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DHHUその18「サイガあれって」「あーしの娘よ」『もう一人彼女の相棒もついてくる。戦力としても役に立つはずだ』『兜金柄留でーす! 絶対に役に立ちます何でも言ってね……あ、なんでもといってもエ――』 玩具のような銃をガンスピンさせてワイプに現れるくすんだ金髪の女性。何か言おうとした所、愛来薔薇に口を押さえられる。『じゃあまた後でー!』 ワイプが消える。『……ああ見えても彼女らは警察官(特殊能力持ち)だ。信用していい』「東京は変わった警察官が居るんだな……」 ユウは目を丸くして言った。『秋馬原島・オータムホースシティから彼女たちは移動中、到着次第作戦開始だ。新宿に散らばっている調査員には定時報告をさせる』 才賀愛来薔薇、兜金柄留が到着までの間、ユウ達とTMIのメンバーは話をしていた。「ドウェインさんは医師なのですね。実は私将来看護師を目指してまして少しお話を聞かせていただきたく」 フローレンスが言った。「そうでしたか。私は特殊な医師なので病院勤めの者とは違いますが話せる事はなんでも話しましょう」 ドウェインはフローレンスの前に座った。「アリナさんは……武術家なのかい?」 ハオランは微動だにせず薄目のアリナに話しかける。「武術家ではありませんね」「TMIのエージェントは皆エスパーだと聞いてたけどアリナさんはそう見えなくてね」「わたしの場合異能はほぼ使いませんから。ハオランさん、貴方は実戦に身を置く武術家ですね? 身のこなし目配り呼吸反応で分かります」「いやすまない、普段ならこんな失礼な事聞かないんだがアンタがあまりにもレベル違いすぎてちょっと好奇心を抑えきれなくてつい」「なるほど、武術家としてわたしに興味がわいたと。何を知りたいですか? 手っ取り早く組手でもしますか?」 アリナの目が完全に開く。「え?」「驚きつつも備えている。常在戦場が身に染みてますね、大丈夫です部屋を壊さない程度ならいいでしょう」「じゃああっちのリビングで……」「武術家が場所を選ぶのですか?」「……確かにな」 ハオランは座っているアリナに机を押し付けて飛び掛かる。アリナは机を押し返さずに座ったまま姿勢を維持してハオランの右ストレートを左手で受け止める。「――!?」 ハオランの体が動かない。動こうするとそれを察したアリナが掴んでいる右手を動かしバランスをコントロール。「嘘だろ……擒拿術(きんなじゅつ)か」「右手から伝わる貴方の情報を読んで関節に力を送りバランスを崩してます」「だったら」 机に身を預け腰を乗せ滑りこむように蹴りを放つハオラン、アリナは掴んでいた右手を捻りハオランの体を宙に浮かせて押し離す。ハオランは絨毯の床を転げた。「――は、ははははは」 全身から汗を噴出させながら体を起こすハオラン。アリナは座ったまま静かに机を元の位置に戻している。「まだ続けますか?」「いや、もう十分」「わかりました」「ありがとうアリナさん」「いえ、こちらこそ」「アリナさん、この前俺が戦った相手の事を話したいのだが」「はい」 アリナは椅子から立ち上がりハオランの傍に寄り手を引いて立ち上がらせる。 その様子をユウ、才賀桜桃色、哿が見ていた。「え? 何やってんだろう?」「飛んだり跳ねたりしてたね」「あはは……武術家同士の交流じゃないでしょうか」 ユウ達はベッドの横の机に資料を並べて囲んでいる。「北と南に別れてダンジョン攻略した方が良いと思うんだ」 ユウがタブレットの地図を指して言う。「ダンジョンの質にもよるけど疲労を考えて一日2つが限度かな?」 才賀桜桃色はユウの顔を見て言った。「2チームで一日4つのダンジョンを攻略可能……と。現在確認できているダンジョンの数はいくつですか?」 哿は自身の端末を操作しながら言った。「5つ……だね。まだ増えるかも知れないけど全部攻略しないで済むかもしれない」 才賀桜桃色は骨の振り子ダウジングを見つめながら言った。「ジンガ……邪眼を見つけて封印すればそこで終了だからね」「京都の方でも攻略するから場合によっては東京は1つ位で終わるかも……やっぱ違う、おわりじゃないね。どっちみちダンジョンは消さなきゃいけないからこのチームで攻略する必要は無くなるだろうけど」「二日で終われば良い結果という訳ですね」 ***――京都 ケンが目を覚ましたのは闘技場から出てから24時間経っていた。「……」「起きたかケン」 医療ポッドの横で作戦モニターを眺めていたセイが振り返る。「父さん……」「どこか痛むところはないか?」「大丈夫だよちょっと寝すぎたみたいだけど」 ユウは横のデジタル時計を見た。「気にするな、体調管理は大事だ。シャワーでも浴びてくるか?食事も用意しよう」「うん……」 ゆっくりと体を起こしてスリッパを履くケン。「あの父さん俺……」「パーティーメンバーの事残念だったな。だが財団の作戦に参加する者は皆覚悟を持って来ているお前が必要以上に気に病む必要はないぞ」「でも」「ああ、まったく気にしない者よりずっといい。その気持ちを忘れずに勇者として成長していけ」「はい……」 泣きながらシャワーを浴び落ち着いたケンはパンとスープの食事を摂る。「食べながらでいい聞いてくれ、状況を説明しよう」 セイが声をかける。 ゆっくりと余計な話を入れずにケンに状況を説明するセイ。「――という訳だ」「白峰華月が俺のパーティーメンバーに……」 強烈に印象に残っている華月の姿。仲間を失ったケンのストレスは華月の事で薄まっていく。心拍数が上がり体温が高くなるのが分かる。「そうだ、彼女の事はもう分かったな?」「うん、父さんが言ってたよりずっとずっと良い存在だったよ。最高だよ白峰華月は!」「ほう……」「とにかく最高なんだ……どう言い表せればいいか……最初は怖かったんだけど動いてる姿、声、戦闘の様子を見て……こんな凄い存在が居たんだと……」「はは……そうか。なるほど彼女は違う意味でも危険だったな。関わった者に強烈な印象を与え影響するんだ。(昔エクレシアが危険視して暗殺を仕掛けたからな)」「彼女は今どこに?」「街を散策すると行って従者を連れて出て行った。連絡すればすぐに戻って来るぞ」 ――数分後。 華月はジークベルトと河童科学者の勝田波留夫を連れ戻ってきた。「起きたかケン」 後頭部に団子状にまとめた髪、ジャンパースカートに白いタイツにショートブーツを履いた華月が声をかけた。「お、起きた。もう体は大丈夫」 足先から全身を見てしまうケン。「ふふふ……少年よ、すっかり華月様に魅せられてしまったようですね」「かづたん様推しになったかな?」 ケンの様子を見たジークベルトと勝田が言った。「えっと……」「ああ、この男は我の従者の一人。セイの許可を得て作戦に参加することになった」「よろしく勝田波留夫だよ」「ケン・シーアです!」「うんうん、いいですね~キラキラした少年がかづたん様の魅力に気が付いたと。推し話でもしますかな?」「勝田」静かに華月が言った。「おっと、この話はまたの機会に。さっそく作戦の話をしましょうか」「あの、もう一人センジョーから来るって話では?」「ああ、その者はキッチンで食べ溜めしているぞ。ぬっぺふほふ一族の男だ」 華月が声をかけるとキッチンからスキンヘッド小太りの色白の男が入ってきた。年齢不詳だが少年のようにも見える。「どうも~ぬっぺふほふ族の滑田獏(なめりたばく)です。よろしーく」「どうも、ケンです」「回復ならオイラにお任せさ~腕でも生やしてみせるさ~」「だ、そうだ。ケン、我らは準備出来てるぞ」「俺もすぐに準備する。まずはこのダンジョンから行こう!」 ケンは京都駅から南側にあるダンジョン発見ポイントを指す。 ジークベルトのゲートで移動するケン達。ダンジョンの前には違法改造の車、バイクが並び見るからにガラの悪いサイバネ達が屯っていた。「邪魔だ退け」 華月の言葉に一瞬目を向けるが無視を決め込むサイバネ。「華月様の言葉を無視するのは良くないですね」「俺がファランクスで……」「こやつらどうやら既に【凶】の手に堕ちておるな」 華月はドーム状に赤黒い魔力を展開してサイバネ達、車バイクを跳ねのける。「ナンジャオラー!」「ブチコロガスゾー!」 既にゾンビ化しているサイバネ達。華月が前に出て指を水平に振る。赤黒い光波が放たれサイバネゾンビ達は首、頭を切断されて転がった。「できるだけ消耗を抑えて行かないとな」「ケン少年、君はヒーラーの滑田君を守護しなさい、パーティー全体を見て気付いたことがあればすぐに言って欲しい」 ジークベルトが言った。「目に焼き付けなさい華月様を、そしてパーティーを勝利に導く為に動きなさい」「ジークベルトさん……」「君は最前線で体を張るよりも一歩離れて全体見て動く方が合っているはずです。違いますか?」「え、ええそうです!」「君は大きく成長できる。華月様と私たちのおかげでね」 ジークベルトが優しい表情でケンを見る。最前列を歩く華月が振り返りケンを見る。「どうした、行くぞケン」「はい!!」 小走りで追いかけるケン。 ジークベルトは昨夜の事を思い出していた。華月派の従者で話し合った事を。***――前日の夜。 華月の従者達の会合は専用回線でモニター越しに顔合わせで行った。「シーア財団並びに勇者は華月派に取り込むべきである! と私は進言しましょう」 ジークベルトは拳を握りしめて言った。「シーア財団ね……コネが出来るのはいい事だけど色々面倒な組織みたいよ?」 勝田が言った。「ふむ……ジークベルト殿、理由を聞かせてください」 沖田が言った。「華月派の将来を見据えての事です。3年後白峰家当主決定選挙が行われますのは皆さんも承知。我らが華月様の娘であり私の娘でもある冬華を推すのは変わりません」 ジークベルトを含めた8人全員が頷く。「その先の事です! 冬華が正式な白峰家当主となった暁には婿を迎えなくてはならない。次の問題は婿選びなのです!!」「確かに」「ふむ」「考えねばならぬ事だ」「うーむ」「そうだね」「……」「ん~」「冬華様が気になっている男は居ないのかね? 谷川先生、冬華様と一番長く活動されているでしょう何か聞いていませんか?」と沖田。「そういった浮いた話は一切聞きませんな、私の娘の茉白からも何も……」と谷川。「お家の為に周りが決めた相手と結婚か……冬華さまはどう思うかな?」と河上。「財団側が納得するか分からない以上どうにもな」と斎藤。「ジークベルトさんが言ってるのは闘技場で見た勇者の少年か、いけるかな?」と佐久間。「シーア財団と繋がりが出来れば現協力者であるセンジョーも良い顔をするだろうねぇ。ビッグなビジネスパートナーに成り得るだろうからねぇ」と木戸。「自分的にはありよりのあり、だね~かづたん様と冬華ちゃん次第ではあるケド」と勝田。「万が一、いや億が一冬華が当主に選ばれなかったとしても! シーア財団との繋がりは持っておいた方がいい。没落しようとも華月派が滅びず存続する為にはビジネス関係だけのセンジョーには頼れません。黒谷の里入りなど絶対に駄目です」ジークベルトが叫ぶ。 白峰家の本家から外れた者達は分家となり黒谷の里で俗世間から離れ静かに暮らすことを強要される。そして血の接種を断ちやがて白峰家の力を失った時ようやく家族を持つことが許される。その後生まれた子は特殊な例を除いて白峰家の力を発現出来ない。「現在、華月派が分家に入らず存続できているのは多大な功績が認められた故の異例中の異例であることは皆さんも周知の事実。であれば、冬華も華月様には及ばずながらも無視できない功績を上げることが必要、その一つがシーア財団との家の繋がりです!」興奮するジークベルト。「華月派は現当主雪名様が一代限りに存在を認められてる現状、3年後の当主選に負けた時の事もやはり考えておかなければなりません。悠長に考えてる時間はあまりない」と勝田。「現当主である雪名様の落ち度があり一度は白峰家消滅の危機が訪れた。華月派は華月様の多大な功績をふまえたうえで今の本家と異例の別派閥の状態。現当主側との決着は当主選で決まり次の当主に先の事は任せると言った約定でしたな」と沖田。「本家……雪名様側の動きは誰か把握してますか?」と佐久間。「一応ね。向こうの人間の木城家とも懇意にさせてもらってるしそれなりに」と河上。「で、どうなのだ?」と斎藤。「これまでになく熱心に雪名様は娘さん三人と関わっているらしいね。エクレシアの任務はそこそこに自然体でいるとか」と河上。「むぅ~余裕の表れなのかそれとも当主が誰になるか興味が薄いとか」と谷川。「あり得ん話ではない、そのような態度が我が主華月様との確執を生んだのだ」と斎藤。「皆熱くなってきてるよ冷静に冷静に」と木戸。「ジークベルト殿はどのようにシーア財団との関係を進めるつもりで?」と勝田。「北風と太陽作戦です。華月様は太陽! 傍にいればあの少年勇者は魅了され華月派への関心が高まるはずです、そこに華月様の面影がある冬華と出会えば……」とジークベルト。「はぁ~なるほど、『ヒロインの母に恋した少年が娘と結婚し近づく』的な?」と勝田。「勝田さんその表現は……ですが分かりやすいですね華月様にはとても聞かせられませんが」と河上。「冬華様のお気持ちを無視するわけにもいけませんが財団の勇者側から我々華月派に興味を持たせるいう流れはありですな」と谷川。「ありとしましょうか」「そうですね」「ええ」「うーむ」「確かに」続く
Jun 24, 2024
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DHHUその17『あの女……滅茶苦茶やりやがって。だが盛り上げ上手だな』 砂埃が収まるとクレーターの中心には元のレオタードスカート姿の華月、それと肉片となった大男の姿が見えた。『キマッタアアアアアアアッ!! チーム月光ジャイアントキリング終了!! そして本日のイベントはこれにて全ての闘技終了となります!! 集計結果はしばしお待ちを!!』*** チーム月光控室。「我は満足したぞ、久しぶりに本来の姿で戦闘できた」「しかと目に焼きつけました。闘技場へのダメージも最小限にそして観客に配慮した近接のみでの戦闘。あの大男の強さを考えるとあれが最適解でしたね」 ジークベルトが言った。「あの禍々しい大鎌の男、量産型グレイビーストに匹敵する強敵に見えましたね」 斎藤が言った。「結局あの大男何だったんでしょうかね?」「あれは……魔力で魂の形を再現したもの……」 ジークベルトが顎に手を当てる。「……勇者ケンの召喚術に似てましたね。真邪王も同じような力を持つのではないでしょうか?」「仙丈隼磨が何か知ってそうな感じでしたな碓井貞光とか言ったような?」 斎藤が言った。「なるほど、酒呑童子に因縁のある者を召喚したのでしょうね」「碓井貞光となれば英霊か」「あるいはそれを模したもの」 そこで控室の電話が鳴った。「どなたですかな?」ジークベルトが出る。「星熊だ。今回はテメェらに完全に見せ場を譲っちまったな。完敗だ、それだけだ」「わざわざどうも、星熊さんに影響された結果ですよこちらこそ良いものを見せて頂きました」「ハッ!じゃあなまたいつか来いよチーム月光!」 電話が切れる。「気持ちのいい方ですね星熊童子さんは。流石チャンピオンで人気ナンバーワンです」 受話器を置くジークベルト。*** ――勇者Ks控室。 ケンは頭を抱えたまま机に突っ伏していた。「俺のせいで三人を死なせた……どうすればいいんだ……」 財団に連絡する決心がつかずにいた。 控室の壁に黒い渦が発生しそこからチーム月光の全員が入ってきた。「勇者ケンよ」 華月が言った。「財団へ連絡したのか? まだであろう? 我が説明してやるセイに繋げろ」「そんな! 何言ってんだ!!」「泣きっ面でその様子ではまともな報告は出来んだろう。お前と仲間がこの闘技場に参加することになったのは我の言葉も影響しておる」「そ、そうだ! 華月お前と鬼が闘技場の話なんて持ってこなければ!!」「仲間は死なずにすんだか? クレメンタインは強力な妖だったことは理解しておる、しかし異空間結界に挑んだとしても同じ危険はあったはずだ」「それは……」「それにだ、我も仙丈もこのままあの真邪王を放置という訳には行かなくなった。だから全面的に協力してやる」「え……」「前衛、後衛、回復役が必要なのだろう?であれば、我とジークベルト、もう一人は仙丈が用意する。それでお前の新たな党を組めばよい。お前が党首でよいぞ勇者ケン」「ま、ま、待て……そんないきなり決められても……!」「ならば、財団と繋ぎセイと話をさせろ。いいな?」***―――翌日。財団のギルド。 心労と体のダメージからケンは療養ポッドに入ったまま目を覚まさない。 会議室にはセイ、財団の男女。勇者ユウ、才賀、ハオラン、ドウェイン。 向かい側に華月、ジークベルト、袈裟を着た異常なまでに色白の僧。「真邪王は既に意志を持ちジンガの手に余り始めている可能性があるか……」 セイが言った。「ジンガはダンジョンを複数作り多くのエネルギーを集めています。それが真邪王の覚醒を早めたのでは?」 財団の男が言った。「財団としてはダンジョンを全て潰しジンガを捕らえ邪眼を封印しなくてはならない。想定よりも事態は早く進行している。早急な対策をしなくては」 財団の女が言った。「ダンジョン攻略にあまり時間はかけられない……そこで追加の戦力なのだが」 セイは華月たちを見つめる。「退魔組織エクレシアは静観の構え。だがセンジョーは徹底抗戦に望むとの事。そこでここに居る彼女らが財団の作戦に参加することになった」「ミイラとりがミイラになる可能性は?」 財団の男が言った。「あり得ませんね、このジークベルト、あの邪眼の力に対処できます」「ほう?大きく出ましたね」「実際に目の当たりにしましたからね。私たちならば勇者ケンを守り真邪王の野望を打ち砕けますよ」「戦力としてはとても頼もしい限りです。しかし財団と連携を取らなくては【凶】の真邪王の野望を阻止することはできません。それを理解していただきたい、あなた方はこちらの雇う戦力であって作戦指揮には従って頂きたい」「いいでしょう、出過ぎた真似はしないように?ですね」「ご理解いただけたのなら幸いです」 財団の女がセイに何か耳打ちをした。「……まさか!? だが東京は……」「どうかしたのか?」 華月が言った。「東京の新宿区で【凶】のダンジョンが確認されたと財団の調査員から連絡を受けました。残党狩りや事後処理にあたってた所発見したとの事」「ほう」「【凶】にはジンガしかもうダンジョンを作れる者はいないはず……今朝見つかったという事は……」「ジンガは東京に移動した?」「まさか……いや、あり得る。昨夜の抗争で真邪王はある程度力を得た、より力を集めるために人口の多い東京に密かに移動したと」「財団は昨夜忙しかったようだからな。だが攪乱かもしれんぞ? 真邪王は邪眼で人、妖を操れるのであれば力を渡して東京でダンジョン作成の活動させた可能性もある」「確かにそれも考えられる……どちらにしろダンジョンは全て潰さなくてはならない。それにしてもダンジョンの増え方が異常過ぎる。いくらジンガの呪力が桁外れと言っても数日でこんなに多くの設置が出来るはずがない」「協力者がいるな」「東京にジンガの協力者か……財団の者だけではダンジョンの発見ができても攻略まではましてや協力者がいるとなると戦力も足りない。ジンガは何を考えているこのようなやり方では【凶】側もついていけないだろうに」「短期決戦を狙っている……か? 異空間結界を乱立し勇者と財団を疲弊させ一気に真邪王復活まで進めるつもりなのか」「邪眼だけの完全復活までならそれもありでしょう。しかし財団に封印された残りの邪体を確保するにはこんなやり方では破綻するのが目に見えている。【凶】は本来闇に紛れじっくりと邪体を覚醒させていく組織だった。気が付けばその時にはもう――と」「邪眼さえ完全復活すればどうにでもなる……真邪王がジンガにそう吹き込んだか」「ジンガも馬鹿ではないのでそんな簡単に言いなりには――だが本人も気がつかないうちに邪眼の支配に飲み込まれているのなら無計画にダンジョン作成を行うかも」「それならどうする? 異空間結界攻略は人数を揃えればまかなえるが邪眼の封印は勇者の力が必要なのだろ? どこに奴が潜んでいるか分からぬなら難しいぞ」「ふむ……」 セイは腕を組んで目を閉じる。財団の男と女が小声で意見を出しあっている。「東京と京都にユウとケンを分けて配置するしかないな。出来るだけ戦力をかき集めダンジョンを攻略し、ジンガを見つけ次第移動手段に優れる財団のメンバーに集合させる。瞬間移動の異能持ちや魔法使いの類……これらは貴重な人材だ」「それなら……京都でジンガを見つけた場合勇者の移動は私にお任せください」 ジークベルトが言った。「私の魔法なら京都市内の範囲程度ゲートでカバーできます」「おお、そうか。ならばジークベルト貴方にお任せしよう。必要なら補助の魔術師も着けよう。東京は……財団の最高峰の魔術師を派遣しよう。念のためにTMI(異能者特務機関)にも要請しておくか」 セイの指示で動く財団の男女。「ユウのパーティーは東京に向かってくれるか? あちらのギルドは人員も多くサポートもその分充実している。私は京都に残るが大丈夫だろう?」「うん、東京に行って来る」 ユウはケンの寝ている部屋をチラと見る。「ケンなら大丈夫だ。父さんと、ここにいるみんながいるからな」「うん……」 ユウは華月の顔を見る。「何だ少年?」「あの……ケンの事、よろしくお願いします! アイツは頭が良くて俺よりも器用で……だけどツイてなくて……」「解っておる、我はこの目であの少年を見た。見捨てなどしない任せておけ」「はい!」*** ――東京に移動する途中の新幹線車内。 才賀桜桃色は携帯電話に超高速タイピングをしていた。「サイガ、メッセージしてんの?」「うん、久しぶりに娘と会えそうだからメッセをね~いや~東京なんて何年ぶりかな」「ドウェインは?」「東京での仕事が多いのでなメインといってもいいくらいだ」「そうなんだ、ハオランは?」「しょっちゅう行ってるが姉貴の使いとかなんで同じ場所ばっかり行き来してるだけだな。全然詳しくねえぞ」「東京に財団が臨時に雇った凄い人たちがギルドに居るって聞いたけど楽しみだなぁ」 ユウは端末を操作して資料を見ながら言った。 ユウ達は緊張する様子もなくメンバー同士で雑談をしながら東京へ到着。 出迎えに着たのは黒いワゴン車だった。「ユウ・シーアさんと御一行様ですね?」 ワゴン車の窓が開き美形の青年が声をかけてきた。「あ、はい」 ワゴン車の窓が閉まったと思った次の瞬間、青年が目の前にいた。「TMIの哿 希世美(かなりきよみ)です。車へどうぞ」 ユウの持つ端末にカードを近づける哿。ID照合が完了する。「え! あ、あの……哿さん、今のって瞬間移動?」「はいそうです」 そう言った次の瞬間ユウはワゴン車の助手席に乗っていた。そして次々にハオラン、才賀、ドウェインが瞬間移動でワゴン車に移動する。運転席には哿。「は?」「え?」「む?」「これがTMIエージェントの力……」「本来ならこのような異能を見せびらかす事はしないのですが説明するよりも早いと思いまして。残りのエージェント二人と合流した後すぐに作戦開始しましょう」 ワゴン車は新宿のホテルの地下駐車場に停車。エレベーターで最上階に向かう。「さぁ着きました。ここが財団の用意したギルド(仮)です」 最上階のフロアーは1室のスウィートルーム。そこに二人の女性の姿が見えた。 一人は金髪の髪を三つ編みに二つくくり。机の上には大きな丼が100程度置かれていた。 もう一人は黒髪のショートカット。机の上に重火器が並び手入れをしている。「う……」 全身から汗が噴き出すハオラン。金髪の女性に見られたことによって体が硬直している。「やべぇぞユウ……なんだアレ……」「??」 ユウには何も感じない。ハオランの様子を見て訳が分からないと言った表情。「失礼しました」 立ち上がる金髪の女性。すると重火器を触っていた黒髪の女性も立ち上がる。 ゆっくりと歩を進める金髪と黒髪の女性。「TMIエージェントの終夜アリナです」「フローレンス・フランシスです」「ユウ・シーアです」「あーしは才賀桜桃色(サイガピンクピーチ)」「ドウェインです」 アリナが自己紹介をした後一歩前に出るとハオランはバックステップで飛びのいた。「ハオラン?」「すまねえユウ、これは本能的な反射ってやつさ」 それを聞いてアリナはほんの少し頷く。「ハイエナ獣人で武術家の貴方の反応は正しい。その性から貴方は出会った時にわたし達の隙を伺った。なのでわたしは対抗した、他意はありません。ダンジョン攻略共に頑張りましょう」「マジ圧が半端ねぇよ……え、これってアンタの異能とかじゃねえよな?」「わたしは普段異能を発動していません。素の状態ですよ」「味方で凄く頼もしいぜ……正直敵だったら絶望しかねえわ」 その様子を嬉しそうに眺めるフローレンス。ユウは不思議そうにそれを見ている。 ユウ達はテーブルに着いて財団の司令部に繋がるモニターを広げダンジョン攻略の流れを説明する。「……我々には財団の用意した人物がつくのですね?」 フローレンスが画面の向こうにいるセイに言った。『ああ、財団のメンバーとのやり取りやダンジョン発見の手助けになる。君たちの邪魔はしないサポート役に徹してもらう』『はいはーい!それウチの事でーす!!』 モニターの左上に出たワイプからピンク髪に日焼けした若い女性が映し出される。『才賀愛来薔薇(さいがめぐるーじゅ)! ヨロシクおねがいしまーす後30分くらいでそっちに着きます』続く
Jun 15, 2024
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DHHUその16 ――チーム月光。ジャイアントキリング開始。 初手キメラに対し佐久間瓢介が一人で前に出る。 飛び掛かり火を吐き、毒をまき散らすキメラ相手に佐久間は常に死角に入り込み浸透する打撃とカランビットナイフの斬撃を入れていく。『なんと! キメラの攻撃を全て見切っているぞー!!』 佐久間は鳥獣変化の能力を持つ。故にキメラの動きを読める。自身もキメラ化する事が出来、鳥獣の考えは念波で読み取る事ができる。 何もさせてもらえない状態のキメラは徐々に攻撃回数を減らしやがて大人しくなり佐久間から距離を取りはじめた。『これは……どうなってるんでしょうか?』『キメラが目の前の佐久間選手を恐れているんでしょうね。野生動物が自分より上の存在と相対した時の様子に似ています。』 蜃の問いに紅が答えた。『ライオン、鷲、蛇の狂暴性を持つキメラを!?』『佐久間選手の動きはキメラに「自分の方が上位の存在」だと分からせているように見えました。これは狩りではなく調教だといった感じですね』『なんとなんとー! キメラはすっかり大人しくなってしまいましたー!! 仙丈氏この場合どうなりますか?』『これはもう決まったな。キメラは撤去しよう、こんなやり方でキメラを攻略したのはアイツが始めてた』『おおっと! 前代未聞の方法でキメラを突破です!!』 佐久間は観客席に一礼してチーム月光の居る闘技場の端へと移動する。「見事だったぞ佐久間。グレイビースト戦の時よりも大きく成長したな」 佐久間の前に立って顔を見る華月。「は! ありがたき幸せです華月様!!」「次は俺ですね……」 華月の姿を見て小さく頷いた斎藤は竹刀型特殊警棒を持って前に出ていく。 次に出てきたゴーレムは―― 土色で成人男性の形をしていた。手に持っているのは日本刀によく似た合金ブレード。構えは正眼だがやや斜めに少し半身であった。「む……」 正眼に構える斎藤勇雷。 いつもの斎藤であれば気合の叫び声と共に閃光めいた突進で仕掛けるがそうはしなかった。相手のゴーレムの構えに対し飛び込むことがどのような結果を生むか予想できた。 斎藤が八相の構えに変えゆっくりと間合いを詰め始める。ゴーレムは構えを下段に変え足を擦るようにして少し腰をかがめて円の動きで斎藤の動きに合わせ側面に側面に移動する。「なるほど……ただのゴーレムではないか」『なにやらただならぬ雰囲気のゴーレムですが仙丈氏これは?』『妖刀の破片を手に入れたんでな。修復して取り付いている怨霊に体を与えてやった。それがあのゴーレムだ』『あのゴーレムの核は妖刀という事になります』紅が言った。 斎藤とゴーレムは円の動きで徐々に距離を詰めていく。「むぅ……これほどの剣の相手久しい、恐らく柳生の使い手……」斎藤がつぶやく。 斎藤はカウンターを警戒する。強力なカウンターを得意とする柳生新陰流を相手にどうするかこれまで幾度も脳内と戦闘シミュレーターで行っていたのを思い出す。「(カウンターにカウンターを仕掛ける、もしくはカウンター外し)」 そのいずれも失敗すれば致命傷を負うもの。「(奇策を使い勝利しても華月様を喜ばせることはできまい。ここは俺の全てを持って正面からあのゴーレムを打倒しなくてはならん)」 「集中!」斎藤の全身から青白い気が立ち上り放電し始める。「(俺は最も自信のある突進真っ向斬りを仕掛ける。全力で……それにカウンターを合わせてくるのならばそのカウンターよりも速く返しの剣を入れてやろう!)」 それを見たゴーレムの動きが止まった。「イイイイイイイイイイイイヤアアアアアアアアアアアッ!!」 雷鳴と共に稲妻めいた斎藤の突進真っ向斬り。ゴーレムは反応し合金ブレードの鎬で受け流す――はずだった。 斎藤の一撃で合金ブレードは粉々に砕け散り受け流す間もなく核の妖刀が割れる。斎藤は崩れつつあるゴーレムに対し下からの斬り上げを入れる。斬撃と同時に稲妻が走りゴーレムの体は爆発四散した。『決まったー!! 稲妻一閃!! 凄まじい剣の前に妖刀ゴーレム敗れ去りましたー!!』 斎藤は完全に敵の気配が消えるまで構えを解かずに残心。ゆっくりと下がって戻っていく。「驚いたぞ斎藤。あれほどまでに剣の腕を上げていたとはな」「恐縮です華月様」 華月の労いの言葉に胸が熱くなった斎藤。 今はもう叶わぬ願いではあるがグレイビーストに己の剣を試したい思いが再燃していた。「華月様、ひとつ良いでしょうか?」「なんだ、言ってみろ」「俺の剣はグレイビーストに届くでしょうか?」「……ああ、あの時のお前とは違う」「ありがとうございます」 華月は戦闘に関して嘘や世辞を言わない。それを理解している斎藤は『勝てるか』とは聞かなかった。グレイビーストは剣だけで勝てる相手ではないのを知っている。斎藤は真っ向から剣でグレイビーストに負けた事がどうしても許せなかった、せめて剣だけは勝りたい今の己はどの程度なのか知る為に言葉を選んで華月に質問した。「(そうか、俺は剣でグレイビーストに並んだか)」 少し満足げな笑みを浮かべて下がる斎藤。「これは些か焦りますね。このジークベルト、華月様を喜ばせることができるのかどうか」「とぼけおって、お前はいつでもそう言って何か策を仕組んでおる」 チーム月光の次の相手として現れたのは豪華なローブを着た骸骨の魔術師であった。「ふーむ……あれはスケルトンメイジ・オーバーロードといった所ですねリッチなどと呼ばれることもありますか」 スケルトンメイジ・オーバーロードの周囲に魔法陣が展開されるがすぐに消える。「クフフフフフフフ……」 ジークベルトはスケルトンメイジ・オーバーロードが魔法を発動するのを察してから解析してキャンセルをかける。『これは何が起きているのでしょう?』『ジークベルト選手がアンチマジックを仕掛けているのように見えますね』と紅。『……アレはそんなんじゃねえ。アンチマジックてのは相手を沈黙させて発動させない魔法封じの魔術だ、あのスケルトンメイジ・オーバーロードに詠唱は必要ない只発動するだけ。だからこそ脅威。名のある魔術師だろうが正面からやり合えば只ではすまない。魔女やウィザードクラスの数人でようやく相手にできる存在だ』仙丈隼磨は腕を組んで言った。『ではどうやって防いでいるのです?』蜃は仙丈隼磨の顔を見る。『アンチマジックの利かないスケルトンメイジ・オーバーロードの魔法を防ぐにはバリアー系を使うかジークベルトのやっている分解を行うかだ。相手に同調して発動を邪魔するなんてのは何の魔法のどの魔術か完全に理解できなければ成功しない』『同調は外せばワンテンポ遅れてそれが命取りになりますね、通常は詠唱の長い大魔法の系統に分類される魔術を妨害するためにアンチマジックを仕掛ける者と別に他の者が数人でやるものです』紅が言った。 スケルトンメイジ・オーバーロードは右掌を掲げる。一瞬掌に紫色の炎が見えるもすぐに消えた。「怖いですねぇ~即死魔法の心臓潰し魔術など……だがそれは知ってますからキャンセルさせてもらいますと」 ジークベルトは左手に黒い渦、右手に光の球体を出現させる。「では消滅してください」 光の球体と黒い渦が射出される。スケルトンメイジ・オーバーロードの前で合わさると強烈な光を放ち次の瞬間には跡形もなく消えていた。『何が起きたー!! スケルトンメイジ・オーバーロード消滅しましたー!!』「なに、対アンデッド魔法とゲート魔法を合わせて放っただけですよ。砕いた瞬間再生発動させる間を与えずゲートに放り込み入念に分子レベルで砕いて終了です」 ジークベルトは蜃や紅、仙丈隼磨に聞こえるように言った。『とにかく早業であっという間に弱点をついて倒したとの事ですー!!』「フッ」 ジークベルトは前髪をかきあげて小さく鼻で笑った。「如何だったでしょうか華月様?」「……同調分解など無茶をする。涼しい顔をしているが一歩間違えばどうなっていたことか。最後のアレも消耗が激しいだろう」「これはこれは、ドキドキさせてしまいましたか」「お前は意地悪い所がある、我をからかって喜ぶ癖がある」「そんな事ありませんよ? 華月様に意地悪など。ただ少し私の性格が悪いだけですね」「まあ良い、お前が正直者であるから我は正気でいられるのだ。そうでなければとっくに愛想をつかしておるわ」「ええ、ええ。私は常に華月様を想い正直でありますとも」 それを聞いて苦い顔を華月。ジークベルトは華月の所謂ジト目表情が見たいがためにこのような行動と言動をしたのであった。「(ジークベルトさん……華月様の厄介オタク過ぎる……)」「(華月様のあの表情……眼福であるがやはり俺は笑顔が一番……)」 佐久間と斎藤は心で呟いた。『チーム月光圧倒的です! ここのメンバーは個人の能力が突出してますね~そしてジャイアントキリング最後の相手は……』 10秒以上たっても最後のモンスターが現れない。『仙丈氏? これはどういう?』『……緊急事態ってやつだな。誰かが俺の領域酒樽に侵入を試みている。これは下手に妨害するよりも中で仕留めた方が良さそうだ』『なんとなんと! 前代未聞の乱入者と!? しかしここは世界中から集められた強者が集い更には仙丈氏の集めた妖らが存在する領域酒樽! 心配はありません!!』 闘技場の天井に扉が出現する。「鬼、ミツケタ、クビ、トル!」 2mを超える大男が出現。大鎌を背負っている。「(奴はまさか……)」仙丈隼磨が眉をひそめる。 大男の左目には紫色に輝く義眼。土ぼこりを上げ闘技場に着地した。「なのですなのです! 乱入なのです!!」 大男の義眼から紫色の幻影が飛び出す。濁った眼をした漆黒のワンピースの少女。『誰だテメェ』 仙丈隼磨は静かに圧をかけながら言った。「おお怖い、私は【真邪王】なのですよ! ジンガ君がとろい事やってるからこうやって来たのです。ここは異空間結界(ダンジョン)に変えるのです!」「随分舐めた真似してくれるじゃねえか。鬼は舐められるのが嫌いでな」「まぁまぁ、そう殺気立たずに! 今回は挨拶に来たのですよ。【真邪王】のダンジョンへご招待!ってね!! この男はプレゼントなのです、ダンジョンではこのくらいのボスモンスター用意してますよってね!!」「で?」「ジンガ君の魂を絞って鬼退治向けにこの男を作ったんだけど、どうやらこの辺りの出来栄えが限界なのです。だからもっともっと強力なボスモンスターが欲しくてここに来たのです!」「要領を得ねえな、テメェはここに何しに来た?」「アヒャハハハハハハハ! ここにいる強い子の強奪です!! そして取り返したければダンジョンに来てねってー!!」「させるとでも?」「アヒャハハハー! 強奪出来なくてもダンジョンは強化できるのです。邪眼の力を使えばねー! ここに侵入出来た時点で目的の50%は達成できてるのです!!」「何だと?」 らんらんと輝く真邪王の邪眼。 チーム月光。真邪王が大男を連れて来た瞬間、ジークベルトは暗闇の結界を展開。メンバーを包み込んでいた。「あれは良くない者ですねぇ……」ジークベルトは外套を華月にかぶせる。「む?」「ジークベルトさん!」「ジークベルト殿!」「あの光る目を見てはいけません。あれは邪眼です、神話の時代に匹敵するほどの強力な」「なるほど鳥肌が立った訳だ」華月が言った。「あれは魂に干渉する類のものでしょう。華月様は特に見てはいけません、あのような者に華月様の魂を触れさせるわけには行きませんから!」 いつも冷静で薄い笑みを浮かべているジークベルトの表情が変わっている。「闘技場の連中はどうなる?」「ここは酒呑童子仙丈隼磨の領域、いくらあの邪眼が強力でも十全の力は発揮できないと思います。しかし影響は受けるでしょう。最悪場合ここに集まっている者はあの邪眼の意に従う事に」 ――ジークベルトの結界の外。 対峙する仙丈隼磨と真邪王&大男。 仙丈隼磨は真邪王に手をかざしている。「おおおおお……解ける溶ける融ける……流石にここは酒呑童子の領域なのです。長居しては私も酒にされてしまうのです!」「俺様の魂に触れようなんざ喧嘩しかけてくるからだぜ。あと10数える間にお前は融ける。その【碓井貞光】もどき諸共な!」「そろそろ退散するのです! この大男はプレゼントなのです! ダンジョン攻略待っているのですー!!」 真邪王は紫色の義眼に戻り大男の顔を抉り天井の扉から出ていく。『……全身が途轍もなく重いです。しかし流石仙丈氏、乱入者を撃退です』 蜃は頭を振ってマイクをとって言った。『今回のイベントはここで終いか……だが後処理しなくてはな。あの大男を倒した時点で闘技のポイントを集計する』 ジークベルトの結界から出てくるポニーテール、レオタードスカート姿の華月。そこにジークベルトが外套をかぶせて引くとゴシックドレスを着て銀髪、深紅の目に輝く、華月の姿。黒谷月ではなく本来の白峰華月の姿に変わった。『おや? 黒谷月選手……いつもより体がおおきく成人しているように見えますが?』「解説者よ! これが本来の我の姿!! 訳あって3分しかこの姿に成れんがとくと見えておけ!!」「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオー!!」 真邪王の邪眼の光で弱っていた観客が声を上げる。『黒谷月選手! これはファンサが凄いぞー!! 個人的には大きくなる前が好きでしたが今の姿は神々しく美しい!! これは私もファンになってしまいそうです!!』「鬼!オニ!! オニーーーーーーーーーーーー!!」 大鎌を持って華月に突進する大男。華月は赤黒いオーラを込めた拳で真っ向から殴りつけて吹き飛ばす。「中々硬いではないか」 赤黒いオーラの鎖を伸ばして大男を引き寄せる華月。大鎌を持った腕を赤黒いオーラを込めたハイキックでへし折る。「オニイイイイイイイイイイイッ!!」「ただの凶戦士が我にかなうものか!」 掴みかかる大男の攻撃を避け、背後に回り逆巴投げの体勢で天井に向かって蹴り上げる。「オオオオオオオオニイイイイイイイイイイイイッ!!」「並みの妖なら今ので爆散しておるのにな、だがまだまだ――」 赤黒いオーラを背と足の裏から放射して飛び上がる華月。天井に激突した大男の首を掴み彗星めいて急降下。「仙丈隼磨、領域酒樽の破損は大目に見てくれ」 華月は大男の全身に魔力を流し込んで内部から爆発させる。全身の神経血管筋肉骨を破壊しながら闘技場の地面に叩きつける。石畳はめくれ上がり衝突部分からクレーターを造った。闘技場全体が震え華月の赤黒い魔力の残滓が観客席の結界に触れバチバチとスパークする。続く
Jun 8, 2024
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DHHUその15 螺旋の波動がクレメンタインに直撃――しなかった。 クレメンタインの体は無数のコウモリに変わり四散、ケンの必殺の一撃を回避した。「妾を怒らせたな!」 コウモリが集まり元の体に戻る。クレメンタインの整った顔は怒りで歪んでいた。「……」 クレメンタインが両手を広げると血で形成された大剣、槍、盾、ボウガンが現れ浮遊、彼女の周りをゆっくりと回る。「ぬううん!」「がっ」 予備動作無しのスライド接近、血の大剣を受け止めたラーニーの顔が苦痛にゆがむ。「なんて力だ……さっきの比じゃない!」「邪魔だ!」 大剣を右手で振り下ろし左手で槍の刺突を仕掛ける。ラーニーは大剣を盾で受け止めたが続いて放たれた槍の一撃の防御は間に合わず大腿に穂先が突き刺さり転倒。「そこのお前も邪魔!」 ノールックで浮かせたボウガンを後方に居るネスターに向け発射、不意をつかれたネスターはバリアが間に合わず杖を持った右手を貫かれた。「グワァッ!」「次はお前だ!」 クレメンタインは片手で大剣を投げつける。アンディは咄嗟にメイスで受け止めたが衝撃で吹き飛んだ。メイスは曲がり衝撃でアンディの頭部から出血。「まずい!【ファランクス】【不死鳥の剣士】召喚!!」 ケンがカードを投げる。大楯を持った兵士ファランクスが無数に出現。その後ろに豪華な不死鳥モチーフ鎧の剣士。「行け!ファランクス!」 盾と槍を構えて突進するファランクス。クレメンタインは糸で吊られたようにスッと上昇して躱し血の槍を投擲の構え。狙っているのは足を負傷しているラーニー。「不死鳥の剣士突撃!」 翼を生やした不死鳥の剣士がクレメンタインに斬りかかる。血の盾で防御するもそのまま押し込まれ闘技場の上部、観客席の結界壁に激突する。「ぎゃあああああああああああっ!」 超高圧電流めいた強力な結界の刺激を受けたクレメンタインが悲鳴を上げる。「やっぱり観客席の結界はとんでもない、利用させてもらった」「ぐぎぎぎぎぎ……この妾がこんな程度でー!」 落下したクレメンタインをファランクスと不死鳥の剣士が囲む。その後ろにはマシンカウボーイにのったケンがゼクスミニアドを構えている。「これで追い詰めたと思うなよ!」 クレメンタインは血の鎧を形成して装着する。肌の露出が多いビキニアーマーであったがケンはその鎧に嫌な予感がする。「何かヤバい……【魔眼】発動!」 ケンは魔眼を発動し数秒先のクレメンタインの姿を浮かび上がらせる。 全身に血を浴び完全回復していた。「血の搾取(ブラッドスティール)!」「そうはさせるか!」 クレメンタインが叫ぶと血の鎧が輝き、ラーニー、ネスター、アンディの傷から大量の血が噴出。血液はクレメンタインに向かって飛んでいく。ケンは不死鳥の剣士を突撃させたが躱された。「ああっ! そんな!! くそっ【癒し手木人】」 三人の仲間の大量出血を見て咄嗟に回復能力のある癒し手木人を召喚する。癒し手木人の回復効果のある光がドーム状に広がり三人を包み込む。「その術を止めろー!」 マシンカウボーイに乗ったケンがゼクスミニアドを構えて突進。ファランクス、不死鳥の剣士も合わせて突撃。「突撃するだけで芸が無いな!」 無数のコウモリに変化するクレメンタイン。ファランクス、不死鳥の剣士とすれ違いケンの乗っているマシンカウボーイに群がって噛みつく。「このっ!このっ!」 コウモリを払い退けようとゼクスミニアドを振り回すケン。あざ笑うかのように回避するコウモリ。その間にも三人の仲間からは容赦なく血が噴出されている。「血が止まらねぇ!」「体が……うごかない!」「これはしくったな」「フハハハハハ! 妾と血で繋がった時点で奴らはもう体の自由は利かないのだ! 妾が血の武装で傷つけたものは血の搾取(ブラッドスティール)からは逃れられない!!」「クッ……これがヴァンパイアロード……」 ケンの背後に現れるクレメンタイン、血の槍を構えて突いてくる。「お前は殺さずに壊れる寸前まで快楽攻めにしておもちゃにしてやろうぞ」「負けるかー!」 ゼクスミニアドで血の槍を弾く。「軟弱軟弱っ!」 血の槍を横薙ぎに振るクレメンタイン。ゼクスミニアドで防いだケンはマシンカウボーイから落馬して地面を転がる。「がはぁ……」『ああっと! チーム勇者Ks大ピンチ!! ヴァンパイアロード恐るべしです!!』 血を奪われ体の自由が利かないラーニーは外殻脳に無理やり人工筋肉動かさせて立ち上がる。最後の切り札【狂戦士モード】を利用した。「うぅーうぅー!」「おや? まだ立ち上がるのか。だがその様子では長く持つまい」 血のボウガンを構えるクレメンタイン。ラーニーはミスリルの盾を突き出して突進。「やぶれかぶれの突進など見苦しい」「うおおおおおおおおおっ!」 只のやぶれかぶれではない。ラーニーは盾の後ろで拳にパルスエネルギーを込めていた。 血のボウガンの矢を連射するクレメンタイン。ミスリルの盾で全身を覆えない為合金アーマーの肩、側腿を掠め肉体にまで傷をうけるラーニー。それでも止まらない。「くらえ!」 止まらなかったラーニーに一瞬驚いたクレメンタインは対応が遅れた。ミスリルの盾の影から光り輝く拳が放たれる。コウモリ分身は間に合わない。「【会心の一撃】!」 クレメンタインの胸に拳が炸裂した瞬間手ごたえを感じたラーニー。青白い閃光が衝突の瞬間周囲を照らす。「ぎゃああああああああああっ!」 弱点である心臓にダメージを受け苦悶の表情を浮かべながら転がるクレメンタイン。力尽きたラーニーはその場で倒れた。「おのれぇ……たかが人間の女がやってくれたなぁー!!」 腕を再生した時とは違い明らかにダメージが残っているクレメンタイン。まだ体勢を整えていないケン、アンディ、ネスター。「ここで押し切らなきゃ駄目だ……」 歯を食いしばり体を起こしてファランクスと不死鳥の剣士を操るケン。ファランクスの盾押し込みからの槍刺突、不死鳥の剣士の急降下斬撃をクレメンタインに食らわせる。「……」 更に追撃して失敗した場合の事が頭を過る。ケンはここで棄権も選択肢に入ると考える。「(次の撃槍ゼクスミニアドで仕留められなかったら棄権もありかな。賠償金を払えば処刑人とのバトルも無いはずだし……ここで躓いてる場合じゃないんだ俺は【凶】の野望を潰さなければならないんだ)」 突如ファランクスが吹き飛んだ。その中心には血で形成した惑星のリングを思わせる輪を浮かべ回転させるクレメンタイン。他の血の武具は消え防具も最小限度ほぼ裸の状態。「ここまで追い詰められたのは久しぶりじゃ!」 鋸刃の血のリングが高速回転。スライド移動でファランクスに肉迫し切り裂いていく。『ああーっと! なんという切れ味だぁ!! あの血のリングが登場したのはこれで2度目!! 前回はこれで出場者を全員死亡させましたー!!』「(あの土星の輪っかみたいな血のリングはヤバイ……あれがクレメンタインの本気で最強のフォーム……血の搾取もいつの間にか止んでる)」 ケンは【癒し手木人】をラーニーに向かわせ。ファランクスを戻し不死鳥の剣士をクレメンタインにぶつける。「邪魔だ使い魔ごときがあああああああああああああっ!」「(俺は勇者だ、皆を守り先頭に立って道を切り開くんだ、使命を果たすんだ!)」 不死鳥の剣士の剣が赤く燃え上がる。必殺の一撃、デッキのカードを1枚消費して放つことができる【フェニックスフレア】クレメンタインの血のリングと衝突する。 火花が散る。血のリングは益々速度を上げ不死鳥の剣士は剣を更に燃え上がらせる。やがて二人を包む炎の竜巻が出現。「【大地の壁】!」 ケンは分厚い石壁を連続で召喚。ラーニー、アンディ、ネスターを炎の竜巻から守る。「このままじゃこっちが不利だ……不死鳥の剣士のフェニックスフレアを解除するか……いやでもそうすればクレメンタインを止められない」 撃槍ゼクスミニアドはあと2発が限界。撃ち切ってしまうと24時間は使えない。後の事を考えると1回。それでクレメンタインを仕留められなければパーティーメンバーに期待するしかない。しかし血の搾取でメンバーは全員弱り切っている。「(撃槍ゼクスミニアドを外せばそこで棄権を申し出るしかない……か。小細工が通じる相手じゃない他の手段で倒せる気がしない)」 兄のユウのように着装できれば。不死鳥の剣士を着装できれば……ケンの頭に過る。 迷っているケンの目の前でクレメンタインは更に絶望を見せる、両腕に小型の血のリングを形成して回転させ始めた。「そんな! それはヤバイ!!」 自身の周囲の血のリングの回転は止めずに両腕の血の光輪を投げつけるクレメンタイン。不死鳥の剣士の上半身を縦に切り裂きもう一つはアンディに向けて投げられた。「グワァッ!」 回避が間に合わず左腕を切断されるアンディ。戻った血の光輪はクレメンタインの周囲をXの軌道を描いて衛星めいて周回、最初の大リングを合わせ3つのリングがクレメンタインを中心に回っている。「フハハハハハハ! 妾に勝てると思ったか!! 完全服従の下僕となるならば見逃してやろう、どうだ?この酒呑童子の領域酒樽の中からは出られぬが安心と快楽を与えてやろう」 切り裂かれた不死鳥の剣士はケンのカードデッキの一枚をランダムに復活。「撃槍ゼクスミニアドーッ!!」 必死の形相で必殺の一撃を放つケン。クレメンタインの血のリングを砕いた。「残念だったな!紙一重で妾には――」「フェニックスフレア!!」 仰け反っているクレメンタインの側面に不死鳥の剣士、フェニックスフレアを放つ。「馬鹿なぁああああ!」 業火の放射を浴びながらクレメンタインは手の光輪を投げつけ不死鳥の剣士を十字に切り裂いた。『ああああーっと! 勇者、まさか必殺の一撃を囮に使ったー!! これは何という咄嗟の判断!』「再生が遅い……あのデカブツ女に食らった一撃が効いている……」 クレメンタインの左半身は黒焦げ。ゆっくりと着地する。「勇者よ……よくぞここまでやった。もういいだろう? 決着だ」「……」 今度こそ棄権か? いやこの目の前のヴァンパイアロードはそれをしたとて自分を見逃すとは思えない、仙丈隼磨(酒呑童子)が召喚を解除する前に仕掛けるはずだとケンは考えた。 魔眼で未来を視て確認するケン。「な――」 巨大な岩で潰されているクレメンタイン。 「これは――ネスターの」 ネスターは少しずつ詠唱を進め隕石召喚魔法の準備をしていた。クレメンタインが油断した一瞬を狙って発動するつもりで機を伺っていた。「(いける、ネスターの隕石魔法で潰れた所に最後の撃槍ゼクスミニアドを叩き込めば)」 息を整えるケン、その様子を見てクレメンタインは舌打ちをする。「まだ諦めて……」 そこでネスターの隕石魔法が発動、頭上に魔法陣が出現し巨大な岩がクレメンタインを押しつぶした。「グゲェ」「ここだ!撃槍ゼクスミニアド!!」 岩もろともクレメンタインを粉砕する螺旋の波動。肉片となって飛び散る。「ガアアアアアアアッ! こんな……只で終わると思うなよおおおおおっ!」 クレメンタインは最後の力を振り絞り千切れた肉体を爆発的に飛ばしラーニー、アンディ、ネスターを貫いた。「アハハハハハ……お前のせいで……パーティーは全滅だぞ勇者……」 塵となって消えていくクレメンタイン。ケンは何が起きたのか理解できずメンバーを見る。ラーニーは腹、アンディは胸、ネスターは喉に拳大の穴を開けられ倒れていた。「……は?」『おーっと! ここで終了です!! チーム勇者Ks大きな犠牲を払いながらも2回戦を突破!! これは第三回戦は無理かー?』「嘘だろ?」 癒し手木人の回復ドームを発動させるケン。三人の傷は塞がっていくが反応は無い。「そんなバカな! あんなにあっさりと!!」『死亡確認だ勇者ケン』 仙丈隼磨が言った。領域酒樽(闘技場)の主である彼にはその中で何が起きているか全て把握できる。「うわあああああああああああああああああああっ」 ゼクスミニアドで粉砕した後更に不死鳥の剣士のフェニックスフレアで追撃しておけば……と一瞬ケンは考えた。過去を変えることは自分にはできない、兄のユウであれば魔眼でそれも可能であったかもしれない。と打ちひしがれ地面を何度も叩いた。***チーム月光控室「おやおや、勇者Ksは絶体絶命ですね。これでは本来の任務に戻れないのでは?」 ジークベルトは鏡に映る華月を見て言った。「この闘技場での戦闘続行は厳しいだろうが財団の任務は問題ないだろう。補充要因が居るはずだ。先代勇者のセイの時も何人も命を落としてその度に補充要因が来ておった」「なるほど……勇者さえ無事なら財団はいくらでも立て直せると」「さあな。勇者さえも代わりは居るのかもしれん」「第三試合、勇者Ksは無理ですね……」斎藤が言った。「SSSも棄権してますしそうなるとチーム鬼衆と我々の対決になりますな」佐久間が言った。「……このまま終わるとは思えない、何か仕掛けてくると我は思う」「その前にチーム月光の第二試合を終えなければなりません」 ジークベルトが言った。「精々盛り上げてやるとするか」 ――チーム月光 第二試合ジャイアントキリング。 華月は従者達に一人ずつ出るように指示。 キメラ、ゴーレム、高位アンデッド、不明に対し、チーム月光は佐久間、斎藤、ジークベルト、華月一人ずつタイマンで相手すると言い出した。『なんとチーム月光! ジャイアントキリングで無謀な提案!! 先ほどのヴァンパイアロードのような敵が出た場合どうするのでしょうか~~~~~~~~~~~~?』 蜃は興奮して机を叩きながら言った。『面白えじゃねえか……これは最後の第三試合、サプライズを仕掛けなきゃなぁ~』 仙丈隼磨は牙を剥きながら呟いた。続く
Jun 2, 2024
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