待っているルームサービスに気が付いた。「とりあえず腹ごしらえだね。せっかく無事に届けてくれたんだから頂こうよ」「食べたら出発だな、幸い物資はここにある救出した人達はこのフロアーに集めよう。後で屋上からヘリで脱出してもらえばいい」 ハオランが言った。 ――食事後。「救出メインのダンジョン攻略になりそうだな……私は深くまで潜らずに救出された者達の応急処置にあたった方がよいかな?」 ドウェインは医療器具の入ったカバンをチェックしながら言った。「……」「ユウ?」 暗い顔のユウをみたハオランが声をかける。「ごめん……」「財団の作戦本部には連絡したんだろう? 応援も来てくれるんだし何が気になる?」「……これ以上犠牲者を出したくないんだ。【凶】の連中と戦うだけじゃなくて無関係な人も守れなきゃ勇者じゃないなって」「それは……」 会話を聞いていた才賀桃色桜。「全てを救うなんて無理だよ。なるべく多くを救いたいのなら出来るだけ早くダンジョンを潰すしかない……セイも同じ事で悩んでたよ」「父さんも……」「真邪王を封印できるのは勇者だけなんだ、一番やるべきことはそれ。他の事を無視するなんてできないけど時間をかければかけるだけ犠牲者は増えてしまう」「うん……」「勇者を支えるのがあーしらの役目、財団は真邪王封印のためにある。もっともっと勇者は財団やあーしらを頼っていいんだよ。セイも勇者を引退してからは同士を集めるのに頑張ってたからね」「そうだぜユウ! 勇者がなにもかも背負うんじゃねえ、もっと財団のギルドメンバーを頼りな!」「医療の知識があるメンバーと機器を用意するように本部に頼む」「わかった……」 ユウは作戦本部のセイと通信を繋げメンバーの要望を伝える。『東京のギルドメンバーを集結させよう。30分後にはそのビルの屋上に到着するはずだ』***「クソ……もう半身はほとんど動かねぇ……もうダンジョンを作るのは無理だ」 ジンガはリクライニングシートに座ったままの姿勢で動かない。『まぁ短期間で作り過ぎましたからねぇ……でもホラ適合者が4人もいるし気に入ったのがあれば乗り換えるのです!』 真邪王の声がする。動かなくなったジンガの半身の眼球から声を出す。「簡単に言いやがる……」『何とか力を振り絞ってあと一つ作るのですよ。勇者どもを一網打尽にするために』「いい案があるのか?他の邪体も取り返さねえといけねえのに……」『今勇者のギルドのビルをダンジョン化してますよねぇ?ビルはホテルですから人質を大量に確保しています、解放するために奴らは全力で来るでしょう。ジンガ君は適合者の一人を使って出来るだけ全力で相手して欲しいのです』「はぁ? それでどうなるってんだ? あわよくば勇者の一人を始末できるかもしれないってか?」『それもあるのですが、奴らがダンジョン攻略中に財団の保管庫を残りの適合者3人を使って襲撃します。戦力がホテルビルと京都に分散してる時を狙ってね』「……適合者の一人と京都に居るアカネを囮にするってか」『まぁまぁ、勝てばいいだけでしょう?魔女アカネも適合者の一人も使い捨てるつもりじゃないです、場合によってはというだけで』「アカネのダンジョンとホテルビルが突破されたらどうする?」『自爆処理ですね。ジンガ君は次の適合者に紐づけてあげますので安心するのです。邪体の一つでも財団の保管庫から取り返せればその場でダンジョンを作るのです』「ダンジョンで保管庫を包み込み数の暴力でゴリ押して残りの邪体も手に入れるって算段か……」『死に物狂いで適合者を酷使すれば邪体の一つくらいはとれるはずです安心してくださいジンガ君は絶対死なせないので……ジンガ君に死なれると私も身動きできなくなるので』「渋谷、台場、オータムホース……この三カ所に財団の保管庫があるんだな?」『京都にも都内にもまだあるんですけど……そっちはほぼ諦めています。本命は渋谷、台場、オータムホースの3つ、この中でどれか一つでも取れれば私たちの勝利にぐっと傾きますよ』「しかし可能なのか?ホテルビルのダンジョンからも俺自身からも離れているが……」『大丈夫なのです!適合者4人は互いに繋がっていて一人でもダンジョンの主になってれば力を得られるのです!今設置している全てのダンジョンを破壊されなければ!』「邪体を一つでも取れれば俺の負担は減るんだろうな?」『勿論なのです! 邪体を得て勇者を潰し【凶】を復活させ配下を増やせばジンガ君は悠々自適なのです!』「京都のアカネのダンジョン、東京のホテルビルのダンジョン……そして最後に作る最強のダンジョン、お前は邪体を得る。これで勇者を潰せば勝ちなんだな?」『そうなのです!』「想定以上に財団は手ごわい……親父の代に比べてかなりの力をつけていた。【凶】を復活させたら対抗できる組織作りをしなくてはな」『そうですねぇ』「……気合、入れ直したぜ。ホテルビルダンジョンの適合者とのリンク再接続頼む。東京にいる勇者をぶっ潰すつもりで全力でやるぜ。もし俺が勇者との戦いで不全になると思ったらお前の判断で適合者に俺の魂を移してくれ」『了解なのです!1体は邪体奪取に残すとして2回コンテニュー出来るのです!』「最悪相打ちに持ち込んでもいけるか……真邪王頼んだぞ」『お任せなのです!』 真邪王はホテルビルダンジョンの主である適合者(邪眼コピー済み)とジンガをリンクさせる。「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」 適合者の右目にジンガ、左目に真邪王の邪眼を宿した適合者。肉体は邪眼のコピー能力によって魔改造され長くは生きられない。『さぁジンガ君、京都で得たこの能力は君でなくては扱いきれないよ。元の主はきっと恐るべき頭の回転の速さだったんだろうね』「ハ! 映画ミスターアラクニドの蜘蛛人間の要領だろ? コツを掴めばなんとかなる」『クレメンタインもジンガ君に任せればよかったのですそうしたらあんなしょうもないやられ方しなかったのに』「お前は能力が強すぎる、だから戦い方が雑なんだよ」『これからは無くて惜しいコピーはジンガ君に任せるのです』「戦力としてストックしとくのも悪くねえな」***少し仮眠を取り装備のチェックを終え準備万端のユウとパーティーメンバー。屋上に財団の大型ヘリが到着したのはその時であった。「よし……じゃあダンジョンに突入だ!ドウェインはダンジョンの入り口で待機お願い」「うむ」 ユウ、才賀桜桃色、ハオランはホテルビルの廊下に出現しているダンジョンの入口に飛び込む。「はっ」 飛び込んだ先は高速で走っている列車の上だった。「ホテルビルの中だから縦長のダンジョンかと思ってたら!」 ユウは思わずしゃがんで言った。「緩やかに反時計周りに進んでいるね、ダンジョンの広さ自体はホテルビルの面積と変わらないと思うけど」 骨の杖をついて列車の天井を突きながら才賀桜桃色が言った。「周回する線路の上を列車が走っているダンジョンか……これは人質を救出するの大変だぞ……」 ハオランは周囲を見渡しながら言った。後方に見えるのはトンネルの上部にあるダンジョンの出入り口。「あのトンネルを出た所で列車を止めて人質を出さないといけねぇぞ」「人質の安全を確保して列車をあの場所で止め邪魔をするモンスターやダンジョン主と戦わないといけない……か」 ユウの目の下に残ったクマが気になるハオラン。「いや、大丈夫。あーしが骨はしごをかければ列車がどこで止まろうとも人質は脱出させられるよ優先すべきは列車を止める事だね」 桜桃色がそう言った直後、背後から黒い影が出現した。下の列車の中から飛び出したそれは飛び蹴りで襲い掛かって来る。「シャッ!」「むっ!?」 咄嗟に出現させた骨武者でガードする桜桃色。蹴りの反動で空中に飛び上がった黒い影は黒い粘糸を飛ばして列車に着けパチンコめいて自身を発射させる。「シャシャー!」 強烈な飛び蹴りを放つ、骨武者は肩の大袖でガードするが大きく仰け反った。「このっ!」 直剣で突きに掛かるハオラン。空中で姿勢を変え錐もみ回転で回避、着地と同時に黒粘糸をハオランに向けて発射。咄嗟の反応でなんとか直剣で受け止める。「獅子王! イクスバーン!」 獅子王に着装し凄剣イクスバーンを抜くユウ。ハオランの後ろから飛び出して斬りつける。黒い影はバック宙返りで飛んで避けた。「いきなり出てきたな」「そろそろこっちも余裕がないんでな。俺様直々に相手してやるって訳だ」「その声……ジンガか!? でもその体は女性みたいだ……」「ククク……まぁ俺様にも色々隠し玉ってのはあるのさ。ここでオマエを始末して残りの勇者もじきに同じところに送ってやるぜ」「蜘蛛みたいな能力……それがお前の呪力の本領発揮か」「いいや? これは借り物の力にすぎねぇ……だが天才の俺様はこの土蜘蛛の能力も使いこなして見せるぜ」「土蜘蛛?」「本来の土蜘蛛とは違うが俺様の天才的操縦力に呪力を合わせたアレンジ。真邪王のバックアップ……お前らに負ける訳がねぇ」「俺も負けられない!」「威勢のいいことで……言っておくがこの列車から落ちればダンジョンから強制退場、ホテルビルの最上階高さの空中に放り出されるぜ。ちなみに線路の上は強烈な電流と呪いがかかってる一般人なんて一瞬で黒焦げ、お前らでも身動きとれなくなるだろうな」「そんな……」「ククククク……この状況で人質は救えるかなぁ?全員落下死もしくは感電死もしくは俺の可愛いモンスターの餌食になるかもなぁ?」「なに!?」「先頭車両から放たれた蜘蛛怪人はゆっくりと車内の人質を襲いながら進むぜ……さぁどうする勇者ァ!!」続く
Oct 13, 2024
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