作品に、橋蔵さまの鳶姿が初めてお目見えしたのがひばりさん、大友さんとの
1957年1月封切の火消し役「大江戸喧嘩纒」でした。そして、同じ年の 12
月に今回のカラー作品「花吹雪鉄火纒」が作られました。粋で鯔背な伝法肌にきびきびした江戸弁は、江戸っ子の橋蔵さまにピッタリです。江戸っ子とくれば時代劇では火消しの役柄は最高にカッコいいものです。
「花吹雪鉄火纒」では、初顔合わせの中原ひとみさんとの共演。清純な町娘をお兄さん的な気持ちで守っていく優しい長次さんという感じです。ちょっと物足りないところがありますね。
相手役に決まっていた中村雅子さん (
女優望月優子さんの年の離れた妹 )
が出演できなくなり、中原さんになったということです。中村さんが相手役だったら、作品がもう少し長次との絡みに重みがあったかもしれません。
この作品のラスト「に組の長次」としての纒振りは、圧巻です。
歩きながらの腰の入った綺麗に振られる纒、このように纒を振った作品は、他にはなかったのでは ?
・・橋蔵さまだから出来たのではないか、と思います。「緋ぼたん肌」あたり ?
から、橋蔵さまは自分の持ち味を出すのが上手くなって来たような気がします。立回りはまだ完成されてはいませんが、「喧嘩道中」のやくざもので立姿や今までと違った立回りをやって上手くなってきています。だから、この「花吹雪鉄火纒」は安心して見られ、橋蔵さまの色気も表情も綺麗ですし、立回りも安心して見られましたよ。
12
代将軍家慶の頃、幕府の財政は極度に乱れ、庶民は生活の苦しみに喘いでいた。江戸の物価はうなぎ上り、中でも油の値上がりは天井知らず。そこに目をつけ営利を貪ろうと油問屋の山崎屋は買占めを企て、油奉行塩沢と結託して、邪魔な油問屋を取り潰していきます。武蔵屋のお花と父は上方から帰ってきた日に、自分のところの倉庫が炎上するのを目のあたりにします。武蔵屋父娘と道中で一緒だった「に組」の長次は火事を不審に思い、事件の解明に乗り出します。ご法度の刺青をして水野越前守の密命を受けた直参五千石皆川遠江守が、長次となって町火消し「に組」に入り込み、纏持ちとなって相次ぐ油問屋の火事の究明、悪人一味を懲らしめるという、勇み肌と小気味よい啖呵の江戸っ子橋蔵十八番の華麗で痛快な娯楽作品です。
◆第 31
作品目 1957
年 12
月 28
日封切 「花吹雪鉄火纒」
に組の長次 大川橋蔵
お花 中原ひとみ
お夏 松風利枝子
武蔵屋藤兵衛 薄田研二
岡部能登守 加賀邦男
板前の紋三 岸井明
水野越前守 岡譲司
山形屋持介 山形勲
河津源之介 吉田義夫
清三 徳大寺伸
篠原源内 阿部九州男
に組政五郎 加藤喜
喜助 星十郎
番頭蓑助 富田仲次郎
左官徳 中村時之介
へえ、長次と申しやす
江戸も近い晴れわたった街道筋を、粋な旅姿の長次が周りを見渡しながら、鼻歌まじりであるいてきます。芝居一座とも手をふり呑気に楽しそうに歩いています。
(
橋蔵さまが歌っています・・・上手い下手は別として・・いい声ですよ)
♫空は日本晴れおいらの旅は 西と東へ泣き別れ
♪ぶらりぶらりと街道すじを 喉が自慢の木遣り節 木遣り節
♪聞いておくれよ三日月さんへ 恋がないとて泣くものか
♪お月様さへ一人でござる 思い出すまい薄情け 薄情け橋を渡ったところの道端で一休みしている父娘連れがいます。 (
油商武蔵屋の藤兵衛とお花です
)
長次は、「お先に」とにこやかに声をかけ
、一足先に江戸へ向かいます。
(
この「お先に」のニュアンスがとても良いのです・・橋蔵さまの色のある声、明るさ、優しさが長次のこのセリフから伝わってきます )
この父娘と長次は上方からずっと一緒のようでした。
♫纒持つ手はだてには振らぬ 負けちゃならない心意気
♪さっとふれふれ纒よ踊れ ・・・
(Youtube
にここまでの歌のところがありますので、下記に動画を掲載しておきます。橋蔵さまの長次の明るい素敵な笑顔をお楽しみください。動画が削除された時はゴメンナサイ )
武蔵屋父娘が江戸の町に入り、もうすぐ家に着くという時、ジャンジャンと半鐘がなり響きます。「火事は何処だ」と民衆がどっと夜空を赤く染めて炎が上がっている方へ。その中に、顔色を変え夢中で走って行く藤兵衛の姿があります。お花が藤兵衛を追いかけます。民衆の中に長次の姿もあります。
先へ行こうとしていた藤兵衛が整理をしている役人に止められます。追いついたお花に「燃えてしまったよ、だいじな油がみんな。折角帰って来たわしの目の前で」と藤兵衛は泣き崩れてしまいます。
人混みをやっと掻き分けて来た長次は夜空の炎に目をやった後、 泣き崩れている武蔵屋藤兵衛とお花の姿に目をとめます。(焼け落ちる油屋の火事を見つめている長次の胸中には、何かしら事件の重大さを感じとっていたのです)
その火の手を眺めながら芸者たちが川開きのようだとはしゃいでいる料亭花菱の屋敷では、油問屋山崎屋茂助、山崎屋の番頭蓑助、同心河津源之介、そして油奉行の塩沢播摩守が揃っています。油奉行塩沢は同心河津に「これから忙しくなるな」と、番頭蓑助は「どうやらこれで江戸の方は全部片付いたようで」と言ったり、大きな企みがあるようです。
ところで、上方から江戸へ入った長次とは何者なのでしょう。油屋が燃えて泣き崩れる武蔵屋を見たときの長次の表情は、ただ者でないような気がします。
武蔵屋の油倉庫の火事騒ぎから数日経った日、火消しの ”
に組 ”
の土間に座っている長次の姿がありました。頭の政五郎と纒持ちの清三がやって来ます。
政五郎「おめえ、どうしても火消しになりてえのかい」
長次「へえ、子供んときから火事が好きで、出来ることなら・・ に組の纒の下で働
きてえと思いまして
」火の粉を浴びて命をはった稼業、そうは簡単にはいかない、と政五郎は言うが、
長次「承知してやすんで、是非ひとつ、へい」
と頭をさげた長次に、喜助が息がって声をかけてきます。
(
ここから星十郎さんの喜助と橋蔵さまの長次のやりとりになります。若さま侍依頼の共演者ですし、江戸っ子弁も堪能なお二人の会話場面は、歯切れがよく気持ちが良いのです
)
喜助「やいやいやいやい、おっ、若えの」
長次「へい、何です、おあにいさん」
喜助「おあにいさんだなんて、いひっひっひっ。・・・やいやいやい、若えの、
おめえそんな、なまっちょろい面しやがって・・火消しってえのはな、何し
ろ体張った仕事なんだぞ」
長次「へっ、・・・ それで
」簡単にあしらわれた喜助は、「覚悟はつけて来たのか」と長次にくってかかるように言います。
長次「 へえ、そいつはもう
」
長次の表情は、喜助の言うことを楽しんでいるようです。 (
喜助さん、からかわれていますよ )
喜助「おつ、口だけじゃいけねえ」と言って片腕脱ぎ、二の腕の彫り物を見せこうした我慢を堪え忍んでやる、男の仲の男がやる仕事だと言うのです。
長次「 あっしもそのつもりで
・・いえ、嘘だと思いなさるんなら」
と言うと、長次は両手を懐に入れ
長次「 この身体に
きいておくんなせい」
といってもろ肌を脱ぐと、 背には見事な竜の入墨
が彫ってありました。に組の若い衆たちはびっくり。
政五郎はちょっと渋っていたが、それを見ていた娘のお夏が長次を気に入っての口添えに負け、「辛抱してやってみるか」「へい、 長次と申しやす
」、長次の ”
に組 ”
入りが決まります。
youtubeより動画「花吹雪鉄火纒」
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