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DHHUその21「久しぶりだな吹雪、二郎。それに土蜘蛛に大蝦蟇か」 続いて黒渦から華月が登場。ケン、滑田と続く。「先代! どうしてここに……碁盤の目町から出れないはずでは?」 吹雪の全身から嫌な汗が流れる。「そう怯えるな。センジョーがらみの仕事で地上に出てきておるのだ。疑うなら仙丈隼磨に確認してみるか?」 音もなくふわりと吹雪に近づく。吹雪の間合いのギリギリ外に立っている。「華月さん……タレント黒谷月としての仕事ですか?」 二郎は華月が吹雪を視線で制しているのに気付き笑顔で質問する。「芸能の仕事ではないな。ほれ、そこに出現している異空間結界の件だ」「え? これを知ってるんですか?」「まあな」華月は周囲を見渡し「どうやら二郎たちはこの周囲に居た異空間結界から漏れ出した影を始末したようだな」と嬉しそうに言った。「そこの少年は?」「勇者ケン・シーア。異空間結界を排除し真邪王の封印を目的としている。シーア財団は聞いたことあるか?」「まぁ名前くらいは」「どうも、ケン・シーアです。華月さん達には協力していただいてます。ダンジョンから漏れだした影の始末ありがとうございました」 ケンはハキハキと少年らしからぬ落ち着きで言い放った。「すごいな、その歳で……俺は木城二郎。こちらは白峰吹雪さん、あっちが奥寺舞子に周防美古都さん」「あ……白峰……」 ケンは華月と吹雪の関係を一瞬で理解した。「……」 華月と吹雪を見比べるケン。魔力の圧、目力、存在感どれもが違っていた。「あ~あ、ほらここに居ると碌な事にならない。さっさとマスドに行きましょ」 舞子はため息をつきながらも糸のトラップ準備をしながら言った。「土蜘蛛」「ん? 何?」 華月の問いかけにめんどくさそうに応える舞子。「しばらく忙しくなりそうだぞ?」華月はダンジョンを指して言った。「はぁ~最悪……まぁ退屈よりかはいいけど」 舞子はセンジョーから連絡が来ることを予測した。そしてそれは現実となり『ヴァルキリー』のメンバー4人は街中のダンジョンの見張りに出向くことになるのである。 自転車で去っていく4人、華月は最後に吹雪に目を合わせて見送った。「……吹雪の奴め。あれから殆ど鍛錬しておらんな」「まぁエクレシアの仕事で戦う事もなさそうでしたし今日久しぶりに実戦だったのでは?」 黒谷は華月に近づいて言った。「当主選を勝ち抜く気概も感じられん。端から諦めておるのか?」「さぁどうでしょうね……白峰家・三特性の内『護』の特性ですから吹雪様は。ああ見えて内に秘めるものがあるのでは? 雪名様と同じで」「我には理解できん奴だ。同じ『撃』特性の霄や冬華が我は好きだぞ。母上と同じ『睦』の特性を持つ霞もあまり理解できてるとは言えん」 それを聞いてケンは納得した。同じ白峰家でも華月と吹雪のタイプが全く違う事に。「今は異空間結界の攻略に集中だ、行くぞケン、滑田」「はい!」「は~い」 ダンジョンに潜り込むケン達4人。入った途端蒸気に包まれる。「毒ではない……ですね」 ジークベルトは一瞬でドーム状の防壁を展開して全員を包み込んだ。「視界が悪いな」 華月は周囲を見渡す。「虎狩りの戦士召喚!」 ケンは防壁の外に虎狩りの戦士を召喚。片刃の湾曲した剣を二本持ち小刻みに動かしている。「勇者の召喚は代々シーア財団の勇者が作り上げてきたものだと昔セイに聞いたがケンはまだ自分の召喚者もしくは道具を作っていないのか?」「……どうしてそう思うのです?」 華月の言葉に驚きながら言うケン。「何となくだ。お前はまだ成人しておらずこれから数多くの事を経験しそれから自分だけの召喚札を生涯かけて作るのか、それとも今の歳だからこそ一生刻み込まれる強烈な思入れの物を作るのか少し気になっただけだ」「えっと……」「今言うべきではなかったな。攻略に集中しよう」 華月は昔を思い出していた。ケンとユウの父親であるセイと少しの間ではあったが共に過ごした時の事を。その時に召喚カードの話を聞いた。 セイは華月と出会う前に渾身の一枚を作り上げたというそれを誇らしげに見せて説明した。忍者のカードだった。それまでにもシーア財団には忍者のカードは存在していた。工作員として複数を召喚するものであった。 セイが作り上げた忍者のカードは創作物に登場する英雄的で超人な忍者。多彩な術と驚異的な身体能力で戦う者で『ジライヤ』と名付けた。 自分で作り上げた召喚カードは成長させやすく、着装できるタイプの勇者の場合強化の幅が大きい。 セイは小さい頃から忍者が好きで忍者の創作物を好んで見ていた。ダンジョンを攻略中に完全にイメージが固まり生み出したのであった。 最初はうまく操れず視覚共有も部分着装もぎこちなかったが根気よく『ジライヤ』を使い続け他のどのカードよりも使いこなせるようになった。「セイのジライヤのように良い札が作れるといいな」「は、はい……」 華月と目を少し合わせてそむけるケン。ケンの中ではもうイメージは出来ていた。それまでは漠然と二つの特性をもった魔法戦士をイメージしていたが今は完全に別の二体を作ることを考えている。 サモナータイプのケンは召喚者を作るのに向いている。着装タイプのユウは召喚物を作るのに向いている。バランスタイプは数は多く作れないがどちらも作れる。 召喚者の場合、子供の頃に作った者の方がベストパートナーになりやすく、召喚物の場合歳を重ねるほど強力なものを生み出せるとされている。「(ユウはきっと勇者にふさわしい武器防具を作るだろう……じゃあ俺はパートナーとしても着装にしても強い最強の召喚者を作る! シーア財団の為にも!!)」「真邪王……」 真邪王の仮の姿と声を聴いた時ケンは動悸がするのを感じた。それは忘れてはいけない記憶の為である。「あの声……沙那……」 今は亡き幼馴染の名前を呟くケン。全身を血まみれになりながら兄ユウの目の前で逝ってしまった沙那。ユウは何があったのかを頑なに話そうとしない。「勇者のトラウマに関係する姿に変身するってのは本当だったんだ」 ケンは自分の方が先に真邪王に遭遇していればどのような姿になっただろうと考える。「……と、今はそんな事を考えている時じゃない。華月さん! ジークベルトさん! 滑田君!」 数センチ先も見えない蒸気の中ケンは声を上げる。「返事がない……分断されたかな」「なんだーい?」滑田の声が後ろからした。「滑田君! 良かった無事だね。華月さん達は?」「分かんない……歩いてたら偶然ケン君見つけたんだ。しかし蒸し暑いねここ」「そうだね……」 全身から噴き出す汗、ケンと滑田は水を被ったような状態だった。「闇雲に動いても良くない気がする。かといってこのままじゃ蒸し暑さで体力が奪われる」「どうしよう?」「とりあえず……【モニターマン】と【伝書フクロウ】を召喚!」 モニターマンは他者の視界を映し出せる能力を持ち伝書フクロウは必ず対象の人物に向かって飛んでいく。「伝書フクロウ! 華月さんに向かって飛べ!」「ホロッホー!」 蒸気の中を飛んでいく伝書フクロウ。モニターマンの画面には蒸気しか映っていない。「展開したはずのファランクスがカードに戻ってる……再召喚してモニターマンと接続。360度の視界を12の分割画面で表示!」 ケンは自分と滑田を中心に12体のファランクスを召喚、モニターマンと視界を共有する。「これでしばらく待とう、30分待っても伝書フクロウに反応が無かったら手あたり次第ダンジョンを破壊してみる」「うん」*** 華月は一人石畳の上を歩いていた。「幻術の類か。それにしてもこれは趣味が悪いな」 華月の目の前には旧白峰邸。石畳の両側には黒いスーツを着た男達が頭を下げて並んでいる。「おかえりなさいませお嬢様!」 一斉に声を上げる男達。「ふん……なんの茶番だこれは。我の子供時代の記憶を何処からか読んだか?」「お嬢、当主がお呼びです。お急ぎください」 眼鏡をかけた鋭い目つきの男が声をかけてきた。「吉良……伝次郎」「は」 眼鏡の男は現当主白峰雪名の世話役である吉良伝左衛門の父・伝次郎である。「(この先、屋敷の奥には母上が居るとでも? 面白い茶番に付き合ってやるか)」「お嬢?」伝次郎が声をかける。「聞こえておる、母上が呼んでるのだろうすぐに向かう」 懐かしい屋敷を進む華月、奥の間の襖を開けると中央に正座をしている黒い着物の女性の姿が見えた。 白峰華奈 華月の母である。「戻りました母上」「座りなさい華月、話はそれからです」 懐かしい顔だと華月は思った。「今日は何の話ですか母上」「身に覚えがないと? 相変わらずですね貴女は。それはいいでしょう、呼んだのは全国行脚の話の事です」「その事ですか」 華月は思い出しながら華奈との会話を続ける。「全国行脚をせずとも既に自分は当主としてふさわしい力を持っていると思いますが? 試してみますか母上、今この場で」 あの時言った言葉とは違う事を言い放つ華月。「(あの時「そんなもの意味などありません、周りの者たちなど自分が黙らせてやります」と我は言ったがさぁどうだ?)」「言葉が過ぎますよ華月。才能や力は既に私を超えているのでしょう、しかし当主の力は私にあり貴女の弱点も知り尽くしています。ここで私と貴女がやり合えば結果はどうあれ白峰家は揺らぎますよ? そんな事も分かりませんか?」「一度全力で母上とやり合ってみたいと常々考えていたのです。妖の極道者や人間の反社組織の相手などもう飽き飽きです。母上を負かした後に同盟を組んでいる神野悪五郎も山ン本五郎左衛門も、そして緊張状態が続いている大天狗も九尾も我が打倒して見せれば誰も文句は言えないはずです」 華月はわざと大げさに挑発めいた発言をする。「どうしました華月、様子が変ですよ?」「それはそうでしょう、ここに居る我は貴女が知るよりずっと未来の華月なのですから」「?」 華奈はゆっくりと立ち上がり華月に向かって歩き出す。その様子を見て華月は笑みを浮かべた。「馬鹿め! 母上がそのような歩き方をするか!」 中段突きを放つ華月。咄嗟に防御の姿勢をとる華奈(幻)後方に吹き飛ばされ壁に激突する。「がは……華月様……」 ジークベルトの声がした。華奈の姿はジークベルトへと変わる。「幻術は解けたか? ジークベルト」「幼い華月様と楽しく遊んでいたはずが急に殴られてなんのことやら」「冗談を言う余裕はあるな。さては貴様、幻術に掛かったふりをして遊んでいたな?」「はははこのような機会そうそうありませんからね。さてこれは蒸気に魔力が含まれていますね……同士討ちでもさせたかったのでしょう」「そのようだな、ではケンと滑田を探すぞ」「はい」 旧白峰邸は徐々に薄れて消えていく。「ジークベルト、貴様は母上を見たか?」「華奈様を? いえ、あのお方が呼んでいると黒服に声を掛けられそのまま旧白峰邸に来ましたので。そこで華月様の相手をしてやってほしいと」「そうか……」「どうされました?」「いや、貴様も見たのかと思っただけだ懐かしさを感じたのでな」「そうでしたか、私は華奈様には感謝していますよ華月様を産んで下さったのでね」「そうか……」 華月は幻術はダンジョンの主の力ではないと考える。真邪王の邪眼によるものだと。ダンジョンに入る前に真邪王はダンジョンに入れたかがっていた。この仕掛けが理由だと。「蒸気だけのダンジョンではないでしょうね……この臭い何か気が付きませんか?」「小麦と動物を煮込んだ臭いか?」「まぁ所謂ラーメン屋の匂いですねぇ……このダンジョンはテーマがラーメン屋。そこに真邪王が乗っかっているのでしょう」「……意味が分からんが主の思入れが強いのか」「ダンジョン主はラーメンに関係するものですかね」「何か来るぞ」 迫って来る気配、蒸気を切り裂き現れたのは長く巨大な物体。小麦の麺で造られた龍であった。「ギャオオオオオオオオオン!」「麺の龍だと!?」「これはまた珍妙な……」「へいお待ちー!」 タオルを頭に巻き腕まくりをしたTシャツ、作業ズボンに長靴、腕組をしたジンガの配下である大池が麺龍の頭に乗っている。「勇者の方を狙うべきなんだろうけど……アンタらを放置する方が危険だと勘が働いた」「ここの主だな」「左様、俺は大池。麺好きの用心棒って所だ」「我は白峰華月」「黒谷ジークベルトと申します」「いやはや……格というものがありますねぇ。仕留めるのは難儀しそうだ、あの【人斬りマサ】のダンジョンを犠牲者無しで突破するんだもんなぁ」「ならば真邪王に助けを求めるが良い。我は一向に構わんぞ」続く
Jul 29, 2024
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DHHUその20「若? ジンガの事か」「イヒ……イヒヒヒヒ……若はダンジョンで起きた出来事を知ることができる……今度はお前が攻略される番かもな……」 倒れるマサ、ダンジョンは消滅し元の路地に戻って来る。「大丈夫か、ジークベルト、ケン、滑田」「全然大丈夫です」「滑田君のおかげで」「えへへ」 ジークベルトとケンの傷は滑田が自分の肉を千切り張り付けることで瞬時に直していた。「流石はぬっぺふほふか」「ども恐縮です……」 華月はジークベルトから渡された小瓶を飲み干して滑田に言った。「補給完了だ。小瓶1本で済むのなら容易い」「あの……今の小瓶は?」ケンが言った。「新鮮な血液です。華月様にふさわしい厳選した者のね」 ジークベルトは京都地下都市『碁盤目町』にいる華月派の者の血液であることを説明する。センジョーのタレント『黒谷月』として活躍し益々支持者が増えているのだという。「退魔組織エクレシアも華月様がタレントとして人気を獲得してファンが増える事を咎めることはできません、労働をして対価を得ることもね。仙丈隼磨は実にいい案を持ってきました」「ああ、これは白峰家当主の立場では出来なかった事だ。仙丈隼磨にとっても我にとってもこれは両得であった」 それを聞いてケンは仙丈隼磨の事を思い出し鳥肌を立てた。正面から戦わず争わずに利益を得て力をつけていく。人間ではなく妖がそのように立ち振る舞っていることに戦慄を覚えた。「ケン、司令部のセイにダンジョン攻略の連絡しろ」「あ、はい」***――シーア財団作戦司令部。「ケン達はジンガの側近と思しき男を斃したか。新たな情報は……ジンガはダンジョンで起きた全てのことを把握している、か」 セイは顎をさすりながら言った。「……真邪王が邪眼を使ってジンガと視覚共有していると考えられるな……闇雲にダンジョンを攻略していてはジンガの当たりを引くのは難しそうだな」「逆に見せつけたとも言えますよ? 並のダンジョンではどうにもならないって思い知らせることができるのでは?」 勝田が眼鏡を上げながら言った。「ふむ……敵側は黙ってられないだろうな。真邪王自らが出てこない限りあのパーティーが負ける所を想像できんからな」「ええ、そうですとも。今の勇者ケンパーティーにはかづたん様にジークベルト殿が居られますから。従者としては少しでも危険な真似はして欲しくないのですがしばらくタレント活動だけでかなり鬱憤がかづたん様に溜まっていたので仕方なくですね……真邪王に関してはセンジョーでのデータ解析を進めてるので近いうちに何かしらの対策案を打ち出せます。かづたん様の戦闘データも現在東京に滞在中の次期白峰家当主の冬華ちゃんにUPしてますよ~」 セイに向かって言う言葉と独り言が混ざりあう勝田。端末を操作して時々笑みを浮かべている。「セイ様、センジョーから通信が入ってます」 財団の女が言った。「繋いでくれ」「はい」「代わった、シーア財団のセイだ」『センジョー広報担当の紅葉茄です。お知らせしたい事がございます。現在市内西側にダンジョンと思われる結界の渦が出現。そこから影の妖が湧き出て周辺の人間を襲っています。只今センジョーの者で影の妖の対処に当たっていますがダンジョンの攻略は勇者パーティーにお任せいただきたく存じます』「分かった……すぐにそちらが指定した座標にケン達を向かわせよう」*** 洛西竹林公園に現れたダンジョン。そこから現れた4つの影が周辺の人々を襲っていた。「たまたま来てた場所でこんなの出くわすとはね」 黒髪をかきあげるショートパンツにパーカーの少女、土蜘蛛・奥寺舞子。「舞子さんー! 何ですかコイツらは!」 組み立て式十字槍を取り出して構える茶髪にジャージ姿の少女、大蝦蟇・周防美古都。「あの渦は呪術? かな? 多分……あの影は式神とかそういうのじゃない?」「じゃあ……戦っても大丈夫なのですよね?」「さぁ……でも放っておく訳にもいかないでしょ。一応センジョーには連絡入れといたけどね」「流石舞子さん行動が早い!」 渦から飛び出した大きな影が斧を振り上げて襲い掛かって来る。舞子は粘着糸を飛ばして阻止する。「ガアアアア……」 斧の黒い影はケンのパーティーに居た戦士ラーニーに酷似している。「あっちのメイスみたいなの持ったのは私が止めます!」 周防美古都が向かったのは僧侶アンディに似た影。十字槍でメイスを弾く。「どうした! 何があった!!」 罰ゲームで買い出しに行っていた短髪にスポーツウェアの少年が叫んだ。エクレシア所属の少年・木城二郎である。「……待って二郎君」 追いかける長髪ウルフカットでロングスパッツにTシャツの少女。白峰吹雪。 木城二郎の提案で奥寺舞子と白峰吹雪の仲の悪さを少しでも解消しようと周防美古都に協力してもらいサイクリングに来ていた。「……二郎君、勝手に行動してはいけないエクレシアに連絡しないと」「そんなこと言ってる場合じゃないよ! 俺は怒られてもいい、吹雪さんも協力して!」 一瞬躊躇したが「わかった」と呟いて氷の太刀を形成する吹雪。「ん?あの影って……前に斃したはずの猫田ガイムじゃ?」「そうみえるわね。もう一人は知らない魔術師」 仙丈隼磨の酒になったはずの猫田ガイム、もう一つの影は魔術師ネスター。「ライトニングボルト……」「ギニャアアアアアアアアアア……」 二郎は影ネスターのライトニングボルトを義手の右腕で受け止める。吹雪は影猫田の爪攻撃を氷の太刀で受け流す。「たぁー!」 右手で受け止めた電撃を吸収して影猫田に放つ二郎、吹雪は横から影ネスターに接近して氷の太刀2連撃を入れる。「ギニャアアアアアアアアッ」「グワーーーーーッ」 煙を上げる影猫田、凍結する影ネスター。「美古都!」「はい!」 舞子は美古都の体に糸を着けてハンマー投げめいてスイング。遠心力でスピードの付いた美古都の十字槍突進は盾で受ける影ラーニーの体勢を崩す。「舞子さん!」「ええ!」 糸を引く美古都、糸の張力を利用して舞子は矢のような蹴りを影ラーニーの顔面に叩き込む。蹴った反動で空中回転しながら背後にいる影アンディに向かって粘着弾を連射。二人をまとめて拘束する。「美古都!」「はあい!」 跳躍力に優れた美古都は大きく飛び上がり十字槍を構えて急降下、身動きのとれない影アンディと影ラーニーに深々と十字槍を突き刺し二人同時に貫く。「ぐおおおおお……」「ぶふぁ……」 塵となって消える影アンディと影ラーニー。「ひとまずこれで変なのは消えたわね」 舞子は髪を触りながら言った。『なのですなのです……利用できそうなのがウジャウジャいるのです』 どこからともなく真邪王がつぶやく。二郎たちは不審なその声を聞いて構える。『この声が気になるなら異空間結界(ダンジョン)に飛び込むのです』「誰だ!」「何?」「……」「嫌な感じ」『真邪王なのです!』「真邪王……!? 何者だ」 二郎はダンジョンの入口に向かって言う。『おまえたちには到底不可能な奇跡を起こせる超常的存在なのです! 上位の者とでも言えばわかりますかね?』「何……」『へぇ~……笑ったりとりあえず否定から入らないあたり超常現象には慣れているのですね? 流石この地域は人間も妖も多い訳です』「グレイマンの一派か?」『グレイ……マン? ああ、グレイか。また違う次元の連中ですね……へぇあの者達とやり合った経験があるのですか? そうですか……じゃあ連中を取り込むのもアリですね』「なんだと!?」『正直、手足となる魔王が人間だとすぐに死んじゃう可能性があるのです。グレイを魔王に仕立て上げればより長く『呪いの世界』を楽しめるのです』「なに言ってるんだかよくわからないけど、お前は存在しちゃいけない邪悪だというのを感じる!」『ハハハハハ! そうなのです! 真邪王ですからね~呪いをふりまきこの世の全てを苦しめる為に存在してるのです!!』「堂々とそこまで言うからには人間と妖両方を敵に回しても平気なんだな」『ハハハハハ! 真邪王に恐れるものなど無いのです! 永遠ともいえる時を過ごす間の暇つぶしには刺激が必要なのです!! さぁさぁダンジョンに入るのですもてなしますよ?』 ダンジョンの入口からまたもや黒い影が出てくる。『酒呑童子の闘技場で【視た】強そうなのをコピーしてみたのです。まずはコイツでお試しなのです!』 真邪王はクレメンタイン・ヴァン・ヴァスベルゲの影に入り込む。紫色に輝く左目。『コイツの使い方は視たからなんとなくわかるのです!』 影クレメンタインが両手を広げると離れて様子を見ていた一般人が倒れていく。『ブラッドスティールなのです!』 倒れた一般人から大量の血液が噴出し影クレメンタインに集まっていく。「お前ー!」 二郎が突撃する。対する影クレメンタインは血の槍を突き出す。『おや?』 鋼鉄を貫く血の槍を二郎は右腕の義手で受け止め白い光を放つ左拳を振りかぶる。『!?』 二郎の左拳を受けた影クレメンタインの顔面がボロボロと崩れていく。影クレメンタインは危険を察して後ろに飛んで距離をとる。「……」 左後方に吹雪、氷の太刀を下段から斬り上げる、影クレメンタインの左腕を掠めた。『え?』 感覚がないまま左腕は凍結し砕け散る。「今ので仕留めるつもりだったけど……反応がいい」 吹雪が呟いた。『あらら……これはちょっと舐めすぎたのです』 真邪王は影クレメンタインの周囲に惑星の輪を思わせる血のリングを浮かべる。『確かこれがコイツの得意わざなのです』 高速回転を始める血のリング。二郎と吹雪は離れる。『流石に警戒するのですね~じゃあジワジワと追い詰めてやるのです』「は? 私達を無視してんじゃないわよ!」「そうだ!」 竹林を利用してスイングする奥寺舞子、抱えられている周防美古都。『そういえば居たのです! 今すぐ切り裂いて……』 そこまで真邪王が言うと血のリングの回転はブレーキをかけたように落ちていく。同時に上半身と下半身が切断され地面に転がった。『あれ?』「ばーか! リングの内側とアンタを糸で繋げてやったのよ。自分で自分を切断したのにマヌケな反応ね」 スイング急降下で放たれた周防美古都は十字槍で影クレメンタインの上半身を突き刺す。『見事すぎる連携なのです……へぇ~これはこの前の勇者パーティーよりも強そうです』 影クレメンタインは切断された下半身を操り美古都を襲う。動きを察知した舞子は美古都を糸で引っ張り回避させる。「油断しちゃだめよ美古都」「は、はい!」『これは……どうしたものですかね。この影ではもうお前たちに勝てない気がするのです……む~あの時あと3秒視てればチーム月光も影でコピーできたのに』「は? チーム月光?」『まぁこれ以上ダンジョンの外でやり合う意味もないので続きは中でするのです! さぁさぁおいでませ!!』 真邪王は影クレメンタインを解除する。残った影はダンジョンへと吸い込まれていく。「……センジョーから返信きてた。影の処理と一般人の誘導宜しくだってさ。それとダンジョンには入るなと。エクレシアは何も言ってこないの木城君?」 舞子は携帯を操作しながら言った。「えっと……出来るだけ関わるなとメッセージがあった、それだけだよ」「ふ~ん……随分腑抜けたわね。葛野忍が居なくなって合衆国から代理が来たって話だけど。白峰家『現』当主さまの雪名もダンマリなの?」 舞子は吹雪を見て言った。「お母さんはわたし達にはエクレシアの仕事させたくないみたい……それとエクレシアは何もしてない訳じゃないわ、調査とか一般人への隠蔽とか装置の設置とか」「ふーん……ま、いいけど。センジョーが動きやすくなったのは確かだし一々エクレシアの連中が絡んでこないのもいいから」「奥寺」 二郎が制するように言った。「はいはい解ってるわよ……喧嘩しないってば。で、これからどうするの? サイクリングの続きって訳にもいかなくなったけど」「とりあえず……マスドにでも行きません?」 無理やり作った笑顔で美古都が言った。「そうだね、腹も減ってきたし……吹雪さんもいいよね?」「……ええ」 二郎の問いかけに頷いて応える吹雪。「じゃあ、それでいい。これ以上ここにいても厄介ごとに巻き込まれそうだし」 舞子は倒れた自転車を糸で引き寄せて起こす。「おや?」 4人の目の前に黒い渦のゲートが出現する。二郎たちには見覚えがあった。「おやおやおや……」 黒谷ジークベルトが黒渦ゲートから登場した。「貴方は……」 吹雪が警戒すると両手を肩の高さにあげて掌を見せるジークベルト。「そんなに警戒しなくても何もしませんよ。当主選はまだですし今から何をどうする気もないですからどうか落ち着いて」続く
Jul 14, 2024
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DHHUその19 ケン達が入ったダンジョンの中は日本的な建築物が並ぶ空間であった。「やけに静かだな」 華月が言った。「時代劇のセット見たいな感じだ……作り物感が凄い」 ケンはいつでもカードを出せる構えで眺めている。「用途も意味も無視して好きなものを集めて作りました、そんな感じですね。勘違い日本的な」 ジークベルトは探知の魔法で周囲を警戒しながら呟く。「派手ですね~」 ぬっぺふほふの滑田は短い手足で小走りしながら言った。「来ますよ!」 ジークベルトの声と同時にいびつな日本式の建物の二階部分から黒い影が出現。「斬り斬り斬り」「首刎ね首刎ね」 刀を取り出した一人は縦回転、もう一人は横回転でケンに狙いを付け飛び掛かる。ケンは黒い影の出現とほぼ同時にミスリルの鎧と盾を装着し備えていた。「……」 華月は無言で人差し指から赤黒い弾丸を放って2体の影剣士を撃ち抜いた。「残り45体ですね」 ジークベルトは探知に掛かった影の数を伝える。「その探知に引っかかった中にジンガがいるかどうかですね……」 ケンは周囲を観察しながら言った。「ザザザザザザーーーーーーン!!」「ヤヤヤヤヤー!!」 大弓を構えた影の武士、番えているのは矢ではなく細身の武士。「ヤヤヤヤー!」 大弓から発射される細身の武士。刺突剣を前に構えまたもやケンを狙う。華月は赤黒い網格子を出現させ細身の武士を受け止める。「ヤヤッ!」「徹底した勇者狙いか、分かりやすいな」 網格子に衝突した細身の武士を蹴り飛ばす華月、木造の建物に衝突し砕け散る。 離れた場所にいる大弓の武士が次に番えたのは大量の矢。先にはヒルのようなものが大量に蠢いている。 華月に蹴り飛ばされ砕け散った細身の武者の破片は一つ一つが飛蝗となり飛翔を始める。「ここは俺に任せて!『不死鳥の剣士』フェニックスフレアー!!」「ザザザー……」「ヤヤー……」 放射状に放たれた炎の波に飲み込まれる影の武士と飛蝗たち。周囲の建物に炎が移ったがケンが不死鳥の剣士が手をかざすとすぐに消えた。「ほう、その剣士はそのように炎を操れるのか」「うん、それほど範囲は広くないけどね」「ケン少年、今のは良かったですよ。あのヒル大弓の矢を放たれていたら厄介でしたし、バッタも飛び回られては始末に困ったでしょう」「うまくいって良かったよ」「これで残り43体か」 作り物感のある古い日本家屋の路を進む4人。十字路に差し掛かった所で複数の気配を感じ取る。「8体居ますね」「ファランクス!」 ジークベルトの探知の声を聞き素早くファランクスをパーティーの周囲に展開するケン。滑田を自分の後ろに隠し円形の陣をとる。「ハイイイイイイイイイイイイッ!」 屋根から2体の槍持ちが飛び出してきた。ケンに狙いをつけている。冷静にミスリルの盾を構え2体を弾き返す。転倒した所にファランクスらが大楯で圧し掛かり手槍で串刺しにした。「いい反応だ」 華月はあえて手を出さずケンの動きを見ていた。「チェエエエエエエエエエエエエエイ!!」 続いて今度は4体が大太刀を蜻蛉の構えで現れ突進。ジークベルトが無詠唱で鮫の背ビレめいた闇の波動を飛ばし2体を切り裂いて始末。1体はケンが不死鳥の剣士の一撃で、もう一体は華月が横蹴りで吹き飛ばし爆裂させた。「小出しにしおって面倒な!」 華月は隠れている残り2体に向かって赤黒いオーラを噴出して飛び出す。建物の中で火縄銃を構えている影の兵士を掴んだ。「ギャギャ!」「もう一体は向こうだな!」 顔面を掴むと路を挟んで向かい側にいる火縄銃兵に向かって投げつける。「ギャギャー!」 投げつけられた火縄銃兵は赤黒い光と共に爆発四散、爆発に巻き込まれもう一体も爆散。「……華月さん闘技場と少し戦い方違うような?」 ケンはジークベルトを見て言った。「ああそれは……色んな戦い方を君に見せつけているのですよ華月様は」「そうなんだ……」「効率だけでいけば圧縮した魔力弾を拳銃のように撃ち込むだけで終わりますからね。そうしないのはそれだけに慣れて対応力低下の防止や他の技術を忘れない為です。器用な者ほど慣れた時油断しますからね」「そっか……」 ケンはドキリとした。自分は兄のユウより優れていてなんでも器用にこなせる人間だと思っていたからである。「我も当主になる前は色々と痛い目に会ってきたからな」 華月が飛んで戻ってきた。「昔は荒れに荒れておったぞ。母上も家の者も周囲の者も敵も人間も妖も全てが気に入らない時期があってな。それで全国行脚させられる事になりそこで色々と学んだのだ」「私はまだ生まれても居ませんでした、残念です。華月様の荒れていた時期、見たかったですねぇ」 ジークベルトは腕を組んで大きく頷きながら言った。「え? そんなに昔の話なんですか?」「100年以上前の事だと言っておこう」「100年以上? え? 華月さんって……いつ生まれたの?」「……言わせるな、想像しろ」 ふいと視線を外して歩きはじめる華月。ケンは華月の後頭部にまとめられた団子髪と首筋を眺めながら100年前の姿を想像する。「詳しくは言えませんが……華月様は7月生まれの獅子座です」 ジークベルトが囁く。「……なるほど」 ケンはそれほど西洋占星術に詳しくなかったが納得した。「ジークベルトさんあの、華月さんは闘技場で見せてくれた銀髪でキラキラの姿はもうならないのですか?」 ケンは思わず頭で浮かんだことを口走ってしまった。「ケン少年、華月様の本来の姿に魅了されたのは当然の事で求める気持ちは分かりますが……今は容易に成れないのです。華月様は強すぎる力故に自身を傷つけてしまうのです、少し前にあったグレイビースト大戦で限界を超えて力を使ってしまった結果今の幼い姿にならざるを得なくなったのですよ。華月様本人が一番戻りたいと思っているはずなのであまり言わない方がいいかと」「す、すんません」 華月には二人の会話が聞こえていたがそのまま流した。滑田はどうすればいいか分からず苦笑いを浮かべていた。「……さて、気配は残り35体ですね」 雑で不出来な武家屋敷に入るケン達。これまでとはうって変わり黒いビジネススーツを着た男達が拳銃を持ちゾロゾロと出てくる。胸には金の紋が入ったバッヂを着けていた。「不快だな」 華月は赤黒い魔力の波動放ち前方の5人を吹き飛ばした。「正直こういった輩の相手はしたくない。昔を思い出すのでな」 指先から次々と魔力弾を放ち正確にスーツ男らを撃ち抜いていく。「……急にギャング……ヤクザみたいな敵になりましたね」 ケンはファランクスを機動隊のように展開して銃弾を防ぐ。「私が生まれる前の話ですが――昔の白峰家はヤクザめいた妖や人間とバチバチにやり合っていたと聞いています。一部を除いて全て壊滅解散に追い込んだのは華月様だと記録には残っています」 ジークベルトは魔力のカーテンで銃弾を防ぎながら言った。「昔話をしている場合か、このような場所さっさと攻略してしまうぞ」「残り4体ですね」 先頭を歩き襖を開けて進む華月。屋敷の一番奥には畳に大量の刀を刺し甲冑を身に着けた男と琵琶、琴、笛を引いている女が居た。「お前がジンガか?」 華月は魔力弾発射準備をした指で差しながら言った。「ちょいちょいちょい! 人に尋ねる前に自分から名乗り上げるのが礼儀ってもんじゃあないかい?」 男は刀を手に言う。それに合わせ楽器持ちの女が奏でる。「黙れ極道崩れが。お前たちの口上に付き合うつもりはないぞ。だが名くらいは教えておいてやろう。我は白峰華月、お前がジンガでないのならすぐにでも始めるぞ」「馬鹿みてえに強い殺気……こりゃあ舎弟共が手も足もでねえはずだ。俺は【凶】のヒットマン、人呼んで『人斬りのマサ』ってぇモンだ!」 マサの言葉に合わせ女たちが楽器で盛り上げる。「このダンジョンに色々と仕掛けを施してたんだがこう力づくで正面突破されちゃあどうにもなんねぇせめて最後の砦だけは盛り上げようとおもってねぇ」 話をしている途中に後ろに僅かな気配を感じた華月は振り返る。すると黒い影が刀を持って振りかぶり今まさにケンに斬りかかろうとしていた。「ケン!」 華月は魔力弾を放ち黒い影を撃ち抜く。刀はケンの頬を掠めた。「イヒヒヒヒヒー! おしいおしい! 凄いなぁ今の反応できるとは」「これは不覚……私の探知にも引っかかりませんでした」 ジークベルトがマサを睨みつける。「イヒヒヒ! 俺は今まで893人を斬ってきたがサツにパクられたのは最後の一人を斬った件だけだ!! 俺の人斬りは見つからねぇ逃げられねぇ捕まえられねぇのだからよ」「呪……の類か」 華月は全身に赤黒いオーラを纏う。「正解、俺の人斬りは刀で行うだけじゃあない『呪』を使う。人斬りに特化した呪でなぁ。だけども最後の一人だけはどうしてもこの手でバッサリやりたくて本物の刀で派手に斬り捨てちまったんだわ」「ベラベラと話しているのは呪の定着化だな。そうあるものと認識させ精度を高める。妖が伝承を人に語らせ恐れさせるのと同じ効果だ」 華月は周囲を警戒する。「この男、ヤクザのような風貌をしている術師ですか……」 ジークベルトが珍しく魔法陣を全員の足元に展開し詠唱を始めた。「ハ! 多重結界に解析魔術……だがそれだけで防げるかな?」 滑田の目の前に刀を持った影が出現、ケンはミスリルの盾を突き出して防いだ。「フェニックスフレアー!」 待機させていた不死鳥の剣士を出し炎の必殺技を放つ。マサに向かって炎の波が迫る、しかし手前でモーゼの海割りの如く炎は裂かれマサと女達にはかすりもしなかった。「イヒヒヒヒヒ、人斬り特化と言ったが応用もきくんでね。防御できなきゃ俺は今頃とっくに死んでるって訳だ」「呪と言えば……グレイビースト・神名L咲夜を思い出すな」 華月は当主の力を失っていたとはいえ全力で戦って仕留めきれなかった相手の事を思い出す。「お前が奴と比べどれほどのものか試してやる」 華月は畳をめくりあげ魔力を込めて投げつける。単純に質量の大きいものに魔力を込めて放つだけであったがその衝撃は単車が時速100kmで衝突するものに匹敵する。「なんのなんの!」 数回斬撃の音が聞こえ畳は散らばる。マサの周囲に突き刺さしていた刀は消えていた。「イヒヒヒヒ! 47刀流のマサとも言われとりますわ!」 そう言い終わると同時にケン達に16本の刀影が襲い掛かる。華月は反応し側宙返りで回避、ジークベルトは肩と両足、ケンは防御の姿勢を取るが鎧の隙間の顔と大腿の裏、滑田は全身に斬撃を受けた。「滑田君!」 ケンが叫ぶ、しかし滑田は申し訳なさそうに苦笑いしながら傷を閉じていった。「ケン君すまねえ……オイラは回復しか能がなくてよぅ」「いや、それは凄い事だよ!」 ケンの持つ回復系のカードのどれよりも速い回復速度。更に滑田は他者にも同じ事が出来ると言う。「ファランクス、滑田君をがっちりガード!俺はミスリルの鎧と盾で耐える!」 更に未来視の魔眼で攻撃を予測すれば致命傷を負う事は無いとケンは判断した。「イヒヒヒヒヒ! 攻防一体の斬撃無双!! ダンジョンでの俺に隙は無い!!」 マサが挑発する。「それは無い、我はもうお前の攻略を思いついたぞ」 華月はジークベルトにケン達をいつでも移動させられるように指示して更に赤黒いオーラを解放する。「華月さん! あんな奴俺が必殺のゼクスミニアドで……」「ケン、お前の切り札はまだ取っておけ。ダンジョン攻略はここで終わりではないぞ」 華月が言い終わった直後にマサの影が出現し斬撃を放つ。今度は華月に集中した30本の斬撃。それに対し華月はハリセンボンめいて全身から魔力棘を突き出し影を貫いた。「イヒヒ! 見事! だが防御ばかりでは勝てないぜ?」「焦っているのか?」 マサに向かってロケットダッシュする華月。斬撃のカウンターが襲い掛かるが――「ここだ!」 人差し指から針のように細い魔力弾を撃つ華月。マサの肩を貫通し肉を爆ぜさせる。「ぐううわああああああああっ!!」「なんだグレイビースト神名L咲夜とは違い体は脆いのだな」「馬鹿な、俺のカウンター斬撃の発動は見えねえはずだ! それを避けて撃ち込むなど!」「ああ、見えん。だが周囲の空気に自分の魔力を散布すれば動きは分かる。後は隙間に撃ち込むだけだ」「なんだと……それができたとて反応してから間に合う訳が無い」「慣れだ。限られた範囲であれば目で見るのと変わらんように出来る。お前と我では経験が違う」「クソがあああああああ! 全47刀最速斬撃を食らえ!!」 華月はマサから敢えて距離を取って47の同時斬撃を繰り出す全ての影を撃ち抜く。マサの斬撃は本人の届く範囲であればモーションの見えないものであるが、それ以上の範囲となると影を飛ばしてからの斬撃に変わるのを見切っていた。「何……この短時間で俺の人斬り術の性質を見切るのか……」 マサの術は所持する47刀が媒介となる術。普段であれば刀を抜かずに斬撃を放ちすれ違いざま、壁越し、車の移動中、または刀だけ対象の近くに設置しておいての発動などを行う恐るべき人斬り暗殺の術。見切った者は誰一人居なかった。「残念だったな、我でなければお前はこんな思いをしなくても済んだであろう」 華月は針のように細い魔力弾を三発、発動する斬撃の隙間からマサの両足と腹に撃ち込んだ。「ぐぼぉ……す、すまねぇ若……俺はここまででさぁ……」続く
Jul 1, 2024
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