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2017年05月31日
エーポイシュチェニー・リガ最終節(五月廿八日)
土曜日の午後5時からいっせいに開始された最終節の結果を受けて、今年のチェコサッカー一部リーグの優勝はスラビア・プラハが獲得した。チェコリーグでは8年ぶり4回目の優勝だという。これでスパルタ以外のチームの優勝回数で、最多のプルゼニュと並んだ。
試合は、前節でプルゼニュを最後まで苦しめたブルノを相手に、4−0の圧勝。スラビアに移籍してきて以来まったく活躍できていなかった前プルゼニュのテツルが2ゴールの大活躍だった。こいつとカルビナーにいるワーグネルの二人も代表に呼ばれたことがあるんだけどねえ。完全に期待はずれに終わっている。
スラビアは前回の優勝時は、2007/08年、2008/09年と二連覇を果たしているけれども、同時に拡大路線に走ったため2009年から深刻な財政危機に陥り、中国資本に身売りする原因ともなっている。中国の投資会社がオーナーを務めている間は、多少の赤字は補填してもらえるのかな。中国の資本の走狗と化した元防衛大臣のトブルディークに期待するしかない。
これまで三回の優勝のうち、チャンピオンズリーグ本戦出場につながったのは2007/08の優勝だけである。2008/09年のシーズンに優勝した後の予選では、三次予選でモルドバのシェリフ・ティラスポリに二試合とも引き分けだったけれども、アウェーゴールの差で敗退している。今年は何とか本戦まで進んでほしいものである。
二位のプルゼニュはイフラバの選手のオウンゴール二発のおかげで、順当に勝利。スラビアが勝ってしまったために逆転優勝はできなかった。コラーシュ、ライトラルをトルコに放出してまで獲得した選手が、秋に取った選手も、春に取った選手もあまり活躍できなかったのが一番の問題だっただろうか。
春に移籍してきたイバンシッツとか、出ているときにはそんなに悪くなかったのだけど、不思議なほどベンチに座っていることが多かった。イタリアのサンプドリアからレンタルで獲得したスロバキア人のフロマダも、最後はユースチームで試合に出ていたというし、新加入の選手で一番目立っていたのが、髪の毛をピンクにした出戻りのゼマンだったという時点で、補強の失敗、もしくは補強した選手をうまく使えなかったということは否めない。
すでに補強を進めていて、ブルノからフォワードのジェズニーチェクを取るという話もあるようだけど、こいつクルメンチークと同じようなタイプなんだよなあ。ブルバ時代のプルゼニュが強かったころは、中盤の選手が点を取ることが多くて、典型的な点取り屋のセンターフォワードは使っていなかったような気がするのだけど。ブルバの高僧にあっているのかなあ。
三位のスパルタは、ウヘルスケー・フラディシュテに出かけてスロバーツコとの試合。後半先制したものの、そのあとすぐに同点に追いつかれて、そのまま引き分け。見てはないけれども、しょうもない試合だったに違いない。
衝撃はそれよりも試合後に起こった。この試合で途中出場したU21代表のチェルマークが、試合後プラハ郊外で交通事故を起こしたのである。幸い所謂自爆事故で他の車や通行人に害を与えることはなかったようだが、 写真 を見る限りかなりの大事故で、炎上する車の中から消防士によって救出されたというから、命を失わなかったのは幸運でしかない。
肋骨の骨折でU21のヨーロッパ選手権には出場できそうもないというが、飲酒運転の果ての事故なので、怪我がなくても出場させるべきではないと考えるのは日本人だけだろうか。ヨーロッパの社会って、妙なところで厳しく、妙なところで甘いから、せいぜい罰金取られるぐらいで放免ということになりかねないのだけど。その妙な規準で日本のことを批判されても、けっと鼻で笑うのが全うな対応である。日本人でも真に受けちゃう人もいるからなあ。とまれ、この事故が、今シーズンのスパルタのていたらくを象徴しているとは言えそうだ。
四位争いは、ボレスラフに軍配が上がった。最終節の試合自体は、これまでいいところがほとんどなかったバロシュに2点献上するなど、リベレツにコテンパンにされて、0−4で負けたのだけど、テプリツェも付き合って負けてくれたのだ。
ヨーロッパリーグに向けて勝つしかなかったテプリツェは、0−0で迎えた試合終盤に守備を半ば捨てて攻撃に集中したようなのだが、終了間際にカウンターから失点してあえなく敗戦。長年チームの主力として活躍してきたバホウシェクの現役最後の試合を白星で飾ることができなかった。去年は十二位で、秋も低迷していたことを考えると、五位は悪くない結果だろう。
六位のズリーンは、降格が決定しているプシーブラムに2−0で勝ってシーズンを終えた。春は低迷してこの順位だし、モル・カップにも優勝したから、過去最高のシーズンだったと言えそうだ。ただし、中心選手がごっそり移籍することになりそうである。すでにユガスがスラビア、ブカディノビチがスパルタに行くのではないかという話が出ている。
二部に話を移すと、オロモウツとともに一部に昇格するチームはバニーク・オストラバに決まった。ビートコビツェ(オストラバのモラビア側の地区)のスタジアムで、ズノイモに3−0で圧勝したのである。テレビで放送されたのでところどころ見ていたのだけど、ズノイモがもう少し抵抗してくれるのを期待していたのだけど、あっさり負けてしまった。一部に上がる前に、毎回のように発炎筒や爆竹を持ち込むファンたちを何とかしてほしいものである。
昇格を争うオパバは、オロモウツでの試合だと思っていたら、オパバでの試合だった。こちらも昇格のためには勝つしかないオパバが、昇格と優勝を決めているオロモウツを圧倒して2−0で勝利。昇格はできなかったけれども、引退するズデニェク・ポスピェフの最後の試合を勝利で飾った。
ポスピェフはオストラバ、スパルタで活躍し代表に選出するようになり、デンマークとドイツのチームでプレーしたあと、家庭の事情で地元のオパバに戻ってきていたのだ。今シーズンは怪我であまり出場できていなかったが、最終戦には間に合わせてきた。終了間際に攻めあがって惜しいシュートが入っていれば大団円だったのだろうけど、オロモウツの選手にブロックされてしまった。ちょっと残念。
二部から降格する二チームは、断然最下位のプロスチェヨフと、最終節でビートコビツェに逆転されたフリーデク・ミーステクに決まった。どちらもモラビアのチームである。三部リーグは、ボヘミアとモラビアに分かれて開催されているので、モラビアのチームが二つ上がってくるということはなかろう。ということは、来季は一部のモラビアチームは増えるけれども、二部は大きく減るということになるのか。
5月29日23時。
2017年05月30日
ターボルTábor(五月廿七日)
さて、先日書き損ねたターボルである。チェコ語には二つのターボルがある。簡単に言えば、固有名詞としてのターボルと、普通名詞としてのターボルである。普通名詞のほうは、現在ではキャンプという意味で使われているが、固有名詞、つまり地名から生まれた言葉だと考えられている。
地名としてのターボルは、プラハからチェスケー・ブデヨビツェに向かう鉄道や幹線道路が南ボヘミア地方に入ってすぐのところに現れる。ブルタバ川沿いでもあると思い込んでいたのだが、ターボルの近くを流れているのは、支流のルジュニツェ側だった。ブルタバ川は、この辺りで西にふくらんで北流し、幹線道路は東にふくらんでいる。川沿いに山の中を抜ける昔の隊商路をもとに鉄道が敷設されたというわけではなかったようだ。
イギリスのウィクリフの影響を受けて、聖職の売買や免罪符の販売を強く批判したチェコの宗教改革者ヤン・フスが、コンスタンツ(チェコ語だとコストニツェ)の宗教会議で騙し討ちのように火刑に処されたのは、1415年7月6日のことだった。遺骸はフスの支持者たちに取り戻されることがないように、コンスタンツの町を流れるライン川にまかれたと言われている。
フスの死後に、フスの支持者たちが立ち上がって、教会と皇帝に対する反乱を起こした際に、軍事拠点の一つとなったのが、現在のターボルである。南ボヘミアの小高い丘の上に、最初は一時的に設けられた軍事拠点がターボルと名付けられたことから、行軍中の軍隊の陣営をターボルというようになり、やがてキャンプの意味でも使われるようになったということのようだ。
では、ターボルという名前が選ばれた理由はというと、それは『聖書』に出てくる「タボル山」である。異端派と認定され十字軍の派遣を受けたとはいえ、フス派もやはりキリスト教だったのだ。最近使っていないジャパンナレッジから一部引用すると、
イスラエルのナザレの南東約10kmの平原にある山。標高588m。旧約聖書によると,前1200年ころ女士師デボラDeborahに率いられたイスラエル諸部族がこの山に陣をしいてカナン軍の戦車隊と戦い勝利を博したとされる(《士師記》4,5)。
"タボル[山]", 世界大百科事典, JapanKnowledge, http://japanknowledge.com, (参照 2017-05-27)
ということで、勝利を収めた縁起のいい山ということからの命名だったのだろうか。隻眼の英雄ヤン・ジシカに率いられたフス派の軍隊は、新兵器の開発などもあって、ボヘミアに押し寄せたカトリックの軍隊を打ち破るのである。
ターボルは、フス派の中でも急進的な強硬派の拠点となったのだが、穏健派との対立でフス派内部での闘争も激しかったようである。その辺の事情は、『プラハの異端者たち』に詳しい。この本を読んだときの感想の一つが、ターボル派が突然消えてしまうというものだった。穏健派の中でも、強硬派の中でも内部分裂が起こって日本語で読んでもわけがわからなくなるのが、フス派の抗争の歴史なのである。
共産主義の時代には、フス派の戦いは、貧しい農民階級や市民階級が貴族に抵抗するために立ち上がった正義の戦いだった的なプロパガンダが主流だったようだが、現在ではフス派の負の側面についても語られるようになっている。それは、戦争で荒廃したボヘミアから他の領邦へ略奪のための遠征が行われていたという事実である。宗教的には、異端派として認定されて弱者の立場にあったフス派が、軍事的には強者の立場にあったというねじれが生んだ現象で、フス派の戦いがすべて信仰のためのものではなかったのである。
さて、ターボルの街であるけれども、出かけたのは始めてチェコにやってきたかれこれ20年以上も前のこと、正直あまり記憶がない。あの時は、プラハに入ってまずプルゼニュ、ヘプなんかの西ボヘミアを回ってプラハに戻り、南ホヘミアのチェスケー・ブデヨビツェに向かう途中で電車を降りてターボルに滞在したのだった。
せっかくなのでと、二、三日いたのだけど、何をしていたのだろう。旧市街自体はそれほど大きくないし、現在ほど見るべきものも多くなかったはずである。旧市街の地下にフス派の人々が掘ったという地下道も、まだ一般公開されていなかったし。クラシックの小さなコンサートを聴きに行ったかな。
観光案内所みたいなところで宿を紹介してもらおうとしたら、英語も全くできないお姉ちゃんが出てきて、こっちは片言の英語、向こうは多分片言のドイツ語で会話をしたのがターボルだったか。言葉よりも、身振り手振りのほうが役に立っていたような気もする。それでホテルではなくて、一般の人が小銭稼ぎに、自宅を改装して旅行者に提供していたペンションもどきを紹介されたのだった。
意外に居心地のいい宿で、値段もホテルよりもずっと安かったこともあって、以後、あちこちの街でこの手の宿を探すことになる。これが上にも書いたが今から廿年以上も前のことで、あのときはビザを延長して三ヶ月ほどチェコ国内をふらふらしたのだった。
5月27日23時。
えっ、何でこんな高いの? 5月29日追記。
プラハの異端者たち—中世チェコのフス派にみる宗教改革 (叢書 歴史学への招待)
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フス派の思想面についてはこちらにあるはず。
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2017年05月29日
サッカー代表発表(五月廿六日)
六月に行なわれるワールドカップ予選のノルウェーとの試合に向けて、チェコ代表に招集される選手たちが昨日発表された。ねたも不足気味なので、とりあえず紹介しておく。
GK
Tomáš Vaclík(トマーシュ・バツリーク、バーゼル、13/0)
Tomáš Koubek(トマーシュ・コウベク、スパルタ、5/0)
Ji?í Pavlenka(イジー・パブレンカ、スラビア、1/0)
ここはまあ予想通りのメンバー。ただ、コウベクは最近スパルタの試合を欠場していたので、怪我が心配。経験不足のパブレンカもいるけれども、バツリークがいればそれでOKということなのだろう。そのバツリークは、スイスでリーグとカップ戦の両方で優勝したらしい。ということでこの夏は、ステップアップの移籍を狙っているという噂。バーゼルももう長いからね。
DF
Theodor Gebre Selassie(テオドル・ゲブレセラシエ、ブレーメン、41/2)
Pavel Kade?ábek(パベル・カデジャーベク、ホッフェンハイム、26/2)
Jakub Brabec(ヤクプ・ブラベツ、ヘント、5/0)
Tomáš Sivok(トマーシュ・シボク、ブルザスポル、63/5)
Marek Suchý(マレク・スヒー、バーゼル、32/1)
Tomáš Kalas(トマーシュ・カラス、フラム、6/0)
Filip Novák (フィリップ・ノバーク、Midtjylland、 8/0)
ノバークのチームは読めないので、アルファベットのまま。以前調べた記憶はあるけど、正しいかどうか自信がない。
順当過ぎて面白くないと文句を付けたくなるメンバーである。大事な試合だけにベテランに頼りたいのだろう。どうせシボクを使うんだろうなあ。カラスとブラベツのコンビで来たら、ヤロリームを見直すことにしよう。ポコルニーとかチェルーストカなんかを呼んでもいいと思うんだけど、
MF
Tomáš Sou?ek(トマーシュ・ソウチェク、リベレツ、1/0)
Bo?ek Do?kal(ボジェク・ドチカル、Che-nan ?ien-jie,、31/6)
Tomáš Ho?ava(トマーシュ・ホジャバ、プルゼニュ、9/3)
Vladimír Darida(ブラディミール・ダリダ、ヘルタ・ベルリン、 43/3)
Jakub Jankto(ヤクプ・ヤンクト、ウディネーゼ、2/1)
Antonín Barák(アントニーン・バラーク、スラビア、 3/3)
Jaromír Zmrhal(ヤロミール・ズムルハル、スラビア、5/1)
Josef Šural(ヨゼフ・シュラル、スパルタ、15/1)
Ladislav Krej?í(ラディスラフ・クレイチー、ボローニャ、33/5)
スラビアからリベレツにレンタル中のソウチェクが呼ばれたのと、怪我から復帰したばかりの印象があるシュラル、中国の名前が読めないチームで沈没中のドチカルが呼ばれたのがちょっと驚き。他は特に驚きはない。
U21代表から、夏のイタリア移籍が決まっているバラークと、イタリアで活躍中のヤンクトが呼ばれているのは素晴らしい。さすが、ヤロリーム。
FW
Patrik Schick(パトリック・シク、サンプドリア、3/1)
Michael Krmen?ík(ミハエル・クルメンチーク、プルゼニュ、 4/3)
Milan Škoda(ミラン・シュコダ、スラビア、17/4)
ここはもう、イタリアで予想を大幅に上回る活躍を一年目から見せているシクに期待するしかない。クルメンチークは春のシーズンは大きく調子を落としているし、シュコダも怪我などもあって万全ではない。それにチェコリーグの優勝争いで精神的に疲れていそうだから……。優勝したほうのチームの選手を使うというのはありかもしれない。
シクは去年の今頃は、出場機会の少なかったスパルタからリーグ下位のボヘミアンズにレンタルされていて活躍はしていたけれども、所詮チェコリーグだからイタリアですぐに活躍できるとは思っていなかった。それがそれが、ネドビェドのいるユベントス移籍で合意したという話もある。移籍金の額もすごいことになっていて、スパルタにも5000万コルナぐらい入ってくるのだとか。
このシクが代表に定着して攻撃の柱になって活躍してくれるといいなあ。チェコ代表の問題はコレル以後、中心となる信頼できるフォワードの選手を見つけられていないことにあるのだから。候補だけはたくさんいたんだけどねえ。ネツィット、コザークあたりが怪我なく選手生活を続けていたらと考えると、大怪我だけはしないように願わずにはいられない。
ヤンクト、シク、バラークとA代表にも呼ばれて十分に戦力になっている選手たちが中心になる今年のU21ヨーロッパ選手権のチェコ代表は期待してもいいかもしれない。二年前の代表も悪くなかったけど、決め手にかけたんだよなあ。
代役候補となる選手名も挙がっている。オンドジェイ・チェルーストカ、ルカーシュ・ポコルニー、アダム・フロウシェク、マルティン・フィロ、ヨゼフ・フシュバウエル、ペトル・マレシュ、ダビット・パベルカ、バーツラフ・ピラシュ、イジー・スカラーク、ヤン・シーコラ、トマーシュ・プシクリルという面々。
こちらもあんまり目新しい名前はない。将来的には、ピラシュに戻ってきてほしいけど、大怪我から二年ぶりに復帰したばかりだからなあ。あとはオロモウツ育ちのプシクリルに期待か。カラス、ホジャバといっしょで今頃は代表の中心選手になっているはずだったんだけど。
チェコ語が読める方は、こちらにもう少しまともな情報があるはずなのでどうぞ。
http://isport.blesk.cz/clanek/fotbal-reprezentace-kvalifikace-ms-2018/303938/jarolim-vybral-tym-na-nory-pojedou-mladici-vcetne-schicka-dorazi-i-dockal.html
5月27日10時。
2017年05月28日
エーポイシュチェニー・リガ最終節の前に(五月廿五日)
去年の七月に始まったサッカーのリーグもいよいよ今週末で終了である。チェコでは一部リーグの試合は、金曜日から日曜日の三日に分散して開催され(場合によっては月曜日も)、毎日一試合はテレビで放送されるのだが、最後の二節だけは、同じ日、同じ時間に開催されることになっている。よその会場の結果を見て試合結果を操作するなんてことができないようになのだろう。年によっては、最後の二節の前に優勝も、降格も決まってしまっていることがあるけれども、今年は優勝争いが最終節までもつれ込んだ。
ここまでの状況を簡単に整理しておくと、チェコサッカーの一部リーグは全部で16チーム、計30節で優勝を争う。先週末の29節で、プシーブラムが、イフラバと引き分け、15位のフラデツ・クラーロベーがスパルタに負けたために、この2チームの降格が決定した。フラデツの勝ち点は24で、イフラバが27だから、最終節に追いつく可能性はあるのだが、直接対決でイフラバの方が成績がいいのでこの時点で決定である。
優勝争いも29節で決定する可能性があった。スラビアが勝ち点63、プルゼニュが61で、差は2、直接対決ではスラビアが上なので、スラビアが勝って、プルゼニュが引き分け以下ならスラビアのほぼ十年ぶりの優勝が決まるところだったのだが、ブルノでの試合で、後半終了間際にクルメンチークのゴールが決まって1-0でプルゼニュが勝ったために、優勝争いが最終節まで持ち越されたのである。スラビアもムラダー・ボレスラフでの試合で2−1で勝ったものの、試合終盤は同点に追いつかれかねないシーンがあったようだ。
シーズン終了が近づくにつれて、久しぶりの優勝争いで経験者のほとんどいないスラビアは、以前の好調時の強さが影を潜めてしまっている。プルゼニュも春のシーズンは全く調子が上がらず、ぎりぎりで勝ったり、引き分けに持ち込んだりで、優勝争いから脱落しないのがやっとの状態である。チェコのスポーツ紙など、どちらも優勝したがっていないようだなんてことを書いている。
とはいえ、どちらかが優勝しなければいけないのである。条件は、プルゼニュは勝利以外になく、スラビアは引き分け以上で優勝が決まる。プルゼニュが勝てなかった場合にはスラビアの優勝である。状況はスラビア有利なのだけど、どうなるだろうか。
ところで、最終節のスラビア−ブルノの試合は、スラビアがホームなのに、エデンのスタジアムでは行なわれないのである。何でも誰ぞのコンサートが行なわれるために、サッカーには使えないらしい。さすが中華スラビアというべきなのか、中国企業に買収される前の決定なのか、わからないけれども、去年の時点では、今年の最終節に優勝争いをしているとは予想できなかったのだろう。そのため、会場は以前使っていたストラホフの陸上競技場である。バニアク様の神業でアヤックスを粉砕してチャンピオンズリーグ進出を決めた会場という意味では縁起はいいのだけど……。
プルゼニュはホームでイフラバとの試合。イフラバは前節に残留を決めてほっとしたところだから、プルゼニュにとってはありがたい相手だといえそうである。これがプルゼニュにもまだチャンスがあるという根拠になる。
3位はスパルタで確定。このシーズンは監督交代で味噌をつけた感がある。秋の英雄ホロウベクのままで行けばよかったのに、代役がよりによってラダだもんな。来季の監督としては、イタリア人のストラマッチョーニ監督を招聘することが決まっている。インテルやウディネーゼでの監督経験があるというので、結構大物なのかな。
ヨーロッパリーグ予選の出場権がかかる4位争いも2チームに可能性が残っている。現在リーグで最も調子のいいテプリツェが、ムラダー・ボレスラフとの差を勝ち点1にまでつめているのだ。テプリツェの相手はドゥクラ・プラハ、ボレスラフはリベレツでの試合である。秋は病人怪我人でぼろぼろだったリベレツが最近調子を挙げているように見えることを考えると、テプリツェが有利かなあ。
ボレスラフはヨーロッパリーグに出ても、どうせ予選を勝ち抜けないから、テプリツェが4位に入ってくれた方が、期待が持てる気がする。ボレスラフと、ヤブロネツは予選を勝ち抜く姿が想像できない。
6位は春に入ってどん底のズリーンだが、オロモウツで行なわれたモル・カップの決勝でオパバを破って優勝を決めている。しかも、ヨーロッパリーグの決勝で、マンチェスターのUがつくほうのチームが優勝して、チャンピオンズリーグ出場を決めてくれたおかげで、予選なしてヨーロッパリーグの本戦に出場することが決まった。
ズリーンのGMを務める元代表のグリゲラとしては、ヨーロッパカップの決勝でかつてプレーしたアヤックスを応援するか、マンチェスターを応援するか複雑だっただろう。本戦出場が決まったおかげで、7000万コルナほどクラブに入ってくるようなので、予算倍増に近いらしい。問題は春の不調を立て直せなかった監督をどうするかになる。噂では二部のズノイモから、ラディム・クチェラをつれてくるとも言うのだけど、グリゲラ本人がやるって手はないのかね。
7位のドゥクラ以下は、特筆することはない。この期に及んで順位が一つ二つ上下したところで、シーズンの評価は変わらないだろうし。個人的には10位にまで落ちてきたカルビナーに勝って順位を上げてほしいと思うけれども、昇格したばかりのシーズンであることとチームの規模を考えたら、残留を果たしただけでも御の字である。
二部から昇格してくるチームは、一つはオロモウツで決まり。もう一つの座をバニーク・オストラバとオパバのシレジアの二チームが争うことになる。二部の最終説は日曜日の開催である。バニークはホームでズノイモと、オパバはこの前、モル・カップの決勝でオロモウツに来たばかりオロモウツにやってくる。
勝ち点差は1だけど、直接対決ではバニークの方が上なので、オパバは絶対に勝たなければならない。オパバのファンがオロモウツで暴れないことを祈っておこう。最近はコンサートなどの入場の際には、飛行機搭乗のときとあまり変わらないような荷物検査が行なわれている。サッカーにも導入することを検討してほしい。スタジアムで発煙筒がたかれ、爆竹がグラウンドに投げ込まれて試合が中断するのは、もう見たくない。
ライトラル、ビストロニュがプレーしたことを考えると、バニークの昇格が望まれるのだろうけど、ファンの愚行のひどさを考えると、オパバを応援したくもなる。
一部リークの優勝は、とりあえずどっちでもいいや。来季はプルゼニュにブルバ監督が帰ってくるので、スパルタのイタリア人監督ともどもお手並み拝見というところである。
5月26日22時。
2017年05月27日
ゼマン大統領暴れる、再(五月廿四日)
ソボトカ内閣のバビシュ財務大臣の解任を巡る問題で物議を醸す言動を繰り返していたゼマン大統領が、ようやく本日バビシュ氏を解任し、ピルニー氏を任命した。その儀式に際して、バビシュ氏の功績を絶賛し、チェコでは成功者はねたまれ足を引っ張られる運命にあるのだとか何とか、首相に対する当てこすりをしていたのは、大統領の面目躍如といったところか。
首相の社会民主党では、来年の大統領選挙に向けて、独自候補を擁立することを考えているらしいが、地方組織を中心にゼマン親派が根強く残っていることを考えると、擁立はできても当選させるのは難しいだろう。上位二位が進む決選投票にコマを進められるかどうかも怪しいものである。
特に、現在社会民主党の中央の指導部が、秋の下院の選挙を前に、清廉潔白な政党であることを強調しようとして、候補者リストからバビシュ的なところのある候補者を排除する決定を下したことで、地方組織の反発が高まっている。バビシュ的、つまりは金銭的なスキャンダルが表ざたになっている政治家というのは、大抵は地方のボス政治家なので、地方組織全体が反指導部になりかねない。
かつて社会民主党としのぎを削った市民民主党は、創設者のクラウス氏が去った後、地方のボスたちの跳梁を許し中央で制御できなくなったことが原因となって党勢を凋落させた。社会民主党も、このまま行くと、地方組織の反乱で瓦解の可能性がなくはない。スキャンダルで知事を辞任したボスを候補者リストから外すように求められた南ボヘミアの組織では、候補者リストの提出を取りやめることさえ検討しているというのだから。
さて、暴れる大統領に話を戻そう。大統領は、帰国当初から囚人のカイーネク氏に恩赦を与えると発言していたのだが、財務大臣の件を処理するのと前後して恩赦の書類にサインをしてしまった。それで、カイーネク氏は収監されていた刑務所から釈放された。まるで、財務大臣の解任、任命よりもこちらのほうが大切だと言わんばかりである。
カイーネク氏は、一箇所の刑務所に長期間収監されていたわけではなく、一定の間隔を置いてチェコ中の刑務所を転々としていたらしい。それは、オロモウツ地方にある最も脱走が難しいといわれていたミーロフという山の中のお城を改築した刑務所から脱走を果たしたという実績があるためで、同じ場所に長期間収監し続けると、また脱走の方法を見つけ出すのではないかと警戒されたらしい。
因みに、カイーネク氏については、ハベル大統領も恩赦を与えることを検討したことがあるようだ。事件が起こったのが、確か九十年代の初めのことで、当時は様々な面で混乱があり、警察も多分にもれずで、カイーネク氏の事件についても捜査上、手続き上の不備が指摘されている。それが、そのまま冤罪につながるわけではないだろうが、疑われる余地が残ってしまったのは確かなことのようだ。
そして、これは中国にいた頃の話になるのだけど、ロシアのプーチン大統領との会談で暴言を吐いてしまった。気持ちはわからなくはない。バビシュ氏の解任を巡る問題で、あれこれ付きまとわれて質問されてウンザリしていたところに、チェコから遠く離れた中国にいることで開放感を感じてしまったのだろう。おまけに相手が同じような問題でウンザリしているはずのプーチン大統領だったから、つい口が滑ってしまったというところか。
ゼマン大統領、プーチン大統領に、「記者という奴らが多すぎると思いませんか」と声をかけたらしい。ここでやめておけば、不穏な香もしなくはないけれども、特に大きな問題にはならなかったはずだ。それなのに、ゼマン大統領、続けてしまったのだ。
「(多すぎる記者は)処分する必要がありますよね」とかなんとか。
さすがこいつはまずかった。記事を書くのも、ニュースを作成するのも記者である。こんなことを言われたら反発しないはずがない。言論の自由とか報道の自由とか、そんな話まで持ち出してゼマン大統領を、民主国家の大統領失格だと批判していた。
この件に対して、ゼマン大統領自身の反論は聞こえてこないのだが、大統領府の広報官オフチャーチェク氏が例によって大統領の主張を代弁した。それによるとあれは単なる冗談だったのだという。
ちょっと待てである。冗談を言われた側のプーチン大統領の気持ちを想像してみよう。欧米を中心にロシア国内で反対派を弾圧していると批判されている人物である。弾圧されて命を失ったとされる犠牲者の中には新聞記者もいる。
言う人によっては、冗談ではなく皮肉、当てこすりの類だと思われかねない。幸いにして、もしくは不幸にも、ゼマン大統領はヨーロッパの中でも親露派として知られる人物で、プーチン大統領とは個人的な関係も悪くなく、皮肉だと理解してチェコに対して抗議をするなんて騒ぎにはならなかったけど、冗談として受け取ってもらえたのだろうか。本音だと思われているような気がしてならないのである。どっちにしてもプーチン大統領も反応に困ったことだろう。
ゼマン大統領の発言を、単に失言として片付けるのは危険である。日本もそうだと思うが、インターネットの存在もあって既存の大手のマスコミに対する信頼性は、地にとまでは行かないが、かなり落ちている。それにもかかわらず、自分たちこそが社会の代弁者であり、何かの権力でも持つかのように振舞うマスコミ関係者は多い。それに嫌悪感を感じている人たちの中には、ゼマン大統領の発言に共感してしまう人もいるのではないかと想像してしまうのである。
5月25日23時。
2017年05月26日
安倍総理大臣の日本語、もしくは不毛すぎる国会(五月廿三日)
愛読しているジャパンナレッジの連載「 日本語、どうでしょう? 」にアクセスしたら、「そもそも」という言葉がテーマになっており、その理由が安倍総理大臣の国会での答弁だった。「そもそも」に「基本的に」という意味があるといったというのだけど、国会というのはそんなことを話し合う場だったのか。最近、チェコの国会でバビシュ財相が嘘をついたかどうかについて審議が行われて、嘘をついたという議決がなされたというニュースを聞いて、あまりの不毛さに耳を疑ったことがある。日本の国会も負けてねえなあ。
そもそも何でこんな話になったのか、確認してみた。検索したら四月十九日付けの朝日新聞の記事が出てきたので、ちょっと引用する。引用元は ここ 。
議論になったのは、過去3回廃案になった共謀罪法案より適用対象を厳しくしたと訴える首相が、「今回は『そもそも』犯罪を犯すことを目的としている集団でなければならない。これが(過去の法案と)全然違う」と述べた1月26日の衆院予算委での答弁。民進党の山尾志桜里氏が「『そもそも』発言を前提とすれば、オウム真理教はそもそもは宗教法人だから(処罰の)対象外か」と尋ねた。
この部分の首相の「そもそも」の使い方は間違っていないし、山尾氏の使い方も正しい。ただし、議論がかみ合っていないのは、山尾氏が意図的に論点をずらしているせいに見える。ひどいのはこれに対する安倍首相の答えである。首相の日本語がおぼつかないのは周知の事実なんだから、周辺の人間が支えろよ。日本語の集中講義を受けさせるぐらいのことはしてもいいかもしれない。
これに対し、首相は「山尾氏は『初めから』という理解しかないと思っているかもしれないが、辞書で念のために調べたら『基本的に』という意味もある」と主張。「オウム真理教はある段階において一変した。『最初から』でなければ捜査の対象にならないという考え方そのものが大きな間違いであり、いわば『基本的に』変わったかどうかということにおいて、『そもそも』という表現を使った」と述べた。
問題は、首相自身が「そもそも」の意味を、「初めから」「最初から」だとしか認識していない点にある。だから「基本的に」などという「そもそも」の意味に、遠くはないけれども外れた意味をどこぞの辞書から引っ張り出してくる羽目に陥るのである。
そもそも、自分自身が使った言葉を説明するのに辞書の記述を持ってくるのが間違っているのだ。辞書には一般的な意味は書かれているけれども、どんなことを意識して使うのかまでは書かれていないことが多い。だから、自分ではこういう意味で、こういう意識で使用したのだと説明すればよかったのだ。それにしても「基本的に」はないよなあ。もしかしたら、揚げ足取りの質問には、適当に辞書にあると答えておけということなのかもしれないけど。
さて、「そもそも」について、考えておくと、新聞記事にも挙がっている「初めから」「最初から」という辞書的な意味はそれでいい。ではどんなときに使うのだろうか。一つは、「そもそも日本という国は」と始めて、国の起源から語り起こす使い方。それから、「そもそも言葉というものは」で始めて、言葉の起源でもいいけれども、むしろ言葉の本質、根本的な部分から語り起こすような使い方。どちらの場合も、この言葉を最初に置くことによって、物事の発端、最初の分から、もしくは本質的な部分から説明を始めることを示すために使われるのである。
それから、もう一つの使い方については、疑問文で考えるのがいいだろう。「日本語、どうでしょう?」では、「いったい」という意味でつかわれると書かれている。だからといって、「いったい誰が来るのだろうか」と「そもそも誰が来るのだろうか」が全く完全に同じだという人はいるまい。
「いったい」を使った場合には、単に疑問を強調しているだけなのに対して、「そもそも」を使うと、今考えている問題よりも、先に考えるべき問題、本質的な問題に立ち返って、改めて考え直すような場合に使われる。例えば、お客さんにあげるプレゼントを考えているときに、来るのが誰なのか、男性なのか女性なのか、知らないことに気づいて、「そもそも誰が来るんだ?」と、プレゼントについて考える前に知っておくべきことに意識を戻すのである。
だから、「この計画にはそもそも反対だったんだ」と過去の発端にさかのぼって言い訳めいたことも言えるし、「この団体はそもそも政党ではない」と団体の表面に現れた部分ではなく、その下に隠された本質的な部分、根本的な部分に立ち返ってコメントをすることもできる。
そう考えると、オウム真理教について、最初は宗教団体として設立されたという面に目を向けて、「そもそも宗教法人だ」という言い方は正しい。同時に、教義に終末論的なところがあって、教団の拡大のためには犯罪的行為をも辞さなかった点に目を向ければ、「そもそも犯罪行為を肯定するところのある組織である」なんて言い方をしてもいいだろう。表面上はただの宗教団体だったけれども、その本質は世界に終末をもたらすことを目的としたテロ組織でもあったのだから。つまり首相の発言における「そもそも犯罪を犯すことを目的としている集団」にオウム真理教を含めても問題はないのである。
この「そもそも」問題のそもそもの問題は、首相だけでなく質問した山尾氏も、「そもそも」についてよくわかっていない点にある。その点、目糞鼻糞を笑うレベルの揚げ足取りで、思想的にどちらを支持しているにせよ、こんなくだらない質問、国会でやるなよという感想を持つのが、まっとうな日本人というものである。
朝日も含めて新聞社が、どの辞書に載っているのだと大騒ぎしたのもみっともない。新聞記者というものは、ある意味で日本語を使うプロなのだから、辞書に逃げずに、自らの「そもそも」の使い方に鑑みて、首相を批判するなり擁護するなりするべきなのだ。
そして、内閣が、辞書『大辞林』で「そもそも」を引いて、さらにそこに語義として挙げられる「どだい」を引いくと「基本」という言葉が出てくるから、安倍首相の答弁は正しいということを閣議で決定したというのには、もう何をか言わんやである。
自分自身の「そもそも」の使い方に鑑みて改めて断言しておく。1月26日の首相の発言における「そもそも」の使い方は、オウム真理教もそこに入れるということを念頭においても、間違っていない。ただし、4月の質問に対しての答えは、質問と同様、クソ以下である。
「日本を愛するのなら、国語としての日本語も同じように愛してもらいたい」という「日本語、どうでしょう?」の著者が末尾にもらした言葉にはもろ手を挙げて賛成する。いや、国家としての日本は愛していなくても、日本語だけは愛せよ、と急進的日本語至上主義者としては考えてしまうのである。
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2017年05月25日
ダビット・ビストロニュを悼む(五月廿二日)
先月、フランティシェク・ライトラルの訃報に接したばかりだというのに、次なる訃報が飛び込んできた。ダビット・ビストロニュが、先週の金曜日にスイスの自宅で自ら命を絶ったというのだ。バニーク・オストラバとプルゼニュで同僚だったライトラルの死に、背中を押されてしまったのだろうか。享年三十四歳。ドーピング問題で出場停止を受けていた間に、監督の免許も取得したというから、まだまだ、人生これからだったはずなのに。
ビストロニュは、バニークでプロデビューし、2003/04のバニーク優勝に大きく貢献した若手選手の一人だった。あのときのバニークは、ラータル、ボルフ、ハインツなどの外国でプレーした経験のあるベテランと、マトゥショビッチ、ラシュトゥーフカ、マゲラ、ビストロニュなどの生きのいい若手選手がうまくかみ合ったいいチームだった。優勝の後のチャンピオンズリーグの予選で、経験のなさを露呈して、オストラバ05などと呼ばれてしまうことになるのだけど、それはまた別の話。
その優勝後のバニークにプシーブラムから移籍してきたのが、これも当時期待の若手だったフランティシェク・ライトラルなのである。マトゥショビッチの回想では、当時のバニークの若手選手たちはサッカーを離れたところでもつるんでいろいろ好き勝手にやっていたというから、この時代に友情を育んだものだろうか。当時の監督はコムニャツキーで、コーチを務めていたのが後にプルゼニュの監督となるパベル・ブルバである。
その後、2008年にビストロニュは、バニークでの活躍を評価されて、ブルガリアのレフスキ・ソフィアに移籍する。そこでもチームのブルガリアリーグ制覇に貢献したようである。2009年にはプルゼニュに移籍し、2010/11年のシーズンには、ブルバ監督の指揮の元、プルゼニュの初優勝に大きく貢献した。その後、ドーピング問題で二年の出場停止を受けた後に、二部に落ちたオロモウツでも、二部優勝と一年での一部復帰に貢献しているから、ビストロニュは所属したチームすべてで、優勝を経験していることになる。それぞれ一回ずつなのが残念だけど。
オロモウツで一部復帰に貢献した後、2015年の夏に膝の怪我が悪化してプロの選手としては、続けていくことができなくなり、実質的に引退を余儀なくされた。ただし、つい最近まで、スイスの五部のアマチュアのチームに所属して、サッカー自体は続けていたようである。ただよくわからないのが、スイスでどんな仕事をしていたかのだけど、今となってはせんなきことである。
ビストロニュが死を選んだ理由としては、ライトラルのときと同様、いやそれ以上に、借金を返せなくなっていたことが取りざたされている。発端は、2011年にプルゼニュが初めて出場したチャンピオンズリーグの試合後のドーピング検査で、メタンフェタミンの陽性反応が出たことだった。心当たりがあったのか、ビストロニュは特に反論することもなく、二年の出場停止処分を受け入れ、プルゼニュのチームとは契約解除に至った。その結果、それまでの収入を失い、借金生活が始まったのだという。
処分が解けた後に復帰したオロモウツでは、プルゼニュ時代とは比較にならない給料だっただろうし、その給料も怪我のために一年で引退に追い込まれたことで失われてしまう。別れた奥さんの話では、最終的には二人で自己破産することになったらしい。
初優勝したときのプルゼニュのディフェンスラインの選手たちの中では、ビストロニュとセンターバックのコンビを組んでいたチショフスキーも、難病に襲われて引退を余儀なくされ、今も闘病生活を続けている。プルゼニュの試合で支援のためのイベントが行われたり、本人が試合を観戦に来たりすることもあるのだけど病気の経過についてはあまり語られない。
そうすると、あの時のディフェンスの中心選手の中で、今も元気にプレーしているのはリンベルスキーだけということになるのか。たったの数年前のことなのに、何とも寂しいものである。
日曜日には、二部のリーグの試合でバニーク・オストラバがオロモウツにやってきた。ビストロニュが活躍したチーム同士の対戦で、試合前には黙祷がささげられ、厳粛な雰囲気で試合が始まった。オストラバからは千人を超えるファンが押し寄せ、ゴール裏のスタンドを一つ占拠して、熱心に応援して、試合を盛り上げていた。
それなのに、またぞろ発煙筒を持ち込んだ奴らがいた。観客席が煙に包まれただけでなく、オストラバのキーパーが守っているゴールのそばに投げ込まれたものもあったために、試合が中断してしまった。この件がなければ、ビストロニュがプレーしたすべてのチームの成功、プルゼニュの一部優勝、オロモウツの二部優勝と一部昇格、バニークの一部昇格を願ってきれいにこの話を終わらせられたのに、すべてぶち壊しである。。
5月23日21時。
2017年05月24日
日本で見たいチェコドラマ(五月廿一日)
Aさんに
二つ目のコメントをもらってしまった。ありがたいことである。コメントの返事代わりに、新しい記事のねたにさせていただく。正直、「ラビリント」、いやAXNミステリーでご覧になったようだから 「ラビリンス」の記事 に反応があるなんて思ってもいなかった。日本での放送は終わったみたいなので、記事を読んで、見たいと思われた方には、お詫び申し上げる。
気になるのは、日本で放送されたときにどのぐらいの人が見たのかである。AXNの関係者が、たまたまこのブログを見て、情報を提供してくれるなんて偶然はないだろうし、問い合わせたら答えてくれるのだろうか。視聴者数が多ければ、再放送もされるだろうけど、よく考えたら、そこまでして知りたい情報でもなかったや。
ただ、せっかくチェコのドラマが放送されたのだから、単発で終わらずに、「ラビリント2」は、いまいちだというので、同じストラフ監督の「 悪魔の罠 (デャーブロバ・レスト)」と「 失われた門 (ストラツェナー・ブラーナ)」も放送してもらえないものだろうか。「ラビリント」より、こっちの方が面白いと思うんだけどなあ。
もしくは伝奇色が強い同じアルノシュト・バシーチェクが原作を書いた「 ストラーシュツェ・ドゥシー 」でもいい。こっちは、UFOとか宇宙人とかが出てくる話だっただろうか。ラングマイェルと並ぶ80年代後半のアイドル、バツリークが、こっちも渋くなりきれないおっさんを演じている。バツリークのパートナーを演じるズザナ・ノリソバーは、スロバキア人だけど、このドラマでは、チェコ語で話していたような記憶がある。ノリソバーは、邦題詐欺ミュージカル映画の「プラハ!」で主役の女の子の一人を演じているから見ればわかる人もいるかもしれない。
いや、警察ドラマ、推理ドラマということで、ここはやはり「チェトニツケー・フモレスキ」の日本進出を目指すべきだろうか。大戦間期のヨーロッパが舞台になっているのは、日本人にとっても魅力的だろうし、比較的時代考証もしっかりしているので、当時のチェコスロバキア国内の情勢も、楽しみながら認識することができる。っていうとあんまり娯楽作品にならないか。
同じモスカリク監督の「 犯罪捜査における冒険 」も捨てがたい。一話完結方式で、犯罪捜査に画期をもたらした技術が導入された経緯を描くドラマである。全部で26作、舞台となる国も、時代も(近代以降ではあるが)、登場人物もみな違っている。だから、全部まとめて放送する必要もない。
もちろん出演者はチェコ人でチェコ語で話しているのだけどね。毎回見ないと話がわからなくなるということもないので、再放送のたびに、時間があって面白そうな内容の回だけ見ている。最近見た戦後すぐのオランダで発覚したフェルメールの贋作事件を描いた回は、面白かったなあ。
ところで、よく考えたら、日本語でチェコの映画やドラマを見たことがないのだった。日本のテレビで見たのは、せいぜい「モグラと自動車」ぐらいのもので、これは子供向けのほとんど無声アニメだったから、日本語もチェコ語も関係なかったし。東京のチェコ大使館では、日本在住のチェコ人、チェコ語を勉強している日本人向けに、チェコ映画の上映会を行なっていたけれども、基本的に英語の字幕つきだったはずだ。だから、チェコ語で聞いても、英語を読んでもほとんど理解できないという状態で、苦しみの度合いは一年目のサマースクールと同様だった。
当時ビェラ・ヒティロバーの「パスティ・パスティ・パスティチキ」を見たのは覚えているけれども、衝撃的な映像以外、ストーリーなどはまったくといいほど覚えていない。また見たいとは思えなかったのでチェコに来てからも見ていない。それにしても、「セドミクラースキ」などで、チェコ映画の「新しい波」の代表的な監督の一人だと目されていたヒティロバーが、あんなとんでもない女性だったとは、予想もしていなかった。というのは、チェコに来て、トーク番組や政治的な対談番組に登場したのを見ての感想である。
特に映画ファンというわけでもなかったので、「つながれたひばり」や「厳重に監視された列車」なんかの存在は知っていたが、何としてでも見ようなんて気にはなれなかったし、見ようと思えば見られたはずの「コリャ」は、「コーリャ、愛のプラハ」という邦題のこっぱずかしさに見たいとは全く思えなかった。
チェコに来てからは、チェコ語の勉強もかねてという言い訳で、テレビで映画やドラマをあれこれ見るようになった。アメリカの映画やドラマも、日本ではほとんど見ていないからチェコ語で見たものの方が多い。さすがに日本の番組は、と言いかけて、テレビドラマはともかく、映画はチェコ語吹き替えで、もしくはチェコ語の字幕つきで見たものの方が多いかもしれないことに気づいた。日本ではテレビなんか見ない人間だったのに、どうしてこうなってしまったのだろう。
当初の予定では、コメントを残してくださったアッキーさんの住まれているというターボルについて書くつもりだったのだけど、枕が長くなって一回分になってしまった。ということでターボルについては、またの機会に。
5月23日10時。
おっ、メンツル(メンツェルではない)の映画が日本でも買えるみたいじゃないか。字幕作るの大変だったろうなあ。ついでなので「セドミクラースキ」も。こっちは言葉なんて不要だったかな。5月23日追記。
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2017年05月23日
バビシュ財相解任?(五月廿日)
ゼマン大統領が中国に出かけて、南京大虐殺の記念碑を訪問したりしている間に、チェコ国内では、バビシュ財相の辞任と後任を巡って新たな動きがあった。
まず、バビシュ財相が、辞任してもいいというか、解任されてもいいと言い出したのは、すでに書いたとおりだが、その後任として、以前から噂に挙がっていた人物を正式に候補者としてソボトカ首相に提案した。最初はゼマン大統領の次の一手を待つと言っていたのだけど、批判の声の高まりにこのままではいけないと思ったのだろうか。記者会見の声が疲れていたから、やる気をなくしたという可能性もあるかもしれない。
とまれ、バビシュ党であるANOが、推薦したのが財務省の税務部門で二十五年以上仕事をしているという事務次官(と訳しておく)の女性シレロバー氏だった。ソボトカ首相が求める専門性は確実にクリアしているし、バビシュ氏が所有していた会社アグロフェルトとの関係も、直接の関係はないようだったので、ソボトカ首相はその提案を受け入れるものと予想していた。
しかし、社会民主党の一部の国会議員が、この候補者に異を唱え始めた。特に声が大きかったのが外相のザオラーレク氏だった。税務担当でありながらバビシュ氏のアグロフェルト社の社債の問題について調査をしていないということは、バビシュ財相べったりだということだというのがその反対の理由だった。この国は、不偏不党のはずの官僚が政党に入党したり、政党のひも付きの外部の人間がいきなり事務方のトップになったりする国なのだから、天に唾する行為だとは思わないのかね。
以前、社会民主党の総理大臣が、何かのきっかけで意気投合した当時は医師だったダビット・ラート氏を、強引に厚生大臣に就任させようとしたことがある。法律上だったか手続き上だったかの問題があって、大臣にできないことがわかると、厚生省で仕事をしていたわけでもないのに、いきなり事務次官の地位につけてしまった。こっちも十分以上に非難の対象になる人事だと思うのだが、ザオラーレク氏を含めて、社会民主党内部からの批判はほとんど聞かれなかったと記憶する。
アグロフェルトに対する税務調査に関しては、アグロフェルト側は、現在数件の調査が入っているところだといってザオラーレク氏の批判を否定している。またシレロバー氏は、口にできないこともあるんだけどねえと、社会民主党からの批判が的外れであることを仄めかしていた。
結局ソボトカ首相は、党内の反対の声を無視することはできず、シレロバー氏の財務大臣就任を拒否し、ANOに別の候補者を挙げるように求めた。ANOが次に挙げたブラベツ氏もバビシュ氏に近すぎるという理由で拒否され、最終的にはANOの下院議員ピルニーがバビシュ辞任後の財務大臣となることで、首相側とANOの間で合意に達したようである。
ただ、ピルニー氏本人は、候補者に上げられる以前に名前が挙がったときに、財務省は自分の専門とは違っているからと言っていたはずなのだが、首相の求める専門性を満たすことになるのだろうか。とまれかくまれ、ピルニー氏をバビシュ氏の後任の財務大臣にするということで、ソボトカ首相は、バビシュ氏の解任と、ピルニー氏の任命についての書類を、ゼマン大統領が中国からの帰途につくころに大統領府に提出したらしい。
ゼマン大統領は、木曜日にチェコに帰国したのだが、中国旅行でお疲れなので、対応するのは週明けになるという。退任するバビシュ氏、就任するピルニー氏と会談をして、解任と任命の手続きをするというのだけど、素直に手続きを進めるのだろうか。
ここ最近の言動でゼマン大領領に反対する声は大きくなっている。憲法に記載された大統領の職務を恣意的に読み替えて、大統領の権限から逸脱したことをしているのだそうだ。一部の政治家からは、チェコの大統領としてはふさわしくないことを証明してしまったのだから、来年の大統領選挙には出馬するべきではないと言う声まで上がっている。その批判が正しいかどうかはともかくとして、ゼマン大統領がその批判を甘んじて受け入れて、立候補を取りやめるとも思えない。取りやめるとすれば、健康に問題が出てきたときだけだろう。
追い詰められた感のあるゼマン大統領が、これからどう巻き返していくのか楽しみである。ゼマン大統領は2003年の大統領選挙で惨敗して、政治生命を失って隠棲したところから復活した人である。その基盤が、政治家よりも、一般の民衆の支持にあることを考えると、このぐらいのことで再び引退に追い込まれるとは思えない。ゼマン支持者は、ゼマン氏の主義主張、言動を鑑みて支持しているのではなく、ゼマン氏だから支持しているのである。支持者の数もそうは減るまい。
それにしても、今回の内閣の危機に関して、疑問が一つ。首相が、もしくは政治家が、ある特定の個人の経済活動に関して、脱税かどうかの調査を財務省の税務担当の部署に命ずるというのは問題ないのだろうか。制度上問題ないとして一度処理された件の再調査を求めるということは、脱税だと判断しろと圧力をかけているに等しい。それに調査しろと求めてもいいということは、調査するなと指示してもいいということにもつながる。
問題になっているコルナ建ての社債を発行した企業は、バビシュ氏のアグロフェルトだけではないというし、社債が発行された時点の法律に基づいて処理しているともいう。ようは、税制上の抜け穴のようなものを利用した節税策のようなものだったのだろう。とすれば、企業側の倫理的な問題はおくとして、責められるべきは政治家の怠慢である。
バビシュ財相に功績があるとすれば、それは、本人が主張するような、財政を健全化したとか、税収を増やしたとかいうところではなく、バビシュ排除を目指した政治家たちが、粗探しをし攻撃の対象とすることで、これまで見逃されてきた問題に注目が集まるようになったところにある。コウノトリの巣で問題になったEUの補助金だって、今回の社債と税金の問題だって、関係するのはバビシュ氏だけではあるまい。
そんなこれまで等閑視されてきた問題が、注目を集めたことで、改善されるのなら、チェコという国にとっては、バビシュ氏が政界に進出したことに大きな意味があることになる。ただし、現時点では、ほとんどバビシュ攻撃に留まっていて制度の見直しには、ほとんどつながっていないのだけれども。
5月22日20時。
2017年05月22日
アイスホッケー世界選手権の不思議(五月十九日)
チェコ代表は、グループステージ最終戦のスイス戦、準々決勝のロシア戦と、あまりいいところなく負けてしまい、世界選手権で五年連続メダルなしという結果に終ってしまった。去年の準々決勝での誤審がなければと恨み言を言いたくなってしまう。
準々決勝では、それぞれのグループの1位と4位、2位と3位が対戦するのだが、ちょっと不思議なことが起こっていた。パリで3位だったチェコの相手のロシアはケルングループで2位だったのだ。この場合、普通は1位と2位のチームは同じ会場から動かず、移動してくる反対グループの3位と4位のチームを迎え撃つ。それなのに、チェコがパリに残り、ロシアがケルンから移動してきたのだ。これは、開催国のドイツがケルングループで4位に入ったからだという。
準決勝からは会場が一ヶ所に集約されるために、配慮の仕様もないが、準々決勝では開催国が進出した場合には、会場を選択できるというルールがあるらしい。だから、以前チェコのプラハとオストラバを会場にして世界選手権が行われたときも、チェコ代表の準々決勝の試合は、グループでの順位にかかわらずプラハで行われたのである。
ということでグループステージの最終戦、パリではカナダ対フィンランド、ケルンではドイツ対ラトビアの試合が行われているとき、チェコテレビの中継では、準々決勝の対戦相手がどこになるかだけでなく、試合会場がどこになるかもあれこれ議論の対象になっていた。
試合前の時点でわかっていたのは、チェコがグループの3位か4位になること。フィンランドが延長なしで勝てば、4位で対戦相手はアメリカ、会場はケルン。それ以外はチェコは3位で、対戦相手はロシア、会場はケルンでの試合次第ということだった。カナダがフィンランドに負けるとは思えなかったけれどもさ。
ドイツ対ラトビアの試合は、試合前の時点で勝ち点が並んでおり、勝ったほうが4位で準々決勝に進出。ドイツが勝てはチェコはパリに残り、負ければケルンに移動である。カナダ対フィンランドが予想通りの試合になったのに対して、こちらは劇的な試合だった。
ラトビアとしては、準々決勝進出を争っているという時点で、下馬評を覆す大活躍であるのに対して、ドイツは開催国として何としても準々決勝進出を成し遂げる必要があったはずである。そんな事情も左右したのか、一度はドイツが2−0でリードする。そこからラトビアの反撃が始まり、試合終了3分前に、逆転に成功してしまう。
一転追い詰められたドイツは、ゴールキーパーを引っ込めて、6人での攻撃を選択する。ラトビアをゴール前に押し込んで、最後はテレビで見ていても、誰がどうやってシュートしたのかも分からないような状態で、ゴールが決まって終了間際に同点、試合は延長にもつれ込んだ。結局ドイツが勝って、開催国の一つとして準決勝に進出、チェコのパリ居残りとロシアの移動が決まったのだけど、なかなかすごい試合だった。こんな試合を見るとアイスホッケーも悪くないと思う。
そしてもう一つ、よく分からなかったのがグループ最下位が自動で降格することになっている残留争いである。パリでのグループは問題なかったのだけど、ケルンでのグループで、ぎりぎりまでスロバキアの残留が決まらなかった。イタリアに勝利して最下位になる可能性はなかったにもかかわらずである。
これにも、アイスホッケーの世界選手権独特のルールが関係している。他のスポーツの世界選手権と違って、アイスホッケーの場合、開催国の出場枠がないのである。その代わりに、前年の世界選手権で最下位になっても降格しないという規定がある。ただし、前年の世界選手権には確実に出場しなければならない。
これを今年の大会に当てはめると、来年はデンマーク、再来年はスロバキアで世界選手権が行われることが決まっている。だから、今年の大会でデンマークは最下位になっても降格することはないが、スロバキアにはその可能性がある。
それぞれの国の最終戦を残した時点で、デンマークとスロバキアが勝ち点4で並び、イタリアが勝ち点1で最下位だった。最終戦ではデンマークとイタリアの直接対決がある。もし、この試合でイタリアが勝つと、3チームが勝ち点4で並び、順位は3国間の直接対決の結果で決まるので、イタリア、スロバキア、デンマークの順になる。
しかし、デンマークは降格の対象ではないので、下から2位のスロバキアが降格の対象となる。ただし、そのまま降格となるのではなく、パリグループの下から2位のチームとの比較で成績が悪いほうが降格することになる。奇しくもそのチームも勝ち点が4だったので、最終的には得失点差で降格が決まる可能性があった。そして、スロバキアの方が得失点差のマイナスが大きかったので、デンマークが負けたら降格というのが、現実的な恐れとして存在したのだ。
恐れは、それだけでなく、降格した場合に、来年の世界選手権に出場できないということになり、その場合には、前年の世界選手権に出場することという開催のための規定を守れなくなるため、再来年の世界選手権の開催権を剥奪されるところだったのだ。
確か二年前にはチェコ人の監督に率いられて準優勝を遂げたスロバキア代表に、昔日の面影はなく、勝ち点4のまま全日程を終えた。ただ幸いなことに、その前日に、デンマークがイタリアに勝利してくれたおかげで、ケルングループで7位となり、降格を免れ、再来年の世界選手権がスロバキアで開催されることも、最終的に決定したのである。
アイスホッケーって、スポーツとしてのルールも複雑でわかりにくいけれども、大会の運営のルールもわかりにくいのである。世界選手権と名乗っているのに、世界各地域の代表が集っているわけでもなく、毎回かわりばえのしない出場国で、かわりばえのしない優勝争いになるし。その辺りが一部の国を除くと、それほど人気がない理由になっているのだろう。サッカーと違って世界中に普及させようなんて意欲もないのかもしれないが。
5月19日20時。