“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2023.08.01
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ローカルで成功するためのヒント その3


梅:いやあ、それはもう沢山ありますね。まずは、皆さん、よく言われますけれども、働く姿勢です。とにかく、僕たち、日本人は、「修行」とか「働く」ということは、苦しいことだとかつらいことだとか、そういう風に捉えがちなのですが、カルミネさんは、「とにかく楽しめ」と仕事を楽しむようにとおっしゃいました。カルミネさんは「ピーンと張り詰めた厨房もいいですけれど、みんなでこう和気あいあいと喋りながら、笑いながら作る料理の方が、絶対に美味しいんだから、そういう雰囲気もお客さんにも伝わるように」とよく言われましたね。あとは、フィレンツェの方ですので、伝統的なフィレンツェの料理とか、そういったことも教えてもらいましたし。 
※カルミネ氏は、正確にはカラブリア出身。
大:郷土料理を色々と作ったということなのですね。
梅:はい。
大:今、ここのレストランは、この『日経レストラン』によりますと、月商650万円と書いているのですが…。
梅:そうですね。大体、650万円とかそれぐらいですかね。
大:やはり、土日が忙しいのですか。
梅:圧倒的に、ディナーは金土日の週末ですね。

梅:ただ、ランチは、平日も満遍なく来ます。
大:今、厨房とかは、何人で回すのですか。
梅:厨房は、今は3人ですね。
大:3人で回すのですね。
梅:今日は2人ですが、週末はいつも3人です。
大:今は、ここの他に、ピッツェリアをやられていて、後はオーベルジュをやられているということですか。
梅:そうですね。オーベルジュの方は委託という形でやっております。
大:そこは任せられる若い子が入っていて料理を作っているのですね。
梅:はい。
大:色々と掘り下げてお伺いしたいと思うのですが、そういう風に『カルミネ』のレストランで働いておられまして、最初、こうやろうと思っていたところが、ちょっと空振りしてしまったところとかはあるのですか。
梅:ありましたね。30歳も近い、20代後半の若造で入りましたので、料理的には、いわゆる新しい料理を常に作りたいと思ってました。例えば、食材の組み合わせも斬新なものにしたり、盛り付けもカッコよく盛り付けたりしたかったのですが、カルミネさんのところでは、あんまりそういうことは求められていませんでした。それよりは、素朴で、食材も、ビックリするぐらい変わった物ではなくても美味しいものは作れるよということで、本当に家庭料理をやるという姿勢でした。最初は、もうちょっとこう尖った料理をやりたいなということがあったのですが、カルミネさんからも、「一回ちゃんと基礎をやった方がいい」ということを懇々と話されました。こんなのわかっているよとか、こんな料理やり方を知っているよとか、もちろんそういう気持ちもあったのですが、実際、それを何年にもわたって作り続けていると、やっぱり、その料理を深く掘り下げるというか、たとえば、ペペロンチーノにしても、ニンニクと、まあシンプルなものなのですが、本当にそれを作り続けていると、水と油とこの混ざり具合の相性とか、本当に1~2℃だと思うのですが、温度の違いでこんなに変わるんだなとか、そういうのを本当に作り続けないとわからないところがよく勉強になったというか、今それが本当にためになっていますね。

梅:やっぱりそうですね。おっしゃる通り、かなり最初は、「新しい料理、新しい料理」という気持ちでやっておりました。ある時から、イタリアンと言えば、カルボナーラのように方向転換して普通のシンプルなイタリアンにしました。そういう料理を提供するようになってから、お客さんが幅広く支持してくれるようになり、客数が増えました。
大:沼津のような地方都市だと、地元の人がイタリア料理自体があんまり食べないから、カルボナーラのようなわかりやすい料理が支持されるということになるですね。
梅:そうですね。
大:それは、どれぐらいで気が付いたいのですか。やってすぐわかったのですか。
梅:オープンして半年ぐらいで、「これはおかしいな。お客さんが、四谷の荒木町の時は、受けていた料理が、こっちでは受けない。おかしいな」というのがあって、では、試しにと思って、パスタのラインナップを全部定番のものをバーッと並べたのです。そしたら、お客さんが、「私の好きなのがある」とか、「これを食べてみたかった」だとか、反応が良かった。まあ、「こういうことなんだろうな」というのがありましたね。

梅:はい。
大:ちなみに、その荒木町の時に、お客様に受けていた料理というのは、どんな料理だったのですか。
梅:そうですね、現在、『スオーロ』でもやっておりますが、料理にフルーツを合わせるというのは、荒木町の時でもずっと前からやっておりまして、それが本当に荒木町の時に、コースで一品何かを入れるとかやっていたんですがね。皆さん、ちょっと受けなかったですよね。
大:ちょっと食べつけている人ではないと、逆にひねりすぎちゃっている感じになるのですね。
梅:そうですね。たとえば、簡単なのですが、イチジクとゴルゴンゾーラのリゾットをやったりすると、普通に皆さんは、「イチジクは要らないよ」と、「ゴルゴンゾーラだけで食べたかった」とか、「胡椒をちょっとやるだけでいいよ」とか、そういうのが多いですよね。
大:今は、そのきっかけになったのは、これはカルミネさんのアドバイスなのですか。喜ばれる料理を出すのは。
梅:はい、そうですね。カルミネさんに、「自分が作りたいものを作るのではなくて、お客さんに求められるものを作りなさい。僕たちの仕事は、お客さんに喜ばれることなので、喜ばれないものを作っても、つまらないでしょ、苦しいだけでしょ」と長電話でアドバイスされました。自分でもそうだなと思いました。
大:最初の頃の出だしは、今のような売上げが行かなかったわけですね。
梅:全然行かなかったです。月で言えば、150万円とか。落ち込んだ時は、それぐらいでしたね。
大:最初、オープン景気もあり、もの珍しさがお客様が入ってきて、その後、落ち込んでいってしまったわけですね。
梅:そうですね。やっぱり新規オープンの店はバーッと入っちゃうのですが、「やっぱり違うぞ、ここは」と、サーっと引いていって、半年ぐらいで、「お客さんが本当に来ないね、来ないね」っていう感じでしたね。
大:そこから、メニューを切り替えて盛り返すにはどれぐらいの期間がかかったのですか。
梅:実はメニューを変えるにあたり、自分の中で結構葛藤がありました。ガラッと変えられたらというわけではなかったので、まあ、でも、本当に順調で、「行ける!」という風になったのは2年目ぐらいを過ぎてからですかね。
大:たしか、こちらのオープンは2008年の9月ということですが、ちょうど2010年ぐらいですかね。
梅:そうですね。ちょうど、それぐらいですね。段々、ランチが入るようになってきて、最初は週末からだったのですよ。「なんで、こんなに入るのだろうな?」と。平日も入りまして、週末はロビーの上にウェイティングしている人も出来るようになりまして、今は週末だと、席が埋まらないといったことはほとんどないですね。電話でお待ちのお客様もバーッと出来るようになりました。

2016年12月会報四方よし通信より


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Last updated  2023.08.16 14:47:55


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