考えてみれば、プール戦を勝ち抜いた場合の相手が、ニュージーランドか南アフリカというのは、最悪の組み合わせだった。同じプールにこの二国が入っているという組み分けがそもそもとんでもないということになる。現状ではこの二国が決勝に進みそうだし、出場全チームの中で、頭一つも二つ抜けている感じである。イングランドもオーストラリアに勝っていたけど、今回のオーストラリアは、ニュージーランドに完敗したアイルランドと比べてもはるかに出来が悪そうだったからなあ。
それでも、日本代表が、まだ疲れのたまっていなかったプール戦の二試合目(一試合目は緊張しすぎて大変そうだから)に南アフリカと当たっていたら、南アフリカの状態も上がり切っていなかっただろうし、もう少し勝負になっていたのではないかとか、ニュージーランドと万全の状態であたるのを見たかったとか、あれこれ考えてしまう。前回のワールドカップでは南アフリカに勝って、全部で3勝もしただけで十分という感じだったけど、今回は組み合わせ次第ではもう少し上まで行けたんじゃないかなんて思うから、本当に強くなったなあ。
ここまで強くなった選手たちの努力には、特に要領よく世の中を渡っていくのが勝ち的な風潮の強くなっている現在においては、賞賛の言葉しかない。同時に、選手たちがここまで頑張れたのは、サッカーでも野球でもなく、ラグビーというスポーツだったからなのだろうとも思う。見るものを引きずり込むようなこのスポーツの持つ魔力は、実際にプレーする選手たちにも作用しているに違いない。何でもかんでもラグビーは素晴らしい的にまとめてしまう現在のマスコミの報道にはどうかとも思うけどさ。
多くの競技で、日本代表よりもチェコ代表を応援することが多くなった人間でありながら、ラグビーだけは日本代表(昔はジャパンと呼んでいたんだけどあちこちで連発されて言いたくなくなった)を応援し続けているのは個人的な思い入れがあるからだ。出身校が県内ではラグビーの強いところで、中学時代の先輩や同輩、後輩が花園を目指して頑張っていたのを目の前で見て応援してきた。
気に入らなかったのは、「スクール・ウォーズ」で火がついたラグビー人気が、80年代の終わりには、なぜか大学ラグビー、しかも関東のリーグ戦ではなく対抗戦グループに飛び火して、早稲田や明治のラグビーがマスコミによってちやほやされたことだった。これは、日本のラグビーにとってはマイナスで、その後ラグビー人気が冷え込み、なかなか上がってこなかった原因の一つになっている。
どう見てもリーグ戦側のチームや関西の同志社あたりのほうが強いのに、早稲田、明治がスポーツマスコミに大々的に取り上げられ、勝ち目なんてないのに日本選手権でも大学のほうに光が当たっていた。大学選手権あたりだと結構微妙な判定で早明が勝ち上がるなんてこともままあったし、それを批判するのはタブーになっていたしで、はたから見ていても最悪だったのだ。
90年代の初めに伝手があって、大学選手権の明治−法政の試合を見に行ったことがある。試合前の予想では圧倒的に明治だったけど、試合が始まったら明らかに法政のほうが上で、かなりの差をつけて勝ったんじゃなかったか。当時のラグビーの報道なんてそんなもんだったのだ。早稲田と明治にちょっと慶応とそれ以外というね。日本にスポーツ雑誌というものを定着させた「ナンバー」ですら大差なかったからなあ。
そんな早明中心のラグビーに関西の同志社、神戸製鋼で風穴を開けて、日本最強のチームを作り上げたのが平尾選手だったのだけど、ワールドカップでは、その平尾選手でも、後には平尾監督でも、協会の意向を受けてだろうけど、大会前に大言壮語していた平尾率いる日本代表でも、勝てなかったのだ。それが、80年代からラグビーを見続けて密かに応援していた人間が、日本代表の試合の結果さえ気にできなくなった理由である。だから、あの絶望を乗り越えて、ラグビーを応援し続けてきたファンの熱意にも頭が下がる。
この二大会の選手たちの頑張りを見てしまった以上は、これから日本代表の成績が低迷しても、チェコ代表が強くなってきても、ずっと日本代表を応援することになりそうだ。今回以上の成績を収めるために、まだまだ大変ないばらの道が続くのだろうけど、サッカーのワールドカップで、チェコ代表か日本代表が優勝するのよりは、ラグビーの日本代表が優勝するほうが想像できる気がする。いや、優勝を期待したくなるという方が正しいか。
次のワールドカップはヨーロッパのフランスだというから、今回以上にたくさんの試合が見られることを期待したい。今回日本の試合をテレビで見られたのは2試合しかなかったし。
2019年10月21日17時。
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