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Dの複合改版松本清張新潮文庫☆☆☆☆ う~ん、浦島・羽衣伝説と事件を絡めた…というが、私はちょっとしっくりこなかった、色々と。 売れない作家の伊瀬が旅行雑誌の編集者に提案され、この二つの伝説とその縁の地を巡る記事を書く、というところから話が始まり、取材する先々で妙な事件が起こっていくというストーリー。 取材や事件の関係者っぽい人に会うため、色々な地域を旅するので旅情ミステリとしては面白い。しかしな~んんか胡散臭い人物が出てきたりするので、最後にあまり驚きはなかったし、しかも私が嫌いな結末パターンだし…。 私があまり熱心に読めなかった理由に登場人物にあまり引力を感じないせいだと思う。実は今まで読んだ「ゼロの焦点」「点と線」もどちらかというとそんな感じだった。また、身近に清張の熱心なファンがいて、私が何か別の最近のミステリを読んで面白かったというたびに「そんなの清張にある」「清張の二番煎じ」と言うだけでつまらなかったのだが、確かにそうなのだ…。ただし、この作品あたりだと、現代のミステリの方が登場人物や展開・演出に工夫があって面白いと思った。(今別の作品を読んでいて、そちらはまたちょっと違う感想を持っているが)あっという間に読めてしまうのだが、この内容でそうしようと思うとどうしても色々省かなければいけないことが出てくるのだろう。 この作品も今となっては「歴史風俗小説」という感じかなぁ…。歴史ミステリや登場人物の描写にも力を入れたミステリをたくさん読んだあとで期待して読むと裏切られるかも。
November 29, 2009
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トリセツ・カラダ海堂尊 ヨシタケシンスケ(挿画)宝島社 A5並製☆☆☆☆☆ 副題が「カラダの地図を書こう」と「カラダの中はどうなっているのか」。これが、この本のテーマ。難しい漢字(多分当用漢字以外の字だと思う)にはルビがふってあるところからして、中学生くらいの子供も読むことを考えて作られている。(つか、この本にはお医者さんになりたいなら、中学生のうちにこのくらい勉強しておこうと書いてあった…当時を思い起こすと私にはムリだ) 私も「カラダの中はどうなっているのか」ということを意外に知らないな~と思って購入。それで、一番分かり易く面白かったのは、内臓の収納。収納という言葉が使われている通り、どういう風にカラダの中に納まっているのかが説明されている。 また、カラダの各部分のうち内臓、脳、呼吸器、循環器の説明は比較的詳しいが、内分泌系・生殖器系・血液系はざっくり。ただ、内分泌系は素人にはややこしそうだし、生殖器系も特にこの本で説明しなくても、保険体育や生物の教科書でもカバーできるかな。 ただ内臓・脳・呼吸器・循環器なんて、高校生物の授業でもそんなに詳しくやらないと思う。テレビなどで名前を聞く「十二指腸」「脾臓」がどんな臓器なのかも漠然と分かる。結構マメ知識・雑学的な知識も仕入れられる。たとえば、膀胱の容量は約500mlで通常300mlを超えるとトイレに行きたくなるとか…。 挿画もユーモアに溢れていてとても面白い。写真も白黒だが(つかこれがカラーだとちょっとね…)実際の臓器・器官のCT3D写真やミクロ写真も豊富に挿入されている。著者は医学物の小説で有名な人だが、人体について「ざっと」解説してある本がない、ということで上梓された本で、確かに全く医学に素人であっても我々の体の仕組みがよく分かる。 そして、この著者が概念を啓蒙しようとしているAiについても最後にふれている。同時に人が死ぬということにも。もちろん哲学的・宗教的な話題ではなく、医学にとってということである。 著者の主張を読んでいるとAi(オートプシー・イメージング~遺体のMRIによる画像診断)は死因の究明に非常に有益なことが分かるが業界には反対が多いそうだ。 実は、このAi、米軍は中東から戦死して帰還する兵士全員に行っており、そこから得られたデータが非常に有効利用されている(まあ、兵器開発になので有益とは言いがたいけど)という記事を読んだこともあり、非常に有効な死因究明手段であることは間違いないと思う。なにせ、解剖をする前にAiでスキャンし、それで死因が分からない場合のみ解剖すればいいという、いわば解剖の前にワンクッション遺族の心情にももう少し優しいものを置くことになるのだ。(Aiは画像なので一切遺体を傷つけない)また、米軍のAiに触れた新聞記事ではこの兵士へのAiの結果はレポートとして遺族にも渡されることになっているが、「必ず信頼のおける友人・聖職者・カウンセラーの人と一緒に開封してください」という但し書きがついているという。(つまり嘘が絶対に書けないから、どんな状況だったかも分かってしまう)それだけ死因の詳細が分かるのだ。今、日本では死因がよく分からないまま葬られてしまう人が先進国の割に多いという。遺族感情への対応を考えた上で導入されれば、医学の進歩にも繋がるし非常に有益だと思う。
November 29, 2009
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点と線松本清張 挿画:風間完 解説:有栖川有栖文春文庫☆☆☆☆○ 超有名な作品。かなり期待して読んだのだが、テレビで観たことがあるためなんとな~く先が読めてしまって少々興ざめ。しかも、書かれた昭和32年当時と今では交通機関への感覚が違っており、それが致命的に白ける。当時の地方の安月給の(失礼)たたき上げ刑事さんがそういう感覚であってもおかしくはないかもしれないけど…。正直ストーリーを知らずに読んだゼロの焦点の方が面白かった。 この小説をリアルタイムで読んだうちの母などにはさぞかし斬新で面白かったと思うのだが、もう初版から50年経っているのだ。推理小説という看板はもう引退で、もう歴史風俗小説に片足突っ込んでるかも…。ただ、この「点と線」の着想をしたに違いない登場人物像と作中のエッセイ、香椎近辺の描写は魅力的だった。行ってみたくなったが、もう埋め立てられているんだそうだ。金印の出てきた志賀島が近いんだって…。それから、内田康夫さんのテレビドラマ「信濃のコロンボ」シリーズの刑事二人のモデルはこの作品の二人の刑事なんじゃないかと思ってしまった。文句は言っているが、この二人の刑事が出てくる「時間の習俗」や歴史推理も絡み奈良も出てくる「火の路」なんかは読んでみるつもりだ。
November 17, 2009
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プロの撮り方旅行写真ロバート・カプート日経ナショナルジオグラフィック社 215mm*133mm 並製☆☆☆☆○ 以前に読んだ「デジタルカメラ~風景」と割合重複する部分も多い。が、載ってる写真が本当に素晴らしいので楽しく読める。 こちらの本では、露出計を使って厳密に露出計を計るということにあまり重点が置かれておらず、逆にどんな条件でもその場の光を利用してみる、一日の日差しの違いを意識する、(ツアーの旅行でも)時にはグループ行動から外れてみる、地元の人と上手にコミュニケーションをとる、といったことが強調されている。共通していたのは、機動力を落とさないよう装備は最小限で、どうして撮りたいのかとどう見せたいのかをよく考えること、あと、画面にユーモアを効かせるというのも共通の視点だろうか。それから、人を画面に入れることを薦めている。そうすれば、被写体の大きさがよく分かるからだ。まあ、どんな写真を撮るときにもいえることだが、何も考えずにシャッターを切ることがあってもいいが、ちゃんとシャッターを押す前にどんな風に撮りたいのか撮る価値があるのか「考える」ということが大事だということなのだが…。私の場合いつもそれを忘れる…。 何となく「デジタルカメラ~風景」篇が導入部でこちらが第二部といった感じもする。他にもラインナップがあるが、「人物写真」と「モノクロ写真」もちょっと見てみたい。特に「人物」は苦手なのだが、積極的に撮ろうという気もないので、図書館にないかな…。フィルムで撮ったモノクロ写真に最近興味が出てきているので、「モノクロ写真」は買ってもいいかも。
November 14, 2009
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長い長い殺人宮部みゆき光文社文庫☆☆☆☆☆ 財布が彼らの持ち主を語る、という視点で連作形式で描かれており、それを通じて持ち主たちがとんでもない事件に関わっていくというのが読者に分かる。この視点が新鮮だったので読んでみた。普通に登場人物を配置して描いてもそれなりに面白そうな題材だが、この「財布の語り」で一層面白く読める。いつも身近に置かれている財布だからこそ、ここまで細かい客観的描写ができるのだろう。ただし、この本は1997年初版。携帯電話が爆発的に普及する1年くらい前だ。今なら携帯電話がこの役割を果たしていてもおかしくない。携帯電話だったら、持ち主の携帯の仕方も人によって多少違う。たとえば、Aさんは肌身離さずベッドサイドまで、私なんぞはバッグに入れっぱなしで、滅多に着信もなし。出歩かなければ、電源が切れても気づかない…といった風に、そういった個人個人の携帯の度合いの違いも書けばもっと面白くなるかも。ただ、残念なのはこの作品の二番煎じになることだ。 実は、この人の作品は以前読んだ時に物の見方にどうも好きになれない部分があり、以降あまり食指が動かなかったのだが、これは最後の最後までその視点があまり表に出てこなかったので気にせず読めた。ただし、最後でそれが全開になる。人が寝る前にするような些細で誇大妄想的でつまらない想像(妄想?)をあざ笑っているような視点が透けるような気がして好きではないのだ。しかもそれをあざ笑っていながら、自分は同じようなことをしていてしかも「自分はいいの」と言っているようなところが特にイヤなのだった。ベストセラー常連作家かもしれないが、やっぱりあんまり読まないだろうな、これからも。
November 14, 2009
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ゼロの焦点改版松本清張新潮文庫☆☆☆☆○ 今日から公開の映画の原作。松本清張のミステリは読んだことがなかったし、母親が買っていて興味があったので読んでみた。 最初から昭和30年代(多分33年頃だと思われる)の時代色が濃く、なんだか「サザエさん」初期の巻や「Always 3丁目の夕日」のシリアス版を読んでいるような気になってきた。第二次大戦後の貧困から立ち直り、これから高度経済成長にむけての時代で、一見なくなっているような戦争の影がまだ時折古傷の如く顔を覗かせていた時代。私の世代にとってももう半分時代映画の感覚だ。 主人公が若妻なのでたいして推理を行うこともなく、最後のちょっと前で何となく誰がどうしたというのも見当がついてしまうし、展開もご都合主義かも…と思わないでもない。ただ、途中までは展開が早く読んでいて面白かった。 ただし、私はこの作品の最後のような展開は嫌い。なので適当につけているとはいえ、☆は少なめ。
November 14, 2009
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澤田ふじ子中公文庫☆☆☆☆☆以下では物語の結末や展開に触れています。 東大寺大仏造顕にかかわった人々の哀感をつづった小説。 主人公の天国(あまくに)は秦氏の氏寺蜂岡寺(今の太秦の広隆寺だと思われる)で重要な役割を果たしていた造仏師。しかし、彼は良民ではなく金銭で売買される奴だった。彼の主、秦百嶋は自身は高齢を理由に国家事業として行われる大仏造顕に携わることは断るのだが、代わりに片腕である天国と天国の弟子のような立場である当麻呂を推薦する。 天国や当麻呂、他の大仏造顕に関わる人々は奴婢の身分から解放され、完成の暁には他の良民たちと同様口分田も与えられる、と言われ、希望に燃えて辛い工事に当たる。以前読んだ、天平冥所図会も同時代を舞台にした作品だが、こちらは主人公がより庶民。天国は職人気質で政治的駆け引きなどには全く無関心、ひたすら前例のない大工事を遂行するために、悲惨な目にあっても必死で仕事に取り組んでいく。彼の粉骨砕身も技術者としては一癖も二癖もある上役にも評価されるのだが、ひたすら仕事に没頭する彼は時に周囲に厳しく不器用で、当麻呂はやがて彼から離れていく。さらに、大仏が完成した時、時の権力者藤原仲麻呂は非道ともいえる手段をとる。 物語のラストシーンは大仏開眼会の様子とそれを耳にしながら奈良坂(京都へ向かう今でも使用されている道路)を登る天国達。その姿はとてもやりきれない。大仏が造顕された時、水銀が大量に用いられたこともあり多くの人が犠牲になった、みたいなことは聞いていたが、藤原仲麻呂が行った政策改変は過酷な労働に酷使した人々を良民にすると言っておいて、また奴婢にもどしてしまうというのは本当に酷い。後に彼が謀反を企て家族ともども無残に殺されても自業自得かと思う。 正倉院展と法隆寺を見学した後、近鉄筒井駅そばの書店でこの本を買ったのだが、今後、正倉院展に数多く出展されている大仏開眼会の時用いられた祭具・法具を見る目が変わると思う。
November 10, 2009
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万城目学角川文庫☆☆☆☆☆ 青春小説なんだけど、結構設定の細かいところまで凝っていて楽しめた。しかし…↓の澤田ふじ子さんの小説の後だと同じ京都の陰陽師絡みのストーリーとはいえ、全くの別物。地名に関連を見出せればよかったのだが、私はそこまで京都には詳しくないし…。DVDを観ようかと思って準備として読んでみたのだが、アタリ。ただ、思わず噴出す場面が多く、電車の中や一目のあるところでは苦しいかも…。 ただ、主人公たちが「青春」しているところはあんまり興味ないかな…。純粋にホルモーやってる時が面白いのと、ふと見かけた映画版の「オニ」のフィギュアが可愛いので欲しい。
November 6, 2009
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