この『緋色の研究』、読んだのは確かなのだけど、普通の翻訳ではなくて、子供向けに修正を受けたものではないかと思う。小学校の高学年で、最初から子供向けに書かれた「少年探偵何とか」の翻訳に飽き足りなくなって、クリスティーのポワロシリーズや、ルブランのルパンなんかと共に、シャーロック・ホームズにも手を出したのだ。ただそれもまた子供向けのシリーズだったというわけだ。子供向け以外でこの手の古典的翻訳推理小説って読んだっけと考えると、西村京太郎の『名探偵なんか怖くない』で存在を知ったエラリー・クイーンの作品か。クリスティの『カーテン』『アクロイド殺し』は、早川文庫版で読んだ記憶がある。シムノンのメグレ警視のシリーズは田舎の図書館、書店では発見できなかった。
だから、『緋色の研究』をちゃんと一般向けの翻訳で読むのは、今回が初めてだったのかもしれないのだが、話の内容をさっぱり覚えていないことに驚いた。覚えているのは、子供の頃、読んだときも、どうしてこれが『緋色の研究』なんて題名になっているんだろうと思ったことである。BBCの現代化されたシャーロック・ホームズでは、最初の犠牲者がピンク色のものを持っていたと記憶するけど、血で文字が書かれていたのが緋色なのかな。それともモルモン教が緋色をシンボルにしていた可能性もなくはないのか。
今回再読して、改めてシャーロック・ホームズは短編のほうが面白いと思った。事件の謎解きの後に、長々と事件に至る過去の経緯が語られるのは読んでいてちょっと疲れる。短編でも先週ドラマで見た「Mrzák」、日本語だと「曲がった男」とか訳されるのかな、でインド時代の回想が続くのに、あんまりシャーロック・ホームズっぽくないなあなんて感想を抱いてしまった。こんなことを考えたのでは、模範的な読者にはなれそうもない。
ということで次は短編集を読もう。なんて考えて、土曜日の番組表を見たら、今週放送されるのは、「Strakatý pás」となっていた。「まだらの紐」である。あれ、「しゃべくり探偵」シリーズに、「まだらの紐」の「紐」は紐じゃないとかいうところがなかったっけ? 確認しようと探したのだが、肝心の『しゃべくり探偵』が見つからない。続編の『しゃべくり探偵の四季』はあったので、そちらを確認すると、ホームズ役の保住くんが組んだバンドの名前が、英語の原題をそのままカタカナにした「スペックルド・バンド」だった。
この部分の、「紐」とか「ヘビ」とか出てくる和戸くんとの掛け合いも面白くて、これが頭に残っていたのかとも思えなくはないのだけど、もっと露骨に誤訳をあてこするような場面があったような気もする。それにしても、「しゃべくり探偵」シリーズには、この手のディープなホームズファンじゃないとわからないような、当てこすりやら洒落やらがあるのだけど、全部はわかっていないんだろうなあ。
ホームズのパロディといえば、赤川次郎の「三毛猫ホームズ」シリーズも、中学校の頃は熱心に読んでいた。再読したくなったのだけど、こちらにもって来た本の中にも、日本に変える方からもらった本の中にもないのが残念である。大きな声では言えない方法で入手したテキストファイルの中には、赤川次郎の作品もあったけど、「三毛猫ホームズ」はなかったし。だからといって、現在の定価で買いなおす気にもなれないし……。
2021年4月25日24時
【このカテゴリーの最新記事】
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image